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アラブ、祈りとしての文学|岡 真理
¥3,300
果林社 2023年 ハードカバー 313ページ 縦200mm - 内容紹介 - 小説を読みことは、他者の生を自らの経験として生きること。それは世界を変えるささやかな、しかし大切な一歩となる。「新装版へのあとがき」を付す。 - 目次 - 小説、この無能なものたち 数に抗して イメージ、それでもなお ナクバの記憶 異郷と幻影 ポストコロニアル・モンスター 背教の書物 大地に秘められたもの コンスタンティーヌ、あるいは恋する虜 アッラーとチョコレート 越境の夢 記憶のアラベスク 祖国と裏切り ネイションの彼岸 非国民の共同体
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ぼくの村は壁で囲まれた パレスチナに生きる子どもたち|高橋 真樹
¥1,650
現代書簡 2017年 ソフトカバー 200ページ 四六判 - 内容紹介 - 子どもたちの視点から伝える、パレスチナ問題の新しい入門書! 高橋和夫氏(国際政治学者)推薦! 「文章の中にパレスチナ人の声が響いている。記述からパレスチナの臭気が立ち上って来る。丁寧に取材し、脚で書いたような本である。入門書だが内容には妥協がない。しかも、わかりやすい。やっと本物の入門書が出た。」(高橋氏) 何世代にもわたり、故郷に帰れないパレスチナ難民。700キロにも及ぶ巨大な壁に囲まれ、軍隊に脅されて暮らす子どもたち……。パレスチナの子どもをめぐる状況は、日増しに悪化している。そんな中、新たに誕生した米国のトランプ政権は中東をさらに混迷させるのか? 占領とは何か?エルサレム問題とは?パレスチナで誕生した新しい非暴力ムーブメントとは? イスラエルによる占領が始まって50年、難民が発生して70年を迎える今こそ目を向けたい、中東はもちろん、世界情勢を知るための必読書!
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鬱の本|点滅社編集部
¥1,980
点滅社 2023年 ハードカバー B6変形判 - 内容紹介 - 鬱のときに読んだ本。憂鬱になると思い出す本。まるで鬱のような本。 84名の方による、「鬱」と「本」をめぐるエッセイ集。本が読めないときに。 (夏葉社さまの『冬の本』にインスパイアされてつくった作品です) 執筆者一覧 青木真兵 青木海青子 安達茉莉子 荒木健太 飯島誠 池田彩乃 石井あらた 市村柚芽 海猫沢めろん 大谷崇 大塚久生 大槻ケンヂ 大橋裕之 大原扁理 荻原魚雷 落合加依子 柿木将平 頭木弘樹 梶本時代 勝山実 上篠翔 切通理作 こだま 小見山転子 ゴム製のユウヤ 佐々木健太郎 笹田峻彰 佐藤友哉 左藤玲朗 篠田里香 柴野琳々子 島田潤一郎 下川リヲ 菅原海春 杉作J太郎 鈴木太一 髙橋麻也 髙橋涼馬 高村友也 瀧波ユカリ 滝本竜彦 タダジュン 谷川俊太郎 丹治史彦 第二灯台守 輝輔 展翅零 トナカイ 鳥羽和久 友川カズキ 友部正人 豊田道倫 鳥さんの瞼 中山亜弓 永井祐 七野ワビせん 西崎憲 野口理恵 初谷むい 東直子 姫乃たま 緋山重 平野拓也 Pippo pha ふぉにまる 古宮大志 増田みず子 枡野浩一 町田康 マツ 松下育男 miku maeda みささぎ 水落利亜 水野しず 無 森千咲 森野花菜 山﨑裕史 山崎ナオコーラ 山下賢二 屋良朝哉 湯島はじめ まえがき この本は、「毎日を憂鬱に生きている人に寄り添いたい」という気持ちからつくりました。どこからめくってもよくて、一編が1000文字程度、さらにテーマが「鬱」ならば、読んでいる数分の間だけでも、ほんのちょっと心が落ち着く本になるのではいかと思いました。 病気のうつに限らず、日常にある憂鬱、思春期の頃の鬱屈など、様々な「鬱」のかたちを84名の方に取り上げてもらっています。 「鬱」と「本」をくっつけたのは、本の力を信じているからです。1冊の本として『鬱の本』を楽しんでいただくとともに、無数にある「鬱の本」を知るきっかけになれば、生きることが少し楽になるかもしれないという思いがあります。 この本が、あなたにとっての小さなお守りになれば、こんなにうれしいことはありません。あなたの生活がうまくいきますように。 ※本書は、うつや、うつのような症状の方のためのマニュアル本や啓発本ではありません。そのため、例えば「うつ病の具体的な治療方法」などは書かれておりません。ご了承ください。 - 目次 - 「鬱」ベースの社会に (青木真兵) 怪談という窓 (青木海青子) 犬に限らず (安達茉莉子) にぐるまひいて (荒木健太) 世界の色 (飯島誠) 形を持った灯りを撫でる (池田彩乃) 棚からぼたもち落ちてこい (石井あらた) ブランコ (市村柚芽) 憂鬱と幸福 (海猫沢めろん) 世界の最悪さを確認する喜び (大谷崇) 人と共感できず、なにしろもがいていた頃の話 (大塚久生) 椎名誠『僕は眠れない』 (大槻ケンヂ) 高校時代 (大橋裕之) ウツのときでも読める本 (大原扁理) 低迷期の友 (荻原魚雷) 多摩川で石を拾おうとした (落合加依子) ポジティブ。 (柿木将平) 布団からの便り (梶本時代) 『金髪の草原』の「記憶年表」 (頭木弘樹) やらない勇気 (勝山実) 天窓から光 (上篠翔) 生れてくるという鬱 (切通理作) 「できない」自分との付き合い方 (こだま) 深い深い水たまり (小見山転子) 我輩はゴムである (ゴム製のユウヤ) 鬱の本 (佐々木健太郎) 弱々しい朝 (笹田峻彰) 不良作家とAI (佐藤友哉) ある日、中途半端に終わる (左藤玲朗) 本は指差し確認 (篠田里香) ゆううつと私 (柴野琳々子) 中学生日記 (島田潤一郎) 俺は鬱病じゃない (下川リヲ) あの娘は雨女 (菅原海春) 旅 (杉作J太郎) 十九歳と四十七歳の地図 (鈴木太一) 悪意の手記を携えて (第二灯台守) 願い (髙橋麻也) 君も蝶 (髙橋涼馬) 静止した時間の中で (高村友也) Life Goes On (瀧波ユカリ) 鬱時の私の読書 (滝本竜彦) ちいさな救い (タダジュン) いのちの気配 (谷川俊太郎) 喘息と明るい窓 (丹治史彦) 毎日があるまでは (輝輔) とかげ (展翅零) 沈黙のオジオン (トナカイ) 大学をやめたい (鳥羽和久) 西村賢太という比類なき衝撃 (友川カズキ) 空の大きさと愛の切符 (友部正人) たたかれて たたかれて 鍛えられる本と人 (豊田道倫) 神経の尖った人の見る世界 (鳥さんの瞼) かけ算とわり算 (永井祐) 明日できることは明日やる (中山亜弓) 2023年4月 (七野ワビせん) 曖昧なものの博物館 (西崎憲) 戦友 (野口理恵) きこえる声で話してくれた (初谷むい) 言葉の声が案内してくれる (東直子) ゲーテをインストールする。 (Pippo) 脱法ドラッグ米粉 (姫乃たま) 何度もめくる、自分はここにいる (緋山重) 深夜のツタヤ (平野拓也) このバカ助が (pha) NHKにさよなら! (ふぉにまる) 鬱、憂鬱、10代、と言われ放出したレテパシー (古宮大志) 鬱は小説の始まり (増田みず子) ため息を深く深く深く深く……ついてそのまま永眠したい (枡野浩一) 人間の鬱 (町田康) 憂鬱な銀河 (マツ) それがかえって (松下育男) 夕に光 (miku maeda) あなたが起きるまで (みささぎ) ダメになって救われる――町田康のこと (水落利亜) うつのサーフィン (水野しず) 本が読めた日 (無) 蜘蛛と解放区 (森千咲) 俯きながら生きている (森野花菜) 喋らないヒロイン (山崎ナオコーラ) 悲観論者のライフハック (山﨑裕史) たぶん、不真面目なんだと思う (山下賢二) ぼくの精神薬 (屋良朝哉) なにかに抱かれて眠る日がある (湯島はじめ) 前書きなど この本は、「毎日を憂鬱に生きている人に寄り添いたい」という気持ちからつくりました。どこからめくってもよくて、一編が1000文字程度、さらにテーマが「鬱」ならば、読んでいる数分の間だけでも、ほんのちょっと心が落ち着く本になるのではいかと思いました。 病気のうつに限らず、日常にある憂鬱、思春期の頃の鬱屈など、様々な「鬱」のかたちを84名の方に取り上げてもらっています。 「鬱」と「本」をくっつけたのは、本の力を信じているからです。1冊の本として『鬱の本』を楽しんでいただくとともに、無数にある「鬱の本」を知るきっかけになれば、生きることが少し楽になるかもしれないという思いがあります。 この本が、あなたにとっての小さなお守りになれば、こんなにうれしいことはありません。あなたの生活がうまくいきますように。
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遠い声、遠い部屋 |トルーマン・カポーティ, 村上 春樹(翻訳)
¥2,530
新潮社 2023年 ハードカバー 288ページ 四六判 - 内容紹介 - アメリカ文学界に衝撃を与えた記念碑的デビュー作を、村上春樹が新訳。新鮮な言語感覚と幻想に満ちた華麗な文体で構成された本作は、1948年に刊行されるやいなや、アメリカ中で大きな波紋を呼び起こした。父親を探してアメリカ南部の小さな町を訪れたジョエル少年の、近づきつつある大人の世界に怯え屈折する心理と、脆くもうつろいやすい感情とを描いた半自伝的なデビュー長編。
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あのとき売った本、売れた本|小出 和代
¥1,925
光文社 2023年 ソフトカバー 212ページ 四六判 - 内容紹介 - 本を売ることがこんなにも劇的でスリリングだなんて、知らなかった! 米澤穂信手から手へ。小出さんに売ってもらった本は、いまも最高に幸せな旅を続けてると思う。桜木紫乃日本最大級の書店、紀伊國屋書店新宿本店。25年間文芸書売り場に立ち続けた名物書店員の、ベストセラー回顧録。書いた人と売った人、そして読んだあなたの物語。
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聴こえない母に訊きにいく|五十嵐 大
¥1,870
柏書房 2023年 ソフトカバー 216ページ 四六判 - 内容紹介 - 母に、ずっと訊いてみたいことがあった。 ぼくの耳は聴こえるけれど、本当はどちらが良かった? 聴こえる子どもと聴こえない子ども、どちらを望んでいた? 【本書の内容】 「優生保護法」―― 障害者が生まれることを防止し、 女性が産むことを管理しようとした悪法が存在した時代、 「母」はどのように生きたのか。 「ぼく」はどのようにして生まれたのか。 幸せだった瞬間も、悲しかった瞬間も、すべて。 コーダである息子が未来に進むために描く、小さな家族の歴史。 【コーダとは】 コーダ(CODA:Children of Deaf Adults) 聴こえない親をもつ、聴こえる子どものこと。 - 目次 - プロローグ 第一章 子どもの頃 塩竃に生まれて/最初の帰省/最初の取材/〝聴こえない子〟になる/通常学級のなかで/ろう者の歴史――森壮也さんに訊く/祖父母の胸中 第二章 ふたりの姉 ひとりめ――佐知子/「心配だった」/ふたりめ――由美/「心配はなかった」/〝通訳者〟として 第三章 母校へ 入学――「手話」との出合い/横澤さんと大沼先生/宮城県立聴覚支援学校/小さな教室/進学にともなう選択/「口話」について 第四章 母の恩師 思い出と後悔/恩人/「中途半端な時代」/聴覚活用の限界/真っ向からの否定/〝適切な教育〟とは/「さえちゃんたちのおかげ」 第五章 父との結婚 憧れの人/両親への紹介/父の過去/「いつもニコニコしていなさいって」/「善意」からの反対/「不良な子孫の出生を防止する」/優生保護法裁判――藤木和子さんに訊く/二〇二二年三月仙台高裁 第六章 母の出産 愛の十万人運動/奪われたものはなにか/加害者側の子孫/新しい生活/「だ、い」/「わたしのみみは、きこえないんだよ」 - 著者プロフィール - 五十嵐 大 (イガラシ ダイ) (著/文) 1983年、宮城県生まれ。2015年よりフリーライターになる。著書に『しくじり家族』(CCCメディアハウス)、『ろうの両親から生まれたぼくが聴こえる世界と聴こえない世界を行き来して考えた30のこと』(幻冬舎)など。2022年には初の小説作品『エフィラは泳ぎ出せない』(東京創元社)も手掛ける。
