-
ケアとアートの教室 | 東京藝術大学 Diversity on the Arts プロジェクト(編集)
¥1,980
左右社 2022年 ソフトカバー 248ページ 四六判 - 内容紹介 - 藝大でアート? 東京藝術大学学生と社会人がともに学んだ「アート×福祉」プロジェクトの記録 アートという光を当てると、見えないものが見えてくる 「死にたい人の相談にのる」という芸術活動 認知症を老人の方とつくる演劇で疑似体験 お葬式まで出すホームレス支援 セックスワーカーの法律相談 西成のおばちゃんと立ち上げるファッションブランド トリーチャーの当事者と考える「普通」とは何か 介護、障害、貧困、LGBTQ+、そしてアート。様々な分野で活躍する人々と、東京藝術大学 Diversity on the Arts プロジェクト(通称DOOR)の受講生がともに学び、考える。 そこから見えてきたのは、福祉と芸術が「人間とは何かを問う」という点でつながっているということ。 ケアとアートの境界を行く17項!
-
中世イヌのくらし 装飾写本でたどる | キャスリーン・ウォーカー゠ミークル, 堀口容子(翻訳)
¥2,640
美術出版社 2024年 ハードカバー 96ページ 縦197mm 横158mm 厚さ14mm - 内容紹介 - イヌは人類最良の、心の友? 大英図書館の豊かなコレクションでお届けする装飾写本シリーズ、『中世ネコのくらし』に続く第2弾! 人類最良の友にして忠実な仲間、イヌ。気まぐれに自分のしっぽを追いかけて回ることもあれば、血に飢えた獣になることもある生き物。 そんなイヌたちは、美しい中世の装飾写本にも様々な姿で登場します。本書は大英図書館の装飾写本コレクションから、装飾写本に描かれた個性的なイヌの絵を集めました。拡大図を多く掲載し、ページの余白に小さく描かれたイヌであっても、じっくり眺めるとその表情の豊かさに驚かされます。 さらに中世の文献を紐解き、中世のイヌにまつわる逸話をご紹介します。飼い主を守り戦う勇敢な忠犬、貴族にかわいがられ贅沢にくらす愛玩犬、イヌに関する不思議な迷信など……中世の人々な豊かな文化と、イヌのくらしぶりに触れてみませんか? The British Libraryから刊行した、キャスリーン・ウォーカー=ミークル著『DOGS in Medieval Manuscripts』の日本語翻訳版。
-
中国手仕事紀行 増補版 | 奥村 忍, 在本 彌生(写真)
¥2,970
青幻舎 2024年 ソフトカバー 328ページ 四六変型判 - 内容紹介 - 少数民族たちの“生きた”民具を求めて、中国の奥地を彷徨い歩いた10年間の記録。 新型コロナパンデミック後の雲南・貴州の旅を新たな章として加筆した増補版。 民藝とは民衆的工芸の意味で、1920年代半ばに柳宗悦が生み出した言葉ですが、無名の職人が作った実用的な工芸品に、美術品に負けないほどの美しさがある、と柳は主張しました。 日本や世界の各地から集めた手しごとを中心とした生活雑貨のお店「みんげい おくむら」は、店主の奥村忍が柳をはじめ、民藝の先達たちの思いを受け継ぎつつ提案する、今の時代、今の生活に合った「みんげい」の品々が人気のウェブショップです。 その奥村が魅せられ、2019年までほぼ毎年旅をしていたのが中国です。その中でも、本書で取り上げる雲南省と貴州省には、もっとも多く足を運んでいます。秘境、絶景と呼ばれるような場所が、そこかしこにある雲南省。かたや最貧の省と呼ばれながらも、独自の文化を今なお残す貴州省。このエリアに惹かれたきっかけは、一枚の布だったといい、「こんなものが作られている場所を訪ねてみたい」という気持ちで飛び込んでみたといいます。 奥村にとって手仕事とは、単に陶芸や織物、編組品のようなものだけではなく、たとえば、棚田も、中国茶も、あるいは郷土料理、建築、そういった文化、暮らしのこと、すべてを含んでいるといい、本書でも雲南・貴州の手工芸品を紹介しつつ、少数民族の暮らしぶりや土地々々の風俗に触れています。 奥村は食通としても知られていますが、中国の田舎の旅では食が何よりの楽しみといい、次から次へと登場する日本では見ることのできない料理の数々も本書の魅力のひとつといえるでしょう。 日本で雲南・貴州両省について調べようとしても情報は限られています。本書は奥村が現地で出合った手仕事の紹介のみならず、旅のルポにもなっており、基本的な英語すらほぼ通じない、グーグルも使えない土地でどう行動すべきか、ガイドブック以上に心強いアドバイスとなるはずです。 また、本書の写真は、世界各国を旅して作品を撮り続けている在本彌生が奥村に同行して撮影したものです。在本の感性によって現地の色彩が鮮やかに切り取られています。 本書の初版が発売されたのは2020年1月末、まさに「謎の疫病」の発生源は中国であるらしいとニュースで流れ始めた時のこと。疫病は瞬く間に国境を越え、世界は閉ざされ、奥村も中国への買い付けに行けなくなってしまいました。 本書は2024年になりようやく本格的に中国買い付けを再開して、4年数ヶ月ぶりに訪れた雲南・貴州の旅の記録を新たな章として加筆した増補版です。新型コロナ以前の中国の様子を伝える資料としても、新型コロナ以後に起こった大きな変化を知ることができる意味でも、貴重な内容になっています。 - 著者プロフィール - 奥村 忍 (オクムラシノブ) (著/文) 1980年千葉県生まれ。慶應義塾大学卒業後、各国を放浪。のち商社、メーカー勤務を経て国内外の手仕事の生活道具を扱うWEBショップ『みんげい おくむら』を2010年にオープン。月の2/3は産地を巡る旅をしながら、手仕事・旅・食に関する執筆も手がける。 在本 彌生 (アリモトヤヨイ) (写真) 東京生まれ。大学卒業後外資系航空会社で乗務員として勤務、乗客の勧めで写真を撮り始める。2003年に初個展「綯い交ぜ」開催、2006年よりフリーランスフォトグラファーとして本格的に活動を開始、雑誌、書籍、展覧会で作品を発表。 衣食住にまつわる文化背景の中にある美を写真に収めるべく世界を奔走して いる。著書に、写真集『MAGICAL TRANSIT DAYS』(アートビートパブリッシャーズ刊)、『わたしの獣たち』(青幻舎刊)、『熊を彫る人』(小学館刊)など。
-
絵画をみる、絵画をなおす 保存修復の世界 | 田口かおり, 米村知倫 (イラスト)
¥1,760
