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ユリイカ2023年6月号 特集=A24とアメリカ映画の現在
¥1,760
SOLD OUT
青土社 2023年 ソフトカバー 260ページ - 内容紹介 - ヴェールに覆われた眼差しが見つめる「ヴィジョン」 およそ10年前に設立されて以来、独自の存在感を放ち続けているA24。作品の「ヴィジョン」の精査に基づくキュレーション、ソーシャルメディアを活用した独創的なマーケティング、そしてそれらを「A24」らしさとして印象づけるブランディングは、いまやZ世代をはじめとする広範な層にリーチし、個々の作品の枠組みを越えたファンダムを形成しているように見える。第95回アカデミー賞で11部門にノミネートされ、作品賞・監督賞をはじめとする7部門を受賞したことにより大きな注目を集めた『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』(2023年)をはじめ、多くの作品を送り出してきた A24が見据える「ヴィジョン」は文字通り幻であるのか、あるいは「アメリカ映画」の未来を開拓する賭けとなり得るのか、今こそ見極めたい。 特集*A24とアメリカ映画の現在──『ムーンライト』『ミッドサマー』『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』、そして『aftersun/アフターサン』へ ❖メールインタビュー 余白の前で / シャーロット・ウェルズ 聞き手=編集部 ❖一〇年と、さらに前 A24が体現する制度・空間・主体像 / 渡邉大輔 アメリカの独立系映画スタジオが「映画」を挑発し続けた一〇年──主にA24とアンナプルナ・ピクチャーズの作品群をめぐって / 上原輝樹 A24前夜──アメリカン・インディについて私が知っている二、三の事柄 / 川口敦子 ❖未知への跳躍 マキシマリズムの共鳴 / 池田 学 一筋縄ではいかない創作性に富んだ未体験のフランス料理 / 石井勇一 ❖ベーグルの穴の周縁にて A24の「アメリカ映画」における東アジア系アメリカ人たち──『フェアウェル』『ミナリ』『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』 / 北村紗衣 A24の女たちとバース・ジャンプする / 児玉美月 ❖座談会 拡散するムード、孤絶した家 / 南波克行×五所純子×上條葉月 ❖分かれ道の先へ A24とは / 小西啓介 アートハウスとポップコーン / 降矢 聡 ❖A24の「アメリカ」映画 西部劇への考古学的アプローチ──ケリー・ライカート『ファースト・カウ』が描く一八二〇年代のオレゴン / 原田麻衣 最高でも最悪でもない私たち──アメリカ女性映画史とA24 / 入倉友紀 傷を抱えて生き続ける──バリー・ジェンキンス論 / 上條葉月 自伝としての社会学──『ミッドナインティーズ』について / 大山エンリコイサム ❖回帰する過去 ものがたりのよみがえり / 三宅 唱 さざなみと幽霊──すこしだけ場所でもあるわたしの記憶 / 金子由里奈 ❖裂け目からのぞくもの 何が「ゴースト」と呼ばれているのか──デヴィッド・ロウリー『A GHOST STORY/ア・ゴースト・ストーリー』 / 須藤健太郎 速歩きのショーン・ベイカー論 / 宮本法明 アレックス・ガーランド──閉ざされた城の中で語る英吉利人 / 西田博至 ❖対談 A24が送り出す恐怖とオルタナティヴポスターが出来るまで / 大島依提亜×ヒグチユウコ 司会=六本木 蔦屋書店映画コンシェルジュ ❖カラー口絵 A24へのオルタナティヴ・パースペクティヴ / 大島依提亜×ヒグチユウコ ❖拡散する不安 ホラージャンルの新たな地平──アリ・アスター作品が描く家族の恐怖と「救い」の物語 / 藤原 萌 ホラーがケアを見つめる時──ローズ・グラス監督の『セイント・モード/狂信』を中心に / 石田由希 ヨルゴス・ランティモスの精密なぎこちなさ、あるいはランティモス作品の詩学的分析──フロンティアとしてのプレステージ・ホラー / 西川秀伸 ❖資料 革新と包摂の狭間で──A24主要映画解題 / 冨塚亮平 ❖忘れられぬ人々*20 故旧哀傷・小田久郎 / 中村 稔 ❖物語を食べる*28 野蛮と憂愁に暮れなずんで / 赤坂憲雄 ❖詩 わたしは詩を書かない理由です / 和合亮一 ❖今月の作品 のもとしゅうへい・小川リ・小杉山立夏子・橋本圭 / 選=大崎清夏 ❖われ発見せり 未知の音をめぐるメモランダム / 小手川 将 表紙・目次・扉=北岡誠吾 (出版社紹介文より)
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小津安二郎と七人の監督|貴田 庄
¥1,045
筑摩書房 2023年 ちくま文庫 ソフトカバー 288ページ 文庫判 - 内容紹介 - 同時代の映画監督7人と対比し、オーバーラップを嫌い、3,4種類のショットを繰り返す小津独自の撮り方はどのようにして確立したのかを炙りだす。 - 著者プロフィール - 貴田庄 (キダショウ) (著/文) 1947年青森県弘前市生まれ。早稲田大学大学院修士課程修了、芸術学専攻。専門は映画史、西洋美術史、書物工芸史。著書に『小津安二郎のまなざし』『小津安二郎の食卓』『小津安二郎東京グルメ案内』『小津安二郎と「東京物語」』『原節子 あるがままに生きて』『原節子物語 若き日々』『志賀直哉、映画に行く』『高峰秀子 人として女優として』『西洋の書物工房』『マーブル染』『レンブラントと和紙』など多数。
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アートの力 美的実在論|マルクス・ガブリエル, 大池惣太郎(翻訳), 柿並良佑(翻訳)
¥2,420
SOLD OUT
堀之内出版 2023年 ソフトカバー 248ページ 四六変型判 縦188mm 横120mm 厚さ14mm - 内容紹介 - 美術の見方が変わる! 天才哲学者、マルクス・ガブリエルによる初の芸術論。アートとは一体何なのか?その根源に迫ることで、すべての作品に通じる鑑賞態度を拓く。 「私たちがアート作品を生み出すのではない。アート作品こそが、自分を存在させはじめるために、私たちを参加者として創造するのだ。」 ◉知識、背景を教える本ではありません! 特定のジャンルや作品ではなく、アート全般に通用する鑑賞態度や思考を掘り下げる本です。知識や経験が豊富でなくても、アートの世界に分け入ることができます。 ◉あらゆる作品に通じる鑑賞態度を学べます! この本がテーマにしているのは、アートとはそもそも何なのか、そして、作品に向き合う私たちの態度です。ジャンルを越え、あらゆる作品に通じる鑑賞態度が開かれます。 ◉身近な例が多数登場します! モネの絵画や、便器を用いた《泉》などの有名な作品はもちろん、スター・ウォーズのシリーズや、日々目にする太陽の光など、身近な例から美術についてじっくりと解説しています。 ◉そのほか本書で取り扱うトピック ・デザインとアートの違いは? ・アートの価値は何で決まるのか? ・なぜ、アートは人類の起源だといえるのか? ・現代アートはなぜ人を困惑させるのか? 『なぜ世界は存在しないのか』(講談社選書メチエ)等のベストセラーで知られる哲学者が、さまざまな疑問に答えつつ、美術の持つ力の根源に迫る。 目次 序文 ベルナール・ジェニエス アートの力 アートの価値 美学と知覚 パフォーマンスとしての解釈 自律性、ラディカルな自律性、オリジナリティ アートと(権)力 補論 懐疑のアート、アートの懐疑 訳者解説 大池 惣太郎 - 著者プロフィール - マルクス・ガブリエル (マルクスガブリエル) (著/文) 1980年生まれ。哲学者。29歳で、史上最年少のボン大学哲学科教授に就任。 「意味の場」をキーワードに自身の新しい実在論を展開するほか、シェリングやヴィトゲンシュタイン、ハイデガー等、ドイツ哲学を中心に著作を執筆し、世界的な注目を浴びている。本書のほか、『神話・狂気・哄笑』(堀之内出版、2015年)や、『なぜ世界は存在しないのか』(講談社、2018年)等の訳書多数。
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遠く、近く 掛井五郎のこと|佐伯 誠