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野生のしっそう 障害、兄、そして人類学とともに|猪瀬 浩平
¥2,640
ミシマ社 2023年 ソフトカバー 304ページ 四六判 - 内容紹介 - 知的障害があり自閉症者でもあるが、さまざまな鋭さをもった兄。障害がないとされているが、さまざまないびつさをもった弟(著者)。世間には、この兄と弟を切断する「ものの見方」があたりまえに存在する。 しかし、その分断をすり抜けてしまうある出来事が起こった。 2021年3月、緊急事態宣言の下、兄は突然しっそうする―― どこへ向かったのか? なぜしっそうしたのか? その道筋を辿りながら見えてきたのは、兄の「たたかわない」術だった。 外なる他者、遠くの他者を扱ってきた文化人類学に、あらたな道を拓く実践の書! 「障害とともにある人類学」から始まり、「内なる他者」を対象とした人類学へと展開する、あたらしい学問のあり方。 装画・挿画 岡田喜之 - 目次 - はじめに しっそうのまえに 第一章 沈黙と声 たたかわないこと、しっそうすること/三月下旬 午前二時半に走り出す/カタリナの構え/黙禱と叫び 1/黙禱と叫び 2 第二章 蜜柑のはしり ズレと折り合い/いくつかの死と/いくつもの死と/対面とリモート/夏みかんのしっそう/贈与のレッスン 第三章 世界を攪乱する、世界を構築する ボランティアのはじまり/満月とブルーインパルス、あるいはわたしたちのマツリについて/路線図の攪乱 1/路線図の攪乱 2/トレイン、トレイン 第四章 急ぎすぎた抱擁 父とヤギさん/眠る父/転倒の先/失踪/疾走/旋回としっそう/燕(つばくら)の神話 最終章 春と修羅 むすびとして うさぎのように広い草原を - 著者プロフィール - 猪瀬浩平 (イノセコウヘイ) (著/文) 1978年埼玉県生まれ。明治学院大学教養教育センター教授。専門は文化人類学、ボランティア学。1999年の開園以来、見沼田んぼ福祉農園の活動に巻き込まれ、様々な役割を背負いながら今に至る。著書に、『むらと原発――窪川原発計画をもみ消した四万十の人びと』(農山漁村文化協会)、『分解者たち――見沼田んぼのほとりを生きる』(生活書院)、『ボランティアってなんだっけ?』(岩波ブックレット)などがある。
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星を見る人 : 日本語、どん底からの反転|恩田 侑布子
¥2,640
春秋社 2023年 ハードカバー 260ページ 四六判 - 内容紹介 - ことばの手ざわり、肌ざわりに誘われ、情感の深みへ――。芭蕉、蛇笏、久保田万太郎、石牟礼道子、荒川洋治、井筒俊彦、草間弥生・・・・・・絶滅危惧種となった風合いある表現に、ゆらぎ、渦巻き、なりかわる、こころ・からだ・いのち。芸術選奨文部科学大臣賞・ドゥマゴ文学賞俳人による五感を震わせる評論!――格差社会で、核保有大国とそれ以外、富と権力を持つ者とそれ以外が分断されたように、人間の生と死も分断され、引き裂かれる。こうした近代以降の危機のなかで、痩せ細りジャンク化していく文化と言葉に全体重で抗って、生きて愛して表現してきた芳醇な人々がいる。しんじつの人間の声を、詩・俳句・美術・思想に刻んで、わたしたちのしょんぼりしがちな精神に滋養を与えてくれるゆたかな作品がある。(はじめにより) - 目次 - はじめに 序 星を見る人 I 近代を踏み抜いて 『石牟礼道子全句集 泣きなが原』 II 皮膜と「興」 草間彌生と荒川洋治 III やつしの美 久保田万太郎の俳句 IV エロスとタナトスの魔境 飯田蛇笏 V 戦争、エロスの地鳴り 三橋敏雄 VI 社会性俳句・巣箱から路地に 大牧広 VII 美への巡礼 黒田杏子 VIII 現代俳句時評 IX 草田男と霊感 X 渾沌と裸 井筒俊彦『意識と本質』から XI 新説『笈の小文』 切れと感情の大陸 あとがき 初出一覧
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数学する身体|森田真生
¥605
新潮社 2018年 新潮文庫 ソフトカバー 240ページ 文庫判 縦151mm 横106mm 厚さ9mm - 内容紹介 - 数学はもっと人間のためにあることはできないのか。最先端の数学に、身体の、心の居場所はあるのか――。身体能力を拡張するものとして出発し、記号と計算の発達とともに抽象化の極北へ向かってきたその歴史を清新な目で見直す著者は、アラン・チューリングと岡潔という二人の巨人へと辿り着く。数学の営みの新たな風景を切りひらく俊英、その煌めくような思考の軌跡。小林秀雄賞受賞作。
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「国境なき医師団」を見に行く|いとうせいこう
¥924
講談社 2020年 講談社文庫 ソフトカバー 462ページ 文庫判 - 内容紹介 - 大震災後のハイチで新生児の命を救う産科救急センター、中東やアフリカから難民が流れ込むギリシャの難民キャンプ支援、フィリピンのスラムで女性を守る性教育プロジェクト、南スーダンから100万人の難民が流入したウガンダでの緊急支援――。 各国のリアルな現場を訪ね大きな話題となったルポルタージュ。 Yahoo!好評連載、待望の文庫化! ※ 本書の売上の一部は「国境なき医師団」に寄付されます - 著者プロフィール - いとう せいこう (イトウ セイコウ) (著/文) いとうせいこう 作家・クリエーター。1961年、東京都生まれ。編集者を経て、作家、クリエーターとして、活字・映像・音楽・舞台など多方面で活躍。『ボタニカル・ライフ』で第15回講談社エッセイ賞を受賞。『想像ラジオ』が三島賞、芥川賞候補となり、第35回野間文芸新人賞を受賞。ほかの著書に『ノーライフキング』『見仏記』(みうらじゅんとの共著)、『鼻に挟み撃ち』「存在しない小説』『我々の恋愛』『どんぶらこ』など。
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よくわからないけど、あきらかにすごい人|穂村 弘
¥935
SOLD OUT
毎日新聞出版 2023年 毎日文庫 ソフトカバー 320ページ 文庫判 - 内容紹介 - 他の誰でもない、自分の生を生きていく。大転換の時、八ケ岳の山小屋から〈新しい日常〉を探る地球視線エッセイ。