偕成社 2024年 ソフトカバー 183ページ 1.9 x 15 x 21 cm - 内容紹介 - 「もう二度と来るもんか!」と思っていたイタリアに留学、絵画修復家に。修復家は、つぎのだれかにバトンをわたすリレー走者のようなもの。きれいになおせばそれでいい? とけて、燃えて、きえてしまうアートをどうする? 悩みはつきません! 絵や彫刻をなおすってどういうこと? 美術作品が生まれたときのすがたをさぐりながら、さまざまな秘密をときあかし、これからのかたちを考える、保存修復の世界。 目次 まえがき 修復家への道 コラム 絶品! リボッリータ 絵画は何でできている? コラム 修復や調査の道具 展覧会の点検編 コラム 作品の下には何がある? 修復する? しない? どちらも正しい コラム チーム制と公開修復 レンブラントの《夜警》 絵画の寿命はどれくらい? 作品はいつ生まれていつ死ぬの? コラム 「なおした場所がわかる修復」って? 保存修復の未来 コラム 作品への暴力、絵画の生態学(エコロジー) あとがき ブックガイド
-
Savoir&Faire 土 | エルメス財団
¥2,970
岩波書店 2023年 ハードカバー 406ページ 函入 A5判 縦210mm 横148mm 厚さ31mm - 内容紹介 - 自然素材にまつわる知識や技術の共有を目指すエルメス財団の取り組み、スキル・アカデミー。「木」に続く本書は、フランスで編まれた書籍シリーズ〈Savoir &Faire〉から9本を厳選・翻訳、日本語版オリジナルコンテンツを加え、陶芸、アート、歴史、建築、工業、民俗学などさまざまな切り口から、身近な素材である「土」に迫る。カラー図版多数。 目次 日本語版に寄せて……オリヴィエ・フルニエ 土とやきもの……ユーグ・ジャケ 黒い土と赤い土……赤坂憲雄 Ⅰ 土と生きる 土壌の豊かさと持続可能な農業における粘土の役割……リディア&クロード・ブルギニョン 生の土の建築──その様々な起源から今日まで……ティエリ・ジョフロワ 土と左官から見た日本の建築史……多田君枝 工業用セラミック分野での主な進歩……アンヌ・ルリッシュ ポートフォリオ《日本典型》……柴田敏雄 Ⅱ 土とつくる 技術、欲望、分類、恐怖──土と向き合う現代日本のアート……バート・ウィンザー=タマキ コンテンポラリー・アートにおける土……ジル・A・ティベルギアン ミケル・バルセロ──地形図 アトリエ訪問……ユーグ・ジャケ 土と手を合わせる……カネ利陶料 ポートフォリオ《土と身体》 Ⅲ 土と動く、土は動かす 釉薬……ジャン・ジレル 西洋陶磁略史──そのいくつかの起源から18世紀末まで……クリスティーヌ・ジェルマン=ドナ アドリアン・デュブシェ国立磁器美術館コレクションでたどる磁器の歴史……セリーヌ・ポール 技術と継承──海を越えて産地になるまで……三川内焼 ポートフォリオ《記憶のかけら》……小川待子、高橋マナミ 日本語版あとがき……説田礼子 写真・図版クレジット 著者・訳者略歴
-
ラルース百科事典の芸術 フランス老舗出版社の至宝 | ラルース(編集), 神奈川 夏子(翻訳)
¥3,190
グラフィック社 2024年 ハードカバー 176ページ A4変型判 - 商品紹介 - フランスの老舗出版社「ラルース」が19世紀から発行してきた百科事典から、多岐にわたるジャンルの色鮮やかなレトロイラストを集め、一冊にまとめました。 みっちりと敷き詰められた美しい博物画が、現代の解説を添えて紹介されています。 - 目次 - 羽ばたく者たち/陸上に住む仲間たち/深海の生き物たち/畑での仕事/果樹園とブドウ園で/庭のさまざまな顔/都会の喧騒/工房にて/舞台に集まれ!/場の騒乱のなかで/挿絵画家の紹介 - 著者プロフィール - ラルース (ラルース) (編集) ラルース社は19世紀半ばから、各種の事典類を多数出版してきたフランスの超老舗出版社。1852年創業。 特に辞書や百科事典で知られる出版社。現在はアシェット・グループ。 神奈川 夏子 (カナガワ ナツコ) (翻訳) 東京都出身。日仏英翻訳者。上智大学博士前期課程修了。サイモンフレーザー大学日英通訳科修了。 訳書『偉大なる指揮者たち』(ヤマハミュージックエンタテイメントホールディングス)、『モードデザイナーの家』(エクスナレッジ)、『BIG MAGIC「夢中になる」ことから始めよう』、『最新世界紛争地図』(共にディスカヴァー・トゥエンティワン)、『脚・ひれ・翼はなぜ進化したか』(草思社)、『CIMARRON シマロン ブラック・アイデンティティー ―南北アメリカの仮装祭』、『インドの信仰と仮装 分かち合う神々の姿 AAM AASTHA』(共に青幻舎)他。
-
【バーゲンブック】新編 われわれはなぜ映画館にいるのか | 小林 信彦
¥1,700
キネマ旬報社 2013年 ハードカバー 326ページ A5判 ※定価 3080円 バーゲンブック: 定価よりも値引して販売することのできる新品の本です。 (およそ定価の50%〜70%ほどの価格です) 新品とはいえ、経年による劣化などが見られる場合もございますので、ご理解の上ご購入くださいませ。 - 商品紹介 - マルクス兄弟、ハンフリー・ボガート、ジョン・フォード、ビリー・ワイルダー、ドン・シーゲル、MGMミュージカル、ジョージ・ロイ・ヒル、黒澤明、日活活劇、アルフレッド・ヒッチコック、クリント・イーストウッド、小林旭、双葉十三郎、笠原和夫…、小林信彦の映画をめぐるすべてを、この一冊に凝縮。
-
自分につながるアート 美しいってなぜ感じるのかな? | 池上 英洋
¥1,320
筑摩書房 2024年 ちくまQブックス ソフトカバー 96ページ 四六変形判 - 内容紹介 - 学校には「美術」の授業があるけれど、他の科目と違ってどう関わったらいいかがわからない。しかし例えば人間は太古から今もなお、絵を創作し、「美しさ」を追求してきた。「美術」とか「美しさ」って何だろう? アートを切り口に人間らしさとは何かを考えてみよう。 === ・・・・・・一冊のノートや一本のペン、一着のシャツを選ぶだけでも、私たちは頭の中にある「これが自分にとって美しい」と思える基準に照らして判断を下します。選択の自由さえあれば、すべての人がこのような行動を取ります。それだけ、人間は「美しいかどうか」を重視する生きものと言えます。そして面白いことに、地球上に住んでいる無数の種類の動物のなかで、そのようなことをする生きものは人間だけなのです。考えてみると、これはとても不思議なことです。 私たちはなぜ「美」にそれだけこだわるのでしょう。そのような美を追い求めるために、人類は長い歴史のあいだ、ずっと絵を描き続けてきました。なぜ人間だけが、そのようなアートを必要とするのでしょう。──ではこれから、皆さんと一緒に人類だけがもつこの不思議な価値観について考えていきましょう。それはひいては、人間ってなんだろう、私たちは他の動物とどこが違うのだろう、といった考察へと繋がっていくはずです。(はじめにより) 目次 第1章 人間とアートは切っても切り離せない?! 第2章 アートはどのように生まれたか? 第3章 アートが“働く”とは? 第4章 アートが面白いってどういうこと? - 著者プロフィール - 池上 英洋 (イケガミ ヒデヒロ) (本文) 1967年、広島県生まれ。東京藝術大学卒業、同大学院修士課程修了。現在、東京造形大学教授。専門はイタリア・ルネサンスを中心とする西洋美術史・文化史。『レオナルド・ダ・ヴィンチ――生涯と芸術のすべて』(筑摩書房)で第4回フォスコ・マライーニ賞を受賞。『西洋美術史入門』(プリマー新書)、『西洋美術史入門〈実践編〉』(プリマー新書)、『パリ 華の都の物語』(ちくま新書)など著書多数。
