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女の子たち風船爆弾をつくる | 小林 エリカ
¥2,750
文藝春秋 2024年 ソフトカバー 400ページ 四六判 - 内容紹介 - 第78回毎日出版文化賞(文学・芸術部門)受賞作。 日露戦争30周年に日本が沸いた春、その女の子たちは小学校に上がった。できたばかりの東京宝塚劇場の、華やかな少女歌劇団の公演に、彼女たちは夢中になった。彼女たちはウールのフリル付きの大きすぎるワンピースを着る、市電の走る大通りをスキップでわたる、家族でクリスマスのお祝いをする。しかし、少しずつ、でも確実に聞こえ始めたのは戦争の足音。冬のある日、軍服に軍刀と銃を持った兵隊が学校にやってきて、反乱軍が街を占拠したことを告げる。やがて、戦争が始まり、彼女たちの生活は少しずつ変わっていく。来るはずのオリンピックは来ず、憧れていた制服は国民服に取ってかわられ、夏休みには勤労奉仕をすることになった。それでも毎年、春は来て、彼女たちはひとつ大人になる。 ある時、彼女たちは東京宝塚劇場に集められる。いや、ここはもはや劇場ではない、中外火工品株式会社日比谷第一工場だ。彼女たちは今日からここで、「ふ号兵器」、すなわち風船爆弾の製造に従事する……。 膨大な記録や取材から掬い上げた無数の「彼女たちの声」を、ポエティックな長篇に織り上げた意欲作。
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日本動物民俗誌 | 中村 禎里, 小松 和彦(解説)
¥1,265
講談社 2024年 講談社学術文庫 ソフトカバー 264ページ 文庫判 - 内容紹介 - 山海の神か、田の神か。贄か、神使か、妖怪か――。 サル・キツネ・オオカミ・クマからネコ・トリ・ムシ・サカナまで、日本人は動物たちをいかに認識し、どのような関係を取り結んできたのか。膨大な民俗資料を渉猟し、山/海、家畜/野生、大きさ、人との類似などの基準によってその歴史と構造を明らかに! 25種の動物ごとの章立てで、「事典」的なニーズにも対応。 (解説:小松和彦) 【本書に登場する主な動物たち】 [キツネ]気高き神の使者は、やがて商業神、憑きものへ [イヌ]化け物の正体を見破る特異な辟邪力 [ネズミ]経典荒らしが転じ、仏法の守護者に? [オオカミ]なぜオオカミだけ? 「産見舞い」に赤飯を [ネコ]擬人化の果てに、愛する人の形代に [サカナ]山神はなぜ毒棘持ちのオコゼを愛したのか [ウサギ]ウサギvs.サルvs.カエル「動物餅争い」の結末は? [カニ]甲に浮かぶ悲運の英雄たちの無念 …… - 著者プロフィール - 中村 禎里 (ナカムラ テイリ) (著/文) 1932-2014年。東京生まれ。立正大学名誉教授。専攻は科学史。著書に『日本のルイセンコ論争』『生物学を創った人びと』『危機に立つ科学者』『血液循環の発見』『日本人の動物観』『狸とその世界』『河童の日本史』『狐の日本史』などがある。
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めんの本 | 有元 葉子
¥1,980
文化出版局 2024年 ソフトカバー 96ページ B5変型判 縦257mm 横190mm 厚さ9mm - 内容紹介 - 有元家の大晦日の定番・大かき揚げのそば、まるであわびのしいたけめん、春のふわふわ卵とじうどん、たれが決め手の冷やし中華、ベトナムで出会ったビーフンなどなど、ありそうでなかった有元さんのめん料理の集大成。一年中役立つこと間違いなしの1冊です。 - 著者プロフィール - 有元 葉子 (アリモトヨウコ) (著/文) 料理研究家。素材の持ち味を大切にした、シンプルな家庭料理を提案。まっとうな材料を使って、家で作って食べることは世の中がよくなるための第一歩、という考えを持つ。『有元家のお弁当』『料理のあいうえお』(文化出版局)など著書は100冊を優に超える。
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犬がいるから | 村井 理子
¥990
筑摩書房 2024年 ちくま文庫 ソフトカバー 192ページ 文庫判 - 内容紹介 - 生後三か月で琵琶湖のほとりにある村井さんちにやってきたのは、とにかくやんちゃで甘えん坊な黒ラブのハリー。双子の息子たちとじゃれあいながらみるみる巨大化し、走るすがたは恵方巻に似ている。「みっしりと生えた黒い毛。長くて固いヒゲ。大きな鼻、口、そして耳。柔らかくて、ふわふわで、まるで巨大なぬいぐるみだ。こんなに穏やかでやさしい生き物がわが家にいて、私の横に寝ているなんて、夢のようだ」。かけがえのない日々をとじこめたイケワンまみれのエッセイ集。 「私の心を覆い尽くしていた黒くて濃い霧のような不安感は、ハリーが、あの大きな体の中に、すべてあっという間に吸い込んでくれた。静かな部屋でハリーと一緒に座っていると、自分の心の中が晴れていくのを感じることができる。今、私の心の中に広がる爽やかな青空は、ハリーがもたらしてくれたものだ。私が手を伸ばすと、ハリーは前脚をその手にそっと重ねてくれる。私が呼ぶと、必ず側に来てくれる。」(本文より) 装画 おざわさよこ カバーデザイン 藤井遥 目次 1 犬がいるから 2 もう一匹の黒ラブ 3 私のガードワン 4 犬はいつも私たちと 5 二日間の別れ 6 ハリーの事件簿① マウスピース失踪事件 7 大型犬にご用心 8 ハリーの事件簿② 夏祭り乱入! 9 秘密兵器投入! 10 天使が浜に舞い降りた 11 はじめての学校 12 散歩の時間 13 双子といっしょに 14 空気読もうよ 15 ハリーの世界 16 入院 17 トレーニング・デイズ 18 もどってきたハリー 19 グッバイ金〇 20 ゆったりした日々 21 バニラをめぐる戦い 22 犬ぞりがしたかった 23 そろそろお年頃 24 自己表現? 25 ただそこにいるだけで ハリーのいる日々 あとがきに代えて ハリーといた日々 文庫版あとがき - 著者プロフィール - 村井 理子 (ムライ リコ) (本文) 翻訳家、エッセイスト。1970年、静岡県生まれ。訳書に『ヘンテコピープルUSA』『ゼロからトースターを作ってみた結果』『「ダメ女」たちの人生を変えた奇跡の料理教室』『エデュケーション――大学は私の人生を変えた』『射精責任』、著書に『犬ニモマケズ』『ハリー、大きな幸せ』『兄の終い』『本を読んだら散歩に行こう』『全員悪人』『家族』『村井さん家の生活』『ある翻訳家の取り憑かれた日常』『義父母の介護』『訳して、書いて、楽しんで エヴリシング・ワークス・アウト』など多数。
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遅く起きた日曜日にいつもの自分じゃないほうを選ぶ | スズキナオ
¥1,870