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炉辺の風おと|梨木 香歩
¥1,760
毎日新聞出版 2023年 毎日文庫 ソフトカバー 320ページ 文庫判 - 内容紹介 - 他の誰でもない、自分の生を生きていく。大転換の時、八ケ岳の山小屋から〈新しい日常〉を探る地球視線エッセイ。
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「誰でもよいあなた」へ 投壜通信|伊藤 潤一郎
¥1,760
講談社 2023年 ソフトカバー 176ページ 四六判 - 内容紹介 - 手紙を詰めた壜を海原に投じるとき、書き手は「誰かは知り得ないが、どこかにいるあなた」へ届くと信じている。自分が名宛人でなくても自分宛のように受け取れる言葉が、この世界には確かに存在している。時空を隔てた「あなた」とわたしの関係――。ナンシー、ツェラン、ベケット、リクール、デリダ、石原吉郎、青柳瑞穂、宇佐見りん、会津八一、ベンヤミン、石沢麻依……。思想と文学を結び、書かれた言葉を紡いでフランス現代思想の気鋭が贈る、傑作散文集。 目次 1.「あなた」を待ちながら 2.庭付きの言葉 3.岸辺のアーカイヴ 4.私にとっての赤 5.一人の幅で迎えられる言葉 6.記憶と発酵 7.断片と耳 8.誇張せよ、つねに 9.あてこまない言葉 10.「あなた」とともに
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まぼろしの枇杷の葉蔭で 祖母、葛原妙子の思い出|金子 冬実
¥1,760
書肆侃侃房 2023年 ソフトカバー 184ページ 四六判 - 内容紹介 - 「幻視の女王」とも評された、戦後短歌史を代表する歌人、葛原妙子。彼女には家族にしか見せなかった別の姿があった──。チャーミングで愛おしい、「異形の歌人」の横顔。 「おばあちゃんとのことについて、色々な人が色々なことを言っているだろう。あれはみんな違うんだよ」 「あたりかまわず朱と咲きいでよ」と自らを鼓舞し、脇目もふらず作歌にいそしんだ歌人、葛原妙子。 子どもの頃、大森の祖母の家に行く時には何か冒険に出かけるような気持ちになった。かつての病院の敷地内にあった、広い平屋住宅。周囲には枇杷の大樹が緑の葉をさかんに茂らせていた。 孫である著者から見た葛原妙子とは──。戦後短歌史を代表する歌人と、その家族の群像がここにある。 向田邦子、須賀敦子を髣髴とさせる、極上の名エッセイ集。 【本文より】 私は祖母のことを「おばあちゃん」と呼んではいたものの、祖母は世間一般で言う「おばあちゃん」らしさが感じられる人では全くなかった。夫にかしづき、家族を愛し、まめまめしく皆の世話をやいていた父方の祖母とあまりに違いすぎる。そのことに戸惑いを覚えつつも、ある種の諦めの気持ちがあった。 *** 「おばあちゃんはカジンだから……」 周囲の大人たちがしばしば口にする「カジン」という音に、「歌人」という漢字があてはまることを知ったのはだいぶ後になってからだった。「カジン」にせよ「歌人」にせよ、同年代の子供たちが親しまないこれらの言葉は、大人たちから与えられた玩具のように、幼い私の傍らにいつもあった。 - 著者プロフィール - 金子冬実 (カネコ フユミ) (著/文) 1968年東京生まれ。旧姓勝畑。早稲田大学大学院で中国史を学んだのち、東京外国語大学大学院にて近現代イスラーム改革思想およびアラブ文化を学ぶ。博士(学術)。1995年より2014年まで慶應義塾高等学校教諭。現在、早稲田大学、東京外国語大学、一橋大学等非常勤講師。1996年、論文「北魏の効甸と『畿上塞囲』──胡族政権による長城建設の意義」により、第15回東方学会賞受賞。
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葛原妙子歌集|川野里子(編集), 葛原妙子(著/文)
¥2,200
書肆侃侃房 2021年 ハードカバー 296ページ 四六判 - 内容紹介 - 装幀:六月 栞:大森静佳、川野芽生、平岡直子 葛原妙子の全ての歌集から1500首を厳選。 葛原の壮大な短歌世界が見渡せる一冊。 【目次】 『橙黃』/『繩文』/『飛行』/『薔薇窓』/『原牛』/『葡萄木立』/『朱霊』(完本)/『鷹の井戶』/『をがたま』/『をがたま』補遺/異本『橙黃』/解説(川野里子)/葛原妙子年譜 【栞】 大森静佳「えぐる、えぐられる」 川野芽生「幻視者の瞼」 平岡直子「この世界で、電気仕掛けの身体で」 【収録歌より】 早春のレモンに深くナイフ立つるをとめよ素睛らしき人生を得よ(『橙黃』) わがうたにわれの紋章のいまだあらずたそがれのごとくかなしみきたる(『橙黃』) 黑峠とふ峠ありにし あるひは日本の地圖にはあらぬ(『原牛』) 他界より眺めてあらばしづかなる的となるべきゆふぐれの水(『朱靈』) 疾風はうたごゑを攫ふきれぎれに さんた、ま、りぁ、りぁ、りぁ(『朱靈』) - 著者プロフィール - 川野里子 (カワノサトコ) (編集) 1959年生まれ。千葉大学大学院修士課程修了。東京大学大学院総合文化研究科博士課程単位取得退学。評論に『幻想の重量──葛原妙子の戦後短歌』『七十年の孤独──戦後短歌からの問い』(書肆侃侃房)、『コレクション日本歌人選 葛原妙子』(笠間書院)など。歌集に『太陽の壺』(第13回河野愛子賞)『王者の道』(第15回若山牧水賞)『硝子の島』(第10回小野市詩歌文学賞)『歓待』(第71回読売文学賞)など。
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山學ノオト4(二〇二二) |青木真兵, 青木海青子
¥2,200
SOLD OUT
