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佐藤真の不在との対話|小森 はるか、小林 茂、旗野 秀人、赤坂 憲雄、永野 三智、山根 貞男、細馬 宏通、神谷 丹路、保坂 和志、諏訪 敦彦、北小路 隆志、八角 聡仁、石田 優子 里山社 (編集)
¥1,650
里山社 2021年 ソフトカバー 160ページ A5判 縦188mm 横127mm 厚さ10mm - 内容紹介 - 『阿賀に生きる』『SELF AND OTHERS』『まひるのほし』『花子』など、優れたドキュメンタリー映画を生み出し、07 年に急逝した映画作家、佐藤真。それまで事件や社会課題を糾弾するのが命題だったドキュメンタリーというジャンルにおいて、「見えない世界」を撮り、問題の本質を炙り出すという方法論は、普遍性をもち、多くの示唆に富んでいた。東日本大震災以後、混迷を極め、脊髄反射とも言うべき言説も飛び交う日本社会で、今もなお深い思考を促す佐藤の映画と言葉のもつ意味を探ろうとする人びとによる対話集。 「本当に特殊なのはそれを見ている自分なんだっていうことに気づかせる映画はなきゃいけないと思う。ドキュメンタリーというジャンルのなかで、日本でそういうことに触れようとしていたのは佐藤さんだけだった」(諏訪敦彦) 目次 小森はるか(映画監督)佐藤真監督の葛藤に救われた 小林茂(映画監督)わからないから撮る 山根貞男(映画評論家)映画哲学者、佐藤真 赤坂憲雄(民族学者)×旗野秀人(「阿賀に生きる」発起人、「冥土のみやげ企画」主催)×小森はるか「福島に生きる」は可能か 旗野秀人×永野三智(水俣病センター相思社) 水俣病発生から「遅れてきた若者」だからできること 神谷丹路(日韓史研究者、佐藤真・妻)プライベートな世界を撮ることに向かった時期 細馬宏通(人間行動学者)意味よりも過程を見ていたい 保坂和志(小説家)見つめられないものこそ日常 諏訪敦彦(映画監督)世界は見渡すことができない 石田優子(映画監督)彷徨いつづけることを認める 師としての佐藤真
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優雅な生活が最高の復讐である|カルヴィン・トムキンズ, 青山 南(翻訳)
¥2,200
田畑書店 2022年 ポケットスタンダード ハードカバー 248ページ 文庫判 縦156mm 横113mm - 内容紹介 - 1920年代のフランスに信じ難いほど素敵な生活を営むアメリカ人夫婦がいた。 ジェラルド・マーフィとサラ、二人はパリからアンティーブへ生活の舞台を移し、近郊に住むアーティストや作家、たとえばピカソ、レジェ、コール・ポーター、ヘミングウェイ、フィッツジェラルドとゼルダ夫妻など時代を画する才能をもてなし、その創作活動に多大な影響を与えた。そしてマーフィ自身も画家だった。活動期間はたった8年間であったが、わずかな、しかし素晴らしい作品がMoMAに遺されている。 本書はこのマーフィ夫妻の生活を見事に掬い上げ、ノンフィクションの分野に金字塔を立てたカルヴィン・トムキンズのテキストに、70点近くの家族アルバムとジェラルドの絵画を加えた。 雑誌「ニューヨーカー」初出から60年を経て放つ歴史的名著の決定版! - 著者プロフィール - カルヴィン・トムキンズ (カルヴィン トムキンズ) (著/文) 1925年、ニュー・ジャージー州生まれ。48年、プリンストン大学卒業。雑誌「ニューヨーカー」のスタッフ・ライターとして活躍し、主にアート関係の文章を手がける。“カルチャー・シーン通”の異名を持ち、本書の他にも『マルセル・デュシャン』、『花嫁と独身者たち』、『ザ・シーン――ポスト・モダン・アート』などの著書がある。 青山 南 (アオヤマ ミナミ) (翻訳) 1949年、福島県生まれ。翻訳家、エッセイスト。訳書に、フィッツジェラルド『ゼルダ・フィッツジェラルド全作品』(共訳)、ケルアック『オン・ザ・ロード』、ディディオン『ベツレヘムに向け、身を屈めて』、ロス『ゴースト・ライター』など多数。著書に、『南の話』、『アメリカ短編小説興亡史』など多数。
