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アンチ・アンチエイジングの思想 ボーヴォワール『老い』を読む | 上野 千鶴子
¥2,970
みすず書房 2025年 ハードカバー 328ぺージ 四六判 - 内容紹介 - 老いには誰も抗えない。それなのに、私たちはなぜ老いを恐れるのだろう。平均寿命が延び、老人としての生が長くなったことで、誰もが老いに直面すると同時に不安も高まっている。 自分が老いたことを認めたくないのは、社会が老いを認めないからだ。それを惨めにしているのは文明のほうなのだ。「老いは文明のスキャンダルである」――この言葉に導かれて、ボーヴォワール『老い』への探究がはじまる。 さらに日本の介護の現場を考察し、ボーヴォワールのみた景色の先へと進む。認知症への恐怖、ピンピンコロリという理想、安楽死という死の権利。その裏側にある老いへの否定から見えてくるのは、弱いまま尊厳をもって生ききるための思想がぜひとも必要だということだ。 ひとが最後の最後まで人間らしく生きるには、徹底的な社会の変革が必要なのだ。老いて弱くなることを否定する「アンチエイジング」にアンチをとなえ、老い衰え、自立を失った人間が生きる社会を構想する。 - 目次 - 第1章 老いは文明のスキャンダルである 第2章 文化の中の老い 第3章 歴史の中の老い 第4章 近代化の中の老い 第5章 「生きられた経験」としての老い 第6章 知識人の老い 第7章 老いと性 第8章 女性の老い 第9章 高齢者福祉の起源 第10章 ボケ老人へ向ける眼 第11章 アンチ・エイジズム 第12章 三つの死 第13章 「死の自己決定」はあるか 第14章 ボーヴォワールの「宿題」 第15章 「自立神話」を超えて 引用・参照文献 ボーヴォワール略年譜 あとがき - 著者プロフィール - 上野千鶴子 (ウエノチヅコ) (著) (うえの・ちづこ) 1948年生まれ。社会学者、東京大学名誉教授、認定NPO法人ウィメンズアクションネットワーク(WAN)理事長。著書に『家父長制と資本制』『近代家族の成立と終焉』『生き延びるための思想』(以上、岩波現代文庫)、『おひとりさまの老後』(法研/文春文庫)、『ケアの社会学』(太田出版)、『女の子はどう生きるか』(岩波書店)、『挑戦するフェミニズム』(江原由美子との共編著、有斐閣)、『当事者主権 増補新版』(中西正司と共著、岩波新書)などがある。
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【バーゲンブック】マンガ哲学辞典 | 橋本 治
¥900
SOLD OUT
河出書房新社 2019年 ソフトカバー 176ページ A5判 縦211mm 横151mm 厚さ13mm 定価1650円 バーゲンブック: 定価よりも値引して販売することのできる新古本です。 (定価のおよそ50%〜70%ほどの価格で販売しています) 新品とはいえ、経年による劣化などが見られる場合もございますので、ご理解の上ご購入くださいませ。 - 内容紹介 - 「広告批評」連載の貴重なマンガ作品が初単独書籍化! 生きづらさの理由についてパロディを駆使しながらユーモラスに描いた傑作。
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平等とは何か 運、格差、能力主義を問いなおす | 田中 将人
¥990
中央公論新社 2025年 中公新書 ソフトカバー 248ぺージ 新書判 - 内容紹介 - 平等な社会の実現は、自由と並んで、人々が近代社会で追求した一大テーマであった。 だが現代は不平等が消えるどころか増大し、深刻な分断を生んでいる。 かつて一億総中流といわれた日本も同様だ。能力主義は正義なのか。人生は運次第か。財産所有のどこが不公正か。格差・差別をどう是正するか。 気鋭の思想史家が熱き筆で自身の世代的な境遇も織りまぜ、哲学者たちの知的遍歴をたどり、世界を覆う不平等を根底から問い直す。 - 著者プロフィール - 田中将人 (タナカマサト) (著/文) 1982年広島県生まれ.2013年,早稲田大学政治学研究科博士課程修了.博士(政治学).専門は,政治理論・思想史.高崎経済大学・拓殖大学・早稲田大学非常勤講師を経て,岡山商科大学法学部准教授.単著『ロールズの政治哲学――差異の神義論=正義論』(風行社).共著『よくわかる政治思想』(野口雅弘・山本圭・髙山裕二編,ミネルヴァ書房),『ジョン・ロールズ――社会正義の探究者』(中公新書).
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現代思想2025年3月号 特集=統治vsアナーキー
¥1,980
青土社 2025年 ソフトカバー 240ページ 14.4 x 1.3 x 22.1 cm - 内容紹介 - 目指すはより良き統治か、その外部か 政治をめぐる思考に潜在する「統治」の構想と「非統治」の探求という二つのモチーフ。両者の潮流はしかし深い分断のうちで、ともすれば互いに没交渉・無関心できた面も否めないのではないか。本特集では統治とアナーキーのありうべき緊張関係を保持しつつ、その両面を見据えていずれにも閉じることのない議論のフィールドを拓くべく、多様な視点から検討する。 line2.gif [目次] 特集*統治vsアナーキー 【討議Ⅰ】 歴史・抵抗・教育――社会と法をめぐる対話 / 坂本尚志+野崎亜紀子 【POLITICS】 アナーキー、統治、民主主義 / 森政稔 政治学とアナキズム / 羅芝賢 他者から逃れるための自由か、他者とともにあるための自由か――ロールズとノージックの対立を再考する / 玉手慎太郎 【HISTORY】 反暴政の構造転換――暴君はアナーキーの「一歩手前」 / 古田拓也 貨幣をめぐる統治を考える――クリプト・コロニアリズムと金属主義の亡霊 / 中山智香子 避難・船上生活・非統治――中国の湖上世界から国家の統治を考える / 太田出 【討議Ⅱ】 政治学者が読むグレーバー / 宇野重規+上村剛+野口雅弘+重田園江(司会)+網谷壮介(司会) 【SOCIETY】 統治とケア――サロゲート・ヒューマニティと死倫理学をめぐる覚書 / 清水知子 モノの統治性――ポストヒューマンとフーコー / 川村覚文 〈羊たち〉の沈黙――安全メカニズムによる統治とそこから零れ落ちた存在 / 中村健太 【ETHICS】 統治群衆とアナキズム群衆――二一世紀の「群衆心理学」のために / 山本圭 被統治者の倫理――スピノザとアディアフォラ / 佐々木晃也 アナキスト倫理学――変容と組織化のために / 渡辺一樹 【PHILOSOPHY】 アガンベンとアナーキックなリズム / 高桑和巳 喜劇としてのアナキズム――アナキスト脱構築に向けて / 伊藤潤一郎 アナーキー 統治なき統治の理想を描く / 橋本努 【追悼●川田順造】 最後の文化人、川田順造さんを悼む / 山極寿一 レヴィ=ストロースへの眼差し / 出口顯 【連載●社会は生きている●第三一回】 社会と自我7――自我の起源──言語と再帰性 / 山下祐介 【連載●京都〈移民〉紀行●第五回】 フランス人と京都(二) / 森千香子 【連載●現代日本哲学史試論●第一五回】 交換様式Dへ向かう脱近代的思考――柄谷行人の『世界史の構造』(二) / 山口尚 【研究手帖】 「サイズ可変」から見えてくるミセノマのアート / 有馬恵子