エイチアンドエスカンパニー 2023年 ソフトカバー 256ページ 縦170mm 横120mm 厚さ16mm - 内容紹介 - 「社会との約束の下、寝て食べて動く。しかし、いつ約束したのだか判然としない。」 奈良県東吉野村。人口一五〇〇人の村の山あいに佇む一軒家、人文系私設図書館「ルチャ・リブロ」。自宅を開放して図書館を運営する夫婦が、仕事に、生活に、山村と街を、あるいは彼岸と此岸を往復しながら綴った日記に、エッセイや草稿「研究ノオト」を収録した、日記帳。 人の動きが少しづつ戻ってくる中で、あらためて見えてきた他者や社会とその「外側」にあるもの。内と外を行ったり来たり。ぐるぐる回りながら考えた、二〇二二年の記録。 - 目次 - p.6 研究ノオト 山村に図書館をつくる 真兵 p.16 日記(山學日誌)一月~一二月 p.254 サバイバーが生き延びること 海青子 p.260 オムライスラヂオ年表(二〇二二) - 著者プロフィール - 青木真兵 (アオキシンペイ) (著/文) 1983年生まれ、埼玉県浦和市に育つ。「人文系私設図書館ルチャ・リブロ」キュレーター。古代地中海史(フェニキア・カルタゴ)研究者。博士(文学)。社会福祉士。2014年より実験的ネットラジオ「オムライスラヂオ」の配信をライフワークにしている。2016年より奈良県東吉野村在住。著書に『手づくりのアジール』(晶文社)、妻・青木海青子との共著『彼岸の図書館 ぼくたちの「移住」のかたち』(夕書房)、『山學ノオト』シリーズ(H.A.B)、光嶋裕介との共著『つくる人になるために 若き建築家と思想家の往復書簡』(灯光舎)などがある。 青木海青子 (アオキミアコ) (著/文) 1985年兵庫県生まれ。七年間、大学図書館司書として勤務後、東吉野へ。現在は私設図書館を営みながら、陶と刺繍で制作を行う。著書に『本が語ること、語らせること』(夕書房)、夫・青木真兵との共著『彼岸の図書館』(夕書房)、『山學ノオト』シリーズ(H.A.B)がある。夕書房noteにて「土着への処方箋 ルチャ・リブロの司書席から」が好評連載中。
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声の地層 災禍と痛みを語ること|瀬尾 夏美
¥2,310
生きのびるブックス 2023年 ソフトカバー 288ページ 四六判 縦188mm 横128mm 厚さ16mm - 内容紹介 - 多くを失い身一つになっても、集えば人は語りだす。 伝える人と、耳をすます人の間に生まれた、語り継ぎの「記録文学」。 「すこしの勇気を持って、この人に語ってみよう、と思う。その瞬間、ちいさく、激しい摩擦が起きる。マッチが擦れるみたいにして火花が散る。そこで灯った火が、語られた言葉の傍らにあるはずの、語られないこと、語り得ないことたちを照らしてくれる気がして。それらを無理やり明るみに出そうとは思わない。ただその存在を忘れずにいたい」(はじめに) - 目次 - はじめに――語らいの場へようこそ 第1章 おばあさんと旅人と死んだ人 第2章 霧が出れば語れる 第3章 今日という日には 第4章 ぬるま湯から息つぎ 第5章 名のない花を呼ぶ 第6章 送りの岸にて 第7章 斧の手太郎 第8章 平らな石を抱く 第9章 やまのおおじゃくぬけ 第10章 特別な日 第11章 ハルくんと散歩 第12章 しまわれた戦争 第13章 ハコベラ同盟 第14章 あたらしい地面 第15章 九〇年のバトン 声と歩く――あとがきにかえて - 前書きなど - はじめに―語らいの場へようこそ 災禍に遭う。困難を抱える。大切なものを失う、奪われる。できるならそんなことは誰の身にも降りかからない方がよいのだけれど、現状、なかなかそうもいかない。自然災害に見舞われたり、事件や事故に巻き込まれたり、生活圏で戦争や紛争が始まったり、あるいは心身に傷を抱えることもあるし、生きづらさに深く悩むことだってある。この地球上に生きている限り、まさにいま、見知らぬ誰かが、自分自身やとても近しい人が、苦しい経験をするかもしれない。その予感自体が恐怖であるから、日常生活を送るうえではあまり想像したくはない、忘れていたいものではある。だけど、だとしても、逃げているばかりでよいのだろうか? とも思う。 もちろん防災的な観点を用いて、リスクから逃げずに向き合い、できるだけ未然に対処すべし! といった答えを導くことはできるかもしれないけれど、わたしにはもうひとつ意識していたいことがある。それは、先立って災禍を経験した人びとの存在である。彼らの多くが、未来に生きる人びと―ほかでもないわたしたちの苦しみがすこしでも和らぐようにと願って、体験と記憶をふりかえり、検証し、言葉にし、それらを記録に残したり、語り継ぎを試みたり、あるいは物語を編み上げたりしてきた。さらに、彼らの傍らにはその声を受け止めてきた人がいて、またその人から話を聞いた人がいて……だからこそ、災禍の語りや記録は、いまわたしたちの目の前に存在している。そんなちいさなバトンを手渡すような連綿とした営みを想像すると、その凄みと愛らしさに圧倒される。ならばせめて、その声を聞く努力をしてみたい。 こんなことを考えるようになったのは、この一〇年あまり、言い換えると、二〇一一年に発生した東日本大震災以降、自身の経験を言葉にして伝えようとする人びと、あるいは他者の経験を語り継ごうとする人びとにたくさん出会い、話を聞かせてもらってきたからだ。語り手にとっても聞き手にとってもしんどいことをなぜわざわざ? と問われることもあるけれど、災禍を語らう場に招かれ、その豊かさを知ってしまうと、なかなか離れがたい。語ることはときに酷く苦しい。聞くことだってそうかもしれない。だけど、語らいの場がもたらすものはそれだけではない、と信じている。たくさんのものを失い、身ひとつになっても、集えば人は語り出す。ちいさな輪のなかでともに泣き、怒り、許しあったり笑いあったりする。話す人、聞く人、沈黙する人、相槌を打つ人。語りは居場所をつくる。その実感が大きい。 はじまりは発災から間もない頃、ボランティアで訪ねた避難所や泥だらけの家々での出来事だった。わたしは当時大学を卒業したところで、やれることがあればなんでもすると意気込んで、友人とふたりで “被災地”に向かった。しかし情けないことに、到着したその現場で、自分が力持ちでも器用でもなく、あまり役に立たないことに気がつく。それで所在なげにしていると、“被災者”たちが次々と声をかけてくれた。あんだ、わざわざ遠くから来てくれたの! そう言ってまじまじとこちらを見つめて、旅の者にはせめて土産のひとつでも持たせなければ、という面持ちで訥々と語り始める。 日常の想像力では追いつかない、巨大な力で捻じ曲げられた風景をともに見つめながら、凄絶な“あの日”とそれからのこと、失われたものたちのことを聞く。