¥2,420
リトルギフトブックス 2023年 ハードカバー 80ページ 袋とじ B6判 縦180mm 横128mm 厚さ13mm - 内容紹介 - 静岡に生まれ、日本各地にパブリックアートをのこした彫刻家、掛井五郎。銀座の画廊主は「ピカソが嫉妬するだろう」と言い、染色家・柚木沙弥郎さんは「掛井さんはぼくの先生です」と慕います。 初期のブロンズは重厚で力動にあふれたものでしたが、それに満足することなく、フォルムは歪んだり膨らんだり縮んだりして奔放な変容をつづけました。2021年秋、91歳で他界するまで創造力はとどまるところを知らず、小淵沢の収蔵庫には彫刻、ドローイング、ガラス、版画、オブジェなど、ジャンルを超えて2万点を超える厖大な作品がのこされています。 「会っているとき、もうこんな人には会えないんだぞ、そんな胸苦しさを覚えたことがあるだろうか? いきなり現れたのが掛井五郎だった。内に火焔獣を抱えた人で、そばにいるとたえず熱気がたちこめているのを感じた。それが動きを止めたとはとうてい信じられない。すべてがかき消されないうちに、覚えていることの欠片をひろいあつめておこうと思った」(佐伯誠/文筆家)。 あまりに変貌がめまぐるしいために、これまで論じられることの少なかった彫刻家の、知られざるチャーミングな素顔、謹厳さににじむユーモア、逸話のかずかず。版画10点の挿画とともにお届けします。 - 目次 - 移動祝祭日 なんてロマンティック 垂直人間 彫刻の小舎 夏の花 ニンゲンの面影 彫刻家のパレット 雷鳥の森のこと 帰郷 ミツバチのように バンザイ・ヒルのこと 彼の孤独 ノアの方舟 陽気さが溢れて止まらなくなった 工作人 おいしいのか不味いのか 長い長い旅 紙の彫刻 感情教育 異星からの隕石のように 「五郎さんと出会って」掛井芙美 - 前書きなど - 会っているとき、もうこんな人には会えないんだぞ、そんな胸苦しさをおぼえたことがあるだろうか? ずっと彫刻家というものにあこがれがあった。物質と精神とのあいだに渡された綱を渡る人。その渾身の力業こそは、創造の王にふさわしいと思ったから。いきなり、あらわれたのが彫刻家の掛井五郎だった。内に火焔獣をかかえた人で、そばにいるとたえず熱が立ち込めているのを感じた。 最後の最後まで、手を動かしつづけて止めようとしない創造力の塊だった。それが動きを止めたとは、とうてい信じられない。すべてがかき消されないうちに、おぼえていることを欠片をひろいあつめておこうと思った。 人の苦難にみちた人生を、軽々しく語ったり要約してはいけないことは知っている。できたとしても、ひっかき傷くらいのことしか書けないにきまってる。それでもこうして書いたのは、生前には叶わなかった対話をぞんぶんにしたかったからだ。闇のむこうに、鉛筆を走らせたり、粘土をこねたり、あたらしいカタチをこしらえているあなたの丸まった背中が見える。 - 版元から一言 - 2021年秋に掛井五郎さんが他界してから、いくつもの雑誌で特集が組まれ、追悼展が開かれ、彼がいかに多くの人に慕われてきたかを実感しました。昨年、日本屈指のギャラリストであるタカ・イシイの目に留まり、専属契約を結んで、海外への展開も始まっています。パリ、香港に続き、2023年6月にはスイスへ。世界最大希望のアートフェア、アート・バーゼルへ出展予定で、作品カタログの準備も進められています。掛井がのこした2万点もの作品に、翼が生えて、まさに飛び立とうとしています。 本書は、掛井さんがもっとも信頼を寄せていた文筆家、佐伯誠さんによる散文集です。佐伯さんといえば、パリの孤高のアーティスト、ローベル・クートラスを世に知らしめた人物です。 掛井五郎の彫刻作品についてだけではなく、これまでほとんど論じられることのなかった頑固な一面やチャーミングな素顔、夫婦の絆などがしたためられ、心が温かくなる一冊に仕上がりました。 並製ながら袋とじ、カバーなし帯つき、など、紙や製本にもこだわりました。手ざわりがよく、紙の本としての存在感があるのも特徴です。 - 著者プロフィール - 佐伯 誠 (サエキ マコト) (文) 文筆家。心がけているのは、go solo! 自分の足で歩いて、自分の目で見ること。原石を探すこと。第一発見者になること。不世出の天才、KAKEI GOROに遭遇してずっと、こんなにすごい作家がいるぞ! と叫びたかった。どうして論じられないのか、いつも不満と怒りを抱いてきたが、ようやく、KAKEI GOROの世紀が始まろうとしている。ささやかなオマージュの花束を捧げることができて、こんなにしあわせなことはない。
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民藝図鑑 第一巻|柳 宗悦
¥1,540
筑摩書房 2023年 ちくま学芸文庫 ソフトカバー 400ページ 文庫判 - 内容紹介 - 民藝の美しさを示すために日本民藝館の総力を結集して作成した図録。本巻では日本の陶磁、染織、民画、金工、木工、石工等を紹介。解説 白土慎太郎 これが民藝だ! 物の見どころを直に伝える伝説の図録、全三巻 === 従来とはまったく違う美の基準を打ち立て、「民藝」という美の「ものさし」を提示した柳宗悦。しかし、貴族的なものや鑑賞の為の作品よりも実際に日常生活で使われている雑器のほうにこそ見るべきものが多いとした柳の主張は、しばしば誤解されてきた。いわく、個人作家の作品を全否定するのか、生活工芸品であればなんでも美しいのか、と。そこで晩年の柳が、民藝同人の総力を結集して、自分たちが考える美しいものはこういうものだと図版と詳細な解説で総合的に示したのがこの『民藝図鑑』。第一巻では日本の陶磁、染織、民画、玩具、金工、木工、石工等の優品を紹介する。全三巻。 解説 白土慎太郎 === 柳宗悦が見せたかった物 生前に刊行された唯一の公式図録 全三巻 === 【目次】 図版 1皿(志野)/2 盌(信楽)/3 塩壺(自然釉丹波)/4 塵劫壺(色絵古九谷)/5 壺(色絵古九谷)/6 角瓶(赤絵伊万里)/7 甕(縄文土器)/8 盌(エベツ式土器)/9 甕(縄文土器)/ 10甕(縄文土器)/ 11甕(着色弥生式土器)/ 12大壺(常滑自然釉)/ 13 茶壺(流釉信楽)/ 14茶壺(流釉小代)/ 15甕(張附紋黒薩摩)/ 16せんべい壺(流釉小鹿田)/ 17茶壺(象嵌八代)/ 18大鉢(常滑)/ 19大皿(流釉小代)/ 20火消壺(掛釉丹波)/ 21水滴(無釉瀬戸)/ 22角鉢(鉄絵美濃)/ 23壺(鉄絵唐津)/ 24 壺(鉄絵唐津)/ 25大深鉢(織部)/ 26甕(掛釉丹波)/ 27 甕(押出紋釘彫流釉北地方)/ 103火鉢(唐金、山城京都か)/ 104花器(鉄製、山城京都か)/ 105湯釜(鉄製)/ 106飯釜(鉄製木蓋附)/ 107湯釜(鉄製木蓋附)/ 108足附釜(鉄製)/ 109手燭(唐金)/ 110燭台(真鍮製)/ 111蝦錠(鍍金)/ 112十手(鉄製)/ 113薬研(鉄製)/ 114岩偶、表(石彫)/ 115岩偶、裏(石彫)/ 116聖徳太子(木彫)/ 117阿弥陀如来(金銅仏)/ 118神馬(木彫)/ 119人形木型(木彫)/ 120人形木型(木彫)/ 121奉納面(木彫)/ 122幽霊面(木彫)/ 123田楽面(木彫)/ 124獅子頭(木彫、飛驒)/ 125塔(木彫)/ 126経机(木工)/ 127盛台(木工)/ 128自在鉤(木彫、北陸)/ 129自在鉤(木彫、北陸)/ 130墨壺(木彫)/ 131香合(挽物)/ 132厨子(木工)/ 133蛙股(木彫)/ 134蛙股(木彫)/ 135筆屋看板(木工、山城)/ 136きせる看板(木工、因幡) 序文(柳宗悦) 民藝の意義 日本の民窯 織物について 民画について 金工について 木彫その他 英文解説 解説『民藝図鑑』と柳宗悦(白土慎太郎) - 著者プロフィール - 柳 宗悦 (ヤナギ ムネヨシ) (著/文) 1889-1961年。民藝運動の創始者。美しいものの背後にある法則「美の標準」を示すために、東京駒場に私設の美術館「日本民藝館」を設立した。
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絵画の政治学|リンダ・ノックリン, 坂上 桂子(翻訳)
¥1,650
SOLD OUT