-
北のボーダレスアート | 菊地 雅子
¥3,740
ミツイパブリッシング 2024年 ソフトカバー 240ページ A5判 - 内容紹介 - 推薦・日比野克彦(東京藝術大学学長)「ひとって、イイよねー!ひとって、スゴイよねー!」 アール・ブリュット、アウトサイダーアートとも呼ばれる、あるがままの人間から湧き出す圧巻のアートがいっぱい。障害者アートと歩んで30年の創作アドバイザーが、北海道で活動する45名の作品約130点をセレクト。北海道新聞の連載を元にした作品紹介のほか、対談や創作拠点をもつ施設も掲載。作品と同時に創る人びとの魅力も伝わり、生きる力をくれる作品集。 目次 人と作品 01 遠藤雛 スイーツ好きの夢を実現 02 木村幸 「ひたむきさ」宿す昆虫画 03 水野泰夫 望みを描く魔法の絵 04 鉄地河原勝彦 大胆な線と色 圧倒的な存在感 05 吉田幸敏 深い色合い ユーモラスな生き物 06 菊地政司 「干支」画面いっぱいに 07 成田信之 あふれる思い 家族への愛情 08 のりぴー 極彩色 記憶の強烈な再構成 09 Chieko Yokoyama 「きれいな色」丁寧に塗り重ね 10 K E I TA 大胆な解釈 モチーフにオーラ 11 蛯子陽太 愛着が生み出すインパクト 12 満武和 乗り物大好き。幸福を追求 13 角田川清 人生の豊かな宝箱 14 高丸誠 創作と収集のサンクチュアリ 15 横山篤志 「○○町○○丁目○○薬局」のサトちゃん 16 MR. やっちゃん 驚嘆の記憶力 都市と建物、忠実に 17 岸田修一良 時間上手な多種創作人 18 阿部英樹 こだわりを見つける面白さ 19 粟田隼也 色とりどりのMY人生 20 伊藤考洋 異素材をユニークに 21 明子 重ねる創造の喜び 22 冨原廣子 王と王妃、乙女心の幾千夜 23 田湯加那子 激しく強く刻みこむ 24 三浦明菜 昭和の薫り 大絵巻 25 只野誠 飲食店の献立 マス目に細かく 26 川越智志 街の風景 ほのぼのと 27 松嶋ひろみ 紙に重ねられた言葉 28 宮林聡太 偶然と意図 はざまの美 29 臼井愛 存在位置を確かめる 30 内海雅充 凹凸が生む、独特の世界観 31 石岡美樹 1 匹ずつ異なる熱帯魚 32 佐藤朱美 極彩色うごめく「死と再生」 33 musou 壮大な物語と夢の実現力 34 畠山史織 想像と乙女心 自分だけの宝物 35 朝霧千景 「女の業」妖しくおしゃれに 36 俉樓賢太 野球選手、描きため数千枚 37 越智明美 胎児を連想させる人物表現 38 佐々木和哉 ぬけ感、抜群 センス上等 39 杉田希望 かわいくてシニカル 独自の魅力 40 ネコきよし 精密の陰 わずかな狂気 41 TOMO4 感じていることを可視化する 42 千葉由佳里 組み合わせの美 細部に発見 43 ゆうくん 独自の色 力強い線 44 笹原竜太 行ってみたい場所 優しく緻密に 45 岡﨑莉望 「いくつもの自分」が筆をとる アートはボーダレス〈鼎談&対談〉「最初の水は繋がっている~障がい者アート(アール・ブリュット)がもたらすもの」板垣崇志×菊地雅子×浮ヶ谷幸代(進行)/「アートで対等な関係を探る~私たちの創作支援活動」菊地雅子×堀川真×三橋純予/「目に見えない価値を見つける~障がい者アートのグッズ化と可能性」皆川明×菊地雅子 施設案内「アートが生まれるところ」かたるべの森美術館/studio BREMEN/アート工房 Qila-9/tomoni art/ペングアート 北海道ボーダレスアート拠点マップ People and Artworks 前書きなど 私は北海道の旭川の北東に位置する当麻町に住んでおり、障がい者アートの指導と、注文制のお菓子屋さんをやっています。また、学芸員でありアートディレクターでもあります。 過去30年間、障がいのある方々のアート作品に携わってきました。この間、彼らの作品を取り巻く環境は、大きく変わりましたが「そのままの自分でいいんだよ」という彼らの作品から受け取るメッセージは変わらず、一貫しています。このメッセージは、私の生きる力と活動の原動力となってきました。 私が活動の中で常に心に留めているのは、創作活動をすることによって生まれる多面的な価値をどうやったら伝えられるかです。売れる絵、グッズを作るのにぴったりの絵、描くことで心が安定する絵、欲しいものを描いた絵、図らずもリハビリや療育的な効果をもたらす絵、描き終わらない絵、などなど……そこには、いろんなタイプの表現物とさまざまな価値があります。サポートする側が多面的な価値を持って接することで、売れる絵を描けること以外にも、無数の価値があるということを、創作する人たちと共有することができるのです。 そもそも、私がアートを志したのは、価値があるとかないとかの二項対立の世界から自由になるためでした。自分の持っている価値判断の基準を疑い続けることを、やめてはいけないといつも思っています。 本書を通じて、障がい者アートの多様性と、創作する作者自身の魅力をもっと多くの方に知っていただけたらうれしいです。 - 著者プロフィール - 菊地 雅子 (キクチ マサコ) (著/文 | 編集) 1965 年千葉県生まれ。一般社団法人BASH(ボーダ レスアートサポート北海道)代表。多摩美術大学美術 学部デザイン科染織デザイン専攻卒業。当麻かたる べの森で創作アドバイザー(2002~2020年)、北海道 アールブリュットネットワーク協議会事務局(2015 ~ 2018年)。他に、ともに福祉会、南宗谷ひだまりの会 の創作アドバイザー、森のようちえんぴっぱら(北海 道鷹栖町)のアートナビゲーターを務める。『学芸員が ミュージアムを変える! 公共文化施設の地域力』(水 曜社、2021年)に寄稿。注文制のお菓子屋さん KOO’S GARDEN 主宰。北海道上川郡当麻町在住。
-
開講!木彫り熊概論 歴史と文化を旅する | 北海道大学大学院文学院 文化多様性論講座 博物館学研究室(編), 田村 実咲(編), 増子 博子, 是恒 さくら, 今村 信隆, 寺農 織苑, 尾崎 織女, 阿部 麟太郎, 武永 真, 山崎 幸治, 青沼 千鶴
¥2,420
