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ひとりみんぱく | 松岡 宏大
¥3,520
国書刊行会 2024年 ハードカバー 256ページ 四六変型判 - 内容紹介 - もしかしたら「物の本」だと思っている人もいるかもしれないが、これは「旅の本」だ。(「あとがき」より) ◇ 「ひとりみんぱく」とはなにか? 写真家・編集者・ライターとして世界中を旅してきた松岡宏大氏の部屋には、世界各地の文物であふれている。みんぱく=国立民族学博物館。すなわち、わが家の民族学博物館、それが「ひとりみんぱく」だ。1990年代よりバックパッカーとして世界をめぐり、現地で出会った人々や景色、そして蒐集してきた数々の物もの。土器、漆器、仮面、仏像、絨毯……どこか不思議な魅力をもつ工芸、民藝の数々。インドで、チベットで、ミャンマーで、リビアで、サハラ砂漠で、文物からは旅の記憶があふれだし、含蓄? 蘊蓄? 軽快なるエッセイを挟みつつおくる本書は、物の本か? 旅の本か? 地球をまるごと感じる、The Museum of Ethnology in My Hands! 松岡氏は、『地球の歩き方 インド』をまとめ、美しき絵本『夜の木』で知られるタラブックスの本を上梓するなど、とりわけインドに造詣が深い。私家版『ひとりみんぱく123』『ひとりみんぱく45』が好評、美しい本づくりで定評のサイトヲヒデユキ氏のブックデザインを得て、満を持して世の中におくりだす! 収録物品120点超に、美しい旅の写真。美麗クロス装。 ◇ 「みんぱく」とは大阪の万博記念公園内、太陽の塔のとなりに建つ「国立民族学博物館」の愛称である。本書の『ひとりみんぱく』というタイトルであるが、これは初めて僕が「みんぱく」を訪れた際、「うちにもあるな……」という感想を抱いたことに由来する。 仕事柄、世界中を旅しながら暮らしてきたが、行く先々でその土地の文物を蒐集してしまうところがある。その文物は、世間的な価値とはまったく無縁だが、自分の好奇心の方向性から、その国の文化・歴史・神話を内包しているものを好む傾向にある。そして、日本に帰ったあと、部屋で一緒に旅の思い出を語り合える話し相手のようなものであることが重要だと考えている。もちろん日本で手に入れたものや、人からいただいたものも含まれている。しかし、自分の旅してきた道筋から外れないよう心がけている。蒐集の基準軸は、常に「個人的な旅の記憶」と「人とつながり」に置いている。 今回、本書を著すにあたり自らの蒐集した品々をあらためて見返してみたが、本当に役に立たないものばかりだ。残念だ。同時に、僕にとってはかけがえのないものばかりだ。 これらの文物を手のひらにのせ愛でてみる。重みや質感、細工、その歪みや温みを確かめる。太陽の光の下で陰が際立つものもあれば、暗闇の中でこそ光り輝くものもある。それは自分の手で触れてこそわかることで、自分の足で旅をしてこそ出会える風景と一緒だ。 僕はこれらを手に入れたときに出会った人たちの顔や祈りの景色を思い出すだろう。そこで吹いていた風や夜空を満たす星のことを思い出すだろう。 旅の記憶こそ僕にとっていちばんの財産なのだから。 (「まえがき」より) - 著者プロフィール - 松岡宏大 (マツオカコウダイ) (著/文 | 写真) 写真家・編集者など。『地球の歩き方 インド』など、インドやアフリカを中心に辺境エリアのガイドブックの取材・編集に携わる。共著に『持ち帰りたいインド』(誠文堂新光社)、『タラブックス――インドのちいさな出版社、まっすぐに本をつくる』(玄光社)などがある。またインドのTara Booksよりバッジュ・シャームとの共著『Origins of Art: The Gond Village of Pathangarh』を上梓。写真展として『アディワシ――大地と生きる人々』(bonon kyoto、KYOTO GRAPHIE KG +)、『TRIBES in BASTAR』(Rungta)を開催。KAILAS名義で著作やイベントもおこなう。
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新版 縄文聖地巡礼|坂本龍一, 中沢新一
¥2,420
イースト・プレス 2023年 ソフトカバー 224ページ A5判 縦210mm 横148mm 厚さ19mm - 内容紹介 - ぼくたちは、 未来に向かって 縄文の古層へ旅をする 以前から縄文文化に深い関心を寄せてきた音楽家の坂本龍一氏と、人類学者の中沢新一氏が、縄文の古層に眠る、わたしたちの精神の源泉に触れるため、聖地を巡り、語り合います。 諏訪、若狭、敦賀、奈良、紀伊田辺、鹿児島、そして青森へ――― 社会的な状況が大きく変化している現在、これからのヴィジョンを見つけるために、ふたりが人間の心の始まり「縄文」へと潜っていきます。 【もくじ】 なにを、どうつたえ、つくっていくのか 縄文とは何か プロローグ 三内丸山遺跡からはじまった、ふたりの旅 第一章 諏訪 第二章 若狭・敦賀 第三章 奈良・紀伊田辺 第四章 山口・鹿児島 第五章 青森 エピローグ さらなる旅に向けて 旅のしおり - 著者プロフィール - 坂本龍一 (サカモトリュウイチ) (著/文) 1952年1月17日、東京生まれ。