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天才たちの日課 女性編 自由な彼女たちの必ずしも自由でない日常 | メイソン・カリー, 金原瑞人(翻訳), 石田文子(翻訳)
¥1,980
フィルムアート社 2019年 ソフトカバー 432ページ B6判 - 内容紹介 - 草間彌生、ピナ・バウシュ、フリーダ・カーロ、アリス・ウォーカー、ヴァージニア・ウルフ、エミリー・ディキンスン、マルグリット・デュラス、スーザン・ソンタグ、ミランダ・ジュライ── 女性の作家、画家、デザイナー、詩人、アーティストは、いかにして日々「制作」に向かい、「生活」と「仕事」 の折り合いをつけていたのか。 大ヒット作『天才たちの日課』第2弾! 創作に打ち込むクリエイティブな女性たち143人の、惚れ惚れするほど鮮やかな/とても真似できない(してはいけない)ほどユニークな/頭を抱えてしまうほど並外れた、その苦闘が胸に迫る143通りの驚くべき試行錯誤。 それぞれの人物を特徴づける日々の日課や毎日のスケジュール、「仕事のお供」の嗜好品などはもちろん、創作に適した精神状態の保ち方や、自信がなくなったときの対処の仕方、さらにはいかに自分自身の場所や時間を確保したか、偏見や差別をどう乗り越えたかなど、とても他人事とは思えない切実な状況の数々は現代を生きる私たちにも大きなヒントになるはずです。 窮屈で不自由な枠からはみ出そうと格闘するすべての才能あふれる人々に捧げられた、自由と勇気のための福音の書となる1冊! ◆「私は自分の経験のすべてを物語にすることと引き換えに、悪魔に魂を売ったの」イサク・ディーネセン(作家) ◆「大切なのは規律を守ること。とにかく仕事をやり続ける。そうしたら突然、なにかが湧いてくる──なにかちっぽけなものが。それがどう化けるかはわからない。でも、誰かが明かりをつけようとしているみたいに感じる。すると、また勇気が湧いてくる」ピナ・バウシュ(舞踊家) ◆「私は成功しなくてはならなかった。だから絶対に、絶対にあきらめなかった。バイオリニストにはバイオリンがあるし、画家ならパレットがある。でも私にあるのは私だけ」ジョーゼフィン・ベイカー(ダンサー・歌手) ◆「”休み”という言葉をきくと、不安になるの」ココ・シャネル(服飾デザイナー) ◆「書くことは自分を使い果たし、自分の命を危険にさらすこと」スーザン・ソンタグ(作家・批評家) ◆(スランプにおちいっている作家へ)「なにをしてもいいけど[……]誰かに電話したり、パーティーに行ったりするのはだめ。それをすると、見失った自分の言葉があるべき場所に、ほかの人の言葉が流れこんでくるから。自分の言葉のために隙間を開けて、場所を作る。そして辛抱強く待つ」ヒラリー・マンテル(作家) ◆「黒人の女性が作家の人生を選ぶには、向こう見ずな勇気と、真剣な目的と、文学への献身と、強い意志と、誠実さが必要だ。なぜなら黒人で女性の作家はつねに不利な立場に置かれるからだ。あらかじめ、勝ち目がないように仕組まれている。しかし、いったん賽が投げられたら、もうあとには引けない」マーガレット・ウォーカー(詩人・作家) ---------------------------------------------------------------------------------- 今回、女性だけにフォーカスを当てたことで明らかになったのは、どのようにインスピレーションを受けて創作に生かしたのかということや、常人には理解しがたい儀式めいた日々のルーティンよりも、もっと切実なことが女性にはあった、ということ――。 女性たちは、常に、生活(おもに家庭生活)からくる自分の場所や時間を確保できないという困難と、女性であるがゆえに受ける偏見や差別を乗り越えるという苦闘に、直面させられていた。本書に収録されている143人すべての女性たちの日課を見てみると、その先には、思いもかけないドラマチックな景色が広がっている。 女性が創作を仕事にするためにどれだけ格闘したのか、仕事を続けることがどれだけ困難だったのか。そしてそれはまだ現在進行形の問題といえるだろう。