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子どもの読む力を育てよう! 家庭で、園で、学校で | 小川 三和子
¥2,420
青弓社 2024年 ソフトカバー 216ページ A5判 縦210mm 横148mm 厚さ15mm - 内容紹介 - なぜ、子どもの成長にとって読書が必要不可欠なのか? 乳幼児期から学齢期にいたるまでの子どもたちに、家庭や教育現場ではどのような読書体験を提供するべきなのか? 本がある環境づくり、読み聞かせ、ブックトーク、図書館の利活用など、子どもたちの成長のために欠かせない本との出合いや読書との向き合い方を、教育現場での体験談も交えながらやさしく具体的に指南する。さらに、子どもの発達段階(赤ちゃん―高校生)ごとに薦める絵本や児童文学もふんだんに紹介。 加えて、国語の授業での読書会やビブリオバトルの取り組み、学校図書館ボランティアの活動、「子ども読書の日」や「読書バリアフリー法」など国民の読書に関する施策についてもまとめ、社会と読書の関わりを総覧する。 子どもにとって、家庭にとって、そして現代社会にとっての読書の意義をあらためて考えるための一冊。 - 目次 - はじめに 第1章 現代社会のなかでの子どもたちと読書 1 町の風景から 2 情報社会に生きる子どもたち 3 文字や文章を読む力の育成 4 デジタル情報と紙の本 5 電子書籍と紙の本 6 書くことと読むことの移り変わりとデジタル社会 第2章 本を読むということ 1 読書で育つ力 2 読書の深まり 3 学校教育と読書 4 文化審議会が考える読書 5 学校教育の変遷と読書の施策 第3章 乳幼児期と読書 1 赤ちゃんとのコミュニケーション 2 赤ちゃん時代から読み聞かせを 3 ブックスタート 4 読み聞かせ 5 集団での読み聞かせ 6 ストーリーテリング 7 昔話 8 文化に出合う機会を 9 この時期にお薦めの本 第4章 小学校低学年(1年生・2年生)の読書――本に親しむ 1 「本を読みなさい」と言わないで 2 学校での読書指導 3 本に親しむ 4 幼年童話などに親しむ 5 本で調べる 6 ボランティア活動のこと 7 この時期にお薦めの本 第5章 小学校中学年(3年生・4年生)の読書――多読と読書の質 1 中学年は大切な時期 2 中学年の読書指導目標と内容 3 読めるようになるために 4 課題をもって調べる 5 本との出合い 6 この時期にお薦めの本 第6章 小学校高学年(5年生・6年生)の読書――本との出合いを大切に 1 読書離れしないために 2 高学年の読書指導目標と内容 3 目標をもって主体的に読む 4 読書から広がる探究的な学習 5 読書感想文のこと 6 この時期にお薦めの本 第7章 中学生・高校生と読書――思春期の読書 1 読書離れも背伸びも 2 中学校・高等学校の読書指導の目標と内容 3 児童書から大人向けの本まで 4 メディアの特性に応じた活用 5 中学校・高等学校での読書活動 6 この時期にお薦めの本 第8章 読書とバリアフリー 1 誰もが読書の喜びを 2 特別なニーズに応じた読書支援 3 読むための壁を低くする努力 4 すべての子どもたちが読書をすること 5 読書バリアフリーを理解するための図書 ブックリスト おわりに - 著者プロフィール - 小川 三和子 (オガワ ミワコ) (著) 東京学芸大学大学院教育学研究科学校教育専攻修士課程修了。東京都公立小学校教諭・司書教諭、新宿区学校図書館アドバイザーなどを経て、現在は八洲学園大学非常勤講師。全国学校図書館協議会参事、日本学校図書館学会理事・役員、日本子どもの本研究会会員、日本図書館情報学会会員。著書に『学校図書館サービス論』『読書の指導と学校図書館』(ともに青弓社)、『教科学習に活用する学校図書館――小学校・探究型学習をめざす実践事例』、共著に『読書と豊かな人間性』(ともに全国学校図書館協議会)。
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岡潔の教育論 |中沢新一, 岡潔, 森本弘
¥2,750
