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シベリヤ物語 長谷川四郎傑作選 | 長谷川 四郎(本文), 堀江 敏幸(編集)
¥1,210
筑摩書房 2024年 ちくま文庫 ソフトカバー 384ページ 文庫判 - 内容紹介 - シベリヤの捕虜収容所で出会った人や忘れがたい光景、労働の日々を透徹した文体で描く戦争文学の名著。詩・エッセイ・短篇を加えたオリジナル編集版 堀江敏幸による編集で不朽の第一作が増補版として甦る! シベリヤ抑留帰りの異才が残した 静謐にして不穏な足跡 敗戦によりソ連軍の捕虜となった作者は、シベリヤ各地の収容所を5年にわたり転々とする。そして炭坑、街路、煉瓦工場などで労働しながら、捕虜仲間やソ連兵、町の人びとと言葉をかわし、さまざまな光景を目にした。帰国後に書かれた『シベリヤ物語』は、苛酷な経験を描きながらも静謐で、今なお不思議な輝きを放つ。表題作全篇に詩・エッセイ・短篇を加えて新たに編まれた「傑作選」の一冊。 装画 柳智之 カバーデザイン 五十嵐哲夫 - 目次 - Ⅰ シベリヤ物語 シルカ 馬の微笑 小さな礼拝堂 舞踏会 人さまざま 掃除人 アンナ・ガールキナ ラドシュキン ナスンボ 勲章 犬殺し Ⅱ 逃げていく歌 未確認戦死者の歌 うたごえの歌 兵隊の歌 露営の夢の歌 逃亡兵の歌 復員列車の終着駅の歌 Ⅲ シベリヤをめぐって ― 短篇とエッセイ 炭坑ビス ソ連俘虜記 『シベリヤ物語』作者のことば 〈私の処女作〉『シベリヤ物語』 シベリヤから還って チタの詩人 中へ入ることの出来ない映画の一場面でも見るように ― 解説にかえて 堀江敏幸 - 著者プロフィール - 長谷川 四郎 (ハセガワ シロウ) (本文) 1909年、北海道函館生まれ。45年8月よりソ連軍の捕虜となりシベリヤ各地の捕虜収容所でさまざまな労働に従事。50年に帰国。52年に『シベリヤ物語』を筑摩書房より刊行。その後も、小説、詩、翻訳、戯曲、エッセイなど幅の広い執筆活動を行った。他の著書に『鶴』(ちくま文庫、近刊)、『ぼくの伯父さん』(青土社)、『中国服のブレヒト』(みすず書房)など、訳書に『デルスウ・ウザーラ』(平凡社)、『ロルカ詩集』(土曜社)、『カフカ傑作短篇集』(福武文庫)などがある。87年没。 堀江 敏幸 (ホリエ トシユキ) (編集) 1964年、岐阜県生まれ。作家、仏文学者、早稲田大学文学学術院教授。95年に第一作『郊外へ』(白水社)を刊行。著書に『熊の敷石』(講談社文庫)、『雪沼とその周辺』『河岸忘日抄』『その姿の消し方』『おぱらばん』(新潮文庫)、『正弦曲線』『戸惑う窓』(中公文庫)、『オールドレンズの神のもとで』(文春文庫)などがある。
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パチンコ 上下セット | ミン・ジン・リー, 池田 真紀子(翻訳)
¥2,112
文藝春秋 2023年 文春文庫 ソフトカバー 上巻 384ページ / 下巻 384ページ 文庫判 - 内容紹介 - 日韓併合下の釜山沖の小さな島、影島。下宿屋の娘、キム・ソンジャは、粋な仲買人のハンスと出会い、恋に落ちて身籠るが、実はハンスには妻子がいた。妊娠を恥じる彼女に牧師のイサクが手を差し伸べる。二人はイサクの兄が住む大阪の鶴橋へ。しかし過酷な日々が待ち受けていた――。全世界で共感を呼んだ大作、ついに文庫化!
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しをかくうま | 九段 理江
¥1,650
文藝春秋 2024年 176ページ 四六判 - 内容紹介 - 第45回野間文芸新人賞受賞作。 疾走する想像力で注目を集める新芥川賞作家が描く、馬と人類の壮大な歴史をめぐる物語。 太古の時代。「乗れ!」という声に導かれて人が初めて馬に乗った日から、驚異の物語は始まる。この出逢いによって人は限りなく遠くまで移動できるようになった――人間を“今のような人間”にしたのは馬なのだ。 そこから人馬一体の歴史は現代まで脈々と続き、しかしいつしか人は己だけが賢い動物であるとの妄想に囚われてしまった。 現代で競馬実況を生業とする、馬を愛する「わたし」は、人類と馬との関係を取り戻すため、そして愛する牝馬<しをかくうま>号に近づくため、両者に起こったあらゆる歴史を学ぼうと「これまで存在したすべての牡馬」たる男を訪ねるのだった――。
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その猫の名前は長い | イ・ジュへ, 牧野 美加(翻訳), 大阿久 佳乃(解説)
¥2,310
里山社 2024年 ソフトカバー 288ページ 四六判 縦188mm 横127mm 厚さ16mm - 内容紹介 - 「何がしきりにわたしたちを臆病者にさせるのだろう。わたしたちを絶えず孤立させ、ああはなりたくないと人に思わせ、軽蔑されやすい顔に変貌させ、何かを証明しなければと常にみずからを追い立てる。この病の名は何だろう。」(本文より) 子育てと家事の合間を縫って育んだ中年女性の友情に入る亀裂を描く「今日やること」、妻の外見を愛し内面を見ない夫の視点で描く「夏風邪」、女の惨めな学生時代を美化して記憶し同級生の男が映画を撮る「水の中を歩く」、冴えない女性社員が先輩社員に抱く淡い恋心を描く「その猫の名前は長い」など、生活のリアリティが滲み出る繊細な物語9作品。 主婦をしながら英米文学の翻訳家となり、アドリエンヌ・リッチやエリザベス・ビショップらに影響を受け小説を書いた著者の初邦訳。牧野美加の美しい翻訳文、大阿久佳乃による英米文学作品と本書の関わりを解き明かす大充実の解説(20P)付。 海が隔てる隣同士の国に暮らすあなたはわたしじゃない、でも、あなたはわたしでもある。社会の常識や家父長制に押しつぶされる痛み、その中でだれかと視線を交わし手を取りあうことの心強さとありがたさ。確かな細部と繊細な記憶を積み重ね描かれる本書は、正気を保つのが難しい世界に生きるわたしたちのための1冊だと思う。 小山田浩子(小説家) 「わたしたち」は単純ではない。それどころか、差異を抑圧する危険性もはらむ。「わたしたち」にならなくては「あいだの差異」をなくすことはできないが、「内なる差異」を抑圧しないため、「内なる差異」を意識的に見つめることを怠ってはならない。リッチも、ビショップも、イ・ジュヘも私もそれぞれの「位置」をもつ。