東京藝術大学大学院修士課程修了。1978年『千のナイフ』でソロデビュー。同年、YMOの結成に参加。1983年に散開後は『音楽図鑑』『BEAUTY』『async』『12』などを発表、革新的なサウンドを追求し続けた姿勢は世界的に高い評価を得た。映画音楽では『戦場のメリークリスマス』で英国アカデミー賞作曲賞、『ラストエンペラー』でアカデミー賞作曲賞、ゴールデングローブ賞最優秀作曲賞、グラミー賞映画・テレビ音楽賞など多数、『The Sheltering Sky』では2度目のゴールデングローブ賞最優秀作曲賞を受賞した。『LIFE』『TIME』などの舞台作品、韓国や中国での大規模インスタレーション展など、アート界への越境も積極的に行なった。環境や平和問題への言及も多く、森林保全団体「more trees」を創設。また「東北ユースオーケストラ」を設立して被災地の子供たちの音楽活動を支援した。2023年3月28日、71歳で死去。 中沢新一 (ナカザワシンイチ) (著/文) 人類学者。1950年山梨県生まれ。東京大学大学院博士課程満期終了。インド・ネパールでチベット仏教を学ぶ。帰国後、人類の思考全域を視野に入れた新しい知のあり方を提唱。人類学のみならず、歴史、哲学、民俗学、経済学、自然科学の分野にまたがる広汎な研究に従事する。著書に『チベットのモーツァルト』『雪片曲線論』『森のバロック』『フィロソフィア・ヤポ二カ』『カイエ・ソバージュ』シリーズ、『精霊の王』『アースダイバー』シリーズ、『レンマ学』など多数。2023年春に『精神の考古学』(新潮社)が刊行される。
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〈怪奇的で不思議なもの〉の人類学 妖怪研究の存在論的転回 | 廣田 龍平
¥3,080
SOLD OUT
青土社 2023年 ハードカバー 312ページ 四六判 - 内容紹介 - 妖怪は本当に存在しないのか? 「妖怪は超自然的で非科学的で現実には存在しない」。それはつくられた伝統である。アクターネットワーク理論やパースペクティヴィズム、マルチスピーシーズ人類学などを駆使し、新しい妖怪研究がここに展開される。TikTokや2ちゃんねる等で流通するネット怪談までをフィールドとする俊英による、民俗学と人類学を架橋する画期の書。
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『忘れられた日本人』をひらく 宮本常一と「世間」のデモクラシー|畑中 章宏, 若林 恵
¥1,760
黒鳥社 2023年 ソフトカバー 208ページ 新書判 - 内容紹介 - 宮本常一は民主主義の理論家だ!──宇野重規(政治学者) 不世出の民俗学者・宮本常一の主著のひとつであり、今なお愛され読み継がれる『忘れられた日本人』。そこに描かれた日本人の姿を、ノスタルジアや復古主義に陥ることなく、グローバリズムとナショナリズムとが錯綜する21世紀の世界のなかにいかに価値づけ、その可能性をひらくことができるのか。民俗学者・畑中章宏と編集者・若林恵が、「忘れられた日本人」の新たな姿をさがす、寄り道だらけの対話篇。 『宮本常一:歴史は庶民がつくる』『感情の民俗学』(畑中章宏)と『実験の民主主義』(宇野重規+若林恵)の必読副読本! 【目次】 はじめに 若林恵 1. 翻訳 translation 2. 反作用 reaction 3. 寄合 consensus 4. 実施 practice 5. 経営体 enterprise 6. 海賊 pirates 7. 世間 worldly 8. 環世界 unwelt 9. 進歩 progress 10. 実験 experiment 11. 道具 tools 12. 伝承 lore おわりに 畑中章宏 - 著者プロフィール - 畑中 章宏 (ハタナカ アキヒロ) (著/文) 大阪府大阪市生まれ。民俗学者。著書に『災害と妖怪』(亜紀書房)、『蚕』(晶文社)、『天災と日本人』(ちくま新書)、『21世紀の民俗学』(KADOKAWA)、『死者の民主主義』(トランスビュー)、『五輪と万博』(春秋社)などがある。 若林 恵 (ワカバヤシ ケイ) (著/文) 黒鳥社コンテンツ・ディレクター。平凡社『月刊太陽』編集部を経て2000年にフリー編集者として独立。以後、雑誌、書籍、展覧会の図録などの編集を多数手がける。音楽ジャーナリストとしても活動。2012年に『WIRED』日本版編集長就任、2017年退任。2018年、黒鳥社設立。著書・編集担当に『さよなら未来』『次世代ガバメント 小さくて大きい政府のつくり方』『GDX :行政府における理念と実践』『だえん問答 コロナの迷宮』『働くことの人類学【活字版】』など。「こんにちは未来」「blkswn jukebox」「音読ブラックスワン」などのポッドキャストの企画制作でも知られる。
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感情の民俗学 : 泣くことと笑うことの正体を求めて|畑中 章宏
¥2,200