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センスの哲学 | 千葉 雅也
¥1,760
文藝春秋 2024年 ソフトカバー 256ページ 四六判 - 内容紹介 - 服選びや食事の店選び、インテリアのレイアウトや仕事の筋まで、さまざまなジャンルについて言われる「センスがいい」「悪い」という言葉。あるいは、「あの人はアートがわかる」「音楽がわかる」という芸術的センスを捉えた発言。 何か自分の体質について言われているようで、どうにもできない部分に関わっているようで、気になって仕方がない。このいわく言い難い、因数分解の難しい「センス」とは何か? 果たしてセンスの良さは変えられるのか? 音楽、絵画、小説、映画……芸術的諸ジャンルを横断しながら考える「センスの哲学」にして、芸術入門の書。 フォーマリスト的に形を捉え、そのリズムを楽しむために。 哲学・思想と小説・美術の両輪で活躍する著者による哲学三部作(『勉強の哲学』『現代思想入門』)の最終作、満を持していよいよ誕生! ーーーーーー さて、実は、この本は「センスが良くなる本」です。 と言うと、そんなバカな、「お前にセンスがわかるのか」と非難が飛んでくるんじゃないかと思うんですが……ひとまず、そう言ってみましょう。 「センスが良くなる」というのは、まあ、ハッタリだと思ってください。この本によって、皆さんが期待されている意味で「センスが良くなる」かどうかは、わかりません。ただ、ものを見るときの「ある感覚」が伝わってほしいと希望しています(「はじめに」より)。 ーーーーーー ◆著者プロフィール 千葉雅也(ちば・まさや) 1978年栃木県生まれ。東京大学教養学部卒業。パリ第10大学および高等師範学校を経て、東京大学大学院総合文化研究科超域文化科学専攻表象文化論コース博士課程修了。博士(学術)。立命館大学大学院先端総合学術研究科教授。『動きすぎてはいけない――ジル・ドゥルーズと生成変化の哲学』(第4回紀伊國屋じんぶん大賞、第5回表象文化論学会賞)、『勉強の哲学――来たるべきバカのために』、『アメリカ紀行』、『デッドライン』(第41回野間文芸新人賞)、「マジックミラー」(第45回川端康成文学賞、『オーバーヒート』所収)、『現代思想入門』(新書大賞2023)など著書多数。 - 目次 - はじめに 「センス」という言葉 直観的にわかる センスと文化資本 人間とは「余っている」動物である センスの良し悪しから、その彼方へ 第一章 センスとは何か 感覚と思考 「選ぶセンス」から出発する センスが無自覚な状態 上手い/下手から、ヘタウマへ センスが無自覚な部屋 センスとはヘタウマである 土俵自体を変えてしまう モデルの再現から降りること、AIの「学習」 第二章 リズムとして捉える 意味から強度へ 形も味もリズムである――スタンドライトと餃子 複数の流れを「多重録音」のように捉える 最小限のセンスの良さ――リズムの面白さに気づく 気軽にできるモダニズム ラウシェンバーグと餃子 第三章 いないいないばあの原理 リズムに乗ること うねりとビート 物語と「欠如」 いないいないばあの原理 サスペンス=いないいないばあ 日常のサスペンス 第四章 意味のリズム 大きな意味から小さな意味へ 人生の多面性 モダニズム、フォーマリズム 感動を半分に抑え、ささいな部分を言葉にする 意味とは何か――近い/遠い AIと人間――ChatGPTから考える 対立関係とリズム 意味のリズム 感動は二つある――大まかな感動と構造的感動 エンターテイメントと純文学 前半のまとめ 第五章 並べること 映画の「ショット」と「モンタージュ」 よくわからないモンタージュの面白さ 予測誤差の最小化 それでも人はサスペンスを求める――予測誤差と享楽 「何をどう並べてもいい」ということ つながるかどうかは設定次第 第六章 センスと偶然性 「全芸術」で考える 美と崇高――偶然性にどう向き合うか 「作ろうとする」から「結果的にできる」へ 届かないズレと超過するズレ 自分に固有の偶然性 第七章 時間と人間 芸術とは時間をとること ベルクソンの時間論 可能性の溢れを限定する 人間の多様性 目的志向と芸術的宙づり 第八章 反復とアンチセンス 芸術の意味 芸術と「問題」 作品とは「問題」の変形である どうしようもなさとジレンマ センスとアンチセンス デモーニッシュな反復 付録 芸術と生活をつなぐワーク 読書ガイド おわりに 批評の権利
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農とアナキズム 三原容子論集 | 三原 容子
¥2,640
発行:アナキズム文献センター 発売:虹霓社 2024年 ソフトカバー 376ページ 四六判 - 内容紹介 - 著者が公害や差別問題と向き合う中で出会った「アナキズム」と「農本主義」。その二つのキーワードを手掛かりに、人と人の関係(アナキズム)、人と自然との関係(農本主義)にこだわり続けてきた三原容子。「アナキズム」が大学の研究テーマとして歓迎されなかった80-90年代、女性の立場から差別と支配のない社会を目指して奮闘する過程で生まれた先駆的な論文は今こそ読み返されるべき内容といえる。 これまで単行本化されることのなかった多くの著作から選り抜き、解説として「21世紀に「農とアナキズム」を読み直す」(蔭木達也/近代日本研究)を付して書籍化した。 カバー絵は辻まこと。 発行はアナキズム文献センター、発売は虹霓社。 - 目次 - 第一部 私の考える〈アナキズム〉 アナキズムの〈イメージ〉と私の考える〈アナキズム〉 大杉栄と「道徳」 「農本主義的アナキズム」の再検証 第二部 農本的アナキズムの思想と運動 Ⅰ 石川三四郎 石川三四郎とカーペンター、ルクリュ 石川三四郎の歴史哲学 『農本的アナーキズム』と石川三四郎 Ⅱ 加藤一夫 加藤一夫の農本的アナキズム 加藤一夫の思想 ――アナキズムから天皇信仰への軌跡―― Ⅲ 江渡狄嶺 江渡狄嶺の二つの時代 実行家から社会教育家へ 学校無用論と教育運動 ――下中弥三郎と江渡狄嶺を中心に―― Ⅳ クロポトキンの影響 日本におけるクロポトキンの影響について クロポトキン『倫理学』によせて クロポトキン『相互扶助論』と現代 Ⅴ 農村青年社 戦前アナキズム運動の農村運動論 ――その1 自連派―― 農村青年社について 農村青年社と現代 第三部 書評 書評 アナキズムとエコロジーとの接点 書評 ジョン・クランプ著『八太舟三と日本のアナキズム』 書評 保阪正康『農村青年社事件』 解説・解題 出版までのいきさつ 初出情報と若干の回想的コメント 〈解説〉21世紀に「農とアナキズム」を読み直す――三原容子論集に寄せて 蔭木 達也 三原容子著作リスト 前書きなど 三原が開拓した「農とアナキズム」研究は誰からも注目されることのないまま30年以上のあいだ停滞しており、加藤一夫に至っては90年の三原の『社会思想史研究』掲載論文(本書所収)がいまだに最新の研究文献といってよい状況だ。 