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生きることの意味を問う哲学 森岡正博対談集 | 森岡正博
¥2,200
青土社 2023年 ハードカバー 224ページ 四六判 - 内容紹介 - 「生まれてこないほうが良かった」と言われたとき、 あなたは何を語ることができるだろうか 反出生主義はほんとうに自殺を導かないのか? 加害者であることは引き受けられるのか? 日本語で哲学することは可能か? 対話によって開かれる哲学とはどういうものか?――戸谷洋志、小松原織香、山口尚、永井玲衣とともに、生きることの深淵を覗き込む。現代における重要テーマをめぐって重ねてきた言葉たちを結晶化した対談集。
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現代思想2023年5月臨時増刊号 総特集=鷲田清一 ―ふれる・まとう・きく―
¥1,980
青土社 2023年 ソフトカバー 360ページ - 内容紹介 - 臨床哲学からファッション論まで…鷲田清一のすべて 親しみをこめてワッシーと呼ばれるその哲学者の足跡をたどれば、切り開いた領野の広さに目をみはらざるをえない。自由で軽やかな言説は、気取りがなく、深みをたたえ、いつまでも瑞々しさを失わない。本特集では、アカデミズムにとどまらない多彩なジャンルの執筆陣により、いまだ十分に語りつくされていない鷲田清一の全体像に迫る。 line2.gif 【目次】 総特集*鷲田清一――ふれる・まとう・きく 【インタビュー】 哲学を汲みとる / 鷲田清一(聞き手=永井玲衣) 【ポートレートⅠ】 鷲田さんとの交流 / 植島啓司 ふれること、見守ること。――鷲田清一との三十五年 / 佐々木幹郎 「ワシダさん」のいる風景 / 森村泰昌 鷲田さんの「授業」を受けた / 高橋源一郎 【耳を傾ける哲学】 鷲田さん、とのこと / 西川勝 哲学の臨床、そして大学行政へ / 中岡成文 「臨床哲学」以前・以後 / 野家啓一 臨床哲学の肺活量 / 小林傳司 臨床哲学研究室と〈私〉――拝啓、鷲田清一さま / 小西真理子 これは臨床哲学ではない――鷲田清一のメタ哲学をめぐる〈思考の試み(エッセイ)〉 / 奥田太郎 【傍らに立つ思想】 co-presence――ともにあることへの根源的な敬意 / 西村ユミ ことばの人 / 柏木哲夫 老い、営みの不在――鷲田清一『老いの空白』に寄せて / 小泉義之 「傾聴」の進化、祈りへ / 柳田邦男 所有論をケアの視点から考える――『ロビンソン・クルーソー』から『わたしを離さないで』まで / 小川公代 【アルバム】 哲学者の足あと 【ポートレートⅡ】 やわらかい思考と実践の哲学者 / 山極寿一 哲学とアンドロイド / 石黒浩 鷲田さんと京都 / 吉岡洋 鷲田さんの哲学 / 内田樹 【装うことの美学】 哲学者の柔らかな感性 / コシノヒロコ 「装う」は新しい次元に / 森永邦彦(ANREALAGE) ここにいてもいい――ファッションと臨床 / 山縣良和(writtenafterwards.coconogacco) 鷲田清一氏をめぐる私的断章 / 堀畑裕之(matohu) 鷲田清一以降の「ファッション学」 / 平芳裕子 鷲田清一とは別の仕方で、あるいは鷲田清一の彼方へ / 蘆田裕史 夢を紡がれた皮膚――手繰り寄せられる我の標、イレズミ / 大貫菜穂 【ポートレートⅢ】 しなやかな武器 / 甲斐賢治 京都市立芸術大学・美術工芸高校 新キャンパスについて / 大西麻貴+百田有希/o+h まなざしと記憶 / 鈴木理策 【もつれ広がる探究】 鷲田清一とメルロ=ポンティ 「スティル」の現象学 / 加國尚志 鷲田清一と離一の現象学 / 谷徹 はじまりの鷲田清一――臨床哲学への一批判 / 檜垣立哉 他なるものとの「共存」を求めて――二つの質疑応答から / 松葉祥一 九鬼周造の「メロス」をめぐって / 藤田正勝 【響きあうことば】 言語表現としての「折々のことば」 / 鈴木一平 異なる「生」を摺りよせる――鷲田清一と哲学対話 / 戸谷洋志 散種されることば、依代となることば――教材としての鷲田清一 / 五味渕典嗣 鷲田清一と石原吉郎の《位置》――老アーキビストの断想 / 川本隆史 【資料】 アンチ・セオリーとしての哲学――鷲田清一ブックガイド / 山口尚
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とまる、はずす、きえる ケアとトラウマと時間について | 宮地尚子, 村上靖彦
¥2,200
青土社 2023年 ハードカバー 256ページ 四六判 - 内容紹介 - トラウマ研究と、医療・福祉の現象学の第一人者が、具体と抽象を行き来しながら紡ぎ出す、比類なき対談集。 「学問的な硬い概念では取りこぼされる人間の経験の微細なニュアンスについて、考察することへと宮地さんも私もいざなわれた(「まえがき」より)」――村上靖彦 「表面的な言葉の群れにとどまらない、なにか微かだけれども、底流に流れている大切なものを拾い続けられたらと思う(「あとがき」より)」――宮地尚子
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日常性の哲学 知覚する私・理解する私|松永 澄夫
¥1,386
講談社 2023年 講談社学術文庫 ソフトカバー 352ページ 文庫判 - 内容紹介 - 日常は哲学的な問いに満ちている――日常的観点からは当然のように思われることでも、哲学の歴史をひもとけば、これをめぐって多くの紛糾した議論がなされてきた。 何の変哲もない代わり映えしない風景。昨日も今日も変わらない出来事の繰り返し。それらを見て聞いて普段通りと感じる〈私〉の繰り返し。私たちの日常は、日々繰り返している物の知覚と出来事の理解から成り立っている。 本書は、このように私たちの日常の秩序を支える純然たる物としての物の知覚と、物の世界での出来事の理解を、哲学史にでてくる概念や専門用語を使わず、日常の言葉で哲学的に省察する。世界の見え方を刷新する画期的論考。 *『知覚する私・理解する私』(勁草書房、1993年)を改題・増補して文庫化。 [主な内容] はしがき 第一章 知覚における対象性成立の論理 第二章 知覚的質と本当に在るもの 第三章 因果的理解と行為 第四章 法則の概念と出来事の始まり 本文の哲学史的背景についての注解 注 あとがき 学術文庫版あとがき - 著者プロフィール - 松永 澄夫 (マツナガ スミオ) (著/文) 1947年生まれ。哲学者。東京大学名誉教授。専攻はフランス哲学、言語論、社会哲学。主な著書に、『哲学史を読む』、『価値・意味・秩序』、『経験のエレメント』、『感情と意味世界』、『食を料理する(増補版)』、『想像のさまざま』、『生きること、そして哲学すること』ほか多数。
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実践 日々のアナキズム 世界に抗う土着の秩序の作り方|ジェームズ・C・スコット, 清水 展(翻訳), 日下 渉(翻訳)
¥3,080
岩波書店 2017年 ハードカバー 216ページ 四六判 縦200mm - 内容紹介 - はじめに アナキストの懐疑の眼,もしくはアナキストのように眺めること 組織の逆説 社会科学の実践に対するアナキストの懐疑の眼 一つ,もしくは二つのご注意 第一章 無秩序と「カリスマ」の利用 断章1 アナキスト柔軟体操というスコットの法則 断章2 不服従の重要性について 断章3 さらに不服従について 断章4 広告「リーダーがあなた方の導きに喜んで従うつもりで,支持者を求めています」 第二章 土着の秩序と公式の秩序 断章5 土着と公式,二つの「知る」方法 断章6 公的な知と管理の風景 断章7 土着的なるものの柔靱な反発 断章8 無秩序な都市の魅力 断章9 整然さの裏の無秩序・混沌 断章10 アナキスト不倶戴天の敵 第三章 人間の生産 断章11 遊びと開放性 断章12 なんて無知でばかげているんだ! 不確実性と適応性 断章13 GHP :総人間生産量 断章14 介護施設 断章15 制度のなかの人生という病理 断章16 穏やかな,直感に反した事例――赤信号の除去 第四章 プチ・ブルジョアジーへの万歳二唱 断章17 中傷されてきた階級を紹介する 断章18 軽蔑の病因論 断章19 プチ・ブルジョアジーの夢――財産という魅惑 断章20 プチ・ブルジョアジーのさほど小さくはない機能 断章21 「無料の昼食」,プチ・ブルジョアジーの親切 第五章 政治のために 断章22 討論と質――質の計量的測定に対する反論 断章23 もしそうなったら……? 監査社会の夢想 断章24 当てにならず,必然的に劣化する 断章25 民主主義,業績,政治の終焉 断章26 政治を弁護する 第六章 個別性と流動性 断章27 小口の善意と同情 断章28 個別性,流動性,そして偶発性を取り戻す 断章29 歴史の虚偽をめぐる政治学 注 訳者あとがき・解題(清水 展)