ただ、思いがけずその場はやわらかかった。被災して間もない語り手と、どこかから迷い込んできた旅の者が会話をする。それぞれの立場の違いを考えればピリピリと緊張が走るけれど、会話を進めていくとそれは徐々に解け、場に集うひとりひとりとして付き合う形となる。 その人が語り、わたしは聞く。その人がわたしの様子を見ながら、次の言葉を選んでくれているのがわかる。恐れ多い。ここに居るのがわたしでいいのだろうか、と思う。だけど、たとえほんの一部だとしても、その人の大切な経験を手渡そうとしてくれることが嬉しい。だから、できるだけはっきりとうなずく。すべてはわからなくても、聞いています。聞きたいです、と伝えたくて。そうして続いたしばしの会話を締めくくるとき、その人は言った。いま話したことを、きっと誰かに伝えてくださいね。大変なことになった、とわたしは気がつく。再会を誓って別れる。 いまわたしが居るのは、今後確実に歴史に刻まれるであろう巨大災害の“被災地”である。そこで話を聞かせてくれた人びとのほとんどが、誰かに伝えてね、と言っていた。話を聞いた者には、語り継ぎの役目が託される? なんてこった。軽くうろたえながら、とはいえどうすればいいのだろう、と具体的なことを想像してみる。そもそもわたしがやっていいことなのだろうか。相手がどれくらい本気なのかもわからないけれど、せっかく聞かせてもらったことは、誰かに伝えてみたい、と思った。 語り継ぎとは、こんなにちいさな現場の積み重ねによるものなのか。それは出来事のすぐあと、身ひとつで肩を寄せ合うその瞬間から始まっている。そのことに新鮮に驚き、突き動かされるように旅を始めてから、一〇年以上が経つ。 この本は、二〇二一年の一月から二〇二二年春までの一年半にわたり、『声の地層 〈語れなさ〉をめぐる物語』と題して続けた連載と、三本の書き下ろしで構成されている。 被災地域を歩いて話を聞かせてもらった日々の中で、自分の関心は“語れなさ”にあると感じるようになった。それは、場に集う人びと、聞き手と語り手、人間同士のあいだに発生するものだ。そもそも語りとは、語り手が一方的に自分の感情や考えをぶつけるものではなく、目の前にいる聞き手とのやりとりによって編まれるものだと思う。途中でその役割が交代することだってあるし、それぞれが自分の内に思わぬ言葉を見つけたり、ともにあたらしい物語を発見したりする楽しみがある。 ただ、どんなに信頼する相手との穏やかな場であったとしても、“語れなさ”は発生する。たとえば、語ることで相手を傷つけたり、関係性が崩れたりすることが怖くなる。自分や誰かの大切な体験や記憶が、誤解されたり損なわれたりするのは避けたい。わたしたちは自分の内側でさまざまなことを考え、逡巡し、迷いながら言葉を選び、声に出す。こうして〝語れなさ〟は語りを抑圧し、制御することがある、といえるかもしれない。あるいは、だからこそコミュニケーションが円滑になるのだ、と開き直ることもできるかもしれない。 たしかに、“語れなさ”がどう働くのかを検証することも興味深いとは思うけれど、わたしが気になっているのは、言葉を声に出す前の一瞬のひっかかり、そのもののことだ。置かれた境遇も考え方も異なる人たちが、互いのすべてを分かり合うことは難しいと感じながらも、それでも関わろうとする。すこしの勇気を持って、この人に語ってみよう、と思う。その瞬間、ちいさく、激しい摩擦が起きる。マッチが擦れるみたいにして火花が散る。そこで灯った火が、語られた言葉の傍らにあるはずの、語られないこと、語り得ないことたちを照らしてくれる気がして。それらを無理やり明るみに出そうとは思わない。ただその存在を忘れずにいたい。 連載を開始した二〇二一年は東日本大震災から一〇年目の年だったが、新型コロナウイルス感染症の拡大という世界的、長期的な災禍の始まりとも重なった。また、気候変動の影響もあって世界各地で自然災害が増加し、二〇二二年二月にはロシアによるウクライナ侵攻が始まった。予想もしなかった災禍が重なり、社会は大きく揺らいでいる、と思う。経済難は深刻化し、格差が広がり、とくにインターネット空間には差別的な言葉と行為が溢れている。ふつうの日常に分厚い不安感が広がっていくのを感じながら、わたしはより切実に、語りを聞きたい、語らいの場が必要だ、と思うようになった。 そうして、かつて戦争や自然災害などの災禍を経験した人びとに会いに行くと、彼らが自身の過去を反芻しながら、いままさに苦しい境遇にある人びとに気持ちを寄せていたことが印象に残っている。また、わたし自身は、こうして災禍の語りを聞き歩く中で、自分や身近な人の日常にある痛みについて、ほんのすこしずつ、向き合えるようになってきた。災禍は非日常的なものだけれど、その渦中にもその後にも日常はある。そんな実感を込めて災禍を語る人びとに、ごく身近にある“語れなさ”に触れるための手つきを教えてもらった。 この本は奇しくも、こうして大きく揺れていた(いや、これからもっと困難な時代が訪れるのでは、という不安が強いのだけれど)社会のちいさな記録にもなったと思う。ひとつひとつの章は、「物語」と「あとがたり」で構成している。何かを語ってくれたその人が感じていたであろう〝語れなさ〟と、その語りの傍らにあったはずの、語られないこと、語り得ないことを忘れずに残しておくために、創作の「物語」という余白を含み込める形を選んだ。「あとがたり」には、おもに実際の語りの場の様子やそのときどきの気づきを記している。 身を寄せ合い、輪をつくり、語らう。そこで、自分たちに起きたこと、起きていることを確かめ、互いの知恵を交換しながら、これからについて話しあう。誰もがきっと必要としているちいさな場の連なりが、そっと灯された物語を、遠くまで運んでゆくのを想像しながら。 誰もがその輪の中に招かれることを祈って。 - 著者プロフィール - 瀬尾夏美 (セオ ナツミ) (著) 1988 年、東京都生まれ。土地の人びとの言葉と風景の記録を考えながら、絵や文章をつくっている。2011年、東日本大震災のボランティア活動を契機に、映像作家の小森はるかとのユニットで制作を開始。2012 年から3 年間、岩手県陸前高田市で暮らしながら、対話の場づくりや作品制作を行なう。2015年、宮城県仙台市で、土地との協働を通した記録活動をするコレクティブ「NOOK」を立ち上げる。現在は、東京都江東区を拠点に、災禍の記録をリサーチし、それらを活用した表現を模索するプロジェクト「カロクリサイクル」を進めながら、“語れなさ” をテーマに旅をし、物語を書いている。著書に『あわいゆくころ―陸前高田、震災後を生きる』(晶文社)、『二重のまち/交代地のうた』(書肆侃侃房)、『10年目の手記―震災体験を書く、よむ、編みなおす』(共著、生きのびるブックス)、『New Habitations:from North to East 11 years after 3.11』( 共著、YYY PRESS)がある。
