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からだは語る 身体性とジェンダーの精神分析 | A. レマ, 鍛冶美幸(訳), 村井雅美(訳)
¥3,960
木立の文庫 2025年 ソフトカバー 304ページ B5変形判 縦216mm 横168mm 厚さ16mm - 内容紹介 - 昨今、美容整形手術/施術は一般的になりつつあり、ジェンダー・アイデンティティにまつわる議論も活発に交わされています。そうしたなか本書は、心の器としての“からだ”を介して“わたし”が再-創造されていく様を、多くの実例からビビッドに描きます。――本書の登場人物は、美容整形や身体改造、倒錯的な性行動、ネット世界での耽溺、排泄行為などの、自らの“苦悩”を「無痛」化する作業に囚われています。そして、こうした行動では癒されないとわかった時、かれらは「心と対話する」相談室の門を叩くのでした。 - 目次 - 序 章◆身体が語るとき ・体現化された自己 ・ふたつの身体を心に留めて ・相談室のなかの身体 ・母 体 第1章◆羨望と母体――美容整形の精神力動 ・現代の美容整形 ・母親にまつわる風景 ・自己-製空想 ・再生空想 ・完全一致空想 ・現実をつくり直す 第2章◆いったい、誰の皮膚なのか?――屍姦幻想の精神的機能 ・カウチの上の身体 ・わたしの母の家で ・皮膚と屍姦幻想 ・自分の皮膚のなかで生きる 第3章◆純粋な決定の秩序――仮想世界で成長する ・テクノロジカルな体現化の誘惑と危険 ・思春期の身体/精神病空間に浮かぶ仮想身体 ・ノーボディであること ・仮想空間における身体の運命 第4章◆過去なき現在――思春期の性別移行における時間的統合 ・カップルの時間 ・雲の上で生きる ・時間的つながり 第5章◆もって生まれた身体と、自分そのものである身体 ・カウチから出て ・体現化された自己と、見られるという体験 ・自分自身にくつろいで ・トランスセクシュアルの心に至る道 第6章◆トラウマと身体――映画 《私が、生きる肌》 ・喪失に対する倒錯 ・良い対象が生き残ること 第7章◆分析家の身体と設定――体現化された設定と共生的転移 ・体現化された設定と共生的転移 ・身体的な逆転移と「警告の物語」 ・最初の二年間 ・要するに ・共生、分析家の身体 第8章◆ラプンツェル再考――髪の無意識的意味 ・髪にまつわる物語 ・髪の精神的なルーツ ・もっとも露出した身体的境界 第9章◆カウチから離れて――分析家のトイレの心理的な使い方 ・トイレと秘密――隠匿と分泌物 ・トイレット・ブレストとしての分析家のトイレ 第10章◆自己の起業家たち――変身リアリティ番組の精神的・社会的機能 ・自己の再創造 ・プロジェクトとしての身体 ・変身リアリティ番組の残忍さ ・完全な監視状態 ・まなざしの倫理 【訳者のメッセージ】 フロイトは「自我は真っ先に身体自我である」と述べ、心の機能は身体を基盤にしているとした。さらに精神分析家ウィニコットは、「精神という言葉は、身体的な部分、感情、機能、つまり、身体的に生き生きしていることを想像力によって練り上げること」と述べ、身体と精神が不可分な、むしろひとつのものであると述べている。 また哲学者の市川浩は、精神と身体を「同一の現実に付けられた二つの名前にほかならない」と述べ、それを〈身(み)〉という語で表現した。 私は本書のタイトルに示した“からだ”という語を用いて、これを表現したいと考える。…… 【訳者のメッセージ: つづき】 ……市川浩は、精神と身体を「同一の現実に付けられた二つの名前にほかならない」と述べ、それを〈身(み)〉という語で表現した。 私は本書のタイトルに示した“からだ”という語を用いて、これを表現したいと考える。