筑摩書房 2021年 ちくま学芸文庫 ソフトカバー 432ページ 文庫判 - 内容紹介 - ジェンダー、反ユダヤ主義、地方性……。19世紀絵画を、形式のみならず作品を取り巻く政治的関係から読み解く。美術史のあり方をも問うた名著。 === 美術における政治的なものをどのように考えるべきか。クールベやマネ、ドガ、スーラらの19世紀絵画を、ヨーロッパ/オリエント、純粋芸術/大衆芸術、男性/女性といった、作品を取り巻く社会的・政治的関係性から読み解いていく。フェミニズムをひとつの起点として、より広く「美術史を〝他者性〞の視点から考える」ことを目指した本書は、作品の新たな見方を提示するのみならず、従来の美術史規範の妥当性、イデオロギー性への問いをも投げかけた。表現形式の議論に偏重していた近代美術史に政治的視点をもたらし、美術史研究に新たな1ページを付け加えた名著。 === ヨーロッパ/オリエント、 男性/女性、純粋芸術/大衆芸術…… 〈他者〉から問う美術史 === 【目次】 1 アヴァンギャルドの創造―フランス、1830‐1880 2 クールベ、オリェールと場所の意味―19世紀美術における地域性、地方性とピクチャレスク 3 虚構のオリエント 4 カミーユ・ピサロ―気取らない眼 5 マネの《オペラ座の仮面舞踏会》 6 ファン・ゴッホ、ルヌアールとリヨンにおける織工の危機 7 レオン・フレデリックと〈労働者の人生の段階〉 8 ドガとドレフュス事件―反ユダヤ主義者としての画家の肖像 9 スーラの《グランド・ジャット島の日曜日の午後》―反ユートピアの寓意 文庫版訳者あとがき 原注/図版リスト - 著者プロフィール - リンダ・ノックリン (リンダ ノックリン) (著/文) 1931-2017年。ニューヨーク生まれ。美術史家。イェール大学、ニューヨーク大学インスティテュート・オブ・ファイン・アーツなどで教鞭をとった。論文“Why Have There Been No Great Women Artists?(なぜ偉大な女性の美術家はいなかったのか?)”で、フェミニズム美術史の論客として有名に。著書にWomen, Art and Power and Other Essaysなどがある。 坂上 桂子 (サカガミ ケイコ) (翻訳) 専門は美術史。早稲田大学文学学術院教授。
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拡張するイメージ 人類学とアートの境界なき探究|藤田 瑞穂, 川瀬 慈, 村津 蘭
¥2,970
亜紀書房 2023年 ソフトカバー 404ページ 四六判 - 内容紹介 - 《「イメージ」に何ができるのか? 》 ケニアと日本をつなぐ洗濯物、風を可聴化するハープ、コロナ禍を経た展示──。 アートと人類学が切り結ぶ場所で、まだ見ぬイメージの可能性を考える11人の、研究、制作、展示をめぐる実践と思考。 ---------------------- 人間が抱くイメージをさまざまに表現してきたアート。 文化や技術、宗教とそれらに結びついたイメージの多様性を探究してきた人類学。 ふたつの交わるところで研究、制作、展示を行う11人の実践から、「イメージ」という言葉が持つ豊かな広がりが見えてくる。 目次 ◆はじめに……藤田瑞穂、川瀬慈、村津蘭 第1部 拡張するフィールド ■村津蘭……妖術と人類学の喚起、その拡張 ■ふくだぺろ……具象のポリフォニー──音―イメージ知性の特徴とダイアローグ 第2部 隔たりなき表現活動──制作と研究 ■西尾美也……生を変容させるアートプロジェクト──《感覚の洗濯》の着想から記録方法まで ■柳沢英輔……エオリアン・ハープの実践を通して再構築される身体と環境の関係性 ■鼎談〈西尾美也×柳沢英輔×藤田瑞穂〉……芸術実践と学術研究をつなぐために 第3部 表現と社会──不可能を超えるイメージ ■奥脇嵩大……私は鹿で太陽で、そして私たち──近年の志賀理江子による協働を介したイメージ実践の可能性 ■佐藤知久+矢野原佑史……社会性の芸術──映像が媒介する接触と波動について 第4部 映画におけるイメージとその拡張 ■金子遊……ゾミアの遊動民──映画『森のムラブリ』をめぐる旅 ■小川翔太……証言者の沈黙をめぐる映像作家の表現(コトバ)──映像/イメージ 第5部 イメージの脈動 ■藤田瑞穂……パンデミック後のイメージの行方──「静のアーカイブ」から「動的イメージ」へ ■川瀬慈……イメージの吟遊詩人 ◆おわりに - 著者プロフィール - 藤田 瑞穂 (フジタ ミズ ホ) (著/文 | 編集) 〈京都市立芸術大学〉 1978年兵庫県生まれ。京都市立芸術大学ギャラリー@KCUAチーフキュレーター/プログラムディレクター。専門は現代美術、表象文化論。同時代を生きるアーティストやさまざまな分野の専門家と協働し、領域横断的な展覧会やアートプロジェクトの企画を手がける。 川瀬 慈 (カワセ イツシ) (著/文 | 編集) 〈国立民族学博物館〉 1977年岐阜県生まれ。エチオピアの吟遊詩人の人類学研究、民族誌映画制作に取り組む。人類学、シネマ、アート、文学の交差点から人文学における創造的な叙述と語りを探求する。 村津 蘭 (ムラツ ラン) (著/文 | 編集) 〈東京外国語大学〉 1983年大阪府生まれ。専門は映像人類学、宗教人類学、アフリカ地域研究。これまでの研究テーマとして、ベナンにおけるキリスト教系新宗教、妖術師、悪魔祓いなどがある。映像、フィクション、インスタレーションなど様々な方法による人類学を試行している。
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ギャラリーストーカー 美術業界を蝕む女性差別と性被害|猪谷千香
¥1,760
中央公論新社 2023年 ソフトカバー 232ページ 四六判 - 内容紹介 - 美大卒業後、作家として自らを売り出したいと願い、一人ギャラリーに立つ若い女性作家につきまとうギャラリーストーカー。美術業界の特殊なマーケットゆえに、被害から免れることが極めて難しいという異様な実態がある。孤軍奮闘する若い女性作家につきまとうのは、コレクターだけではない。作家の将来を左右する著名なキュレーター、批評家、美術家など、業界内部の権力者によるハラスメント、性被害も後を絶たない。煌びやかな美術業界。その舞台裏には、ハラスメントの温床となる異常な構造と体質、伝統があった! 弁護士ドットコムニュース編集部が総力を挙げて取材した実態と対策のすべて。 - 著者プロフィール - 猪谷千香 (イガヤチカ) (著/文) いがやちか 東京生まれ、東京育ち。明治大学大学院博士前期課程考古学専修修了。産経新聞文化部記者などを経た後、ドワンゴでニコニコ動画のニュースを担当。2013年からハフポスト日本版でレポーターとして、さまざまな社会問題を取材。2017年から弁護士ドットコムニュース編集部で記事を執筆。著書に『日々、着物に割烹着』、『つながる図書館』『町の未来をこの手でつくる 紫波町オガールプロジェクト』など。
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[新版] 我々は 人間 なのか? デザインと人間をめぐる考古学的覚書き|ビアトリス・コロミーナ, マーク・ウィグリー, 牧尾晴喜(翻訳)
¥3,300
ビー・エヌ・エヌ新社 2023年 ソフトカバー 320ページ A5判 - 内容紹介 - 人間はデザインし、デザインしたものによってデザインしかえされる── 大きな反響を呼んだ越境的デザイン考、待望の復刊! 先史時代(石器)から現代(ソーシャルメディア)に至るまでの、人間と人間が作り出した人工物(artifact)との関係性を照らし出すことで、現在の私たちが理解している「人間」と「デザイン」の意味に揺さぶりをかける本書は、近年注目を集める存在論的デザインへの最適な入り口となる一冊です。 新版となる本書では、デザイン実務家にして理論家、ソシオメディア株式会社の上野学氏による論考を加えています。 【目次】 1. デザインという鏡 2. 変化する人間 3. デザインの衝撃 4. 人間の発明 5. 装飾する種 6. ユートピアだより 7. よいデザインは麻酔である 8. 健康のデザイン 9. 人間中心デザイン 10. 摩擦のないシルエット 11. 身体のデザイン 12. 倒錯としてのデザイン 13. 亡霊のデザイン 14. 不安定な身体 15. ホモ・セルラー 16. 2秒間のデザイン 解説─「デザイン」をめぐる認識論的転回(伊村靖子) 論考─人間生成とデザイン(上野 学) ※本書は2017年10月に刊行した『我々は 人間 なのか?』に修正・新規原稿を加えた改訂新版です。構成内容に変更はありません。