イースト・プレス 2023年 ソフトカバー 200ページ B6変 縦168mm 横120mm 厚さ13mm - 内容紹介 - 私たちの感情は〈ならわし〉によってつくられる?内側からこみあげてくるように感じられる「感情」。しかし、喜怒哀楽は、時代や慣習によって変わる。つかみづらい感情の正体をもとめて、民俗学をひもとく。 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄本書「はじめに」より感情については、これまで、数えきれないほどたくさんの本が書かれてきました。なぜそれほど多くの本が書かれてきたかというと、多くの人が、感情をつかみづらいと感じているからです。「感情に左右されている」「感情にもてあそばれている」「感情をコントロールすることがむずかしい」……。この本を手にしたあなたも、きっとたぶんそんな人なのでしょう。でも、そもそも感情は、どこにあるのでしょうか? 感情のありかをみきわめようとするとき、感情が「こころ」に属するという人と、「からだ」に属するという人がいるようです。たしかに、感情が「こころ」にあるか、「からだ」にあるかによって、感情への対処のしかたが変わってきそうです。「こころかからだか」は、「心理現象か生理現象か」といいかえることができるでしょう。しかし、感情を発生地点をみることで、その本質に近づくことができるものでしょうか。また、感情を心理や生理としてあつかわず、哲学の対象として感情を概念的にとらえて考察することもさかんにおこなわれています。いってみればそれは、感情を「あたま」で分析し、理解しようとする立場だといえるでしょう。いずれにしても、感情が人間のどこから生まれてくるのかがはっきりとしているのなら、感情は御しやすいような気がします。ですから、感情は私たちの内側にあるのか、外側にあるのかについて疑問を抱いてみてもいいかもしれません。  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ 目次 はじめに 人は昔、「ぴえん」と泣いていた。 I 感情はどこからくるのか? 1 感情は意外と新しい 感情のはじまり 感情は私たちの外側にある 2 ありかを探して 感情は「からだ」に属する 感情の源は「子宮」にある 感情の「心理学」のさまざまな説 「後悔」と「悲しみ」 「分人」という概念 「本当の自分」とは 社会的な「分人」 日本における「私」 「世間」と感情 3 「しぐさ」と感情 言葉は万能ではない 民俗的感情とは 近代日本の「感情史」 主題は「我々」 幕間 感情的会話 その1 Ⅱ 感情とはなになのか? 1 感情は「表現」なのか 「泣く」ことと「涙する」こと 「ぴえん」という泣きかた 絵文字への派生 「ぴえん」の歴史性 ラメンテーションとしての「泣き祭」 泣く女、泣く男 現代文化の問題 2 「いいね! 」の進行形 絵文字による感情表現 「かわいい」と「かなしい」 「おもしろい」と「楽しい」 3 「微笑」と「奇妙な笑い」 ハーンが見すえた「感情」 義務としての微笑 「笑い」を科学する 突発する「例の笑い」 感情と怪異 文化的反応としての笑い 4 「笑い」と「ウソ」 村には評判の〝ウソつき〟がいた 「ウソ」の歴史 「ウソ」を叱る 5 笑う祭と泣く祭 神の前で「笑う」祭 「笑い講」 真夜中の「笑い祭」 神の前で「泣く」祭 6 『「いき」の構造』の「いき」 「媚態」と「意気地」と「諦め」 「関係性」のデザイン 7 「らしさ」のゆくえ 「人間らしさ」と「自分らしさ」 「わざとらしさ」と「もっともらしさ」 8 感情の政治性と社会性 冷笑は笑いか、怒りか 「ジレる」と「キレる」 「残酷」という感情 広島弁の「いなげな」 幕間 感情的会話 その2 Ⅲ 感情はどこへ行くのか? 1 共感の時代? 「いいね」は共感なのか 「シンクロニシティ」はあるのか 「こころ(心)」の誕生と終焉 「文字」に代わるもの 2 感情の公共 「いき」という公共圏 ソーシャルメディアで「いき」は生きるか 不気味の谷 文楽人形をめぐる感情 「もどき」と感情 AI にたいする恐怖 新しい感情か、伝統的感情か 「感情」と現代美術 3 感情をつくる 「エモい」を超えて 「推し」と「尊い」 「宗教以降」の感情 「感情」にたいするうしろめたさ 終幕 感情的会話 その3 参考・引用文献一覧
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辺境を歩いた人々|宮本常一
¥968
河出書房新社 2018年 河出文庫 ソフトカバー 296ページ 文庫判 縦150mm 横109mm 厚さ12mm - 内容紹介 - 江戸後期から戦前まで、辺境を踏査した四人、近藤富蔵、菅江真澄、松浦武四郎、笹森儀助の民俗探訪の実際と生涯。
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今を生きる思想 宮本常一 歴史は庶民がつくる | 畑中 章宏
¥880