スタンド・ブックス 2024年 ソフトカバー 308ページ 四六変形判 縦188mm 横118mm 厚さ20mm - 内容紹介 - これがスズキナオ流「生活史」。 遠い場所への旅や、友達とのせわしない飲み会がまるで夢のよう。出歩けるのは近所ばかりだけど、ひとり海に行き、焚き火を見つめ、オンラインで友達とゆっくり話す。それでも元気でいれば、あと何回かぐらいは今日みたいな素晴らしい日がめぐってくるだろう。話題作『深夜高速バスに100回ぐらい乗ってわかったこと』待望の続編。 - 目次 - まえがき 第1章 元気でいれば、もう数回ぐらい今日みたいな素晴らしい日がめぐってくるだろう――近所 海を見に行くだけの午後 気軽に焚き火を楽しんでみる 友達の生い立ちから今までについてじっくり聞く 行ったことのない近所の喫茶店でコーヒーを飲む 近所の食堂で静かに昼ごはんを食べる 近所の中華料理店で贅沢してみる いつもの自分じゃないほうを選ぶ さっきまでいた場所を高いところから眺めてみる 憧れの“寿司折”を求めて散歩する 第2章 電車に乗った途端、さっきまで洋上にいたことがまるで嘘みたいに思える――旅 行くことができない山形に行った気分を味わう 山で汲んできた美味しい水で焼酎を割る 高尾山の山頂辺りで気楽にハシゴする 神戸・高取山は山茶屋の天国だった 「ちょっとそこまで」の気分で海を渡る せっかくUSJに行ったのに中に入れなかった人のために モリで突いて捕った魚をイカダの上で食べる「たきや漁」が夢のよう 熊本のセルフビルド温泉「湯の屋台村」は料理もうまいし温泉水もうまい 一軒の民宿を営むご夫婦だけが暮らす島――三重県志摩市横山へ 第3章 自分がいなかった場所のこと、自分がいなかった時間のことを、どうやったら今より身近に感じられるようになるんだろうか――調査 優しい味ってどんな味? ガチャガチャマシーンからつまみが出てくる飲み会を開催してみた 家の中のお気に入りポイント「俺んち絶景」を見せ合ってみる 私たちの7月20日――なんでもない日の夕飯の記録 4章 誰かが私に何かを話して聞かせてくれたことのありがたさと、私がそれをどれだけ聞こうとしてもひとりの人の内面には遠く及ばないという寂しさ――人 床に砂! 100年前の校舎で食べるジンギスカンの源流店 思わず通り過ぎてしまいそうな店ふくや串かつ店で1本70円の串かつを食べる 本当に美味しいホッピーを大阪で飲む 「家みたいな店」の店主にたっぷりと話を聞いた 90歳、いや89歳の字書き職人・松井頼男さんと最後に会ったときのこと あとがき - 著者プロフィール - スズキナオ (スズキナオ) (著) 1979年東京生まれ、大阪在住のフリーライター。WEBサイト『デイリーポータルZ』、『集英社新書プラス』、月刊誌『小説新潮』などを中心に執筆中。著書に『深夜高速バスに100回ぐらい乗ってわかったこと』(スタンド・ブックス)、『酒ともやしと横になる私』(シカク出版)、『関西酒場のろのろ日記』(ele-king books)、パリッコとの共著に『酒の穴』(シカク出版)、『椅子さえあればどこでも酒場 チェアリング入門』(ele-king books)、『“よむ”お酒』(イースト・プレス)、『のみタイム 1杯目 家飲みを楽しむ100のアイデア』(スタンド・ブックス)がある。
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家から5分の旅館に泊まる | スズキナオ
¥2,090
太田出版 2024年 ソフトカバー 288ページ 四六判 - 内容紹介 - 行き先は何も遠い地に限らない。近所の旅館やビジネスホテルにも、知らない世界が広がっている。 執着を解き放ち、自分の輪郭を失くしながら歩く知らない町。人に出会い、話を聞く。言葉に出会い、考える。それでもこの世界をもう少し見てみたいと思う小さな旅の記録。 話題作『深夜高速バスに100回ぐらい乗ってわかったこと』でデビューし、今「最も注目すべき」書き手であるスズキナオ、初の旅エッセイ集。前向きな言葉、大きな声に疲れているすべての人へ。 今の疲れ果てた自分でも読めるような、むしろ、こんなときだから読みたくなるような本はないものだろうか……書棚をもっとよく探せば見つかったのだろうけど、そのときは体力もなく、まばゆく見える本ばかりが並ぶ書店をよろよろと出ての帰り道、暗くて静かな旅行記を書こう、と心に決めたのだった。大好きな『つげ義春日記』の、あの雰囲気が念頭にあった。(中略)旅先で出会う何かに心が癒されるとか、元気になるとか、そんな自分勝手なことを期待しているわけではなく、知らない土地を歩くことで、そのあいだだけは、自分自身のことを考えずに済むのかもしれない。ただ、見ているだけ、聞いているだけ、歩いているだけの存在になれるような気がするのだ。そしてその行き先は何も遠い地に限らない。近所の旅館やビジネスホテルにも、知らない世界が広がっている。(「まえがき」より) - 著者プロフィール - スズキナオ (スズキナオ) (著/文) 1979年東京生まれ、大阪在住のフリーライター。WEBサイト『デイリーポータルZ』を中心に執筆中。著書に『深夜高速バスに100回ぐらい乗ってわかったこと』、『遅く起きた日曜日にいつもの自分じゃないほうを選ぶ』、『思い出せない思い出たちが僕らを家族にしてくれる』、『「それから」の大阪』など。パリッコとの共著に『ご自由にお持ちくださいを見つけるまで家に帰れない一日』、『椅子さえあればどこでも酒場 チェアリング入門』、『“よむ”お酒』、『酒の穴』などがある。
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ほんとうのカフカ | 明星 聖子
¥2,255
講談社 2024年 講談社選書メチエ ソフトカバー 288ページ 四六判 - 内容紹介 - ザムザが「変身」したのは「虫」なのか? 『城』の冒頭でKが到着したのは「村」なのか? 『審判』という表題は『訴訟』とすべきか? カフカの作品にはいくつもの日本語訳が存在し、多くの人に親しまれてきた。だが、「虫」と訳されてきた『変身』を見ても、「虫けら」と訳したもの、原語のまま「ウンゲツィーファー」と表記しているものが登場するなど、一筋縄ではいかない。しかも、1915年に発表された『変身』は作家が生前に公表した数少ない作品の一つで、むしろ例外に該当する。代表作とされる『城』や『審判』は死後出版されたものだが、作家は確定稿を残さなかったため、ほんとうの構成も、ほんとうの順序も、ほんとうの結末も推測するしかないのが実態である。 没後100年を迎えた作家をめぐるドイツ語原文の編集事情を紹介しつつ、カフカのテクストに含まれる錯綜した問題を分かりやすく伝え、日本語訳の問題を検証する。あなたは、まだ「ほんとうのカフカ」を知らない! [本書の内容] 序 章 ほんとうの変身 「虫」ではなく「ウンゲツィーファー」?/「ウンゲツィーファー」ではなく「虫けら」?/『田舎の婚礼準備』と『変身』/“insect” ではなく “vermin”?/『メタモルフォーシス』ではなく『トランスフォーメーション』? 第一章 ほんとうの到着 「K」は村に着いたのか/書いたままのテクスト?/等価ではない翻訳/誤訳だけではない問題/手稿をめぐる誤情報/「私」の到着/うさんくさい男たち/「私」は測量技師なのか/不審な「私」/もうひとつの到着/少年か、青年か/悪魔のような息子/愛のしるし/仕掛けられた罠/ほんとうの到着 第二章 ほんとうの編集 「私」はいつ「K」になったか/電話はどこにかけたのか/出まかせの肩書き/アイデンティティの正体/「章」とは何か/矛盾する編集方針/定められた〈冒頭〉/新しい「始まり」と「終わり」/〈本〉ではなく〈函〉/批判版vs.写真版/完結した章と未完結の章/ひとつの〈いま〉と複数の〈いま〉/〈正しさ〉をめぐるジレンマ/「夢」は含まれるか 第三章 ほんとうの夢 「史的批判版」という名の写真版/編集の問題と翻訳の問題/ほんとうの「史的批判版」/編集文献学の必要性/ほんとうの底本/「オリジナル」概念の難しさ/もっとも新しい復刻本?/アカデミーへ「提出する」?/ほんとうの外見/書いたものを観察する/『審判』か『訴訟』か/ヴァリアントの提示/「幹」はあるのか?/「私」が現れて消えるとき/ほんとうの結末/白水社版の意義/丘の上の小さな家/ほんとうの夢 第四章 ほんとうの手紙 タイプライターで書かれた手紙/批判版での手紙の並び/ブロート版では読めない手紙/妹の結婚/ほんとうの手紙/フェリスか、フェリーツェか - 著者プロフィール - 明星 聖子 (ミョウジョウ キヨコ) (著/文) 東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了。博士(文学)。埼玉大学教授を経て、現在、成城大学文芸学部教授。オックスフォード大学ジーザスカレッジ客員シニアリサーチフェロー(2024-25年)。専門は、近現代ドイツ文学。 主な著書に、『新しいカフカ』(慶應義塾大学出版会、2002年。日本独文学会賞)、『カフカらしくないカフカ』(慶應義塾大学出版会、2014年)ほか。 主な編著に、『テクストとは何か』(共編、慶應義塾大学出版会、2015年)、『フェイク・スペクトラム』(共編、勉誠出版、2022年)ほか。 主な訳書に、リッチー・ロバートソン『カフカ』(岩波書店、2008年)、ピーター・シリングスバーク『グーテンベルクからグーグルへ』(共訳、慶應義塾大学出版会、2009年)、ルー・バーナード+キャサリン・オブライエン・オキーフ+ジョン・アンスワース編『人文学と電子編集』(共訳、慶應義塾大学出版会、2011年)ほか。