差異を探るため、そしてその上でなぜ「わたしたち」を「わたしたち」と呼べるのか、呼ばなければならないかを見極めるため、彼女たちを読まなくてはならず、知識以上のものに面と向かわなくてはならない。 大阿久佳乃(解説より) - 目次 - 「今日やること」 「誰もいない家」 「夏風邪」 「わたしたちが坡州に行くといつも天気が悪い」 「その猫の名前は長い」 「水の中を歩く人たち」 「花を描いておくれ」 「春のワルツ」 「その時計は夜のあいだに一度ウインクする」 作家のことば 訳者あとがき 解説「わたしたち」になることに関する覚え書き(大阿久佳乃) - 著者プロフィール - イ・ジュへ (イ ジュヘ) (著/文) 読み、書き、訳す。2016年、チャンビ新人小説賞を受賞し、作家としての活動を始めた。著書に『すもも』『涙を植えたことのあるあなたへ』『ヌの場所』『季節は短く、記憶は永遠に』〈いずれも未邦訳〉、訳書に『わたしの本当の子どもたち』〈原題:My Real Children〉、『われわれ死せる者たちが目覚めるとき』〈原題:Essential Essays: Culture, Politics, and the Art of Poetry〉などがある。 牧野 美加 (マキノ ミカ) (翻訳) 968年大阪生まれ。釜慶大学言語教育院で韓国語を学ぶ。第一回「日本語で読みたい韓国の本 翻訳コンクール」最優秀賞受賞。訳書にキム・ウォニョン『希望ではなく欲望―閉じ込められていた世界を飛び出す』(クオン)、キム・チョヨプ、キム・ウォニョン『サイボーグになる―テクノロジーと障害、わたしたちの不完全さについて』(岩波書店)、ジェヨン『書籍修繕という仕事:刻まれた記憶、思い出、物語の守り手として生きる』(原書房)、ファン・ボルム『ようこそ、ヒュナム洞書店へ』(集英社)など。 大阿久 佳乃 (オオアク ヨシノ) (解説) 2000年三重県生まれ。文筆家。同志社大学神学部在学中。2017年より詩に関するフリーペーパー『詩ぃちゃん』を発行しはじめる。著書に『のどがかわいた』(岬書店、2020年)、『パンの耳1 ~10(ZINE)』(自費出版、2021年)『じたばたするもの』(サウダージ・ブックス、2023年)。著作の中心的テーマは、文学とともに生きる/生活すること。現在の文学的関心は、アメリカ・クィア詩。
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セザンヌの犬 | 古谷 利裕
¥1,980
いぬのせなか座 2024年 いぬのせなか座叢書 ソフトカバー 304ページ 四六変形判 縦163mm 横111mm 厚さ20mm - 内容紹介 - いくつものときとばしょが 生きものや物たちのもとで折りたたまれてはひらかれ だれもしらない思弁的な時空間が この体のなかに降りてくる --------------------- 画家・評論家など多方面で活躍する著者が「自分のすべてがここに入っている」と語る、小説の新たな可能性を示す驚くべき初小説集。 連続講座、展覧会の開催にあわせ、ついに刊行。 『群像』『早稲田文学』『ことばと』などで発表された作品に、書き下ろしを加えた計7作品を収録。 編集・デザインは、古谷の小説に大きな影響を受けてきたと語る「いぬのせなか座」山本浩貴が担当。 目次 「ふたつの入り口」が与えられたとせよ ライオンと無限ホチキス セザンヌの犬 グリーンスリーブス・レッドシューズ ライオンは寝ている 右利きと左利きの耳 騙されない者は彷徨う - 著者プロフィール - 古谷利裕 (フルヤトシヒロ) (著) 1967年生まれ。画家、評論家。 1993年東京造形大学卒業後、画家として展覧会多数。 評論家としても、美術・小説・映画・アニメなど特定ジャンルに限らない活動を展開。『世界へと滲み出す脳』『人はある日とつぜん小説家になる』『虚構世界はなぜ必要か? SFアニメ「超」考察』など著書多数のほか、2010年~2019年には「東京新聞」美術評を、2020年には「文學界」新人小説月評を担当。 1999年11月にはWeb上にて「偽日記」を開始。以降24年以上にわたって連日更新されている同ページは、ひとりのアーティストの長期的な日記として、また日本の芸術・思想の特異なアーカイブとして、小説家・保坂和志をはじめ多くの人々から高く評価されている。 近年は「社会的チートの撲滅&死の恐怖からの非宗教的解放」をテーマとする集団「VECTION」の主要メンバーとしても活動。 2024年1月からは連続講座 「未だ充分に尽くされていない「近代絵画」の可能性について(おさらいとみらい)」を、6月には個展「bilocation/dislocation」を開催。本小説集はこれらと関連して企画・制作された。
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翔ぶ女たち | 小川 公代
¥1,760
講談社 2024年 ソフトカバー 224ページ 四六判 - 内容紹介 - 明治から昭和にかけて活躍した小説家・野上弥生子。 語学力や教養やケア実践を、彼女はその先駆的な仕事にどう活かしたのか。 「ケア」をテーマに研究を続けてきた英文学者の「私」が弥生子の人生に惹かれた理由とは。 文学、映画、アニメ、音楽……現代の表現者たちの言葉をつなげて語る斬新な評論。 ロングセラー『ケアの倫理とエンパワメント』『ケアする惑星』著者の最新作。 【目次】 1章 言葉の森を育てた女たち――松田青子と野上弥生子 2章『エブエブ』と文学のエンパワメント――辻村深月と野上弥生子 3章 魔女たちのエンパワメント――『テンペスト』から『水星の魔女』まで 4章 ザ・グレート・ウォー――女たちの語りに耳をすます - 著者プロフィール - 小川 公代 (オガワ キミヨ) (著/文) 1972年和歌山生まれ。上智大学外国語学部教授。ケンブリッジ大学政治社会学部卒業。グラスゴー大学博士課程修了(Ph.D.)。専門は、ロマン主義文学、および医学史。著書に、『ケアの倫理とエンパワメント』『ケアする惑星』(ともに講談社)、『世界文学をケアで読み解く』(朝日新聞出版)、『ゴシックと身体ーー想像力と解放の英文学』(松柏社)、『文学とアダプテーション――ヨーロッパの文化的変容』『文学とアダプテーション2――ヨーロッパの古典を読む』(ともに共編著、春風社)、『ジェイン・オースティン研究の今』(共著、彩流社)、訳書に『エアスイミング』(シャーロット・ジョーンズ著、幻戯書房)、『肥満男子の身体表象』(共訳、サンダー・L・ギルマン著、法政大学出版局)などがある。