講談社 2023年 講談社現代新書 ソフトカバー 112ページ 新書判 - 内容紹介 - 『忘れられた日本人』で知られる民俗学者・宮本常一とは何者だったのか。その民俗学の底流にある「思想」とは? 「大きな歴史」から零れ落ちる「庶民の歴史」。日本列島のすみずみまで歩き、聞き集めた小さな歴史の束から、世間や民主主義、多様な価値、さらには「日本」という国のかたちをも問いなおす。傍流として、主流が見落としてきた無名の人びとの「語りの力」を信じて――。 【本書のおもな内容】 ●「庶民」が主役の歴史を構想 ●盲目の「乞食」の自分語りに見出した意味 ●村をよくするために尽くした「世間師」 ●釣り糸を変えると豊かになる ●「寄り合い民主主義」の可能性 ●日常生活に潜む「深い心のかげり」に着目 ●「ふるさと」を起点として広い世界を見る ●旅に学ぶ――父の10ヵ条 ●男性による女性支配の「東西での違い」 ●人が人を信じることで人間全体が幸福になる 「宮本の民俗学は、私たちの生活が『大きな歴史』に絡めとられようとしている現在、見直されるべき重要な仕事だと私は考える。これほど生活に密着し、生活の変遷を追った仕事は、日本の近現代でほかにはみられないからだ。宮本は庶民の歴史を探求するなかで、村落共同体が決して共同性に囚われてきただけではなく、『世間』という外側と絶えず行き来し流動的な生活文化をつくってきたことも明らかにする。そしてそれは、公共性への道が開かれていたと解釈することができるのだ。また近代を基準にみたとき、さまざまな面で遅れているとされてきた共同体の生活、あるいは慣習のなかに、民主主義的な取り決めをはじめ、民俗的な合理性があったことも裏づける」――「はじめに」より ■■■■■■■■■■ 100ページで教養をイッキ読み! 現代新書の新シリーズ「現代新書100(ハンドレッド)」刊行開始!! 1:それは、どんな思想なのか(概論) 2:なぜ、その思想が生まれたのか(時代背景) 3:なぜ、その思想が今こそ読まれるべきなのか(現在への応用) テーマを上記の3点に絞り、本文100ページ+αでコンパクトにまとめた、 「一気に読める教養新書」です! ■■■■■■■■■■ 目次 ●はじめに 生活史の束としての民俗学 「心」の民俗学と「もの」の民俗学 フィールドワークから実践へ 「庶民」の歴史を構想 「思想家」として位置づける ●第1章 『忘れられた日本人』の思想 多様な語り口による叙述 「土佐源氏」とはなにものか? 座談から浮かび上がる「相互扶助」 「世間師」の役割 宮本常一の経歴 「民俗誌」から「生活誌」へ 生活史の束を編む ●第2章 「庶民」の発見 釣り糸を変えると豊かになる 「庶民」不在の歴史 「郷土研究」としての民俗学 民俗文化と無字社会 「ふるさと」という起点 農民文学と民俗 『相互扶助論』からの影響 「残酷」という感情 「単層文化」と「重層文化」 ●第3章 「世間」という公共 「世間」の重層性と複数性 常民・平民・庶民 「移動」からみた列島文化 境を越える旅人 流浪する人びと 農村指導者としての活動と離島振興法への関与 公共性への道をひらく ●第4章 民俗社会の叡智 寄り合い民主主義 共同体における自主性と束縛 女性の民俗的地位 「性」の領域 渋沢敬三が薦めた「傍流」 伝承としての「民具」 「民具学」の提唱 民具・物流・産業 オシラサマに対する独自のまなざし 「祭」で発散されるエネルギー 絵巻物に描かれた庶民生活 ●第5章 社会を変えるフィールドワーク 旅に学ぶ――父の10ヵ条 すたれつつある伝承形式 伝承の公共性 文字を知らない住人たち 当事者性からのアプローチ 児童によるフィールドワークの記録 調査される迷惑 「旅」と「観光」 自然環境の捉え方 「写真」を撮ること 出版編集と民俗学 ●第6章 多様性の「日本」 日本はひとつではない 「民衆史」の構想 進歩史観、発展史観に対する疑義 戦中の仕事に対する批判 イデオロギーを超えて 「歴史をつくる」ということ ●読書案内 - 著者プロフィール - 畑中 章宏 (ハタナカ アキヒロ) (著/文) 民俗学者。1962年生まれ。近畿大学法学部卒業。災害伝承、民間信仰から流行現象まで幅広い領域に取り組む。著書に『柳田国男と今和次郎』(平凡社新書・2011年)、『災害と妖怪』(2012年・亜紀書房)、『先祖と日本人』(日本評論社・2014年)、『『日本残酷物語』を読む』(平凡社新書・2015年)、『蚕』(晶文社・2015年)、『天災と日本人』(ちくま新書・2017年)、『21世紀の民俗学』(KADOKAWA ・2017年)、『五輪と万博』(春秋社・2020年)、『日本疫病図説』(笠間書院・2021年)、『廃仏毀釈』(ちくま新書・2021年)、『忘れられた日本憲法』(亜紀書房・2022年)など。
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アースダイバー 神社編|中沢 新一
¥2,420