〔中略〕 「農とアナキズム」をめぐる論集として本書が出版されることで、この方面への関心が高まり、小手先の環境対策や農業支援ということではなく、現代の学知や文化の有り様を踏まえてどのような新しい社会像を描くことができるか、支配と服従を超えた人々の共同による社会、農村と都市との対立を超える社会、そしてその建設の展望ないしその課題と限界について先達から学び、人間が生み出しうる抜本的な社会変革の可能性について、多くの人が考えをめぐらすきっかけとなればと思う。 (解説「21世紀に「農とアナキズム」を読み直す 三原容子論集に寄せて」蔭木 達也) - 著者プロフィール - 三原容子 (ミハラヨウコ) (著/文) 1955年名古屋市生まれ。京都大学教育学部卒業、京都大学大学院教育学研究科博士後期課程修了。大学・短大の非常勤講師、人権問題の研究所・研究センターの研究員等を経て、2001年の東北公益文科大学開学と同時に酒田に移り住む。2014年に早期退職し「庄内地域史研究所」の表札を掲げる。 近年は明治初期のワッパ騒動、満洲農業移民送出など、近現代庄内地域史の検証や顕彰に関わる。巨大風力発電建設計画を問い直す活動にも関わっている。著書に『賀川ハル史料集』、共著に『新編部落の歴史』ほか論文多数
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レヴィナス 顔の向こうに | 渡名 喜庸哲
¥3,080
青土社 2024年 ハードカバー 352ページ 四六判 - 内容紹介 - レヴィナス思想のまだ見ぬ広がりを照らし出す いまでも哲学の枠を超えて、さまざまな分野にインスピレーションを与えつづけている哲学者、エマニュエル・レヴィナス。しばしば「顔の倫理」というスローガンにその思想が集約されるけれども、それが実際のところ何を言おうとするものだったのかを問いなおし、それに回収されない思想の広がりに目を向けると、いまだ見ぬ読み替えの新たな方向が浮かび上がってくる。そこにあるのは、食、老い、ロボット、動物、福祉など、人間と人間ならざるものの境界がゆらぐ場面と響きあう、特異なかたちのヒューマニズムだ。レヴィナスとともに、レヴィナスを超えて等身大の人間について考える、哲学することの楽しみにひらかれた一冊。
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継続する植民地主義の思想史 | 中野 敏男
¥3,960
青土社 2024年 ハードカバー 480ページ 四六判 - 内容紹介 - 過去の歴史を引き受け、未来の歴史をつくりだすために 「戦後八〇年」を迎える現在、いまもなお植民地主義は継続している――。近代から戦前―戦後を結ぶ独自の思想史を描き、暴力の歴史を掘り起こす。日本と東アジアの現在地を問う著者の集大成。
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世代とは何か | ティム・インゴルド, 奥野 克巳(翻訳)
¥2,530
亜紀書房 2024年 ソフトカバー 244ページ 四六判 縦188mm 横130mm 厚さ18mm - 内容紹介 - 【推薦】中島岳志さん(政治学者) 「生者は死者と未来の他者を、同じテーブルに呼び集めて、対話しなければならない。」 ********** ──地球規模の危機を乗り越え、未来を確かなものにするために、わたしたちは何をすべきか。 巨大な危機に直面したいま、私たちは「古いやり方」に立ち戻る必要がある、とインゴルドは唱える。 古来、脈々と紡がれてきた「知恵」とは、いったいどのようなものだろうか? ティム・インゴルド思想のエッセンスを総動員して語られる、希望の書。 - 目次 - ●日本の読者のみなさまへ ●まえがき 第1章 世代と生の再生 親子関係 系譜学的モデル 相続と持続性 第2章 人の生涯[ライフコース]をモデル化する 年を取り、子をなす 歴史の天使 釣鐘曲線 生と死 第3章 道を覚えていること 薄層で覆われた地面 過去からの道 アーカイブからアナーカイブへ 懐かしむこと 第4章 不確実性と可能性 呪いを解く くぐり抜けながらおこなう 注意の構造 驚愕と感嘆 第5章 喪失と絶滅 種のカタログ 子をなすことの系譜 人種と世代 保全と、ともに生きること[コンヴィヴィアリティ] 第6章 人類を再中心化する 人間を超えて、人間する[ヒューマニング] 例外主義の告訴 進歩と持続可能性 群れとタービンについて 第7章 教育のやり方 学究的な姿勢 理性と応答可能性 新しい人々、古いやり方 知恵と好奇心 第8章 科学技術の後に STEMからSTEAMへ 科学とアーツ デジタル化と手先仕事 結び ●解説に代えて ●原注 - 前書きなど - ティム・インゴルドは、私たちが直面している惑星規模の危機に対処するために、世代をめぐる考え方をひっくり返そうとします。 そのために、複数の世代が祖先の道に沿ってともに生き、ともに働くことによって、自らと子孫たちにとっての未来を確かなものにするという失われてしまった考えを、私たちのうちに再び取り戻そうとするのです。──奥野克巳 - 著者プロフィール - ティム・インゴルド (ティム インゴルド) (著/文) 1948年イギリス・バークシャー州レディング生まれの人類学者。1976年にケンブリッジ大学で博士号を取得。1973年からヘルシンキ大学、マンチェスター大学を経て、1999年からアバディーン大学で教えている。 『ラインズ──線の文化史』(2014年、左右社)、『メイキング──人類学・考古学・芸術・建築』(2017年、左右社)、『ライフ・オブ・ラインズ──線の生態人類学』(2018年、フィルムアート社)、『人類学とは何か』(2020年、亜紀書房)、『生きていること』(2021年、左右社)、『応答、しつづけよ。』(2023年、亜紀書房)などがある。
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モヤモヤする正義 感情と理性の公共哲学 | ベンジャミン・クリッツァー
¥2,860
