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なぜ人は自分を責めてしまうのか | 信田 さよ子
¥968
筑摩書房 2025年 ちくま新書 ソフトカバー 224ページ 文庫判 - 内容紹介 - 自責感とうまくつきあう。 当事者の言葉を辞書として、私たちを苦しめるものの正体に迫る。公開講座をもとにした、もっともやさしい信田さよ子の本。 - 目次 - まえがき 第1章 母はまだ重い 1 「母と娘」の時代の幕開け 精神分析のなかの女/フェミニスト・カウンセリング/アダルト・チルドレン/被害という概念の広がり/『母が重くてたまらない』へ 2 母と娘のいま 母娘問題のはじまり/毒母、毒親という言葉/母の老い/自分の限界は甘く見積もる/亡くなった親 3 母を俯瞰する 定義にこめたもの/母親の三大原因説/謝罪になっていない謝罪/母と娘は和解できない 4 グループの力 解釈を一切しない/母親研究/言いっぱなし・聞きっぱなし/生育歴が母親研究になる/母を俯瞰する/不均衡な力関係の表れ方/母が怖くなくなるような状態を目指す 第2章 共依存を読みとく 1 共依存とシステム家族論 当事者の言葉/アルコール依存症の治療現場から/システム家族論の登場/システム家族論の影響 2 支配としての共依存 共依存の発展/従来の共依存理解の限界/依存ではなく支配/「あなたのために」が不幸のはじまり/言葉が現実をつくる/母の愛のいかがわしさ/被害者権力/パターナリズム 3 母と娘の共依存 母のケアが力を奪う/あなたがいないと生きていけない/女性と共依存/共依存的な人にどう対処するか/共依存的になってしまうとき/被害者は無力化されているのではない/権力は状況の定義権/支配の根幹 4 複雑化したトラウマ 苦しみと鈍感さ/ありふれている共依存/支配性を自覚する 第3章 母への罪悪感と自責感 1 近代と母性愛 母と娘に関する3冊/罪悪感の正体/つくられた家族像/母性愛のふたつの柱 2 母のミソジニー 精神分析にとって女とは何か/阿闍世コンプレックス/受け継がれる母性信仰/ミソジニー 3 母性愛と罪悪感・自責感 反出生主義/虐待の影響としての自責感/母性愛なんてものはない 4 第三者の介入 最良の第三者は、父であるべき/キーワードの整理 第4章 逆算の育児 1 子どもとは何か アルコール依存症とフェミニズムの合流/年代のはじめの孤立/ACの親のように、じゃない育児/子どもという存在 2 親の言葉による支配 親の暴言/自立という言葉/人に迷惑をかけずに生きることはできない/家族と差別/加害と被害をひっくり返す/普遍的な価値を利用する支配 3 幸せでいる義務 抑圧移譲/強迫的なケア/子どもの前では幸せでいる義務がある/閉ざされた家族/幸せなふりをする 4 とりかえしはつく 子どもの恐怖/子ども以外の存在から支えられること/子どもが許せない気持ち/とりかえしがつかないことはない 第5章 なぜ人は自分を責めてしまうのか 1 自責感と規範の関係 規範を取り込む/規範の一貫性 2 「すべて自分が悪い」という合理性 感情を抱けない/子どもの文脈/たったひとつの合理性 3 根源的受動性 子どもは責任ゼロで生まれてくる/孤独感は高級な感覚/虐待の罪 4 自責感のあらわれ 自傷はサバイバル/アディクション/接触障害/性的な問題/反転する自責感/家族と正義/あなたは悪くない 5 これからの旅へ グループの意味/ヴィクティム・ジャーニー あとがき 索引 - 著者プロフィール - 信田 さよ子 (ノブタ サヨコ) (本文) 1946年、岐阜県生まれ。公認心理師・臨床心理士。原宿カウンセリングセンター顧問。お茶の水女子大学哲学科卒、同大学院修士課程児童学専攻修了。著作に『母が重くてたまらない』『家族と国家は共謀する』『暴力とアディクション』など多数。
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傷のあわい | 宮地 尚子
¥880
