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エトセトラ VOL.4|石川優実(責任編集)

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エトセトラブックス 2020年
ソフトカバー 128ページ
A5判 縦210mm 横148mm 厚さ6mm


- 内容紹介 -
フェミマガジン4号目のテーマは「女性運動とバックラッシュ」!
#KuToo運動の石川優実とともに、女性の運動を知る特集号。

70年代ウーマンリブ以降日本で運動してきた女性たちの話に耳を傾け、エッセイや漫画で女性運動史を学び、そして女性が声をあげる度に毎度起きてきた「バックラッシュ」とは一体何か考える論考も充実。600人の読者が参加した「あなたの#MeTooと怒りをきかせてください」アンケートをはじめ、ハイヒール着用について大手企業25社へのアンケート、漫画表現について出版各社へも質問しています。

声をあげ立ち上がってきた女性たちと連帯し、運動を実践する一冊です!
目次
特集:女性運動とバックラッシュ

声をあげ立ち上がった女たちの年表(作成:大橋由香子)

【インタビュー:運動の女性たちにきく】
米津知子
山田満枝
高木澄子
福島みずほ
正井禮子

【写真・エッセイ】
松本路子

【コラム:女たちの運動史】
佐藤繭香/サフラジェット
大島史子/女性参政権運動
柚木麻子/青鞜
伊藤春奈(花束書房)/炭鉱女社会
大橋由香子/中ピ連
斉藤正美/メディアの中の差別を考える会
小川たまか/性暴力を許さない女の会

【論考:運動とバックラッシュ】
斉藤正美・山口智美
三浦まり
飯野由里子
北原みのり

【#MeTooアンケート】
600人が答えた「あなたの#MeTooと『怒り』についてのアンケート」

【#KuTooアンケート】
職場でのヒール着用について企業25社にアンケート

【対談】
伊藤詩織✕石川優実

【鼎談】
飯田光穂✕遠藤まめた✕石川優実

【表現とジェンダーバイアスを考える】
論考:楠本まき「言葉/思考/記録/行動」
出版社アンケート

【アンケート】
疲れないで運動をつづけていく方法

【連載】
編集長フェミ日記 石川優実
ここは女を入れない国 伊藤春奈(花束書房)/第2回:歌舞伎と女人禁制
Who is she?  大橋由香子/第2回:捕まってしまった彼女
LAST TIME WE MET彼女たちが見ていた風景 宇壽山貴久子
私のフェミアイテム nichinichi
NOW THIS ACTIVIST  女たちの戦争と平和資料館(wam)
etcbookshop通信
Feminist Report 塚原久美「アフターコロナの世界の中絶」

【詩】
モジャ・カーフ/相川千尋訳
「ヒジャブ・シーン#7」「食器を洗ってくれる男が好きだ」
前書きなど
はじめに     石川優実

「バックラッシュ」という言葉を私が知ったのは、#KuTooという運動を始めた頃だろうか。
「フェミニズムが盛り上がった後には必ずと言っていいほど揺り戻しがある、それが私は怖い」
そう言っている女性がいて、私はその日初めてバックラッシュというものの存在を認識した。2019年6月、まさに私はそのバックラッシュ真っ最中だったように思う。

「#KuTooは女性差別に対する運動です」そう明言して以降、私や#KuTooにはずっとバックラッシュが起こっている。デマをばらまく、孤立させようとする、嫌がらせリプライを毎日送る、運動が失敗したということにする(厚労省のパンフに掲載され、企業も運動の影響を受けフラットシューズもありにした、という報道があったにもかかわらず……!)、私の性格が悪いから賛同者が増えないということにする(署名は3万集まったにもかかわらず……!)、「死ね」という言葉を投げつける……。

でも、なんだろう。これってあんまり、「初めての経験」という感じがしない。これまでにもこんなようなことは薄っすらと、しかしずっと経験してきたような気がする。
女だという理由で嫌がらせをされたり、セクハラを受けたり、噓をついていると決めつけられたり、男に性的に見られたいに決まっていると思われたり、仕事の能力がないということにされたり。思い返せば、生きてきた33年間ずっとバックラッシュ的なものに苦しめられていたような気がしてならない。