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ムントゥリャサ通りで〈改装版〉 | M.エリアーデ(著), 直野 敦(訳)
¥2,750
法政大学出版局 2021年 ハードカバー 176ページ 四六判 - 内容紹介 - 第二次世界大戦後のルーマニアの政情を背景に,現実世界と神話的世界の交錯のうちにカフカ的状況がかもし出される。宗教学者・文学者エリアーデの代表的幻想小説。 - 著者プロフィール - M.エリアーデ (エリアーデ ミルチャ) (著) (Mircea Eliade) ルーマニアの世界的な宗教学・宗教史学者。1907年首都ブクレシュティ(ブカレスト)に陸軍将校を父として生まれる。ブクレシュティ大学でナエ・ヨネスクを師に哲学を学ぶ。1927、28年イタリアに留学。また29-31年インドに留学しこの研究生活を通じて宗教学・宗教史学者としての彼の方向が決定づけられる。帰国後33年から母校で哲学を講義、38-42年パリで宗教学研究誌『ザルモクシス』を刊行。40年ロンドンのルーマニア文化アタッシェに任命される。それ以後エリアーデは国外を活動の場として、46年ソルボンヌ大学宗教学講師、57年からはシカゴ大学神学部宗教史学科主任教授をつとめた。1986年死去。主な著書の『聖と俗』、『永遠回帰の神話』、『シャーマニズム』などが翻訳されている。 直野 敦 (ナオノ アツシ) (訳) 1929年生まれる。一橋大学社会学部修士課程修了。東京大学名誉教授。文化女子大学教授。訳書:M.エリアーデ『セランポーレの夜』ほか多数。
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ヒロシマ〈新装版〉 | J.ハーシー(著), 石川 欣一(訳), 谷本 清(訳), 明田川 融(訳)
¥1,650
法政大学出版局 2014年 ハードカバー 252ページ 四六判 - 内容紹介 - 「20世紀アメリカ・ジャーナリズムの業績トップ100」の第1位に選ばれた、ピューリッツァ賞作家ハーシーによる史上初の原爆被害記録。1946年の取材による1~4章は、6人の被爆者の体験と見聞をリアルに描いて世界に原爆の惨禍を知らしめ、原水爆禁止・核廃絶の運動に影響を及ぼした。85年の再訪で成った5章「ヒロシマ その後」では、原爆症との闘い、市民としての生活・仕事・活動など、稀有な体験者たちの戦後史をヒューマンな筆致で跡づける。 目次 1 音なき閃光(せんこう) 2 火災 3 詳細は目下調査中 4 黍(きび)と夏白菊 5 ヒロシマ その後 1 中村初代 2 佐々木輝文博士 3 ウィルヘルム・クラインゾルゲ神父 4 佐々木とし子 5 藤井正和博士 6 谷本 清 初版 訳者あとがき(谷本 清) 増補版 訳者あとがき(明田川 融) 増補版刊行にあたって/謝辞(法政大学出版局) - 著者プロフィール - J.ハーシー (ハーシー ジョン) (著) (John Hersey) 1914年、中国天津に生まれ、家族がアメリカへ帰る1925年まで同地に暮らす。イェール大学ならびにケンブリッジ大学に学び、一時、シンクレア・ルイス(1885-1951、米国の小説家で、1930年に米国人で初めてノーベル文学賞を受賞)の秘書を務め、その後数年間、ジャーナリストとして活動。1947年以降、おもにフィクションの執筆に打ち込む。ピュリッツァ賞受賞。イェール大学で20年間教鞭をとり、その後、アメリカ著作家連盟会長、アメリカ芸術文学学校校長を歴任。1994年9月、谷本清平和賞受賞。1993年死去。 石川 欣一 (イシカワ キンイチ) (訳) 1895年、東京に生まれる。東京大学英文科を中退して渡米し、1919年、プリンストン大学卒業。大阪毎日新聞社学芸部員、東京日日新聞社学芸部員・ロンドン特派員、大阪毎日新聞社文化部長・東京本社出版局長等を歴任。訳書に、グルー『滞日十年』、チャーチル『第二次大戦回顧録』、モース『日本その日その日』等がある。1959年死去。 谷本 清 (タニモト キヨシ) (訳) 1909年、香川県に生まれる。関西学院神学部を卒業後、渡米して1940年、エモリー大学大学院修了。1943年、広島流川教会牧師に就任し、1945年、爆心から3kmの知人宅で被爆するが奇跡的に助かる。1950年、ヒロシマ・ピース・センターを設立し、原爆で傷ついた少女たちや孤児の救済に取り組む。広島平和文化センター理事長等を歴任。1986年死去。 明田川 融 (アケタガワ トオル) (訳) 1963年,新潟県に生まれる。97年に法政大学大学院政治学専攻博士課程修了。専攻は日本政治史。現在,法政大学法学部教授。著訳書に『日米行政協定の政治史』(法政大学出版局),『沖縄基地問題の歴史』,『日米地位協定』,ジョン・ダワー『昭和』(監訳,以上みすず書房),ジョン・ダワー/ガバン・マコーマック『転換期の日本へ』(共訳,NHK出版)などがある。
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はじめての胃もたれ 食とココロの更新記 | 白央 篤司
¥1,980
太田出版 2024年 ソフトカバー 224ページ 四六判 - 内容紹介 - 昔のように食べられないことは、みっともないことなんかじゃない。性別とか関係なく「自分」を大事にしていこう。フードライターの白央篤司さんが、加齢によって変化する心身をなだめながら、作って食べる日々を綴った手探りエッセイ。 “加齢に伴う変化の体感は楽しい。だって、「歩く」「しゃべる」「自転車に乗れる」といった、幼少期の成長に伴う「できるようになった」の記憶は、もはや曖昧だもの。一方、中年の「できなくなった」は、ちゃんと自覚ができる。観察も対処もできる。つまり、人の機能的変化をじっくり味わえるのは、中年の特権なのだ。高齢者になれば、再びそれは難しくなるのだから。” -- ジェーン・スーさん(コラムニスト)推薦! 「あなたの胃は、もう昔のあなたの胃ではないのですよ」 そう気づかせてくれたのは、牛カルビだった。 もうすぐ50歳。調子にのって食べすぎると胃がもたれる。お腹いっぱいが苦しい。量は変わらないのに、ぜんぜん痩せない……老いを痛感することが増える日々。 人生の折り返し地点を迎えて、いままでのようにいかないことがどんどん増えていく。でも厚揚げやみょうが、大根おろしみたいに、若い頃にはわからなかったおいしさを理解することだって同じくらいあるはず! いまこそ、自身を見つめ直して「更新」してみませんか? ----- 昔のように食べられないことは、みっともないことなんかじゃない。性別とか関係なく「自分」を大事にしていこう。老化は誰でも起こるもの、さっさと早いうちにセルフケアして、より良い状態をキープしていかないと時間がもったいない。人生で食事を楽しめる回数なんて、毎日減ってゆくばかりだ。しなくていい無理をして、あるいは調子に乗り過ぎて飲食して、胃もたれで週末を苦しんで過ごすようなミスは繰り返しちゃいけない。(と、書きつつも私はまだたまにやってしまうけれど……)それに、つらいことばかりでもない。