-
かめれおん日記 | 中島敦, 山本善行(監修)
¥1,870
灯火舎 2021年 ハードカバー 112ページ 縦180mm 横122mm 厚さ11mm - 内容紹介 - 小品をもって、作者や作品との出会い、本との出会いの場へと誘う「灯光舎 本のともしびシリーズ」第3弾は中国の古典世界を材にした『山月記』や『李陵』などを描いた作家・中島敦の作品3編をお届けします。 パラオ滞在中に出会った島民の女性をユーモラスに親しみあるまなざしで描いた「マリヤン」、ある南の島に伝わったとされる昔話を題材に描いた「幸福」、そしてタイトルとなった「かめれおん日記」を収録。自身の望まぬ環境と喘息の持病に悩むある教師が、突然生徒から渡されたカメレオンを飼育することになる。その珍奇な小動物の観察から、「自身への呵責と省察」が思索的に展開し、現実と内面の世界を往還する。環境に適応できずに衰弱する「かめれおん」と何とか今の状況から脱却を試みる人間が鮮明に描かれる。 南島の自然や人々への愛情あるまなざしと自身の内面をえぐる鋭い観察に加えて、時にシニカルとユーモアを漂わせて精彩をはなつ作品たちをお届けします。また、中島敦の妹・折原澄子氏によるエッセイ『兄と私』を収録。兄・中島敦との想い出と人柄をていねいに描くみごとな文章も必見。 「灯光舎 本のともしび」創刊 人々の心に染み入る作品を取り上げ、小品仕立ての書籍にしてお届けする「灯光舎 本のともしび」。書物の愛好家はもとより、作者や作品ないしは読書そのものへの入り口にしてほしいという想いのもと、「小品」をコンセプトに素朴で味わいのある佇まいで、刊行いたします。 撰者には、書物エッセイストで京都銀閣寺に店を構える古書善行堂店主・山本善行氏を迎え、シリーズとしての発刊を目指します。 目次 ・マリヤン ・幸福 ・かめれおん日記 ・兄と私 ・撰者あとがき 版元から一言 内容紹介で書いたように、「山月記」とは少しちがった中島文学の魅力をお伝えできるのではないかと思います。 そして、中島敦の妹・折原澄子さんのエッセイ『兄と私』を収録させていただくことができて、より充実した書籍に仕上がったと思います。 兄・敦との想い出の断片と中島敦が亡くなるまでの数カ月、兄妹でともに過ごした日々が中島敦の人柄を想わせ心に響きます。 当時の雰囲気を優先し、漢字は底本通りに旧字体を採用しております。 読者にとって読みやすくなるように、難解と思われる漢字にはルビを付しました。 - 著者プロフィール - 中島敦 (ナカジマアツシ) (著/文) 東京都生まれ。1926年、第一高等学校へ入学し、校友会雑誌に「下田の女」他習作を発表。1930年に東京帝国大学国文科に入学。卒業後、横浜高等女学校勤務を経て、南洋庁国語編修書記の職に就き、現地パラオへ赴く。1942年3月に日本へ帰国。その年の『文學界2月号』に「山月記」「文字禍」が掲載。そして、5月号に掲載された「光と風と夢」が芥川賞候補になる。同年、喘息発作が激しくなり、11月入院。12月に逝去。 山本善行 (ヤマモトヨシユキ) (監修) 大阪府出身。関西大学文学部卒。書物エッセイスト。 2009年、京都銀閣寺近くに「古書善行堂」オープン。 著書に『関西赤貧古本道』(新潮社)、『古本のことしか頭になかった』(大散歩通信社)、『定本古本泣き笑い日記』(みずのわ出版)、編者として上林曉の『星を撒いた街』、『故郷の本箱』、『埴原一亟古本小説集』(以上、夏葉社)、黒島伝治『瀬戸内海のスケッチ』(サウダージ・ブックス)など。
-
見えないものを探す旅 旅と能と古典 | 安田登
¥1,650
亜紀書房 2021年 ソフトカバー 160ページ 四六変型判 - 内容紹介 - いつもの風景が、その姿を変える 単なる偶然、でも、それは意味ある偶然かもしれない。 世界各地へ出かけ、また漱石『夢十夜』や三島『豊饒の海』、芭蕉など文学の世界を逍遥し、死者と生者が交わる地平、場所に隠された意味を探し求める。 能楽師・安田登が時空を超える精神の旅へといざなう。 私たちには、「見えないもの」を見る力が備わっています。 「目」を使わないでものを見る力です。(まえがきより) 目次 ■ はじめに ■ 旅 ▶ 敦盛と義経 ▶ 奄美 ▶ チベットで聴いた「とうとうたらり」 ▶ 復讐の隠喩 ▶ 人待つ男 ▶ 孤独であることの勇気 ▶ ベトナムは美しい ▶ 生命の木 ■ 夢と鬼神――夏目漱石と三島由紀夫 ▶ 『夢十夜』 ▶ 待ちゐたり ▶ 太虚の鬼神――『豊饒の海』 ■ 神々の非在――古事記と松尾芭蕉 ▶ 笑う神々――能『絵馬』と『古事記』 ▶ 謡に似たる旅寝 ▶ 非在の蛙 ■ 能の中の中国 ▶ 西暦二千年の大掃除 ▶ 時を摑む ▶ 麻雀に隠れた鶴亀 ▶ 超自然力「誠」 ▶ 神話が死んで「同」が生まれる ■ 日常の向こう側 ▶ 心のあばら屋が見えてくる ▶ レレレのおじさんが消えた日 ▶ 掃除と大祓 ▶ 死者は永遠からやってくる ■あとがき - 著者プロフィール - 安田 登 (ヤスダ ノボル) (著/文) 下掛宝生流能楽師。1956年千葉県銚子市生まれ。 高校時代、麻雀とポーカーをきっかけに甲骨文字と中国古代哲学への関心に目覚める。能楽師のワキ方として活躍するかたわら、『論語』などを学ぶ寺子屋「遊学塾」を、東京(広尾)を中心に全国各地で開催する。現在、関西大学特任教授。 著書に『あわいの力 「心の時代」の次を生きる』、シリーズ・コーヒーと一冊『イナンナの冥界下り』(ともにミシマ社)、『能 650年続いた仕掛けとは』(新潮新書)、『あわいの時代の『論語』 ヒューマン2.0』(春秋社)、『野の古典』(紀伊國屋書店)など多数。
-
共有地をつくる わたしの「実践私有批判」 | 平川克美
¥1,980
ミシマ社 2022年 ソフトカバー 224ページ 四六判 縦188mm 横128mm 厚さ17mm - 内容紹介 - 私有財産なしで、機嫌よく生きてゆく 銭湯、食堂、喫茶店、縁側…… 誰のものでもあり、誰のものでもなく。 『小商い』の終着点を描いた私小説的評論 ミシマ社創業15周年記念企画 『小商いのすすめ』から十年。 消費資本主義がいよいよ行き詰まる中、 「小商いの哲学」を実践するすべての人に贈る。 この社会を安定的に持続させてゆくためには、社会の片隅にでもいいから、社会的共有資本としての共有地、誰のものでもないが、誰もが立ち入り耕すことのできる共有地があると、わたしたちの生活はずいぶん風通しの良いものになるのではないか――本文より 目次 第一章 欲望の呪縛から逃れる 第二章 非私有的生活への足掛かり 第三章 リナックスという共有地 第四章 共同体のジレンマ 第五章 家族の崩壊 第六章 消費資本主義から人資本主義へ 第七章 共有地をつくる - 著者プロフィール - 平川克美 (ヒラカワカツミ) (著/文) 文筆家、「隣町珈琲」店主。1950年、東京・蒲田の町工場に生まれる。早稲田大学理工学部機械工学科卒業後、翻訳を主業務とするアーバン・トランスレーションを設立。1999年、シリコンバレーのBusiness Cafe Inc.の設立に参加。2014年、東京・荏原中延に喫茶店「隣町珈琲」をオープン。著書に『小商いのすすめ』『「消費」をやめる』『21世紀の楕円幻想論』(いずれもミシマ社)、『移行期的混乱』(ちくま文庫)、『俺に似たひと』(朝日文庫)、『株式会社の世界史』(東洋経済新報社)など多数ある。
-
野草の手紙 草たちと虫と、わたし 小さな命の対話から | ファン・デグォン, 清水 由希子(翻訳)
¥1,870
