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現代思想2024年10月号 特集=〈人種〉を考える -制度的レイシズム・人種資本主義・ホワイトネス…-
¥1,760
青土社 2024年 ソフトカバー - 内容紹介 - 何がわたしたちを分け隔てているのか ヘイトクライムの横行や排外主義的政策の高まりをうけて、人種主義の問題が改めて切実に語られるいま、われわれは〈人種〉という概念にどう向き合えばよいのか。批判的人種理論や人種資本主義などの議論を踏まえつつ、無視するのでも本質化するのでもないかたちで〈人種〉についてさまざまな視座から考える。 line2.gif [目次] 特集*〈人種〉を考える――制度的レイシズム・人種資本主義・ホワイトネス… 【討議】 シシュポスの岩を押す――〈人種〉の諸相とその理論 / 竹沢泰子+梁英聖 【概念の来歴】 人種の構築――存在の様態と歴史――啓蒙期から第一次世界大戦まで / 李孝徳 人種概念構築の歴史と生物人類学における頭蓋骨多様性研究の進展 ./ 瀬口典子 人種の後――民族誌、人種、ポスト人種理論 / アヌープ・ナイアック(訳=諸岡友真/解題=新田啓子) 「人種主義」概念は拡大されなければならない――旧優生保護法違憲判決とイタリア南部問題から / 谷本純一 人種資本主義の世界史という射程 / 貴堂嘉之 【この場所から考える】 批判的人種理論の積極的活用――日本法への適用可能性について / 藤井正希 日本のなかの人種概念を探究するために――血統の問題と身体の問題 / 有賀ゆうアニース 日本で人種的マジョリティであること――「日本人性」の批判的現象学の試み / 小手川正二郎 和人の脆弱性について / 東村岳史 【いま何が起こっているのか】 ブラック・ライヴズ・マター運動へのバックラッシュ――二〇二〇年以後のシアトルから / 小山エミ 【システムという問い】 「その他の人種」の歴史と現在――センサスからみるアメリカの「人種」 / 菅(七戸)美弥 二〇世紀初頭アメリカ南部の人種状況と「忖度」する公衆衛生 / 平体由美 アメリカ史のなかの白人性とジェンダー・セクシュアリティ / 兼子歩 旧英領カリブ海地域の「白人」たち / 伊藤みちる 人種差別をリデザインする――ニューヨーク・ハーレムのストリートにおける「人種」概念の観察から/ 中村寛 【絡みあういくつもの線】 伊江島の黒人についてのノート / 榎本空 人種のパフォーマティヴィティ――ネラ・ラーセン『パッシング』を読むジュディス・バトラー / 五十嵐舞 普遍人という夢――人種と人類種の二〇世紀アメリカ / 逆卷しとね 【連載●科学者の散歩道●第一〇六回】 原子爆弾完成後の去就をめぐって――ボーアの「科学者共同体」 / 佐藤文隆 【連載●社会は生きている●第二六回】 社会と自我 2――多細胞生物がつくる種社会 / 山下祐介 【連載●現代日本哲学史試論●第一〇回】 理論を経由し、理論の外へ――鷲田清一と中岡成文、そして村上靖彦 / 山口尚 【研究手帖】 先入観を疑えるか / 髙橋香苗
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翻訳をジェンダーする | 古川 弘子
¥990
筑摩書房 2024年 ちくまプリマー新書 ソフトカバー 256ページ 新書判 - 内容紹介 - 翻訳された言葉には必ずわたし達の社会があらわれ、 そして翻訳されたものは社会に影響を与える。 翻訳小説の女性達は原文以上に「女らしい」言葉で訳されていることがあります。翻訳と社会とわたし達の密接な関係を読みとき、性差別をなくすための翻訳、社会に抗する翻訳の可能性を探る一冊。 「はじめに」より一部抜粋 翻訳には、それまでにあった古い考えにとらわれない、新しい言葉を生み出す可能性があります。そして、社会の中に存在しなかったり、埋もれたりしている概念を言葉によって「見える化」したり、それまでの偏った見方を変えたりする力があります。 - 目次 - 【目次(一部)】 はじめに 『プラダを着た悪魔』の主人公はどんな話し方をする? 「ハリー・ポッター」のハーマイオニーには友だちがいない? 小説はフィクション、わたしたちはリアルな存在 [……] 第一章 小説の女たちはどう翻訳されてきたのか 日本語への翻訳とジェンダー 日本語の女ことばと男ことば 翻訳の中の女性はもっとも典型的な女ことばを話す? 翻訳小説の女性の話し方vs現実の女性の話し方 児童文学ではどうなる? 児童文学は保守的。児童文学の翻訳はもっと保守的。 翻訳者が再現しようとすること 汚いとされる表現にも意味がある [……] 第二章 女たちのために自分たちで翻訳する 一九七〇・八〇年代に、自分でいる力をくれた翻訳があった 女性の健康のバイブル『Our Bodies, Ourselves』 わたしのからだは自分のもの。自分のからだをよく知ろう。 自分を大切に生きる権利は、みんなにある 『Our Bodies, Ourselves』の時代―個人的なことは政治的なこと 『女のからだ』の時代―ウーマン・リブ 『からだ・私たち自身』の時代―ウーマン・リブからフェミニズムへ フェミニスト翻訳の三つの具体的な方法 『女のからだ』のフェミニスト翻訳の方法 『からだ・私たち自身』のフェミニスト翻訳の方法 [……] 第三章 これからのために翻訳ができること これから考えられる三つの変化 ①一律の女らしさから、それぞれの個性へ ②ネガティブなイメージのない性器の名称へ ③「彼」と「彼女」だけでなく、インクルーシブな代名詞を - 著者プロフィール - 古川 弘子 (フルカワ ヒロコ) (本文) 東北学院大学国際学部教授。早稲田大学政治経済学部卒業後、出版社で雑誌編集と書籍編集に携わったのち、2011年に英国イースト・アングリア大学で博士課程を修了(Ph.D. in Literary Translation)。同大学でのポストドクターを経て2012年より東北学院大学に勤務。主にジェンダーの視点による文学翻訳研究を行っている。共編著書に『The Palgrave Handbook of Literary Translation』(Palgrave Macmillan 2018)、共著書に『Tsuji, Interpreters in and Around Early Modern Japan』(Palgrave Macmillan 2023)、『Translating Women』(Routledge 2017)などがある。
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辺境のラッパーたち 立ち上がる「声の民族誌」 | 島村一平(編集)
¥3,520
青土社 2024年 ソフトカバー 544ページ 四六判 - 内容紹介 - ラッパーのことばに耳をすませば、世界のリアルが見えてくる。 戦火が絶えないガザやウクライナで、弾圧が続くチベットやイランで、格差にあえぐモンゴルやインドで、海の端の日本で――。アメリカで生まれたヒップホップ文化、なかでもラップミュージックは世界に広がり、「辺境」に生きる者たちは声なき声をリリックに託す。現代社会の歪みを鮮やかに映し出す、世界各地のラッパーたちの声を幅広い執筆陣が紹介する。ラッパー、ダースレイダー、ハンガー(GAGLE)のインタビューも収録。
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ストリートの思想 増補新版 | 毛利 嘉孝
¥990
筑摩書房 2024年 ちくま文庫 ソフトカバー 368ページ 文庫判 - 内容紹介 - イデオロギーによる旧来の党派的「動員」とは異なる、自律性を帯びた資本/権力への抵抗運動はどのように現れたのか? パンクやニューウェイヴなど80年代のインディーズ文化を源流とし、90年代のサウンドデモや「素人の乱」を経て、3.11後の反原発・反政府・反グローバル資本主義デモへといたる地下水脈を読み解くオルタナティヴ思想史。2010?20年代の動きを増補して文庫化。 - 目次 - 序 章 「ストリートの思想」とは何か 五月の祝祭/「政治」という領域の変容/「ゴリゴリの左翼」?/「左翼」の敗北/伝統的な左翼知識人の終焉/「左翼的なもの」から「ストリート」へ/「ストリートの思想」をめぐるマトリクス/ストリート的イメージとオタク的思想 ロスジェネ論壇との違い/本書の構成 第一章 前史としての80年代――「社会の分断」とポストモダン ガタリ来日/山谷を歩くガタリ/山谷からシモキタへ/八〇年代は「スカ」だったのか? 増殖する八〇年代論/当事者でもなく、観察者でもなく/ポストモダン思想からニューアカデミズムへ/人文学の危機/脱政治化されたポストモダン理論/「愚鈍な左翼」と「ポストモダニスト」/フォーディズムからポスト・フォーディズムへ/「政治」から「サブカルチャー」へ/パンクロックとDiY的インディーズ文化/時間と空間の圧縮/サカエのつぶやき/EP-4とじゃがたら/ストリートを乗っ取るEP-4/サブカルチャーのシチュアシオニスト的実践/寿町のフリーコンサート/対抗的ダンスカルチャー/坂本龍一とインディーズシーン/田中康夫の戦略/新・階層消費の時代と対抗的な実践/でも・デモ・DEMO 第二章 90年代の転換①――知の再編成 制度化されるポストモダニズム/大学における人文知の再編/湾岸戦争への反対声明/公的知識人の変貌/オウム真理教事件/社会工学的な知の台頭/思想や政治のエンターテインメント化/イギリス留学の準備/「カルチュラル・スタディーズ」との出会い/文化研究の三つの流れ/英米の文化研究の発展と制度化/文化研究のグローバル化とローカル化/「カルチュラル・スタディーズ」と「文化研究」/シンポジウム「カルチュラル・スタディーズとの対話」/ラディカルを飼い慣らす/輸出産業としての「カルチュラル・スタディーズ」/人文学と地域研究への影響/ポストモダン思想の再評価/カルチュラル・タイフーン 第三章 90年代の転換②――大学からストリートへ 「フリーター的なもの」と九〇年代/「いのけん」の登場/交錯点としての代々木公園 公共圏の変容/「ストリートの思想」の胎動/転換期としての九五年/橋本政権「六大改革」/新宿ダンボールハウス村/「寄せ場」化する日本/集合的表現の始まり/『現代思想』の「ストリート・カルチャー」特集/「だめ連」的なものの登場 第四章 ストリートを取り戻せ!