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アートの力 美的実在論|マルクス・ガブリエル, 大池惣太郎(翻訳), 柿並良佑(翻訳)
¥2,420
SOLD OUT
堀之内出版 2023年 ソフトカバー 248ページ 四六変型判 縦188mm 横120mm 厚さ14mm - 内容紹介 - 美術の見方が変わる! 天才哲学者、マルクス・ガブリエルによる初の芸術論。アートとは一体何なのか?その根源に迫ることで、すべての作品に通じる鑑賞態度を拓く。 「私たちがアート作品を生み出すのではない。アート作品こそが、自分を存在させはじめるために、私たちを参加者として創造するのだ。」 ◉知識、背景を教える本ではありません! 特定のジャンルや作品ではなく、アート全般に通用する鑑賞態度や思考を掘り下げる本です。知識や経験が豊富でなくても、アートの世界に分け入ることができます。 ◉あらゆる作品に通じる鑑賞態度を学べます! この本がテーマにしているのは、アートとはそもそも何なのか、そして、作品に向き合う私たちの態度です。ジャンルを越え、あらゆる作品に通じる鑑賞態度が開かれます。 ◉身近な例が多数登場します! モネの絵画や、便器を用いた《泉》などの有名な作品はもちろん、スター・ウォーズのシリーズや、日々目にする太陽の光など、身近な例から美術についてじっくりと解説しています。 ◉そのほか本書で取り扱うトピック ・デザインとアートの違いは? ・アートの価値は何で決まるのか? ・なぜ、アートは人類の起源だといえるのか? ・現代アートはなぜ人を困惑させるのか? 『なぜ世界は存在しないのか』(講談社選書メチエ)等のベストセラーで知られる哲学者が、さまざまな疑問に答えつつ、美術の持つ力の根源に迫る。 目次 序文 ベルナール・ジェニエス アートの力 アートの価値 美学と知覚 パフォーマンスとしての解釈 自律性、ラディカルな自律性、オリジナリティ アートと(権)力 補論 懐疑のアート、アートの懐疑 訳者解説 大池 惣太郎 - 著者プロフィール - マルクス・ガブリエル (マルクスガブリエル) (著/文) 1980年生まれ。哲学者。29歳で、史上最年少のボン大学哲学科教授に就任。 「意味の場」をキーワードに自身の新しい実在論を展開するほか、シェリングやヴィトゲンシュタイン、ハイデガー等、ドイツ哲学を中心に著作を執筆し、世界的な注目を浴びている。本書のほか、『神話・狂気・哄笑』(堀之内出版、2015年)や、『なぜ世界は存在しないのか』(講談社、2018年)等の訳書多数。
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贈与をめぐる冒険 新しい社会をつくるには|岩野卓司
¥2,090
ヘウレーカ 2023年 ソフトカバー 182ページ 四六判 縦188mm 横128mm 厚さ15mm - 内容紹介 - 栗原康さん推薦! 「こいつはどっこい革命の書だァ! 義務も制裁もない道徳をいきろ。 プレゼントをなめるな。」 貧困や格差の拡大、つながりの喪失による孤立や無縁化、生態系の破壊……、わたしたちの社会は大きな困難に直面している。 このままでは世界はいったいどうなるのか、そんな不安を感じながら生きている人は少なくないだろう。 こうした課題の根本的な原因といえるのが、資本主義の行き過ぎである。 しかし、わたしたちは資本主義の恩恵も受けており、資本主義を何かほかのものに変えれば問題が解決するということではない。そもそも貨幣とモノとの交換である経済の前には、何かを与えてお返しを受け取ることで交換が成立する経済があった。 これが本書のテーマである「贈与」である。 資本主義社会では何よりも経済的な利益が優先されるのに対して、贈与の大きな特徴は、モノの移動にともなって人と人、人とモノのあいだに精神的な交流が生まれることである。 では、このような贈与の考え方を現代社会に活かし、行き過ぎた資本主義を「変質」させることはできるのだろうか。 古典的な贈与の理論をふまえながら、同時に現代社会でおこなわれている贈与の考えを取り入れたさまざまな取り組みを読み解き、わたしたちがこれからの人間どうしの関係、自然と人間との関係を問い直し、新しい社会をつくるための手がかりを探る。 目次 プロローグ オンラインと格差/混沌とした時代と揺らぐ価値観/贈与の可能性/贈与のいま 第1章 贈与をめぐる日常――プレゼントはなぜうれしいのか 1 あげる人、もらう人 子供と大人の違い/友達どうしの水平な関係 2 贈与とお返し 悩ましいバレンタインデー/お祝いにお返しは不文律 3 贈り物をするわけ 人間関係をつくるための手段/記念日とプレゼントは切り離せない 4 贈与の力学 贈る側がつねに優位/ポトラッチと朝貢貿易/贈与と権力 5 贈与の毒 悪意の贈与もある/無意識にひそむ贈与の毒 第2章 与えられているもの――贈与と他者 1 校 則 校則に反発したくなる理由 2 法 律 一方的に与えられているわけではない/贈与としての憲法/アンガージュマン 3 文 法 自覚しないで従うルール 4 言語のシステム ラング(言語)による支配 5 結婚のシステム 現代に残る慣習/インセスト(近親相姦)はなぜタブーか 6 知 識 他者から与えられるもの/情報・資料・所与/贈与と哲学/他者とのかかわり 第3章 贈与の慣習――贈与と資本主義Ⅰ 1 贈与と社会的慣習 面倒なコミュニケーション/世間と「村八分」 2 贈与と村社会/村社会の掟/商業的交換の功罪 3 資本主義 金がすべて?/贈与につきまとう不平等/広がる格差/「無縁社会」の到来 第4章 新しい贈与のかたち――贈与と資本主義Ⅱ 1 社会保険 セーフティネットの役割/モースの着眼 2 ギフト・エコノミー 「カルマ・キッチン」と贈与の連鎖/ギフト・エコノミーの弱点/クルミドコーヒーによる「ゆっくり、いそげ」の冒険/「消費者的な人格」と「受贈者的な人格」 3 ボランティア ゆるやかな自己贈与/ボランティア精神の根底にあるもの/贈与によるつながり 第5章 自然の贈与――感謝するということ 1 気候変動 加速する温暖化/自然の支配 2 自然の恵み 「生態系サービス」「自然資本」という考え/太陽の贈与/太陽に由来するハロウィンとクリスマス/「いただきます」/草木塔/鯨供養 3 宮沢賢治と自然 「よだか」の苦悩/蝎の願い/狼森と笊森、盗森 エピローグ ブックガイド あとがき - 著者プロフィール - 岩野卓司 (イワノ タクジ) (著/文) 東京大学大学院人文科学研究科博士課程単位取得退学。パリ=ソルボンヌ大学大学院博士課程修了。博士(哲学)。現在、明治大学教授(教養デザイン研究科・法学部)。主な著書に、『ジョルジュ・バタイユ─―神秘経験をめぐる思想の限界と新たな可能性』(水声社)、『贈与の哲学─―ジャン=リュック・マリオンの思想』(明治大学出版会)、『贈与論─―資本主義を突き抜けるための哲学』(青土社)、主な訳書に、ジャック・デリダ『そのたびごとにただ一つ、世界の終焉 Ⅰ・Ⅱ』(共訳、岩波書店)、『バタイユ書簡集 一九一七―一九六二年』(共訳、水声社)などがある。
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SNSの哲学 リアルとオンラインのあいだ|戸谷 洋志
¥1,540
SOLD OUT