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フランス語圏カリブ海文学小史 : ネグリチュードからクレオール性まで | 中村 隆之
¥880
風響社 2011年 ブックレット〈アジアを学ぼう〉別巻 ソフトカバー 66ページ A5判 - 内容紹介 - 「われわれは自分たちがクレオールであると宣言する」文化の混淆性を積極的に肯定した『クレオール礼賛』(1989)をはじめ、主要な作品を概観。マルティニックなどフランス海外県の現代文学の歩みを紹介。 目次 1 ネグリチュードの誕生-1920年代‐1940年代(前史 『黒人世界評論』『正当防衛』『黒人学生』 ほか) 2 脱植民地化運動の時代-1940年代‐1950年代前半(『プレザンス・アフリケーヌ』 『植民地主義論』と『黒い皮膚・白い仮面』 ほか) 3 文学と独立-1950年代後半‐1960年代(二つの黒人作家芸術家会議 一九五九年一二月事件 ほか) 4 クレオール文学という企図-1970年代‐1980年代(アンティーユ性 クレオール語文学 ほか)
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ビリー・サマーズ 上下 | スティーヴン・キング, 白石 朗(翻訳)
¥5,940
文藝春秋 2024年 上巻:308ページ / 下巻:320ページ 四六判 - 内容紹介 - 作家デビュー50周年に放つ、至高のクライム・ノヴェル 狙いは決して外さない凄腕の殺し屋、ビリー・サマーズ。依頼人たちには、銃撃しか能がないちょっと抜けた男を装っているが、真の顔はエミール・ゾラを愛読する思慮深い人間であり、標的が悪人である殺ししか請け負わない。 そんなビリーが、引退を決意して「最後の仕事」を受けた。収監されているターゲットを狙撃するには、やつが裁判所へ移送される一瞬を待つしかない。狙撃地点となる街に潜伏するための偽装身分は、なんと小説家。街に溶け込むべくご近所づきあいをし、事務所に通って執筆用パソコンに向かううち、ビリーは本当に小説を書き始めてしまう。 だが、この仕事は何かがおかしい……。ビリーは安全策として、依頼人にも知られぬようさらに別の身分を用意し、奇妙な三重生活をはじめた。そしてついに、運命の実行日が訪れる――。
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花と夢 | ツェリン・ヤンキー, 星 泉(翻訳)
¥2,640
春秋社 2024年 アジア文芸ライブラリー 308ページ 四六判 縦195mm 横138mm 厚さ21mm - 内容紹介 - ラサのナイトクラブで働きながら場末のアパートで身を寄せ合って暮らす四人の女性たちの共同生活と、やがて訪れる悲痛な運命・・・・・・。家父長制やミソジニー、搾取、農村の困窮などの犠牲となり、傷を抱えながら生きる女性たちの姿を慈愛に満ちた筆致で描き出す。チベット発、シスターフッドの物語。英国PEN翻訳賞受賞作。 目次 第一章 ドルカル 第二章 ツェリン 第三章 ヤンゾム 第四章 菜の花 第五章 プリムラ 第六章 ハナゴマ 第七章 ツツジ 訳者解説 - 著者プロフィール - ツェリン・ヤンキー (ツェリン ヤンキー) (著/文) 1963年、中国チベット自治区シガツェ生まれ。渡し舟の船頭を営む両親の間に生まれ、語りのうまい祖母に育てられる。14歳で初めて小学校に入学するまでは祖母の手伝いをしながら、民話や民謡、格言、ことわざを仕込まれる。1983年にラサのチベット大学に在学中に『チベット日報』に投稿した小説が掲載されデビューを飾る。大学卒業後は中学教師となり、学生たちとの交流から創作のヒントを得て小説を発表し、ダンチャル文学賞、全国少数民族文学創作駿馬賞を受賞。しばらくのブランクを経て7年がかりで完成させた初めての長編小説『花と夢』は、チベット自治区出身の女性がチベット語で書いた初めての長編小説となった。現在は教師を退職して老親の介護をしながらラサで暮らしている。 星 泉 (ホシ イズミ) (翻訳) 1967年、千葉県生まれ。チベット語研究のかたわら、チベット文学の翻訳、紹介活動を行っている。『チベット文学と映画制作の現在 SERNYA』編集長。主な訳書にラシャムジャ『路上の陽光』(書肆侃侃房)『雪を待つ』(勉誠出版)、ツェワン・イシェ・ペンバ『白い鶴よ、翼を貸しておくれ』(書肆侃侃房)、『チベットのむかしばなし しかばねの物語』(のら書店)、編訳書に『チベット幻想奇譚』(春陽堂書店)などがある。東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所教授。
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南光 | 朱 和之, 中村 加代子(翻訳)
¥2,860
春秋社 2024年 アジア文芸ライブラリー 392ページ 四六判 縦195mm 横138mm 厚さ25mm - 内容紹介 - 日本統治時代の台湾で客家の商家の元に生まれ、内地留学先の法政大学でライカと出会ったことで写真家の道を歩み始めた鄧騰煇(鄧南光、1908-1971)。彼のライカは、東京のモダンガールや、戦争から戦後で大きく変わりゆく台湾の近代を写し続ける。 歴史小説の名手が、実在の写真家が残した写真をもとに卓越した想像力で、日本統治時代や戦後の動乱、台湾写真史の重要人物との交流などを鮮やかに描き出す。本国で羅曼・羅蘭(ロマン・ロラン)百萬小説賞を全会一致で受賞した労作。巻末に南光による写真図版12点を収録。 - 目次 - 序 アルバム一 機械の眼 アルバム二 月光下の山の町 アルバム三 女の顔 アルバム四 電光と神火 アルバム五 整色性の写真家 アルバム六 山へ還る アルバム七 撃墜される瞬間 アルバム八 上海の灯火 アルバム九 写真の言葉 アルバム十 溶かされた画像 アルバム十一 撮影と写真の違い アルバム十二 シャッターの速度 付録 南光が写した時代 あとがき 光の痕跡をたどって 訳者あとがき - 著者プロフィール - 朱 和之 (シュ ワシ) (著/文) 1975年生まれの台北人。現代台湾で注目を集める作家の一人。歴史的な主題から台湾の多様性を描いて社会問題を探求することを得意とする。2020年に『南光』(印刻、2021年)で羅曼・羅蘭(ロマン・ロラン)百萬小説賞を受賞。2016年には「佐久間総督の太魯閣蕃討伐」を描いた『楽土』(聯経、2016年)で全球華文文学星雲賞長編歴史小説賞の大賞を受賞。同賞創設以来、第六回にして初の大賞受賞者となる。