――ゼロ年代の政治運動 〈帝国〉の時代/低迷する左派論壇/イラク反戦運動と「ストリートの思想家」/シアトルの反WTO運動/プロレタリアートからマルチチュードへ/「生権力」への対抗運動/同時多発的で前衛なき運動/「言うこと聞くよな奴らじゃないぞ」/言語的公共圏の転回/起源としてのパンク/ニューウェイヴ/ネットとストリートの器用仕事人/文化人類学へのポストモダン的問い/「なりそこないの文化人類学者」の試み/祝祭から再び日常へ 「素人の乱」と日常的な実践/日常を祝祭空間に変える/お笑いへの感性/SAVE the 下北沢/街を防衛する/「ストリート」を支える情報インフラ/ゆるやかに開かれたコミュニティ 第五章 抵抗するフリーター世代――10年代に向けて 年越し派遣村とメディア報道/湯浅誠の軌跡/246表現者会議/渋谷・宮下公園の有料化計画/キャッチコピーは〈JUST DOITE?〉/「ストリートの思想」とロストジェネレーション/赤木智弘の左翼批判/ロスジェネ論客の共通点/唯一の「敵」を名指すこと/階級・世代を超えた開放性/「ポッセ」の力/ストリート、自由、自律、そしてアート 増補 ストリートの思想二〇二四 群衆の時代としての二〇一〇年代/「素人の乱」からSEALDs へ/東アジアの「群衆の政治」の広がり/「群衆の政治」の終わり?/「群衆の政治」の変容/プロテスト・レイヴとパレスチナ支援運動/抗議運動の多様化──ウォーターメロン・アライアンス/さらに多様化する社会運動のアクター/グローバル化する「素人の乱」/マヌケが世界を変える?/アジアのなかの松本哉/トランスナショナルな交流の場の創出──なんとかBAR、マヌケ宿泊所、NO LIMIT/版画を通じた東アジアのネットワークの広がり──IRAとA3BC/二〇二四年の「だめ連」/地方へ/都市を離れて/隙間を失いつつある東京 /「ストリートの思想」はどこにいくのか? 「ストリートの思想」を知るためのブックガイド - 著者プロフィール - 毛利 嘉孝 (モウリ ヨシタカ) (本文) 毛利 嘉孝(もうり・よしたか):1963年長崎県生まれ。専攻は、社会学・文化研究・メディア論。京都大学経済学部卒業。ロンドン大学ゴールドスミス・カレッジにてPh.D.(sociology)を取得。九州大学助教授などを経て、現在、東京藝術大学大学院国際芸術創造研究科教授。主な著書に、『文化=政治』(月曜社)、『ポピュラー音楽と資本主義 増補』(せりか書房)、『バンクシー』(光文社新書)がある。
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【バーゲンブック】憲法の条件 戦後70年から考える | 大澤 真幸, 木村 草太
¥500
NHK出版 2015年 NHK出版新書 ソフトカバー 286ページ 新書判 バーゲンブック: 定価よりも値引して販売することのできる新品の本です。新品とはいえ、経年による劣化などが見られる場合もございますので、ご理解の上ご購入くださいませ。 - 商品紹介 - 戦後70年、日本人は憲法を本当の意味で「自分たちのもの」としてきただろうか。集団的自衛権行使をめぐる解釈改憲を機に、社会学者と憲法学者が世代を超えて白熱の議論を展開。「法の支配」が実現する条件や、ヘイトスピーチ問題が社会に投げかけるもの、そして民主主義の要である議会がなぜ空転するのかを真正面から考える。私たちの覚語を問い、未来を展望する一冊。
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【バーゲンブック】差別の近現代史 人権を考えなおす | 塩見 鮮一郎
¥450
河出書房新社 2020年 河出文庫 ソフトカバー 178ページ 文庫判 バーゲンブック: 定価よりも値引して販売することのできる新品の本です。新品とはいえ、経年による劣化などが見られる場合もございますので、ご理解の上ご購入くださいませ。 - 商品紹介 - 人が人を差別するのはなぜか。どうしてこの現代にもなくならないのか。近代以降、欧米列強の支配を強く受けた、幕末以降の日本を中心に、50余のQ&A方式でわかりやすく考えなおす。
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帝国主義と闘った14人の朝鮮フェミニストー独立運動を描きなおす | 尹錫男(画), 金伊京(著), 宋連玉(訳), 金美恵(訳)
¥2,750
花束書房 2024年 ソフトカバー 268ページ A5判 縦210mm 横148mm 厚さ16mm - 内容紹介 - “私たちの敵は日本帝国主義と家父長制であり、私たちの目標は、その二重の抑圧に呻吟する朝鮮女性を解放することだった” 独立運動を闘った多彩な朝鮮女性を、韓国フェミニズムアートの第一人者 ・尹錫男(ユン・ソンナム)と作家・金伊京(キム・イギョン)が、圧倒的な読み 応えでよみがえらせた歴史ノンフィクション。信念を曲げず、真の自由を切望した女性たちの言葉とあゆみは、何度も運動としてよみがえり、社会を変えてきました。 いまの私たちと地続きの性差別と闘った姿にもぜひご注目ください。韓国フェミニズムのルーツともいえる歴史を知って、植民地主義とフェミニズムの関係を考えてみませんか。 - 目次 - 【世に叫ぶ】 お前は英雄だ―金マリア/乙密台で叫ぶ―姜周龍/大胆な女人―鄭靖和 天才、革命を夢見る―朴鎮洪/過激な看護師―朴慈恵/激しい波として立ち上がる―金玉連/ドキュメンタリー「忘れられた革命家を訪ねて」―丁七星 【戦線に立つ】 血書―南慈賢/日帝に爆弾を投げる―安敬信/シベリアの赤い伝説―キム・アレクサンドラ/祖国のために空を飛ぶ―権基玉/将軍のために―金命時/ペンの代わりに銃を取りて―朴次貞/春実、東海、華林、三つの名前で生きる―李華林 - 版元から一言 - 韓国のフェミニズムアートの第一人者・尹錫男が、女性の肖像画が極端に少ないことに着目して肖像画シリーズに着手、そこから生まれたのが女性独立運動家を描く本書です。14人それぞれに異なる叙述方式からは、女性たちと運動への敬意が満ちあふれ、社会を変える力となってきたことが伝わる1冊となっています。 女性による独立運動と、解放、そしてその後の困難で複雑な近現代史。本書では、2021年に韓国版が刊行されてから見つかった資料や事実(評価)をもとに、一部記述・作品を描き(書き)下ろしで追加。目の前の現実、いまの私たちとも地続きの歴史と女性たちの「顔」を、ぜひ知ってください。 - 著者プロフィール - 尹錫男 (ユンソンナム) (画) 1939年、満洲で生まれ1944年に帰国した。主婦として生活していたが40歳のときに自 身の母親を描いて画家となった。その後、40年あまりは温かく強靭な母性と女性の力を探求する作品活動を続けてきた。インスタレーションと彫刻、絵画を行き来しながら国内外で多数の個展、グループ展示に参加。英国のテート・ギャラリーをはじめとした世界各国の著名美術館に作品が所蔵されている。数年前からは韓国画を基盤とする肖像画作業に邁進しており、この本はその結実の一つである。『多情で、多情な、タジョンさん』『キム・スンヒとユン・ソンナムの女性の話』(いずれも未邦訳)など多数の著作がある。 金伊京 (キム・イギョン) (著) 大学と大学院で歴史学を専攻し、「植民地時代の民族統一戦線運動」で学位論文を執筆。文学が好きで放送大学に編入し英文学を勉強した。時間・死・本(知識)など人生が投げかける問いをテーマとして勉強し文章を書いてきた。最近ではフェミニズムと韓国現代史の人物に関心があり勉強を続けている。小説作品集『生きている図書館』をはじめ、エッセイ『哀悼の文章たち』『詩を詠む方法』『本を食べる方法』『詩の文章たち』、書評集『魔女の読書処方』、絵本『仁寺洞にいく道』(いずれも未邦訳)など多数の著作がある。 宋連玉 (ソン・ヨノク) (訳) 帝国の言説に消された朝鮮女性の姿を蘇生させたい思いで研究活動をしてきました。その結果、朝鮮の家父長制が植民地主義と深く関わっているという結論に達しました。いまもなお自身に深く内面化している植民地主義的規範と闘っています。青山学院大学名誉教授、文化センター・アリラン館長。主著『脱帝国のフェミニズムを求めて』(有志舎、2009年)、『植民地「公娼制」に帝国の性政治をみる』(有志舎、2023年)。 金美恵 (キム・ミヘ) (訳) 大学で哲学、大学院で国際関係学、朝鮮現代史を学びつつ、朝鮮半島の分断と統一に関心を持ち、おもに解放後の統一戦線について学んだ。朝鮮戦争時に捕虜となった女性パルチザンについて研究をしたかったが、紆余曲折を経て現在は、沖縄に生きた朝鮮人の歴史について調査研究している。共訳書に『現代朝鮮の悲劇の政治指導者たち』(徐仲錫著、明石書店、2007年)、『朝鮮戦争の社会史:避難・占領・虐殺』(金東椿著、平凡社、2008年)、『記憶で書き直す歴史「慰安婦」』(韓国挺身隊問題対策協議会・二〇〇〇年女性国際戦犯法廷証言チーム著、岩波書店、2020年)などがある。
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九月はもっとも残酷な月 | 森 達也
¥1,980
SOLD OUT