創元社 2023年 シリーズ「あいだで考える」 ソフトカバー 144ページ 四六変型判 縦168mm 横130mm 厚さ10mm - 内容紹介 - シリーズ「あいだで考える」創刊! 不確かな時代を共に生きていくために必要な 「自ら考える力」 「他者と対話する力」 「遠い世界を想像する力」 を養う多様な視点を提供する、 10代以上すべての人のための人文書のシリーズ。 * 『SNSの哲学――リアルとオンラインのあいだ』 あなたに考えてほしいのは、 「SNSをどう使うべきか」といったマニュアル的なことではなく SNSを使っているあなた自身が何者なのかという問いなのです。 承認・時間・言葉・偶然・連帯。 SNSを使う私たちを描く 新しい哲学の本。 10代の生活にすっかり溶け込んでいるSNSの利用をめぐるさまざまな現象――「ファボ」「黒歴史」「#MeToo運動」など――を哲学の視点から捉え直し、この世界と自分自身への新しい視点を提供する。若い読者に「物事を哲学によって考える」ことの面白さと大切さを実 践的に示す一冊。(装画:モノ・ホーミー) 目次 はじめに 1章 なぜSNSで承認されたいのか? 1 「SNS疲れ」の正体 2 私たちはなぜ承認を求めるのか? 3 相互承認の境地へ 2章 SNSにはどんな時間が流れているのか? 1 タイムラインに時間は流れていない 2 SNSに時間を作りだす 3 人間の生きる時間性 3章 SNSではどんな言葉が交わされているのか? 1 私たちはなぜ「つぶやく」のか? 2 「つぶやき」と炎上 3 言葉とルール 4章 SNSに偶然はあるのか? 1 SNSのアルゴリズム 2 アルゴリズムと偶然性 3 自分自身を創造する 5章 SNSで人は連帯できるのか? 1 政治に利用されるSNS 2 SNSがつむぐ連帯 3 つながりに力を与えるために おわりに リアルとオンラインのあいだをもっと考えるための作品案内 - 著者プロフィール - 戸谷 洋志 (トヤ ヒロシ) (著/文) 1988年東京都生まれ。関西外国語大学英語国際学部准教授。専攻は哲学・倫理学。技術思想や未来倫理学を探究するかたわら、「哲学カフェ」の実践などを通じて、社会に開かれた対話の場を提案している。著書に『友情を哲学する』(光文社新書)、『未来倫理』(集英社新書)、『NHK100分de名著 ハイデガー『存在と時間』』(NHK出版)、『スマートな悪』(講談社)、『ハンス・ヨナスの哲学』(角川ソフィア文庫)ほか多数。
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ハンナ・アーレント、三つの逃亡|ケン・クリムスティーン, 百木漠(翻訳)
¥3,960
SOLD OUT
みすず書房 2023年 ハードカバー 248ページ 菊変型判 - 内容紹介 - ユダヤ人として戦争の世紀に生まれ落ち、 現実に向かって“なぜ?”と問いつづける少女ハンナ。 『全体主義の起原』『活動的生』を著した 不世出の政治哲学者の生涯を 繊細に、大胆に、描ききる名作グラフィックノベル。 〈これから語られるのは、 ハンナ・アーレントという人物の 生涯についての物語である。 別の時代の、失われた世界の、 失われた国に生まれ落ちた亡命哲学者。 その名前を聞いたことがある人も いるかもしれない。 最後に残る(そして最初からある)疑問。 なぜこの人物は、 おそらく20世紀の最も偉大な哲学者は、 哲学を捨てたのだろうか? それにもかかわらず、なぜ彼女の思考は、 人類が前に進むための生きた道筋を 示してくれるのだろうか?〉 目次 若きハンナの悲しみ――東プロイセン 割れ目を踏む スピロヘータ 癒しの錬金術 マールブルクの魔術師 恍惚とした真理 1925 「誓います」 1929 ハンナ、第一の逃亡――ベルリン ロマーニッシェス:1933 黒いハバナの葉巻 いかさま裁判開廷中 1933年2月27日 われわれがこの世界の邪魔をする 私に罪を着せないで(その朝帰りのあとで) 無垢の終わり ごく形式的なものです(正午) お断りします(二日後) 無国籍 ハンナ、第二の逃亡――パリ パリで三方面から真理へ迫る 1933 ハンナのパリ、三枚続きの絵――一枚目:愛する人 1936 ハンナのパリ、三枚続きの絵――二枚目:思考する人 ハンナのパリ、三枚続きの絵――三枚目:行動する人 ゲームは進行中 1939年9月1日 1940年5月5日 冬季自転車競技場、フランステクノロジーの勝利! ギュルスへ 1940年5月23日 1940年6月14日 大混乱の崇高さ 徒歩で 地中海で運が尽きたアテネ 隠れ家を去る 1940年 鍵作戦 午前4時 ポルトボウにて 今がそのときだ 楽園から嵐が吹いてくる ハンナ、第三の逃亡――ニューヨーク 新世界 1941 眉をひそめる 新たなユダヤ的任務完了 この種の真実の語りは 深淵 1943 アーレント主義の起源 ハイデガーの山小屋 マルタの最期と無数の「なぜ」 1951 ヴァルターの染み 1955 メアリー、メアリー:1958 時代の現存在 1958(15分後) リバーサイドのカディッシュ 手すりなき思考――エルサレムとその後 宇宙時代の思想家 市民第1号? 悪魔とタンゴを踊る:ブエノス・アイレス 1961 複数性にむかってうつむきながら歩く:1968 そして、始まりにおいて エピローグ 読書案内 謝辞 訳者あとがき - 著者プロフィール - ケン・クリムスティーン (ケンクリムスティーン) (著/文) (Ken Krimstein) 漫画家。『ニューヨーカー』『ウォール・ストリート・ジャーナル』『ニューヨーク・タイムズ』『シカゴ・トリビューン』などで漫画を発表。デポール大学やシカゴ美術館附属美術大学で講師を務める。これまで、Kvetch as Kvetch can: Jewish Cartoon(Potter Style, 2010)、『ハンナ・アーレント、三つの逃亡 The Three Escapes of Hannah Arendt』(本書。全米ユダヤ図書賞ファイナリスト、Bloomsbury Publishing, 2018)、When I Grow Up: The Lost Autobiographies of Six Yiddish Teenagers(ワシントン・ポストのグラフィッ クノベル部門年間ベスト10ブック、Bloomsbury Publishing, 2021)の三作を出版、いずれもユダヤ人というテーマにとりくみ、高い評価を受けている。イリノイ州エヴァンストン在住。 *ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。 百木漠 (モモキバク) (翻訳) (ももき・ばく) 1982年奈良県に生まれる。専門は政治思想史・社会思想史。現在、関西大学法学部准教授。京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程修了。博士(人間・環境学)。単著に、『アーレントのマルクス――労働と全体主義』(人文書院、2018年)、『嘘と政治――ポスト真実とアーレントの思想』(青土社、2021年)、共著に『現代社会理論の変貌――せめぎあう公共圏』(日暮雅夫・尾場瀬一郎・市井吉興編、ミネルヴァ書房、2016年)、『生きる場からの哲学入門』(大阪哲学学校編、新泉社、2019年)、『漂泊のアーレント、戦場のヨナス――ふたりの二〇世紀 ふたつの旅路』(慶應義塾大学出版会、2020年)、『アーレント読本』(日本アーレント研究会編、法政大学出版局、2020年)などがある。 *ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです。
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階級とは何か|スティーヴン・エジェル, 橋本 健二(翻訳)
¥1,320
筑摩書房 2023年 ちくま学芸文庫 ソフトカバー 288ページ 文庫判 - 内容紹介 - マルクスとウェーバーから、現代における展開まで。階級理論の基礎を、社会移動・経済的不平等・政治にも目配りしつつ、総覧する類書のない入門書。 === 産業資本主義社会においては〈階級〉というものが非常に大きな影響力をもつ──。本書は他に類書のない、階級理論の入門書である。ここでは、〈階級理論の2人の創始者〉マルクスとウェーバーにおける階級概念の比較から出発し、その後の多様な研究の展開を追う。さらに、階級分析の方法論と、現代社会における支配階級/中間階級/従属階級の構造を概観し、社会移動、ジェンダー、政治といった要素に目を向けつつ、階級社会の未来と無階級社会の可能性について論じていく。社会的不平等や経済的貧困など、格差社会の問題を根本から考えるすべてのひとに勧めたい一冊。 === 格差社会を根幹から考える 最良の入門書 === 【目次】 序 第1章 階級の古典的理論 ― マルクスとウェーバー ― はじめに/階級に関するマルクスの見解/プロレタリア化、両極分解と革命的変化/革命的な変化を妨げる要因/階級に関するウェーバーの見解/階級闘争の分断/要約と結論 第2章 現代の階級理論 ― ネオ・マルクス主義とネオ・ウェーバー主義 ― はじめに/ライトのネオ・マルクス主義階級理論/ライトへの批判/ゴールドソープのネオ・ウェーバー主義的階級理論/ゴールドソープへの批判/職業階級(地位)について/要約と結論 第3章 階級の測定 はじめに/伝統的階級分析法に対する批判/階級の操作化 ― 三つの重要な選択/要約と結論 第4章 階級構造と社会変動 はじめに/支配(諸)階級/中間(諸)階級/従属(諸)階級/アンダークラスに関する覚書/要約と結論 第5章 階級と社会移動 はじめに/現代男性の社会移動/現代女性の社会移動/要約と結論 第6章 階級・不平等・政治 はじめに/階級と経済的不平等 ― 測定上の問題/階級と経済的不平等 ― データ/民主的階級闘争/要約と結論 第7章 無階級社会と階級の終焉 はじめに/無階級社会の現代的構想/要約と結論 文献一覧 主要邦訳文献目録 文庫版訳者あとがき 索引 - 著者プロフィール - スティーヴン・エジェル (スティーヴン エジェル) (著/文) 1942年生まれ。英国サルフォード大学教授。専門、社会学。階級理論・ジェンダー理論・労働社会学の実証研究などを専門とし、社会学者T.ヴェブレンの研究でも知られる。本書のほか、主著にMiddle-Class Couples (1980), Veblen in Perspective:His Life and Thoughts(2001)などがある。 橋本 健二 (ハシモト ケンジ) (翻訳) 1959年生まれ。早稲田大学人間科学学術院教授。専門、社会学。