自然食通信社 2016年 ソフトカバー 276ページ 四六判 縦188mm 横128mm 厚さ25mm - 内容紹介 - わずかな野草とそこに生きる虫たちの目線に自らが降りたとき、ファン・デグォンの内面に深くやさしく変容が起きた。誰も目に留めることのない小さないのちの世界は、人間が築き上げてきた文明がいかに自分たちだけに偏ったものなのかを投げかける。覚えのない重罪に問われた身でありながらも、無機質な刑務所内での暮らしを軽やかなユーモアにのせて、小さな生きものたちの在りようから見出した、静かなる気づきの日々を妹にしたためた珠玉の一冊。 「わたしたち人間だけが生存競争という一線を越えてほかの生命をないがしろにし、驕り高ぶって自然の品位を失っている。人と自分を比べては自分だけが正しく優れていると思い込み、鼻高々な人間こそ、大きかろうが小さかろうが、醜かろうが美しかろうが、持って生まれたありのままの花を咲かせる野草から、学ぶべきことはけっして少なくないのだ」 釈放後に手紙を編集して出版された本書は、小さな命との交歓をつうじて自身の心身と社会への見方を大きくつくりかえていった筆者の、平和の思想の原点として読み継がれている。 目次 序 辻 信一 1 野の草を育て食す 2 小さな命という宇宙 3 野性の食卓・原始の味覚 4 新天地での思索の旅 5 草に生かされて 講演録 根をはって 新版によせて 一歩下がって足元を覗けば 新版 役者あとがき - 著者プロフィール - ファン・デグォン (ファン デグォン) (著/文) 1955年ソウル生まれ。「生命平和(ライフピース)運動」活動家。ソウル大学農学部卒業。留学中の1985年、身に覚えのない容疑で逮捕され、1998年の特赦による釈放まで13年2か月、独房で暮らす。釈放後渡欧、ロンドン大学で農業生態学を学ぶ。2002年、獄中から妹にスケッチを添えて送った手紙が『野草手紙』として韓国で出版され、ベストセラーに。現在は農業と執筆活動のほか、全羅道ヨングァンの山中にてエコロジーと平和の運動を主宰。著書に『百尺竿頭に立ち』、『世界のどこにでも我が家はある』(共著)、『花より美しい人びと』、『ありがとう、雑草よ』等(いずれも未邦訳)がある。 清水 由希子 (シミズ ユキコ) (翻訳) 1973年生まれ。東京都在住。翻訳家。横浜市立大学文理学部卒業。訳書に『9歳の人生』(河出書房新社)、『マイ スウィート ソウル』(講談社)、『世界を打ち鳴らせ―サムルノリ半生記』(岩波書店)等がある。
-
青と緑 ヴァージニア・ウルフ短篇集 | ヴァージニア・ウルフ, 西崎 憲(編集 | 翻訳)
¥1,980
亜紀書房 2021年 ソフトカバー 256ページ B6判 - 内容紹介 - 〈 じつに、ウルフ的、もっとも、実験的。〉 イマジズムの詩のような「青と緑」、姪のために書かれたファンタジー「乳母ラグトンのカーテン」、園を行き交う人たちの意識の流れを描いた「キュー植物園」、レズビアニズムを感じさせる「外から見たある女子学寮」など。 短篇は一つ一つが小さな絵のよう。 言葉によって、時間や意識や目の前に現れる事象を点描していく。 21世紀になってますます評価が高まるウルフ短篇小説の珠玉のコレクション。 ――ウルフは自在に表現世界を遊んでいる。 ウルフの短篇小説が読者に伝えるものは緊密さや美や難解さだけではない。おそらくこれまでウルフになかったとされているものもここにはある。 たぶんユーモアが、そして浄福感が、そして生への力強い意志でさえもここにはあるかもしれない。(「解説 ヴァージニア・ウルフについて 」より) ___________________ 《ブックスならんですわる》 20世紀の初頭、繊細にしてオリジナルな小品をコツコツと書きためた作家たちがいます。前の時代に生まれた人たちですが、ふっと気づくと、私たちの隣に腰掛け、いっしょに前を見ています。 やさしくて気高い横顔を眺めていると、自分も先にいくことができる、そんな気がします。 いつも傍に置いて、1篇1篇を味わってみてください。 目次 ■ラピンとラピノヴァ……Lappin and Lapinova ■青と緑……Blue & Green ■堅固な対象……Solid Objects ■乳母ラグトンのカーテン……Nurse Lugton's Curtain ■サーチライト……The Searchlight ■外から見たある女子学寮……A Woman's College from Outside ■同情……Sympathy ■ボンド通りのダロウェイ夫人……Mrs Dalloway in Bond Street ■幸福……Happiness ■憑かれた家……A Haunted House ■弦楽四重奏団……The String Quartet ■月曜日あるいは火曜日……Monday or Tuesday ■キュー植物園……Kew Gardens ■池の魅力……The Fascination of the Pool ■徴……The Symbol ■壁の染み……The Mark on the Wall ■水辺……The Watering Place ■ミス・Vの不思議な一件……The Mysterious Case of Miss V. ■書かれなかった長篇小説……An Unwritten Novel ■スケッチ ・電話……The Telephone ・ホルボーン陸橋……Holborn Viaduct ・イングランドの発育期……English Youth ■解説 ヴァージニア・ウルフについて――西崎憲 ■年表 - 著者プロフィール - ヴァージニア・ウルフ (ヴァージニア ウルフ) (著/文) 1882年―1941年、イキリスのロンドンに生まれる。父レズリーは高名な批評家で、子ども時代から文化的な環境のもとで育つ。兄や兄の友人たちを含む「ブルームズベリー・グループ」と呼ばれる文化集団の一員として青春を過ごし、グループのひとり、レナード・ウルフと結婚。30代なかばで作家デビューし、レナードと出版社「ホガース・プレス」を立ち上げ、「意識の流れ」の手法を使った作品を次々と発表していく。代表作に『ダロウェイ夫人』『灯台へ』『波』など、短篇集に『月曜日か火曜日』『憑かれた家』、評論に『自分ひとりの部屋』などがある。 西崎 憲 (ニシザキ ケン) (編集 | 翻訳) 1955年生まれ。翻訳家、作家。著書に『世界の果ての庭』『蕃東国年代記』『ヘディングはおもに頭で』『未知の鳥類がやってくるまで』『全ロック史』ほか。訳書に『郵便局と蛇』コッパード、『第二の銃声』バークリー、『ヘミングウェイ短篇集』など多数。電子書籍レーベル「惑星と口笛ブックス」主宰。
-
あたしとあなた | 谷川俊太郎
¥2,200
ナナロク社 2015年 ハードカバー 120ページ B6判変型 - 内容紹介 - メディアに氾濫するコトバの洪水に食傷しているうちに、思いがけず自分にとってはちょっと新鮮な発想の短い詩群が生まれた。 ―あとがきより 83歳の今も、新しい挑戦をつづけている谷川さん。半世紀以上にわたって第一線で書き続けてきた詩人の最新作は、37篇の詩すべてにさまざまな〈あたし〉と〈あなた〉が登場します。 工芸品のような一冊を 最初に原稿を読んだ時、この言葉たちの動きや遠さや近さを、どうやって本という物質にしたらいいのか、悩みました。その結果、一番大事なのは、目の前の言葉を載せる紙なのではないかと考えました。あなたの指先に、やっと届けることができて嬉しく思います。 ―はさみ込みのしおりより 装丁担当 名久井直子 書籍の常識を超える工芸品のようなデザインは、気鋭のブックデザイナー・名久井直子さん。「一番大事なのは、目の前の言葉を載せる紙」(名久井さん)というコンセプトから、本書の制作は「この本のためだけの特別な紙」を作ることからスタートしました。伝統の高級越前和紙で知られる石川製紙株式会社の協力を得て、しっとりとした質感の鮮やかなブルーの紙が誕生しました。まさに、日本の職人技から生まれた贅沢な一冊です。
-
A TASTE OF TANIKAWA 谷川俊太郎の詩を味わう | ウィリアム・I・エリオット, 西原克政, 川村和夫
¥1,870