2023年にも終戦直後の様々な民族の境遇を描いた『當太陽墜毀在哈因沙山』(印刻、2024年)で同大賞を受賞し、最も栄誉ある文学賞を三度にわたって受賞する快挙を遂げる。2022年にはアイオワ国際創作プログラム(IWP)に招聘される。その他に『風神的玩笑――無郷歌者江文也』(印刻、2020年)、『逐鹿之海──一六六一台湾之戦』(印刻、2017年)など10を超える作品がある。 中村 加代子 (ナカムラ カヨコ) (翻訳) 1980年東京生まれ。ライター、翻訳者。慶應義塾大学大学院社会学研究科修士課程修了。谷中・根津・千駄木界隈の本好きの集まり「不忍ブックストリート」の実行委員として、2006年より「一箱古本市」の運営や「不忍ブックストリートMAP」の編集に携わる。2017年に発足した、台湾の本に関する情報を日本に発信するユニット「太台本屋 tai-tai books」の一員。訳書にハリー・チェン『台湾レトロ氷菓店――あの頃の甘味と人びとをめぐる旅』(グラフィック社、2019年)、陳柔縉『台湾博覧会1935 スタンプコレクション』(東京堂出版、2020年)がある。
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私の猫 | 十文字青
¥2,420
書肆imasu 2024年 ハードカバー 192ページ 四六判 - 内容紹介 - 表題作を含む四篇を収録。 「書肆imasu」レーベル第一弾。 収録作品: 父と猫 19981999 愛はたまらなく恋しい 私の猫 装画・タダジュン 装幀・名久井直子 - 著者プロフィール - 十文字青 (ジュウモンジアオ) (著/文) 作家。北海道生まれ。 北海道大学文学部卒。 北海道在住。
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別れを告げない | ハン・ガン, 斎藤 真理子(翻訳)
¥2,750
白水社 2024年 エクス・リブリス ハードカバー 304ページ 四六判 - 内容紹介 - 作家のキョンハは、虐殺に関する小説を執筆中に、何かを暗示するような悪夢を見るようになる。ドキュメンタリー映画作家だった友人のインソンに相談し、短編映画の制作を約束した。 済州島出身のインソンは10代の頃、毎晩悪夢にうなされる母の姿に憎しみを募らせたが、済州島4・3事件を生き延びた事実を母から聞き、憎しみは消えていった。後にインソンは島を出て働くが、認知症が進む母の介護のため島に戻り、看病の末に看取った。キョンハと映画制作の約束をしたのは葬儀の時だ。それから4年が過ぎても制作は進まず、私生活では家族や職を失い、遺書も書いていたキョンハのもとへ、インソンから「すぐ来て」とメールが届く。病院で激痛に耐えて治療を受けていたインソンはキョンハに、済州島の家に行って鳥を助けてと頼む。大雪の中、辿りついた家に幻のように現れたインソン。キョンハは彼女が4年間ここで何をしていたかを知る。インソンの母が命ある限り追い求めた真実への情熱も…… いま生きる力を取り戻そうとする女性同士が、歴史に埋もれた人々の激烈な記憶と痛みを受け止め、未来へつなぐ再生の物語。フランスのメディシス賞、エミール・ギメ アジア文学賞受賞作。 - 著者プロフィール - ハン・ガン (ハン ガン) (著/文) Han Kang 한강 1970年、韓国・光州生まれ。延世大学国文学科卒業。2005年、三つの中篇小説をまとめた『菜食主義者』で韓国最高峰の文学賞である李箱文学賞を受賞、同作で16年にアジア人初の国際ブッカー賞を受賞。17年、『少年が来る』でイタリアのマラパルテ賞を受賞、23年、『別れを告げない』(本書)でフランスのメディシス賞(外国小説部門)を韓国人として初めて受賞し、24年にフランスのエミール・ギメ・アジア文学賞を受賞した。本書は世界22か国で翻訳刊行が決定している。他の邦訳作品に、『ギリシャ語の時間』『すべての、白いものたちの』『回復する人間』『そっと 静かに』『引き出しに夕方をしまっておいた』がある。 斎藤 真理子 (サイトウ マリコ) (翻訳) 翻訳家。パク・ミンギュ『カステラ』(共訳)で第一回日本翻訳大賞、チョ・ナムジュ他『ヒョンナムオッパへ』で〈韓国文学翻訳院〉翻訳大賞受賞。訳書は他に、ハン・ガン『回復する人間』『すべての白いものたちの』『ギリシャ語の時間』『引き出しに夕方をしまっておいた』(共訳)、パク・ソルメ『もう死んでいる十二人の女たちと』『未来散歩練習』、ペ・スア『遠きにありて、ウルは遅れるだろう』、パク・ミンギュ『ピンポン』、チョ・セヒ『こびとが打ち上げた小さなボール』、ファン・ジョンウン『誰でもない』『年年歳歳』『ディディの傘』、チョン・イヒョン『優しい暴力の時代』、チョン・ミョングァン『鯨』、チョン・セラン『フィフティ・ピープル』『保健室のアン・ウニョン先生』『声をあげます』『シソンから、』、チョ・ナムジュ『82年生まれ、キム・ジヨン』『サハマンション』、李箱『翼 李箱作品集』など。著書『韓国文学の中心にあるもの』、『本の栞にぶら下がる』、『曇る眼鏡を拭きながら』(共著)
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ほら話とほんとうの話、ほんの十ほど[新装版] | アラスター・グレイ, 高橋 和久(翻訳)
¥2,860
白水社 2024年 ハードカバー 218ページ 四六判 - 内容紹介 - 鬼才の魅力を多彩な短篇で 『ラナーク』『哀れなるものたち』で知られるスコットランドの伝説的鬼才の短篇集が、待望の復刊! ファンタジーとリアリズム、笑いと哀しみ、アイロニーとウィットが混淆する饒舌な語りに思わず舌を巻くが、目に飛び込んでくる異彩を放つイラストも、作家自身の手になるもの。アリ・スミスをして「現代のウィリアム・ブレイク」と言わしめたグレイの多彩な魅力が存分に詰め込まれているのが本書なのだ。 学校を牢獄のように感じる〈わたし〉が、外へ出る想像上の〈ドア〉を恩師から授かる「ミスター・ミークル」。窒息するような現実から逃れようとする夢や欲望が、本書では多様なジャンルを横断しながら変奏される。コンピュータが導入された会社内でのちぐはぐぶりを皮肉った「内部メモ」。軟派で洒落者の鼻持ちならないイングランド人の男を揶揄した「あなた」。おしゃべりな歯医者に治療される不安と恐怖が迫る「トレンデレンブルク・ポジション」。なぜ靴下にガムがくっついているのか、その原因を綿密に理論化して可笑しい「時間旅行」。囲い込まれた世界に嫌気がさした男が、夢のような新しい移住先で体験する破滅の寓話「新世界」など──粒ぞろい短篇をほんの十ほど。 - 著者プロフィール - アラスター・グレイ (アラスター グレイ) (著/文) 1934年、スコットランドのグラスゴー生まれ。アントニー・バージェスに「巨大で独創的な小説」と賞賛された長篇第一作『ラナーク 四巻からなる伝記』(81、邦訳は国書刊行会刊)でブッカー賞の有力候補に推されて一躍注目を集め、以後スコットランド文学活況の先鋒に立つ。1992年、『哀れなるものたち』(邦訳は早川書房刊)でホイットブレッド賞、ガーディアン賞を受賞。 1983年に刊行された本短篇集は、画家、劇作家、脚本家としても活躍し、アリ・スミスをして「現代のウィリアム・ブレイク」と言わしめた鬼才の多彩な魅力が存分に詰め込まれている。2019年没。 高橋 和久 (タカハシ カズヒサ) (翻訳) 英文学者。1950年東京都生まれ。京都大学文学部卒業。東京大学名誉教授。著書に『エトリックの羊飼い、或いは、羊飼いのレトリック』(研究社)、『19世紀「英国」小説の展開』(共編著)、『別の地図 英文学的小旅行のために』(以上松柏社)、訳書にジョージ・オーウェル『一九八四年』、アラスター・グレイ『哀れなるものたち』(以上ハヤカワepi文庫)、ジョゼフ・コンラッド『シークレット・エージェント』(光文社古典新訳文庫)、ジェイムズ・ホッグ『義とされた罪人の手記と告白』(白水Uブックス)など。
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ミシンと金魚 | 永井 みみ
¥605
集英社 2024年 集英社文庫 ソフトカバー 176ページ 文庫判 縦152mm 横105mm 厚さ10mm - 内容紹介 - 【第45回すばる文学賞受賞作】 【選考委員絶賛!】 小説の魅力は「かたり」にあると、あらためて感得させられる傑作だ。――奥泉光氏 この物語が世に出る瞬間に立ち会えたことに、心から感謝している。――金原ひとみ氏 ただ素晴らしいものを読ませてもらったとだけ言いたい傑作である。――川上未映子氏 (選評より) 【絶賛の声続々!】 「言葉にならない」が言葉になっていた。掴んだ心を引き伸ばして固結びされたみたい。今もまだ、ずっとほどけない。――尾崎世界観氏(ミュージシャン) いまだに「カケイさん」の余韻が、胸の奥をふわふわと漂っています。生きることの全てが凝縮されている、とてもいい物語でした。――小川糸氏(作家) カケイさんの心の中の饒舌に引き込まれているうちに、小説としてのおもしろさと力強さに頭をはたかれました。読み終わった時には、自分自身が癒されて、私ももっと小説を書きたい、頑張りたい、と強く思いました。――原田ひ香氏(作家) カケイさんの中に亡き祖母を見た。祖母もきっと見ただろう花々に私も出逢えると信じて、これからも生きてゆこう。――町田そのこ氏(作家) 認知症を患うカケイは、「みっちゃん」たちから介護を受けて暮らしてきた。ある時、病院の帰りに「今までの人生をふり返って、しあわせでしたか?」と、みっちゃんの一人から尋ねられ、カケイは来し方を語り始める。 父から殴られ続け、カケイを産んですぐに死んだ母。お女郎だった継母からは毎日毎日薪で殴られた。兄の勧めで所帯を持つも、息子の健一郎が生まれてすぐに亭主は蒸発。カケイと健一郎、亭主の連れ子だったみのるは置き去りに。やがて、生活のために必死にミシンを踏み続けるカケイの腹が、だんだん膨らみだす。 そして、ある夜明け。カケイは便所で女の赤ん坊を産み落とす。その子、みっちゃんと過ごす日々は、しあわせそのものだった。それなのに――。 暴力と愛情、幸福と絶望、諦念と悔悟……絡まりあう記憶の中から語られる、凄絶な「女の一生」。 【著者略歴】 永井みみ ながい・みみ 1965年神奈川生まれ。2021年『ミシンと金魚』で第45回すばる文学賞を受賞しデビュー。同作は三島由紀夫賞、野間文芸新人賞にノミネートされ、「ダ・ヴィンチ編集部が選ぶプラチナ本 OF THE YEAR! 2022」に選出された。その他の著書に『ジョニ黒』がある。
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キンドレッド グラフィックノベル版 | オクテイヴィア・E.バトラー(原著)
¥4,180
フォルムアート社 2023年 ハードカバー 256ページ B5判 縦260mm 横185mm 厚さ20mm - 内容紹介 - 血縁をめぐる歴史が鞭となり、私の身体に新たな傷を刻み、血と涙を流させる―― 人種差別/奴隷制という負の歴史の否定が、己の実存を脅かすというパラドックス…… 19世紀初頭のアメリカ南部にタイム・スリップした主人公・デイナは、そこでの混沌と絶望に何を見いだし、何に引き裂かれたのか。 オクテイヴィア・E・バトラーが残した、人種とアイデンティティをめぐる“グリム・ファンタジー”の傑作が、グラフィック・ノベルにて登場。 2017年 ブラム・ストーカー賞受賞 2018年 アイズナー賞 最優秀翻案作品賞受賞 1976年のカリフォルニア。若い黒人女性デイナは、ある日突然謎の声に導かれ、南北戦争前のアメリカ南部へとタイムスリップをする。 そこでデイナは、メリーランドの農園近くの川で溺れている白人の少年を救出する。少年ルーファスはウェイリン・プランテーションの跡取り息子であった。 命の恩人であるはずのデイナは、ルーファスの父親が経営するプランテーションで奴隷として生きることになる――。 自身の命が危険に晒されると現代に、ルーファスの命が脅かされると過去へタイムスリップするデイナ。タイムスリップを繰り返すうちに、デイナは自分の血の中に流れている秘密に直面することになる。このふたりを結ぶ絆の意味とは――。 SF、ファンタジー分野における卓越したストーリーテラーとして知られ、フェミニズムやアフロフューチャリズムの文脈でも近年再評価の機運が高まる、アフリカ系アメリカ人作家オクテイヴィア・E・バトラー。 2006年に59歳でこの世を去ったバトラーだが、サラ・ピンスカーやN・K・ジェミシン、ンネディ・オコラフォーなど現代を代表するSF作家に大きな影響を与えている。 世界50万部発行のベストセラー小説『キンドレッド』が、著名な学者でありコミック・アーティストのダミアン・ダフィーとジョン・ジェニングズによって待望のグラフィック・ノベル化。バトラーの代表作として世界的に知られる本作は、奴隷制度がもたらした暴力と人間性の喪失を、SF的な仕掛けを用いたロマンス、歴史小説として巧みに描いている。 人種、性、権力、そして人間であることの意味をめぐる諸問題を探求するバトラーの視点は、刊行から40年以上経った今なお新たな読者を引きつけ続けている。 - 著者プロフィール - オクテイヴィア・E.バトラー (原著) 1947年生まれ。アメリカのSF作家。「血を分けた子ども」でヒューゴー賞、ネビュラ賞、ローカス賞を受賞。「話す音」でヒューゴー賞を受賞。95年にSF作家として初めてマッカーサー賞(天才賞)を、2000年にPEN生涯功労賞を受賞。ベストセラーとなった長編『キンドレッド』、短篇集『血を分けた子ども』のほか、シリーズ『Patternist』『Xenogenesis』、『Parable』がある。2006年に59歳で没後にも伝説的作家として世界的な読者をもつ。