食における好みの変化は、若い頃には分からなかったおいしさを理解できるようになる、という側面もある。「昔はこんなもの、全然好きじゃなかったのに」なんてひとり食卓でつぶやいてしまうこと、ないだろうか。食べたくなくなるもの、食べにくくなるものの数と同じぐらい、新たな好物が見つかっていくという豊かな道もあるのだ。(「はじめに」より) - 目次 - はじめに 第一章 いろんなところにガタが来る はじめての胃もたれ お腹いっぱいがこわい カルビ世代から大根おろし世代へ 衰えを語り合える関係はいいものだ 増えるばかりのメンテ・アイテム! 物価高の中、頼れるあいつ 耐脂性の問題と具だくさん汁の豊かさ アンケートその① 誕生日はいまやうまいものを食う口実に 春の食卓 第二章 手探りで向き合う つまづいて、歩いて、お茶を淹れる やせない体 なすときゅうりと、非現実的もいいとこな夢 厚揚げ、みょうが、そして苦みが好きになる 日傘のすすめ&「男のくせに」 自分の機嫌とり上手になりたい 夏の食卓 第三章 無理なく変わっていく 私と酒と酒場のこと、これまでのこと 隙あらば野菜を足すムーブメント 「いつもより気持ち少なく」の節塩ライフ グジュとたま子のこと 台所の思い出話① 台所の思い出話② みなさんにアンケート② 秋の栗、そして父のこと 第四章 決めつけない方が人生は面白い 魚よ、おろそかには食わんぞ ―私のレシピ微調整― 無理なときは無理しないにたどり着くまで 私なりの“半”作りおき、そして使い切り術のあれこれ お弁当から考える「ちゃんと作る」ということ 台所の思い出話③ ハワイの名物料理ポキに学ぶ 冬の原稿の伴走者、煮込み料理 第五章 執着と無頓着 男達よ、もっと自分をいたわろう 和菓子に惹かれていく 友達も携帯もいらない 30代で決意したふたつのこと 50代の歩み方 いなり煮に教わる あとがき 著者プロフィール 白央篤司 (ハクオウ アツシ) (著/文) フードライター、コラムニスト。1975年生まれ、早稲田大学第一文学部卒業。出版社勤務を経てフリーに。日本の郷土料理やローカルフード、現代人のための手軽な食生活の調え方と楽しみ方、より気楽な調理アプローチをメインに企画・執筆する。メインテーマは「暮らしと食」。著書に『にっぽんのおにぎり』(理論社)、『ジャパめし。』(集英社)、『自炊力』(光文社)、『台所をひらく 料理の「こうあるべき」から自分をほどくヒント集』(大和書房)、『名前のない鍋、きょうの鍋』(光文社)など。
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もういちど、あなたと食べたい | 筒井 ともみ
¥737
新潮社 2024年 新潮文庫 ソフトカバー 336ページ 文庫判 縦151mm 横106mm 厚さ11mm - 内容紹介 - 大切な思い出はいつだって‶食〟とともにある。松田優作と食べたにぎり寿司、佐野洋子が作ってくれた野菜炒め煮、樹木希林に伝えた玄米の味噌雑炊、深作欣二が大好きだったキムチ鍋……。かれらと囲んだ味や匂いは、やがて私の肉となり血となった。映画「それから」「失楽園」等で知られる脚本家が、俳優や監督たちとの出会いと別れ、そして忘れられない食事を振り返る美味しくも儚いエッセイ集。
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おじさん・おばさん論 | 海野 弘
¥1,210
筑摩書房 2024年 ちくま文庫 ソフトカバー 336ページ 文庫判 - 内容紹介 - 両親ではない、きょうだいでもない、祖父母でもない、ちょっと不思議な「斜め」の関係=おじ・おば。歴史を眺め物語をのぞいてみれば、世界中で数多のおじさん・おばさんたちが下の世代のこどもたち──未来の偉人やアーティストたちにあまりに大きな影響力を発揮してきた事実がわかる。まっすぐな道の横から手招く魅惑のおじおばコレクション、待望の文庫化。 解説 山崎まどか カバー画 MASAMI カバーデザイン 宮本亜由美 目次 プロローグ 第一章 おじさん・おばさん考現学 おじさん・おばさんの文化人類学/おじさん・おばさんと友愛/アヴァンキュレート ヨーロッパ中世のおじさん 第二章 大いなるおじさん・おばさんたち ゴッホのおじさん/ストラヴィンスキーのおじさん/ロダンのおじさん・おばさん/ニュートンの姪/ベートーヴェンの甥/おじさんも大統領 二人のローズヴェルト/チェーホフの『ワーニャ伯父さん』/メイムおばさん/グレアム・グリーン『叔母との旅』/E・M・フォースターの大伯母 第三章 おじさん・おばさん一〇〇人 叔父ドガ/叔父の教訓/美しきミュンヒェンの世紀末/ラモーの甥/画商ヴォラール/教育家フレーベル/ツルゲーネフの『貴族の巣』/『エリア随筆』/アクサーコフの幼年時代/ゴーリキーの幼年時代/『若き日の芸術家の肖像』/バーネット『秘密の花園』/ヘンリー・ミラー『わが青春のともだち』/サローヤンのお節介な叔父さん/ろくでなしのおじさんたち/ヘルマン・ヘッセ『青春は美わし』/ギボンの伯母/マリー・キュリーのポーランドの夏休み/マイルスのかっこいい伯父さん/シャガールのたくさんのおじ・おば/ミレーの大叔父/ピカソの伯父さん/闘牛士のおじさん/にんじんの名づけ親/ジャン・クリストフの伯父/アルプスの少女のおじさん/モーパッサン「ジュール叔父」/ソーニャ・コヴァレフスカヤの二人のおじ/カフカのおじさんたち/パリのおじさん/他人のはじまり/未来は未成年が築く/シュヴァイツァーのおじさん/遠い縁者/リルケのおばさん/おじさんのコレクション/アインシュタインの叔父さん/ニールス・ボーアの伯母さん/ロマノフ王家のおじさん/トロツキーの幼年時代/ケストナー『わたしが子どもだったころ』/アーサー・ランサムの大おば/フランクリンの伯父たち/歴史好きの伯父さん/世話好きなおばさん/四人目の叔母さん/おじさんはルーツだ/僕のボブおじさん/金色の時は過ぎ/伯母のための風車/パリ・コミューンと伯父さん/『あしながおじさん』/叔父の妻たち¥東と西の結婚/フィレンツェの伯母さん/ポーランドの夜/夢の中の少年時代/こわいおばさんたち/おじさん? いやおばさん?/とんでもない伯父さん/あいまいなおじさん/治療師のおばさんたち/『怒りの葡萄』の伯父さん/悪童とおじさん・おばさん/母の思い出/駄目な叔父さん/道徳伯母さん/金持の伯父からの脱出/ベティ・デイヴィスに会わせて/豪快なオズワルド叔父さん/伯母さんの婚礼衣裳/アラン・レネ『アメリカの伯父さん』/ジャック・タチ『ぼくの伯父さん』/昨日の伯母さん/『山猫』の伯父と甥/ジャッキーの叔母さん/ペレの叔父さん/母方の親類/叔母に育てられて/あまりにも偉大なる親戚たちの中で/モーム『人間の絆』/伯母さんは探偵/伯父さんも探偵/伯母さんは被害者?/おばさんは犯人?/やさしい伯父さん/皇妃エリザベトの伯母/もし伯父さんが…/スタニスラフスキーの伯母さん/人類学者のおばさん /サキの伯母さんたち/遠い親戚の家で/「ルネおばさん」/クララ叔母さんのピアノ/ 性の目覚め/イザベル叔母さんのギター/マン家のおじさん/未来派風おばさん像/ ウィーン世紀末の叔母さん/失われた伯母を求めて エピローグ――私の伯母さん あとがき 〈おじさん・おばさん〉参考資料 解説 山崎まどか - 著者プロフィール - 海野 弘 (ウンノ ヒロシ) (本文) 1939年、東京都生まれ。早稲田大学文学部卒業。1976年より平凡社「太陽」の編集長を務めたのちに独立。美術、映画、音楽、都市論、華道、小説など幅広い分野で執筆を行い、活躍する。著書及び解説・監修をつとめた書籍に『アール・ヌーボーの世界』『スキャンダルの世界史』『日本の装飾と文様』『ロシア・アヴァンギャルドのデザイン 未来を夢見るアート』『武蔵野マイウェイ』他多数。2023年、逝去。