ミツイパブリッシング 2024年 ソフトカバー 四六判 - 内容紹介 - 映画「福田村事件」監督の最新時評集。関東大震災後に起きた朝鮮人虐殺を見つめ、ウクライナやガザに煩悶する。「〈僕〉や〈私〉の一人称が、〈我々〉〈国家〉などの大きな主語に置き換わるとき、人や優しいままで限りなく残虐になれる」と著者は言う。映画公開前後の日々から独自の映像創作論、初めて福田村事件をとりあげた伝説のエッセー「ただこの事実を直視しよう」も収録。その他、入管法やイスラエル・パレスチナ問題、東アジア反日武装戦線など、時事ニュースの奥に潜む社会の核心に食らいつく。 - 目次 - Ⅰ 忘れられた加害と想像力 ただこの事実を直視しよう 大量虐殺のメカニズム 映画は観た人のものになる 表現は引き算だ 高野山の夜 忘れられた加害 反日映画の条件 一年ぶりの釜山 オウム以降と親鸞 北京国際映画祭 Ⅱ リアリティとフィクションの狭間で 嫌な奴だと思っていたら嫌な奴に編集できる 天皇小説 テレビに場外ホームランはいらない 「テロ」の定義 三人の兵士たち 『オッペンハイマー』は観るに値しない映画なのか Ⅲ ニュースは消えても現実は続く 事件翌日の夜に 危機管理に目を奪われて転倒 世論とメディアの相互作用 入管法改正前夜 ピースボートは社会の縮図だ イスラエル・パレスチナ問題を考える すぐに消える大ニュース コロナから裏金まで 世界はグラデーションだ 地下鉄サリン事件は終わっていない 「味方をしてくれというつもりはない」 パレスチナ難民キャンプ パレスチナと愛国心 Ⅳ 無限の自分を想像すると少しだけ楽になる くすぶり続けるもの 『いちご白書』 平壌から 自由か安全か 多世界を思う 死刑囚になった夢の話 修業時代 ティッピング・ポイント 北朝鮮ミサイル発射! 桐島、活動やめたってよ ゴッド・ブレス・アメリカ - 前書きなど - 二〇〇二年、関東大震災時に福田村(現在の千葉県野田市)で起きた惨劇を僕は知った。当時はまだテレビの仕事もしていたから、一五分ほどの報道番組の特集枠ならば放送できるだろうかと考えた。でも結局、テレビではこの企画に同意してくれるプロデューサーは見つからなかった。だから翌年に刊行された『世界はもっと豊かだし、人はもっと優しい』(晶文社)に、福田村事件について書いた「ただこの事実を直視しよう」を収録し、この本は二〇〇八年に筑摩書房で文庫化された。 ドキュメンタリー映画『FAKE』を発表した二〇一六年、次はドラマを撮りたいと僕は考えた。そのときに思いついた企画のひとつが福田村事件だ。ドキュメンタリー映画として成立させるためには資料も証言者も乏しすぎるが、ドラマなら可能だと考えたのだ。 (中略) 予想はしていたけれど今年の夏は暑い。暑いじゃなくて熱い。子どものころから夏が大好きで暑ければ暑いほど口もとが弛み秋の始まりには軽い鬱になるほどに夏が好きな僕も、炎天下で往来を歩きながら「さすがにこれは……」と思わず吐息が洩れるほどに熱い。 でも季節は巡る。九月一日になれば、映画『福田村事件』の公開から一年が過ぎることになる。震災後に虐殺された朝鮮人たちへの追悼文を頑なに拒否し続ける小池都知事は再選を果たし、アメリカ大統領選ではバイデンはついに撤退を宣言して「もしトラ」は「ほぼトラ」へとギアを換え、イスラエル国軍によるガザ地区の常軌を逸した殺戮も、ロシアによるウクライナへの攻撃もミャンマーの内戦も終わる兆しがなく、北朝鮮は脅えた犬のように周囲を威嚇し続け、中国の覇権主義はさらに膨張し、移民問題を契機としたヨーロッパの右傾化は現在進行形で加速し、シリアやイエメンやリビアの内戦も終わる気配がない一年だったけれど、でも希望は決して途絶えない。 時おり言われる。これほどに殺伐とした世界なのに、なぜ「世界はもっと豊かだし、人はもっと優しい」とおまえは言えるのかと。わかってるよそんなこと。だからこそ言い続ける。世界はもっと豊かなはずだし、人はもっと優しいはずなのだ。 前に進む。正しい方向に進む。そのために過去を忘れない。だから心に刻む。血と涙で溢れた一〇一年前の残酷な九月のことを。 - 著者プロフィール - 森達也 (モリ タツヤ) (著/文) 1956年広島県生まれ。映画監督・作家。98年、ドキュメンタリー映画『A』を公開。2001年、続編『A2』で山形国際ドキュメンタリー映画祭特別賞・市民賞。2023年、劇映画『福田村事件』で釜山国際映画祭ニューカレンツ賞を受賞。著書に『放送禁止歌』『死刑』『A3』(講談社ノンフィクション賞)、『いのちの食べかた』『フェイクニュースがあふれる世界に生きる君たちへ』『ぼくらの時代の罪と罰』『千代田区一番一号のラビリンス』『虐殺のスイッチ』他多数。
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結婚差別の社会学 | 齋藤 直子
¥2,200
SOLD OUT
勁草書房 2017年 ハードカバー 312ページ 四六判 - 内容紹介 - 被差別部落出身者との恋愛や結婚を、出自を理由に反対する「結婚差別」。部落出身者との結婚をめぐる家族間の対立、交渉、破局、和解などのプロセスを、膨大な聞き取りデータの分析から明らかに。同時に、結婚差別の相談・支援活動の事例から「乗り越え方」のヒントを探る。部落差別の根本問題を徹底的に調査研究した画期的な成果。 - -目次 はじめに 第1章 部落問題とは何か 1 部落問題とは何か・部落出身者とは誰か 2 部落差別はもうない!? 3 近年の部落差別事象 第2章 結婚差別はどのように分析されてきたか 1 結婚差別の膨大な記録 2 部落(同和)問題をめぐる意識調査・実態調査 3 二〇〇〇年代以降の研究 4 配偶者選択論と結婚差別 第3章 結婚差別のプロセス 1 ひとつの事例から 2 結婚差別問題のプロセスで起こること 3 調査の概要 第4章 うちあけ 1 うちあけるか、うちあけないか 2 うちあけしなかったケース 3 うちあけしたケース 4 恋愛差別 5 部落出身同士 6 うちあけへの対処 第5章 親の反対 1 結婚差別と親 2 ひとつの事例から 3 反対を受けなかったケース 4 親の反対と交際の破局 5 反対する親と縁を切る 6 結婚に反対する理由 7 親子仲は強まっているのか 第6章 カップルによる親の説得 1 強い反対にどう対抗していくのか 2 熱意 3 人柄 4 既成事実をつくる 5 「縁切り」をする・ほのめかす 6 弱いが粘り強く 第7章 親による条件付与 1 消極的な容認 2 栄さんのケース 3 条件の類型 4 条件付与にいたるさまざまなルート 第8章 結婚差別問題では何が争われているのか 1 祝福をめぐる攻防 2 「祝福」は不必要か 3 「親戚」「世間」の効力 4 「脱部落化」と「忌避の合理化」 5 もちこされる差別 第9章 結婚後差別 1 家庭内での差別 2 「結婚後差別」のひとつのケース 3 結婚後に出身が明らかになったケース 4 「非告知」という条件の維持 5 忌避の継続 6 親の態度変容の可能性 7 家族関係の安定と不安定 第10章 支援 1 親との関係をどう考えるか 2 支援の多様性を 3 耳を傾けて、本人が決める 4 部落問題と向き合う 5 心理的なケア 6 その後をみすえた支援を 7 人をつなぐ おわりに 参考文献 索引 - 著者プロフィール - 齋藤 直子 (サイトウ ナオコ) (著/文) 1973年生まれ。大阪市立大学人権問題研究センター特任准教授。2006年, 奈良女子大学大学院人間文化研究科単位取得退学。博士(学術)。専門:部落問題研究, 家族社会学。主な著作・論文:「結婚差別問題と家族」永田夏来・松木洋人編 『入門 家族社会学』(新泉社, 2017), 「都市型被差別部落への転入と定着――A地区実態調査から」大阪市立大学人権問題研究センター『人権問題研究』第10号, 2010など。
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悪口論 脅しと嘲笑に対抗する技術 | 小峰 ひずみ
¥2,640
百万年書房 2024年 ソフトカバー 248ページ 四六判 縦128mm 横188mm 厚さ17mm - 内容紹介 - 私たちは社会を賢くしなければならないのであって、あなたが賢くなる必要はない。 『平成転向論 SEALDs 鷲田清一 谷川雁』著者が、哲学対話をきっかけに考えた「悪口」という戦術。 - 目次 - 第一章 感情論 Ⅰ 男根主義 Ⅱ 感情 Ⅲ 連帯 Ⅳ 力 Ⅴ 問題 第二章 悪口論 Ⅰ 職場で Ⅱ 政治運動で Ⅲ 悪口 Ⅳ 狂信者 Ⅴ レーニン 第三章 (生き)恥論 Ⅰ 恥 Ⅱ 罵倒 Ⅲ 仲間 Ⅳ 死 Ⅴ 裏切り 第四章 言行論 Ⅰ シェアハウス Ⅱ シニシズム Ⅲ 技術 Ⅳ 臨床哲学 第五章 何をいかに受け継ぐべきか Ⅰ 対話 Ⅱ 嘲笑 Ⅲ 社会 Ⅳ 物語 Ⅴ 誰でも、いつでも、どこでも Ⅵ ブーメラン 悪口論--脅しと嘲笑に対抗する技術 注釈 - 版元から一言 - 恐怖と安堵のあわいで生き恥を晒し、資本主義に悪酔いしながらも負け組の積極財政派として欲望を仕分けせずに生きていくということ。なんたる難題。だけど、誠実すぎる言葉がここには無数にある。 作家・活動家 雨宮 処凛 権力の脅しに慣れきった民衆。民主主義や反資本主義を唱えるが自らは行動しない大学人。本書は彼らの喉元に鋭い刃を突きつける。政治的指導者観を一新したマキャヴェリ『君主論』を連想させる、新しい「市民論」。 西洋史学者 将基面 貴巳 学生運動が消えた阪大で鷲田清一に憧れて哲学カフェする連中を憎んだ。でも、僕は何もしなかった。小峰ひずみは臨床哲学を変異させて活動家になった。何をなすべき(だった)か。実践で実践を教える実践書だ。 文筆家 綿野恵太 著者が、本書で、自らの半生をかように身も蓋もなく開示するのは、「あなたも書ける」と知らせるためだ。いかに他者の知を継承し、いかにこれを手渡すか、聞く耳をもたせるか、体を向かわせるか、そのために言葉は綴られる。「あなたも書ける」と言い切ることにすべてを懸ける。その気概に、しっかりと打たれてしまった。 彫刻家・評論家 小田原のどか 分断の時代だといわれる。だから、ケアや「推し」で他人をいたわるのが美徳だと思われている。誹謗中傷などもってのほか。が、分断がなければ連帯なく、断橋がなければ架橋はない。対立の力を熾烈な交流へと変換する谷川雁の工作者の精神は哲学対話にひきつがれていた。本書を読んで、私は小峰ひずみと対話したいとまったく思わなかったが、小峰はそんなことお構いなしに語りかける。うっぜ。しかし、そのうざさのなかでこそ悪口は悪口の技術を獲得するのだ。悪口をやめるのではなく、悪口の技術を学ぶ道を採るとき、政治運動はすべての人にその門戸を開く。 在野研究者 荒木優太 悪口上等、ぶつかってナンボ。「正しさ」に縛られ、物申す手段は投票しかないと刷り込まれた私たちの横っ面を、本書は叩(はた)く。生身の人と人とが散らす火花からだけ、この沈鬱とした社会を変えうる狼煙は上がるのだ。 ノンフィクション作家 藤原賢吾 社会に絶望したふりをして絶望しきれずにいる私たちに、いま必要なのは運動の「技術」なのだと思う。「そうだそうだ」と「それはどうだろう」の先に「じゃあどうする?」を突きつける実践の書。 新聞記者 滝沢文那 罵倒語を豊かにしたいと考えてきたのでわが意を得るところが少なくない。