講談社 2021年 ハードカバー 370ページ A5変型判 - 内容紹介 - 人気シリーズ「アースダイバー」が、いよいよその関心の中心である、神社を取り上げます。 生命にとっての普遍的聖地に加えて、ホモサピエンス・サピエンスにとっての聖地、そして古代の日本列島に居住した縄文系と弥生系(倭人系)にとっての聖地(のちの神社)の心的・歴史的な構造を探っていきます。 主な取扱い神社は、以下の通りです。 大日霊貴神社(鹿角大日堂) 諏訪大社 三輪神社 出雲大社 和多都見(海神)神社 志賀海神社 穂高神社 伊勢神宮などなど 神社に残された祭儀に秘められた思考を遡っていくと、アメリカ先住民、アジアの少数民族、ネパール、東南アジアなどとの深いつながりが明らかになります。 また、同時にこの列島に数万年にわたって繰り広げられてきた、われわれの祖先の前宗教的・宗教的思考の根源とその展開が解明されていきます。 山とは、海とは、蛇とは、太陽とは……。 歴史の無意識の奥にしまいこまれた記憶を甦らせる魂の冒険へ、いざ。 目次 プロローグ 聖地の起源 第一部 聖地の三つの層 第一章 前宗教から宗教へ 第二章 縄文原論 第三章 弥生人の神道 第二部 縄文系神社 第四章 大日霊貴神社(鹿角大日堂) 東北の続縄文 地名起源伝説 太陽神の聖地に建つ大日堂 第五章 諏訪大社 縄文の「王国」 蛇から王へ 御柱祭りの意味 第六章 出雲大社 蛇 タマ 神話の建築 第七章 三輪神社 ナラの原像 血と酒の蛇 蛇と鑑の確執 第三部 海民系神社 第八章 対馬神道 はじまりの島 ムスビの神 渚の神話学 第九章 アヅミ族の足跡 海の民の末裔 日本海ルート 太平洋ルート 第十章 伊勢湾の海民たち 太陽の道 海人と鳥 エピローグ 伊勢神宮と新層の形成
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増補改訂 アースダイバー|中沢 新一, 大森 克己(著/文 | 写真)
¥2,530
講談社 2019年 ハードカバー 384ページ A5変型判 - 内容紹介 - 2005年の大ブームから13年を経て、東京アースダイバーの完全版なる! 縄文、そして「海民」へと日本のルーツを遡り、地形の無意識、文化と自然の相互作用を探るアースダイビングは、見えない東京を私たちに教える。今回の増補改訂で隅田川と多摩川流域といった海民文化の要素が色濃く残る地域を追加しました。そして東京の中心地であり、アースダイバーの出立点である大宮八幡へと帰還する旅が完了する。 2005年、『アースダイバー』は、東京の風景が一変する散歩の革命を起こし大ベストセラーになりました。野生の東京を描く東京創世記でした。 その後、『大阪アースダイバー』(2012)『アースダイバー 東京の聖地』(2017)、『アースダイバー 神社編』(刊行準備中)と日本の歴史を書きかえる射程をもつ大きなプロジェクトになっています。 縄文、そして「海民」へと日本のルーツを遡り、地形の無意識、文化と自然の相互作用を探るアースダイビングは、見えない東京を私たちに教えてくれます。 今回の増補改訂で隅田川と多摩川流域といった海民文化の要素が色濃く残る地域を追加しました。 そして東京の中心地であり、アースダイバーの出立点である大宮八幡へと帰還します。 東京アースダイバーの決定版にして完結版! 【120ページ加筆】 【全24点アースダイビング・マップ付き】 【第9回桑原武夫学芸賞受賞】 [目次] 増補改訂 まえがき プロローグ 第1章 ウォーミングアップ―東京鳥瞰 第2章 湿った土地と乾いた土地―新宿~四谷 第3章 死と森―渋谷~明治神宮 第4章 タナトスの塔 異文/東京タワー―東京タワー 第5章 湯と水―麻布~赤坂 間奏曲(1)―坂と崖下 第6章 大学・ファッション・墓地―三田、早稲田、青山 第7 職人の浮島―銀座~新橋 第8章 モダニズムから超モダニズムへ―浅草~上野~秋葉原 第9章 東京低地の神話学―下町 第10章 海民がつくった下町-隅田川 第11章 よみがえる南郊-多摩川 間奏曲(2) 森番の天皇―皇居 最終章 ムサシ野オデッセイ あとがき - 著者プロフィール - 中沢 新一 (ナカザワ シンイチ) (著/文) 1950年生まれ。東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了。現在、明治大学野生の科学研究所所長。思想家。 著書に『日本の大転換』『アースダイバー』、『カイエ・ソバージュ』(小林秀雄賞)、『チベットのモーツァルト』(サントリー学芸賞)『森のバロック』(読売文学賞)『哲学の東北』(青土社、斎藤緑雨賞)など多数ある。
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沖縄文化論 : 忘れられた日本|岡本 太郎
¥755
SOLD OUT
中央公論新社 1996年 中公文庫 ソフトカバー 261ページ 文庫判 - 内容紹介 - 苛酷な歴史の波に翻弄されながらも、現代のわれわれが見失った古代日本の息吹きを今日まで脈々と伝える沖縄の民俗。その根源に秘められた悲しく美しい島民の魂を、画家の眼と詩人の直感で見事に把えた、毎日出版文化賞受賞の名著。 目次 沖縄の肌ざわり 「何もないこと」の眩暈 八重山の悲歌 踊る島 神と木と石 ちゅらかさの伝統 結語 神々の島久高島 本土復帰にあたって
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ジャンパーを着て四十年|今和次郎
¥946