文学通信 2023年 ソフトカバー 368ページ 四六判 - 内容紹介 - あなたの元にやってきた木彫り熊は、どこから来たのか? 木彫り熊概論、開講します! 1970年代には「現在道内で生産される木彫り熊は、年間約250万個、ザット15億円」とも伝えられ、北海道の一大土産品産業になった、木彫り熊。 本書は、北海道木彫り熊が歩んできた歴史を振り返り、土産店、職人・作家、有志の研究会、展覧会を企画した博物館や大学など、木彫り熊に携わる人々の多彩な活動と現場の声から、木彫り熊をあらたに捉え直し、その魅力と私たちとの関係とを明らかにします。 さらに研究としての木彫り熊の裾野を広げるため、絵画的な方法で表現されたクマ・ヒグマの事例より、美術・文化の方面からクマについて考えていきます。また、ミュージアム・コレクションとしての木彫り熊の可能性にも注目します。博物館はどのように私たちの生活にありふれた資料を収集・保存し、展示しているのか。資料としての位置づけや在り方、コレクション形成のプロセスの事例をもとに、木彫り熊のこれからを探ります。 カラーで「木彫り熊基礎知識」を掲載するほか、図版・資料も多数掲載。付録として「木彫り熊関連年表」も完備。 執筆・インタビューは、田村実咲、武永真、山崎幸治、青沼千鶴、増子博子、是恒さくら、今村信隆、寺農織苑、尾崎織女、阿部麟太郎、(有)トミヤ澤田商店、遊木民。 【当時の暮らしや出来事を知る当事者が少なくなるなか、聞き取りと情報共有、技術伝承は喫緊の課題といえます。木彫り熊の歴史が再評価され、新たな価値への注目が高まる今こそ、少しでも多くの現場や当事者の記憶と証言を集め、後世へつないでいくことが、本書の役割であると考えています。】…田村実咲「はじめに」より - 目次 - 口絵 木彫り熊基礎知識 はじめに(田村実咲) 凡例 1 木彫り熊を旅する 木彫り熊とは何だろうか? どこから来て、どんな旅路をたどり、 どこへ向かおうとしているのだろうか? 木彫り熊の足跡をたどって、歴史と文化を旅してみよう。 第1章 木彫り熊をたどる(田村実咲) [本章では、北海道木彫り熊の制作・販売の歴史的経緯を概観する。木彫り熊は北海道の著名な土産品として知られているが、北海道木彫り熊に関する全般的な研究は始まったばかりといえる。 北海道木彫り熊の軌跡を八雲と旭川をはじめとするたくさんの「ふるさと」に注目してたどっていく。] introduction●北海道観光と木彫り熊 1 八雲熊彫の足跡 尾張徳川家による八雲移住/徳川農場の設立と「熊狩の殿様」/スイスから八雲へと持ち込まれたペザントアート/徳川義親による農村美術運動/品評会に「木彫り熊」が出品される/擬人化熊も生まれた農村美術運動の展開/「我が町の特産品」八雲熊彫の確立と発展/第二次世界大戦による徳川農場の閉場/戦後から現在までの八雲熊彫の制作・販売 2 アイヌの木彫り熊の足跡 江戸時代までの木彫土産品制作/明治時代に迫られる生活文化の変容/博覧会のなかのアイヌの土産品/旭川・近文における新たな土産品の模索/熊猟師・松井梅太郎と「豚熊・鰐熊・鼠熊」/アイヌの木彫り熊のはじまりを巡って/昭和初期の北海道観光ブーム/急速な人気の高まりによって生まれた光と影/第二次世界大戦中にも続けられた木彫り熊制作/戦後復興と米兵の土産品として/二度目の北海道観光ブーム/北海道の一大土産品産業へ/移り変わる北海道観光の価値/再び注目される木彫り熊 3 全道へ広がった木彫り熊の制作 繁華街・札幌/道東の一大拠点・阿寒/地域産業として根付いた白老/新たな技術を導入した奈井江/道南の観光拠点・函館/伝統工芸の里・二風谷 epilogue●たくさんの「ふるさと」いくつもの「旅路」 第2章 木彫り熊を訪ねる [本章では、木彫り熊の制作・販売にたずさわってきた商店や職人の元を訪ね、現場の声を集める。 制作・販売が広がっていった各地域で、木彫り熊はどのような歴史をたどってきたのだろうか。そこにはどのような人やモノ、地域のつながりが見出せるだろうか。] 1 木彫り熊を訪ねる前に(田村実咲) 木彫り熊の「サイン」とは/誰が「サイン」を入れたのか?/❶職人の「サイン」/❷土産店の「サイン」/❸購入者の「サイン」/❹その他の「サイン」/「サイン」がないことにも理由はある!/❶「サイン」を入れることができなかった場合/❷「サイン」を意図的に入れなかった場合/「サイン」から人々のつながりをひも解く 2-1 〔木彫り熊を訪ねて〕有限会社トミヤ澤田商店 内地へ赴く兵隊さんのお土産として/本州や九州の土産品も集まる/有名キャラクターブームと熊ボッコ/北海道マークのシール/木札とタグと表情熊/職人の名前を入れる?入れない? 2-2 〔木彫り熊を訪ねて〕遊木民(有限会社拓商) 道東をまわると箔がつく/長野や小田原の木彫り熊たち/ニポポ、レリーフ、木彫り熊/「木彫専門店」として/職人にも生活がある!/「サイン」の上手な店員さん/買った人のサインでもあるペン書き/「職人」なのか「作家」なのか/「サイン」の価値の移り変わり column1●職人の話を聴く~木彫家・荒木繁氏を訪ねて~(田村実咲) 飛び込み営業で売った「熊」/彫刻刀と電子レンジ/親子代々に使われてきた「サイン」/木彫り熊が生まれる場所で 第3章 木彫り熊を伝える [本章では、木彫り熊展示を行った博物館や有志の研究会の取り組みを紹介する。会報「キムンカムイ」は、旭川で発足した「木彫り熊を愛する会(木彫り熊愛好倶楽部)」が刊行したフリーペーパーである。古美術商や土産店の元工場長らが集まり、木彫り熊の収集や商店などへの独自の聞き取りを行っていた(現在は解散)。近年、木彫り熊の魅力を伝える人々の活動が広がっている。例えば、有志の研究会やコレクターの存在は道内に留まらず、活動内容もイベントの企画、オリジナルグッズの制作・販売、書籍の刊行など多岐に渡る。] 1 木彫り熊と展示(田村実咲) 2-1 〔インタビュー〕木彫り熊展示とコミュニティ協働(話し手=武永真) 東北地方のこけしは伝統工芸品、では北海道の木彫り熊は……?/ゼロベースからの資料収集/「白老では土産屋さんの子どもが一番お小遣いが多かった」/「人間と熊の文化史」としての木彫り熊/木彫り熊という「ものづくり」を展示する/飛生芸術祭との協働/「再ブーム」=木彫り熊を北海道の「文化財」へ/博物館 ⇆ 木彫り熊 ⇆ 観光/産業として守り、継承すること/コミュニティとしての木彫り熊研究へ 2-2 〔インタビュー〕木彫り熊と文化人類学的発見(話し手=山崎幸治) 九州で収集された「山崎コレクション」/展示で旅をする木彫り熊たち/北海道の野性を担う土産品/自分も歴史や文化の当事者/「コンタクト・ゾーン」としての木彫り熊/移り変わっていく価値づけ/「芸術=文化システム」にみる木彫り熊/「再ブーム」=「なぜ木彫り熊なのか?」