若いといってももう三十路の書き手だから当然と言えば当然だが、文章は平明で、ポレミークの運びは緻密で周到で戦略的だ。その<戦略>は過剰なまでにスリリングである。「活動家」には論理の不備を衝く「知識人」として挑発し、「知識人」には「知識人は味方のような敵だ」と、「活動家」の立場で威圧する。『平成転向論』同様、共感と敵対を無数に組織する<技術>は端倪すべからざるものだ。 批評家 菅孝行 批評と運動の二刀流、「知の大谷翔平」こと小峰ひずみに瞠目せよ! 本書は世界とあなたの未来を、劇的に変革する。必読‼︎ 作家/アイドル評論家 中森明夫 どれほどくだらない運動も(あ、「悪口」を云ってしまった)何か良きものを生み出す可能性を秘めている。80年代後半の土井社会党ブームは私を生み出したが、“2015年安保www”(あ、「嘲笑」してしまった)は小峰ひずみを生み出したようだ。 革命家 外山恒一 - 著者プロフィール - 小峰 ひずみ (コミネ ヒズミ) (著) 大阪府生。大阪大学文学部卒。 第65回群像新人評論賞で「平成転向論 鷲田清一をめぐって」が優秀作に選出される。著書に『平成転向論 SEALDs 鷲田清一 谷川雁』(講談社)。論考に「大阪(弁)の反逆 お笑いとポピュリズム」(『群像』2023年3月号)、「人民武装論 RHYMESTERを中心に」(『ことばと vol.6』)、「平成世代が描く左翼像」(『中央公論』2022年10月号)、「議会戦術論――安倍晋三の答弁を論ず」(『群像』2024年7月号)、座談会に「戦術談義 運動の技術/現場の工夫」(『情況』2024年春号)。
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有害な男性のふるまい 進化で読み解くハラスメントの起源 | デヴィッド・M・バス, 加藤 智子(翻訳)
¥3,520
草思社 2024年 ソフトカバー 448ページ 四六判 - 内容紹介 - セクハラ、モラハラ、性的暴力、マッチングアプリでの出会い… なぜ人類のすべてが性的葛藤と闘わなければならないのか。 そこには、「男女で異なる性戦略をとってきた」という、 生物としての深い進化の歴史が関係していた。 進化生物学の観点から男女の性的対立の根源を明らかにし、 社会科学や家父長制の研究の上に新たな知見を加え、 男女の調和の道を探る、画期的書籍! ◆各界絶賛!◆ 「セクシャル・ハラスメントや性的暴力、ごく普通な夫婦間の不幸を、デヴィッド・バスの進化論的レンズなしに理解し減らそうとするのは、細菌理論なしに伝染病を理解し、撲滅しようとするようなものだ」 ジョナサン・ハイト(『社会はなぜ左と右にわかれるのか』) 「性的な攻撃に対する社会的関心は道徳的に大きな進歩であるが、我々の知的文化は、科学、常識、生活経験に反する神話や教義に執着しており、それを理解しようとする試みに躓いている。人間の性的衝突の世界的専門家たるデヴィッド・バスは、魅力的でタイムリーな本書でこれらを整理し、私たちがこれらの弊害を理解し、最小限に抑えるためのよりよい方法を身につける手助けをしてくれる」 スティーブン・ピンカー(『21世紀の啓蒙』) 「すべての霊長類が証明しているように、男女の関係性ほど私たちを惹きつける話題はない。そして、デヴィッド・バスはその興味を、経験的な発見に基づく厳密な科学、そして進化論的思考に根ざした科学に変える先駆者として、長きにわたって活躍してきた。本書は、この分野における大きな貢献である」 ロバート・M・サポルスキー(『善と悪の生物学』) 「本書は、世界で広まっている人権問題と言われているものを見事に分析している。権威があり、洞察力に優れ、共感できるバス氏の著書は、#MeToo世代にとって完璧な情報源だ」 リチャード・ランガム(『善と悪のパラドックス』) - 目次 - 第1章 男対女の戦い 第2章 配偶市場 第3章 恋愛・結婚生活の悩み 第4章 恋愛・結婚関係の対立に対処する 第5章 パートナーによる暴力 第6章 破局後のストーカー行為と復讐 第7章 性的強要 第8章 性的強要から身を守る 第9章 男女のギャップに目を向ける - 著者プロフィール - デヴィッド・M・バス (デヴィッド エム バス) (著/文) 心理学者。進化心理学の第一人者で、配偶者選択に関連したヒトの性差の進化心理学的研究でよく知られている。著作に、『女と男のだましあい:ヒトの性行動の進化』(草思社)、『「殺してやる」:止められない本能』(柏書房)、『一度なら許してしまう女一度でも許せない男:嫉妬と性行動の進化論』(PHP研究所)などがある。 加藤 智子 (カトウトモコ) (翻訳) 翻訳者。筑波大学第二学群比較文化学類卒。英国イースト・アングリア大学文芸翻訳修士課程、米国ミドルベリー国際大学院モントレー校翻訳・通訳修士課程を修了。訳書に『なぜ心はこんなに脆いのか』(草思社)、『ジョン・レノン 最後の3日間』(祥伝社)、『困った上司・やっかいな同僚:職場のストレスに負けない人の考え方』(二見書房)、『アメリカン・ハードコア』(メディア総合研究所 )など。
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引き揚げを語る 子どもたちの戦争体験 | 読売新聞生活部
¥693
岩波書店 2024年 岩波ブックレット ソフトカバー 72ページ A5判 縦210mm 横148mm 厚さ5mm - 内容紹介 - 「それからのことはどうしても思い出せないんです」「人の死がありふれていました」――。第二次大戦が終わり、満州、朝鮮半島、台湾など外地で生活していた人たちの多くが命からがら日本に帰ってきた。その苦難の証言が大きな反響をよび投稿が相次いだ連載企画に、識者インタビュー、記念資料館案内、ブックガイドを増補。 - 目次 - まえがき……………小坂佳子 Ⅰ 引き揚げとは……………加藤聖文(駒沢大学教授、日本近現代史) Ⅱ 引き揚げを語る 1 父の言葉を背に、兄と三八度線を越えた 2 収容施設で母と妹を亡くす 3 決死の逃避行、脳裏に悲痛な母 4 南樺太から帰郷、貧しかった戦後 5 集団自決、ソ連兵 6 妹と二人だけ、不安の帰国 7 「私世代で最後」 8 荒れ狂う大海原を密航船で 9 「父親に子どもを渡さずには死ねない」 10 母との約束「死んだら書き置いて」 引き揚げ体験を振り返る……………ちばてつや(漫画家) Ⅲ 引き揚げを知る・学ぶ 施設紹介 ブックガイド あとがき……………小野 仁
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ハーレムの熱い日々 | 吉田 ルイ子
¥990
筑摩書房 2024年 ちくま文庫 ソフトカバー 272ページ 文庫判 - 内容紹介 - 黒人差別への抗議が広がった60年代ニューヨーク・ハーレムに暮らし、隣人たちの眼差しを撮り続けたフォトジャーナリスト吉田ルイ子。貧困・麻薬・売春・差別に象徴される街で、ブラックパワーの逞しさにふれ、自らの差別意識と向き合いながらシャッターを切った。女性や子ども、弱き立場の人びとの語らいに耳を澄ませ、人間としての誇りを取り戻すことに目覚めた黒い肌の輝きを、カメラとペンでヴィヴィッドに捉えてゆく。 エッセイ/『ハーレムの熱い日々』によせて 伊藤詩織 - 目次 - ハーレムとの出会いは偶然だった 差し出された黒い手 ハーレム低所得者団地 あんた、いい男と一緒になったネ 小さな友だち ピクチュアウーマン誕生 洗濯場の女たち ワーラーメーロン ピクチュアウーマン誕生 ハーレム百二十五丁目のヒーローたち 鳥肌がたつくらい興奮した ハーレムのジャズマン 白いキャデラックと黒いピンプ(ポン引き) ハーレムのシンデレラは売春婦 私は差別の複雑さの中にいた 黒と白 黄と黒と白 ハーレムに何かが起こりはじめた ブラックモスレム――誇りの回復 暴動、そしてハーレムを追われる 誰がハーレムを“怖い”と言ったのか? リベラル白人への不信 怪電話でノイローゼになる ピストルを枕の下に 今すぐ、ハーレムに帰りたい 黒い輝きはまぶしかった ハーレム再会 街はブラック、ブラック、ブラック パンサー党と空手道場 日本の赤軍派の人と会う 銃が人を殺すのではない Right on! 日系人の活動家――ママさん、メリー 第三世界結集への道 黒い輝きは消えない 黒にめざめる黒人たち 黒人のモデルたち パンサー党員のモダンバレリーナモデル、バーバラ アメリカの資本家から金を巻き上げてるのよ 白人が作りあげたセックスの神話 貧困のポケットの中には何が入っている? 広告会社はじめての仕事 キング牧師が殺された翌日のこと ハーレムは私を育ててくれた 日本に帰って 文庫版あとがき アメリカのできごと エッセイ 伊藤詩織 - 著者プロフィール - 吉田 ルイ子 (ヨシダ ルイコ) (本文) 1934年北海道室蘭市生まれ。慶応義塾大学法学部卒。NHK国際局、朝日放送アナウンサー勤務の後、1961年フルブライト交換留学生として渡米。オハイオ州立大学とコロンビア大学で学び、フォトジャーナリズム専攻で1964年コロンビア大学より修士号を取得する。そのままニューヨークに滞在し、ハーレムに住んで写真を撮りはじめる。1968年ハーレムの子どもを撮った写真で公共広告賞を受賞。帰国後は北米、中米、東南アジア、中東、アフリカと世界を駆けめぐり、人々の生活、感情に思いを寄せた視点で、写真を撮りつづけた。2024年5月31日、89歳で逝去。
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ことばが変われば社会が変わる | 中村 桃子
¥968