筑摩書房 2022年 ちくま文庫 ソフトカバー 288ページ 文庫判 - 内容紹介 - 世間に溢れる「正装」「礼儀」「エチケット」、形ばかりになってはいないか? 「考現学」の提唱者によるユーモア炸裂の服装文化論集。解説 武田砂鉄 名著復刊!「考現学」的ファッション論 ユーモア炸裂、人間生活観察 結婚式でも大使の前でも、いつでもジャンパー。柳田國男に破門され、「考古学」ならぬ「考現学」を生み出した今和次郎。戦前戦後の日本社会を市中から観察してきた著者がユーモアたっぷりに服装文化の今と昔を語りだす。“服”とは一体なにものか? 世間に溢れる“正装”“礼儀”“エチケット”とは? “装う”という行為の意味は? 時代を超える隠れた名著、待望の復刊! 解説 武田砂鉄 目次 一、ジャンパーを着て四十年 1 着出したきっかけ/2 世間とのまさつ/3 先輩・同僚・学生・妻・子供たちは/4 演壇に立つと/5 ジャンパーの定義/6 冠婚葬祭には/7 宮様からの招きに/8 国際的パーテーに 二、礼儀作法の由来 1 作法の探求/2 礼儀作法という言葉/3 作法のいろいろなスタイル/4 日本の古代の礼儀作法/5 武家による破壊と建設/6 近世礼法の確立/7 明治の国粋主義という錯覚/8 世界大戦による改革/9 カトリック系のエチケット/10 プロテスタントと作法 三、きものの伝統 1 歴史のあら筋/2 哀感をそそる衣裳/3 外人に理解してもらうのは むずかしい/4 伝統という名でおどらされた明治時代/5 現実の問題 四、服装改良の歩み 1 改良とは/2 文化生活とショート・スカート/3 開襟シャツの提唱/4 第二次大戦前後 五、ユニホームとは 1 服装は魔物だ/2 田舎娘・銀座令嬢・婦人警官/3 ユニホームのいろいろ/4 警官と駅員で実験/5 有職故実の世界/6 儀礼的束縛で/7 士農工商の身分制から/8 明治以来の官員・軍人の礼服と制服/9 背広服と学生の制服/10 今日の企業経営学とユニホーム/11 インダストリアル・コマーシャル・シンボリカル 六、地方にみる洋服姿 1 農村婦人たち/2 戦災をのがれた都市の人々の姿 七、感覚か生活か 1 コマーシャル・アートの座席/2 生活行動と個性 八、流行の価値を探れば 1 益なくて害ありという思想/2 健康の点、家計の点からは/3 だが、流行は現代に生きる人々のもの 九、歓楽を求めるための衣裳〔古代エジプト〕 1 過去時代の服飾を味わう心/2 神像の化粧と衣裳/3 司祭・王の装い/4 歓楽にひたる女性の装い 十、神に近づくための服装〔初期キリスト教〕 1 教養高きローマの紳士のなやみ/2 信仰と服装/3 貧しい人々の服 装 十一、人づくりの哲学 1 試験のない学校/2 入学考査は/3 思い出/4 湧き立つ世論/ 5 知能的底辺の問題/6 「一日受刑者」となってみて/7 囲いの中だけにヒバリが巣を/8 そして刑務所と学校と 十二、大衆に直面して 1 被指導者の群れ/2 その性格はさまざま/3 生活以前の問題をどうするか/4 欲求のコントロール/5 上野と浅草/6 インテリと大衆とは反発する/7 生活指導者としてのインテリ 十三、家庭科にもの申す 1 門外漢として/2 倫理と技術と金/3 慣習の分析と流行の認識/ 4 地域・職域の問題/5 家庭と家庭の外との関連/6 その要点 十四、服装への発言 ショーかドラマか/造形美と服装美/服装行為/男性たちの服装/上品とか下品とか/結婚披露の会で演説/美しさと気楽さ/洋装か和装か/スタイルの定着/衣服と家計/衣料費一兆円/ソ連の流行誌/アメリカの服装/伝統とは/風俗という言葉/流行企画/家政学と被服学/家庭科はどこへいく/服装研究と民族学/民俗服をみる目/服装は道路と関係がある/近代的式典/衣服と機械/宇宙服とデザイン界/量産服への着眼/昔と今とこれからと/戦後の服装界/リアルとロマン あとがき 解説 TPOをわきまえない 武田砂鉄 - 著者プロフィール - 今 和次郎 (コン ワジロウ) (著/文) 1888年、青森県弘前市生まれ。建築学者、風俗研究家。1912年、東京美術学校図案科卒業。17年頃から郷士会へ参加、柳田国男らと農村・民家の調査を行う。20年~59年まで早稲田大学教授。23年の関東大震災後、吉田謙吉とともに「バラック装飾社」や「考現学」を始める。その後の研究範囲は服飾・風俗・生活・家政にまで及んだ。73年没。
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ひどい民話を語る会|京極 夏彦, 多田 克己, 村上 健司, 黒 史郎
¥1,650