晶文社 2024年 ソフトカバー 560ページ 四六判 - 内容紹介 - 「表現の自由は大切だが、あまりに攻撃的な表現は許容すべきでない」「少数派や女性に対してより配慮すべきだが、多数派や男性のことが無視されるのもおかしい」 ……意見が対立するさまざまな問題について、多くの人はどちらの「正義」にも同意や共感を示し揺れている。 こうしたに正義まつわるモヤモヤに対し、どの意見が正しいのか、社会の規範はどうあるべきなのか、その「答え」を提示する政治哲学的論考。キャンセル・カルチャー、マイクロアグレッション、トーン・ポリシング、弱者男性論など重要な概念・議論を題材に、感情に流されない「公共的理性」による問題解決を試みる画期的なテキスト。 「晶文社スクラップブック」の連載に大幅加筆・全面改稿した大ボリュームで! ■帯文/森本あんり、マライ・メントライン 理性を公共的に使用せよ――これは多数者と少数者双方への挑戦である ──森本あんり 時代を覆う「正義」と「権利」のインフレ、その核心を突く本書に刮目すべし! ──マライ・メントライン “世の中で起きている問題に向き合うときに、良さや正しさなど、規範に関する思考や感情を避けることはできない。/本書は「規範」を堂々と取り扱う。現状目立っている、「正義」の問題をあげつらったりイヤだと拒否したりすることで済ませるのではなく、認めるべきところは認め肯定すべきところは肯定しながら、それに代わる別の「正義」を提示していく。/わたしの目的は、すこしでも物事を正しくして社会を良くすることだ。読者の方々にも、本書を通じて「規範」について考えをめぐらし、自分でも「正義」をきちんと主張できるようになっていただければ幸いである。(「まえがき」より)” 【目次】 まえがき 第一部 社会的批判と自由の問題 第一章 キャンセル・カルチャーの問題はどこにある? 第二章 「思想と討論の自由」が守られなければならない理由 第二部 マイノリティとレトリックの問題 第三章 「特権」について語ることに意味はあるのか? 第四章 トーン・ポリシングと「からかいの政治」 第五章 マイクロアグレッションと「被害者意識の文化」 第三部 男性学と弱者男性の問題 第六章 男性にも「ことば」が必要だ 第七章 弱者男性のための正義論 終章 これからの「公共性」のために あとがき - 著者プロフィール - ベンジャミン・クリッツァー (ベンジャミンクリッツァー) (著/文) 1989年京都府生まれ。哲学者、書評家。哲学を中心に、進化論・心理学・社会学などの知見を取り入れながら、社会や政治と人生の問題について考えて執筆。著書に『21世紀の道徳 学問、功利主義、ジェンダー、幸福を考える(犀の教室)』(晶文社、2021年)、論考に「感情と理性:けっきょくどちらが大切なのか?」(『群像』2022年7月号、講談社)など。
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メタフィジカルデザイン つくりながら哲学する | 瀬尾 浩二郎
¥2,530
左右社 2024年 ソフトカバー 280ページ 四六判 - 内容紹介 - 『WIRED』元編集長・若林恵氏 推薦! 哲学に魅了されたデザイナーの著者と考える、 何かをつくる人のための哲学入門 哲学研究者でない“つくり手”である著者と読者が一緒に考えていく、「つくること」と「哲学すること」の入門書。 本書では、その過程で見つけた哲学するため二つの手法、「問い」と「概念工学」について紹介。最終的には、”メタフィジカルデザイン”という概念を提案し、社会のなかで哲学するとはどういうことかを、掘り下げていく。さらには、著者の経営する会社で実践している哲学するためのワークショップの方法や実例も紹介している。 この本は、哲学してみたいと思った人、何かをつくろうとしている人、そしてその中で探究していこうとする人達のことを考えながら書いてみました。皆さんの活動において、何らかのヒントになれば、とてもうれしいです。 ーー「まえがき」より --目次-- はじめに 【第1章 問いを立てる】 哲学営業日誌:問いの発見 問いが立ち、哲学が始まる 哲学を始める冴えた問いの見つけ方 つまらない問いを面白い問いにするゲーム あらためて問いとは何だろうか? 問いを立てるワークショップのレシピ 問いを立てるワークショップの実践:テーマ「言語化」 4コマ漫画 問い立て君〈問いを問う〉 【第2章 概念を工学する】 哲学営業日誌:問いを立て、概念を工学する 概念工学とは何か 概念工学ワークショップのレシピ 概念工学ワークショップの実践:テーマ「デザイン」 一人でおこなう概念工学:テーマ「書店」 4コマ漫画 問い立て君〈言葉で言い表せない概念は存在するのか〉 【第3章 メタフィジカルデザイン】 哲学営業日誌:名付けようのない戦い 哲学とデザインの話を慎重にする 哲学的発想術 社会をとおして哲学する 4コマ漫画 問い立て君〈4コマ漫画をとおした哲学〉 コラム 感情的であること、同意すること おわりに 参考文献 newQ事例集
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ストリートの思想 増補新版 | 毛利 嘉孝
¥990
筑摩書房 2024年 ちくま文庫 ソフトカバー 368ページ 文庫判 - 内容紹介 - イデオロギーによる旧来の党派的「動員」とは異なる、自律性を帯びた資本/権力への抵抗運動はどのように現れたのか? パンクやニューウェイヴなど80年代のインディーズ文化を源流とし、90年代のサウンドデモや「素人の乱」を経て、3.11後の反原発・反政府・反グローバル資本主義デモへといたる地下水脈を読み解くオルタナティヴ思想史。2010?20年代の動きを増補して文庫化。 - 目次 - 序 章 「ストリートの思想」とは何か 五月の祝祭/「政治」という領域の変容/「ゴリゴリの左翼」?/「左翼」の敗北/伝統的な左翼知識人の終焉/「左翼的なもの」から「ストリート」へ/「ストリートの思想」をめぐるマトリクス/ストリート的イメージとオタク的思想 ロスジェネ論壇との違い/本書の構成 第一章 前史としての80年代――「社会の分断」とポストモダン ガタリ来日/山谷を歩くガタリ/山谷からシモキタへ/八〇年代は「スカ」だったのか? 増殖する八〇年代論/当事者でもなく、観察者でもなく/ポストモダン思想からニューアカデミズムへ/人文学の危機/脱政治化されたポストモダン理論/「愚鈍な左翼」と「ポストモダニスト」/フォーディズムからポスト・フォーディズムへ/「政治」から「サブカルチャー」へ/パンクロックとDiY的インディーズ文化/時間と空間の圧縮/サカエのつぶやき/EP-4とじゃがたら/ストリートを乗っ取るEP-4/サブカルチャーのシチュアシオニスト的実践/寿町のフリーコンサート/対抗的ダンスカルチャー/坂本龍一とインディーズシーン/田中康夫の戦略/新・階層消費の時代と対抗的な実践/でも・デモ・DEMO 第二章 90年代の転換①――知の再編成 制度化されるポストモダニズム/大学における人文知の再編/湾岸戦争への反対声明/公的知識人の変貌/オウム真理教事件/社会工学的な知の台頭/思想や政治のエンターテインメント化/イギリス留学の準備/「カルチュラル・スタディーズ」との出会い/文化研究の三つの流れ/英米の文化研究の発展と制度化/文化研究のグローバル化とローカル化/「カルチュラル・スタディーズ」と「文化研究」/シンポジウム「カルチュラル・スタディーズとの対話」/ラディカルを飼い慣らす/輸出産業としての「カルチュラル・スタディーズ」/人文学と地域研究への影響/ポストモダン思想の再評価/カルチュラル・タイフーン 第三章 90年代の転換②――大学からストリートへ 「フリーター的なもの」と九〇年代/「いのけん」の登場/交錯点としての代々木公園 公共圏の変容/「ストリートの思想」の胎動/転換期としての九五年/橋本政権「六大改革」/新宿ダンボールハウス村/「寄せ場」化する日本/集合的表現の始まり/『現代思想』の「ストリート・カルチャー」特集/「だめ連」的なものの登場 第四章 ストリートを取り戻せ!