筑摩書房 2025年 ちくま文庫 ソフトカバー 240ぺージ 文庫判 - 内容紹介 - 米国で何者かになろうと海を越えた青年、夫の海外転勤に合わせて渡米した女性、人生に詰んで海外へ拠点を移した男性──。異国の地で、不安定さや傷つきに揺れながらも、そのとき成しえる最良の力で人生にぶつかっていく。その語りに、若き日の著者が耳を傾け、生きるということを同じ目線で考えた記録。 解説 奈倉有里 - 目次 - 文庫版まえがき はじめに 孤独の物語 アメリカン・ドリーム 移民候補生 リミナリティ PTSD(前編) PTSD(後編) ステレオタイプ 恋愛と結婚 邦人援護 二〇歳の人生落伍者 謎の女 パレスチナ レクイエム GOOD BYE=THANK YOU あとがき 解説 ひとりひとりの顔が見える 奈倉有里 - 著者プロフィール - 宮地 尚子 (ミヤジ ナオコ) (著) 一橋大学大学院社会学研究科特任教授。専門は文化精神医学・医療人類学・トラウマとジェンダー。精神科の医師として臨床をおこないつつ、研究をつづけている。1986年京都府立医科大学卒業。1993年同大学院修了。主な著書に『傷を愛せるか 増補新版』(ちくま文庫)、『トラウマ』(岩波新書)、『ははがうまれる』(福音館書店)、『環状島=トラウマの地政学』(みすず書房)、『傷つきのこころ学』(NHK出版)がある。
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自己肯定感は高くないとダメなのか | 榎本 博明
¥924
筑摩書房 2025年 ちくまプリマー新書 ソフトカバー 192ページ 新書判 - 内容紹介 - 自己肯定感は、日々葛藤しつつ生きていくことで少しずつ高まるもの。成長途上の若者が自分はまだ未熟だなと思うのは自然な事。ほめたらのびるものではない。高校生の7割が「自分はダメな人間だ」と思うことがあるという。そもそもどのようにして測定されているのだろうか。その心理メカニズムを解明すると、何を鍛え、何を高めればいいのか、本当の自己肯定感を育む方法が見えてくる。 - 目次 - 第1章 自己肯定感っていう言葉を最近よく耳にする 自己肯定感を高めようという働きかけへの違和感/自己肯定感の低い自分はダメなのか?/ほめられても自己肯定感が低い自分はおかしいのか?/自分に満足できなくなるのは心の成熟のしるし/自分の現状に満足できないからこそ成長できる 第2章 日本の若者は自己肯定感が低いって言われるけれど…… 国際比較によれば日本の若者の自己肯定感は極端に低い/ここで浮上する3つの疑問/海外と違うと日本に問題ありとする図式が問題/データを真に受けることで気持ちが萎縮してしまう/なぜ日本の若者は自己肯定感得点が低いのか?/文化の違いに目を向ければ謎が解ける/他のデータと照らし合わせることで見えてくるもの/自己コントロールできる日本人、できないアメリカ人/自己肯定感の得点が低くてもまったく問題ない 第3章 自己肯定感はどのように測定されるのか? 自己肯定感という言葉のあいまいさ/自己肯定感って何だろう?/自尊感情という言葉の意味/自己肯定感はきわめて主観的なもの/自己肯定感には向上心も含まれるべき/自尊感情はこのように測定される/自尊感情尺度には文化的要因が反映されない/自己肯定感尺度の開発と自己満足の意味/国際比較調査における自己肯定感のとらえ方/自己嫌悪は向上心のあらわれでもある/自分に満足できない心理についての理解が救いになる/国際比較調査のデータが意味するもの/自己肯定したがる欧米人、周囲に溶け込みたがる日本人/自己肯定感の高め方は文化により異なる 第4章 ほめられても真の自己肯定感は高まらない ほめる教育・ほめる子育て全盛の時代/欧米の親や教師はほめ上手と言うが……/ほめる教育・ほめる子育てで自己肯定感は高まったか?/なぜほめても自己肯定感が高まらないのか?/「なぜ先生は叱ってくれないの?」/ほめる教育・ほめる子育ては他人の評価に依存する心をつくる/自己肯定感は安定的なものであるはず/できれば上がり、できなければ下がる、それは自己肯定感とは言えない/心理学の世界における自己肯定感の安定性についての議論/ほめられてばかりではメタ認知が機能しなくなる/ほめるばかりでは自己コントロール力が身につきにくい 第5章 ほんとうに大切なことに目を向けよう ほんとうの自己肯定感とは?