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暗闇のなかの希望 増補改訂版 語られない歴史、手つかずの可能性|レベッカ・ソルニット, 井上 利男(翻訳), 東辻 賢治郎(翻訳)
¥1,100
SOLD OUT
筑摩書房 2023年 ちくま文庫 ソフトカバー 256ページ 文庫判 - 内容紹介 - イラク戦争下で「希望を擁護する」ために刊行され、二〇一六年に加筆された改訂版を文庫化。アクティヴィズムと思想を往還する名著。解説 小川公代 ソルニット、初文庫化 直接行動(アクティヴィズム)と思想を自在に往還する現代の名著 解説 小川公代 2003年、イラク戦争が始まった時期に、「希望を擁護する」ために本書は書かれた。あの時代は過ぎ去ったが、あらたな戦争が生じ、破壊的な気候変動が到来している。絶望と冷笑主義が残りつづける現代に、希望をもつことはいかに可能なのか。「希望は光を浴びた舞台の真ん中ではなく、周縁の暗がりにある」(本文より)。2016年に改訂され、直接行動と思想を往還する現代の名著を文庫化。 解説 小川公代 【目次】 日本のみなさんへ 第三版への序文(二〇一五年) 希望が拠って立つもの 1 暗闇を覗きこむ 2 私たちが敗北したとき 3 私たちが勝ち取ったもの 4 偽りの希望と安易な絶望 5 影の歴史 6 千年紀の到来 ―― 一九八九年一一月九日 7 千年紀の到来 ―― 一九九四年一月一日 8 千年紀の到来 ―― 一九九九年一一月三〇日 9 千年紀の到来 ―― 二〇〇一年九月一一日 10 千年紀の到来 ―― 二〇〇三年二月一五日 11 変革のための想像力を変革する 12 直接行動の間接性について 13 もうひとつの歴史の天使 14 カリブーのためのバイアグラ 15 楽園からの脱出 16 大いなる分断を越えて 17 イデオロギーの後に ―― あるいは時間の変容 18 グローバルなローカル ―― あるいは場所の変容 19 テキサスの三倍大きな夢 216 20 疑い 21 世界の中心への旅 振り返る平凡な人びとの非凡な偉業(二〇〇九年) すべてがばらばらになり、すべてがまとまりつつある(二〇一四年) あとがき後ろ向きに、前向きに 謝辞 巻末注記 訳者あとがき 東辻賢治郎 解説 ネガティヴ・ケイパビリティのなかの希望 小川公代 - 著者プロフィール - レベッカ・ソルニット (レベッカ ソルニット) (著/文) (Rebecca Solnit):1961年生まれ。作家、歴史家、アクティヴィスト。カリフォルニアに育ち、環境問題・人権・反戦などの政治運動に参加。アカデミズムに属さず、多岐にわたるテーマで執筆をつづける。主な著書に、『ウォークス歩くことの精神史』(左右社)、『オーウェルの薔薇』(岩波書店)がある。 井上 利男 (イノウエ トシオ) (翻訳) 1944-2019年。翻訳家。奄美で石油基地反対運動に参加後、福島第一原発事故に遭遇。 東辻 賢治郎 (トウツジ ケンジロウ) (翻訳) 1978年生まれ。翻訳家、文筆家。関心領域は近代の技術史、建築史、紀行、地図制作。
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現代という時代の気質|エリック・ホッファー, 柄谷 行人(翻訳)
¥1,100
筑摩書房 2015年 ちくま学芸文庫 ソフトカバー 192ページ 文庫判 - 内容紹介 - 群れず、熱狂に翻弄されることなく、しかし自分自身の内に篭ることなく、人々と共に歩み、権力と対峙していく方法を、省察の人・ホッファーに学ぶ。
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岡潔の教育論 |中沢新一, 岡潔, 森本弘
¥2,750
コトニ社 2023年 ソフトカバー 272ページ 四六判 - 内容紹介 - 「教育はどうすればよいのだろう」 暗記と論理の偏重、効率主義と個人主義を超えてーー 世界的数学者がとく、「自然」にそくした「正しい心」の育て方、その「論理」と「直観」を統合する考え方と実践がここによみがえる!! 【中沢新一「はじめに」より】 《『岡潔の教育論』は、岡潔の教育に関するエッセイと、岡潔と森本弘が五十年ほど前に、阿吽の呼吸で繰り広げた教育をめぐる問答の記録を、一冊にまとめたものです。(…)森本弘さんは、地元和歌山で小学校の先生をされていた方です。教育の現場で成長していく子供のこころを長きにわたって見つめ続けていた人です。(…)岡潔と数学が出会って現代数学に新しい世界が開かれたように、森本弘と岡潔が出会って新しい教育の理念がつくられたように、この本が多くの人のこころに届いて、そこから新しいものの考え方や感じ方や未来への指針が生まれてくることを、私たちは願ってやみません。》 目次 はじめに(中沢新一) 第1章 小学校以前ーー教育はどうすればよいのだろう1(岡潔) 第2章 情緒の教育ーー教育はどうすればよいのだろう2(岡潔) 第3章 知性と意志の教育ーー教育はどうすればよいのだろう3(岡潔) 第4章 教育に東洋の秋をーー構造学習と大脳生理の一思案(森本弘) 解説(中沢新一) 解説 情緒と微笑(唐澤太輔) 前書きなど はじめに 中沢新一 『岡潔の教育論』は、岡潔の教育に関するエッセイ(「教育はどうすればよいのだろう1~3」)と、岡潔と森本弘が五十年ほど前に、阿吽の呼吸で繰り広げた教育をめぐる問答の記録を、一冊にまとめたものです。本書成立のきっかけは小さな偶然によるものでした。数年前岡潔についての講演を頼まれて和歌山県橋本市を訪れた際、森本弘の義理の娘さんである森本和子さんから、こんなものが遺されているのですがといってみせていただいたのが、岡潔と森本によるその問答の記録でした。妙に揃った几帳面な文字で、何度も書き直し、清書されたであろうその原稿には不思議な熱がこもっていました。その内容を一読して、これはとても貴重な価値をもつもので、このまま埋もれさせてはならない、と私は思いました。 森本弘さんは、地元和歌山で小学校の先生をされていた方です。教育の現場で成長していく子供のこころを長きにわたって見つめ続けていた人です。その中で、子供のこころと実直に向き合えば向き合うほど、日本人のこころはこれからどうあるべきなのか、自分は教育者として、それをどう果たせばよいのかという思いが強くなっていったことでしょう。それは戦後教育の課題そのものでもありました。 敗戦後の日本は民主主義国家となり、自由と平等を掲げた教育がはじまりました。激しい変化を体験して、どの教師も迷いを抱えていました。彼らの大半は戦前の日本の教育を受けて育っています。新しい教育の中では、昔からの「日本のこころ」のあり方は否定的に扱われていましたが、それに変わる価値や思想は、まだ育っていませんでした。 国の体制や教育の形が変わっても、変わらない「日本のこころ」というものがあるのか。そこには目には見えないけれど、私たちを生かすなにかとても大切なものが潜んでいたようだが、それを次の世代、若い皆さんへどう伝えていけばいいのか。その切実な想いが、当時自分たちの身近に住んでいて、日本人のこころのあり方を必死に説いていた高名な数学者に、向かっていったのです。森本さんは岡潔に必死の思いで、自分たち教師は子どもたちに「日本のこころ」の何を伝えていけばよいのか、と問うたことでしょう。その熱意に打たれた岡潔は胸襟を開いて、両者の対話がはじまりました。その対話の過程でわかってきたことを森本さんが記録し、まとめられたものを今度は訂正したり、詳細に膨らませたりしながら、この原稿はできあがっていきました。そのときの熱気が、いまでも伝わってくるようです。 本書に収められた両名の文章は、一九六〇~一九七〇年代に書かれたものです。日本が敗戦の傷から立ち直り、高度経済成長へと向かっていくその中で、「日本のこころ」も大きな変化を遂げてきました。合理主義と効率が重視され、そうでないものはだんだんと隅においやられるようになっていきました。しかし、人間のこころはそれだけではない。表面は変化したかにみえてもこころの奥に変わらないものがある、「日本のこころ」はそこに深く根ざしているはずである。