――ゼロ年代の政治運動 〈帝国〉の時代/低迷する左派論壇/イラク反戦運動と「ストリートの思想家」/シアトルの反WTO運動/プロレタリアートからマルチチュードへ/「生権力」への対抗運動/同時多発的で前衛なき運動/「言うこと聞くよな奴らじゃないぞ」/言語的公共圏の転回/起源としてのパンク/ニューウェイヴ/ネットとストリートの器用仕事人/文化人類学へのポストモダン的問い/「なりそこないの文化人類学者」の試み/祝祭から再び日常へ 「素人の乱」と日常的な実践/日常を祝祭空間に変える/お笑いへの感性/SAVE the 下北沢/街を防衛する/「ストリート」を支える情報インフラ/ゆるやかに開かれたコミュニティ 第五章 抵抗するフリーター世代――10年代に向けて 年越し派遣村とメディア報道/湯浅誠の軌跡/246表現者会議/渋谷・宮下公園の有料化計画/キャッチコピーは〈JUST DOITE?〉/「ストリートの思想」とロストジェネレーション/赤木智弘の左翼批判/ロスジェネ論客の共通点/唯一の「敵」を名指すこと/階級・世代を超えた開放性/「ポッセ」の力/ストリート、自由、自律、そしてアート 増補 ストリートの思想二〇二四 群衆の時代としての二〇一〇年代/「素人の乱」からSEALDs へ/東アジアの「群衆の政治」の広がり/「群衆の政治」の終わり?/「群衆の政治」の変容/プロテスト・レイヴとパレスチナ支援運動/抗議運動の多様化──ウォーターメロン・アライアンス/さらに多様化する社会運動のアクター/グローバル化する「素人の乱」/マヌケが世界を変える?/アジアのなかの松本哉/トランスナショナルな交流の場の創出──なんとかBAR、マヌケ宿泊所、NO LIMIT/版画を通じた東アジアのネットワークの広がり──IRAとA3BC/二〇二四年の「だめ連」/地方へ/都市を離れて/隙間を失いつつある東京 /「ストリートの思想」はどこにいくのか? 「ストリートの思想」を知るためのブックガイド - 著者プロフィール - 毛利 嘉孝 (モウリ ヨシタカ) (本文) 毛利 嘉孝(もうり・よしたか):1963年長崎県生まれ。専攻は、社会学・文化研究・メディア論。京都大学経済学部卒業。ロンドン大学ゴールドスミス・カレッジにてPh.D.(sociology)を取得。九州大学助教授などを経て、現在、東京藝術大学大学院国際芸術創造研究科教授。主な著書に、『文化=政治』(月曜社)、『ポピュラー音楽と資本主義 増補』(せりか書房)、『バンクシー』(光文社新書)がある。
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家の哲学 家空間と幸福 | エマヌエーレ・コッチャ, 松葉 類(翻訳)
¥2,750
勁草書房 2024年 ハードカバー 196ページ 四六判 - 内容紹介 - 都市にすべてを位置づけてきた哲学は、今こそ家を論じなければならない。わたしたちの幸福と惑星の未来は家のなかにある。 浴室、キャビネット、ベッド、廊下、台所──家を通してわたしは「他者」となり、また「他者」はわたしとなる。家は「雨風を防ぐもの」「所有された空間」ではなく、わたしのメタモルフォーゼが繰り返される、幸福の実験場である。「生」の変様を記述する哲学者コッチャによる、現代の家についての哲学的エッセー集。 【原著】Emanuele Coccia, Filosofia della casa: Lo spazio domestico e la felicita(Einaudi, 2021) 目次 序論 都市の彼方の家 1 引っ越し 2 愛 3 浴室とトイレ 4 家のなかの物 5 キャビネット 6 双子 7 白い粉 8 ソーシャル・ネットワーク 9 部屋と廊下 10 ペット 11 庭と森 12 台所 結論 新しい家、あるいは賢者の石 謝辞 本書の成り立ち 参考文献 訳者あとがき - 著者プロフィール - エマヌエーレ・コッチャ (エマヌエーレ コッチャ) (著/文) 1976 年イタリア生まれ。フィレンツェ大学博士(中世哲学)。フランスの社会科学高等研究院(EHESS)准教授。フライブルク大学准教授を経て、2011 年より現職。著書にLa trasparenza delle immagini. Averroè e l’averroismo (Mondadori, Milan, 2005), La Vie sensible (tr. de M. Rueff, Payot et Rivages, Paris, 2010), Le Bien dans les choses (tr. de M. Rueff, Payot et Rivages, Paris, 2013), Hiérarchie. La société des anges (tr. de Joël Gayraud, Paris, Rivages, 2023) など。邦訳書に、『植物の生の哲学:混合の形而上学』(勁草書房、2019 年)、『メタモルフォーゼの哲学』(勁草書房、2022 年)がある。 松葉 類 (マツバ ルイ) (翻訳) 1988 年生まれ。京都大学文学研究科博士課程研究指導認定退学。博士(文学)。現在、立命館大学客員協力研究員。専門はフランス現代思想、ユダヤ思想。著書に、『飢えた者たちのデモクラシー:レヴィナス政治哲学』(ナカニシヤ、2023 年)。訳書にジャン=フランソワ・リオタール『レヴィナスの論理』(法政大学出版局、2024 年)、共訳書にフロランス・ビュルガ『猫たち』(2019 年)、エマヌエーレ・コッチャ『メタモルフォーゼの哲学』(勁草書房、2022 年)。
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民主主義とは何か|宇野 重規
¥1,034