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NHK出版 学びのきほん 感性でよむ西洋美術|伊藤 亜紗
¥792
NHK出版 2023年 ソフトカバー 144ページ A5判 - 内容紹介 - 著者初、美術の入門書。 2500年もの歴史をもつ「西洋美術」。その膨大な歴史や作品を理解するのは至難の業だ。しかし、5つの様式から「大づかみ」で概観すれば、「この時代の作品はこんな感じ」という全体像が見えてくる。キーワードは「感性」。古代から20世紀まで、約40点の名作を鑑賞して、感じたことを言葉にしてみれば、作品理解がぐっと深まる。「ルネサンスはなぜ重要なの?」「マネの何が革新的なの?」「ピカソはなぜ不思議な絵を描くの?」。美術館に行くと、まず解説を読んでしまう鑑賞法から卒業できる、新感覚の美術入門! カラー口絵32ページ。 - 著者プロフィール - 伊藤 亜紗 (イトウ アサ) (著/文) 東京工業大学リベラルアーツ研究教育院教授、東京工業大学科学技術創成研究院未来の人類研究センター長。東京大学大学院人文社会系研究科美学芸術学専門分野博士課程修了(文学博士)。専門は美学、現代アート。著書に『ヴァレリーの芸術哲学、あるいは身体の解剖』(水声社)、『目の見えない人は世界をどう見ているのか』(光文社新書)、『目の見えないアスリートの身体論』(潮新書)、『どもる体』(医学書院)、『記憶する体』(春秋社)、『手の倫理』(講談社メチエ)、『体はゆく できるを科学する〈テクノロジー×身体〉』(文藝春秋)など多数。
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日常と不在を見つめて ドキュメンタリー映画作家 佐藤真の哲学|佐藤真
¥3,850
里山社 2016年 ソフトカバー 368ページ 四六判 - 内容紹介 - 00年代、震災前。〔見えない世界〕を映そうとした映画作家の格闘の記録。 「その闇は、どこか遠くではなく、私の・この・日常の・ただ中に あることだけは、たしかなことである」 ー佐藤真(本書より) 『阿賀に生きる』『まひるのほし』『SELF AND OHTHERS』『花子』『エドワード・サイード OUT OF PLACE』などの映画作品や著作の多くで、《日常》と《不在》 にこだわり、90~00年代に潜む闇をじっくりとあぶり出したドキュメンタリー映像作家、佐藤真。公害問題と日常、障害とは、アートとは何か、グローバリゼーションに抗うこと、そして映像のもつ根源的な力とはー。不穏な時代のうねりを前に、佐藤は「世の中を批判的に見る目を持て」と映像と文章で私たちの眠った感覚を刺激しました。佐藤が世を去って9年。映像作家であり、90年代後半の類稀な思想家とも言うべきその哲学を掘り下げ、今を「批判的に」見つめ、未来への足場を探ります。 【寄稿・インタビュー】(50音順) 赤坂憲雄、阿部マーク・ノーネス、飯沢耕太郎、石田優子、大倉宏、奥谷洋一郎、香取直孝、小林三四郎、小林茂、笹岡啓子、 佐藤丹路、佐藤澪、佐藤萌、椹木野衣、諏訪敦彦、想田和弘、 萩野亮、秦岳志、旗野秀人、林海象、原一男、平田オリザ、松江哲明、 港千尋、村川拓也、森達也、森まゆみ、八角聡仁、山上徹二郎、 山本草介、ジャン・ユンカーマン、四方田犬彦 【目次】 第1章 阿賀と日常 第2章 生活を撮る 第3章 芸術 第4章 写真と東京 第5章 不在とサイード 第6章 ドキュメンタリー考 第7章 佐藤真の不在 ⚫︎グラビア 佐藤真1990’sトウキョウ・スケッチ ※佐藤真の東京スナップがミニ写真集として蘇る! 構成・解説:飯沢耕太郎 ⚫︎佐藤真と盟友・小林茂の往復書簡 ※佐藤真の手紙を初収録 ⚫︎ドキュメンタリーをめぐる思考を制作の流れに沿ってまとめた手書きの映画美学校授業配布プリント(カバーに使用) 他 - 著者プロフィール - 佐藤 真 (サトウ マコト) (著/文) 1957年青森県生まれ。東京大学文学部哲学科卒業。大学在学中より水俣病被害者の支援活動に関わる。1981年『無辜なる海』(香取直孝監督)に助監督として参加。1989年から新潟県阿賀野川流域の民家に住みこみながら撮影を始め、1992年『阿賀に生きる』を完成。ニヨン国際ドキュメンタリー映画祭銀賞など、国内外で高い評価を受ける。以降『まひるのほし』(98)『SELF AND OTHERS』(01)『花子』(01)『エドワード・サイード OUT OF PLACE』(05)など映画監督として数々の作品を発表。他に映画やテレビ作品の編集・構成の他、映画論の執筆など多方面に活躍。著書に『日常という名の鏡ードキュメンタリー映画の界隈』『ドキュメンタリー映画の地平ー世界を批判的に受けとめるために』『映画のはじまるところ』『まどろみのロンドンー映画作家の妄想スケッチ』(以上凱風社)『ドキュメンタリーの修辞学』(みすず書房)。京都造形芸術大学教授、映画美学校主任講師として後進の指導にも尽力。2007年9月4日逝去。享年49。
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エルメスのえほん おさんぽステッチ|100%ORANGE
¥2,640
講談社 2022年 ハードカバー 32ページ A4変型判 - 内容紹介 - 首輪を作ってくださいと犬がやってきました。りすはかばんを、カンガルーはポケットを。ものづくりの精神が描かれるエルメスの絵本。 - 著者プロフィール - 100%ORANGE (ヒャクパーセントオレンジ) (著/文) 及川賢治と竹内繭子の2人組で、イラストレーション、絵本、漫画、アニメーションなどを制作している。東京都在住。
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ジャンパーを着て四十年|今和次郎
¥946
筑摩書房 2022年 ちくま文庫 ソフトカバー 288ページ 文庫判 - 内容紹介 - 世間に溢れる「正装」「礼儀」「エチケット」、形ばかりになってはいないか? 「考現学」の提唱者によるユーモア炸裂の服装文化論集。解説 武田砂鉄 名著復刊!「考現学」的ファッション論 ユーモア炸裂、人間生活観察 結婚式でも大使の前でも、いつでもジャンパー。柳田國男に破門され、「考古学」ならぬ「考現学」を生み出した今和次郎。戦前戦後の日本社会を市中から観察してきた著者がユーモアたっぷりに服装文化の今と昔を語りだす。“服”とは一体なにものか? 世間に溢れる“正装”“礼儀”“エチケット”とは? “装う”という行為の意味は? 時代を超える隠れた名著、待望の復刊! 解説 武田砂鉄 目次 一、ジャンパーを着て四十年 1 着出したきっかけ/2 世間とのまさつ/3 先輩・同僚・学生・妻・子供たちは/4 演壇に立つと/5 ジャンパーの定義/6 冠婚葬祭には/7 宮様からの招きに/8 国際的パーテーに 二、礼儀作法の由来 1 作法の探求/2 礼儀作法という言葉/3 作法のいろいろなスタイル/4 日本の古代の礼儀作法/5 武家による破壊と建設/6 近世礼法の確立/7 明治の国粋主義という錯覚/8 世界大戦による改革/9 カトリック系のエチケット/10 プロテスタントと作法 三、きものの伝統 1 歴史のあら筋/2 哀感をそそる衣裳/3 外人に理解してもらうのは むずかしい/4 伝統という名でおどらされた明治時代/5 現実の問題 四、服装改良の歩み 1 改良とは/2 文化生活とショート・スカート/3 開襟シャツの提唱/4 第二次大戦前後 五、ユニホームとは 1 服装は魔物だ/2 田舎娘・銀座令嬢・婦人警官/3 ユニホームのいろいろ/4 警官と駅員で実験/5 有職故実の世界/6 儀礼的束縛で/7 士農工商の身分制から/8 明治以来の官員・軍人の礼服と制服/9 背広服と学生の制服/10 今日の企業経営学とユニホーム/11 インダストリアル・コマーシャル・シンボリカル 六、地方にみる洋服姿 1 農村婦人たち/2 戦災をのがれた都市の人々の姿 七、感覚か生活か 1 コマーシャル・アートの座席/2 生活行動と個性 八、流行の価値を探れば 1 益なくて害ありという思想/2 