の謎を探る/「語られてこなかった歴史」の案内役/「完璧さ」よりも「自分らしさ」/「知の鉱脈」としての木彫り熊研究/付録 山崎コレクションが展示された展覧会一覧 column2●八雲のクマまつりレポート(話し手=青沼千鶴) 八雲のヘリテージ・木彫り熊/目標はシステムをつくること/現場の声を後世につなぐ 第4章 木彫り熊を探す [木彫り熊に関心をよせる人々の活動によって、木彫り熊の足跡は道外や海外からも見つかり始めている。本章では、北海道という地を飛び出し、木彫り熊の足跡を追いかける二人のエッセイを収録する。木彫り熊によって接続される土地、人に注目したい。] 1 道外・海外の木彫り熊の足跡を求めて 田村実咲 2-1 〔エッセイ〕月の輪を持つ木彫り熊/松本生まれの木彫り熊(増子博子) 月の輪を持つ木彫り熊/松本生まれの木彫り熊 2-2 〔エッセイ〕日本からブラジルへ、木彫り熊の足跡を辿る日々(是恒さくら) 2 木彫り熊を学問する 木彫り熊から何を知り、何を学ぶことができるだろうか。 これからの木彫り熊研究の可能性を探ってみよう。 今こそ、木彫り熊学を始めよう! 第5章 木彫り熊と研究領域 [本章では、木彫り熊に重要な関わりを持つ学問領域から、木彫り熊研究の裾野を広げることを試みる。芸術学の側面から、絵画のモチーフやイメージのなかのクマに着目して、「クマを表象する」ことの事例を見てみよう。芸術品としての木彫り熊の価値やクマというモチーフに注目することは、鑑賞を楽しんだり研究を進めるための足がかりになるはずだ。] 1 描かれた、もしくは描かれなかったクマ・ヒグマ―絵画の森に動物たちを追って(今村信隆) はじめに/1 北海道のイメージとヒグマ/2 なかなか描かれないクマ?/3 江戸時代のクマ表現/4 蝦夷地の動物/5 近代の油彩画・洋画と動物/6 近年の日本画と北海道の動物/おわりに 第6章 ミュージアムとコレクション 博物館資料としての可能性を考える [本章では、近現代の生活資料が博物館資料となる過程を見つめる論考を掲載する。博物館はどのように私たちの生活にありふれた資料を収集・保存し、展示しているのだろうか。展示制作や鑑賞を通して、私たちはどんな学びを得ることができるだろうか。博物館資料としての木彫り熊の可能性について考えてみよう。] 1 モノがミュージアムのコレクションになるまで(寺農織苑) 1 収集と所有との違い/2 モノがミュージアムのコレクションになるまで/①資料の収集・拡充/②資料の保管・保存・維持/③展示/④教育/⑤調査研究/3 木彫り熊はどのようなミュージアムのコレクションになり得るのか/4 コレクションのこれから/5 ミュージアムとビデオゲーム機 2 日本玩具博物館のコレクション形成への歩み――世界の玩具文化を求めて(尾崎織女) はじめに/ひとりの熱意から博物館が誕生した/日本玩具博物館が提示する玩具の世界/世界の玩具の収集活動/⒈まずは現地へ出かける/⒉各地の民芸品を輸入する専門業者の協力を得る/⒊海外の玩具博物館、収集家との交換収集/⒋生涯をかけたコレクションの寄贈を受ける/⒌来館者が収集者になる/来館者とともにコレクション展示を育てる/玩具文化へのまなざし column3●研究成果が展示になるまで(阿部麟太郎) 多様な解釈ができる「展示」/「見方」を伝えるために/物と場所の制限と工夫/黒板風のタイトル、実は……/専門の外を見つめて 「開講、木彫り熊概論!」 展示記録 おわりに(田村実咲) 付録●木彫り熊関連年表(田村実咲) - 著者プロフィール - 北海道大学大学院文学院 文化多様性論講座 博物館学研究室 (ホッカイドウダイガクダイガクインブンガクイン ブンカタヨウセイロンコウザ ハクブツカンガクケンキュウシツ) (編) この研究室は、2019年に北大大学院文学院に誕生しました。博物館には伝統的で固有な機能があります。一方で、それと同じぐらい大切な機能が、利用者とコミュニケーションを図って、コミュニティの参加とともにさまざまな博物館体験を提供することです。博物館のそんな側面に関心のある学生たちが多く学んでいます。 http://museology.starfree.jp/ 田村 実咲 (タムラ ミサキ) (編) 1995年、北海道札幌市生まれ。北海道大学大学院文学研究科修士課程修了。2022年、札幌市アイヌ文化交流センター(サッポロピㇼカコタン)活動促進員。2023年より国立アイヌ民族博物館にて、アソシエイトフェローとして勤務している。木彫り熊の「サイン」に注目し、木彫り熊の制作と販売の歴史についての研究を進めている。 増子 博子 (マスコ ヒロコ) (著) 絵描き。土地を移動する中で偶然出合い、惹かれるものをテーマに美術を通した制作を行う。近年参加した展覧会は「こっぱ人形ってなあに? 徳武忠造がつなぐ農民美術のいま」(朝日美術館、二〇二四年)、「COLLECTION +vol.1 まなざしのあいのり 土地の声を聞く、探る、写す」(石神の丘美術館、二〇二四年)、「IMAをうつす7人」(岩手県立美術館、二〇二三年)、「地つづきの輪郭」(セゾン現代美術館、二〇二二年)、「日常をととのえる展」(はじまりの美術館、二〇二二年)など。主な著書に『ツキノワ木彫り熊ノート』、『松本生まれの木彫り熊』がある。 是恒 さくら (コレツネ サクラ) (著) アーティスト。国内外各地で人と鯨の関わりを尋ね、リトルプレス (小冊子)や刺繍、造形作品として発表している。リトルプレス『ありふれたくじら』主宰。近年の主な展示に「開館20周年展 ナラティブの修復」(せんだいメディアテーク、二〇二一年)、「NITTAN ART FILE4:土地の記憶~結晶化する表象」(苫小牧市美術博物館、二〇二二年)、「VOCA展 2022」(上野の森美術館)、「currents / undercurrents|いま、めくるめく流れは出会って」(国際芸術センター青森、二〇二四年)など。二〇二二~二〇二三年、令和四年度文化庁新進芸術家海外研修制度・研修員としてノルウェーに滞在。 Web: www.sakurakoretsune.com 【twitter】@sakurakoretsune 【instagram】 @sakurakoretsune 今村 信隆 (イマムラ ノブタカ) (著) 北海道大学文学研究院准教授。博士(文学)。専門は美学・芸術学。札幌芸術の森美術館学芸員、京都造形芸術大学(現・京都芸術大学)准教授、甲南女子大学准教授等を経て、二〇二一年より現職。単著に、『一七世紀フランスの絵画理論と絵画談義』(北海道大学出版会、二〇二一年)、編著に今村信隆・佐々木亨編『学芸員がミュージアムを変える! 公共文化施設の地域力』(水曜社、二〇二一年)、佐々木亨・今村信隆編『改訂新版 博物館経営論』(放送大学、二〇二三年)などがある。小学生の頃、鹿児島に住んでいた祖母が北海道旅行に来た際に、支笏湖畔で木彫り熊を買ってもらった。今も研究室に飾っている。 寺農 織苑 (テラノ シオン) (著) 北海道大学大学院文学院 博物館学研究室 博士後期課程。