筑摩書房 2024年 ちくまプリマー新書 ソフトカバー 224ページ 新書判 - 内容紹介 - ひとの配偶者の呼び方がむずかしいのはなぜ? ことばと社会のこんがらがった相互関係をのぞきこみ、私たちがもつ「言語観」を明らかにし、変化をうながす。 ことばと社会のこんがらがった相互関係をのぞきこみ、 私たちがもつ「言語観」を明らかにし、変化をうながす。 ----- 言葉は社会を駆け巡り変化をもたらす。 本書はその旅路を見せてくれる。 ――三木那由他さん(『会話を哲学する』『言葉の展望台』) ----- ことばは社会の見方や価値観をゆるがす一方で、 社会もまたことばの使われ方に影響を与えている。 新しいことばのインパクトとそれに対する抵抗や躊躇、 こんがらがった関係を事例とともにのぞきこみながら、 私たちがもつ隠れた意識を明らかにし、変化をうながす。 【内容のほんの一例】 ・ことばが社会を変化させるメカニズム ・ことばが変わることにはどの社会でも強い抵抗がある ・「伝統」や「習慣」をカラッと転換させるカタカナ語 ・「男になる、男にする」と「女になる、女にする」 ・なんでも略す日本人と「意味の漂白」 ・「ご主人・奥さま」?「夫さん・妻さん」? ――ひとの配偶者の呼び方がむずかしいのはなぜ? ・「正しい日本語を話したい」と考えてしまう私たち ・既存の価値観がすべてではない - 目次 - 第一章 「セクハラ」は社会の何を変えた? …新しいことばは新しい考え方を提案する 第二章 戦略としての「あえて」と「ラベル」 …意味をひっくり返したり曖昧にしたり 第三章 流行語「女子」がもたらしたもの …ことばの普及は思わぬもの同士を繋げていく 第四章 “girl power” はなぜズレていったのか …新しいことばに抗うかのような社会の視線 第五章 誰が意味をはがされるのか …名前を呼ぶ人と呼ばれる人のあいだの権力関係 第六章 「ルール」を優先してしまう私たち …「大谷翔平の妻」を日本のメディアは何と呼んだ? 第七章 「パートナーの呼び名問題」解決編 …「正しい日本語」を話したい気持ちをのりこえる - 著者プロフィール - 中村 桃子 (ナカムラ モモコ) (本文) 関東学院大学教授。専攻は言語学。上智大学大学院修了。博士。著書に『「自分らしさ」と日本語』(ちくまプリマ―新書)、『新敬語「マジヤバイっす」??社会言語学の視点から』『翻訳がつくる日本語??「ヒロイン」は女ことばを話し続ける』(白澤社)、“Gender, Language and Ideology: A Genealogy of Japanese Women’s Language”(John Benjamins)、『女ことばと日本語』(岩波新書)などがある。
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私の「結婚」について勝手に語らないでください。|クァク・ミンジ, 清水 知佐子(翻訳)
¥1,760
亜紀書房 2023年 ソフトカバー 248ページ 四六判 縦188mm 横130mm 厚さ18mm - 内容紹介 - 結婚しても、しなくても 私たちは結局“ひとり”を共に生きていく生き物なのだ。 ──前田エマさん(モデル) 「非婚」は結婚の「否定」ではない。 人と違う生き方に、大きな愛を贈ってくれる本。 ──安達茉莉子さん(作家・文筆家) * * * * * 累積聴取回数2000万回超! 話題のポッドキャスト「ビホンセ」制作兼進行役による〝結婚しない〟という選択。 --------- 「結婚しないんですか?」 「子供がほしくはないですか?」 「ひとりで寂しくないですか?」 ……非婚に対する偏見はまだまだ根深い。 * * * * * 非婚は結婚の反対ではなく、多様な生き方のひとつ。 自分の選んだ道に責任を持ち、時には弱音を吐いて傷つきながらも、自分を愛し、前に向かって進んでいく。 本書には、非婚でも結婚でも事実婚でも同性婚でも、人それぞれの生き方を尊重し、みんなが穏やかで楽しく暮らせるための温かなエッセンスが満載。 --------- 「結婚=幸せ」だなんてファンタジーじゃない?! 自分で選んで決めればいい。 目次 ■プロローグ──こんなテーマで本を書くなんて 非婚宣言──何もそんな決心までしなくても ■こんにちは、非婚です ■住む家のために結婚はできない ■結婚までは愛せない、あなたを愛したのだ ■非婚主義者のくせになぜ恋愛するのか ■甥や姪がそんなにかわいいなら自分の子を産めばいい ■ロングタイム・ノ氏ですね 非婚の冠婚葬祭──幸せと悲しみを分かち合うのに損も得もない ■私が暮らすあの家 ■私もお母さんみたいに生きたい ■非婚者の結婚式 ■非婚で生きるにはしっかり稼がないと ■私のお葬式で棺を担いでくれますか 非婚ライフ──自分と連れ添って生きる ■大田で生まれた色黒の子 ■私たちは互いの体を観察しながら成長した ■私のトリセツ ■好きだから線を引いたんです ■好みの発見 ■おばあさんの瞳にチアーズ! ■夫はいません。でも、推しはいます 非婚共同体──完璧に理解できなくても完全に愛することはできる ■ブックフェアに母が来た ■一緒に越えていく日曜日 ■笑っているうちに一緒にいかだの上に、しかもこんなに遠くまで ■知らない犬と飛行機に乗った ■あなたが死んだら ■私の祖母 ■どうしてあなたが非婚をとやかく言うんですか ■エピローグ ■訳者解説 - 著者プロフィール - クァク・ミンジ (クァク ミンジ) (著/文) 韓国・大田生まれ。高麗大学日本語・日本文学科卒業。エッセイスト、コラムニスト。広告やテレビ番組、モバイルコンテンツの制作者。非婚ライフ可視化ポッドキャスト「ビホンセ」の制作者兼進行役を務める。独立出版レーベル「アマルフェ」の代表でもある。比較的一人世帯の多いソウル・解放村在住。著書に『歩いてお祭り騒ぎの中へ』『私は悲しいとき、ポールダンスを踊る』などがある。 清水 知佐子 (シミズ チサコ) (翻訳) 和歌山生まれ。大阪外国語大学朝鮮語学科卒業。読売新聞記者などを経て、翻訳に携わる。訳書に、キム・ハナ、ファン・ソヌ『女ふたり、暮らしています。』、キム・ハナ『話すことを話す』『アイデアがあふれ出す不思議な12の対話』(以上、CCCメディアハウス)、朴景利『完全版 土地』、イ・ギホ『原州通信』(以上、クオン)、タブロ『BLONOTE』(世界文化社)などがある。
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それは丘の上から始まった 1923年横浜の朝鮮人・中国人虐殺 | 後藤 周, 加藤 直樹(編集)
¥1,980
SOLD OUT
ころから 2023年 ソフトカバー 264ページ A5変形判 縦188mm 横148mm 厚さ17mm - 内容紹介 - 1923年、関東大震災直後の横浜は朝鮮人暴動などの流言が発生し、虐殺が行われた発火点だったーー。 市街のほとんどを焼失した市民は、「平楽の丘」と呼ばれる南部丘陵地へと逃れた。そこでは、震災当夜から「朝鮮人が暴動を起こしている」などといった流言が広がり、そして名も知らぬ朝鮮人や中国人を虐殺する事件の引きがねとなった。 30年以上にわたってこの史実を検証してきた著者が、150号を超える私家版「研究ノート」や数多くのフィールドワークをもとにまとめた。 デマがどうして横浜で発生したのか、なぜ虐殺を防げなかったのか、膨大な資料とともに当時を生きた人たちの顔が見える筆致で描く。100年前の虐殺事件の「なぜ?」を知るためのマスターピースとなる一冊。 - 目次 - はじめに 第1章 横浜は「虐殺の地」だった コラム 保土ケ谷の朝鮮人労働者を守った親方たち 第2章 虐殺は「平楽の丘」から始まった コラム 横浜震災救護団の女性リーダー 第3章 大川常吉署長ーー「美談」から事実へ コラム 朝鮮人を守った親方たちのその後 第4章 横浜の中国人虐殺 コラム 戒厳軍の日誌に記された虐殺 第5章 「9月2日」を追悼する人 コラム ふたつの調査報告と「青木橋の虐殺」 - 著者プロフィール - 後藤 周 (ゴトウ アマネ) (著) 1948年生まれ。1972年から約40年にわたって横浜市の公立中学校の教員を務め、その傍らで横浜ハギハッキョの設立から中心スタッフとして活動。退職後も横浜での朝鮮人・中国人の虐殺事件を検証。その報告書でもある「研究ノート」は150号を超える。本書は初めての著書。 加藤 直樹 (カトウ ナオキ) (編集) 1967年東京生まれ。おもな著書に『九月、東京の路上で』『TRICK 「朝鮮人虐殺」をなかったことにしたい人たち』(ともにころから)、『謀叛の児』(河出書房新社)など。
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悼むひと 元兵士と家族をめぐるオーラル・ヒストリー | 遠藤 美幸
¥2,530
生きのびるブックス 2023年 ソフトカバー 248ページ 四六判 縦128mm 横188mm 厚さ18mm - 内容紹介 - 戦場体験者の証言が浮かび上らせるのは、歴史的事実だけでない。話せないこともあれば、伝えたくても伝わらない真実もある。戦没した仲間への哀惜。「勇ましい」戦後右派への不信…。ビルマ戦研究者であり、戦友会、慰霊祭の世話係でもある著者が、20年以上にわたる聞き取りをとおしてつづった、 “痛み”と“悼み”の記録。 「生き延びた元兵士らの言葉とともに戦没兵士の言葉も若者にこそ届けたい。(略)戦争の傷跡はあちこちに残っていて、いまだ癒えていない。私たちは『終わらない戦争』の中に生きている」(本文) - 目次 - まえがき ◆第1章 九八歳の「慶應ボーイ」 「知らせたい人リスト」 十人十色の戦争体験 徴兵猶予停止と学徒出陣 軍に嫌われた!? 福澤諭吉と経済学部 「出陣学徒壮行会」をサボって何処へ 「出陣学徒壮行の地」の碑の建立 「戦争はいけません」 ◆第2章 初年兵の「ルサンチマン」 「ジャワは天国、ビルマは地獄、生きて帰れぬニューギニア」 拉孟戦とはなにか? 「安はやすやす祭り上げ、龍と勇がしのぎを削る」 初年兵の「ルサンチマン」 ◆第3章 永代神楽祭と「謎の研究者」 戦友会の代表世話人に 永代神楽祭とは? 引き継ぎ業務 遺族同士を繋げる「ボンドガール」 戦場体験を聴くということ ◆第4章 戦場と母ちゃん 老兵からの電話 手渡されたノートの切れ端 母ちゃんのバカ 千人針 初年兵教育 母ちゃんを思う気持ち 晩年の老兵たちの言葉 最期の言葉は「お母さん」 ◆第5章 一〇一歳の遺言 一九四一年一二月八日「開戦」 コタバル敵前上陸 シンガポール攻略 死んだ人にも格差 インパール作戦からの敗退 ◆第6章 ビルマ戦の記憶の継承――元日本兵の慰霊を続ける村 「戦友愛」と遺骨収集 ウエモンが見た戦場のリアル 慰霊に人生を捧げた中隊長 ウェトレット村での戦闘 元日本兵の慰霊を続ける村 ミャンマー贔屓 ビルマは「親日的」なのか ミャンマー国軍と日本 ◆第7章 音楽は軍需品なり――朝ドラ「エール」とビルマ戦線 古関裕而のもう一つの顔 南方「皇軍慰問団」と拉孟 「ビルマ派遣軍の歌」 音楽家の戦争加担 「音楽は軍需品なり」 ◆第8章 いま、戦争が起きたらどうしますか? 