岡潔の教育や日本人の思想風潮への警鐘はそのような確信からきています。 岡潔は世界的な数学者で、その当時の日本でもよく知られる人物でした。しかし、彼自身の人生は順風満帆というわけではありません。若き日からおたがいを切磋琢磨してきた無二の親友を留学中のパリで失い、帰国後は精神衰弱におちいり、大学の職を失って何年ものあいだ世間から隔絶した暮らしをしたこともありました。友人たちの助けでようやく奈良女子大学に職を得たのは、敗戦を経て四十八歳になった頃のことでした。しかし、どんな困難に出会っていても、岡潔は少しも自分を不幸とは思いませんでした。それは、いつでも彼が全身全霊をこめて純粋一途に追求できる数学の世界があったからです。 岡潔は「数学とは、自らの情緒を外に表現することによって作り出す学問芸術の一つである」と考えていました。情緒の表れは数学に限りません。俳句や和歌でも、音楽や絵画にも情緒は宿ります。野に咲く一輪のスミレに、ああキレイだな、と思うこころが情緒だと、岡潔は言っています。日本の自然豊かな風土が日本人のこころをはぐくみ、その「情緒」が自分と数学のこころを通わせたのです。数学は一見、冷たい論理や数式によって表されているように見えるかもしれませんが、じつはその背後に、目に見えない情緒の世界が動いている、それが彼の確信でした。 岡潔は人間には「第一の心」と「第二の心」があると考えていました。論理や数式の世界は「第一の心」にあたります。理性や論理を働かせ、世界中の数学者の誰にでもわかるように論文を書いて成果をあげることができます。それによって社会の中で職を得て、豊かで安定した生活を送ることができます。この「第一の心」を教育で身につけることは、大切なことです。理性や自制心を身につけることによって、人間としての社会生活を送る能力を得る。それを子供達に身につけさせることが、教育のひとつの使命と、岡潔も考えていました。 一方で、私たちのなかには、「第二の心」も保存されています。この「第二の心」というのが「情緒」というものに深いつながりを持つ、もう一つの心の働きです。これは合理的な論理を超えて、心の奥のほうで行われている心の活動です。ものごとの全体的なつながりを直感的にとらえながら、たんなる論理を超えてこの世界の真実をつかむことを可能にする心の働きです。日本文化の中で、この「第二の心」はとても大きな働きをしてきました。ところが現代生活においては、「第二の心」が「第一の心」にひどく抑圧されていると、岡潔は考えました。 「第一の心」と「第二の心」を協働して存分にはたらかせること。そこから人と人とをつなぐよりよい社会がつくられていくはずだというのが、岡潔の基本的な考えでした。そのためにも日本人のこころに、情緒をよみがえらせていかなければならないのです。現代の私たちからみると、いささか素朴でロマンチックな考えのように見えるかもしれません。岡潔と森本弘がそういうことを考えていた頃に比べても、いまはものごとが複雑に絡まりあい、情緒も世界の全体像もみえなくなっているように思えるからです。しかしだからこそ、岡潔のまっすぐな確信と森本弘の渾身の挑戦は、私たちに大きな勇気と示唆を与えてくれます。現代の世界がどんなに混迷を深め、純粋なこころの働きが見えにくくなっているとはいえ、人間の本質は変わっていないからです。 橋本市で起こったひとつの原稿との出会いをきっかけに、「日本のこころとは何か」を考えようという本書は生まれました。岡潔と数学が出会って現代数学に新しい世界が開かれたように、森本弘と岡潔が出会って新しい教育の理念がつくられたように、この本が多くの人のこころに届いて、そこから新しいものの考え方や感じ方や未来への指針が生まれてくることを、私たちは願ってやみません。 - 著者プロフィール - 中沢新一 (ナカザワシンイチ) (著/文 | 編集) 1950年生まれ。東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了。京都大学特任教授、秋田公立美術大学客員教授。人類学者。著書に『増補改訂 アースダイバー』(桑原武夫賞)、『カイエ・ソバージュ』(小林秀雄賞)、『チベットのモーツァルト』(サントリー学芸賞)、『森のバロック』(読売文学賞)、『哲学の東北』(斎藤緑雨賞)など多数。 岡潔 (オカキヨシ) (著/文) 1901年生まれ。三高をへて、京都帝国大学理学部卒業。多変数解析函数の世界的権威者。理学博士。奈良女子大名誉教授。学士院賞・朝日文化賞・文化勲章。仏教・文学にも造詣が深く、『春宵十話』『風蘭』『紫の火花』『月影』『日本民族の危機』などの随想も執筆。晩年は教育に力を注いだ。 森本弘 (モリモトヒロム) (著/文) 1911年生まれ。和歌山県内の小・中学校の校長を経て、橋本市教育委員会教育長を務める。晩年の岡潔と親交が深く、岡から学んだ「情緒教育」を実際の教育現場で実践しつづけた稀有な教育者。
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アナーキズム: 政治思想史的考察|森政稔
¥2,970
作品社 2023年 ソフトカバー 321ページ 四六判 縦188mm 横128mm 厚さ19mm - 内容紹介 - アナーキズム思想研究の決定版!! 近年の民主主義への鋭利な分析で注目されている論者が、これまで長年取り組んできた研究成果を結集させた待望の一冊 私が本書で試みたいことは、アナーキズムに関連する思想を、実践的な運動としてのアナーキズムから相対的に距離を設けて、政治思想や政治理論の歴史のなかで「アナーキズム的モーメント」が果たしてきた役割を学問的に明らかにしようとすることである――「まえがき」より アナーキズム的モーメントとは? 狭義のアナーキズムのように正面から統治や支配を否定しようとする考え方に限らず、統治することにはたとえ民主主義であっても深刻な限界や自己矛盾、正当性の欠如などがあることを明らかにし、またこのような統治の限界や正当性の欠如には理由があることを承認するような、より広い思想的契機のこと。
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くらしのアナキズム|松村圭一郎
¥1,980
ミシマ社 2021年 ソフトカバー 240ページ 四六判 縦188mm 横128mm 厚さ19mm - 内容紹介 - 国家は何のためにあるのか? ほんとうに必要なのか? 「国家なき社会」は絶望ではない。 希望と可能性を孕んでいる。 よりよく生きるきっかけとなる、 〈問い〉と〈技法〉を 人類学の視点からさぐる。 本書でとりあげる「人類学者によるアナキズム論」とは… ・国家がなくても無秩序にならない方法をとる ・常識だと思い込んでいることを、本当にそうなのか? と問い直す ・身の回りの問題を自分たちで解決するには何が必要かを考える アナキズム=無政府主義という捉え方を覆す、画期的論考! *** この本で考える「アナキズム」は達成すべき目標(・・)ではない。むしろ、この無力で無能な国家のもとで、どのように自分たちの手で生活を立てなおし、下から「公共」をつくりなおしていくか。「くらし」と「アナキズム」を結びつけることは、その知恵を手にするための出発点(・・・)だ。(「はじめに」より) *** ミシマ社創業15周年記念企画 目次 はじめに 国家と出会う 第一章 人類学とアナキズム 第二章 生活者のアナキズム 第三章 「国家なき社会」の政治リーダー 第四章 市場(いちば)のアナキズム 第五章 アナキストの民主主義論 第六章 自立と共生のメソッド――暮らしに政治と経済をとりもどす おわりに - 著者プロフィール - 松村圭一郎 (マツムラケイイチロウ) (著/文) 1975年熊本生まれ。岡山大学文学部准教授。専門は文化人類学。所有と分配、海外出稼ぎ、市場と国家の関係などについて研究。著書に『うしろめたさの人類学』(ミシマ社、第72回毎日出版文化賞特別賞)、『はみだしの人類学』(NHK出版)、『これからの大学』(春秋社)など、共編著に『文化人類学の思考法』(世界思想社)、『働くことの人類学』(黒鳥社)。
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人新世の人間の条件|ディペシュ・チャクラバルティ, 早川健治(翻訳)
¥1,980