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朝おやつ|甲斐 みのり
¥1,320
mille books 2023年 ソフトカバー 192ページ 四六判 - 内容紹介 - 甘美な口福に満ちた、芳醇なお菓子文学 「朝おやつ」として愛食する43の甘味の記憶をめぐる物語 全国を旅して見つけた美味しい甘味の魅力を、優しい筆到で丁寧に描いてきた文筆家・甲斐みのり。 朝おやつとして愛食する甘味たちを、美味しさが溢れ出す美しい写真と共に丁寧に描きました。 朝おやつが運んでくれた大切な人たちとの出会い、そして別れ。 甘いだけではない物語の数々は、誰もの心の奥にある甘い記憶を思い出し、懐かしい人や風景が鮮明に呼び起こされます。 甲斐みのりの集大成といえる、お菓子愛に満ちた名随筆集がここに完成! 装画は画家・湯浅景子が「ゼリーのイエ」を美しい切り絵で表現しました。
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そして私たちの物語は世界の物語の一部となる インド北東部女性作家アンソロジー|ウルワシ・ブタリア(編集), 中村唯(監修)
¥2,860
国書刊行会 2023年 ハードカバー 288ページ 四六判 - 内容紹介 - バングラデシュ、ブータン、中国、ミャンマーに囲まれ、 さまざまな文化や慣習が隣り合うヒマラヤの辺境。 きわ立ってユニークなインド北東部から届いた、 むかし霊たちが存在した頃のように語られる現代の寓話。女性たちが、物語の力をとり戻し、 自分たちの物語を語りはじめる。本邦初のインド北東部女性作家アンソロジー。 1944年4月、日本軍がやってきた。軍靴で砂埃を立てながら、行進してきた。先頭の男は村人たちに呼びかけ、こう言った。「食料と寝起きする場所を提供してくれれば、あなたがたに害は及ばない。我々はあなたがたの友人だ。我々はあなたがたを解放するために来た。あなたがたを傷つけることはない」(「四月の桜」) 「これにはどんな富よりも値打ちのある宝物が入っている。死ぬ前におまえに渡したい。昔、語り部から手渡されたものを、おまえに手渡すよ」ウツラはその壺をわたしの頭の中に入れた。……何週間か経ってウツラは死んだ。……お話を語るときわたしは別の人間になった。生き生きした。それからずっと語り続けている。(「語り部」) わたしたちは首狩り族の末裔だったが、いまはインド政府が提供してくれる資金に頼っていた。わたしたちは平地人とは違っていた。彼らは……反政府分子がいないか見張ってもいた。現代生活が、伝統的な慣習や行動とぎこちなく共存していた。(「いけない本」) 黒柳徹子さん推薦! 【目次】 序 「中心」と「周辺」、「われわれ」と「よそ者」 ウルワシ・ブタリア インド北東部の素顔 木村真希子 ナガランド州からの文学作品 丘に家が生えるところ エミセンラ・ジャミール 語り部 エミセンラ・ジャミール 四月の桜 イースタリン・キレ 手紙 テムスラ・アオ 母さんの娘 ネイケヒエヌオ・メフーオ 赦す力 アヴィヌオ・キレ いけない本 ナローラ・チャンキジャ アルチャナル・プラデーシュ州からの文学作品 夜と私 ネリー・N・マンプーン 消された炎 レキ・スンゴン 森の精霊 スビ・タバ 亡霊の歯科医 ミロ・アンカ 闇に葬られし声の中で ポヌン・エリン・アング ザ・サミット――ティーネ・メナのインタビュー ママング・ダイ ミゾラム州からの文学作品 書くこと バビー・レミ まだ見ぬ肖像画 シンディ・ゾタンプイ・トゥラウ マニプール州からの文学作品 台所仕事 チョンタム・ジャミニ・デヴィ 夫の子 ハオバム・サティヤバティ ツケの返済 スニータ・ニンゴンバム 敗北 ニンゴンバム・スルマ 真紅のうねり ネプラム・マヤ 我が息子の写真 ニンゴンバム・サティヤバティ 夜明けの大禍時 グリアルバム・ガナブリヤ 女性の肌 ナタリディタ・ニントゥホンジャム インド北東部、記憶と記録 中村 唯 - 著者プロフィール - ウルワシ・ブタリア (ウルワシブタリア) (編集) デリー大学で英文学、ロンドン大学で南アジア研究の修士号を取得。イギリスのセイジ出版社に編集者として勤務した後、インドに帰国。1975年の国際女性年や1977年のインドの民主化運動で女性運動に関わり、1983年に、インド初のフェミニスト出版社であるカーリー出版社を設立。現在、インドを代表する女性知識人として国内外で知られる。デリー大学など複数の大学で教鞭を執るほか、講演やメディアで活動。『沈黙の向こう側』(1998年、邦訳・明石書店 2002年)は日本を含む多数の言語に翻訳され各国の賞を受賞。2011年、インドの国民名誉賞であるパドマ・シュリー賞を受賞。 中村唯 (ナカムラユイ) (監修) 笹川平和財団アジア・イスラム事業グループ主任研究員。タイの新聞社、国際交流基金バンコク日本文化センター勤務などを得て、財団、シンクタンク、国際協力機構(JICA)にて、南アジアの地域開発や人材育成に関わり、2015年9月から現職。インパール平和資料館、インド北東部視聴覚アーカイブの設立など、インド北東部を中心にインド事業を担当。タイ国立カセサート大学、英サセックス大学開発所修了。「終戦記念日 特別寄稿 インパール作戦 前編・後編」(講談社『クーリエジャポン』)のほか、インドの社会起業家、ジェンダーや女性支援に関するエッセイや論文など多数。
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末裔|絲山 秋子
¥990
河出書房新社 2023年 河出文庫 ソフトカバー 280ページ 文庫判 - 内容紹介 - 帰宅すると鍵穴が消え、家を締め出された定年間際の公務員・富井省三。占師の予言、しゃべる犬、幻の七福神。次々訪れる不思議が、彼を鎌倉の亡き伯父宅へ導き……。中年男性の再出発を描く傑作。