健康の点、家計の点からは/3 だが、流行は現代に生きる人々のもの 九、歓楽を求めるための衣裳〔古代エジプト〕 1 過去時代の服飾を味わう心/2 神像の化粧と衣裳/3 司祭・王の装い/4 歓楽にひたる女性の装い 十、神に近づくための服装〔初期キリスト教〕 1 教養高きローマの紳士のなやみ/2 信仰と服装/3 貧しい人々の服 装 十一、人づくりの哲学 1 試験のない学校/2 入学考査は/3 思い出/4 湧き立つ世論/ 5 知能的底辺の問題/6 「一日受刑者」となってみて/7 囲いの中だけにヒバリが巣を/8 そして刑務所と学校と 十二、大衆に直面して 1 被指導者の群れ/2 その性格はさまざま/3 生活以前の問題をどうするか/4 欲求のコントロール/5 上野と浅草/6 インテリと大衆とは反発する/7 生活指導者としてのインテリ 十三、家庭科にもの申す 1 門外漢として/2 倫理と技術と金/3 慣習の分析と流行の認識/ 4 地域・職域の問題/5 家庭と家庭の外との関連/6 その要点 十四、服装への発言 ショーかドラマか/造形美と服装美/服装行為/男性たちの服装/上品とか下品とか/結婚披露の会で演説/美しさと気楽さ/洋装か和装か/スタイルの定着/衣服と家計/衣料費一兆円/ソ連の流行誌/アメリカの服装/伝統とは/風俗という言葉/流行企画/家政学と被服学/家庭科はどこへいく/服装研究と民族学/民俗服をみる目/服装は道路と関係がある/近代的式典/衣服と機械/宇宙服とデザイン界/量産服への着眼/昔と今とこれからと/戦後の服装界/リアルとロマン あとがき 解説 TPOをわきまえない 武田砂鉄 - 著者プロフィール - 今 和次郎 (コン ワジロウ) (著/文) 1888年、青森県弘前市生まれ。建築学者、風俗研究家。1912年、東京美術学校図案科卒業。17年頃から郷士会へ参加、柳田国男らと農村・民家の調査を行う。20年~59年まで早稲田大学教授。23年の関東大震災後、吉田謙吉とともに「バラック装飾社」や「考現学」を始める。その後の研究範囲は服飾・風俗・生活・家政にまで及んだ。73年没。
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椅子の神様 宮本茂紀の仕事 |佐藤 卓, 佐藤 岳利, 宮本 茂紀
¥1,980
LIXIL出版 2019年 LIXIL BOOKLET ソフトカバー 76ページ 20.5 x 21 x 0.8 cm - 内容紹介- 新しいことへの挑戦と実験。素材への探求心。過去、現在、未来をつなぐ椅子づくりとは―― カッシーナ、B&B、アルフレックス、梅田正徳、藤江和子、隈研吾、ザハ・ハディド……。彼らは、日本初の家具モデラー、宮本茂紀(1937-)がともに椅子づくりに携わってきたメーカーであり、デザイナーたちである。一流の面々がこぞって宮本を頼るのはなぜなのか。 2019年4月、数年越しに完成した佐藤卓デザインによる、自然素材と伝統技術に拘った最高級のソファ「SPRING」の開発に関わった宮本。本書はその「SPRING」を皮切りに、デザイナーと試作開発に取り組んだいくつかの事例から職人としての宮本茂紀の仕事に迫る。ものづくりの現場に約65年。後半では、歴史から椅子の構造の変遷や技術を学び、素材や座り心地を追求し続け、さらに次世代へと継承する宮本の仕事も紹介する。写真家、尾鷲陽介の撮下しによる豊富な図版とともに、新たな角度から椅子の奥深さ、魅力に触れることのできる一冊。
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図説 セザンヌ「サント=ヴィクトワール山」の世界 | 工藤 弘二
¥3,960
創元社 2022年 ハードカバー 169ページ B5変型判 縦242mm 横190mm 厚さ17mm - 内容紹介 - 孤高の画家が描き続けた故郷の象徴、 「サント=ヴィクトワール山」の 軌跡をたどる。 故郷のプロヴァンスと芸術の中心地パリ―― “近代絵画の父”セザンヌは、 なぜフランスの南北を往復し続け、 繰り返し「サント=ヴィクトワール山」を描いたのか? 「描かれた場所」からその全貌を解説する初の一冊。 知られざる水彩画を含む すべての「サント=ヴィクトワール山」と その関連作を集めた、永久保存版資料。 〈全83点、完全収録!〉 ********* セザンヌは私の、 唯一無二の師だったのです! 私が彼の絵画にまなざしを向けたのを よく考えてみてください。 セザンヌの絵画を研究するのに 私は何年もかけました。 セザンヌ! 彼は、 私たち皆の父のようでした。 私たちを守ったのは、彼なのです。 ――パブロ・ピカソ * 私の人生を通じて 彼の素晴らしい模範がもたらした 道徳的な力と励ましのすべてを、 あなたがご存知でしたら! 暗中模索の時期、 いまだに私が自分を探していたときに、 自らの発見にしばしばたじろぎを感じて、 こう考えたものです。 「もし、セザンヌが正しいなら、 私は正しい」と。 セザンヌが間違えなかったことが、 私にはわかっていたのです。 ――アンリ・マティス ********* 【本書の特長】 ◆「サント=ヴィクトワール山」の歩みと 制作の背景、見どころを徹底解説。 ◆活動拠点となったパリと プロヴァンスの風景画も数多くクローズアップ。 ◆水彩画を含む「サント=ヴィクトワール山」 全83点を収録した永久保存的資料。 ********* 【シリーズ好評既刊!】 『図説 モネ「睡蓮」の世界』安井裕雄 著 すべての「睡蓮」を集めた永久保存版資料。 〈全308作品、完全収録!〉 ********* 目次 Chapitre I パリ ――画家になることを夢見て、芸術の都へ Chapitre II プロヴァンス ――強烈な陽光の下に生まれた新たな創造性 Chapitre III サント=ヴィクトワール山 ――郷土を象徴する「聖なる勝利の山」 (コラム) 川を描く 湖を描く 海を描く 岩を描く ガスケの見たセザンヌ セザンヌとルノワール ドニとルーセルの見たセザンヌ 想像のサント=ヴィクトワール山 セザンヌをめぐる画家たちの言葉 ……ほか - 著者プロフィール - 工藤 弘二 (クドウ コウジ) (著/文) 東北大学文学研究科博士課程単位取得退学。国立新美術館アソシエイトフェローを経て、現在、ポーラ美術館学芸員。担当した展覧会に「セザンヌ-パリとプロヴァンス」(2012年、国立新美術館)、「セザンヌ-近代絵画の父になるまで」(2015年、ポーラ美術館)、「モネとマティス-もうひとつの楽園」(2020年、ポーラ美術館)、共著に『セザンヌ-近代絵画の父、とは何か? 』(2019年、三元社)など。
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椅子クラフトはなぜ生き残るのか | 坂井素思
¥2,200
左右社 2020年 ソフトカバー 256ページ 四六判 - 内容紹介 - 古代エジプト文明以来、人間とともにあり、 専門職人たちの手でつくられてきた椅子は、近代を迎えて大きな転機を迎える。 大量生産と機械化の時代を潜り抜け、手づくりの小規模生産が生き残るのはなぜか。 ものづくりの将来と日本の経済社会を見据え、クラフツ経済の現代的課題と強みをさぐる。 【図版多数掲載】 近年、他業種の傾向に反して木製家具製造業で、 従業員3人以下の事業所数シェアが増大しているのはなぜだろうか。 椅子という商品には、生産や流通をめぐる経済構造に特別な点があるのだろうか。 作り手そして購入者にとっての、椅子の魅力と特性とは何だろうか。 近代椅子の名作、現代日本の椅子作家の作品に触れながら、 職人たちの小規模生産が生き残る椅子づくりの世界に多角的にせまる。 目次 まえがき 第一章 なぜ椅子クラフツを取り上げるのか 第二章 椅子クラフツ生産はいかに行われているか 第三章 近代椅子はどのように変化してきたか 第四章 なぜ椅子をつくるのか 第五章 椅子に何を求めるか 第六章 生活文化の中の椅子 第七章 椅子の社会的ネットワークはどのようにして可能か 終 章 椅子からみる経済社会 あとがき
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大竹伸朗 ビル景 1978–2019 | 大竹伸朗
¥10,780