ナナロク社 2021年 ハードカバー 120ページ B6変型判 縦180mm 横120mm 厚さ11mm - 内容紹介 - 【谷川俊太郎さん帯コメント】 「私は一人っ子だったのに、詩の世界では最高のbrotherに恵まれました」 1960年代から50年以上もの間、谷川俊太郎の詩作品の英訳を続けるアメリカ人をご存じでしょうか。 その名は、ウィリアム・I・エリオット。谷川さんと同じ1931年生まれ、今年90歳です。 本書は、二人の友情と歴史が生んだ1冊です。エリオットがこれまでに翻訳した谷川の数百の詩から25篇を選び、 “詩の味わい方"をユーモラスな文章で書きおろしました。エリオットによる英訳詩も併記しています。 紹介された谷川俊太郎の詩 収録書籍一覧 ※本書掲載順 『コカコーラ・レッスン』思潮社 『こころ』朝日新聞出版 『シャガールと木の葉』集英社 『ことばあそびうた』福音館書店 『二十億光年の孤独』集英社文庫 『詩の本』集英社 『夜のミッキー・マウス』新潮文庫 『62のソネット+36』集英社文庫 『愛について』港の人 『こころのうた』文春文庫 ※山本健吉によるアンソロジー 『よしなしうた』青土社 『あたしとあなた』ナナロク社 『夜中に台所でぼくはきみに話しかけたかった』青土社 『旅』求龍堂 『関東学院大学文学部紀要 第92号』 『Traveler/日々』ミッドナイトプレス 『詩を贈ろうとすることは』集英社 『絵本』澪標 『mamma まんま』徳間書店 『世間知ラズ』思潮社 『日本語のカタログ』思潮社 『minimal』思潮社 目次 序文 詩ってどれほどのもの 1 店主からの挨拶 2 言葉、言葉、言葉 3 自然と人間 4 ことば遊び 5 宇宙からのまなざし 6 終末の風景 7 「さよなら」は「神」のことば? 8 ソネットの詩 9 散文詩の世界 10 共存と共生 11 折句とアクロスティック 12 愛のかたち 13 フットワーク軽やかに 14 沈黙への旅 15 ある日突然 16 ユーモアの糸 17 墓碑銘を刻む 18 祈りと願い 19 音のむこうに 20 飾らない文体 21 乳房考 22 異郷のふるさと 23 カタログ詩という方法 24 滑稽と真摯な詩人の肖像 25 別れのうた あとがき - 著者プロフィール - ウィリアム・I・エリオット (ウィリアム アイ エリオット) (著/文) 1931年、アメリカ・カンザス州生まれ。詩人、批評家、翻訳家。関東学院大学名誉教授。 谷川俊太郎の詩集54冊のほか、工藤直子、蔵原伸二郎、まど・みちお、等の翻訳もある。 1968年より、50年以上にわたって川村和夫とともに谷川俊太郎の詩を英訳してきた。 関東ポエトリ・センターを創設、海外の詩人と日本の詩人の交流につとめる。 最新詩集に『DOWSING』がある。 西原克政 (ニシハラ カツマサ) (著/文) 1954年、岡山県生まれ。英文学者、翻訳家。関東学院大学名誉教授。 著書に『アメリカのライト・ヴァース』(港の人)、『想像力の磁場』(北星堂書店)ほか、 訳書に、トニー・オーガード『英語ことば遊び事典』(共訳、大修館書店)、『W. D.スノッドグラス詩集』(共訳、港の人)ほか多数。 川村和夫 (カワムラ カズオ) (著/文) 1933年、福島県生まれ。英文学者、翻訳家。関東学院大学名誉教授。 訳書として、谷川俊太郎の詩集50冊が、ウィリアム・I・エリオットとの共訳で、岩波書店より電子書籍で出版されている。
-
水上バス浅草行き | 岡本真帆
¥1,870
ナナロク社 2022年 ソフトカバー 196ページ B6変型判 - 内容紹介 - 【収録短歌より3首】 ほんとうにあたしでいいの?ずぼらだし、傘もこんなにたくさんあるし 3、2、1ぱちんで全部忘れるよって今のは説明だから泣くなよ 平日の明るいうちからビール飲む ごらんよビールこれが夏だよ - 著者プロフィール 岡本真帆 (オカモト -マホ) (著/文) 1989年、生まれ。高知県、四万十川のほとりで育つ。未来短歌会「陸から海へ」出身。
-
書こうとしない「かく」教室| いしいしんじ
¥1,980
ミシマ社 2022年 ソフトカバー 224ページ 四六判 - 内容紹介- ことばはどこから来るのか? なぜそれが“生きる”のか? 東京、三崎、松本、京都…移り住む土地、数奇なる半生、 創作、この三つの関係を初めてふりかえり、その謎に迫った感動の授業を一冊に! 『ぶらんこ乗り』『トリツカレ男』『ポーの話』『みずうみ』『港、モンテビデオ』… こうした名作は、書こうとしない作家によって、どのように“かかれた” のだろうか? 目次 はじめに 午前の部 いしいしんじ「かく」語る 一時間目 東京 1994~2001 二時間目 三崎・松本 2002~2009 三時間目 京都・三崎 2010~現在 給食にかえて 午後の部 いしいしんじの 作文を「かく」 四時間目 ことばが動き出すための準備 五時間目 「かく」ことと「自分の生」 - 著者プロフィール - いしいしんじ (イシイシンジ) (著/文) 1966年大阪市生まれ。京都大学文学部卒。94年『アムステルダムの犬』でデビュー。2000年、初の長編小説『ぶらんこ乗り』を発表。03年『麦ふみクーツェ』で第18回坪田譲治文学賞、12年『ある一日』で第29回織田作之助賞、16年『悪声』で第4回河合隼雄物語賞を受賞。著書に『トリツカレ男』『プラネタリウムのふたご』『ポーの話』『みずうみ』『よはひ』『海と山のピアノ』『港、モンテビデオ』『きんじよ』『みさきっちょ』『マリアさま』『ピット・イン』『げんじものがたり』など多数。お酒好き。魚好き。蓄音機好き。現在、京都在住。
-
ミュージック 「現代音楽」をつくった作曲家たち| ハンス・ウルリッヒ・オブリスト, 篠儀直子(翻訳), 内山史子(翻訳), 西原尚(翻訳)
¥2,860
フィルムアート社 2015年 ソフトカバー 416ページ 四六判 - 内容紹介- 現代音楽の各ジャンルの第一人者たちに、H.U.オブリストが迫る。 『キュレーション 「現代アート」をつくったキュレーターたち』に続く第二弾! 1950年代以来西洋で生み出されてきた音楽とその形式が、視覚芸術・文学・建築・映画における前衛と取り結ぶ関係についての研究書。 ──(序文より) 現代音楽家たちの知性と魂についての、途方もなく豊かな記録! 各人の性格や雰囲気、手法、ほかにもいろいろなものを明らかにしてくれる──まさにインスピレーション! ──ビョーク パブリシティ掲載情報 ──── ☆「Mikiki」(Intoxicate)において、小沼純一さんに書評を書いていただきました。 消尽される声/響き合う他者の声に~ハンス・ウルリッヒ・オブリスト「ミュージック」と菊地成孔「レクイエムの名手」 http://mikiki.tokyo.jp/articles/-/9435 ☆「サウンド&レコーディング・マガジン」2016年3月号のBook Reviewにおいて、ご紹介いただきました。 「時代を創った音楽家たちの実作業を知る書」 ☆「ele-king」のBook Reviewsにおいて、野田努さんにご紹介いただきました。 www.ele-king.net/review/book/004883/ ☆「men's FUDGE」2016年1月号にてご紹介いただきました。 「複雑に絡み合った現代音楽の進化の過程を、当事者である音楽家や作曲家のインタビューで巧みにマッピングしてみせたのが本著。(中略)音楽に携わる者以外にも、豊かな創造的インスピレーションを与えてくれるだろう。」 ☆「POPEYE」2015年12月号にてご紹介いただきました。 ☆クラシック音楽情報誌「ぶらあぼ」2015年12月号にてご紹介いただきました。 ☆「CINRA」にてご紹介いただきました。 http://www.cinra.net/news/20151027-music ──── 世界的に著名なキュレーター、ハンス・ウルリッヒ・オブリストによる、50〜90年代において特に重要な音楽家、作曲家たちへのインタビューをまとめた1冊。 【前衛音楽】【電子音楽】【ミニマリズム & フルクサス】【現代】の4章の中で、総勢17名の“証言”を収録しています。 たとえば、戦後の前衛音楽をリードしてきたシュトックハウゼンやブーレーズ。クセナキス、フランソワ・ベイルなどの電子音楽のパイオニアたち。ミニマル・ミュージックやフルクサスから派生するスティーヴ・ライヒやオノ・ヨーコ。実験的かつポップな表現を追究したクラフトワークやカエターノ・ヴェローゾなど……。 彼らのオーラルヒストリーは、音楽の各ジャンルにとどまらず、美術、文学、建築、映画など、あらゆる分野を横断しながら独自の「現代音楽史」を紡ぎ、その過程の進化をマッピングします。 創作の過程、他の音楽家たちとの恊働、音楽への愛、作品の社会的な影響など、さまざまな角度から鋭く切り込んだオブリストならではのインタビューと、本人の言葉によって解き明かされる“歴史”は、音楽関係者のみならず、創作を志すすべての人に必読です。
-
テヘランでロリータを読む | アーザル・ナフィーシー, 市川 恵里(翻訳)
¥1,672