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香具師の旅 | 田中 小実昌
¥715
小学館 2024年 P+D BOOKS ソフトカバー 232ページ B6判 - 内容紹介 - 直木賞受賞作「ミミのこと」を含む名短篇集 病気や飢餓をともに乗り越えた戦友・朝日丸と〈ぼく〉。戦後、朝日丸は浪曲師として有名になり、11人の原爆孤児たちを引き取って新聞にも載るが――。 「浪曲師朝日丸の話」と、耳が不自由で売春を生業としていたミミとの切ない純愛を描いた「ミミのこと」という第81回直木賞受賞作を中心に、夜の生活を拒否し、周囲にまったく気を使わない悪妻に嫌気がさして、かいがいしく世話を焼いてくれる女性との再婚を決意するが、その彼女が作った味噌汁の味に失望する「味噌汁に砂糖」、私小説的要素が強い表題作「香具師の旅」など、軽妙なタッチのなかにノスタルジーと深みを詰め込んだ珠玉の短編集。
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教育にひそむジェンダー 学校・家庭・メディアが「らしさ」を強いる | 中野 円佳
¥946
筑摩書房 2024年 ちくま新書 ソフトカバー 208ページ 新書判 - 内容紹介 - 大人は何ができるのか? 「与えられる性差」の悪影響と、起きている前向きな変化。 理想(多様性奨励)と現実(根強いバイアス)のギャップが大きすぎる! 学校・家庭・メディアで与えられる「らしさ」の何が問題か。 赤ちゃんから幼児、小学生、中高生、大学生まで、育児や教育を通して子どもたちに与えられるジェンダーイメージについて、教育社会学の知見や著者自身の子育て経験を踏まえて検証・考察する。 母性愛神話、マイクロアグレッション、性教育、別学か共学か、性的同意、女性の透明化・商品化……語りにくいが大事な問いに正面から挑む。 目次 はじめに 第1章 赤ちゃんから刷り込まれるジェンダー ―― おもちゃの好みは遺伝か環境か? 赤ちゃんのときから刷り込まれるバイアス/3歳ごろからの性自認と幼稚園の役割/性自認と遊びの中の役割/ジェンダー規範の「内面化」/なぜバイアスを持つのか/バイアスを持つことは悪いことか?/根拠がなくても実現してしまう/変わるバービー人形/変えていくための動き/幼少期に覚える家庭での役割/つくられた「母性愛」/家庭での役割/高度な家事をやめるのも手 第2章 小学生が闘うジェンダー ―― 理想と現実のギャップ シンデレラ願望/変わるプリンセス像/かわいくて、強くてもいい/マイクロアグレッションと『リトル・マーメイド』の実写版/娘に読ませたいプリンセスもの/子ども向け番組の偏り/性的な描かれ方/公的な場で見えてしまうことが問題/ゾーニングという解決策/大人の「期待」を読み取る子どもたち/ピンクのランドセルを選ぶ男の子/青い目、茶色い目/性犯罪防止に何ができるか/日本版DBS導入へ/性教育 第3章 中高生の直面するジェンダー ―― 思春期特有のジレンマ 「サッカー部」にいる女の子はマネージャー?/男女の体格差/ジェンダー・フリー/「隠れたカリキュラム」の是正/なお残る「役割」のジェンダー/「校長」は男性?/ディスカレッジされる女の子/女子の理系選択/女子校・男子校の意義はあるか/別学のメリット/多様性は居心地が良くない/共学の定員は1対1である必要があるか/性教育は共学でも不十分/性的同意/「教えてほしかった」 第4章 大学のゆがんだジェンダー ―― 差別とセクハラの温床なのか? 医学部女性減点問題の衝撃/女子枠は逆差別か/女子枠はスティグマになる?/他のマイノリティ性への配慮/東大女性2割の原因/女性への〝言葉の逆風?/親の教育期待差/娘に投資しない/実家から離れない/浪人を避ける/女性はリスクを回避する?/成功不安?/差異か平等か/なぜ大学や企業に多様性が必要なのか/社会の設計を誰がするのか/女性の透明化・商品化がはびこるキャンパス/偏差値の高さと女性への目線/DEIについての教養/声をあげる大学生たち おわりに 参照文献 - 著者プロフィール - 中野 円佳 (ナカノ マドカ) (本文) 1984年東京都生まれ。東京大学教育学部卒業後、日本経済新聞社入社。大企業の財務や経営、厚生労働政策を取材。育休中に立命館大学大学院先端総合学術研究科入学。同研究科に提出の修士論文を基に、2014年『「育休世代」のジレンマ――女性活用はなぜ失敗するのか?』(光文社新書)を出版。15年よりフリージャーナリスト、23年東京大学大学院教育学研究科博士課程満期退学。現在、東京大学多様性包摂共創センターDEI共創推進戦略室准教授。キッズライン報道でPEPジャーナリズム大賞2021特別賞、第2回調査報道大賞デジタル部門優秀賞受賞。他の著書に『上司の「いじり」が許せない』(講談社現代新書)、『なぜ共働きも専業もしんどいのか――主婦がいないと回らない構造』(PHP新書)、『教育大国シンガポール――日本は何を学べるか』(光文社新書)など。
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自分につながるアート 美しいってなぜ感じるのかな? | 池上 英洋
¥1,320
筑摩書房 2024年 ちくまQブックス ソフトカバー 96ページ 四六変形判 - 内容紹介 - 学校には「美術」の授業があるけれど、他の科目と違ってどう関わったらいいかがわからない。しかし例えば人間は太古から今もなお、絵を創作し、「美しさ」を追求してきた。「美術」とか「美しさ」って何だろう? アートを切り口に人間らしさとは何かを考えてみよう。 === ・・・・・・一冊のノートや一本のペン、一着のシャツを選ぶだけでも、私たちは頭の中にある「これが自分にとって美しい」と思える基準に照らして判断を下します。選択の自由さえあれば、すべての人がこのような行動を取ります。それだけ、人間は「美しいかどうか」を重視する生きものと言えます。そして面白いことに、地球上に住んでいる無数の種類の動物のなかで、そのようなことをする生きものは人間だけなのです。考えてみると、これはとても不思議なことです。 私たちはなぜ「美」にそれだけこだわるのでしょう。そのような美を追い求めるために、人類は長い歴史のあいだ、ずっと絵を描き続けてきました。なぜ人間だけが、そのようなアートを必要とするのでしょう。──ではこれから、皆さんと一緒に人類だけがもつこの不思議な価値観について考えていきましょう。それはひいては、人間ってなんだろう、私たちは他の動物とどこが違うのだろう、といった考察へと繋がっていくはずです。(はじめにより) 目次 第1章 人間とアートは切っても切り離せない?! 第2章 アートはどのように生まれたか? 第3章 アートが“働く”とは? 第4章 アートが面白いってどういうこと? - 著者プロフィール - 池上 英洋 (イケガミ ヒデヒロ) (本文) 1967年、広島県生まれ。東京藝術大学卒業、同大学院修士課程修了。現在、東京造形大学教授。専門はイタリア・ルネサンスを中心とする西洋美術史・文化史。『レオナルド・ダ・ヴィンチ――生涯と芸術のすべて』(筑摩書房)で第4回フォスコ・マライーニ賞を受賞。『西洋美術史入門』(プリマー新書)、『西洋美術史入門〈実践編〉』(プリマー新書)、『パリ 華の都の物語』(ちくま新書)など著書多数。
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SNS時代のメディアリテラシー ウソとホントは見分けられる? | 山脇 岳志
¥1,320