晶文社 2023年 ソフトカバー 180ページ 四六判 - 内容紹介 - 「人新世」の正体を、あなたはまだ何も知らない――。 人文学界で最も名誉ある「タナー講義」を、読みやすい日本語へ完訳。 地質学から歴史学まで、あらゆる学問の専門家の知見を総動員し、多くの分断を乗り越えて環境危機をファクトフルに考えるための一冊。かりそめの答えに満足できない現実派の読者におくる。 山崎直子さん(宇宙飛行士)推薦 「我々はどこへ向かうのか、その考え方の土台となる本。宇宙に学校が出来たら、この本はきっと人類共通の教科書となるでしょう」 ◆そもそも地質年代は誰がどう決める? ◆「大加速グラフ」が示す未来とは? ◆途上国と先進国の分断は乗り越えられる? ◆立場を超えてもつべき新たな「時代意識」とは? ◆人間は技術圏(テクノスフィア)の部品にすぎない? ◆地球の半分からヒトを撤退させるべき? ◆大きな歴史(ビッグ・ヒストリー)は人類を結束させる? 目次 講義1 時代意識としての気候変動 講義2 人間が中心ではなくなるとき、あるいはガイアの残り 日本版特別インタビュー 『人新世の人間の条件』に寄せて 訳者あとがき - 著者プロフィール - ディペシュ・チャクラバルティ (ディペシュチャクラバルティ) (著/文) 1948年生。インド出身の歴史学者。シカゴ大学教授。専門は歴史学方法論、ポストコロニアル理論、サバルタン研究、南アジア史など。ベンガル地方の労働史の研究から出発し、1980年にはサバルタン研究の最重要組織であるSubaltern Studiesをラナジット・グハらと共同創設した。その後2000年には主著Provincializing Europeを発表。西洋を起源とする歴史学のカテゴリーを西洋以外の文脈へと開いていくための道を模索し、歴史学の方法論に大きな影響を与えた。2021年発表の最新作The Climate of History in a Planetary Ageでは、人文学者が人為的な地球環境改変とどう向き合っていくべきかという問題を丹念に探究した。トインビー賞、タゴール賞など受賞多数。 早川健治 (ハヤカワケンジ) (翻訳) 1989年生。ダブリン在住の翻訳家。哲学修士。CplとGoogleで人材あっ旋担当者として働いた後、独立して現職。和訳にチョムスキー&ポーリン『気候危機とグローバル・グリーンニューディール』(2021)、バルファキス『世界牛魔人』(2021、いずれも那須里山舎)など、英訳に多和田葉子『Opium for Ovid』(Stereoeditions)。一般向け配信番組「フィネガンズ・ウェイクを読む」主催者。公式ウェブサイト:kenjihayakawa.com
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人間の条件 |ハンナ・アレント, 牧野 雅彦(翻訳)
¥2,200
SOLD OUT
講談社 2023年 講談社学術文庫 ソフトカバー 632ページ 文庫判 - 内容紹介 - 1957年10月4日、ソヴィエト連邦によるスプートニク1号の打ち上げによって、人類は初めて人工衛星を軌道周回させることに成功した。これは「その重要性において並ぶもののないこの出来事」だったが、「奇妙なことに、湧き起こってきたのは勝利に満ちた喜びではなかった」――翌1958年に英語版が出版された『人間の条件』は、そう始まります。こんな書き出しをもつ哲学書は前代未聞と言えるでしょう。 では、人工衛星の実現が人類にもたらしたのは何だったのか。そのとき人類は「これでようやく「地上という牢獄から人間が解放される第一歩」が踏み出されたという安堵の念」を抱いた、と本書の著者ハンナ・アレント(1906-75年)は言います。確かに、人々は「地上」で十数年前まで激しく戦われていた二度目の世界大戦がもたらした凄惨な状況を鮮明に記憶していたことでしょう。その悲劇を引き起こした原因を、アレントは7年前に大著『全体主義の起源』(1951年)で分析してみせました。今や、それを「人間の生活(生)」という観点から哲学的に考察することを企てたのが、本書『人間の条件』にほかなりません。 科学と技術の進化によって実現された地球からの脱出――それは、アレントから見れば、「地上」の世界からの「飛翔(flight)」であるとともに「逃避(flight)」でもありました。その二重の意味を込めて、アレントは「世界からの疎外(world alianation)」と呼びます。その疎外はいかにして始まり、人間の生(生活)をいかに変えたのか。この問いに答えるために、アレントは人間の生活(生)の重心が「観照的生活(vita contemplativa)」から「活動的生活(vita activa)」に移行したことを明らかにします。その上で「活動的生活」を「労働(labor)」、「仕事(work)」、「行為(action)」の三つに分類し、それらの絡み合いの中から科学と技術が生まれ、進化を遂げるに至る道筋を細やかにたどっていくのです。 本書が書かれてからすでに半世紀以上が過ぎ、科学と技術は当時では想像もできなかったほどの飛躍的な進化を遂げています。AIの登場によって「人間」とは誰なのかが不分明になりつつある現在、「人間の条件」を考えることの重要性と必要性がさらに増していることに異論はないでしょう。長らく待望された本書の新訳を、第一人者による正確にして平明な日本語でお届けできる時がついに訪れました。 目次 プロローグ 第I章 人間の条件 1 「活動的生活」と人間の条件 2 「活動的生活」という用語について 3 永遠と不死 第II章 公的領域と私的領域 4 人 間―社会的動物か、政治的動物か 5 ポリスと家政 6 社会的なものの興隆 7 公的領域――共通のもの 8 私的領域――財 産 9 社会的なものと私的なもの 10 人間の諸活動の位置 第III章 労 働 11 「わが肉体の労働とわが手の仕事」 12 世界の物的性格 13 労働と生 14 労働と生命の繁殖力 15 財産による私生活の保護と富 16 仕事の道具と労働の分業 17 消費者の社会 第IV章 仕 事 18 世界の耐久性 19 物 化 20 道具の使用と「労働する動物」 21 道具の使用と「工作人」 22 交換市場 23 世界の永続性と芸術作品 第V章 行 為 24 言論と行為による行為者の開示 25 関係の網の目と演じられる物語 26 人間事象の脆さ 27 ギリシア人の解決 28 権力と現れの空間 29 「工作人」と現れの空間 30 労働運動 31 行為の伝統的な代替としての制作 32 行為の過程としての性格 33 不可逆性と許しの力 34 不可予言性と約束の力 第VI章 活動的生活と近代 35 世界からの疎外 36 アルキメデスの点の発見 37 宇宙科学 対 自然科学 38 デカルト的懐疑の興隆 39 内省と共通感覚の喪失 40 思考と近代的世界観 41 観照と活動の関係の逆転 42 「活動的生活」内部での転倒と「工作人」の勝利 43 「工作人」の敗北と幸福の原理 44 最高善としての生命 45 「労働する動物」の勝利 謝 辞 訳者解説 索 引 - 著者プロフィール - ハンナ・アレント (ハンナ アレント) (著/文) 1906-75年。ドイツに生まれ、アメリカで活躍した哲学者・政治思想家。主な著書に、本書(1958年)のほか、『全体主義の起源』(1951年)、『革命について』(1963年)など。 牧野 雅彦 (マキノ マサヒコ) (翻訳) 1955年生まれ。専門は、政治思想史。著書に、『精読 アレント『全体主義の起源』』、『危機の政治学』(以上、講談社選書メチエ)、『アレント『革命について』を読む』(法政大学出版局)ほか。
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危機の時代に読み解く『風の谷のナウシカ』|朝日新聞社(編集)
¥1,870
徳間書店 2023年 ソフトカバー 248ページ 四六変型判 縦188mm 横128mm 厚さ19mm - 内容紹介 - 「これは『ナウシカ』の世界を旅する中で、すでに体験したことだ」 コロナウイルス、ウクライナ侵攻、AI問題、気候変動……混迷する現代社会を私たちはどう生きるのか。 朝日新聞デジタルにて、2021年3月に第1シーズン、5月に第2シーズンを配信し、読者から大きな反響を呼んだ「コロナ下で読み解く風の谷のナウシカ」。2022年12月に掲載された最新の第3シーズンを加え、すべてのインタビューをまとめて刊行! コロナウイルスをはじめ、ロシアのウクライナ侵攻、AI問題、ますます激化する気候変動など、混迷化が加速する現代社会を「人類が方向を転換せず、破滅を経験してしまった」仮想の未来を舞台にした宮﨑駿監督の長編漫画『風の谷のナウシカ』を通して連関的に考える。 【収録著者】民俗学者・赤坂憲雄/俳優・杏/社会哲学者・稲葉振一郎/現代史家・大木毅/社会学者・大澤真幸/漫画家・大童澄瞳/映像研究家・叶精二/作家・川上弘美/軍事アナリスト・小泉悠/英文学者・河野真太郎/ロシア文学者・佐藤雄亮/漫画研究者・杉本バウエンス・ジェシカ/文筆家・鈴木涼美/スタジオジブリプロデューサー・鈴木敏夫/漫画家・竹宮惠子/生物学者・長沼毅/生物学者・福岡伸一/評論家・宮崎哲弥(五十音順、敬称略)