講談社 2020年 講談社現代新書 ソフトカバー 280ページ 新書判 - 内容紹介 - トランプ大統領をはじめとする「ポピュリスト」の跋扈、旧社会主義諸国および中国など権威主義国家の台頭など、近年の世界の政治状況は、民主主義という制度の根幹を揺るがすかのような観を呈しています。日本の状況を見てみても、現行の政権が「民意」の正確な反映、すなわち「民主主義的な」政権だといわれると、頸をかしげる人も少なくないのではないでしょうか。はたして民主主義はもう時代遅れなのか? それとも、まだ活路はあるのか? それを議論するためには、まず何よりも、民主主義とは、そもそもどのような制度なのかを「正しく」知らなければならないでしょう。今では自明視されている「民主主義」という制度ですが、人が創ったものである限りそれもまた歴史的な制度として、さまざまな紆余曲折を経て現在のようなものになったのであって、決して「自然」にこのようなになったわけでではないのです。 そこで本書では、ギリシア・アテナイにおける民主主義思想の「誕生」から、現代まで、民主主義という制度・思想の誕生以来、起こった様々な矛盾、それを巡って交わされた様々な思想家達の議論の跡をたどってゆきます。その中で、民主主義という「制度」の利点と弱点が人々にどのように認識され、またどのようにその問題点を「改良」しようとしたのか、あるいはその「改革」はなぜ失敗してしまったのかを辿ることにより、民主主義の「本質」とは何なのか、そしてその未来への可能性を考えてゆきます。 またあわせて、日本の民主主義の特質、その問題点についても分析してゆきます。 民主主義という思想・制度を知るための、平易な政治思想史の教科書としても最適です。 目次 序 民主主義の危機 第1章 民主主義の「誕生」 第2章 ヨーロッパへの「継承」 第3章 自由主義との「結合」 第4章 民主主義の「実現」 終章 日本の民主主義 結び 民主主義の未来 あとがき - 著者プロフィール - 宇野 重規 (ウノ シゲキ) (著/文) 一九六七年、東京都生まれ。東京大学法学部卒業。同大学大学院法学政治学研究科博士課程修了。博士(法学)。現在、東京大学社会科学研究所教授。専攻は政治思想史、政治哲学。主な著書に『政治哲学へ 現代フランスとの対話』(二〇〇四年渋沢・クローデル賞LVJ特別賞受賞)、『未来をはじめる 「人と一緒にいること」の政治学』(以上、東京大学出版会)、『トクヴィル 平等と不平等の理論家』(講談社学術文庫、二〇〇七年サントリー学芸賞受賞)、『保守主義とは何か 反フランス革命から現代日本まで』(中公新書)などがある。
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世界はナラティブでできている なぜ物語思考が重要なのか | アンガス・フレッシャー, 田畑暁生(翻訳)
¥2,640
青土社 2024年 ハードカバー 220ページ 四六判 - 内容紹介 - 物語思考とはなにか 私たちは未来を考えるときに物語(ストーリー)を使っている。神経科学的なアプローチでストーリーを研究する著者は、この能力を “ストーリーシンキング ”と名付け、私たちの脳がなぜ、どのようにしてストーリーで思考するのかを解説する。神経科学と物語理論の新しい研究をもとに、科学からビジネス、哲学におけるストーリーシンキングの重要性を明らかにし、想像力、革新性、創造性の本質を探求する。
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くらしのアナキズム | 松村 圭一郎
¥1,980
ミシマ社 2021年 ソフトカバー 240ページ 四六判 縦188mm 横128mm 厚さ19mm - 内容紹介 - 国家は何のためにあるのか? ほんとうに必要なのか? 「国家なき社会」は絶望ではない。 希望と可能性を孕んでいる。 よりよく生きるきっかけとなる、 〈問い〉と〈技法〉を 人類学の視点からさぐる。 本書でとりあげる「人類学者によるアナキズム論」とは… ・国家がなくても無秩序にならない方法をとる ・常識だと思い込んでいることを、本当にそうなのか? と問い直す ・身の回りの問題を自分たちで解決するには何が必要かを考える アナキズム=無政府主義という捉え方を覆す、画期的論考! *** この本で考える「アナキズム」は達成すべき目標(・・)ではない。むしろ、この無力で無能な国家のもとで、どのように自分たちの手で生活を立てなおし、下から「公共」をつくりなおしていくか。「くらし」と「アナキズム」を結びつけることは、その知恵を手にするための出発点(・・・)だ。(「はじめに」より) *** ミシマ社創業15周年記念企画 - 目次 - はじめに 国家と出会う 第一章 人類学とアナキズム 第二章 生活者のアナキズム 第三章 「国家なき社会」の政治リーダー 第四章 市場(いちば)のアナキズム 第五章 アナキストの民主主義論 第六章 自立と共生のメソッド――暮らしに政治と経済をとりもどす おわりに - 著者プロフィール - 松村圭一郎 (マツムラケイイチロウ) (著/文) 1975年熊本生まれ。岡山大学文学部准教授。専門は文化人類学。所有と分配、海外出稼ぎ、市場と国家の関係などについて研究。著書に『うしろめたさの人類学』(ミシマ社、第72回毎日出版文化賞特別賞)、『はみだしの人類学』(NHK出版)、『これからの大学』(春秋社)など、共編著に『文化人類学の思考法』(世界思想社)、『働くことの人類学』(黒鳥社)。
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思想としてのアナキズム | 森 元斎, 森 啓輔, 清水 知子, 栗原 康, 高橋 采花, 近藤 和敬, 中西 淳貴, 渡辺 一樹, 近藤 宏, 成瀬 正憲, 川上 幸之介, 東 志保
¥3,850
以文社 2024年 ハードカバー 312ページ A5判 - 内容紹介 - いかに「思想」としてのアナキズムを保持し得るか。どこまで原理的に、かつ多様に、アナーキーであり続けられるのか――。 暴力論、運動実践、哲学、人類学、宗教、音楽、映画、フェミニズム、近代日本、さまざまなベクトルが交差するアナキズムの現在。 目次 はじめに 第1章 社会は転倒しなければならない――ロジャヴァ革命とCHAZによる反暴力(森元斎) 第2章 市民的抵抗における「暴力」と「非暴力」再考――エリカ・チェノウェスらの非暴力主義的研究に対するベンジャミン・ケースの批判(森啓輔) 第3章 夜明けのアナーキー――テクノサイエンス時代のサイボーグとコモン(清水知子) 第4章 もう非戦しかないもんね――幸徳秋水、仁のアナキズム(栗原康) 第5章 有島武郎と二つの〈家〉――天皇の最も近くで生まれたアナキスト(高橋采花) 第6章 デュルケムの集合的なものとイマギナチオ――集合表象概念の哲学的・思想史的意義について(近藤和敬) 第7章 カントとアナーキーの問題(中西淳貴) 第8章 系譜学、人類学、オルタナティヴ――デヴィッド・グレーバーの方法について(渡辺一樹) 第9章 「社会」の考えそこない――グレーバーとレヴィ=ストロースの交差地点(近藤宏) 第10章 山伏とアナキズム(成瀬正憲) 第11章 パンクとアナキズム(川上幸之介) 第12章 メドヴェトキン集団再考――自主管理的な労働と映画の実践(東志保) おわりに