この本は、過去、現在そして未来の、ものをつくり、はたらき、生活していくすべての女性たちの姿を静かに照らしている。 前書きなど この本は2013年〔日本語版は2014年〕に刊行された『天才たちの日課 クリエイティブな人々の必ずしもクリエイティブでない日々(Daily Rituals: How Artists Work)』の続編であり補正版だ。前作では、作家や詩人、画家、作曲家、哲学者、その他の傑出した人々の日々の暮らしや仕事ぶりを簡単にまとめて紹介した。私はその出来に満足していたし、自分と同じように、創作の現場をのぞき見したいと思っていた人たちに読んでもらえてうれしかった。そういう人たちは、ベートーヴェンが朝のコーヒーのために豆をきっちり60粒数えていたことや、バレエの振付家のジョージ・バランシンがアイロンがけの最中に最高のアイデアを思いついていたことや、作家のマヤ・アンジェローが「小さくて質素な」ホテルの部屋で辞書や聖書やトランプやシェリー酒のボトルに囲まれて書いていたことを知っておもしろがってくれた。しかしこの本には、いま思えば、大きな欠陥があった。そこで取り上げた161人のうち、女性は27人しかいなかったのだ。割合にして17パーセント以下だ。 なぜ、これほど男女の比率にあからさまな差があるまま刊行してしまったのだろう。誰もが納得する言い訳があるわけではないが、前作で私が試みたのは、過去数百年の西洋文化圏で天才や偉人と呼ばれた人々の横顔(プロフィール)を紹介することだった。そしてそれを成功させるためには、「あの有名な天才がこんな平凡な日常を送っていた」という風に、イメージと実像のギャップを示すことが重要だと考えていた。そのために、西洋の有名な作家や画家やクラシック音楽家などに焦点を合わせた結果、残念ながら、対象となる人物の大半が男性になってしまったのだ。がんばって女性の話を見つけようと思わなかったことは、私の想像力が恐ろしく欠けていた証拠で、ほんとうに申し訳なく思っている。 そこで今回は、前作にみられた男女比のバランスの悪さを遅まきながら解消するとともに、私がもともともくろんでいたことをよりよく実現するために努力した。そのもくろみとは、単にインテリが好みそうな雑学情報を集めるだけでなく、読者にとって実際に役立つ本にしたいということだった。 (「はじめに」より抜粋) - 著者プロフィール - メイソン・カリー (メイソン カリー) (著/文) ペンシルベニア州ホーンズデール生まれ。ノースカロライナ大学アッシュビル校卒業。著書に、個人で運営していたブログ「Daily Routine」を元にした『Daily Rituals』(New York: Alfred A. Knopf, 2013)〔邦訳『天才たちの日課──クリエイティブな人々の必ずしもクリエイティブでない日々』フィルムアート社、2014年〕がある。ロザンゼルス在住。 金原瑞人 (カネハラ ミズヒト) (翻訳) 1954年岡山市生まれ。法政大学教授・翻訳家。訳書は児童書、ヤングアダルト小説、一般書、ノンフィクションなど550点以上。訳書にマコーリアン『不思議を売る男』、シアラー『青空のむこう』、グリーン『さよならを待つふたりのために』、ヴォネガット『国のない男』、モーム『月と六ペンス』、クールマン『リンドバーグ 空飛ぶネズミの大冒険』、サリンジャー『このサンドイッチ、マヨネーズ忘れてる ハプワース16、1924年』など。エッセイ集に『サリンジャーにマティーニを教わった』、日本の古典の翻案に『雨月物語』『仮名手本忠臣蔵』など。HPはhttp://www.kanehara.jp/ 石田文子 (イシダ フミコ) (翻訳) 1961年、大阪府生まれ。大阪大学人間科学部卒業。金原氏に師事して翻訳関係の仕事にたずさわる。訳書にドイル『シャーロック・ホームズの冒険』『名探偵シャーロック・ホームズ』、アーバイン『小説タンタンの冒険』、シアラー『スノー・ドーム』、ハプティー『オットーと空飛ぶふたご』、ローズ『ティモレオン』(共訳)、アームストロング『カナリーズソング』(共訳)、カリー『天才たちの日課』(共訳)、バーサド&エルダキン『文学効能事典』(共訳)などがある。京都府在住。