さて、ではそのバックラッシュにはどんな効果(?)があるのだろうか?
私がフェミニズムに出会い、性差別への反対活動を始めた頃、応援してくれる知人にこう言われたことがある。
「これからは自分自身との戦いになると思う。いつでも自分自身を信じて頑張って」と。
今になってとてもその言葉の意味を痛感する。バックラッシュには、自分を信じさせなくなる効果があると思う。自分は間違っているんじゃないかと思わせる効果があると思う。自分のことを大嫌いにさせる効果があると思う。そして、もしその効果通りに私自身がなったとしたならば、私は女性運動の全てをやめるだろう。私自身をもやめてしまうかもしれない。

でも、もう一度よくよく考えてみよう。フェミニズムに出会うまでの約30年間、私はずっと自分を信じられなかったし、自分は間違っているんじゃないかと思ってきたし、自分のことが大嫌いだった。ずっとずっと、女性差別というバックラッシュを受け、まんまとその効果通りの自分で生きてきたのだった。
でも、フェミニズムと出会った今はもう違う。

#KuTooで受けたバックラッシュとずっと受けてきた性差別がほぼ重なるように、これらは奴らの「いつものやり口」なのだ。
女性を自分たちの都合の良い存在でいさせるため、自信を無くさせ、主体性を無くさせるためのいつものやり口。

ウーマンリブの田中美津さんは著書の中で、「リブは『男は敵だ』と煽っているとよく報じられました。そんなこと一度だって言ったことないのに」と書いていた。ほら、ここでもおんなじ、「いつものやり口」が使われている。#KuTooだって、一度も男が悪いと言ったことはないのに石川優実は男性差別主義者だ、とか言われている。
「なんだよ、こいつら誰が何やっても女性運動にはおんなじこと言ってんじゃん」と知った私は、とても心が楽になった。むしろ、これは付き物だ。私が正しいことをしている証拠のようにも思えた。

これって、#MeTooをした時の「私も同じように自分を責めていました」と同じ現象なのではないか。その事実を知ることによって、みんな同じなんだということを知ることによって、これは私側の問題じゃないんだということに気がつくことができた。
問題はいつでも、嫌がらせやハラスメント、性暴力や性差別をする側にある。
私のせいでバックラッシュや性差別は行われているのではない。それに気がついた時の安心感、心強さ。それをもうすでに#MeTooをはじめとする様々な連帯で体験していたではないか。

ということで、そんな例を、たくさん集めてみようと思う。これまでの女性運動にはどんなことがあって、どんなバックラッシュがあったのか。知識は勇気になる。知識は優しさになる。知識は自分を助けてくれる。知識は他の誰かのことを助けることができる。

フェミニストは過激だから賛同が得られない?
日本のフェミニズムは本質からずれている?
そんな攻撃的な言葉遣いじゃ誰も聞いてくれない?
認めてもらうには配慮を?

これまで言われてきたことは、本当にそうなのだろうか。
歴史と事実をぜひ、知りたい。それを知ることによって、私は、私たちは自分自身を信じることをやめずに、時に楽しく、時に激しく、女性運動をし続けていくことができるのではないかと思う。


- 著者プロフィール -
石川優実 (イシカワ ユミ) (責任編集)
1987年生まれ、愛知県出身。俳優、アクティビスト。18歳から芸能活動を開始。2017年、グラビアアイドル時代に受けた性被害を告発し、#MeTooムーブメントの中で話題となる。2019年、職場で女性のみにヒールやパンプスを義務付けることは性差別であるとして#KuToo運動を展開、厚生労働省へ署名を提出した。この運動は世界中のニュースで取り上げられ、同年10月英BBCにより世界の人々に影響を与えた「100 Women」に選出された。著書に『#KuToo : 靴から考える本気のフェミニズム』(現代書館)。

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