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チベットのロックスター 仏教聖者ミラレーパ魂の声 | 渡邊 温子
¥660
風響社 2015年 ブックレット〈アジアを学ぼう〉別巻 ソフトカバー 48ページ A5判 - 内容紹介 - 民衆の尊崇を受ける聖者を、チベット人の眼差しから描く。各地を遊行し、瞑想修行に明け暮れ、大いなる悟りを得たミラレーパ。自身の体験したものの全てを宗教歌「グル」にして人々に歌い聞かせたが、その歌は魂の叫びそのものであり、聞く者の心を強く揺り動かすのである。11世紀に生きたチベットの聖者の人生と思想。 目次 1 悪縁を順縁へ(悪縁としての母 仏教の道へ 隠遁生活) 2 ミラレーパの仏教思想(苦しみを糧とする 無の現れ 衆生利益の意味) 3 現代を生きるミラレーパ(ミラレーパの仮面舞踏 様々なミラレーパの行事 消えゆくチベット文化)
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マニフェスト 政治の詩学 | エドゥアール・グリッサン, パトリック・シャモワゾー, 中村隆之(翻訳)
¥2,970
以文社 2024年 ハードカバー 216ページ 四六判 - 内容紹介 - カリブ海マルティニック島の大作家で、数々の著名な仏文学賞を受賞してきたエドゥアール・グリッサンとパトリック・シャモワゾーによる(グリッサンの10周忌に編まれた)政治的評論集であり、同時に二人の作家による「文学的共犯」としてのマニフェスト集。フランスの旧植民地で、現在は同海外県となったマルティニックに降りかかってきた数々の試練のたび、二人の作家は声を上げてきた。直接的な政治ではなく、人々の感性に訴えかける「言葉の力」を通して、マルティニックやフランスひいては全地球を揺さぶらんとする、その詩人・文学者としての矜持がここに集約される。「予測不能」で豊穣な未来を、惨めな統治に売り渡してしまわないために── 目次 はじめに それでもなお(パトリック・シャモワゾー) グローバル・プロジェクト宣言 遠くから…… ディーンは通過した、再生しなくてはならない。いますぐ! 壁が崩れおちるとき 世界の妥協なき美しさ 高度必需「品」宣言 あとがき 政治の詩学(エドウィー・プレネル) 訳者あとがき - 著者プロフィール - エドゥアール・グリッサン (エドゥアール グリッサン) (著/文) エドゥアール・グリッサン(Édouard Glissant) カリブ海マルティニック島出身のフランス語作家・思想家(1928-2011)。 日本語訳に『レザルド川』(現代企画室)、『第四世紀』、『カリブ海序説』(近刊)、『〈関係〉の詩学』、『フォークナー,ミシシッピ』(以上,インスクリプト)、『憤死』、『痕跡』、『マホガニー』、『ラマンタンの入江』(以上,水声社)、『多様なるものの詩学序説』(以文社)、『全-世界論』(みすず書房)がある。 パトリック・シャモワゾー (パトリック シャモワゾー) (著/文) パトリック・シャモワゾー(Patrick Chamoiseau) カリブ海マルティニック島出身のフランス語作家(1953年生まれ)。日本語訳に『素晴らしきソリボ』(河出書房新社)、『クレオール礼賛』(共著)、『クレオールとは何か』(共著)、『テキサコ』(以上,平凡社)。『幼い頃のむかし』、『カリブ海偽典』(以上,紀伊國屋書店)、『クレオールの民話』(青土社)がある。 中村隆之 (ナカムラ タカユキ) (翻訳) 中村 隆之(なかむら たかゆき) 早稲田大学法学学術院教員。フランス語を中心とする環大西洋文化研究。著作に『カリブ-世界論』、『環大西洋政治詩学』(以上,人文書院)、『エドゥアール・グリッサン』(岩波書店)、『野蛮の言説』(春陽堂書店)など。訳書にル・クレジオ『氷山へ』(水声社)、『ダヴィッド・ジョップ詩集』(夜光社)などがある。
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近代美学入門 | 井奥 陽子
¥1,210
筑摩書房 2023年 ちくま新書 ソフトカバー 320ページ 新書判 - 内容紹介 - 「美は、美しいものにあるのか、感じるひとの心にあるのか」現代における美や芸術の”常識”は歴史的にどう成立したのか、平易な言葉で解説する。読書案内付き。 「美しい」とはなにか? 豊富な図版と話し言葉で、初学者にもわかりやすく解説。むずかしいと思っていた美学が、よくわかる! 勉強に役立つ読書案内付き。 - 目次 - はじめに 第1章 芸術――技術から芸術へ 1 「建築は芸術か」 2 本章のポイント 3 アート=技術(古代?中世) 3-1 アートは技術(学芸)の意味だった テクネーとアルス/アルス・ロンガ、ウィータ・ブレウィス/発展――模倣の技術 3-2 文芸・音楽と絵画・彫刻・建築は別グループだった 自由学芸/機械的技術/絵画・彫刻・建築の位置づけ/アーティストとは誰か 3-3 美=芸術ではなかった 4 アート=芸術(近代以降) 4-1 「芸術」概念成立の土壌 新旧論争/詩画比較論/美術アカデミーの創設/文芸・音楽と絵画・彫刻・建築の共通点 4-2 新グループ「美しい諸技術」、そして「アート」へ 新しいグループ名の探求/ペローとバトゥー/発展 ― 美しい自然の模倣/形容詞と複数形が抜けた「アート」/補足――日本語の「芸術」と「美術」 5 何が芸術で、何が芸術でないのか? 美しい諸技術には何が含められたか/芸術の条件――「?は芸術か」という問いをほどく/近代の「芸術」概念を相対化する 第2章 芸術家――職人から独創的な天才へ 1 「独創的な芸術家は世界を創造する」 2 本章のポイント 3 芸術家をとりまく環境と作者の地位の変遷 3-1 注文に従って制作する職人(古代?初期近代) パトロネージによる制作/「作者」概念の不在/画家のサインから見る意識変化 3-2 独創的な作品を創造する天才(18世紀以降) ギルドやパトロネージからの独立と芸術の公共化/模倣から表現へ(ロマン主義の芸術)/天才としての芸術家像/神格化された芸術家 4 芸術家にまつわる概念の変遷 4-1 ジーニアスの人間化 ゲニウス(守護霊、守護天使)/インゲニウム(生得的な素質・能力)/ゲニウスとインゲニウムの混同 4-2 クリエイションとオリジナリティの人間化 神のクリエイション/芸術家のクリエイション/オリジナルとオリジナリティ 5 作者と作品の関係をどう捉えるか? ケルン大聖堂にて/作者と独創性の偏重/近代的「作者」の乗り越え/「作者の死」のその先に 第3章 美――均整のとれたものから各人が感じるものへ 1 「美は感じる人のなかにある」 2 本章のポイント 3 美の客観主義(古代?