HeHe 2019年 ハードカバー 322ページ B4判 - 内容紹介 - 未発表作品から最新作まで、約40年間で制作された「ビルのある風景=ビル景」全作品830点 常にその制作活動が惹きつけて止まない画家・大竹伸朗が、1978年から2019年現在まで約40年間継続して制作を続けている「ビルディング・シリーズ」=「ビル景」全作品を収めた画集が出来上がりました。 「ビル景」はその大半が実在の風景の写実ではなく、香港やロンドン、東京といったさまざまな都市の記憶と、意識的・無意識的に断続的に現れる「ビルのある風景」やそこに伴うイメージによって描かれた作品です。 2000年代に行われたいくつかの展覧会での経験から、作家自身が3年余りかけ「ビル景」作品を調査し、集められた全作品830点を時系列で収録しました。 「続けようとすることよりも続いていってしまう事柄の中に探しものはいつも隠れている」*と自身が綴るように、ひとりの作家の画業約40年の作品群からは、その時折々の環境や心情による変化が垣間見えると同時に、一貫して変わらぬ制作意欲と、得もいわれぬ圧倒的な説得力を持ちます。 B4サイズという大判の判型により質感や作品の細部まで再現され、活版印刷を施した装丁や、封入された特製付録「活版画」は、印刷物にこだわりのある読者にも満足の一冊となりました。 保坂健二朗氏(東京国立近代美術館)による、新しい角度からの大竹伸朗「ビル景」論も必読です。 *(大竹伸朗「見えない音、聴こえない絵」『新潮』2019年4月号) ・執筆:大竹伸朗、保坂健二朗(東京国立近代美術館) ・活版印刷スリーブケース入り ・付録:特製活版画(240 x 350mm)封入 - 著者プロフィール - 大竹伸朗 (オオタケシンロウ) (著/文) 1955年、東京生まれ。1980年代初頭より国内外で作品発表を開始。2006年初回顧展「大竹伸朗 全景 1955–2006」(東京都現代美術館)以降、東京、香川、ソウル、ロンドン、シンガポール等で個展。光州ビエンナーレ(韓国)、ドクメンタ(ドイツ)、ヴェネチア・ビエンナーレ(イタリア)、横浜トリエンナーレ、瀬戸内国際芸術祭はじめ国内外の企画展に参加。1986年に初作品集『《倫敦/香港》一九八〇』(用美社)刊行後、作品集や著作物、CD等多数発表。主な著書にエッセイ集『見えない音、聞こえない絵』『ビ』『ナニカトナニカ』(共に新潮社)、『既にそこにあるもの』、『ネオンと絵具箱』(共にちくま文庫)、絵本『ジャリおじさん』(福音館書店)等。エッセイ「見えない音、聴こえない絵」は、月刊文芸誌『新潮』に現在も連載中。2014年芸術選奨文部科学大臣賞受賞。 ohtakeshinro.com
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現代写真アート原論 「コンテンポラリーアートとしての写真」の進化形へ | 後藤 繁雄(編集), 港 千尋(編集), 深川 雅文(著/文)
¥2,200
フィルムアート社 2019年 ソフトカバー 296ページ 四六判変形 - 内容紹介 - インスタグラムの時代の現代写真アートとは何か? デジタル化以降、「真」を写す=写真という従来の概念が大きな変化を見せるいま、現代アートとしての写真の新しい「原論」を提示する。 銀板を用いた撮影法により写真が誕生してから180年──いまや誰もがスマートフォンで日常的に簡単に「撮影」でき、それを加工し、インスタグラムをはじめとするSNSで世界中に発信でき、インターネット上には無数の写真データが存在する時代となった。デジタル化し遍在化した「写真」には大きなパラダイムシフトが起こっている。 グローバル資本主義のなかで流動化するコンテンポラリーアートの世界でも、「写真アート」は存在感を増し、一点数億円で落札されるプリントからインスタレーションやプロジェクション、ポストメディウムの作家まで、新しく多様な才能が活躍している。コンピュータ・サイエンスやネット・テクノロジーの大きな変化に晒される社会で、いかに一枚の写真がアートとしての価値を生成するのか──本書は「現代写真アート」の世界をめぐる羅針盤となるだろう。 写真そのもののメディアとしての起源を問い、写真の概念の再定義を試みるとともに、現代アートとしての写真の可能性を問う、待望の一冊。 《本書で言及される主なアーティスト》 トーマス・ルフ、シンディ・シャーマン、ジェフ・ウォール、ヴォルフガング・ティルマンス、ソフィ・カル、ロバート・フランク、ベッヒャー夫妻、ゲルハルト・リヒター、アウグスト・ザンダー、アンドレアス・グルスキー、トーマス・シュトゥルート、ジグマー・ポルケ、森村泰昌、カンディダ・へーファー、スティーブン・ショア、ロバート・メイプルソープ、アンセル・アダムズ、杉本博司、ホンマタカシ...etc 目次 Introduction 現代写真アートは、どこに向かっているのだろう? 後藤繁雄 Article タイムマシン2019 港千尋 Discussion 1 現代写真アートのストラテジー 深川雅文+後藤繁雄+港千尋 現代アートとしての写真 タイポロジー──ベッヒャー夫妻 ニュードキュメントとニュートポグラフィックス ジェフ・ウォール ドイツのマテリアリズム シンディ・シャーマンとアメリカ 1989年──転換点 Discussion 2 90年代の写真 後藤繁雄+深川雅文+港千尋 モダニズム批判と「風景」 凡庸さへの移行 ポストモダンとヴィジュアル・カルチャー 90年代の日本とヨーロッパ ポストモダンの確信犯・ティルマンス Discussion 3 ポストヒューマンとアントロポセンの写真アート 港千尋+後藤繁雄+深川雅文 テクノロジーで汚された新世界 ソフィ・カルという特異点 追跡、盗撮、そして群衆 ドキュメンタリー写真の現在形 新しいプラットフォーム ポストメディウムの未来 新しいプレイヤーたち アジアとリンクする時代 Article テクノ・イマジネーション宣言 深川雅文 Keywords シャーロット・コットンと『写真は魔術』 深井佐和子 実験から生成へ──センサー時代の実験写真 小山泰介 現代写真の加工術 川島崇志 ワークショップ/フォトセラピー 多和田有希 ヴィレム・フルッサーとは何者か? 深川雅文 フォトブックフェア/アートブックフェア 中島佑介 可視化せよ──ドキュメントからフォトグラフィック・リサーチへ 小山泰介 G/P galleryという「ニューモデル」 後藤繁雄 Add 現代フォトアートをさらに学ぶための必須ブックリスト 後藤繁雄 History 現代写真アート年表1964–2018 - 著者プロフィール - 後藤 繁雄 (ゴトウ シゲオ) (編集) 編集者・クリエイティブディレクター、アートプロデューサー、京都造形芸術大学教授。1954年大阪府生まれ。坂本龍一、細野晴臣、篠山紀信、荒木経惟、蜷川実花、名和晃平らのアーティストブック、写真集を編集。展覧会のキュレイション、若手アーティストの発掘・育成・サポート、アートスタッフの育成などにも力を入れ、幅広く活躍している。 港 千尋 (ミナト チヒロ) (編集) 写真家、映像人類学者。多摩美術大学教授。1960年神奈川県生まれ。南米滞在後、パリを拠点に写真家として活躍。1995年より多摩美術大学美術学部で教鞭をとり、現在は同大学情報デザイン学科教授。2006年〈市民の色〉で伊奈信男賞受賞。2007年第52回ヴェネチア・ビエンナーレ美術展における日本館の展示企画コミッショナーをつとめる。 深川 雅文 (フカガワ マサフミ) (著/文) キュレーター/クリティック。1958年佐賀県生まれ。川崎市市民ミュージアム学芸員として、写真、デザイン、現代美術に関する展覧会の企画に携わる。代表的展覧会「バウハウス 芸術教育の革命と実験」(1994)、「遠近 ベッヒャーの地平」(1997)「生きるアート 折元立身」展(2016)など。現在、フリーのキュレーター/クリティックとして活動。
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ジオ・ポンティとカルロ・モリーノ: ドムスへの道程 | キース・イヴァン グリーン, 岸本 雄二 (翻訳)
¥3,960
鹿島出版会 2011年 ハードカバー 270ページ - 内容紹介 - 戦後イタリアデザイン界の天使と悪魔、父と異端児の相克。 モダニズムの全盛期、対極的な二人は生き生きとした建築本来の姿、「ドムス」を追い求めた。その詩的で不可思議な世界を、気鋭の建築学者が読み解く。