修士(文学)。日本評価学会認定評価士。専門は博物館学・評価学。城陽市歴民俗資料館学芸員等を経て、二〇二一年より現在に至る。主要論文に「展示観覧前後における来館者の「ビデオゲーム・アーカイブ」に対する意識・態度変容への動機づけ―ビデオゲームにまつわる書籍を題材にした展示会の事例から―」(『人形玩具研究―かたち・あそび―』vol.34、二〇二四年)、“Do Japanese Museums Hold Video Game Consoles in Their Collections?―Based on the Results of a Survey of 1,751 Museums―”(『博物館学雑誌』第49巻第1号、二〇二三年)などがある。 尾崎 織女 (オサキ アヤメ) (著) 日本玩具博物館学芸員。一九九〇年より三〇余年にわたり、世界の玩具の調査や収集を担当。「世界のクリスマス展」や「雛人形展」をはじめ、館内外での展覧会と講座企画に従事する。専門分野は上巳や端午、七夕など節句にまつわる人形玩具文化。著書に『中国民衆玩具―日本玩具博物館コレクション』(大福書林、二〇二二年)、『世界の民芸玩具―日本玩具博物館コレクション』(大福書林、二〇二〇年)、『日本と世界おもしろ玩具図鑑』(共著、神戸新聞総合出版センター、二〇一七年)、『ままごと』(文溪堂、二〇一四)などがある。 阿部 麟太郎 (アベ リンタロウ) (著) 北海道大学文学院 博物館学研究室 博士後期課程。エコミュージアム研究(エコミュージアム思想史・エコミュージアム在野論)。主な論文に、阿部麟太郎・寺農織苑・石本万象(共同執筆・阿部が筆頭著者)「我が国の博物館学におけるケーススタディの傾向 ~主要3学会誌を対象とした分析を通じて~」(『日本ミュージアム・マネージメント学会研究紀要』No.28、二〇二四年)、 「アンケート調査による日本エコミュージアムの現状把握」(『エコミュージアム研究』No.28、二〇二三)がある。 武永 真 (タケナガ シン) (著) 一九六三年、北海道釧路市生まれ。仙台藩白老元陣屋資料館長。一九八七年に厚岸町教育委員会学芸員となり、一九九三年より現館に勤務。二〇二五年には『白老町史〔平成史〕』の刊行を予定している。 山崎 幸治 (ヤマサキ コウジ) (著) 一九七五年、福岡県北九州市生まれ。北海道大学アイヌ・先住民研究センター教授。専門は、文化人類学、博物館学。博物館資料の現代的意義とその活用に関心を持ち、アイヌ物質文化および博物館に関する研究をおこなう。先住民族の展示、アイヌ工芸の振興、海外アイヌ・コレクションについても研究をおこなう。著書に『もっと知りたいアイヌの美術』(二〇二二年、東京美術)などがある。 青沼 千鶴 (アオヌマ チヅル) (著) 八雲町で司法書士・行政書士として働き、「クマまつり」を企画・運営する。司法書士・行政書士事務所の隣に「木彫り熊と本の店 kodamado」を開く。https://kodamado.com/
-
常設展へ行こう! | 奥野 武範
¥2,750
左右社 2023年 ソフトカバー 352ページ 四六判 - 内容紹介 - 学芸員さんに常設展への「愛」を聞いてみたら... 初心者でも100倍楽しめるようになる 所蔵作品&コレクションの哲学が詰まってた! ◎装画&スペシャルゲスト/和田ラヂヲ(ギャグ漫画家) ◎寄稿エッセイ/和田彩花(アイドル) 珠玉の20世紀美術を堪能できる富山県美術館。 シャガールの巨大な舞台背景画に圧倒される青森県立美術館。 世界で唯一、モネから直接購入した《睡蓮》が見られる国立西洋美術館。etc. 全国12の美術館・博物館に常設展についてインタビューした 「ほぼ日」人気連載が、パワーアップして一冊の本になりました。 - 目次 - はじめに 奥野武範 ◎学芸員さんへのインタビュー 1. 東京国立博物館 2. 東京都現代美術館 3. 横浜美術館 4. アーティゾン美術館 5. 東京国立近代美術館 6. 群馬県立館林美術館 7. 大原美術館 8. DIC川村記念美術館 9. 青森県立美術館 10. 富山県美術館 11. ポーラ美術館 12. 国立西洋美術館 ◎コラム 謎めく東博の等伯。─松嶋雅人先生に聞く、国宝《松林図屏風》のこと 鳥獣戯画の不思議。─土屋貴裕先生に聞く、国宝《鳥獣戯画》のこと ◎エッセイ 和田彩花のパリ常設展探訪記 前書きなど 美術館の特別展や企画展には多くの人が集まります。 一方、同じ美術館の常設展には……あんまり人がいません。 多くの場合、特別展チケットの半券で入れるのに。 有名な人気作家の作品がかけられているのに、です。 かくいう私も、わざわざ常設展を見に行くようなことは滅多にありませんでした。 それはじつに「もったいないことだった」と、いまでは思います。 各館の常設展で見る所蔵作品にこそ、創設者の思いや設立の経緯、収集の哲学が見てとれる。 何より、作品ひとつひとつに対する「誇り」や「愛」がにじみ出ています。 学芸員さんの口ぶりから、わかるんです。 みなさん、とっても「じまんげ」だから。 そして、学芸員さんの「じまん話」ほど、気持ちよく聞ける「じまん話」はないと感じます。 「はじめに」より - 著者プロフィール - 奥野武範 (オクノタケノリ) (著/文) 1976年、群馬県生まれ。編集者。早稲田大学政治経済学部卒業。株式会社宝島社にて雑誌編集者として勤務後、2005年に東京糸井重里事務所(当時。現在の株式会社ほぼ日)に入社。2023年で創刊25年、毎日更新を続けるウェブサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」の編集部に所属。主にインタビュー記事をつくっている。ときどきポップデュオ「レ・ロマネスク」のライブ・コンサートでギター係をつとめることがある。 企画・構成・文を担当した書籍に『インタビューというより、おしゃべり』(星海社)、『世界を見に行く』(石川直樹・著/リトルモア)、『レ・ロマネスクTOBIのひどい目。』(レ・ロマネスクTOBI・著/青幻舎)』がある。他に、はたらく人たちの悩みに33名の著名人が答えた『33の悩みと答えの深い森。』(青幻舎)、14人の編集者にインタビューした『編集とは何か。』(星海社新書)、甲本ヒロトや山口一郎など5つのバンドのフロントマンにインタビューした『バンド論』(青幻舎)、画家・笹尾光彦の「謎」に迫った『赤の謎』(リトルギフトブックス)など。
-
辺境のラッパーたち 立ち上がる「声の民族誌」 | 島村一平(編集)
¥3,520