河出書房新社 2021年 文庫判 174ページ 四六判 縦188mm 横129mm 厚さ17mm - 内容紹介 - 全米150万部、日本でも大絶賛のベストセラー、遂に文庫化! テヘランでヴェールの着用を拒否し、大学を追われた著者が行った秘密の読書会。壮絶な彼女たちの人生とそれを支える文学を描く、奇跡の体験。 - 著者プロフィール - アーザル・ナフィーシー (ナフィーシー,アーザル) (著/文) 1950年頃テヘランで名門の家に生まれる。13歳から欧米で教育を受け、イラン革命直後に帰国しテヘラン大学で教員となるが、追放。イスラーム大学他で教えた後、アメリカに移住。ジョンズ・ホプキンズ大学教授。 市川 恵里 (イチカワ エリ) (翻訳) 翻訳者。1966年、東京生まれ。早稲田大学第一文学部英文学専修卒業。訳書に、A・ベネット『やんごとなき読者』、A・ナフィーシー『テヘランでロリータを読む』、V・ラトナー『バニヤンの木陰で』など。
-
「できる」と「できない」の間の人 脳は時間をさかのぼる | 樋口直美
¥1,650
晶文社 2022年 ソフトカバー 216ページ 四六判 - 内容紹介 - 「たはは…まっ、そんなこともあるよね」って現実を踏みしめて、爽やかに、軽やかに、明日へズンズン歩いていく日記がたまらない。つられて元気になっちゃう。たはは。 ──帯文・岸田奈美(作家) 病気や怪我、老いなどで「できていたことができなくなる」ことがある。誰もが、できるとできないの間で迷ったり、不安を感じたりしながら生きている。でも大丈夫。困りごとは人に伝えて、周りに助けてもらえばいい。 突然発症したレビー小体病という「誤作動する脳」を抱え、長いトンネルから這い出てきた著者が、老い、認知症、そしてコロナ禍と向き合い悪戦苦闘する日々を綴ったエッセイ集。心配しないで。未来はきっと、そんなに悪くない。 「コロナみたいな、どうにもならないものに振り回され、理不尽なことがいっぱい起こる社会の中で、みんな、それぞれに必死で生きている。人間は、弱くてちっぽけだけど、それぞれが、かけがえのない、大切な人なんだ。間違いなくそうなんだよと、私は、言葉にして伝えたかった。弱っている人にも弱っている自分にも」(「はじめに」より) 【目次】 1 コロナ時間とできない私 2 会いたい。会いたい。会いたい。 3 形を失った時間 4 ゴルゴ13とモンローの間 5 「きれい」と言われたい 6 最後に知る秘密 7 バナナの教え 8 強くはなれない 9 「確かさ」のない世界 10 おしゃべりな植物 11 幻視と幽霊 12 母の舌 13 死語と記憶とビンテージ 14 ずぼらの達人 15 育児がつらかった頃 16 永遠の初心者 17 認知症って何なのよ 18 見えない未来を生きていく 19 終わらない私の宿題 付録 認知症のある人が社会に居場所を取り戻すための3つの提言 - 著者プロフィール - 樋口直美 (ヒグチナオミ) (著/文) 文筆家。レビー小体病当事者。50歳でレビー小体型認知症と診断され、多様な脳機能障害、幻覚、嗅覚障害、自律神経症状などがあるが、思考力は保たれ執筆活動を続けている。著書に『誤作動する脳』(医学書院シリーズ ケアをひらく)、『私の脳で起こったこと』(ブックマン社/ちくま文庫)など。『認知症世界の歩き方』(ライツ社)監修。『VR認知症 レビー小体病 幻視編』(シルバーウッド)製作協力。2015年にブックマン社から出た『私の脳で起こったこと』で日本医学ジャーナリスト協会賞優秀賞を受賞。
-
ははとははの往復書簡 | 長島有里枝, 山野アンダーソン陽子
¥1,870
晶文社 2022年 ソフトカバー 210ページ 四六判 縦186mm 横128mm 厚さ17mm - 内容紹介 - 「普通」や「当たり前」が苦しいなら、とにかく話しませんか? 写真家・長島有里枝とガラス作家・山野アンダーソン陽子による日本とスウェーデンを行き交う往復書簡。 「子育て」をテーマに始まった手紙のやりとりが広がりを見せ、テーマに限らない対話が次々と展開されていく。アーティストとして、コロナ禍の生活、政治について、親との関係性、自然との向き合い方、歳をとること……。 噛み合わなくても、共感できなくても、対話はできる。年齢も住む場所も考えも違う二人が、正直に自分の言葉で対話を重ねていく往復書簡。 「子どもを産む前、わたしは自分のことをもっとずっといい人だと思っていた気がします。それから、自分がこんなにもいろいろと苦手で、『普通』が苦しかったり、うまくできなかったりするとも思っていませんでした」(長島) 「子どもが生まれて、どうにか『普通』をしてあげたいと思うのですが、諦めて見失ってしまった『普通』ってなかなか取り戻せないものですね。ましてや、私の住んでいる地域はストックホルムの中でもとりわけリベラルで、かなり自由な社会ということもあり、『普通』が何なのか本当によくわからなくなります」(山野) 「法律とか社会ルール的には、親が与え子どもは受け取るという関係性が良しとされている気がするけれど、人対人と考えれば、与えるだけ、頼るだけなんていう関係性はありえないと思う」(長島) 「ちなみに、家事と育児はまったくの別物なので、産休・育休を取っているからといって、家事を全部しなくてはいけないなんてまったくないです。家事はもれなくみんなについてきます」(山野) 「社会や自分自身のなかには、矛盾するいくつもの考えや気持ちが存在するということ、矛盾を排除して、たったひとつの絶対的にパワフルな正しい物語を導き出すことに対して、警戒心がある、という感じです」(長島) 「未来を思う時、そこがどうか平和であって欲しいですね。スウェーデンでは今年から2010年に廃止した徴兵制を8年ぶりに再開しました。(…)それでも、何かポジティブに捉えることのできないものがあります。もうすぐ選挙です」(山野) 「チャリティでさえ『イメージ戦略』かもしれないようなご時世に、無償で人に奉仕することを自分に納得させる“ポストモダン風の”価値観って、どんなものがあると思いますか?」(長島) 「民主主義は多数決ではないのに、マイノリティの文化や社会の価値観を消し去ってしまうのはどうなのでしょうね?」(山野) 目次 往復書簡I(2018.01.31~2018.12.18) 往復書簡II(2021.05.07~2022.01.30) 対談 - 著者プロフィール - 長島有里枝 (ナガシマユリエ) (著/文) 東京都生まれ。1993年、武蔵野美術大学在学中に「アーバナート#2」でパルコ賞受賞。1999年、カリフォルニア芸術大学ファインアート科写真専攻修了。2001 年、写真集『Pastime Paradise』(マドラ出版)で第26回木村伊兵衛写真賞受賞。2010年、短編集『背中の記憶』(講談社)で第26回講談社エッセイ賞受賞。2020年、第36回写真の町東川賞国内作家賞受賞。2015年、武蔵大学人文科学研究科前期博士課程修了。主な個展に「そしてひとつまみの皮肉と、愛を少々。」(東京都写真美術館、2017年)、「知らない言葉の花の名前 記憶にない風景 わたしの指には読めない本」(横浜市民ギャラリーあざみ野、2019年)など。日常で感じる違和感を手がかりに、他者や自分との関係性を掘り下げる作品を制作する。 山野アンダーソン陽子 (ヤマノアンダーソンヨウコ) (著/文) 1978年、日本生まれ。ガラス作家。食器デザイナー。2001年よりガラス産業のメッカでもある南スウェーデンのスモーランド地方、フィンランド、ベネチアにてガラス製作技術を学ぶ。2004年、Konstfack(国立美術工芸デザイン大学)セラミック・ガラス科修士課程在学を機にストックホルムに拠点を移し、現在グスタブスベリにアトリエを構え、ガラス制作の活動の場としている。2011年、ストックホルム市より文化賞授与。2014年、スウェーデン議会が作品を貯蔵。EUのみならず、イギリス、セルビア、日本などでも作品を発表し、ライフワーク「Glass Tableware in Still Life」の活動にてガラス食器のあり方を多方面から表現思考する。
-
作家と珈琲 | 平凡社編集部
¥2,090
SOLD OUT