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世界のインディゴ染め | カトリーヌ・ルグラン, 出口雅敏(監修), 松永優(監修), 本田万里(翻訳)
¥4,950
パイ・インターナショナル 2019年 ハードカバー 288ページ A4変型判 縦226mm 横252mm - 内容紹介 - ジーンズから久留米絣まで、世界各国のインディゴ染めを網羅 パステルやインディゴにまつわる歴史的な側面にも焦点を当てながら、世界各国でインディゴ染めを行う少数民族・職人・工房を、美しい写真と図版満載で紹介。ヨーロッパ・日本・中国・ラオス・ベトナム・インド・アフリカ・中央アメリカなど、世界中の含藍植物を使った染め織りの文化に触れられる、大変貴重な1冊です。 - 著者プロフィール - カトリーヌ・ルグラン (カトリーヌルグラン) (著/文) グラフィックデザイナーとしてニューヨークとパリで活躍後、素材に興味を持ち、世界の民族衣装からインスピレーションを得たデザイナーとしてパリでブティックをオープン。テキスタイルを求めて世界中を旅し、各国の生地や衣装・アクセサリーを蒐集しているコレクターでもある。 出口雅敏 (デグチマサトシ) (監修) 1969年生まれ。東京学芸大学教授。専門は、文化人類学・フランス地域研究。モンペリエ大学大学院修士課程およびDEA課程修了(フランス民族学専攻)。早稲田大学大学院人間科学研究科博士課程修了。博士(人間科学)。著書に、『博物館という装置』(共著、勉誠社、2016年)、『ヨーロッパ人類学の視座』(共著、世界思想社、2014年)、『人類学ワークブック』(共編著、新泉社、2010年)など。 松永優 (マツナガユウ) (監修) 1947年生まれ。染色作家。立教大学文学部中退。29歳から染色を始め、その後多様な藍の制作と発表。団体展をやめ個展による発表活動をして現在に至る。2007年から2014年まで東京芸大非常勤講師。 本田万里 (ホンダマリ) (翻訳) 日本でデザインとパターンを学び、卒業後渡仏。子ども服のデザイナーとして活動後、彫金を学び職業適正証(CAP Bijoutier)を取得。主な翻訳書に『世界の美しいボタン』『世界の美しいブローチ』(ともにパイ インターナショナル)などがある。
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定本 映画術 ヒッチコック・トリュフォー | フランソワ トリュフォー, アルフレッド ヒッチコック, 山田 宏一 (翻訳), 蓮實 重彦 (翻訳)
¥4,400
晶文社 1990年 ハードカバー 384ページ B5判 - 内容紹介 - これが映画だ! 映画の巨匠が華麗なテクニックを大公開。サイレント時代の処女作から最後の作品まで、520枚の写真を駆使して語りつくす。「まず読み物として興味津々」「技術面だけにとどまらず、技術と主題、形式と内容とが不可分のものであることを、じつに説明的に語っているところに本書の真の価値がある。」(朝日新聞評)。 『荒木飛呂彦の漫画術』(集英社新書)内で、「必携の一冊」として紹介。
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民藝のインティマシー Intimité de MINGEI : 「いとおしさ」をデザインする | 鞍田 崇
¥2,750
明治大学出版会 : 丸善出版 2021年 ソフトカバー 216ページ 縦190mm - 内容紹介 - 第1章 Sympathy-民藝への共感(「ふつう」から考える 民藝をめぐる環境の変化1.社会 ほか) 第2章 Concept-民藝の思想(民家・民具・民藝 民俗学と民藝 ほか) 第3章 Mission-民藝の使命(藤井厚二・柳宗悦・和辻哲郎 民藝館という建物 ほか) 第4章 Commitment-民藝の実践(生活意識の高まりの変化 社会意識の高まりの変化 ほか)
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22世紀の荒川修作+マドリン・ギンズ 天命反転する経験と身体 | 三村 尚彦, 門林 岳史
¥3,520
フィルムアート社 2021年 ソフトカバー 315ページ A5判 - 内容紹介 - 「死なないために」とはどういうことなのか? 死すべき存在である人間の運命に戦いを仕掛けた 荒川+ギンズの思考に迫る、22世紀の身体論。 荒川修作没後10年、今なお刺激に満ちた現在進行形の 彼らの思想を再発見していく画期的論集。 「人間は死なない」──死と生命をめぐる独自の発想と思考から、数多くの 鮮烈な言葉を残した荒川修作+マドリン・ギンズ。「三鷹天命反転住宅」や 「養老天命反転地」をはじめとする彼らの作り上げた様々な空間は私たちの 五感や認識のあり方に大きく揺さぶりをかける。 不確かな時代であるがゆえの、身体への意識と関心の高まりにおいて、 荒川+ギンズの思想は多くの発見や刺激を私たちに与えている。 死すべき存在でありながら、生命を消滅させないという矛盾を荒川+ギンズは どのように乗り越えようとしたのか。 人間の運命に戦いを仕掛け、運命を根底から覆す「天命反転」を企てた、 今なお/今こそ現在進行形というべき荒川+ギンズの思想と実践を、 身体論を軸として、哲学、建築、美術、心理学、教育学などさまざまな専門分野 から再検討する。それとともに荒川+ギンズ関連の展覧会、パフォーマンスなどの 近年のプロジェクトを包括的に紹介する。
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ワールドシネマ入門 世界の映画監督14人が語る創作の秘密とテーマの探求 | 金子遊, 住本尚子(イラスト)
¥2,310
コトニ社 2021年 ハードカバー 264ページ 四六判 - 内容紹介 - 世界映画(ワールドシネマ)の巨匠たちは、いかにしてテーマと出遭い、それを創造へと結びつけるのか? さまざまな言葉、風土、食物、ファッション、生活習慣、信仰、音楽があふれる世界映画(ワールドシネマ)。 そこは、社会問題や歴史や民族がうずまく多様な社会です。 本書はそのコミュニティに参画するための手引きでもあります。 また、映画や映像を製作するためのモチベーションの源泉やテーマへの探求にも迫ります。 自身も映像作家である金子遊(多摩美術大学准教授)が、クリエイティブの根幹について、世界各国の巨匠や名匠14人に話を聴きました。 【対話監督一覧】 ペドロ・コスタ〈ポルトガルの世界的映画作家〉 黒沢清〈ホラーやスリラーで世界的名声を得た日本の名監督〉 トニー・ガトリフ〈ロマの血をわけたアルジェリアの名匠〉 想田和弘〈観察映画を生み出した日本を代表する記録映像作家〉 タル・ベーラ〈ハンガリーが生んだ孤高の映画マイスター〉 オタール・イオセリアーニ〈ジョージアの世界的巨匠〉 モフセン・マフマルバフ〈イランで最も人気がある名監督〉 ブリランテ・メンドーサ〈フィリピンの底辺をまなざす名匠〉 アミール・ナデリ〈世界的評価の高いイラン映画界の重鎮〉 アクタン・アリム・クバト〈キルギスの現代社会を問う名匠〉 キドラット・タヒミック〈フィリピンを代表する映画・美術作家〉 ベン・ラッセル〈アメリカの映像作家兼アーティスト兼キュレーター〉 リティ・パン〈クメール・ルージュの虐殺を、証言をもとに紐解く巨匠〉 ラヴ・ディアス〈フィリピンの怪物的映画作家〉 目次 まえがき 第1章 異文化を撮る 1リスボンのアフリカ移民――ペドロ・コスタとの対話[ポルトガル&カーボ・ヴェルデ] 2アフリカとメラネシアの民間信仰――ベン・ラッセルとの対話[バヌアツ&スワジランド] 3ウズベキスタンを旅する合作映画――黒沢清との対話[ウズベキスタン] 4アメリカ社会を観察する――想田和弘との対話[アメリカ] 第2章 ユーラシア文化の多様性 5ジプシーの人生と悲喜劇――トニー・ガトリフとの対話[フランス&ルーマニア] 6ハンガリー大平原と人間存在――タル・ベーラとの対話[ハンガリー] 7カフカースに響く人間讃歌――オタール・イオセリアーニとの対話[ジョージア] 8キルギスの伝統と近代化――アクタン・アリム・クバトとの対話[キルギス] 9動乱の中近東を見つめる――モフセン・マフマルバフとの対話[イラン&アフガニスタン] 10イラン、映画監督一代記――アミール・ナデリとの対話[イラン] 第3章 東南アジアの歴史と現在 11ポスト植民地としての群島――キドラット・タヒミックとの対話[フィリピン] 12マニラのスラム街を撮る――ブリランテ・メンドーサとの対話[フィリピン] 13フィリピン現代史の闇を暴く――ラヴ・ディアスとの対話[フィリピン] 14クメール・ルージュと生存者の記憶――リティ・パンとの対話[カンボジア] あとがき 前書きなど まえがき わたしたちはふだん、さまざまな映画をシネマ・コンプレックス、テレビ番組、レンタルDVD店、動画配信サービスなどを通じて鑑賞しています。