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黒い皮膚・白い仮面 【新装版】|フランツ・ファノン, 海老坂武(翻訳), 加藤晴久(翻訳)
¥4,070
SOLD OUT
みすず書房 2020年 ハードカバー 328ページ 四六判 - 内容紹介 - 「黒人の不幸は奴隷化されたということである。白人の不幸と非人間性はどこかで人間を殺してしまったということである。…黒人であるこの私の欲することはただひとつ。道具に人間を支配させてはならぬこと。人間による人間の、つまり他者による私の奴隷化が永遠に止むこと。…ニグロは存在しない。白人も同様に存在しない。」 精神科医、同時にフランス領マルチニック島に生まれたひとりの黒人として、ファノンは最初の著作である本書で、植民地出身の黒人が白人社会で出会う現実と心理を、精神分析学的なアプローチを含め、さまざまな側面からえぐり出してみせた。 他からの阻害があるとき、内面においても自己を阻害する黒人に向けて、そこからの解放を訴えたファノンの言葉は、彼自身の生を出発点として実践のただ中から発せられたものであるゆえに、読む者の心に迫る。 目次 序 (フランシス・ジャンソン) はじめに 1 黒人と言語 2 黒い皮膚の女と白人の男 3 黒い皮膚の男と白人の女 4 植民地原住民のいわゆる依存コンプレックスについて 5 黒人の生体験 6 ニグロと精神病理学 7 ニグロと認知 結論に代えて ファノンの認知 (フランシス・ジャンソン) 注 あとがきにかえて - 著者プロフィール - フランツ・ファノン (フランツファノン) (著/文) 1925-61。フランス領マルチニック島で黒い皮膚をしたマルチニック人として生まれる。第二次大戦中、「自由フランス」に志願して参加し、各地で戦った。戦後はフランス本国に学び、リヨン大学で精神医学を専攻して学位を取得、この頃白い皮膚のフランス人と結婚した。1952年『黒い皮膚・白い仮面』を刊行。1953年11月フランス領アルジェリアにある精神病院に赴任。翌年、アルジェリア独立戦争が勃発。戦争初期は民族解放戦線(FLN)の活動を密かに助けていたが、1957年以来病院の職を辞し全面的にFLNに身を投じる。FLNの機関誌『エル・ムジャヒド』に精力的に寄稿するなど、アルジェリア革命のスポークスマン的役割を果たした。1958年には『アルジェリア革命第五年』(後に『革命の社会学』と改題)を発表、そして1961年には、白血病に冒されつつも『地に呪われたる者』をわずか10週間で執筆。闘争の総決算である同書が刊行されてからわずか数日後の1961年12月6日、ファノンは息を引き取った。36歳の若さであった。死後、『エル・ムジャヒド』その他に書かれた文章を集めた『アフリカ革命に向けて』が出版された。 海老坂武 (エビサカタケシ) (翻訳) 1934年東京に生まれる。東京大学文学部仏文科卒業。同大学院(仏語・仏文学)博士課程修了。著書『フランツ・ファノン』(講談社、1981、みすず書房、2006)『パリ ボナパルト街』(ちくま文庫、1990)『記憶よ、語れ』(筑摩書房、1995)『〈戦後〉が若かった頃』(岩波書店、2002)『かくも激しき希望の歳月』(岩波書店、2004)『祖国より一人の友を』(岩波書店、2007)『サルトル』(岩波新書、2005)『戦後文学は生きている』(講談社現代新書、2012)『加藤周一 二十世紀を問う』(岩波新書、2013)『戦争文化と愛国心』(みすず書房、2018)など。訳書 ニザン『番犬たち』(晶文社、1967)ペレック『眠る男』(晶文社、1970、水声社、2016)ファノン『黒い皮膚・白い仮面』(共訳、みすず書房、1969、1998)ボーヴォワール『別れの儀式』(共訳、人文書院、1989)サルトル『植民地の問題』(共訳、人文書院、2000)『自由への道』(共訳、岩波文庫、2000)『家の馬鹿息子』1-4(共訳、人文書院、1982、1989、2006、2015)ほか多数。 加藤晴久 (カトウハルヒサ) (翻訳) 1935年東京に生まれる。仏文学専攻。東京大学・恵泉女学園大学名誉教授。著書『ブルデュー 闘う知識人』(講談社、2015)『《ル・モンド》から世界を読む』(藤原書店、2016)ほか。訳書 ファノン『黒い皮膚・白い仮面』(共訳、みすず書房、1968、1998)ほか。
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地に呪われたる者 【新装版】|フランツ・ファノン, 鈴木道彦 (翻訳), 浦野衣子 (翻訳)
¥4,180
みすず書房 2015年 ハードカバー 328ページ 四六判 - 内容紹介 - 民族とは、国家とは、文化とは。ファノニズムとは何か。 植民地主義に抗し36年の生涯を闘争に捧げた著者が遺した、ポスト・コロニアル批評の原点。 「ひとつの橋の建設がもしそこに働く人びとの意識を豊かにしないものならば、 橋は建設されぬがよい、市民は従前どおり、泳ぐか渡し船に乗るかして、 川を渡っていればよい。橋は空から降って湧くものであってはならない、社会の 全景にデウス・エクス・マキーナ〔救いの神〕によって押しつけられるものであっては ならない。そうではなくて、市民の筋肉と頭脳とから生まれるべきものだ。(…) 市民は橋をわがものにせねばならない。このときはじめて、いっさいが可能となるのである。」(本書より) [初版「現代史・戦後篇」16『フランツ・ファノン集――黒い皮膚・白い仮面、地に呪われたる者』1968年刊、 『フランツ・ファノン著作集』3『地に呪われたる者』1969年刊、〈みすずライブラリー〉版1996年刊] - 著者プロフィール - フランツ・ファノン (フランツファノン) (著/文) 1925-61。フランス領マルチニック島で黒い皮膚をしたマルチニック人として生まれる。第二次大戦中、「自由フランス」に志願して参加し、各地で戦った。戦後はフランス本国に学び、リヨン大学で精神医学を専攻して学位を取得、この頃白い皮膚のフランス人と結婚した。1952年『黒い皮膚・白い仮面』を刊行。1953年11月フランス領アルジェリアにある精神病院に赴任。翌年、アルジェリア独立戦争が勃発。戦争初期は民族解放戦線(FLN)の活動を密かに助けていたが、1957年以来病院の職を辞し全面的にFLNに身を投じる。FLNの機関誌『エル・ムジャヒド』に精力的に寄稿するなど、アルジェリア革命のスポークスマン的役割を果たした。1958年には『アルジェリア革命第五年』(後に『革命の社会学』と改題)を発表、そして1961年には、白血病に冒されつつも『地に呪われたる者』をわずか10週間で執筆。闘争の総決算である同書が刊行されてからわずか数日後の1961年12月6日、ファノンは息を引き取った。36歳の若さであった。死後、『エル・ムジャヒド』その他に書かれた文章を集めた『アフリカ革命に向けて』が出版された。
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増補自己を見つめる | モニーク・ロフェイ, 岩瀬徳子 (翻訳)
¥1,980
左右社 2021年 放送大学叢書 ソフトカバー 325ページ - 内容紹介 - この本を読んで、もう一度前向きに生きようと思った。 ニーチェやハイデッガーらのことばをまじえ、 崩れ落ちそうになる気持ちを支え引き締めてくれる静かなロングセラー。 多くの熱心な聴講生を集めた伝説の講義から生まれた名著に、 著者が愛読してやまなかったふたりの哲学者への追悼を込めた2篇を増補した新装版。
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哲学の先生と人生の話をしよう|國分功一郎
¥748