元陸軍中尉の問いかけ 最後に愛が勝つ 「勇ましい」戦争非体験者たち 不戦を訴える元兵士たち ◆第9章 戦没者慰霊祭に響き合う「ポリフォニー」 遺族間の「温度差」 戦死した「貴方」の無念を伝えます ◆第10章 やすくにの夏 御明大作戦 一〇〇灯の御明 靖国参拝に訪れる「ふつうの人たち」 みんなで参拝すれば怖くない 美化された「英霊」 元特攻兵からの手紙 特攻と桜│裏の真実 戦没者を悼む場所 ◆第11章 戦友会「女子会」――元兵士と娘たち 元特攻兵の娘 戦友会に参加する娘たち 父の遺志を継ぐ娘 「父に近づかないでください」 戦史研究に熱心な息子たち 亡父と「和解」した娘 ◆第12章「戦場体験」を受け継ぐということ 戦争前夜 平和ボケ 客室乗務員からビルマ戦の研究者へ 慰霊登山と拉孟 ◆最終章――非当事者による「感情の歴史学」 手本はイギリス式オーラル・ヒストリー 生きた歴史に触れる 「主婦研究者」もけっこうツライ 歴史事実が歴史化されるとき あとがき - 前書きなど - まえがき ◆戦場体験者との出会い もともと戦争にはまったく興味がなかった。ひょんなことから普通の主婦が戦場体験者への聞き取りをすることになり、かれこれ二〇年以上も続けている。もう還暦を迎える年齢になったが、きっかけは二〇代の頃、たまたま飛行機の中で知り合った拉孟戦に従軍した元飛行兵との出会いだった。その後しばらくしてから結婚し、子育てをしながら慶應大学大学院に進み(この時はイギリス近代史研究をするため)、その後、紆余曲折があり十数年の歳月を経て拉孟戦の「主婦研究者」になった。飛行機での偶然の出会いと研究者になるまでのプロセスは本文に譲るとして、拉孟戦を知らない人がほとんどだと思うので、少しだけ触れておきたい。ご多分に洩れず私も「拉孟」なんて聞いたこともなく、どこにあるのかもわからなかった。さらに拉孟がビルマ戦の一戦域と聞いても、そもそもビルマ戦がよくわからなかった。わからなくてあたりまえ。慶應大学の歴史研究者も拉孟をご存じなかったのだから。ご存じの方は相当の戦史通だ。 拉孟戦とは、一九四四年六月から九月に援蔣ルート(連合軍の補給路)を遮断するために約一三〇〇名の日本軍が中国雲南省の山上で約四万の中国軍と対決し全滅に至った戦闘(当時の軍隊では「玉砕」と呼称)のこと。数多の皇軍兵士が今もなお祖国に帰れずに中国雲南省の山奥で眠っている。防衛庁防衛研修所戦史室編の公刊戦史(『戦史叢書 イラワジ会戦─ビルマ防衛の破綻』朝雲新聞社、一九六九年)は、軍上層部に「最後の一兵まで死守せよ」と厳命された結果、拉孟守備隊が「玉砕」したことを、勇戦敢闘と讃えた感状(軍事面で特別な功労を果たした下位の者に、上位者が賞賛するために与える文書)で締めくくっており、なぜ陸続きの山上で全滅をしなくてはならなかったのか、兵士たちがどのように戦い死んでいったのか、いくら読んでも私の素朴な疑問の答えが見つからなかった。公刊戦史は、多くは戦争を企図した軍上層部の視点で書かれたものだけに、「全滅」は作戦の失敗を意味し、責任を問われるような都合の悪いことは公文書に残さない(残せない)のだ。なるほど、この傾向は現在にも通じている。 私は拉孟戦場の本当の姿が知りたくて、二〇〇二年から機内で出会った元飛行兵を皮切りに数少ない拉孟の生存者への聞き取りをはじめた。その頃、下の子どもがちょうど幼稚園に入園したので、聞き取りは幼稚園のお迎えに合わせて午後二時をタイムリミットとした。主婦と高齢の元兵士には午前から午後二時までの時間帯がちょうどよく、うまく双方のニーズが合致した。 お恥ずかしながら軍隊用語も階級も何も知らずに聞き取りをはじめた。今の私が話し手の立場なら「少しは勉強してからアポを取ってください」と偉そうにアドバイスするのだが……。知らないとはなんとも恐ろしい。図々しくもよく聴きに行けたものだ。今思い出すと穴があったら入りたい気持ちに駆られる。「佐官(さかん)」と聞いて、しばらく建物の壁や床などを塗る職人の「左官」だと思っていた(佐官は軍隊の階級)。こんなド素人に元兵士の皆さんは根気よくつき合ってくれた。当時、皆さんも八〇歳前後で気力も体力も十分ですこぶるお元気だった。若い母親が戦争に関心をもつのが意外で珍しかったのかもしれない。元兵士たちは聞き慣れない軍隊用語や地名を大学ノートに鉛筆で一つ一つ丁寧に書いて教えてくれた。どなたも戦時期の記憶力は抜群で、ビルマ(ミャンマー)の聞いたこともない地名(戦闘地)の説明には熱がこもった。果たして彼らの記憶に残っている地名は戦友が亡くなった場所だった。忘れたくても忘れられない地名。元兵士が大事に保管しているビルマの地図の戦闘場所には、死んだ戦友の名前と日付がびっしりと書き込まれていた。 私も無知を克服するために薦められた書籍を片っ端から読んでビルマ戦の知識を少しずつ身につけた。やがて元兵士の語りから、公刊戦史には必ずしも真実が書かれているとは限らないことを悟った。勇戦敢闘を讃えた文章は負け戦を覆い隠し、「次なる戦闘では決して負けないぞ」との決意表明のように読めた。戦場体験者への聞き取りを進め、米英中連合軍側の関連史料を調べていくうちに、旧日本軍が中国雲南省で行った残虐な行為を知ることになる。 こうして公刊戦史に書かれていない史実を明らかにすることが研究の主題となった。通常は後方の兵站基地にある慰安所が、最前線の拉孟にあり、一五名(日本人と朝鮮人)の「慰安婦」がいたことも、研究を続けるうちにわかったことだ。前人未到の山上の拉孟戦場跡に立った時、若い娘たちがこんな所にまで連れて来られて「慰安婦」にされた現実に打ちのめされた。 ◆「主婦研究者」の気概 拉孟戦を研究してかれこれ二〇年以上になるが、聞き取りをした元将兵はビルマ戦だけでも延べ五〇人以上にのぼる。肩書もない「主婦研究者」が信頼してもらうには戦友会や慰霊祭に足繁く通い続けて顔を売るしかなかった。剣道の名手の元中尉に関心をもってもらうために、女性は薙刀、というアドバイスに従って薙刀を習ったこともある。絵を描くことが趣味の元大尉の絵の展覧会には必ず足を運んだ。ご自宅を訪問する際は、おじいさんたちのお世話をされている女性陣(妻、娘、「お嫁さん」)とのコミュニケーションを大事にし、今でも交流を続けている。そして戦友会では「主婦」の立場を生かしながら、食事の手配や配膳など諸々の雑用を一手に引き受けるうちに、しばらくして「お世話係」という役職(?)を得た。そんな地道な努力を重ねながらも聞き取りは思うように捗らず、戦場体験者の口は重かった。自らを「死に損ない」と語る元軍曹もいた。元将校には数年経っても「ご婦人には拉孟は無理ですからおやめなさい」と再三忠告を受けた。皆さん、そのうち業を煮やしていなくなるだろうと思っていたかもしれない。戦場体験の聞き取りは聴く方にも相応の覚悟を要する。戦場体験者が背負ってきた重荷を半分くらい背負わなければならない覚悟だ。一介の主婦だからと甘く見られることもあったが、だからこそ気を許して本音を語ってくれたこともあった。一度扉を開けてしまったら途中で引き返すことができない道のりを歩くことになった。 話し手は時に立場上、「嘘」をつかなければならないこともある。自分に都合の良い話だけを語ることもある。家族にも戦友にも話したことのない話を打ち明けられ、「これは表に出してほしくない」と釘を刺されることもたびたび。どのような話でも自分を消してまるごと受け取ろうと決めている。なぜあの人はあの時あそこであのような「嘘」を言ったのかが分かったとき、戦場体験を聴くことの真髄に触れたように思えるのだ。 当初はビルマ戦の戦場体験者を中心に聞き取りをしていたが、次第に戦域に関係なく、中国戦線もレイテ沖海戦も、陸海軍も問わず幅広く戦場体験を聴くようになった。戦場体験者の聞き取りに残された時間はもうわずか。あれこれ選り好みしている場合でも立場でもないことに気づいた。年月を重ねるうちに、親しかった体験者が次々に亡くなっていく。戦場体験を聴くこと、戦場の実像を明らかにすること、それを次世代へ継承することが私の生涯の「ミッション」となった。 ◆第二・五世代の部外者として 現在、二つの戦友会や慰霊祭の「お世話係」をしている。今では戦場体験者のほとんどの方が鬼籍に入った。遺族でも家族でもない部外者がそのような役目を担ってよいのかと自問しながらも、部外者だからこそしがらみがなくできること、見えてくる世界もある。戦友会や慰霊祭は心の傷跡が露わになる場でもあり癒される場でもある。生きて帰った元兵士らは家族をもてたが、父親や夫を戦争で奪われた人たちは戦後、塗炭の苦しみを味わった。ある戦争未亡人は「娘と二人、人に言えないような暮らしを強いられ、泥水を啜って生き延びた」と涙を浮かべた。父親の顔を知らない遺児もたくさんいた。 戦友会や慰霊祭で現れる表面上の姿だけでなく、心の奥深いところに澱のように溜まっているものを見逃さないように目を凝らし耳を傾けてみると、じわじわと浮かびあがってくる諸々の感情を、この機会に掬い上げてみようと思う。戦場体験者が何を思って戦後社会を生きてきたのか。慰霊祭や戦友会に集う遺族や帰還兵の家族の思いは一枚岩ではない。そんなこんなの戦争を介したこのような場での出来事、そしてそこで織りなす人間模様や元兵士の「本音」など、人気TⅤドラマの『家政婦は見た!』ではないが、戦友会や慰霊祭の「お世話係は見た!」というポジショナリティで、「お世話係」だからこそ見えるディープな世界を繙いてみたい。 これまで戦場体験者はもとよりその子ども世代との交流も重ねてきたが、むしろこれからは子どもや孫やひ孫の世代まで聞き取りの対象を広げるつもりだ。戦場体験を受け継ぐための「四世代物語」の実践である。第一世代の戦場体験者は存命であれば一〇〇歳超えはあたりまえ。第二世代は子ども世代で六〇代から八〇代くらいか。第三世代は孫世代で、およそ二〇代から五〇代と幅広い。第四世代はひ孫世代で平成生まれはもとより令和生まれも範疇となる。筆者は第二世代と第三世代の間を繋ぐ第二・五世代といったところ。若い人たちは戦争なんて遠い昔の出来事で今の自分には関係ないと思うかもしれないが、戦争を生き抜いた曽祖父母や祖父母が命を繋いでくれたから私たちは今を生きている。別の言い方をすれば、戦没者は未来に命を繋ぐ機会を奪われたのだ。 