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猫と悪魔 絵本で広がる世界文学 | ジェイムズ・ジョイス, 米増 由香(イラスト), のどまる堂(編集 | 翻訳 | 解説)
¥1,600
のどまる堂 2024年 64ページ A5判 - 内容紹介 - ジェイムズ・ジョイスが4歳の孫に宛てた手紙を元に絵本化しました。日本では38 年ぶりに出版されます。 本書は二部構成となっており、第一部はイラストレーターの米増由香の挿絵で物語がつづられ、第二部は原文・訳文から読み解くジェイムズ・ジョイスの人となりや作風を解説していきます。 <あらすじ> フランスのボージョンシーという街には、街を二分するとても広い川が流れていて、街の人々は川を渡るのに大変苦労していました。橋をかけたいのですが、街には橋をかけるお金がありません。そんなとき悪魔が市長のもとへやってきて、りっぱな橋をかけるかわりに、最初に橋をわたる人のたましいをほしいと提案します。市長は承諾しますが…。 絵本で広がる世界文学をテーマに、世界文学の作家の短編を絵本化し、原文と訳文から見える作風や人となりを解説します。 - 目次 - 第一部 猫と悪魔 第二部 オーディオコメンタリー的解説 - 著者プロフィール - ジェイムズ・ジョイス (ジェイムズ ジョイス) (著/文) 【ジェイムズ・ジョイス】 20 世紀を代表するモダニズム文学作家。代表作に『ダブリナーズ』『ユリシーズ』『フィネガンズ・ウェイク』などがある 米増 由香 (ヨネマス ユカ) (イラスト) 【米増 由香】 イラストレーター、絵本作家。 書籍装画、挿絵など幅広く活躍。 『ぼくのポーポがこいをした』 (村田沙耶香 作 岩崎書店)挿絵など
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宇治拾遺物語 | 町田 康
¥880
SOLD OUT
河出書房新社 2024年 河出文庫古典新訳コレクション ソフトカバー 288ページ 文庫判 縦149mm 横105mm 厚さ11mm - 内容紹介 - 「こぶとりじいさん」として知られる「奇怪な鬼に瘤を除去される」など、現在に通じる心の動きを見事に捉えた名訳33篇を収録。 - 著者プロフィール - 町田 康 (マチダ コウ) (翻訳) 1962年大阪生まれ。『くっすん大黒』でドゥマゴ賞、「きれぎれ」で芥川賞、『告白』で谷崎潤一郎賞、『宿屋めぐり』で野間文芸賞など受賞多数。他の著書に『ホサナ』『しらふで生きる』『口訳 古事記』等。
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ザ・ロード アメリカ放浪記 | ジャック・ロンドン, 川本 三郎(翻訳)
¥968
筑摩書房 2024年 ちくま文庫 ソフトカバー 288ページ 文庫判 - 内容紹介 - 無賃乗車の技術、刑務所でのサバイバル、貧窮ホーボー生活…「短篇の名手」J・ロンドンが10代の頃のアメリカ大陸放浪を語る隠れた名作。 大陸横断列車にタダ乗り、刑務所でのサバイバル、極貧ホーボー生活、 ホラ話の技術、19世紀末アメリカの光景、さまざまな人々との出会い。 ジャック・ロンドン、面白すぎる冒険実話。 『オン・ザ・ロード』ジャック・ケルアックも憧れたジャック・ロンドン。 その原点は、10代のアメリカ大陸放浪にあった! 【内容紹介】 1892年アメリカ、16歳のジャック・ロンドンは初めて放浪の旅に出た。列車にタダ乗りして大陸を巡る旅は、苦しいながらも自由で、信じられない出来事の連続だった。無賃乗車や騙りの技術、刑務所でのサバイバル、警察との追跡劇、忘れがたいホーボー(放浪者)の仲間たち……『野性の呼び声』で知られる作家が、若き日の冒険を語る。生気に満ちた文体と鋭い視点が光る、アメリカ文学の隠れた名作。 「私が〝放浪の旅〟に出たのは、そうせざるを得なかったからであり、ジーンズに汽車 賃を持っていなかったからであり、そして、〝同じ仕事〟を一生続けるようには人間が 出来ていなかったからである。──まあ、旅に出ていたほうが楽だったからだ。」(本文より) 装画 カチナツミ カバーデザイン 大倉真一郎 目次 1 貨車のすきまに 2 食卓の幸運 3 鞭打ちの光景 4 刑務所の生活 5 作業所の囚人たち 6 最高の放浪者 7 ロードキッドの社会学 8 二千人の放浪者の行進 9 デカの追跡 訳者解説 川本三郎 写真資料 - 著者プロフィール - ジャック・ロンドン (ロンドン ジャック) (本文) 1876年、サンフランシスコ生まれ。1916年没。工場労働者、船員、ホーボーなどを経て、1903年に『野性の呼び声』で一躍人気作家に。「短篇の名手」として知られ、小説やルポルタージュなど多くの作品を残した。邦訳に『白い牙』『どん底の人びと』『マーティン・イーデン』『火を熾す』『犬物語』などがある。 川本 三郎 (カワモト サブロウ) (翻訳) 1944年、東京生まれ。新聞社勤務を経て、評論・翻訳活動に入る。訳書にカポーティ『夜の樹』『叶えられた祈り』、近著に『映画の木洩れ日』『ひとり遊びぞ我はまされる』など。
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塔のない街 | 大野 露井
¥2,420
河出書房新社 2024年 ハードカバー 192ページ 四六変型判 縦198mm 横139mm 厚さ19mm - 内容紹介 - 「窓通信」「狂言・切り裂きジャック」「舌学者、舌望に悶舌す」……ロンドンという「劇場」を舞台に気鋭の翻訳家が贈る、デビュー小説にして空前のモラトリアム(!?)文学、ついに刊行! 【推薦文】 野崎歓氏(フランス文学者)、絶賛! 華麗にして可憐、瑞々しく花開いた作品群は日本文学の枠を軽々と越えてゆく。 この作者、ただものではない!