/自己肯定感の心理メカニズムは文化によって異なる/自己肯定感を高める教育への違和感/小手先のテクニックで向上するようなものではない/自己肯定感が自然に高まっていくために大切なこと - 著者プロフィール - 榎本 博明 (エノモト ヒロアキ) (本文) 1955年東京生まれ。東京大学教育心理学科卒業。東京都立大学大学院心理学専攻博士課程中退。心理学博士。川村短期大学講師、 カリフォルニア大学客員研究員、大阪大学大学院助教授等を経て、現在MP人間科学研究所代表。産業能率大学兼任講師。著書に『〈自分らしさ〉って何だろう?――自分と向き合う心理学』『「対人不安」って何だろう?――友だちづきあいに疲れる心理』『「さみしさ」の力――孤独と自立の心理学』『勉強ができる子は何が違うのか』(ちくまプリマ―新書)など。
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傷つきのこころ学 | 宮地 尚子
¥825
SOLD OUT
NHK出版 2024年 ソフトカバー 112ページ A5判 - 内容紹介 - 傷とともに生きる人のための、こころのケア論。 SNSの多様化、リモートワークの波及、デジタル社会の加速――。人と人との距離感が変わりつつある現代では、誰もが多くの「傷つき」を経験する。自分と他者はなぜ傷つき合い、それはどのように癒やせるのか。トラウマ研究の第一人者が、現代に特有の「傷つき」の背景を分析し、「レジリエンス」「エンパワメント」「ポスト・トラウマティック・グロウス」など、数十年培ってきた専門的知識を初めて私たちの日常生活に落とし込んで解説する。 - 著者プロフィール - 宮地 尚子 (ミヤジ ナオコ) (著/文) 精神科医。一橋大学大学院社会学研究科教授。1986 年京都府立医科大学卒業。1993 年同大学院修了。専門は文化精神医学・医療人類学。精神科の医師として臨床をおこないつつ、トラウマやジェンダーの研究をつづけている。著書に『トラウマ』(岩波新書)、『ははがうまれる』(福音館書店)、『環状島= トラウマの地政学』(みすず書房)、『傷を愛せるか』(ちくま文庫)など。
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自分にやさしくする生き方 | 伊藤 絵美
¥990
SOLD OUT
筑摩書房 2025年 ちくまプリマー新書 ソフトカバー 240ページ 新書判 - 内容紹介 - セルフケア「しなければ」と思っていませんか? セルフケアは「一人で頑張る」ものではありません。日常のストレスに気づき、心の根っこにあるもやもやを解消し、自分にやさしくする技術を身につける一冊です。 こんな人におすすめ ・寝る前も勉強や仕事が気になってリラックスできない ・休むと自分を甘やかしているようで罪悪感がある ・人に迷惑をかけるのが怖くてSOSを出せない ・みんなはもっと頑張っているのに…と落ち込む ――― 【著者からのメッセージ(本書より)】 「自分にやさしくする」ことは、一種の「スキル」すなわち「技術」であると気軽に考えてもらいたいのです。スキルは練習によって身につけることができます。「自転車に乗れなければならない」と思っていたからといって自転車に乗れるようになるわけではありません。そんな思いがあってもなくても、自転車に乗る練習さえすれば、いつか必ず自転車に乗れるようになります。それと同様に、みなさんにも、価値観や信念といった深い思いはさておき、これから紹介するさまざまなワークを実践することで、「自分にやさしくする」スキルが身につき、気づいたら「自分にやさしくする」ことが習慣になっていた、という流れに乗っていただきたいと思います。 ――― 目次 第Ⅰ部 自分にやさしく気づきを向ける 第1章 ストレスに気づいて観察する 第2章 ストレスを感じる自分にやさしさを向ける 第Ⅱ部 周囲からのサポートを受けることで自分にやさしくする 第3章 孤立せずに人とつながることの重要性 第4章 サポート資源を確認したり調べたりする 第5章 サポートネットワークを作成し、積極的に活用する 第Ⅲ部 「自分にやさしくする」スキルを身につける 第6章 安心安全を自分に与える 第7章 中核的感情欲求に気づいて、満たす 第8章 セルフ・コンパッションを理解し、実践する - 著者プロフィール - 伊藤 絵美 (イトウ エミ) (本文) 東京都生まれ。公認心理師、臨床心理士、精神保健福祉士。洗足ストレスコーピング・サポートオフィス所長。慶應義塾大学文学部人間関係学科心理学専攻卒業。同大学大学院社会学研究科博士課程修了。博士(社会学)。専門は臨床心理学、ストレス心理学、認知行動療法、スキーマ療法。主な著書に『事例で学ぶ認知行動療法』(誠信書房)『自分でできるスキーマ療法ワークブックBook 1 & Book 2』(星和書店)『セルフケアの道具箱』『カウンセラーはこんなセルフケアをやってきた』(ともに晶文社)などがある。
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雨の日の心理学 こころのケアがはじまったら | 東畑 開人
¥1,760
KADOKAWA 2024年 ソフトカバー 352ページ 四六判 - 内容紹介 - こころのケアははじめるものではなくて、はじまってしまうものである。 つまり、自主的に、計画的に、よく考えて契約書にサインしてから開始するものではなく、受け身的に、期せずして、否が応でも巻き込まれてしまうものです。 よく晴れた休日に散歩に出かけたら、突然大雨が降ってくるようなものです。 そういうとき、僕らは当初の予定を変更して、とにもかくにも雨宿りをできる場所を探したり、傘を買ったりしなければいけなくなります。 同じように、ある日突然、身近な人の具合が悪くなる。 子どもが学校に行けなくなる。パートナーが夜眠れなくなる。老いた親が離婚すると言い出す。部下が会社に来なくなる。あるいは、友人から「もう死んでしまいたい」と連絡が来る。 突如として、暗雲が立ち込める。 どうしてそうなったのか、なにをすればいいのか、これからどうなるのか、全然わからない。 でも、雨が降っていて、彼らのこころがびしょ濡れになっていることだけはわかります。 そのとき、あなたは急遽予定を変更せざるをえません。とにもかくにも、なんらかのこころのケアをはじめなくちゃいけなくなる。 傍にいるのがあなただったからです。その人があなたの大事な人であったからです。 ある日突然、あなたは身近な人に巻き込まれて、雨の中を一緒に歩むことになってしまう。 こういうことがどんな人の身の上にも起こります。 人生には、こころのケアがはじまってしまうときがある。 ですから、突然の雨に降られている方々に向けて、あるいは長雨の中で日々を過ごしておられる方々のために、心理学の授業をしてみようと思います。 雨が降ったら、傘を差すように、こころのケアがはじまったら、心理学が役に立つと思うからです。 ――(まえがきより) - 著者プロフィール - 東畑 開人 (トウハタ カイト) (著/文) 1983年東京都生まれ。臨床心理士。京都大学大学院教育学研究科博士後期課程修了。博士(教育学)。現在、白金高輪カウンセリングルーム主宰。専門は臨床心理学、精神分析、医療人類学。著書に『聞く技術 聞いてもらう技術』(ちくま新書)、『ふつうの相談』(金剛出版)など。
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映画のまなざし転移 | 斎藤 環
¥3,080
青土社 2023年 456ページ 四六判 - 内容紹介 - 精神分析と映画は、なぜこんなにも相性が良いのか 人物、セリフ、構造……作品のとらえ方のヒントは、精神分析に溢れている。現代の映画シーンにおける記念碑的な作品群を、ときにやわらかい言葉で、ときに精神分析の言葉で論じた、著者渾身の映画批評の集大成。映画への欲求を喚起せずにはおかない130章!