初期近代) 3-1 美は幾何学の原理に従っていると考えられた 古代ギリシャ語の「美」/宇宙と美の原理としての数(ピュタゴラス)/幾何学者としての神(プラトン)/プロポーション理論/補足――複雑なものと単純なもの(多様の統一、光の美学) 3-2 人体のプロポーションを求めて 美しい身体の追求/古代ギリシャ・ローマの人体比例論/ルネサンスの人体比例論/補足――黄金比 4 美の主観主義(18世紀以降) 4-1 伝統からの離反 古典理論への疑義/プロポーション理論の否定(バーク)/主観主義と客観主義の狭間で(ヒューム) 4-2 客観主義との調停 道徳や味覚との類似(道徳感覚学派)/美の主観性と普遍性(カント) 5 美の概念とどのように付き合うのがよいか? 美の自律性と唯美主義/芸術の自律性と「芸術のための芸術」/美は絶対的で自律的な価値か 第4章 崇高――恐ろしい大自然から心を高揚させる大自然へ 1 「崇高なものが登山の本質だ」 2 本章のポイント 3 山に対する美意識の転換 3-1 山は恐ろしく醜い場所だった(古代?初期近代) 危険で近づきがたい存在/崇拝と忌避の対象/神の罰としての醜悪な山(山岳論争) 3-2 登山による印象の変化(17世紀以降) ペトラルカの登山/グランド・ツアー/理論と経験の衝突(バーネット)/歓喜に満ちた戦慄(デニス)/崇高概念との交叉 4 「崇高」概念の転換 4-1 言葉の崇高(古代?17世紀) 文体としての崇高/ロンギノスの『崇高について』/ロンギノスの再発見と再解釈(ボワロー) 4-2 自然の崇高(18世紀以降) 自然体験とロンギノス『崇高について』のリンク/自然の崇高の確立(バーク)/人間理性の崇高さ(カント)/芸術に描かれた崇高な山 5 芸術は圧倒的なものとどのように関わることができるか? 崇高概念の復興と変容/現代アートと崇高(抽象表現主義)/描くことができないものに向き合う 第5章 ピクチャレスク――荒れ果てた自然から絵になる風景へ 1 「絵になる景色を探す旅」 2 本章のポイント 3 風景画とピクチャレスクの誕生 3-1 風景画と「風景」概念 風景画の不在と登場/「風景」の誕生/クロードとローザの描く風景 3-2 ピクチャレスクの成立 ピクチャレスクの定義/不規則さによる多様性/構図による統一性/1の答え合わせ 4 ピクチャレスクの広がり(観光と庭園) 4-1 ピクチャレスク・ツアー 国内旅行の流行と観光産業の成立/風景のスケッチ/クロード・グラス/ピクチャレスクな人 4-2 風景式庭園への適用 庭園革命/風景式庭園とピクチャレスク 5 美や芸術は自然とどのように関わることができるか? 風景の形式化と理想化/自然鑑賞の普及/自然を美しいものとして眺めること/芸術をとおして自然と向き合う おわりに あとがき 読書案内 索引 - 著者プロフィール - 井奥 陽子 (イオク ヨウコ) (本文) 日本学術振興会特別研究員。東京藝術大学美術研究科博士後期課程修了。博士(美術)。二松學舍大学、実践女子大学、大阪大学などの非常勤講師、東京藝術大学教育研究助手を経て現職。専門は美学・思想史、とくにドイツ啓蒙主義美学。著書に『バウムガルテンの美学――図像と認識の修辞学』(慶應義塾大学出版会、2020年)、共著に樋笠勝士編『フィクションの哲学――詩学的虚構論と複数世界論のキアスム』(月曜社、2022年)がある。
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闘争のインターセクショナリティ 森崎和江と戦後思想史 | 大畑 凜
¥3,080
青土社 2024年 ハードカバー 352ページ 四六判 - 内容紹介 - 出逢い、聞き、書き記す 森崎和江の仕事をまなざすと、その思想にインターセクショナリティの萌芽を見出すことができる。フェミニズムやポストコロニアル思想などの系譜を繙くことで浮かび上がるものは何か。戦後思想史を更新する、俊英による画期の書。
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モニュメント原論 思想的課題としての彫刻 | 小田原 のどか
¥4,620
青土社 2023年 ハードカバー 624ページ 四六判 - 内容紹介 - 破壊される瞬間に、彫刻はもっとも光り輝く 彫刻を「思想的課題」と自らに任じ、日本近現代の政治・歴史・教育・芸術そしてジェンダーを再審に付す。問い質されるは、社会の「共同想起」としての彫像。公共空間に立つ為政者の銅像が、なぜ革命・政変時に民衆の手で引き倒される無残な運命に出遭うのか――。画期的かつ根源的な思索の書。
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暗黒の形而上学 触れられない世界の哲学 | 飯盛 元章
¥2,640
青土社 2024年 ハードカバー 288ページ 四六判 - 内容紹介 - 私たちは世界の5%も理解できない この世界にはわかるものよりわからないもののほうが多く、触れられるものより触れられないもののほうが圧倒的に多い。ホワイトヘッド、ハーマン、メイヤスー、ラトゥール、マラブー……最前線の思想を補助線に、闇に包まれた世界のなかで生きる私たちのために描き出される現代形而上学。
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エドワード・サイード ある批評家の残響 | 中井 亜佐子
¥1,870
書肆侃侃房 2024年 ソフトカバー 208ページ 四六判 - 内容紹介 - エドワード・サイード没後20年 文学、音楽、パレスチナ問題など分野横断的に論じた批評家、エドワード・サイード。ポストコロニアル批評の先駆者として『オリエンタリズム』などの著作を残した。イスラエルによるガザへの軍事攻撃が激化。いまサイードの著作が読みなおされている。彼にとって、批評とはどのような営為だったのか? 没後20年をむかえた今、その思考の軌跡をたどりつつ、現代社会における批評の意義を問う。 【エドワード・サイードとは?】 1935年、エルサレム生まれ。幼少期をカイロで過ごす。ハーヴァード大学で博士号を取得。その後、コロンビア大学で比較文学を教えつつ、パレスチナ解放運動にかかわる。主著『オリエンタリズム』は、人文学の学問領域の再編をうながす画期的な著作。2003年、ニューヨークで逝去、2023年に没後20年を迎えた。 - 著者プロフィール - 中井亜佐子 (ナカイ アサコ) (著/文) 1966年生まれ。一橋大学大学院言語社会研究科教授。専門は英文学。オクスフォード大学博士課程修了(D.Phil.)。著書に、『日常の読書学――ジョゼフ・コンラッド『闇の奥』を読む』(小鳥遊書房、2023年)、『〈わたしたち〉の到来――英語圏モダニズムにおける歴史叙述とマニフェスト』(月曜社、2020年)、『他者の自伝――ポストコロニアル文学を読む』(研究社、2007年)など。翻訳に、ウェンディ・ブラウン『いかにして民主主義は失われていくのか――新自由主義の見えざる攻撃』(みすず書房、2017)など。