平凡社 2022年 ソフトカバー 288ページ B6変型判 - 内容紹介 - 毎日の食卓で、行きつけの喫茶店で、異国の地で味わう、一杯の珈琲。昭和の文豪や現代の人気作家によるエッセイ、詩、漫画、写真資料を収録。珈琲の香りただよう52編。 【収録作品(掲載順)】 1 珈琲のある風景 茨木のり子 食卓に珈琲の匂い流れ 小沼丹 珈琲の木 獅子文六 『可否道』を終えて 寺田寅彦 コーヒー哲学序説 北原白秋 六月 有吉玉青 緑の珈琲 原田宗典 モーニングコーヒー余話 中村好文 カフェオレ ボウル 2 珈琲一杯の時間 串田孫一 山旅と珈琲 片岡義男 タヒチ・パペーテの、インスタント・コーヒー。 長田弘 コーヒー屋で馬に出会った朝の話 水木しげる ある一日 しりあがり寿 ジブン的コーヒー史三つの時代。 渡辺貞夫 開け放したドアから聞こえてくるジャズに憧れた。 吉井勇 珈琲の歌 永田耕衣 珈琲の句 3 喫茶店よ永遠に 植草甚一 喫茶店で本を読んでいるかい 赤川次郎 コーヒー色の回想。 沼田元氣 純喫茶愛50カ条 小田島雄志 喫茶店人生 曽我部恵一 「コーヒーと恋愛」 田河水泡 『のらくろ喫茶店』より 鷲田清一×木村衣有子 「平熱」としての京都の喫茶店 織田作之助 大阪の憂鬱 萩原朔太郎 喫茶店にて 今和次郎/吉田謙吉 銀座のカフェー女給さん服装 佐藤春夫 芝公園から銀座へ 古川緑波 甘話休題 広津和郎 正宗白鳥と珈琲 4 わたしの珈琲作法 安岡章太郎 〈コーヒー道〉のウラおもて 池波正太郎 下町の〔コーヒー〕 永井荷風 砂糖 花森安治 コーヒーのふしぎ 石井好子 どんぶりで飲む、キャフェ・オ・レ 別役実 コーヒー 珈琲 平岩弓枝 珈琲と私 多和田葉子 ゆずる物腰ものほしげ 村田沙耶香 タイムスリップコーヒー 吉田戦車 ああ、豆の持ちこみ 土屋賢二 コーヒーの魅力を捨ててきた。 十文字美信 珈琲 『現代礼儀作法図説』より 珈琲のすすめ方/珈琲の飲み方 5 珈琲見聞録 シーボルト(斎藤信訳)「小倉から下関への渡航と下関滞在」より 夏目漱石 珈琲店、酒肆及び倶楽部 人見一太郎 巴里の珈琲店? 勝本清一郎 カフェー 斎藤茂吉 カフエ・ミネルワ 林芙美子 「巴里日記」より 片山廣子 コーヒー五千円 日高敏隆 フランス家族の中の九カ月 高山なおみ ネスカフェ 石川直樹 エチオピアのワイルドコーヒー
-
すべての月、すべての年 ルシア・ベルリン作品集 | ルシア・ベルリン, 岸本 佐知子(翻訳)
¥2,640
SOLD OUT
講談社 2022年 ソフトカバー 376ページ 四六判 - 内容紹介 - 魂の作家による19の短編。 ロングセラー『掃除婦のための手引き書』のルシア・ベルリン、待望の新邦訳作品集。 『掃除婦のための手引き書』の底本である短編集 A Manual for Cleaning Women より、同書に収録しきれなかった19編を収録、今回も傑作ぞろいの作品集です。 〈収録作品〉 虎に噛まれて/エル・ティム/視点/緊急救命室ノート、一九七七年/失われた時/すべての月、すべての年/メリーナ/ 友人/野良犬/哀しみ/ブルーボネット/コンチへの手紙/泣くなんて馬鹿/情事/笑ってみせてよ/カルメン/ ミヒート/502/B・Fとわたし - 著者プロフィール - ルシア・ベルリン (ルシア・ベルリン) (著/文) 1936年アラスカ生まれ。鉱山技師だった父の仕事の関係で幼少期より北米の鉱山町を転々とし、成長期の大半をチリで過ごす。3回の結婚と離婚を経て4人の息子をシングルマザーとして育てながら、学校教師、掃除婦、電話交換手、看護助手などをして働く。いっぽうでアルコール依存症に苦しむ。20代から自身の体験に根ざした小説を書きはじめ、77年に最初の作品集が発表されると、その斬新な「声」により、多くの同時代人作家に衝撃を与える。90年代に入ってサンフランシスコ郡刑務所などで創作を教えるようになり、のちにコロラド大学准教授になる。2004年逝去。レイモンド・カーヴァー、リディア・デイヴィスをはじめ多くの作家に影響を与えながらも、生前は一部にその名を知られるのみであったが、2015年、本書の底本となるA Manual for Cleaning Womenが出版されると同書はたちまちベストセラーとなり、多くの読者に驚きとともに「再発見」された。邦訳書に『掃除婦のための手引き書』(岸本佐知子訳)がある。 岸本 佐知子 (キシモト サチコ) (翻訳) 翻訳家。訳書にリディア・デイヴィス『話の終わり』『ほとんど記憶のない女』、ミランダ・ジュライ『いちばんここに似合う人』『最初の悪い男』、スティーヴン・ミルハウザー『エドウィン・マルハウス』、ジャネット・ウィンターソン『灯台守の話』、ジョージ・ソーンダーズ『短くて恐ろしいフィルの時代』『十二月の十日』など多数。編訳書に『変愛小説集』『居心地の悪い部屋』『楽しい夜』ほか、著書に『死ぬまでに行きたい海』『なんらかの事情』ほか。2007年、『ねにもつタイプ』で講談社エッセイ賞を受賞。
-
掃除婦のための手引き書 ――ルシア・ベルリン作品集 | ルシア・ベルリン, 岸本 佐知子(翻訳)
¥990
講談社 2022年 講談社文庫 ソフトカバー 384ページ 文庫判 - 内容紹介 - 死後10年を経て再発見された、奇跡の作家。 大反響の初邦訳作品集、ついに文庫化! 2020年本屋大賞〔翻訳小説部門〕第2位 第10回Twitter文学賞〔海外編〕第1位 毎日バスに揺られて他人の家に通いながら、ひたすら死ぬことを思う掃除婦(「掃除婦のための手引き書」)。 道路の舗装材を友だちの名前みたいだと感じてしまう、独りぼっちの少女(「マカダム」)。 波乱万丈の人生から紡いだ鮮やかな言葉で、本国アメリカで衝撃を与えた奇跡の作家。 大反響を呼んだ初の邦訳短編集。 何でもないものが詩になる、空前絶後の作家。 ――川上未映子 読み終えるのが惜しくて惜しくて、一日一篇だけと自分に課していました。 いつまでも読み続けていたい一冊です。 ――小川洋子 「パナソニック メロディアス ライブラリー」(TOKYO FM/JFN)より 人生はただ苛酷なわけでも、ただおかしいわけでも、ただ悲しいわけでも、ただ美しいわけでもなく、それらすべてであり、それ以上のものだ。それをわからせてくれるのが小説で、人生をそのように見る方法を提供するのが小説というものなのだ。ルシア・ベルリンの短篇は、それを私たちに教えてくれる。 ――中島京子 「毎日新聞」より 彼女の鋭利で心地よい言葉は、私が何者だったかを思い出させる。 ――深緑野分 noteより 救い難い状況、人の弱さや卑劣さをきっぱりと描き出す文章は、苦いユーモアとふてぶてしい気高さに満ちている。 ――藤野可織 「信濃毎日新聞」より 自分を突き放したクールさがある。一読して、うわ、かっこいいなと思った。 ――山内マリコ 「日本経済新聞」より - 著者プロフィール - ルシア・ベルリン (ルシア・ベルリン) (著/文) 1936年アラスカ生まれ。鉱山技師だった父の仕事の関係で幼少期より北米の鉱山町を転々とし、成長期の大半をチリで過ごす。3回の結婚と離婚を経て4人の息子をシングルマザーとして育てながら、学校教師、掃除婦、電話交換手、看護助手などをして働く。いっぽうでアルコール依存症に苦しむ。20代から自身の体験に根ざした小説を書きはじめ、77年に最初の作品集が発表されると、その斬新な「声」により、多くの同時代人作家に衝撃を与える。90年代に入ってサンフランシスコ郡刑務所などで創作を教えるようになり、のちにコロラド大学准教授になる。2004年逝去。レイモンド・カーヴァー、リディア・デイヴィスをはじめ多くの作家に影響を与えながらも、生前は一部にその名を知られるのみであったが、2015年、本書の底本となるA Manual for Cleaning Womenが出版されると同書はたちまちベストセラーとなり、多くの読者に驚きとともに「再発見」された。 岸本 佐知子 (キシモト サチコ) (翻訳) 翻訳家。訳書にリディア・デイヴィス『話の終わり』『ほとんど記憶のない女』、ミランダ・ジュライ『最初の悪い男』、スティーブン・ミルハウザー『エドウィン・マルハウス』、ジャネット・ウィンターソン『灯台守の話』、ジョージ・ソーンダーズ『短くて恐ろしいフィルの時代』など多数。編訳書に『変愛小説集』『楽しい夜』『居心地の悪い部屋』ほか、著書に『なんらかの事情』ほか。2007年、『ねにもつタイプ』で講談社エッセイ賞を受賞。