そこには、「身体が精神の殻からとして、身みと分かちがたい外皮のようにそれを守り、時に器となっている」という意味を込めている。 本書は、精神分析の諸理論に加え、脳科学や哲学にまで敷衍した豊かな論考が、豊富な症例の紹介とともに、臨場感あふれる筆致で記されている。その魅力は、こうした“からだ”が語る深遠な「精神-身体」の世界へ読者を導いてくれる点にあろう。 - 著者プロフィール - A. レマ (エー レマ) (著者) タヴィストック・アンド・ポートマンNHS財団トラスト: 心理療法開発部門ディレクター、ポートマン・クリニック: 成人対象心理療法コンサルタント。英国精神分析協会の会員であり、ロンドン大学精神分析部門の客員教授、エセックス大学健康人間科学部: 心理療法の名誉教授を務めている。また、UCL心理療法介入研究センター: 臨床ディレクターであり、ローマ・サピエンツァ大学ウィニコット研究所およびローマ・ウィニコット・センター: 客員教授でもある。 Routledge“ New Library of Psychoanalysis”シリーズの編集者、国際精神分析協会誌の地域編集者の一人である。これまでに、精神分析や身体、トラウマに関する多くの著書がある。 鍛冶美幸 (カジ ミユキ) (訳者) 京都大学大学院教育学研究科博士後期課程修了。博士(教育学、臨床心理学)。臨床心理士、公認心理師。アメリカ・ダンスセラピー協会認定ダンス/ムーブメント・セラピスト(BC-DMT)、日本集団精神療法学会認定スーパーヴァイザー。日本精神分析協会精神分析的精神療法家センター研修生。 現在、文教大学人間科学部臨床心理学科・同大学院人間科学研究科臨床心理学専攻教授。長谷川病院、代官山カウンセリングルーム勤務。 著書に『思春期・青年期のこころとからだ』〔岩崎学術出版社, 2012年〕がある。共著書に『心理臨床における「見立て」』髙橋靖恵監修・西見奈子編〔福村出版, 2025年〕、『心理臨床に生きるスーパーヴィジョン』髙橋靖恵・西見奈子編〔日本評論社, 2024年〕、“Embodied Perspectives in Psychotherapy” Payne, H. Ed.〔Routledge, 2019〕、『心理的援助アプローチのエッセンス』神田久男編著〔樹村房, 2013年〕、『ダンスセラピー』飯森眞喜雄・町田章一編〔岩崎学術出版社, 2004年〕、『芸術療法』徳田良仁・大森健一・飯森眞喜雄・中井久夫・山中康裕編〔岩崎学術出版社, 1998年〕などがある。 村井雅美 (ムライ マサミ) (訳者) 米国ニューハンプシャー大学大学院心理学部博士課程中途退学。京都大学大学院教育学研究科博士後期課程(臨床実践指導学講座)単位取得退学。博士(教育学)。臨床心理士、公認心理師。日本精神分析学会認定心理療法士スーパーバイザー。 現在、医療法人岡クリニック、大阪公立大学に勤務。 著書に『からだの病いとこころの痛み』、『もの想うこころ』ともに〔木立の文庫, 2019年〕がある。共著書に『精神分析臨床での失敗から学ぶ』松木邦裕・日下紀子・根本眞弓編〔金剛出版, 2021年〕、訳書に『精神病というこころと出会う―ローゼンフェルド臨床の現在性』〔木立の文庫, 2025年〕、共訳書に『対象の影』館直彦監訳〔岩崎学術出版社, 2009年〕、『フロイト』後藤基規・弘田洋二監訳〔里文出版, 2007年〕、『被虐待児の精神分析的心理療法』平井正三・鵜飼奈津子・西村富士子監訳〔金剛出版, 2006年〕、『精神分析という経験―事物のミステリー』館直彦・横井公一監訳〔岩崎学術出版社, 2004年〕などがある。
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傷のあわい | 宮地 尚子
¥880