KADOKAWA 2022年 ソフトカバー 176ページ 四六判 - 内容紹介 - 「囲炉裏端にはコンプライアンスもポリティカル・コレクトネスもないんです。そして――。ひどい民話が誕生するんです」京極夏彦(「はじめに」より) 「桃太郎」の冒頭でお爺さんは柴刈りに、お婆さんは洗濯に行く。その理由とは……? メジャーな昔話の陰には数々の「ひどい民話」が埋もれている。 妖怪を愛好する面々が縦横無尽に語る、知られざる民話の世界。 全国各地から選りすぐりの民話を紹介する、伝説的トークイベント「ひどい民話を語る会」が、満を持して書籍化! 学問としても芸術としても敬遠され、表舞台からパージされてきた荒唐無稽な口承文芸「ひどい民話」は、語りのエンターテインメントだ。 ※下品な話が苦手な方はご遠慮ください。 目次 はじめに 京極夏彦 第一部 京極夏彦、多田克己、村上健司 第二部 京極夏彦、多田克己、村上健司、黒 史郎 第三部 京極夏彦、黒 史郎 おわりに 京極夏彦 - 著者プロフィール - 京極 夏彦 (キョウゴク ナツヒコ) (著/文) 1963年、北海道生まれ。小説家、意匠家。94年、『姑獲鳥の夏』でデビュー。96年『魍魎の匣』で日本推理作家協会賞、97年『嗤う伊右衛門』で泉鏡花文学賞、2003年『覘き小平次』で山本周五郎賞、04年『後巷説百物語』で直木賞、11年『西巷説百物語』で柴田錬三郎賞、22年『遠巷説百物語』で吉川英治文学賞を受賞。著書に『死ねばいいのに』『数えずの井戸』『オジいサン』『ヒトごろし』『書楼弔堂 破暁』『遠野物語Remix』『虚実妖怪百物語 序/破/急』 ほか多数。 多田 克己 (タダ カツミ) (著/文) 東京都出身。妖怪研究家。著書に、妖怪絵師が遺した画からその意味を解読する『百鬼解読』がある。京極夏彦との共著に『暁斎妖怪百景』『妖怪図巻』、京極夏彦・村上健司との共著に『妖怪馬鹿』『妖怪旅日記』など。カルチャーセンターにて妖怪学に関する講座の講師を務める。 村上 健司 (ムラカミ ケンジ) (著/文) 1968年、東京都生まれ。妖怪探訪家、フリーライター。幼い頃から妖怪に興味を持ち、妖怪伝承地を取材。水木しげるとの共著『日本妖怪大辞典』、京極夏彦・多田克己との共著『妖怪馬鹿』『妖怪旅日記』をはじめ、『妖怪事典』『日本妖怪散歩』『手わざの記憶』『怪しくゆかいな妖怪穴』『妖怪ひみつ大百科』『がっかり妖怪大図鑑』など著書多数。 黒 史郎 (クロ シロウ) (著/文) 1974生まれ。2006年「夜は一緒に散歩しよ」で第1回『幽』怪談文学賞長編部門大賞を受賞しデビュー。主な小説作品に「幽霊詐欺師ミチヲ」シリーズ、「怪談撲滅委員会」シリーズ、『未完少女ラヴクラフト』『ラブ@メール』『いちろ少年奇譚』『童提灯』『実話怪談 黒異譚』『ムー民俗奇譚 妖怪補遺々々』『ボギー 怪異考察士の憶測』『かくされた意味に気がつけるか? 3分間ミステリー』など多数。
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フィールド言語学者、巣ごもる。 | 吉岡 乾
¥1,980
創元社 2021年 ソフトカバー 288ページ 四六判 縦188mm 横128mm 厚さ20mm - 内容紹介 - 話題書『現地嫌いなフィールド言語学者、かく語りき。』 著者による、待望の新刊! フィールドへ出られなくなったフィールド言語学者が語る、 最高におもしろい言語学のはなし。 * 著者は、大阪の国立民族学博物館に勤務するフィールド言語学者。パキスタンとインドの山奥で話者人口の少ない言語を調査しているが、2020年は世界規模の新型コロナウイルス感染症蔓延でフィールドへ出られなくなり、長らく「巣ごもり」をすることとなった。本書は、著者がそのような生活の中で、日常に溢れる様々な現象を言語学者目線で眺めて考えたことを綴った言語学エッセイ。世界の多種多様な言語の例を用いながら、言語学の諸分野の知識が親切かつユーモアたっぷりに語られる、最高の知的エンターテイメント。イラスト:朝野ペコ * ●「はじめに」より一部抄録 日常には言語が溢れている。言語が溢れていないところは、人間の居ないところだけだ。 言語学者は言語を食い物にしている。言葉を選ばなければ。だが、その事実を改めて大っぴらにしてしまうと、「危機言語が消滅したら、言語多様性が失われたら、マズいよね!」などと言語学者が幾ら声高に、意識高そうに訴えたところで、「我々の餌がなくなりそうだから、皆も気を付けて!」に聞こえてしまって白々しく響きそうだから、言葉遣いには気を配らなければならない。開けっ広げにそんな言いかたをするのは止そう。ちなみにここでの「我々」は聞き手(あなた)を包括していない。聞き手(あなた)を除外した集合である。 もとい、言語学者は言葉に意識を向けがちである。憖(なまじ)っか言語について考える思考基盤の知識を身に纏ってしまっているため、意図的にその意欲を封じ込めない限り、不図した瞬間、耳目に触れた言葉を、言語学的に矯(た)めつ眇(すが)めつ愛で始めてしまったりするのが、言語学者の多数派である。僕はそう信じている。怠惰な生活態度に定評のありそうな僕ですらそうなんだもの、他の研究者たちはもっと熱心に物思いに耽っているに違いあるまい。 言語学メガネを着用すると、日常の暮らしの中に、隠された一面が伏流のように存在しているのが、さもAR(拡張現実)かの如くに見えてくるのだ。 本書は、フィールド言語学者である僕が、高尚さのかけらもなしに、そんなふうに言語学目線で漫ろに思った日々のアレコレを詰め込んだ一冊となっている。フィールド研究者を謳っていながら、世界規模の新型コロナウイルス感染症蔓延でフィールドに出られなくなり、テレワークも推奨されて、二〇二〇年の春以降は長らく「巣ごもり」をすることとなった。