-
【古本】愛なき世界 | 三浦しをん
¥880
中央公論新社 2018年 ハードカバー 466ページ 四六判 状態:大変良い カバーにオレなどありますが、綺麗な状態です。 - 大学生インターン 尾崎萌美さんによる紹介文 - 一つのことに没頭する、極める。それもまた一種の「愛すること」だと言えるでしょう。 植物のシロイヌナズナを研究対象とし、それが人生の全てであるように日々を生きる大学院生の本村紗英。円服亭という昔ながらの料理を出す食堂で見習いとして働く藤丸陽太はその彼女に恋をします。 三度の飯よりシロイヌナズナと考える本村は「愛のない世界を生きる植物の研究に、すべてを捧げると決めています。」と断言しています。オールマイティというより、むしろ一つのことにじっくり向き合う性格です。本村に恋をした藤丸。告白をしてバッサリと断られますが、彼女の所属する松田研究室のメンバーの人々と親密になっていきます。さらに素直な性格の藤丸は本村に惹かれつつ、植物へもまた興味を抱いていくのです。 著者である三浦しをんさんの比喩や専門的な内容も魅力的。細胞を見るために顕微鏡を覗いた先に広がる銀河。死神のようなムードを漂わせる研究室の教授。思わず笑ってしまったり、少し複雑で考えたりしてしまうような表現があちこちに散りばめられています。 恋愛小説とはいうものの、少女漫画や恋愛ドラマにあるような展開が起こるのではありません。一つのことに没頭して研究を続ける学生と、恋愛に奥手だけど一途な見習い料理人。さらにその周りを囲む個性的な登場人物。その中で少しずつ見えてくる全く違う世界に生きる人々との共通点。 私にとっては日常である大学生活。それが舞台となるこの小説は、身近であり憧れるものでもありました。何か一つのことに打ち込める、つまり「愛せる」ということはかっこいい。恋愛小説でありながら、それだけがメインではないこの本を開くと抱き始めるこの気持ちは、読み終えるまで私の中から離れることはありませんでした。
-
氷の城 | タリアイ・ヴェーソス, 朝田千惠(翻訳)アンネ・ランデ・ペータス(翻訳)
¥2,640
国書刊行会 2022年 ハードカバー 348ページ 四六判 - 内容紹介 - 私はこの誓いを絶対に忘れない。 雪に閉ざされたノルウェーの田舎町。11歳の少女シスの通う学校に、同じ年の少女ウンが転入してくる。ためらいがちに距離を詰め、運命の絆で結ばれたふたりの少女が、それぞれの思いを胸に、森深くの滝の麓につくられた神秘的な〈氷の城〉を目指す……類稀な研ぎ澄まされた文体により、魂の交歓、孤独、喪失からの再生を、幻想的・象徴的に描き上げたヴェーソスの代表作。 凛とした切なさを湛えた、出会いと別れの物語。 【英ペンギン・クラシックス収録の20世紀世界文学の名作】 【1965年度北欧理事会文学賞受賞作】 Is-slottet(1963) *** 【推薦のことば】 大人になっていくことの残酷さとイノセンスからの解放を、こんな風に鮮烈に描いた物語を他に知らない。 ――山崎まどか(コラムニスト) 誰にも会いたくない日に読んだ。静かな言葉で書かれるからこそ、少女二人の燃えるような気持ちが胸にぎゅっと迫ってくる。 ――朝吹真理子(作家) なんと平明で、繊細で、力強く、類のない小説なのだろうか。唯一無二の、忘れがたい傑作だ。 ――ドリス・レッシング(英・ノーベル文学賞作家) 世界で一番有名でないことが不思議な本をもし選ばねばならないなら、それはタリアイ・ヴェーソスの『氷の城』だろう。 ――マックス・ポーター(英・作家) 私がこれまで出版した最高の小説 ――ピーター・オーウェン(英・ピーター・オーウェン社社主) 目次 第1部 シスとウン 1 シス 2 ウン 3 たったのひと晩 4 道の脇 5 氷の城 第2部 雪に埋もれた橋 1 消えたウン 2 眠れぬ夜 3 城を発つ 4 熱 5 深い雪のなかで 6 誓い 7 ウンを消し去ることはできない 8 学校 9 贈り物 10 鳥 11 空いた席 12 雪に埋もれた橋の夢 13 雪上の黒い虫 14 三月の幻影 15 試しに 第3部 木管奏者 1 おばさん 2 しずくと小枝のように 3 城が閉じていく 4 溶けゆく氷 5 開いた窓 6 木管奏者 7 城が崩れる 訳者あとがき - 著者プロフィール - タリアイ・ヴェーソス (タリアイヴェーソス) (著/文) 20世紀ノルウェー文学を代表する作家・詩人。1897年、テーレマルク県ヴィニエ生まれ。主にノルウェーの自然豊かな田舎を舞台に、孤独や不安といった、根源的で普遍的な人間の感情を平易な文体で描き、独特な神秘の世界へと誘う作品を手掛ける。 代表作は『風』(1952)『鳥』(1957)『氷の城』(1963)などで、作品はすべてニーノシュク(ノルウェーの公用書き言葉のひとつ)で執筆した。北欧理事会文学賞、ヴェニス国際文学賞などの数々の文学賞を受賞し、ノーベル文学賞に幾度もノミネートされた。1970年逝去。 現在、世界的に再評価が進み、ペンギン・クラシックスをはじめ各国で作品が翻訳刊行されている。 朝田千惠 (アサダチエ) (翻訳) 大阪大学外国語学部非常勤講師(ノルウェー語)、翻訳者。大阪外国語大学(スウェーデン語)卒、大阪大学大学院人間科学研究科(ボランティア人間科学)前期課程修了。訳書に『アルネ&カルロスのクリスマスボール』(日本ヴォーグ社)、『薪を焚く』(晶文社)など。 アンネ・ランデ・ペータス (アンネランデペータス) (翻訳) 演劇研究家、翻訳家。神戸生まれ。宣教師の親とともに幼い頃から日本とノルウェーを往来して育つ。オスロ大学と早稲田大学で演劇学を学び、落語をテーマに修士論文を執筆。三島由紀夫『近代能楽集』、よしもとばなな『みずうみ』(ノルウェー語訳)、ヨン・フォッセ『スザンナ』、イプセン『ヘッダ・ガーブレル』『海の夫人』『社会の柱』(新国立劇場)などを手掛ける。
-
辺境の国アメリカを旅する 絶望と希望の大地へ | 鈴木 晶子
¥1,980
明石書店 2022年 ソフトカバー 240ページ 四六判 - 内容紹介 - 日本で貧困問題に長年取り組んできた著者がアメリカ全土48州を巡った旅の記録。人種差別、貧困、銃問題といった近年の社会情勢や歴史・文化にも言及しながら、トランプ政権下で対立と分断に揺れるアメリカの等身大の姿を描き出す。 目次 序章 美しきアメリカのカントリーサイド・ケンタッキーへ――もう一つのアメリカへようこそ 憂うつな旧炭鉱町の朝 緑萌える美しきカントリーサイド 活気ある街と郷土料理 バーボントレイルの完成度 旅には良い街、けれど 第1部 いくつかのアメリカを巡って 第1章 暮らすように旅する(1)――マンハッタンでルームシェア型民泊 ルームシェアでマンハッタンのアパート生活を体験 アメリカのオモテ玄関ニューヨーク ニューヨークのもう一つの顔 マンハッタンの週末 小さな暮らしの場を後にして アップデート 空っぽのマンハッタン コラム① ようこそアメリカ!エリス島に降り立つ 第2章 暮らすように旅する(2)――ノースカロライナのファームステイ 何もないから体験型、ファームステイを初体験 地元食材で楽しむ夕食 手作りの暮らしを知って 暮らしの違いに思いを馳せて アップデート ツリーハウスへの再訪 第3章 Make America Great Again?――錆びついたロックンロールの街クリーブランドの今を訪ねて ラストベルトへの旅がトレンド トリエンナーレのオープニングイベントへ 美しきアーケードの空虚 ロックンロールの殿堂を訪ねて アフターアワーズ コラム② 全米一寂れた街の傑作子ども博物館 第4章 アメリカ版町おこし!――グラウンドホッグデーにパンクサタウニーに行ってきた アメリカの町おこし 早朝の大混雑 “No shadow!” パンクサタウニーの町観光 That's Groundhog Day! 