筑摩書房 2025年 ちくま文庫 ソフトカバー 240ぺージ 文庫判 - 内容紹介 - 米国で何者かになろうと海を越えた青年、夫の海外転勤に合わせて渡米した女性、人生に詰んで海外へ拠点を移した男性──。異国の地で、不安定さや傷つきに揺れながらも、そのとき成しえる最良の力で人生にぶつかっていく。その語りに、若き日の著者が耳を傾け、生きるということを同じ目線で考えた記録。 解説 奈倉有里 - 目次 - 文庫版まえがき はじめに 孤独の物語 アメリカン・ドリーム 移民候補生 リミナリティ PTSD(前編) PTSD(後編) ステレオタイプ 恋愛と結婚 邦人援護 二〇歳の人生落伍者 謎の女 パレスチナ レクイエム GOOD BYE=THANK YOU あとがき 解説 ひとりひとりの顔が見える 奈倉有里 - 著者プロフィール - 宮地 尚子 (ミヤジ ナオコ) (著) 一橋大学大学院社会学研究科特任教授。専門は文化精神医学・医療人類学・トラウマとジェンダー。精神科の医師として臨床をおこないつつ、研究をつづけている。1986年京都府立医科大学卒業。1993年同大学院修了。主な著書に『傷を愛せるか 増補新版』(ちくま文庫)、『トラウマ』(岩波新書)、『ははがうまれる』(福音館書店)、『環状島=トラウマの地政学』(みすず書房)、『傷つきのこころ学』(NHK出版)がある。
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雨の日の心理学 こころのケアがはじまったら | 東畑 開人
¥1,760
KADOKAWA 2024年 ソフトカバー 352ページ 四六判 - 内容紹介 - こころのケアははじめるものではなくて、はじまってしまうものである。 つまり、自主的に、計画的に、よく考えて契約書にサインしてから開始するものではなく、受け身的に、期せずして、否が応でも巻き込まれてしまうものです。 よく晴れた休日に散歩に出かけたら、突然大雨が降ってくるようなものです。 そういうとき、僕らは当初の予定を変更して、とにもかくにも雨宿りをできる場所を探したり、傘を買ったりしなければいけなくなります。 同じように、ある日突然、身近な人の具合が悪くなる。 子どもが学校に行けなくなる。パートナーが夜眠れなくなる。老いた親が離婚すると言い出す。部下が会社に来なくなる。あるいは、友人から「もう死んでしまいたい」と連絡が来る。 突如として、暗雲が立ち込める。 どうしてそうなったのか、なにをすればいいのか、これからどうなるのか、全然わからない。 でも、雨が降っていて、彼らのこころがびしょ濡れになっていることだけはわかります。 そのとき、あなたは急遽予定を変更せざるをえません。とにもかくにも、なんらかのこころのケアをはじめなくちゃいけなくなる。 傍にいるのがあなただったからです。その人があなたの大事な人であったからです。 ある日突然、あなたは身近な人に巻き込まれて、雨の中を一緒に歩むことになってしまう。 こういうことがどんな人の身の上にも起こります。 人生には、こころのケアがはじまってしまうときがある。 ですから、突然の雨に降られている方々に向けて、あるいは長雨の中で日々を過ごしておられる方々のために、心理学の授業をしてみようと思います。 雨が降ったら、傘を差すように、こころのケアがはじまったら、心理学が役に立つと思うからです。 ――(まえがきより) - 著者プロフィール - 東畑 開人 (トウハタ カイト) (著/文) 1983年東京都生まれ。臨床心理士。京都大学大学院教育学研究科博士後期課程修了。博士(教育学)。現在、白金高輪カウンセリングルーム主宰。専門は臨床心理学、精神分析、医療人類学。著書に『聞く技術 聞いてもらう技術』(ちくま新書)、『ふつうの相談』(金剛出版)など。