ロシアのウクライナ侵攻という暴挙を目の当たりにして、第三、第四世代の若い人たちも戦争がいかに人権を蔑ろにする破滅行為であるかを心身に深く刻んでいるにちがいない。戦争になったら若者が兵士となり、殺戮の加害者となり、無惨に殺される被害者になる。繋げるはずの命が一瞬にして奪われ、あたりまえの日常が破壊され地獄絵図と化す。 かつて若い命を散らした戦没兵士は、同世代の今の若者に何を言いたいだろうか。彼らは「お国のため」、愛する人のために命をかけて闘った。今の日本は、果たして彼らが命をかけた国に相応しい国になっているだろうか? 戦没兵士の声なき声に耳を傾けてみてほしい。生き延びた元兵士らの言葉とともに戦没兵士の言葉も若者にこそ届けたい。そして戦争の本当の姿を知ってもらいたい。八〇年近く経っても戦争の傷跡はあちこちに残っていて、いまだ癒えていない。私たちは「終わらない戦争」の中に生きている。そしてさらなる新しい戦争に向かっている「当事者」なのだ。 - 版元から一言 - ビルマ戦の研究者であり、戦友会のお世話係でもある著者は、戦場体験者とその家族に20年以上にわたって聞き取りをしてきた。本書は、簡単には白黒つけられない元兵士の思いに肉迫した、一級のノンフィクションである。戦場での凄絶な出来事。復員兵どうしの戦後の人間関係。PTSD。戦後右派への違和感…。いずれも教科書にはでてこないリアルで切実なエピソードにひきこまれる。 - 著者プロフィール - 遠藤 美幸 (エンドウ ミユキ) (著/文) 1963年生まれ。イギリス近代史、ビルマ戦史研究者。神田外語大学・埼玉大学兼任講師(歴史学)。不戦兵士を語り継ぐ会(旧・不戦兵士・市民の会)共同代表、日吉台地下壕保存の会運営委員、日本ミャンマー友好協会理事。2002年から元兵士の戦場体験を聴き続けている。著書に『「戦場体験」を受け継ぐということ─ビルマルートの拉孟全滅戦の生存者を尋ね歩いて』(高文研)、『なぜ戦争体験を継承するのか─ポスト体験時代の歴史実践』(共著、みずき書林)がある。
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【特装版】みな、やっとの思いで坂をのぼる | 永野 三智
¥2,970
ころから 2018年 ハードカバー 256ページ 四六変形判 縦176mm 横134mm 厚さ20mm - 内容紹介 - 『みな、やっとの思いで坂をのぼる』の上製・特装版。 カバーは水俣のアーティスト「HUNKA」によるシルクスクリーン印刷。 不知火海を見下ろす丘の上に水俣病センター相思社はある。 2004年の水俣病関西訴訟の勝訴にともない、「自分も水俣病ではないか」との不安を抱える数千の人たちが、いまも患者相談に訪れる。 著者は、相思社での患者相談などを担当する日常のなかで、自分の生まれ故郷でいまもタブーとされる水俣病事件の当事者たちと接するようになり、機関紙で「水俣病のいま」を伝えるための連載「患者相談雑感」を開始した。 本書は、本連載をもとに大幅に加筆して一冊にまとめた記録だ。 「やっと思いで語り出した人びとの声」がここにある。 - 著者プロフィール - 永野 三智 (ナガノ ミチ) (著) 1983年熊本県水俣市生まれ。2008年一般財団法人水俣病センター相思社職員になり、水俣病患者相談の窓口、水俣茶やりんごの販売を担当。同法人の機関紙『ごんずい』に「患者相談雑感」を連載する。2014年から相思社理事、翌年から常務理事。2017年から水俣病患者連合事務局長を兼任。本書は初の単著。
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みな、やっとの思いで坂をのぼる 水俣病患者相談のいま | 永野 三智
¥1,980
ころから 2018年 ソフトカバー 256ページ 四六変形判 縦174mm 横128mm 厚さ17mm - 内容紹介 - 不知火海を見下ろす丘の上に水俣病センター相思社はある。 2004年の水俣病関西訴訟の勝訴にともない、「自分も水俣病ではないか」との不安を抱える数千の人たちが、いまも患者相談に訪れる。 著者は、相思社での患者相談などを担当する日常のなかで、自分の生まれ故郷でいまもタブーとされる水俣病事件の当事者たちと接するようになり、機関紙で「水俣病のいま」を伝えるための連載「患者相談雑感」を開始した。 本書は、本連載をもとに大幅に加筆して一冊にまとめた記録だ。 「やっと思いで語り出した人びとの声」がここにある。 - 著者プロフィール - 永野 三智 (ナガノ ミチ) (著) 1983年熊本県水俣市生まれ。2008年一般財団法人水俣病センター相思社職員になり、水俣病患者相談の窓口、水俣茶やりんごの販売を担当。同法人の機関紙『ごんずい』に「患者相談雑感」を連載する。2014年から相思社理事、翌年から常務理事。2017年から水俣病患者連合事務局長を兼任。本書は初の単著。
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なぜガザなのか パレスチナの分断、孤立化、反開発 | サラ・ロイ, 岡真理(編集 | 翻訳), 小田切拓(編集 | 翻訳), 早尾貴紀(編集 | 翻訳)
¥3,080
青土社 2024年 ハードカバー 288ページ 四六判 - 内容紹介 - そこで何が行われてきたのか、私たちは知らなければならない。 五〇年以上にわたる占領。隔離と封鎖のなかで、暴力は常態化し、排除が恒常化し、パレスチナの人たちは生活のすべてを奪われてきた。なぜ、どのようにして、それは行われたのか。歴史的文脈を理解し、いま起こっていること、そしてこれから行われることを知るための最良の書。
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第七の男 | ジョン・バージャー(著), ジャン・モア(写真), 金 聖源(翻訳), 若林恵(翻訳)
¥3,080
SOLD OUT
黒鳥社 2024年 ソフトカバー 256ページ A5変形判 縦198mm 横128mm - 内容紹介 - ジョン・バージャー(1926-2017)──小説家であり、美術批評家、ジャーナリスト、詩人でもあった20世紀英国文学における孤高の"ストーリーテラー"が、今から50年前に放った鮮烈なドキュメンタリー。欧州の移民問題を扱い、新自由主義経済の暴力の核心に迫った伝説的「告発の書」、待望の初訳! ────────────────────────── 最も政治的で、最も先鋭的で、 最も激しい告発をもって、 最も気高い人間性を証明する。 ジョン・バージャー。 私たちが最も長く愛する作家 。 ──キム・ソヨン (詩人/『数学者の朝』『一文字の辞典』ほか) ジョン・バージャーは、わたしが親密な繋がりを感じる作家のひとりです。 彼の作品は、美と政治の双方に深く関わっているからです。 ──レベッカ・ソルニット (作家・批評家/『ウォークス』『オーウェルの薔薇』ほか) 文章をもって世界の見方を 一変させてしまう作家は数少ない。 バージャーは、そのひとりだ。 ──ジャーヴィス・コッカー (音楽家) バージャーの作品には、 愛と、芸術と、政治と歴史をめぐる洞察が つねに折り重ねられている。 ──アリ・スミス (作家/『春・夏・秋・冬』4部作、『両方になる』ほか) 現代英文学において、 バージャーは比類なき存在だ。 ロレンス以降、わたしたちの感覚世界に これほど配慮しながら、良心をめぐる重大事に 応答した作家はいない。 ──スーザン・ソンタグ (作家・批評家) バージャーのおかげで、世界は住みよくなった。 ──アルンダティ・ロイ (作家/『小さきものたちの神』『帝国を壊すために』ほか) ────────────────────────── 前書きなど 家を失うことは、名前を失うことである─ 移民労働者の実存に迫り、新自由主義の悪夢を暴いた、伝説の ” パンフレット ” 。 英国の孤高のストーリーテラーが 50年前に残し、イスタンブールのスラムで、 ギリシアの港で、ダマスカスの路上で 密かに読み継がれ、グローバルサウスの 労働者を奮い立たせてきた名著。 移民問題に揺れる現代社会を穿つ、 待望の初邦訳 ! - 版元から一言 - 日本語で読めるジョン・バージャーの名著 【小説】 - G. 栗原行雄 訳/新潮社/1975年 【評論】 - 芸術と革命:エルンスト・ニェイスヴェースヌイとソ連における芸術家の役割 ジャン・モア 写真/奥村三舟 訳/雄渾社/1970年/絶版 - イメージ:視覚とメディア 伊藤俊治 訳/PARCO出版(1986年)・ちくま学芸文庫(2013年) - 見るということ 飯沢耕太郎 監修・笠原美智子 訳/白水社(1993年)・ちくま学芸文庫(2005年) - 批評の「風景」 トム・オヴァートン 編/山田美明 訳/草思社/2024年 【ドキュメンタリー】 - 果報者ササル:ある田舎医者の物語 ジャン・モア 写真/村松潔 訳/みすず書房/2016年 - 第七の男 金聖源・若林恵 訳/黒鳥社/2024 - 著者プロフィール - ジョン・バージャー (ジョン バージャー) (著) 1926年ロンドン生まれ。小説家・批評家・画家・詩人。1972年、英国BBCで企画/脚本/プロデュースのすべてを担当したTV番組4部作「Ways of seeing」で広く存在を知られる。同名書籍は美術批評界の金字塔とされ、欧州市民の多くがアートや文化理論を理解する契機を得たとされる。同年小説『G.』でブッカー賞を受賞。70年代からフランス農村に拠点を移し表現活動を続け、2017年に90歳で逝去。主著『イメージ──視覚とメディア』(伊藤俊治訳/ちくま学芸文庫、2013年)、『G.』栗原行雄訳(新潮社、1975年)、『果報者ササル』村松潔訳(みすず書房、2016年)、『批評の「風景」ジョン・バージャー選集』山田美明訳(草思社、2024)など。 ジャン・モア (ジャン モア) (写真) 1925年、ジュネーヴ生まれ。ドキュメンタリー写真家。赤十字国際委員会(ICRC)、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)、国連パレスチナ難民救済事業機関 (UNRWA)等の人道支援団体と帯同し、その記録作品で知られる。