そこで見られる映画のほとんどが、ハリウッドを中心とするアメリカ映画、それから日本、韓国、フランス、イギリスなどの先進国で製作されたものばかりです。それでは、世界のほかの国々ではあまり映画は撮られていないのでしょうか。そんなことはありません。ユネスコの2016年の統計データによれば、製作本数の世界1位はボリウッドを中心とするインドで1986本、2位は中国の856本、3位は映画大国アメリカの656本、4位は日本の610本、5位は韓国で339本、以降はイギリス、フランス、ドイツ、アルゼンチン、イタリアと続きます(「UNESCO Institute for Statistics UIS.Stat」を参照。http://data.uis.unesco.org/Index.aspx)。 それでは、どうしてほとんどのインド映画や中国映画などのアジア映画、中東やアフリカや南米でつくられているローカル映画はわたしたちの手元に届かないのでしょうか。それは、日本国内における映画興行の一般公開や、商業的な映像ソフトにおいてリリースされていないからです。それでも、わたしたちは何とかミニシアター、国際映画祭、シネマテークのプログラムによって、観られる機会は限られているものの、いま世界中でつくられている映画に触れることができます。 インド、中国、アメリカ、日本、韓国、フランス、イギリス、ドイツなどの映画大国以外の地域でつくられる映画のことをここでは「ワールドシネマ」と呼びましょう。この言葉は、アジア映画、ヨーロッパ映画といった地域別に映画を分類する方法とは別に、映画研究者のあいだで使われている概念です。ちまたでエスニック(民族特有の)料理という言葉が定着してから長い時間が経ちますが、「ワールドシネマ」もまた東南アジア、オセアニア、中東、アフリカ、南アメリカといった諸地域で暮らす民族に特有の映画という意味合いでは、「エスニック映画」といえるかもしれません。 東南アジア、オセアニア、中東、アフリカ、南アメリカといった地域でいったい何が起こっているのか、新聞記事やニュース報道やテレビ番組などを通じて、わたしたちはその情報を入手します。しかし、日本社会に生きている限り情報は十分といえません。なぜなら、北米やヨーロッパから入ってくる情報に比べて、それらの地域から入ってくる情報量は圧倒的に少ないからです。戦争、テロリズム、移民や難民、自然災害、貧困、環境破壊、グロバリーゼーションによる弊害など、世界ではさまざまな問題が起きています。物語の力と映像や音声のイメージによって成り立つワールドシネマには、言語や民族のちがいを越えて、わたしたちの五感をゆさぶり、そこに住む人たちのできごとを感情に訴えってくるという特徴があります。 本書の第1章「異文化を撮る」では、ポルトガル、アメリカ、日本といった先進国の映画監督たちが、自分の属する文化とは異なる土地で撮った作品、あるいはペドロ・コスタのようにアフリカからの移民を撮った作品について、その方法論や創作の背景にある考え方を語ります。そもそも彼らがどのようにして、文化的な他者というモチーフに出会い、それを映画の主要なテーマに据えることになったのか、創作のプロセスの説明を通じて披瀝します。それを読むことで読者は、遠くはなれた世界だと感じている地域にアプローチするための、さまざまな視座を手に入れることができます。 第2章「ユーラシア文化の多様性」では、ルーマニアやハンガリーなどの東欧から、西洋と東洋の境界にあるジョージアやキルギスを経由し、かつてペルシャと呼ばれた中近東の地域へと分け入ります。インド北部からトルコを経由して最後はスペインにまで達したロマ民族の歴史を映画に撮りつづけているトニー・ガトリフや、ジョージアとフランスを往還するオタール・イオセリーニの亡命作家的な歩みから、ユーラシア大陸における映画づくりのダイナミズムが感得されることでしょう。モフセン・マフマルバフは自国イランだけでなく映画の舞台を隣国のアフガニスタンやジョージアへと広げ、アミール・ナデリはアメリカや日本やイタリアへ移動をくり返しながら映画を撮りつづけています。 第3章「東南アジアの歴史と現在」では、いままさに黄金期を迎えているフィリピン映画における巨匠たちの映画づくりの話題を中心にして、スペイン、日本、アメリカの植民地にされてきた太平洋の群島国家の現代映画史をひも解きます。そこには独立後も、マルコスの独裁政権によって傷ついた民衆の姿や、南部のイスラーム過激派によるテロの動き、都市に形成されたスラム街での庶民のたくましい生活が描かれています。七〇年代にポル・ポト率いるクメール・ルージュがカンボジアを制圧しましたが、その圧政下で人びとがどのような強制労働を強いられたか、その暗黒の歴史を映像化するリティ・パンの言葉から、今日のワールドシネマが負っている課題の大きさが伝わってきます。 そうはいうものの、世界中で起きているこうした深刻な問題において、映画が即座に何かを解決できるというわけではありません。むしろ複雑に生起する事態を前にして、映画は無力だといわざるをえないでしょう。しかし、フィクションとドキュメンタリーとを問わず、映画には少なくともそこに住む人たちの姿を映像に映しだすことができます。そして、ワールドシネマのカメラは彼(女)らのなかへ入っていき、フィクションという形でその人たちのおかれた社会の状況や家庭のあり方、彼(女)らの抱く愛情や葛藤をつぶさに見せることができます。それは社会的な事実ではなく、映画のつくり手によるイマジネーションにすぎないけれども、ワールドシネマを見ることを通して、わたしたちは文化的な他者の内面を想像するきっかけをつかめるのです。 映画にはこの広い世界で起きている問題をただちに解決する力はありませんが、そこに問題があるということを指し示し、人びとに再考をうながすことはできる、ということです。さあ、筆者による道案内はここで終わりです。この先はみなさん自身の足でこの書物のなかを踏破しながら、柔軟な感性をはたらかせていろいろなことを感じとってください。1ページ1ページをめくっていくことで、さまざまな言葉、風土、食べ物、衣装、生活習慣、信仰、音楽があふれている「世界映画(ワールドシネマ)」のコミュニティに参画することになるのです。 版元から一言 クリエイターを志している若者をはじめ、これから何かを作りだしたいと考えている多くの方々が読者対象です。 世界の映画監督14人が、自身の映像製作で得た体験から、創造する際のモチベーションの源泉について、またテーマを選ぶ際のきっかけについて縦横無尽に語っていきます。 映画製作はもちろんのこと、映画以外の創造性へのヒントにもなる言葉があふれています。 プロ、アマ問わず、すべてのクリエイターに手にとっていただきたい一冊です。 - 著者プロフィール - 金子遊 (カネコユウ) (著) 映像作家、批評家。多摩美術大学准教授。アジア、中東、アフリカを旅しながら、映画とフォークロアを研究している。著書『映像の境域』(森話社)でサントリー学芸賞〈芸術・文学部門〉受賞。他の著書に『辺境のフォークロア』(河出書房新社)、『混血列島論』(フィルムアート社)、『悦楽のクリティシズム』(論創社)など。共編著に『映画で旅するイスラーム』(論創社)、『ジャン・ルーシュ』(森話社)ほか多数。 住本尚子 (スミモトナオコ) (イラスト) イラストレーター、映像作家。多摩美術大学版画学科卒業。誰かの生活と地続きな映画にまつわるウェブマガジン「Filmground」主宰。「Filmground」「IndieTokyo」「ドキュメンタリーマガジンneoneo」などを中心に、エッセイと映画イラストレーションを発表。インディペンデント映画やアニメーションを監督、製作している。近年は東南アジアへの旅にはまっている。