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天才たちの日課 クリエイティブな人々の必ずしもクリエイティブでない日々 | メイソン・カリー, 金原瑞人 (翻訳), 石田文子 (翻訳)
¥1,980
フィルムアート社 2016年 ソフトカバー 384ページ B6判 - インターン生 尾崎萌美さんによる紹介文 - 副題にある「クリエイティブな人々の必ずしもクリエイティブでない日々」という言葉に興味をそそられました。勝手に頭の中で歴史に名を残した・残している人は私たちとはかけ離れた考えの下生活をしていると思い込みがちです。しかし、彼らも私たちと同じで、ご飯を食べ、家族と過ごし、娯楽を楽しむのです。この本に書いてある日課は「朝起きて、仕事をするまで」だけではなく、まるである一日を区切っているかのように描いてくれています。例えるのなら、YouTubeで最近よく見かけるVlogの文字版のようなものではないでしょうか。 四六時中、数学のことばかり考えている数学者。ピアノは好きなのに作曲の時間を取ることのできないピアニスト。毎日毎日決まった時間に書く作家等々。本人たちは気づいていないかもしれませんが、きっとユーモアがあったに違いありません。自分とはかけ離れていると感じていた人が意外と身近に感じられます。もちろんその逆もあります。しかし、そういった方の自分の仕事へ捧げる情熱はより感じられるでしょう。本を読む時、音楽を聴く時に彼らの「日課」を思い出せば、作品から感じられるものは今までと全く違うものになるはずです。 いつの間にか毎日同じことをしていることがあるかもしれません。私は「ルーティーン」と「日課」は少し違うような気がしています。私の中での「ルーティーン」の位置づけは、「物事がうまくいくように行う儀式のようなもの」。しかし「日課」は「生活の一部」と考えています。それが無ければその日一日の生活のリズムが崩れてしまう。これは正しい解釈ではないかもしれませんが、二つを区別するためにこのように分けています。 「今から読書をしよう!」と意気込むよりも、好奇心を持ち楽しみながら読むことをお勧めしたいと思います。
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小川洋子のつくり方 | 田畑書店編集部
¥2,200
田畑書店 2021年 ソフトカバー 248ページ A5変型判 縦200mm 横148mm 厚さ18mm - 内容紹介 - 世界に認められる小川洋子の文学はどのようにつくられてきたか――全米図書賞、ブッカー賞国際部門など世界的に権威のある賞の最終候補に軒並み上がる小川洋子の文学。 海外での小川文学の受容のされ方から、デビューから三十年以上にわたる創作の秘密と、その全貌を紹介する。 また、巻頭には昨年8月にニューヨーク・タイムズ誌に掲載されたエッセイ、ヒロシマ・ナガサキ、オリンピックなど今の日本にとって重要なテーマを名文で描いた「死者の声を運ぶ小舟」を原文+英語訳で収録する。 目次 第1章 死者の声を運ぶ小舟 死者の声を運ぶ小舟 小川洋子 How We Retain the Memory of Japan’s Atomic Bombings:Books (Written by Yoko Ogawa / Translated by Stephen Snyder ) 第2章 世界は小川洋子の文学をどう受容したか 世界のジャーナリズムが注目した小川洋子の文学 田畑書店編集部 海外で出版された小川洋子の作品たち 第3章 フランス語圏の小川洋子 ブリュッセル (en Passa Porta) パリ (en La Maison de la Poesie) トゥルーズ (en Librairie Ombres Blanches) 第4章 インタヴューズ 有限な盤上に広がる無限の宇宙〈インタヴュアー〉 堀江敏幸 なにかがあった。いまはない。〈インタヴュアー〉 千野帽子 第5章 小川洋子のつくり方 小説の生まれる場所 (於: 関西大学) 小説の不思議 (於: 大阪文学学校) 私が新人作家だった頃 (於: 大阪芸術大学) 第6章 全作品解説 神田法子 あとがき 小川洋子