ジョン・バージャーと50 年に渡る親交のなか多くの共作を残したほか、エドワード・サイードとの共作でも知られる。戦地の人びとの目線を記録したその写真の多くは、現在スイス・エリゼ写真美術館に収蔵されている。日本でも過去に二回、広島 平和記念公園で野外写真展が開催された。2018年に93歳で逝去。主著『果報者ササル』(ジョン・バージャーとの共著/村松潔訳/みすず書房、2016 年)、『パレスチナとは何か』(エドワード・サイードとの共著/島弘之訳/岩波書店、1995 年)など。 金 聖源 (キム ソンウォン) (翻訳) 1985年ソウル生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業後、2007年電通入社。国内外大手企業の広告制作と新規事業開発に従事。2019年ロンドン大学ゴールドスミスで文化起業論、2020年に奨学生としてブリストル大学で移動・移民学のふたつの修士号を取得。英フィナンシャル・タイムズ勤務を経て、東京を拠点に異文化間コミュニケーションや日英韓の文化翻訳活動を展開している。 若林恵 (ワカバヤシ ケイ) (翻訳) 1971年神戸生まれ。編集者。早稲田大学第一文学部フランス文学科卒。1995年平凡社入社。『月刊太陽』編集部を経てフリーランスとして活動後、2012年より『WIRED』日本版編集長に就任。退任後、2018 年に黒鳥社を設立。近著に『実験の民主主義:トクヴィルの思想からデジタル、ファンダムへ』(宇野重規との共著/中央新書/2023年)、『「忘れられた日本人」をひらく:宮本常一と「世間」のデモクラシー』(畑中章宏との共著/黒鳥社/2023年)がある。
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時代の反逆者たち | 青木 理
¥1,980
河出書房新社 2024年 ソフトカバー 320ページ 四六判 縦188mm 横129mm 厚さ22mm - 内容紹介 - いま最も戦闘的なジャーナリスト・青木理が、各界で先鋭的に活躍する識者や活動家と対話を重ね、破滅に突き進むこの国の暗部を問う。未来を探るための必読書。 スタジオジブリ「熱風」人気連載! 戦争、歴史、マイノリティ、芸能、文学、ジャーナリズム… 最前線で闘うプロフェッショナルに訊く! 斎藤幸平 松尾貴史 国谷裕子 李琴峰 中島岳志 指宿昭一 奈倉有里 栗原俊雄 金英丸
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武器としての土着思考 僕たちが「資本の原理」から逃れて「移住との格闘」に希望を見出した理由 | 青木 真兵
¥1,980
東洋経済新報社 2024年 ソフトカバー 218ページ 四六判 縦188mm 横130mm 厚さ16mm - 内容紹介 - 青木君の文章と思考はつねに揺らぎ、葛藤している。決して単一原理に執着すまいというつよい決意が彼の文体に『過剰なまでの節度』(そんなものがあるのだ)を与えている。――内田 樹 奈良県東吉野村への移住実践者で、人文系私設図書館「ルチャ・リブロ」主催者による「土着」論。「都市の原理」と「村の原理」に折り合いを付けながら、いかに世間へ「ルチャ」(格闘)を仕掛けるか。若き在野研究者が綴る、生きる勇気が湧いてくる「逆」自己啓発書。 相手と関係をつくり、その関係の中でいかに生きていくか。この「相手」には、自分の中の「うまくコントロールできない自分」も含まれています。この相手とともにどう生きていくか。それこそ、僕が考える「闘い」(スペイン語でルチャ)です。だから本書で述べている武器とは、相手の技を受け、さらに強い技で返すことで生命力を高め合うような、「相手がワルツを踊ればワルツを、ジルバを踊ればジルバを」というかの名言にもあるような、「相手があってこその生」を築いていくための思考法のことなのです。本書では、相手との競争に勝つための武器を個別具体的に提示するのではなく、さまざまな事例を取り上げながら、「僕たちの闘い方」を一緒に考えていくことを目的としています。――「はじめに」より ある程度長く生きていれば分かるように、競争した相手が味方になったり、時には味方が敵になったりすることがあります。もしくは大切なプレゼンや試験や試合の前の日に限って眠れなかったり、うまく話しかけたいのにその場に行くと言葉が出てこなかったり、「自分のことが嫌い」という人は「自分こそが一番の敵」だと思っているかもしれませんね。むしろ、相手がいるからこそ僕たちは闘うことができる。相手がいるからこそ僕たちは生きていくことができる。この考え方こそ、巷で「茶番」の比喩として使われるのとは全く異なる、本当の意味での「プロレス的思考」です。馬場がいたから猪木があった。長州と藤波、小林と佐山、山田と佐野、棚橋と中邑も同様でしょう。決して二人ではなく、武藤、橋本、蝶野などといった三人の場合もあるかもしれない。分かる人にしか分からない例えですみません。――「はじめに」より - 目次 第1章 僕たちはどう生きづらいのか 1.僕たちが「資本の原理」から逃げ出すべき理由:奈良県東吉野村で生まれた「土着の知」の行き先 2.「生きづらさ」感じる社会をつくる一つの価値観:自分の価値を見失わず、生き抜くための思考法 3.「コスパ」と「スマート」の行き着く先にある「疎外」:「他人から必要とされているのか否か」をやめる 第2章 僕たちが図書館をする理由 4.僕たちが「利益を生まない図書館」を続ける理由:「他者の欲望」模倣より「ちょうどよい」身体実感 5.「風呂なし賃貸物件」は「失われた30年の帰結」だった:社会的貧困を踏まえて「借り」を生活に取り戻す 6.地域社会の「しがらみ」と折り合いをつける思考法:「土着」と「離床」のちょうどいいリアリティ 第3章 東吉野村で「二つの原理」を考える 7.「村の原理」と「都市の原理」に折り合いをつける:実は大事な「昔から続いてきた」「めんどくさい」 8.「もちつもたれつ」で生きのびてきた「神仏習合」:「2つの原理」で此岸と彼岸を行ったり来たり 9.「人間一人では生きていけない」を正面から考える:「個人の原理」と「共同体の原理」の決定的違い 10.『もののけ姫』が描いた「結果より過程」の哲学:目的なく「顔を出す」行為に支えられている社会 第4章 渡世人として生きていく 11.「若者の邪魔」をしてはいけない人口減少社会:年長者は「仕方ねぇなぁ」と待ち続けるしかない 12.寅さんが「何度でも失敗が許される」本当の理由:渡る世間には「ケアと就労」2つの原理が必要だ 13.「ワーク・ライフ・バランス」は「無理ゲー」です:「いい子」を生む経済成長前提の社会構造の限界 14.「リスキリングせよ、さもなくば自己責任」の未来:「ガンダム」が描いた「デジタル社会」への適応 第5章 土着人類学を通してこれからを考える 15.「心は売っても魂は売らない」ファンキーな土着:「逃れられない病」を土臭く泥臭く生きていく 16.「数値化」では世界の本質を理解できない:土着人類学で考える社会との折り合いの付け方 17.「ホラーの帝王」が描いた「選択と集中」が招く悲劇:「話半分に聞く」姿勢で新自由主義を生き抜く 18.「国富でなく民富こそ国力」と喝破した孟子の真意:「実質賃金マイナス」時代に必要な王道政治と士 - 著者プロフィール - 青木 真兵 (アオキ シンペイ) (著/文) 「人文系私設図書館ルチャ・リブロ」キュレーター、古代地中海史研究者、社会福祉士 1983年生まれ、埼玉県浦和市(現さいたま市)に育つ。「人文系私設図書館ルチャ・リブロ」キュレーター。古代地中海史(フェニキア・カルタゴ)研究者。博士(文学)。社会福祉士。2014年より実験的ネットラジオ「オムライスラヂオ」の配信をライフワークとしている。2016年より奈良県東吉野村に移住し自宅を私設図書館として開きつつ、現在はユース世代への支援事業に従事しながら執筆活動などを行っている。著書に『手づくりのアジールーー「土着の知」が生まれるところ』(晶文社)、妻・青木海青子との共著『彼岸の図書館ーーぼくたちの「移住」のかたち』(夕書房)、『山學ノオト』シリーズ(エイチアンドエスカンパニー) 、『つくる人になるためにーー若き建築家と思想家の往復書簡』(光嶋裕介との共著、灯光舎)などがある。
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沖縄について私たちが知っておきたいこと | 高橋 哲哉
¥880
筑摩書房 2024年 ちくまプリマー新書 ソフトカバー 176ページ 新書判 - 内容紹介 - 沖縄の基地問題を理解し、その解消を目指すためには、まず、沖縄が日本に併合された経緯やその後何度も本土のために犠牲になった歴史を知らなければならない。 沖縄の基地問題を理解し、その解消を目指すためには、まず、沖縄が日本に併合された経緯やその後何度も本土のために犠牲になった歴史を知らなければならない。 本土からの訪問者は年間数百万人にも上るが、沖縄に基地が集中しているのはなぜなのか、きちんと理解している人は少ない。 沖縄への過剰な負担についての本土の無関心は、沖縄に対する差別なのではないか? という意識が広まっている。そこにはどんな歴史的、構造的な理由があるのか。沖縄の基地問題に関心がなかった人、よく分からないという本土の人に向けて知って欲しいことを解説した一冊。 琉球処分、人類館事件、沖縄戦、アメリカによる統治、基地問題…… 本土と沖縄の関係を読み解くための大事な一冊 - 目次 - 第一章 沖縄の歴史 琉球処分/人類館事件/アジア太平洋戦争と沖縄 第二章 構造的差別とは何か 沖縄戦後に「戦後」は来たか/基地の島・沖縄 第三章 沖縄から問われる構造的差別 沖縄からの「県外移設」論/新たな「沖縄戦」の危機 対話 沖縄へのコロニアリズムについて - 著者プロフィール - 高橋 哲哉 (タカハシ テツヤ) (本文) 1956年生まれ。哲学者。東京大学教養学部教養学科フランス科卒業。同大学院哲学専攻博士課程単位取得。東京大学名誉教授。著書に、『記憶のエチカ――戦争・哲学・アウシュビッツ』(岩波書店)、『戦後責任論』(講談社)、『靖国問題』(ちくま新書)、『犠牲のシステム 福島・沖縄』『沖縄の米軍基地――「県外移設」を考える』(以上、集英社)、『日米安保と沖縄基地論争――〈犠牲のシステム〉を問う』(朝日新聞出版)ほか。