筑摩書房 2024年 ちくまQブックス ソフトカバー 128ページ 四六変形判 - 内容紹介 - ニュース、SNSの投稿、動画からAIまで。情報にあふれた現代で、デマに流されず信頼できるものを選びとり、自分の世界を広げるためにはどうしたらいい? よく考え、ちゃんと対話するための道具として情報を使いこなす、あたらしいメディアリテラシーの教科書。 === ●気がつけばネットばかり見ていた! 気を付けることは? ●誤情報はSNSよりも直接の会話で広まる? ●新聞記者はどうやって事実確認をしている? ●人間のバイアスにはどんなものがある? ●すべての情報は切り取られている…… 演習も交えつつ、メディアリテラシーの必須知識を網羅。子どもから大人まで役に立つ、学校の先生にもおすすめの本です。 === (・・・)総じて言えばアメリカ人全体で、マスメディアを信頼している人は3割程度にまで下がってしまっています。 私はアメリカのそうした姿をみて衝撃を受け、メディアとは何か、どういう問題がありどういう役割を果たすべきなのかについて、真剣に考えるようになりました。そして日本に戻ってきたときに、人々のメディア接触と価値観との関係を客観的に調べるための世論調査や、メディアに関する教育に携わりたいと思い、現在のスマートニュース メディア研究所に転職しました。 問題意識の根っこには、日本がアメリカのような分断社会になってほしくないという思いがあります。一人一人がマスメディアやソーシャルメディアの仕組み、それと人間の心理や社会との関係についての理解を深め、物事を多様な視点でみていくことが、暮らしやすい社会に結びつくと思うからです。 この本では、第4章まで、1つの章ごとにポイントを示します。そして最終章である第5章では、そのポイントに通底する「クリティカルシンキング」について解説し、「メディアや情報と上手につきあって自分の人生に活かせる人になること」、つまりメディアリテラシーを身につけてもらうことを目指したいと思います。(「はじめに」より) 目次 はじめに 情報におぼれてしまう? 第1章 友達のウワサ、聞いたらどうする? 第2章 事実はどうしたらわかる? 第3章 ニュースの見出しをつけてみよう 第4章 テクノロジーと人間のクセを理解しよう 第5章 クリティカルシンキングを身につけよう - 著者プロフィール - 山脇 岳志 (ヤマワキ タケシ) (本文) 1964年、兵庫県生まれ。京都大学法学部卒。1986年、朝日新聞社に入社。経済部記者、オックスフォード大客員研究員(Reuter Fellow)、ワシントン特派員、論説委員などを経て、「GLOBE」の創刊に携わり、編集長を務めた。2013年-17年までアメリカ総局長。帰国後、編集委員としてコラムを担当したのち退社。2020年、スマートニュース メディア研究所の研究主幹に就任。2022年より同研究所所長。2021-24年、京都大学経営管理大学院特命教授。現在は帝京大学経済学部客員教授を兼務。著書に『日本銀行の深層』、『郵政攻防』、編著に『現代アメリカ政治とメディア』、『メディアリテラシー 吟味思考を育む』などがある。
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AIにはない「思考力」の身につけ方 ことばの学びはなぜ大切なのか? | 今井 むつみ
¥1,320
筑摩書房 2024年 ちくまQブックス ソフトカバー 128ページ 四六変形判 - 内容紹介 - 学校で急速に広がる生成AIの使用。 なぜ“ChatGPTにおまかせ”ではダメなのか? カギは、人間がことばの学習で身につける「推論の力」が失われることにあった。 すべての教育関係者・保護者必読の一冊。 === 「思考力」というと、なんだか難しいことのように感じられるかもしれない。しかし、私たちは今この瞬間に文章を読みながら、思考力を駆使している。そしてその時に頭の中で働いているのは、「推論の力」だ。この力は人間だけにあり、AIにはないものだ。その違いと謎を解き明かしていく。 === 例えば「探偵マンガ」を読んでいるとき、みなさんは、 「黒幕は誰だれだろう?」 「犯人はやはり……」 と考えながらストーリーを追っているはずです。これも思考の働きのひとつです。 思考しながら、主人公と一緒に「問題を解決しよう(=犯人を見つけよう)」としているのです。 思考力というのはこのように、問題解決の力につながっていきます。問題解決の力をつけることができれば、社会がどんなに変わっても、未来がどうなるかわからなくても、なんとかその場で対応することができるようになるはずです。(……) では、思考力を使って問題解決ができる「名探偵」になるために、私たちは何を学べばいいのでしょうか。(……) 正解は、国語です。 「なぜ国語?」 確かにそう思う気持ちもわかります。 数学や英語のほうがなんとなく、問題解決の役に立ちそうですよね。でも、私たちは何を学ぶにも「ことば」を使います。「ことばの力」がなくては、数学の問題もうまく解くことはできません。(……) 本書は「思考力」、つまり「名探偵になるための推論力」を、「ことば」と一緒に考える本です。みなさんが、今この瞬間にも使っている「思考力」ですが、なんだかぼんやりしていて、捉とらえにくいものであるというのも事実です。その「思考力」を「ことば」というフィールドで考えてみようという試みです。 乳幼児がことばを覚えるしくみについて研究をしていると、「ことばがわかること」が、必ずしも当たり前でないということに気づかされます。子どもはことばのしくみを自分で発見し、ことばの意味も自分で発見します。これはみなさんも、意識せずに成し遂とげてきたことです。 いったいどんなふうに、そんなすごいことをしてきたのか。 まずは、みなさんが子ども時代に成し遂げた「母語の習得という偉業」を、思い出すことから始めてみましょう。(「はじめに」より) 目次 第1章 あなたはことばを、どう覚えてきたのか 第2章 問題解決に必要な「推論の力」 第3章 学校で必要になる「ことばの力」 第4章 AI時代の「考える力」 - 著者プロフィール - 今井 むつみ (イマイ ムツミ) (本文) 慶應義塾大学環境情報学部教授。1994年ノースウエスタン大学心理学博士。専門は認知科学、言語心理学、発達心理学。学力不振で苦しむ子どもたちの学力困難の原因を見えるようにするツール(たつじんテスト)や学習補助教材の開発にも取り組んでいる。著書に、『言語の本質――ことばはどう生まれ、進化したか』(中公新書)、『ことばの発達の謎を解く』(ちくまプリマー新書)、『親子で育てる ことば力と思考力』(筑摩書房)、『言葉をおぼえるしくみ――母語から外国語まで』(共著、ちくま学芸文庫)、『ことばの学習のパラドックス』(ちくま学芸文庫)、『ことばと思考』『学びとは何か――〈探究人〉になるために』『英語独習法』『学力喪失』(以上、岩波新書)、『算数文章題が解けない子どもたち――ことば・思考の力と学力不振』(岩波書店)、『ことば、身体、学び――「できるようになる」とはどういうことか』(扶桑社新書)ほか多数。
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猫と考える動物のいのち 命に優劣なんてあるの? | 木村 友祐
¥1,320