青土社 2024年 ソフトカバー 544ページ 四六判 - 内容紹介 - ラッパーのことばに耳をすませば、世界のリアルが見えてくる。 戦火が絶えないガザやウクライナで、弾圧が続くチベットやイランで、格差にあえぐモンゴルやインドで、海の端の日本で――。アメリカで生まれたヒップホップ文化、なかでもラップミュージックは世界に広がり、「辺境」に生きる者たちは声なき声をリリックに託す。現代社会の歪みを鮮やかに映し出す、世界各地のラッパーたちの声を幅広い執筆陣が紹介する。ラッパー、ダースレイダー、ハンガー(GAGLE)のインタビューも収録。
-
第三風景宣言 | ジル・クレマン, 笠間 直穂子(訳)
¥1,980
共和国 2024年 ソフトカバー 168ページ ※初回1000部限定 三方化粧断ちなし ペーパーナイフでカットしてからお読みください 四六変形判 縦190mm 横118mm 厚さ12mm - 内容紹介 - 被災地を考えるうえでも示唆的な空間、〈第三風景〉とはどこにあるのか? それは、人間が放棄した場所であり、人間が出入りを禁じた場所、そして人間が踏み入ったことのない場所のこと。そこが生物多様性のための避難所となる――。 --- 『動いている庭』(みすず書房)などで、環境論/風景論/庭園論に新たなページを刻んだジル・クレマン(1943- )が、生物の多様性のための空間設計の指標として執筆し、世界各国で参照されている、実践のためのマニフェスト。 *人間の支配の及ばない放棄地などに生物多様性の可能性をみる本書は、三方が化粧断ちされておらず「地」(頁の下部)が袋状に綴じられたままです。お手数ですが、充分に気をつけて、ペーパーナイフなどでカットしながらお読みください。コツは最初に地袋の部分をすべてカットすることです。ぜひ思い思いの仕上がりをお楽しみください。 *初版1000部のみ。重版以降は通常の造本・体裁となります)。 *PDF版は以下のサイトで発売中です。クリックないしコピペしてください。 『第三風景宣言』PDF https://erepublica.stores.jp/ --- 装釘:宗利淳一 --- 定価=1800円+悪税 - 目次- 定義 I 起源 II 範囲 III 性格 IV 地位 V 争点 VI 流動性 VII 進化 VIII 尺度 IX 図示と限界 X 時間との関係 XI 社会との関係 XII 文化との関係 宣言 第三風景概念の展開と実行 原注 訳者あとがき 前書きなど 《クレマンは、一方では人間の移動の激化と人口増加とが、人間をふくむ生物の暮らす環境の悪化につながっていることを指摘しつつ、他方で、その人間の移動と連動するかたちで動植物が拡散し、勝手に別の地域に定着することを否定しない。(……)生命がつねに動きとともにあることを肯定し、自由を重んじるこのクレマンの立場は、「外来種」を敵視するような自然保護活動と一線を画す。「自然を守ろう」が保守的、ひいては排外的思考に結びつく場面が散見される日本の状況に対しても、彼の理路はひとつの示唆をあたえてくれるのではないだろうか。》 ――笠間直穂子「訳者あとがき」より - 著者プロフィール - ジル・クレマン (ジル クレマン) (著) 1943年、フランス中部アルジャントン゠シュル゠クルーズに生まれる。庭師、修景家、植物学者、昆虫学者。ヴェルサイユ国立高等修景学校名誉教授。アンドレ゠シトロエン公園(パリ)、マティス公園(リール)などの大規模プロジェクトに参加、教育・研究に長年従事する。 著書に、『動いている庭』(みすず書房、2015)など多数があるほか、2015年の来日時の記録として、『ジル・クレマン連続講演会録 庭師と旅人――「動いている庭」から「第三風景」へ』(エマニュエル・マレス編、あいり出版、2021)がある。 笠間 直穂子 (カサマ ナオコ) (訳) 1972年、宮崎県に生まれる。東京大学大学院総合文化研究科単位取得退学。現在、国学院大学文学部教授。フランス語近現代文学研究、仏日文芸翻訳。 著書に、『鳥たちのフランス文学』(共著、幻戯書房、2024)ほか、訳書に、ジャン・フランソワ・ビレテール『北京での出会い もうひとりのオーレリア』(みすず書房、2022)、C・F・ラミュ『詩人の訪れ 他三篇』(幻戯書房、2022)、マリー・ンディアイ『心ふさがれて』(インスクリプト、第15回日仏翻訳文学賞、2008)など多数がある。
-
紋の辞典 | 波戸場承龍, 波戸場耀次
¥1,650
雷鳥社 2020年 ハードカバー 360ページ 15.2 x 10.2 x 2.6 cm - 内容紹介 - 雷鳥社の辞典シリーズ9作目は、家紋の辞典! ページをめくるたびに密度を増す、「紋曼荼羅®」掲載! 江戸時代に多くの種類が生み出され、日本人が慣れ親しんできた家紋。その図柄はすべて、職人によって正円と直線のみで描かれる。モチーフの本質だけをとらえた、日本独自のシンプルで美しいデザインの仕組みに迫る。 目次 はじめに 本書の見方 基本の紋+見立て紋 現代の紋 コラム おわりに 索引 紋の仕組み ・基本紋の対抗ページに作図過程がわかる「紋曼荼羅®」掲載 ・「現代の紋」には、日本橋の商業施設COREDO室町に掛かる大暖簾の紋掲載 ・巻末には、仕組みを表す構成名別に、家紋を逆引きできる裏辞典あり - 著者プロフィール - 波戸場承龍 (ハトバショウリュウ) (著/文) 京源三代目 紋章上繪師 着物に家紋を手で描き入れる紋章上繪師としての技術を継承し活躍する一方、家紋の魅力を新しい形で表現したいという想いで、2007年より家紋のアート作品を制作。紋章上繪師ならではの「紋曼荼羅® MON-MANDALA」というオリジナル技法を生み出す。家紋やロゴデザインの域を超えて、森羅万象を描き出す職人兼デザイナーとして、あらゆる分野のデザインに挑戦し続けている。NHK Eテレ デザインあ「もん」出演/もん制作他 波戸場耀次 (ハトバヨウジ) (著/文) 紋章上繪師 工房「誂処 京源」の立ち上げを機に、Adobe Illustrator/Photoshop/Premiere Proを使って、家紋とデジタル技術を掛け合わせた多種多様なビジネスモデルを構築。デザインの宝庫である家紋が常に身近にある環境で育ち、8歳から始めた書道で培われたバランス感覚で、シンプルでミニマムなデザインを行う。父 承龍とともに、家紋を知らない世代や海外の方々へ、家紋の魅力を伝えるワークショップや講演などを積極的に行っている。
-
学芸員しか知らない 美術館が楽しくなる話 | ちいさな美術館の学芸員
¥1,760
産業編集センター 2024年 ソフトカバー 216ページ 四六判 - 内容紹介 - 知れば美術館が10倍面白い! 展覧会はどうやって作っているの? 学芸員って何をしているの? アートは役に立たない? おすすめの鑑賞方法は? 現役学芸員が語る、美術館の舞台裏と美術鑑賞の楽しみ方。 noteの人気連載、待望の書籍化!著者おすすめの美術館も掲載。 目次 第1章 一つの展覧会ができるまで 第2章 学芸員という仕事の舞台裏 第3章 美術館をもっと楽しむためのヒント 第4章 美術館をささえる仲間たち - 著者プロフィール - ちいさな美術館の学芸員 (チイサナビジュツカンノガクゲイイン) (著/文) 東京都生まれ。都内のとある美術館で働く学芸員。ときおり大学非常勤講師。2022年からnoteにて美術館や学芸員に関する仕事コラムをスタート。すでに投稿した記事は200本以上。現在もコツコツと更新継続中。 https://note.com/gakugeiin