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ブルーノの問題 | アレクサンダル・ヘモン, 柴田元幸(編集 | 翻訳), 秋草俊一郎(編集 | 翻訳)
¥2,970
書肆侃侃房 2024年 ハードカバー 288ページ 四六判 - 内容紹介 - 現代アメリカ文学を代表する作家のひとり、アレクサンダル・ヘモンの最初期短編集 故郷喪失者は言語の中でのみ生きることができる たとえどこにいようが故郷には決していないのだから A・ヘモンによる『島』は、彼が英話で書いたもっとも初期の作品のひとつである。ヘモ ン氏はボスニア人であり、一九九二年にアメリカを旅行中、ボスニアでの戦争により帰国不可能となってアメリカに移住した。『島』 を書いたのは一九九五年の春、もはや母語で小説を書くこともできず英語でもまだ書けなかった三年間を耐えた末のことだった。スチュアート・ダイベック(『プラウシェラーズ』 1998年春号) - 目次 - 島 アルフォンス・カウダースの生涯と作品 ゾルゲ諜報団 アコーディオン 心地よい言葉のやりとり コイン ブラインド・ヨゼフ・プロネク&死せる魂たち 人生の模倣 訳者あとがき - 著者プロフィール - アレクサンダル・ヘモン (アレクサンダル ヘモン) (著/文) 1964年、旧ユーゴスラヴィアの構成国だったボスニア・ヘルツェゴビナ社会主義共和国の首都サラエヴォで生まれる。大学卒業後、メディア関係の仕事を経て、1992年に文化交流プログラムによって渡米。滞在中にサラエヴォがセルビア人勢力によって包囲されたことで帰国不能になり、そのままアメリカに留まる。母語ではない英語で作品を発表するようになり2002年に発表した長編『ノーホエア・マン』で高く評価される。ほかの代表作に『ラザルス計画』(未訳、2008年)や『世界とそれがかかえるすべて』(未訳、2023年)などがある。現在はプリンストン大学でクリエイティブ・ライティングを教えるほか、『私の人生の本』のようなエッセイ、音楽、映画・ドラマ脚本といった分野でも活動している。映画『マトリックス レザレクションズ』ではラナ・ウォシャウスキー、デイヴィッド・ミッチェルと脚本の共同執筆も務めた。 柴田元幸 (シバタ モトユキ) (編集 | 翻訳) 1954年生まれ。東京大学名誉教授、翻訳家。ポール・オースター、スティーヴン・ミルハウザー、レベッカ・ブラウン、スチュアート・ダイベックなどアメリカ現代作家を中心に翻訳多数。著書に『アメリカン・ナルシス』、訳書にジョナサン・スウィフト『ガリバー旅行記』、マーク・トウェイン『ハックルベリー・フィンの冒けん』、エリック・マコーマック『雲』など。講談社エッセイ賞、サントリー学芸賞、日本翻訳文化賞、早稲田大学坪内逍遙大賞を受賞。文芸誌『MONKEY』日本語版責任編集、英語版編集。 秋草俊一郎 (アキクサ シュンイチロウ) (編集 | 翻訳) 1979年生まれ。日本大学准教授。専門は比較文学・翻訳研究など。著書に『アメリカのナボコフ―塗りかえられた自画像』、『「世界文学」はつくられる 1827-2020』、訳書にドミトリイ・バーキン『出身国』、ウラジーミル・ナボコフ『ナボコフの塊 エッセイ集1921-1975』、アレクサンダル・ヘモン『私の人生の本』、ホイト・ロング『数の値打ち―グローバル情報化時代に日本文学を読む』(共訳)など。
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サメと救世主 | カワイ・ストロング・ウォッシュバーン, 日野原慶(編集 | 翻訳)
¥2,640
書肆侃侃房 2024年 ハードカバー 424ページ 四六判 - 内容紹介 - サメに救われた少年には奇跡の力が宿りはじめる。これは真実か、ただのイカサマか? ハワイで生まれ育った注目の作家によるデビュー長編! はじまりは1995年。ハワイ島に暮らすフローレス家は、「豊かな」生活を求めて、オアフ島を目指す。そのさなか、息子のナイノアが海に落ち、サメによって助けだされる。サメに救われた少年には、奇跡の力が宿りはじめる。これは真実か、あるいはただのイカサマか? こうして家族の未来は大きなうねりに巻きこまれる。時を2000年以後に移して、描きだされるのは、楽園ではないハワイ。それは現代の豊かさをめぐるアメリカの矛盾、世界の矛盾を映しだす場だ。ほんとうの「豊かさ」とは何か━━。 ハワイとアメリカ本土(メインランド)を舞台に、ある一家の波乱にみちた運命がつづられる。バラク・オバマのベストブックリスト(2020年版)にも選ばれた、ハワイで生まれ育った作家による渾身のデビュー長編。 明かされる真実へと、ぐいぐい引きこまれろ。ウォッシュバーンはとてつもなく優れた新時代の書き手だ。この長大な家族の物語は、サメの牙のようにするどい。ページははじけて火花を散らす、そして、君をすっかり変えてしまう。 ━━━━━トミー・オレンジ(『ゼアゼア』) 古い神話と新たな現実がぶつかり、愛と悲しみが手をつなぎ、信仰と魔術がぎちぎちとこすれあい、喜劇がくるりと悲劇に変われば、まったく新しいなにかが生まれる。そのすべてがとめどない感傷にのって語られる、じりじり焦げるほどに。 ━━━━━マーロン・ジェイムズ(『七つの殺人に関する簡潔な記録』) 「海、自然、果物、楽園━━ハワイときいて、多くの日本人がとても良いイメージを抱くことでしょう。楽園としてのハワイ。それを期待してこの小説を読むと、あれ? と思うかもしれません。わたしは思いました。あれ? この小説に、楽園はない。主人公であるハワイ系フィリピン人のフローレス一家が生きる現代のハワイは、楽園とはかけはなれた苦しい生活が強いられる場所です。サバイバルという言葉がふさわしいほどです」(訳者あとがきより) - 著者プロフィール - カワイ・ストロング・ウォッシュバーン (著/文) ハワイ島のハマクアコーストに生まれ育つ。2020年出版の『サメと救世主』により、PEN/Hemingway Award for Debut NovelとMinnesota Book Awardを2021年に受賞。現在は、ミネアポリス在住。 日野原慶 (ヒノハラケイ) (編集 | 翻訳) 大東文化大学にてアメリカ文学を教えている。共訳書にモナ・アワド『ファットガールをめぐる13 の物語』、共著に『現代アメリカ文学ポップコーン大盛』(ともに書肆侃侃房)。