第5章 みたび民泊――シアトルでキャンピングカーに泊まる 注目エリアのおしゃれキャンピングカー リベラルな住宅街でホームレスのおっちゃんに出会う ハンドドリップコーヒーで始まるシアトルの1日 一つの街と道の越えがたき壁 アップデート コロナ禍のアメリカ、見えない犠牲者 第6章 欲望と絶望と――既視感と哀しみのラスベガス カジノの街ラスベガス 全てがフェイクとデジャブ 哀しみのラスベガス コラム③ 銃を持つ自由の国アメリカ 第7章 砂漠地帯と消えた町バグダッド――カリフォルニアのもう一つの顔 カリフォルニアの多様な景色 隠れた見所ゴーストタウン 消えた町バグダッド 大都市と郊外と 第8章 見果てぬキューバ――ラティーノのアメリカを巡る旅 近くて遠い国キューバ リトルハバナの昼下がり クルーズ船の旅 要塞都市サンファン上陸 護られざる城壁の向こう側 サンファンを後にして プエルトリコと沖縄と アップデート キューバにもクルーズにも行けなかった話 コラム④ アメリカのラティーノの多様性 第2部 先住民のアメリカを訪ねて 第9章 さよならコロンブス・デー――バケーションランド・メイン州が向き合う先住民の歴史 「コロンブス・デー」から「先住民の日」へ 全米最初の朝日が昇るバケーションランド 先住民のホームランド 「私たちは今もここにいる」 アップデート 倒されるコロンブス像 コラム⑤ 建国の地を歩く――東海岸三都物語 第10章 ルート66エクスカーション――プエブロ族の遺産を巡る アルバカーキの結婚式 サンタフェからチマヨ教会へ 世界遺産タオス・プエブロと先住民の青いマリア 山間のバス停を数えて 土煙を越えてチャコ・カルチャーへ 危機に瀕するチャコ・キャニオン アップデート 新たなステージへ 第11章 大草原地帯を行く――苦難のきた道をたどり希望を見つけて 大草原に音楽の架ける橋 ウィネバゴ族の涙の旅路 アメリカで一番小さな村を目指して 荒野の西部開拓 「聖地」の招かれざるものたち ウィンド・リバー先住民居留地へ 美しきグランド・ティトン バイソンの消えた丘 都市インディアンから居留地の担い手へ 他国と先住民と共に、国立公園の今 継承される文化と誇り アップデート コロナ禍で牙をむく不平等 第3部 南部を歩く 第12章 南部とはなにか?――世界遺産の街ヴァージニア州シャーロッツビルを訪ねて 初めてのアメリカ・ロード・トリップへ 2人の大統領邸と白人ばかりの田舎町 悲劇の現場シャーロッツビル 南部を巡る旅へ アップデート リー将軍像の撤去された日 コラム⑥ ワシントンD.C.の隠れた見どころ「ブラック・ブロードウェイ」 第13章 綿花畑を抜けてディープサウスへ――アフリカ系アメリカ人の歴史をたどって 美食の街チャールストンの休日 美しい街の暗黒の歴史 サヴァンナの「涙の時間」 南部のゲートウェイ・アトランタへ キング牧師歴史地区 歩き続ける非暴力運動 アップデート アトランタの新たなヒーローたち 第14章 アラバマ・フリーダム・トレイル――We shall overcome 「ボミンガム」へようこそ 迫害と抵抗の足跡 ソウル・フードの名店を訪ねて 賑わう南部料理の人気店へ 「ブラザーフットだよ」 悲劇の現場に響くゴスペル 「血の日曜日」から勝利の行進へ 幾千もの無名の犠牲者を称えて モンゴメリーが生んだ2人のヒーロー キング牧師記念日に再びアトランタ アップデート ジョン・ルイス「最後の渡橋」 コラム⑦ アフリカ系アメリカ人の歴史を知る映画三選 終章 ニューオーリンズの聖者の行進――多様性の向かう先 48州目ミシシッピのブルース街道へ 地元の寄り合い所「ジューク・ジョイント」へ ニューオーリンズの音楽葬 欧州の歴史香るジャズの故郷 多様性のガンボ 町の小さなマルディ・グラ 旅の終わりに あとがき 主要参考文献 前書きなど あとがき (…前略…) 連れ合いからアメリカに駐在となると聞いた時、正直それほど楽しみなものではなかった。「端っこ好き」の私にとっては、アメリカは世界の中心のようであり、王道の行き先だった。一度も旅をしようと考えたことがなかった。 十分な渡航準備期間をもらい移住の支度をしていた頃、アメリカでは大統領選挙が行われ、ドナルド・トランプが当選した。そして、アメリカに無事にたどり着いて程なく、シャーロッツビルであの悲劇が起こった。 この国はどんな国なのだろう? 旅をするうちに、アメリカという国そのものが、居場所を失った人々が自由を求めて世界中からやってくる、世界の辺境のように思えてきた。あまりに多様な人々が生きるこの巨大な辺境は、人の営みのあらゆるものが世界中から持ち込まれ、それゆえに必然的に生まれる人々の対立と克服は、まるで世界の縮図のようであり、壮大な社会実験のようですらある。 いかに人は共に生きることができるのか? 気づけばアメリカ中を旅していた。辺境の中のさらに辺境へ。この国の多彩な風景と、そこにある人々の暮らし、歩んできた道のりを追って走ってきた。 ひきこもりの若者と共に過ごすフリースペースから、困難を抱える子どもたちの多く通う高校内の居場所カフェから、困窮者支援の相談室から、あるいは出張相談に訪れた風俗店の待機部屋から……。私は日本で周縁から社会を見てきた。アメリカの辺境性は、私が見てきたそんな日本の風景とどこか地続きのようだった。 この本を通じて描いてきた人々やアメリカの直面している状況は、全く同じではないけれど、日本のどこにでも潜んでいる。多くの人が気にも留めずに通り過ぎていく街中のホームレスの人たち、食べるものにも困る子どもたちの貧困、衰退する地方の経済、トランプ政権顔負けの残酷な入国管理、増え続ける移民たちが抱える暮らしの苦難、外国人や先住民への差別など、日本の抱える課題の多くが、本書で出てくるアメリカの風景と重なるのではないだろうか。その規模や表出の鮮明さ、態様に違いはあれど、読者の皆さんが、苦悩するアメリカの人たちだけではなく、ここ日本で周縁に追いやられている人たちにも、本書を通じて想いを馳せていただけることを願っている。 私たちは、幸運にも2020年2月末に、最後のミシシッピ州に到達し、アメリカ本土48州の旅を終えることができた。その後、周知の通りアメリカは新型コロナウイルス感染拡大によるロックダウン、ブラック・ライブズ・マター運動、歴史に残る大統領選挙と年明けの国会議事堂侵入事件と、息つく暇もない激動であった。今もワクチン接種などをめぐる分断と再度の感染拡大を繰り返しながら国は揺れて続けている。それでも、きっとこれまで同様、アメリカは一歩ずつ、この苦難を乗り越えながら、一つの国として歩んでいくのだと信じている。 (…後略…) - 著者プロフィール - 鈴木 晶子 (スズキ アキコ) (著) NPO法人パノラマ理事、認定NPO法人フリースペースたまりば事務局次長・理事、一般社団法人生活困窮者自立支援全国ネットワーク研修委員。臨床心理士。 1977年神奈川県に生まれ、幼少期を伊豆七島神津島で過ごす。大学院在学中の2002年よりひきこもりの若者の訪問、居場所活動に関わり、若者就労支援機関の施設長などを経て2011年一般社団法人インクルージョンネットかながわの設立に参画、代表理事も務めた。その傍らNPO法人パノラマ、一社)生活困窮者自立支援全国ネットワークの設立に参画。専門職として、スクールソーシャルワーカーや、風俗店で働く女性の相談支援「風テラス」相談員なども経験。内閣府「パーソナル・サポート・サービス検討委員会」構成員、厚生労働省「新たな自殺総合対策大綱の在り方に関する検討会」構成員等を歴任。2017年に渡米。現地の日系人支援団体にて食料支援のプログラムディレクター、理事を務めた。2020年帰国。現職。著書に『シングル女性の貧困――非正規職女性の仕事・暮らしと社会的支援』(共編著、明石書店、2017年)、『子どもの貧困と地域の連携・協働――〈学校とのつながり〉から考える支援』(共編著、明石書店、2019年)他。
-
パイナップルシューズ vol.1 |大阿久佳乃
¥500
2022年 ソフトカバー 46ページ A5 - 内容紹介 - 2000年生まれ、三重県鈴鹿市ご出身の大阿久佳乃さんによるエッセイや詩などが収録されています。 以前に書かれていた『パンの耳』も当店でも大変好評でした。 今回季刊誌として発表されていく予定とのことで大変楽しみです。 是非お早めに。
-
百年文庫 川 | 織田 作之助, 日影 丈吉, 室生 犀星
¥825
ポプラ社 2010年 ソフトカバー 180ページ B6変型判 - 内容紹介 - 日本人の暮らしに、「川」が生きていた頃の物語。 織田作之助『螢』 日影丈吉『吉備津の釜』 室生犀星『津の国人』