コトニ社 2023年 ソフトカバー 272ページ 四六判 - 内容紹介 - 「教育はどうすればよいのだろう」 暗記と論理の偏重、効率主義と個人主義を超えてーー 世界的数学者がとく、「自然」にそくした「正しい心」の育て方、その「論理」と「直観」を統合する考え方と実践がここによみがえる!! 【中沢新一「はじめに」より】 《『岡潔の教育論』は、岡潔の教育に関するエッセイと、岡潔と森本弘が五十年ほど前に、阿吽の呼吸で繰り広げた教育をめぐる問答の記録を、一冊にまとめたものです。(…)森本弘さんは、地元和歌山で小学校の先生をされていた方です。教育の現場で成長していく子供のこころを長きにわたって見つめ続けていた人です。(…)岡潔と数学が出会って現代数学に新しい世界が開かれたように、森本弘と岡潔が出会って新しい教育の理念がつくられたように、この本が多くの人のこころに届いて、そこから新しいものの考え方や感じ方や未来への指針が生まれてくることを、私たちは願ってやみません。》 目次 はじめに(中沢新一) 第1章 小学校以前ーー教育はどうすればよいのだろう1(岡潔) 第2章 情緒の教育ーー教育はどうすればよいのだろう2(岡潔) 第3章 知性と意志の教育ーー教育はどうすればよいのだろう3(岡潔) 第4章 教育に東洋の秋をーー構造学習と大脳生理の一思案(森本弘) 解説(中沢新一) 解説 情緒と微笑(唐澤太輔) 前書きなど はじめに 中沢新一 『岡潔の教育論』は、岡潔の教育に関するエッセイ(「教育はどうすればよいのだろう1~3」)と、岡潔と森本弘が五十年ほど前に、阿吽の呼吸で繰り広げた教育をめぐる問答の記録を、一冊にまとめたものです。本書成立のきっかけは小さな偶然によるものでした。数年前岡潔についての講演を頼まれて和歌山県橋本市を訪れた際、森本弘の義理の娘さんである森本和子さんから、こんなものが遺されているのですがといってみせていただいたのが、岡潔と森本によるその問答の記録でした。妙に揃った几帳面な文字で、何度も書き直し、清書されたであろうその原稿には不思議な熱がこもっていました。その内容を一読して、これはとても貴重な価値をもつもので、このまま埋もれさせてはならない、と私は思いました。 森本弘さんは、地元和歌山で小学校の先生をされていた方です。教育の現場で成長していく子供のこころを長きにわたって見つめ続けていた人です。その中で、子供のこころと実直に向き合えば向き合うほど、日本人のこころはこれからどうあるべきなのか、自分は教育者として、それをどう果たせばよいのかという思いが強くなっていったことでしょう。それは戦後教育の課題そのものでもありました。 敗戦後の日本は民主主義国家となり、自由と平等を掲げた教育がはじまりました。激しい変化を体験して、どの教師も迷いを抱えていました。彼らの大半は戦前の日本の教育を受けて育っています。新しい教育の中では、昔からの「日本のこころ」のあり方は否定的に扱われていましたが、それに変わる価値や思想は、まだ育っていませんでした。 国の体制や教育の形が変わっても、変わらない「日本のこころ」というものがあるのか。そこには目には見えないけれど、私たちを生かすなにかとても大切なものが潜んでいたようだが、それを次の世代、若い皆さんへどう伝えていけばいいのか。その切実な想いが、当時自分たちの身近に住んでいて、日本人のこころのあり方を必死に説いていた高名な数学者に、向かっていったのです。森本さんは岡潔に必死の思いで、自分たち教師は子どもたちに「日本のこころ」の何を伝えていけばよいのか、と問うたことでしょう。その熱意に打たれた岡潔は胸襟を開いて、両者の対話がはじまりました。その対話の過程でわかってきたことを森本さんが記録し、まとめられたものを今度は訂正したり、詳細に膨らませたりしながら、この原稿はできあがっていきました。そのときの熱気が、いまでも伝わってくるようです。 本書に収められた両名の文章は、一九六〇~一九七〇年代に書かれたものです。日本が敗戦の傷から立ち直り、高度経済成長へと向かっていくその中で、「日本のこころ」も大きな変化を遂げてきました。合理主義と効率が重視され、そうでないものはだんだんと隅においやられるようになっていきました。しかし、人間のこころはそれだけではない。表面は変化したかにみえてもこころの奥に変わらないものがある、「日本のこころ」はそこに深く根ざしているはずである。岡潔の教育や日本人の思想風潮への警鐘はそのような確信からきています。 岡潔は世界的な数学者で、その当時の日本でもよく知られる人物でした。しかし、彼自身の人生は順風満帆というわけではありません。若き日からおたがいを切磋琢磨してきた無二の親友を留学中のパリで失い、帰国後は精神衰弱におちいり、大学の職を失って何年ものあいだ世間から隔絶した暮らしをしたこともありました。