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精神の生活 | クリスティン・スモールウッド, 佐藤直子(翻訳)
¥2,310
書肆侃侃房 2023 ハードカバー 280ページ 四六判 - 内容紹介 - この痛みを何と呼んだらいいのか? 「流産」というテーマを克明かつ赤裸々に描いた傑作小説。 不安定な地位にある大学非常勤講師のドロシーは、図書館のトイレで予期せぬ出血を経験する。流産したことを親友にも母親にも打ち明けることはできない。大学で講義し、セラピーに通い、産婦人科を訪れるが、どこにいても何をしていても世界から認めてもらえない気がしてしまう。3月の終わりからの1ヶ月半、予測不能なキャリアのなかで、自分の身体に起きた「流産」という不可解な出来事と知性によってなんとか折り合いをつけていく。 「Time」年間トップテン・フィクション(2021年)選出! - 目次 - 三月の終わり その翌日 五日後 数週間後 翌週の土曜の夜 十日後 * 日本の読者への手紙 訳者解説 - 著者プロフィール - クリスティン・スモールウッド (クリスティン・スモールウッド) (著/文) 2014年にコロンビア大学で英文学の博士号を取得したのち、これまで5本の短編小説をThe Paris Review、n+1、Vice などの文芸誌で発表している。また数多くの書評やエッセイをThe New Yorker、Bookforum、The New York Times Magazine、Harper’s Magazine 等に寄稿する批評家でもある。現在、ブルックリンに夫と二人の息子と住んでいる。 佐藤直子 (サトウナオコ) (翻訳) 東京都内の大学で非常勤講師として英語を教えている。現代アメリカ小説における「偶然性」のテーマに関心がある。
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死んでから俺にはいろんなことがあった | リカルド・アドルフォ, 木下眞穂(翻訳)
¥2,310
書肆侃侃房 2024年 256ページ 四六判 - 内容紹介 - 俺はただ家に帰りたいだけなのに、それがそんなにおかしいか? 郵便配達をしていた俺は故郷の「くに」から逃げてきた。妻のカルラと幼い息子とともに「島」で不法滞在している。買い物をした帰りに乗っていた地下鉄が故障で止まってしまい、右も左もわからない場所で降ろされてしまった一家。なんとか家にたどり着こうとあれこれ画策するが、やることなすことすべてが裏目に出て━━。周囲から存在を認められず、無視され続ける移民の親子は、果たしてどうなるのか? 著者プロフィール リカルド・アドルフォ (著/文) 1974年にアンゴラに生まれるが、アンゴラの独立により幼少時にポルトガルに帰国。2003年に短編集『すべてのチョリソーは焼くためにある』でデビュー。初長編『ミゼー』はポルトガルでベストセラーとなる。『東京は地球より遠く』(2015年)では日本で働く外国人のサラリーマンの目から見たおかしな日本の日常を描いた。同書からは2019年刊の『ポルトガル短篇小説傑作選 よみがえるルーススの声』(現代企画室)に3篇が収録されている。ドラマや映画の脚本の執筆や絵本も発表するほか、広告界でも国際的に活躍している。2012年より東京に在住。 木下眞穂 (キノシタマホ) (翻訳) 上智大学ポルトガル語学科卒。ポルトガル語翻訳家。訳書に『ブリーダ』(パウロ・コエーリョ)、『忘却についての一般論』(ジョゼ・エドゥアルド・アグアルーザ)、『エルサレム』(ゴンサロ・M・タヴァレス)、『象の旅』(ジョゼ・サラマーゴ)など。『ガルヴェイアスの犬』(ジョゼ・ルイス・ペイショット)で2019年に第5回日本翻訳大賞を受賞。
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百年と一日 | 柴崎 友香
¥792
筑摩書房 2024年 ちくま文庫 ソフトカバー 240ページ 文庫判 - 内容紹介 - 映画館、喫茶店、地下街の噴水広場、島、空港……様々な場所の人間と時間の不思議を描き話題となった新感覚の物語集。一篇を増補。解説 深緑野分 - 著者プロフィール - 柴崎 友香 (シバサキ トモカ) (本文) 1973年大阪生まれ。2000年に第一作『きょうのできごと』を上梓(2004年に映画化)。2007年に『その街の今は』で藝術選奨文部科学大臣新人賞、織田作之助賞大賞、咲くやこの花賞、2010年に『寝ても覚めても』で野間文芸新人賞(2018年に映画化)、2014年『春の庭』で芥川賞を受賞。他の小説作品に『続きと始まり』『待ち遠しい』『千の扉』『パノララ』『わたしがいなかった街で』『ビリジアン』『虹色と幸運』、エッセイに『大阪』(岸政彦との共著)『よう知らんけど日記』など著書多数。