-
愛と家事 | 太田明日香
¥1,100
創元社 2018年 ソフトカバー 128ページ 四六判 - 内容紹介 - 「家族をつくることに失敗した。」こんな書き出しではじまるエッセイ集。ZINEとして2016年8月に発行し、好評を博した広い意味での「家族」をテーマとする自伝的作品『愛と家事』。その増補再編集版。虐待までされてないし、愛されている。けれど、お母さんとなんかしっくりいかない。形は違えども、多くの女性が抱える、母親の「愛情が重たい」という苦悩や、一度目の結婚の失敗と挫折からの回復などを赤裸々に綴り、共感を呼んだエッセイ集。新たに、30歳頃に遅れてやってきた母への反抗期や、淡路島の農家で共に暮らした祖父母の話などを加えた、小さいけれど切実な話をつづった可憐な小品集。 ★本書を推薦します。 愛に関する正解は、全部「自分」が決めていい。 ―植本一子(写真家) 目次 失敗 わたしの故郷 遠くに行きたい 母のようには生きられない 出せない手紙 遅れて来た反抗期 怒りとのつきあい方 フェミニズムとわたし わたしには家がない 最後 愛と家事 夫のいない金曜日 家族2.0 念を送る あとがき 初出一覧 - 著者プロフィール - 太田 明日香 (オオタ アスカ) (著/文) 1982年兵庫県淡路島生まれ。フリーランス編集者、ライター。奈良女子大学大学院人間文化研究科博士前期課程修了。いくつかの出版社に勤めたのち、フリーの編集者・ライターとして主に関西で仕事をする。企画・編集した本に『戦争社会学ブックガイド』(野上元・福間良明編、創元社)、『福祉施設発! こんなにかわいい雑貨本』(伊藤幸子と共著、西日本出版社)がある。 2015年から2年間、夫の仕事の都合でカナダのバンクーバーに引っ越し。滞在中に、最初の結婚、失恋、母親との葛藤を綴った『愛と家事』を夜学舎よりZINEとして発行。帰国後、日本語教師資格を取得、日本語学校の教壇にも立っている。現在、『仕事文脈』(タバブックス)で「35歳からのハローワーク」を連載中。
-
本を贈る|若松 英輔, 島田 潤一郎, 牟田 都子, 矢萩 多聞, 橋本 亮二, 笠井 瑠美子, 川人 寧幸, 藤原 隆充, 三田 修平, 久禮 亮太
¥1,980
三輪舎 2018年 ハードカバー 304ページ 四六判 縦194mm 横133mm 厚さ25mm - 内容紹介 - 本は工業的に生産され、消費されている。本は確かに商品だが、宛先のある「贈りもの」でもある。「贈る」ように本をつくり、本を届ける10人それぞれの手による珠玉の小論集。〈執筆者〉批評家・若松英輔/編集者・島田潤一郎(夏葉社)/装丁家・矢萩多聞/校正者・牟田都子/印刷・藤原隆充(藤原印刷)/製本・笠井瑠美子(加藤製本)/取次・川人寧幸(ツバメ出版流通)/営業・橋本亮二(朝日出版社)/書店員・久禮亮太(久禮書店)/本屋・三田修平(BOOK TRUCK) 目次 本は読者のもの 島田潤一郎 (編集者) 女神はあなたを見ている 矢萩多聞 (装丁家) 縁の下で 牟田都子 (校正者) 心刷 藤原隆充 (印刷) 本は特別なものじゃない 笠井瑠美子 (製本) 気楽な裏方仕事 川人寧幸 (取次) 出版社の営業職であること 橋本亮二 (営業) 読者からの贈りもの 久禮亮太 (書店員) 移動する本屋 三田修平 (本屋) 眠れる一冊の本 若松英輔 (批評家) 版元から一言 著者、編集、校正、装丁、印刷、製本、営業、取次、書店員、本屋。書き手から売り手までの10の職種のそれぞれから選りすぐった、本を贈る「名手」たちによる書き下ろしエッセイ集ができあがりました。類書はありますがインタビューものばかりですが、本書は本人のことばにこだわりました。ほとんどの著者は執筆を本業していないどころか、得意でもありません。だからこそ、心の声に向き合ってもらえるようにじっくり時間をかけて 執筆をしてもらいました。 - 著者プロフィール - 若松 英輔 (ワカマツ エイスケ) (著) 一九六八年、新潟県生まれ。批評家・随筆家。 慶應義塾大学文学部仏文科卒業。二〇〇七年「越知保夫とその時代 求道の文学」で第一四回三田文学新人賞受賞。二〇一八年『見えない涙』(亜紀書房)にて第三三回詩歌文学館賞を受賞。著書に『常世の花 石牟礼道子』(亜紀書房)、『小林秀雄 美しい花』(文藝春秋) 、『悲しみの秘義』(ナナロク社)、『霊性の哲学』(KADOKAWA)など。 島田 潤一郎 (シマダ ジュンイチロウ) (著) 一九七六年、東京育ち。 二〇〇九年九月に出版社「夏葉社」を東京・吉祥寺で創業。『昔日の客』(関口良雄著)、『星を撒いた街』(上林暁著)ほか、昭和の名著の復刊などをひとりで手がける。著書に『あしたから出版社』(晶文社)がある。 牟田 都子 (ムタ サトコ) (著) 一九七七年、東京都生まれ。出版社の契約社員をへて、フリーランスの校正者。関わった本に『猫はしっぽでしゃべる』(田尻久子、ナナロク社)、『詩集 幸福論』(若松英輔、亜紀書房)など。 矢萩 多聞 (ヤハギ タモン) (著) 一九八〇年、横浜市生まれ。画家・装丁家。 中学一年で学校をやめ、南インドと日本を半年ごとに往復。二〇〇二年から本づくりの仕事にかかわるようになり、これまでに四五〇冊を超える本をてがける。著書に『偶然の装丁家』(晶文社)、『たもんのインドだもん』(ミシマ社)など。 橋本 亮二 (ハシモト リョウジ) (著) 一九八一年、名古屋市生まれ。大学卒業後、朝日出版社に入社。一般書営業部所属。流通から販売までの一連の業務に従事している。Twitter運用やメールマガジン発行も担当。全国各地、本のある空間に行くことが日々の糧。 笠井 瑠美子 (カサイ ルミコ) (著) 一九八〇年生まれ。武蔵野美術大学デザイン情報学科卒業後、株式会社東京印書館に入社。製版部、管理部門を経て退職後、デザイン制作会社に勤務する傍ら、手製本工房まるみず組で手製本を習う。現在は加藤製本株式会社で束見本作成に従事。文芸や人文書などの上製本を主に手がける。 川人 寧幸 (カワヒト ヤスユキ) (著) 一九七一年生まれ。一九九四年早稲田大学第二文学部卒業。フリーター時代を経て九〇年代後半にリブロ池袋本店でアルバイト二ヶ月、契約社員二年。取次の鈴木書店でアルバイト一年、正社員二年。同社倒産後、本の運送会社や書店でのアルバイトを経て、二〇〇三年、取次の株式会社JRCの創業に参加。二〇一二年に副業として出版の夜光社、同年、取次として独立し、ツバメ出版流通株式会社を創業。現在に至る。 藤原 隆充 (フジワラ タカミチ) (著) 藤原印刷株式会社 取締役。創業七〇年の印刷会社の四代目。企画の段階から造本における仕様の提案を得意とし、本づくりを全面的にバックアップする。近年ではインディペンデント系の実績多数。代表的な作品として『T5』(東京藝術大学)、『もうひとつのデザイン』(D&DEPARTMENT)、『Rebuild New Culture』(Rebuilding Center Japan)、『わざわざの働きかた』(わざわざ)等。 三田 修平 (ミタ シュウヘイ) (著) 移動式本屋・ブックトラック店主。横浜市在住。 TSUTAYA TOKYO ROPPONGI、SHIBUYA PUBLISHING & BOOKSELLERS等を経て、二〇一二年に独立。ブックトラックの他にも飲食店や小売店のブックセレクト、雑誌・ウェブサイトでの連載など様々な形で本に関わる仕事をしている。 久禮 亮太 (クレ リョウタ) (著) 一九七五年生まれ、高知県出身。早稲田大学法学部中退。あゆみBOOKS早稲田店アルバイト、三省堂書店契約社員を経て、二〇〇三年よりあゆみBOOKS五反田店に正社員として勤務。二〇一〇年より同社小石川店店長。二〇一四年退職。二〇一五年「久禮書店」の屋号で独立。神樂坂モノガタリ(東京都新宿区)などで選書、書店業務一般を行うほか、長崎書店(熊本市)などで書店員研修も担当している。
-
石の文学館 鉱物の眠り、砂の思考 | 和田 博文
¥924
筑摩書房 2021年 ソフトカバー 400ページ 文庫判 - 内容紹介 - アポロンの姿をとどめる瑪瑙、選ばれた者だけが掘り出せる秘密の水晶、ヨーロッパの石畳もサハラの砂漠も……悠久の時間を湛える石を愛でる38編。