朝日新聞出版 2020年 朝日文庫 ソフトカバー 272ページ 文庫判 - 内容紹介 - ささやかな悩みから、深刻で重大な問題まで、 「哲学は人生論である」が持論の気鋭の哲学者・國分功一郎氏(東京大学教養学部准教授)が34の相談に全身全霊で答えます。 質問のいくつかは、たとえばこのようなものです。 ・自分に嘘をつくってどういうことなの ・母と母の夫になじめない ・先が見えず不安。自信を持つにはどうしたらいいの ・哲学の勉強をするにはどうしたらいいの ・抑え難い復讐心があるのだが…… 「書かれていることだけを読んでいてはダメである。人生相談においてはとりわけ、言われていないことこそが重要である。人は本当に大切なことを言わないのであり、それを探り当てなければならない」(本書あとがきより) 國分先生の本気度200%の回答をぜひご堪能ください! 【第一部】 愛、欲望、そして心の穴 ――失業の救済は知らないが個人の救済は勉強だ! 1. バブル世代の父親がドバイから仕送りを送ってこなくて困窮しています 2. 子持ちの彼女への愛は本物でしょうか 3. 勉強より、リア充のようなコミュ力を磨いた方がいいのでしょうか 4. 女性との接し方が分からず、ホモソーシャル的な空気に逃げてしまいます 5. 29歳ですが、まともに長続きした恋愛をしたことがありません 6. 婚外セックスに虚しさを感じ始めました 7. マスターベーションばかりしてしまうのですが、どうすれば良いですか 8. 義両親の態度が「ゴネ得」に感じられてしまいます 9. 断っても断っても誘ってくる相手に諦めてもらいたいです(手を汚さずに) 10. 仲良くしようとしてくる親が気持ち悪くて耐えられません 11. どうすれば前向きに語学を学ぶことができるようになるでしょうか 【第二部】 プライドと蔑みと結婚と ――ダダダダッ、ダッダダ 12. 哲学の勉強をするには、どこの大学に行くのがいいのでしょうか 13. 付き合っていた頃から、何かと夫に主導権を握られています 14. 彼女のために、高級ソープ通いをやめるべきでしょうか 15. 「自分に噓をつく」とは、どういうことなのでしょうか 16. 年下の人と仲良くなるにはどうすれば良いでしょうか 17. 会社の先輩から、行きたくない飲みに誘われます 18. タメ口の仕事相手がどうしても許せません 19. 知人が、高校を中退して美容師になると言っているのですが…… 20. 交際相手が自分の言葉で話してくれません 21. 一対一の恋愛関係がクソゲーに思えて仕方ありませ 22. ぼくと家族が生き抜くためには何が必要でしょうか 23. 彼氏の仕事を応援することができません 【第三部】 仕事も情熱も相談も ――反革命の思想こそがやさしさを…… 24. 理想や情熱を持って働きたいというのは贅沢なのでしょうか 25. 問題のある先輩に、どのように対処すれば良いでしょうか 26. 色々な情熱が薄れ、気力が萎えて困っています 27. 母親と、母親の夫との距離感がつかめません 28. 相談というのは、どうやってすれば良いのでしょうか 29. 悲観的な夫に腹が立ってしまいます 30. 勝手に悪人のレッテルを貼られて困っています 31. 先が見えず不安です。自信を持つにはどうしたら良いでしょうか 32. 男前が好きな自分を認めても良いでしょうか 33. 抑え難い復讐心があります 34. 好きな女性が進路に悩んでいます あとがき 哲学は人生論でなければならない 《解説・千葉雅也》
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ベルクソン思想の現在|檜垣立哉, 平井靖史, 平賀裕貴, 藤田尚志, 米田翼
¥1,980
書肆侃侃房 2022年 ソフトカバー 272ページ 四六判 - 内容紹介- 主要4著作を読み解く白熱の徹底討議! まったく新しいベルクソン入門誕生 『物質と記憶』などの著作があり、生の思考を独自のかたちでヴィヴィッドに展開した哲学者アンリ・ベルクソン。 2022年は『ベルクソンの哲学』(檜垣立哉、文庫化)、『世界は時間でできている』(平井靖史)、『アンリ・ベルクソンの神秘主義』(平賀裕貴)、『ベルクソン 反時代的哲学』(藤田尚志)、『生ける物質』(米田翼)が次々に刊行されたベルクソン研究にとって画期となる一年だった。この著者たちが集った福岡・天神の「本のあるところ ajiro」の伝説の連続トークイベントをもとに、大幅に増補されここに甦る。 『時間と自由』『物質と記憶』『創造的進化』『道徳と宗教の二源泉』、ベルクソンの主要4著作を徹底的に読み解いていく。加えて、著者全員が参加した座談会「これからのベルクソンをめぐって」も収録。ここから先の道しるべにもなるブックガイドも付した。 20世紀の生の思考が、いままさに炸裂する。前代未聞のベルクソンイヤーを締めくくる一冊。 - 著者プロフィール - 檜垣立哉 (ヒガキタツヤ) (著/文) 1964年、埼玉県生まれ。東京大学大学院人文科学研究科博士課程中途退学。現在、大阪大学大学院人間科学研究科教授。博士(文学)。主な著書に『ベルクソンの哲学 生成する実在の肯定』『バロックの哲学 反- 理性の星座たち』『西田幾多郎の生命哲学』『近代日本思想論 技術・自然・生命』ほか。主な訳書に『ベルクソニズム』(共訳)ほか。 平井靖史 (ヒライヤスシ) (著/文) 武蔵野美術大学油絵科卒、東京都立大学哲学科・同大学院博士課程満期退学。福岡大学人文学部教授。専門は近現代哲学、時間と心の哲学、記憶の形而上学。PBJ(Project Bergson in Japan)代表。著書に『世界は時間でできている ベルクソン時間哲学入門』(青土社、2022年)。編著にBergson's Scientific Metaphysics(Bloomsbury, 2023)。共編著に『ベルクソン『物質と記憶』を再起動する 拡張ベルクソン 主義の諸展望』(書肆心水、2018年)ほか。 平賀裕貴 (ヒラガヒロタカ) (著/文) 1983年生まれ。専門はフランス文学・哲学。エラスムス・ムンドゥス・プログラム(ユーロフィロソフィー)によりトゥールーズ第二大学大学院に留学。同大学大学院修士課程修了。立教大学大学院博士課程修了。博士(文学)。現在、立教大学兼任講師。著書に『アンリ・ベルクソンの神秘主義』(論創社、2022年)、共訳書にアンリ・ベルクソン『笑い』(ちくま学芸文庫、2016年)がある。 藤田尚志 (フジタヒサシ) (著/文) 1973年生まれ。九州産業大学教授。Ph.D(哲学)。専門は哲学、フランス近現代思想。著書に『ベルクソン 反時代的哲学』(勁草書房、2022年)、共編著に『ベルクソン『物質と記憶』を解剖する』(2016年)、『ベルクソン『物質と記憶』を診断する』(2017年)、『ベルクソン『物質と記憶』を再起動する』(2018年)(いずれも書肆心水)、共著にMécanique et mystique(Olms, 2018)ほか。訳書にアンリ・ベルクソン『時間観念の歴史』(共訳、書肆心水、2019年)、マルセル・ゴーシェ『民主主義と宗教』(共訳、トランスビュー、2010年)ほか。 米田翼 (ヨネダツバサ) (著/文) 1988年生まれ。大阪大学大学院人間科学研究科にて博士号を取得(人間科学)。現在、大阪大学大学院人間科学研究科附属未来共創センター助教。専門はベルクソンを中心とするフランス哲学、19-20 世紀の英・独・仏の生物学の歴史・哲学。著書に『生ける物質 アンリ・ベルクソンと生命個体化の思想』(青土社、2022年)。主な論文に「個体化の哲学における生殖の問題――ヴァイスマン、ベルクソン、シモンドン」『思想』第1141 号(2019年)、「適応と再認――ベルクソンの行動の進化論」『年報人間科学』第42 号(2021年)、共訳書にジルベール・シモンドン『個体化の哲学――形相と情報の概念を手がかりに』などがある。
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大洪水の前に マルクスと惑星の物質代謝|斎藤 幸平
¥1,540
KADOKAWA 2022年 角川ソフィア文庫 ソフトカバー 432ページ 文庫判 - 内容紹介 - 異常気象、疫病の流行や戦争……世界が危機に瀕する今、私たちは誰も取り残すことなく、これらの問題を解決するための道筋を探さなくてはならない。資本主義の暴力性や破壊性を正確に認識し、その上で、資本主義とは異なる社会システムを構築すること。『資本論』を記したカール・マルクスの、生前未刊行のノートからエコロジーの思想を汲み取り分析する。ドイッチャー記念賞受賞作。スラヴォイ・ジジェクの解説も収録。 【目次】 第一部 経済学批判とエコロジー 第一章 労働の疎外から自然の疎外へ 第二章 物質代謝論の系譜学 第二部 『資本論』と物質代謝の亀裂 第三章 物質代謝論としての『資本論』 第四章 近代農業批判と抜粋ノート 第三部 晩期マルクスの物質代謝論へ 第五章 エコロジーノートと物質代謝論の新地平 第六章 利潤、弾力性、自然 第七章 マルクスとエンゲルスの知的関係とエコロジー - 著者プロフィール - 斎藤 幸平 (サイトウ コウヘイ) (著/文) 1987年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科准教授。ベルリン・フンボルト大学哲学科博士課程修了。博士(哲学)。専門は経済思想、社会思想。Karl Marx‘s Ecosocialism(邦訳『大洪水の前に』)によって権威あるドイッチャー記念賞を日本人初、歴代最年少で受賞。同書は世界七カ国で翻訳刊行されている。日本国内では、晩期マルクスをめぐる先駆的な研究によって日本学術振興会賞受賞。45万部を超えるベストセラー『人新世の「資本論」』で新書大賞2021を受賞。