友人たちの助けでようやく奈良女子大学に職を得たのは、敗戦を経て四十八歳になった頃のことでした。しかし、どんな困難に出会っていても、岡潔は少しも自分を不幸とは思いませんでした。それは、いつでも彼が全身全霊をこめて純粋一途に追求できる数学の世界があったからです。 岡潔は「数学とは、自らの情緒を外に表現することによって作り出す学問芸術の一つである」と考えていました。情緒の表れは数学に限りません。俳句や和歌でも、音楽や絵画にも情緒は宿ります。野に咲く一輪のスミレに、ああキレイだな、と思うこころが情緒だと、岡潔は言っています。日本の自然豊かな風土が日本人のこころをはぐくみ、その「情緒」が自分と数学のこころを通わせたのです。数学は一見、冷たい論理や数式によって表されているように見えるかもしれませんが、じつはその背後に、目に見えない情緒の世界が動いている、それが彼の確信でした。 岡潔は人間には「第一の心」と「第二の心」があると考えていました。論理や数式の世界は「第一の心」にあたります。理性や論理を働かせ、世界中の数学者の誰にでもわかるように論文を書いて成果をあげることができます。それによって社会の中で職を得て、豊かで安定した生活を送ることができます。この「第一の心」を教育で身につけることは、大切なことです。理性や自制心を身につけることによって、人間としての社会生活を送る能力を得る。それを子供達に身につけさせることが、教育のひとつの使命と、岡潔も考えていました。 一方で、私たちのなかには、「第二の心」も保存されています。この「第二の心」というのが「情緒」というものに深いつながりを持つ、もう一つの心の働きです。これは合理的な論理を超えて、心の奥のほうで行われている心の活動です。ものごとの全体的なつながりを直感的にとらえながら、たんなる論理を超えてこの世界の真実をつかむことを可能にする心の働きです。日本文化の中で、この「第二の心」はとても大きな働きをしてきました。ところが現代生活においては、「第二の心」が「第一の心」にひどく抑圧されていると、岡潔は考えました。 「第一の心」と「第二の心」を協働して存分にはたらかせること。そこから人と人とをつなぐよりよい社会がつくられていくはずだというのが、岡潔の基本的な考えでした。そのためにも日本人のこころに、情緒をよみがえらせていかなければならないのです。現代の私たちからみると、いささか素朴でロマンチックな考えのように見えるかもしれません。岡潔と森本弘がそういうことを考えていた頃に比べても、いまはものごとが複雑に絡まりあい、情緒も世界の全体像もみえなくなっているように思えるからです。しかしだからこそ、岡潔のまっすぐな確信と森本弘の渾身の挑戦は、私たちに大きな勇気と示唆を与えてくれます。現代の世界がどんなに混迷を深め、純粋なこころの働きが見えにくくなっているとはいえ、人間の本質は変わっていないからです。 橋本市で起こったひとつの原稿との出会いをきっかけに、「日本のこころとは何か」を考えようという本書は生まれました。岡潔と数学が出会って現代数学に新しい世界が開かれたように、森本弘と岡潔が出会って新しい教育の理念がつくられたように、この本が多くの人のこころに届いて、そこから新しいものの考え方や感じ方や未来への指針が生まれてくることを、私たちは願ってやみません。 - 著者プロフィール - 中沢新一 (ナカザワシンイチ) (著/文 | 編集) 1950年生まれ。東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了。京都大学特任教授、秋田公立美術大学客員教授。人類学者。著書に『増補改訂 アースダイバー』(桑原武夫賞)、『カイエ・ソバージュ』(小林秀雄賞)、『チベットのモーツァルト』(サントリー学芸賞)、『森のバロック』(読売文学賞)、『哲学の東北』(斎藤緑雨賞)など多数。 岡潔 (オカキヨシ) (著/文) 1901年生まれ。三高をへて、京都帝国大学理学部卒業。多変数解析函数の世界的権威者。理学博士。奈良女子大名誉教授。学士院賞・朝日文化賞・文化勲章。仏教・文学にも造詣が深く、『春宵十話』『風蘭』『紫の火花』『月影』『日本民族の危機』などの随想も執筆。晩年は教育に力を注いだ。 森本弘 (モリモトヒロム) (著/文) 1911年生まれ。和歌山県内の小・中学校の校長を経て、橋本市教育委員会教育長を務める。晩年の岡潔と親交が深く、岡から学んだ「情緒教育」を実際の教育現場で実践しつづけた稀有な教育者。