筑摩書房 2024年 ちくまQブックス ソフトカバー 128ページ 四六変形判 - 内容紹介 - ネコ、ウシ、ブタ、ニワトリ、スズメ、カエル、ハクビシン……身の回りには色んな動物がいて、わたしたちは彼らと一緒に住んだり、敵対したり、食べ物にしたりして、共に生きている。わたしたちとは大きくちがう動物のこと、人間のことを、猫たちと一緒に考えよう。 === ようこそ『猫と考える動物のいのち』へ! この本のタイトルを見て「ん? 『動物のいのち』を『猫と考える』って、どゆこと? 」と、いろんな「?」が頭に浮うかんだだろうか。ふふ。 まずは自己紹介をしなきゃだね。ぼくは小説家で、郷里の青森の方言(南部弁)を使った小説とか、ぼくらの社会が抱えた様々な問題をテーマにした小説を書いてきました。だから、動物についての専門家では全然ないのだけど、それでも動物たちについて言うべきことがあるかもしれないと思ったんだ。というのも、動物についてのぼくの見方と、世の中の人々の見方がずれていると思うことがよくあるから。そのズレをはっきりさせることで、この本を手に取ったあなたにも、動物についての新たな見方が生まれたらうれしい。 というわけで、これからぼくは、ふたりの先生と一緒に、ぼくたち人間を取りまく動物たちのことについて、あれこれ考えていきたいと思う。 その先生というのは、うちで一緒に暮らしている猫たちだ。(「第1章 猫はぼくの先生」より) 目次 第1章 猫はぼくの先生 第2章 まったくちがう世界を見ている存在=他者 第3章 動物のことをホントに理解できる? 第4章 ぼくや君の知らない世界 第5章 利用される動物たち 第6章 命ってなんだろね 第7章 命の世界を心の真ん中に - 著者プロフィール - 木村 友祐 (キムラ ユウスケ) (本文) 小説家。1970年、青森県八戸市生まれ。日本大学芸術学部文芸学科卒業。2009年「海猫ツリーハウス」で第33回すばる文学賞を受賞しデビュー。著書に『海猫ツリーハウス』(2010年、集英社)、『聖地Cs』(2014年、新潮社)、『イサの氾濫』(2016年、未来社)、『野良ビトたちの燃え上がる肖像』(2016年、新潮社)、『幸福な水夫』(2017年、未来社)、『幼な子の聖戦』(2020年、集英社/第162回芥川賞候補。2023年に文庫化)、温又柔氏との往復書簡『私とあなたのあいだ――いま、この国で生きるということ』(2020年、明石書店)がある。
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かりそめの星巡り | 石沢 麻依
¥2,200
講談社 2024年 ソフトカバー 216ページ 四六判 - 内容紹介 - 遠く離れた場所と言葉が響きあう、記憶への旅。 ドイツでの暮らしに故郷仙台の風景を重ね、愛する文学世界と過去からの声に耳を澄ませる――。 デビュー作『貝に続く場所にて』で芥川賞を受賞した注目作家が、静謐にして豊饒な文章で綴る初めてのエッセイ集。 「河北新報」連載「記憶の素描」、「日本経済新聞」連載「美の十選」を収録。 - 著者プロフィール - 石沢 麻依 (イシザワ マイ) (著/文) 1980年、宮城県生まれ。東北大学大学院文学研究科修士課程修了。現在ドイツ在住。2021年、「貝に続く場所にて」で第64回群像新人文学賞を受賞してデビュー。同作で第165回芥川賞を受賞。他の著書に『月の三相』がある。
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山のフルコース | はらぺこめがね
¥1,870
小学館 2024年 ハードカバー 32ページ A4判 - 内容紹介 - 山奥隠れ家レストランの絶品フルコース 山の奥のその奥に、1軒のレストランがありました。ここは「レストラン山」。メニューは「山のフルコース」のみ。どこからかお客さんがやってきました。「いらっしゃいませ。」窓から見えるのは美しい山並み。これから、長い長いフルコースの始まりです。 【編集担当からのおすすめ情報】 食べものを描かせたら右に出る者はいない、食べもの絵本の名手はらぺこめがねが描く「隠れ家レストランの絶品フルコース」とは!?驚きの展開に思わず舌を巻く!ここでしか食べられない、趣向を凝らした料理の数々をぜひお召し上がりください。
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北のボーダレスアート | 菊地 雅子
¥3,740
ミツイパブリッシング 2024年 ソフトカバー 240ページ A5判 - 内容紹介 - 推薦・日比野克彦(東京藝術大学学長)「ひとって、イイよねー!ひとって、スゴイよねー!」 アール・ブリュット、アウトサイダーアートとも呼ばれる、あるがままの人間から湧き出す圧巻のアートがいっぱい。障害者アートと歩んで30年の創作アドバイザーが、北海道で活動する45名の作品約130点をセレクト。北海道新聞の連載を元にした作品紹介のほか、対談や創作拠点をもつ施設も掲載。作品と同時に創る人びとの魅力も伝わり、生きる力をくれる作品集。 目次 人と作品 01 遠藤雛 スイーツ好きの夢を実現 02 木村幸 「ひたむきさ」宿す昆虫画 03 水野泰夫 望みを描く魔法の絵 04 鉄地河原勝彦 大胆な線と色 圧倒的な存在感 05 吉田幸敏 深い色合い ユーモラスな生き物 06 菊地政司 「干支」画面いっぱいに 07 成田信之 あふれる思い 家族への愛情 08 のりぴー 極彩色 記憶の強烈な再構成 09 Chieko Yokoyama 「きれいな色」丁寧に塗り重ね 10 K E I TA 大胆な解釈 モチーフにオーラ 11 蛯子陽太 愛着が生み出すインパクト 12 満武和 乗り物大好き。幸福を追求 13 角田川清 人生の豊かな宝箱 14 高丸誠 創作と収集のサンクチュアリ 15 横山篤志 「○○町○○丁目○○薬局」のサトちゃん 16 MR. やっちゃん 驚嘆の記憶力 都市と建物、忠実に 17 岸田修一良 時間上手な多種創作人 18 阿部英樹 こだわりを見つける面白さ 19 粟田隼也 色とりどりのMY人生 20 伊藤考洋 異素材をユニークに 21 明子 重ねる創造の喜び 22 冨原廣子 王と王妃、乙女心の幾千夜 23 田湯加那子 激しく強く刻みこむ 24 三浦明菜 昭和の薫り 大絵巻 25 只野誠 飲食店の献立 マス目に細かく 26 川越智志 街の風景 ほのぼのと 27 松嶋ひろみ 紙に重ねられた言葉 28 宮林聡太 偶然と意図 はざまの美 29 臼井愛 存在位置を確かめる 30 内海雅充 凹凸が生む、独特の世界観 31 石岡美樹 1 匹ずつ異なる熱帯魚 32 佐藤朱美 極彩色うごめく「死と再生」 33 musou 壮大な物語と夢の実現力 34 畠山史織 想像と乙女心 自分だけの宝物 35 朝霧千景 「女の業」妖しくおしゃれに 36 俉樓賢太 野球選手、描きため数千枚 37 越智明美 胎児を連想させる人物表現 38 佐々木和哉 ぬけ感、抜群 センス上等 39 杉田希望 かわいくてシニカル 独自の魅力 40 ネコきよし 精密の陰 わずかな狂気 41 TOMO4 感じていることを可視化する 42 千葉由佳里 組み合わせの美 細部に発見 43 ゆうくん 独自の色 力強い線 44 笹原竜太 行ってみたい場所 優しく緻密に 45 岡﨑莉望 「いくつもの自分」が筆をとる アートはボーダレス〈鼎談&対談〉「最初の水は繋がっている~障がい者アート(アール・ブリュット)がもたらすもの」板垣崇志×菊地雅子×浮ヶ谷幸代(進行)/「アートで対等な関係を探る~私たちの創作支援活動」菊地雅子×堀川真×三橋純予/「目に見えない価値を見つける~障がい者アートのグッズ化と可能性」皆川明×菊地雅子 施設案内「アートが生まれるところ」かたるべの森美術館/studio BREMEN/アート工房 Qila-9/tomoni art/ペングアート 北海道ボーダレスアート拠点マップ People and Artworks 前書きなど 私は北海道の旭川の北東に位置する当麻町に住んでおり、障がい者アートの指導と、注文制のお菓子屋さんをやっています。また、学芸員でありアートディレクターでもあります。 過去30年間、障がいのある方々のアート作品に携わってきました。この間、彼らの作品を取り巻く環境は、大きく変わりましたが「そのままの自分でいいんだよ」という彼らの作品から受け取るメッセージは変わらず、一貫しています。このメッセージは、私の生きる力と活動の原動力となってきました。 私が活動の中で常に心に留めているのは、創作活動をすることによって生まれる多面的な価値をどうやったら伝えられるかです。