そしてそんな妙な事態になったものだから、時間の余裕ができるかもなどと勘違いして、筆のまにまに書き出したのである。……(以下略) 目次 ※制作中のため、変更が生じる可能性があります。 はじめに 言語学概念図 Ⅰ. ▼言語学が何をして何をしないか 言語学がすること/言語学がしないこと/言語学で夢を見られるか ▼文法のない野蛮な言語を求めて ブルシャスキー語と出合った/そして「文法のない言語」に出合った ▼語学挫折法 ちゃんとした発音を身に付ける/毎日欠かさず続ける/本気になれる動機を作る/語学継続法 ▼喋る猫のファンタジー 猫の言語の研究の古今東西/人語を話す猫を科学する ▼差別用語と言葉狩り 言語表現の曖昧さ/協調性と文脈による支えが理解を絞り込む/「差別用語」という幻想 ▼僕は言葉 私の僕と俺/言葉とキャラ/敬語と距離感/言葉とアイデンティティ/言葉は映りの悪い鏡 Ⅱ ▼日常をフィールド言語学する しがない関西弁のメモ書き/動画配信サイトをフィールドワークする/漫画をフィールドワークする/生の言葉を相手取ってこそ ▼【緊急】リモート調査チャレンジ 「 」研究者/リモート調査の試み ▼翻訳できないことば 翻訳と意味/語彙は構造をなしている/言葉による概念の切り分け/言葉にへばり付いたイメージ/各人の頭の中の百科全書 ▼言語が単一起源ではない理由 生物の樹形図と言語/生命体の化石、言語の化石 ▼淘汰されたプロの喩え話 様々な言い換え表現/見立て・擬え/歴々のミームたち ▼無文字言語の表記法を編み出すには 文字のメリットと、個別に書かれ始める無文字言語/文字化することの難しさ/社会的問題と綴り字の癖と/骨折り損は避けたいので ▼例のあのお方 ハリー・ポッターと例のあのお方/区別する音の違いと借用語への姿勢/ハリー・ポッターと個々のキャラ名/外来語に開拓される発音の幅 Ⅲ ▼どうして文法を嫌うのか ルールは類推を可能にし、表現力を爆増させる/新表現を書き散らかす/深掘りで文法は面白くなりだす ▼軽率に主語を言えとか言う人へ 主語とは何か/助詞の「が」が付いたものは?/主語でも主格でもない、主題 ▼意味と空気 意味とは何かを考える/意味以外の意味 ▼語とは何か 通言語的な「語」の定義/「猫が鳴く」の語数は?/音韻的な側面から/分離のし易さ・し難さを考慮する/結局、「語」とは何か ▼ことばの考古学 どうやって言語を手掛かりとするか(一)/どうやって言語の手掛かりを発掘するか/どうやって言語を手掛かりとするか(二) ▼日本語はこんなにも特殊だった 日本語は平凡である/日本語は平凡とも稀有とも言い難い/日本語は稀有である ▼なくなりそうな日本のことば 琉球諸語は日本語とは別の言語なのか/話題に上がることの少ないもう一つの言語/日本の大きい言語から小さい言語まで/冒頭から僕は「日本で話されている言葉」と言っていた おわりに 言語解説 参考文献 - 著者プロフィール - 吉岡 乾 (ヨシオカ ノボル) (著/文) 国立民族学博物館准教授。専門は記述言語学。博士(学術)。1979年12月、千葉県船橋市生まれ。2012年5月、東京外国語大学大学院博士課程単位取得退学。同9月に博士号取得。博士論文の題は「A Reference Grammar of Eastern Burushaski」。2014年より、現職。 大学院へ進学した2003年よりブルシャスキー語の研究を開始し、その後、パキスタン北西部からインド北西部に亙る地域で、合わせて7つほどの言語を、記述的に調査・研究している。著書に『なくなりそうな世界のことば』『現地嫌いなフィールド言語学者、かく語りき。』(ともに創元社)。
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山に生きる人びと | 宮本常一
¥902
河出書房新社 2011年 文庫判 256ページ - 内容紹介 - 山には「塩の道」もあれば「カッタイ道」もあり、サンカ、木地屋、マタギ、杣人、焼畑農業者、鉱山師、炭焼き、修験者、落人の末裔…さまざまな漂泊民が生活していた。ていねいなフィールドワークと真摯な研究で、失われゆくもうひとつの(非)常民の姿を記録する。宮本民俗学の代表作の初めての文庫化。 目次 塩の道 山民往来の道 狩人 山の信仰 サンカの終焉 杣から大工へ 木地屋の発生 木地屋の生活 杓子・鍬柄 九州山中の落人村 天竜山中の落人村 中国山中の鉄山労働者 鉄山師 炭焼き 杣と木挽 山地交通のにない手 山から里へ 民衆仏教と山間文化
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海に生きる人びと | 宮本常一
¥836
河出書房新社 2015年 文庫判 246ページ - 内容紹介 - 宮本常一の傑作『山に生きる人びと』と対をなす、日本人の祖先・海人たちの移動と定着の歴史と民俗。海の民の漁撈、航海、村作り、信仰の記録。 - 著者紹介 - 著者プロフィール 宮本 常一 (ミヤモト ツネイチ) (著/文) 1907年山口県周防大島生まれ。日本各地でフィールドワークを重ね、特に移動する人びとに注目し多くの民俗誌を残す。おもな著書に、『忘れられた日本人』『海に生きる人びと』『家郷の訓』など。1981年没。