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トルコ怪獣記|高野 秀行
¥990
河出書房新社 2023年 河出文庫 ソフトカバー 288ページ 文庫判 - 内容紹介 - トルコ東部ワン湖に棲む巨大生物ジャナワール、それは本物かフェイクか? 目撃情報が多発する村辿り着くと、イスラム復興主義やクルド問題に絡む陰謀が浮上し……。興奮と笑いが渦巻くノンフィクション。
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味つけはせんでええんです|土井 善晴
¥1,760
ミシマ社 2023年 ソフトカバー 208ページ B6変 縦168mm 横120mm 厚さ13mm - 内容紹介 - 「なにもしない」料理が、 地球と私とあなたを救う。 AIの発達、環境危機、経済至上主義… 基準なき時代をどう生きるか? 人間とは、自由とは、幸せとは。 「料理」を入り口に考察した壮大な著! 土井節炸裂、一生ものの雑文集。 『ちゃぶ台』の名物連載、ついに書籍化。 レシピとは人の物語から生まれたお料理のメモ。他人のレシピは他人の人生から生まれたもの。でも本来、料理は自分の人生から生まれてくるものです。それがあなたの料理です。つたなくっても、自信がなくっても、私はいいと思います。「味つけせんでええ」というのは、それを大切にすることだと思っているのです。 一生懸命お料理すればそこにあなたがいるのです。お料理するあなたが、あなたを守ってくれるのです。――「まえがき」より ●目次 1 料理という人間らしさ 2 料理がひとを守ってくれる 3 偶然を味方にする――「地球と料理」考 4 味つけはせんでええんです 5 料理する動物 6 パンドラの箱を開けるな!
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夏みかんの午後|永井 宏
¥2,200
信陽堂 2023年 ハードカバー 176ページ B6変 縦177mm 横117mm 厚さ14mm - 内容紹介 - 美術作家であり、エッセイや詩を数多く残した永井宏さんは、数編の愛すべき小説も残していました。本書は2001年にサンライト・ラボから出版されて以来、静かに読まれ続けてきた作品の復刊です。主人公は何かが始まる予感を胸に、東京を離れ海辺の町、葉山で暮らしはじめたばかりのフードスタイリスト、志田エリ31歳。大都市と郊外、何かに追いかけられるような時間と、手を動かし、ものを作るささやかな生活……自分の価値観を誇りに海辺に暮らす人々と出会い、少しずつ解放され新しい時間を生きはじめた女性の姿を描く短編小説。「砂浜とボート」を併録。初版から20年以上の時を経て、なおこころに響く海辺のフォークロアです。 巻末には永井さんのワークショップに参加していた小栗誠史さんのエッセイを収録。 - 目次 - 夏みかんの午後 1 海辺はいつもいい天気 2 波の上の散歩 3 イルカのキス 4 海辺のフォークロア 5 ハードハウス 6 バック・イン・タウン 7 夏の宿題 8 夢の庭 9 ニュー・ムーン 砂浜とボート 永井さんは文化の入口 小栗誠史 - 版元から一言 - 『サンライト』『愉快のしるし』『雲ができるまで』などで再評価が進む作家・永井宏さん(2011年没)が残した短編小説の復刻です。 主人公は東京での仕事に行き詰まりを感じ湘南葉山に移り住んだ女性。自分たちの価値観を大切にして、都会にはない時間を生きる人たちとふれあう中で、新しい暮らしの形を見つけてゆく姿がみずみずしく描かれます。2001年に発表された作品ですが、コロナ禍を経て、2拠点生活やリモートワークなど働き方と生き甲斐の質が変化した今だからこそ響くものがあります。 - 著者プロフィール - 永井宏 (ナガイ ヒロシ) (著・写真・挿画) 美術作家。1951年東京生まれ。1970年なかごろより写真、ビデオ、ドローイング、インスタレーションなどによる作品を発表。80年代は『BRUTUS』(マガジンハウス)などの編集に関わりながら作品を発表した。1992年、神奈川県の海辺の町に転居。92年から96年、葉山で生活に根ざしたアートを提唱する「サンライト・ギャラリー」を運営。99年には「サンライト・ラボ」を設立し雑誌『12 water stories magazine』を創刊(9号まで刊行)、2003年には「WINDCHIME BOOKS」を立ち上げ、詩集やエッセイ集を出版した。自分でも旺盛な創作をする一方で、各地でポエトリーリーディングの会やワークショップを開催、「誰にでも表現はできる」とたくさんの人を励まし続けた。ワークショップからはいくつものフリーペーパーや雑誌が生まれ、詩人、作家、写真家、フラワーアーティスト、音楽家、自らの表現として珈琲焙煎、古書店、雑貨店やカフェ、ギャラリーをはじめる人などが永井さんのもとから巣立ち、いまもさまざまな実験を続けている。 2011年4月12日に永眠、59歳だった。 2019年、『永井宏 散文集 サンライト』(夏葉社)、復刻版『マーキュリー・シティ』(ミルブックス)、2020年『愉快のしるし』、2022年『雲ができるまで』(信陽堂)が相次いで刊行され、リアルタイムでの活動を知らない新しい読者を獲得している。
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蛇の棲む水たまり|梨木 香歩, 鹿児島 睦
¥2,200
ブルーシープ 2023年 ハードカバー 68ページ A5変 縦195mm 横153mm 厚さ11mm - 内容紹介 - 「陶芸家の鹿児島睦さんの展覧会が開かれます。新作の器を見て、そこからお話を作っていただけませんか」 依頼を受けた作家の梨木香歩さんは、色や形のさまざまな器に草花に馬や象、蛇などの生き物が描かれた200点の作品を1枚ずつ、何度も繰り返し見ながら物語を紡ぎました。梨木さんの物語を受け取った鹿児島睦さんは、何度も読んで反芻し、ラストシーンに新しい1枚を制作しました。 このようにして生まれた本です。水たまりを見つけのぞき込む馬のように、水たまりに棲む蛇に、会いにいってください。