売れる絵、グッズを作るのにぴったりの絵、描くことで心が安定する絵、欲しいものを描いた絵、図らずもリハビリや療育的な効果をもたらす絵、描き終わらない絵、などなど……そこには、いろんなタイプの表現物とさまざまな価値があります。サポートする側が多面的な価値を持って接することで、売れる絵を描けること以外にも、無数の価値があるということを、創作する人たちと共有することができるのです。 そもそも、私がアートを志したのは、価値があるとかないとかの二項対立の世界から自由になるためでした。自分の持っている価値判断の基準を疑い続けることを、やめてはいけないといつも思っています。 本書を通じて、障がい者アートの多様性と、創作する作者自身の魅力をもっと多くの方に知っていただけたらうれしいです。 - 著者プロフィール - 菊地 雅子 (キクチ マサコ) (著/文 | 編集) 1965 年千葉県生まれ。一般社団法人BASH(ボーダ レスアートサポート北海道)代表。多摩美術大学美術 学部デザイン科染織デザイン専攻卒業。当麻かたる べの森で創作アドバイザー(2002~2020年)、北海道 アールブリュットネットワーク協議会事務局(2015 ~ 2018年)。他に、ともに福祉会、南宗谷ひだまりの会 の創作アドバイザー、森のようちえんぴっぱら(北海 道鷹栖町)のアートナビゲーターを務める。『学芸員が ミュージアムを変える! 公共文化施設の地域力』(水 曜社、2021年)に寄稿。注文制のお菓子屋さん KOO’S GARDEN 主宰。北海道上川郡当麻町在住。
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とても小さな理解のための | 向坂 くじら
¥2,200
百万円書房 2024年 仮フランス装 232ページ 四六変形判 縦130mm 横160mm 厚さ18mm - 内容紹介 - 日々の息苦しさからの解放。 ここに綴られた詩は、あらゆる事象の境界を 溶かし、生まれたての眼で世界を見せてくれる。 又吉直樹(お笑い芸人) 幼さを内包しながら、少女は溶ける。 羽化した大人の身体。虫の眼で見つめる世界。 日常の美しさと痛みを描き出す、透明な言葉たち。 今日マチ子(漫画家) 「幸福な人間に詩は書けない」とある詩人は言ったが、わたしはそれを信じない。くじらさんは手を伸ばす。いま匂いや重みをもつきみ、おまえ、あなたへと。あなたの向こうの窓やその先へと。その道すがら、出会う誰かと互いに呼吸を渡し合って、生きて詩を書きつづける彼女のことを、わたしは誰よりも信じている。 堀静香(歌人、エッセイスト) 名著、復活。 向坂くじらデビュー詩集、増補・新装版。 目次 星座 ●キッチン 二十七歳 迷子 四月の昼 月子、ハズゴーン 満潮 サービス 怒りだ 誤認 潮鳴り トマトポークカレー(もっとも個人的な) ●玄関口 牛乳を一杯わけてください ほしがる 棲みうつる日 ちいさな群れ 城塞 変態 ●子どもたち 区別 線とハサミ クライスト 踊り 月が欠ける 性的な誘い 目撃 提案 あったかくして ●波のうつ部屋 君の帰りを待ちながら書いた詩 食いちがう 波のうつ部屋 カウント 水べ ディナーテーブル 許しが訪れるのを待って 航路 死ぬ前の話 ●窓 ショウ ベッドタウン・パレード 見せてあげる ぶん 同い年 肉眼 豊穣 えり子を知りませんか 新しい足 ねえ、おかあさん ●とても小さな理解のための おとなりは ねずみを殺す いてもいても メッセージ・イン・ア・ボトル 詩がどこにもいなかった日 ディスカウント 理解へ(家庭的な解釈) アンダスタン 青いしっぽ 冬に光る 週末 前書きなど 合わさることを知らないひとつの声に - 著者プロフィール - 向坂 くじら (サキサカ クジラ) (著) 詩人。1994年名古屋生まれ。「国語教室ことぱ舎」(埼玉県桶川市)代表。Gt.クマガイユウヤとのユニット「Anti-Trench」朗読担当。著書にエッセイ集『夫婦間における愛の適温』『犬ではないと言われた犬』(百万年書房)、小説『いなくなくならなくならないで』(河出書房新社)ほか共著など。慶應義塾大学文学部卒。
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レヴィナス 顔の向こうに | 渡名 喜庸哲
¥3,080
青土社 2024年 ハードカバー 352ページ 四六判 - 内容紹介 - レヴィナス思想のまだ見ぬ広がりを照らし出す いまでも哲学の枠を超えて、さまざまな分野にインスピレーションを与えつづけている哲学者、エマニュエル・レヴィナス。しばしば「顔の倫理」というスローガンにその思想が集約されるけれども、それが実際のところ何を言おうとするものだったのかを問いなおし、それに回収されない思想の広がりに目を向けると、いまだ見ぬ読み替えの新たな方向が浮かび上がってくる。そこにあるのは、食、老い、ロボット、動物、福祉など、人間と人間ならざるものの境界がゆらぐ場面と響きあう、特異なかたちのヒューマニズムだ。レヴィナスとともに、レヴィナスを超えて等身大の人間について考える、哲学することの楽しみにひらかれた一冊。
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現代思想2024年12月号 特集=田中美津とウーマンリブの時代 | 松田 いりの
¥1,760
青土社 2024年 ソフトカバー 174ページ 縦260mm - 内容紹介 - 次代につなぐ「解放」の思想と実践 1970年に誕生し、日本のフェミニズムに多大な影響を与えたウーマンリブ。とりわけその「旗手」として知られる田中美津の遺した言葉は、記念碑的名著『いのちの女たちへ』をはじめ、世代を超えていまなお私たちの心を揺さぶってやまない。本特集ではその活動の軌跡を辿り思想の全貌に迫るとともに、日本のリブの多彩なありようを描き出す。 line2.gif [目次] 特集*田中美津とウーマンリブの時代 【こだまする肉声】 リブセンと田中さんと / 米津知子 表象になることを拒み続ける / 信田さよ子 ところがなんと美津さんは……?! / 鶴田桃エ 美津さんのこと / 脇坂真弥 【波間を照らす灯】 リブかフェミニズムか? / 上野千鶴子 日本の「ウーマンリブ」と田中美津――第二波フェミニズムの視点から / 江原由美子 田中美津という存在――男性社会における「制度化の罠」とフェミニストの自己嫌悪 / 海妻径子 【手渡されたものは】 言文一致体のリブ、あるいは一九七二年のバッド・フェミニスト / 水無田気流 リーンイン・フェミニズム批判と田中美津の〈どこにもいない女〉 / 菊地夏野 ウーマン・リブの思想、フェミニズムの言葉――田中美津を再読する / 鈴木彩加 【受けとめ、引き受けなおす】 田中美津の哲学――「とり乱し」と「出会い」 / 森岡正博 ウーマン・リブの身体論とその限界――田中美津の健康本を中心に / 橋迫瑞穂 五〇年前の#MeToo / 住本麻子 【いくつもの声とともに】 とり乱しの不/可能性――森崎和江とウーマン・リブ─田中美津の交わり、あるいはすれ違いについて / 大畑凜 〈東京こむうぬ〉の挫折を捉える視角――総括と評価との接合から見る / 村上潔 〝共に闘わん!〞――ウーマンリブにおける生理用品無料設置要求運動の活動と思想 / 柳原恵 『すばらしい女たち』にみる日本のレズビアン・フェミニズムの展開――ウーマン・リブとの関係に焦点をあてて / 杉浦郁子 恥を掻いてでも伝えたい――桐野夏生『オパールの炎』をめぐって / 内藤千珠子 【「私たちは忘れない」】 「リブ新宿センター」の資料を残す / リブ新宿センター資料保存会 【連載●社会は生きている●第二八回】 社会と自我 4――経験と記憶 / 山下祐介 【連載●現代日本哲学史試論●第一二回】 現代日本哲学史におけるふたつの論戦――永井と小泉、野家と高橋 / 山口尚 【研究手帖】 巻き込まれた哲学 / 佐々木晃也