-
不完全な社会をめぐる映画対話 映画について語り始めるために | 河野 真太郎, 西口 想
¥2,640
堀之内出版 2024年 ソフトカバー 368ページ 四六判 - 内容紹介 - こんな映画本を待っていた! 「陰謀論」、「ハラスメント」、「ケア」、「ミソジニー」、「障害」etc...テーマに沿って、現代映画を社会的な視点で語るスリリングな対談。 「好きだった監督がハラスメントで告発されたとき、作品にどう向き合えばよいのか?」「一昔前の作品を見るとジェンダー観に違和感を覚えて楽しめない」等、近年多くの人が直面した問題に寄り添いながら、映画と社会の関係を深く見通す。誰もが感想をSNSで発信し、映画を見ることがコミュニケーションに組み込まれつつある現代で、映画と社会はどのような関係にあるのだろうか?映画を「観る」だけでなく、「語る」ことの比重が増す社会における、新たな地平を描く。 RHYMESTER 宇多丸さん推薦! 「社会が変わり、映画も変わった……映画の見方は、変わったか。 我々自身を問い直す、鋭くも愉快な対話集。シリーズ化希望!」 ●取り上げる作品 『君たちはどう生きるか』『セッション』『天気の子』『ジョーカー』『パラサイト』『ドライブ・マイ・カー』『プラダを着た悪魔』『万引き家族』『マリッジ・ストーリー』『ドント・ルック・アップ』『バーニング』『カモン カモン』『エイブのキッチンストーリー』『ファントム・スレッド』『アイ・アム・サム』『クレイマー、クレイマー』『シェフ』『SWEET SIXTEEN』『ノマドランド』『コーダ あいのうた』『ケイコ 目を澄ませて』『クルエラ』『メイド・イン・バングラデシュ』『オートクチュール』『ミセス・ハリス、パリへ行く』『幸せのレシピ』『二ツ星の料理人』『ミッドナイトスワン』『スキャンダル』『スタンドアップ』『サンドラの小さな家』 etc... ●取り上げるキーワード ハラスメント、陰謀論、ケア、男性性、ミソジニー、ネオリベ、#MeToo、トランスジェンダー、マルチバース、障害 etc... 目次 まえがき──映画と社会についての短い個人史 西口想 【対話1】ハラスメントがある世界で、いかに作品と向き合うか もはやハラスメントの教科書?──『セッション』 「ハラスメントを気にしていたらいい作品は生まれない」というメッセージ いま見ると気になる描写も多いフェミニズム映画──二〇〇〇年代の代表作『スタンドアップ』 社会進出は進んだけれど……──女性たちのリアル 監督のハラスメントをどう考えるか? 被害者と加害者の訴えは「五分五分」ではない 批判がないと、作品が死ぬ──過去の作品をどう評価するか? トランスジェンダー表象の変遷と発展──『トランスジェンダーとハリウッド』 かつて批判されたパターンを踏襲する日本のトランス表象──『ミッドナイトスワン』 「クリーン」な現場で生まれる作品はつまらない? コラム ミーガン・トゥーイーの悪夢 西口想 【対話2】「シャカイ」を描くセカイ系──新海誠作品を読み解く 新海作品で描かれる感性的なもの キャラクターの背景を描かない 「大丈夫」というメッセージの変質 バニラトラックを描くことが、社会を描くことなのか 村上春樹の男性性と帆高 ミソジニーを脱却できない「男の成長物語」 コラム セカイとシャカイのあいだで──新海誠と宮﨑駿 河野真太郎 【対話3】社会を描くとはどういうことか──ケン・ローチ作品 希望のないラストの衝撃 ラストに至るまでの「希望」 家族しかいないことの絶望 ケン・ローチが描いてきた家族 時事性に回収されない、ケン・ローチの作家性 個人の成功をあえて描かない 「ケアラーなのに悪態をついてごめんなさい」 ケン・ローチが描く女性と男性 ケン・ローチと是枝裕和──作品の違い、社会の違い 映画が社会的であるということはどういうことか 個人を描くことから始める 【対話4】陰謀論は、お好きですか? 『ドント・ルック・アップ』と陰謀論 陰謀論はどう変化してきたか? 陰謀論とキリスト教の切っても切れない関係 ネオリベラリズムと大富豪──ハデンとイッシャーウェル ヒロイン像の変化──ミソジニー描写を通じて 一九九〇年代を代表する陰謀論映画──『ファイト・クラブ』『マトリックス』『アメリカン・サイコ』 マルチバースと陰謀論──『マトリックス』とマーベル作品 陰謀論にどう立ち向かうか──『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』 家族主義的な「愛」に対する違和感 さまざまな映画オマージュが持つ意味 ありえた可能性のなかで最低の人生 映画は常に陰謀論と隣り合う 【対話5】それは誰のための映画か──障害と物語 障害を扱った感動作──『コーダ あいのうた』 感動のために障害者を搾取していないかを考える 『コーダ』は誰のための映画か? 健常者向け/障害者向けという線引きの先に コミュニティからの離脱をどう描くか──『リトル・ダンサー』と『コーダ』 新自由主義下の障害者政策 社会がつくりだす障害 一般化できない経験にどう向き合うか 「私の物語は私のもので、コーダにしかわからない」 「ろう者として生まれたかった」は何を意味するのか ケアラーをケアするのは誰か コラム 『ケイコ 目を澄ませて』と障害者のワークフェア 河野真太郎 【対話6】「当事者」が演じることについて──移民・難民と映画 日本で生活する移民たち──『マイスモールランド』 世代間トラウマを乗り越える──『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』再び 繰り返し主題になってきた世代間トラウマ 当事者性と創作の関係 悪意なき差別を丁寧に描く 「見えていない」が、確かに存在する移民社会 社会派映画はなぜ失敗するのか──手法の難しさ 当事者が表に立つ重要性と危険性 「当事者」とは誰なのか 鍵となる概念──インターセクショナリティ コラム 現在地としての『ファミリア』 西口想 【対話7】ケアと男性性──苦悩する男たち ケアと男性性──『ドライブ・マイ・カー』 人間の多重性・矛盾を受け入れること ホモソーシャリティを切り崩す多声性 暴力性が外部化された人物造形 イクメンになる男、最初からイクメンの男──『クレイマー、クレイマー』『マリッジ・ストーリー』 障害と男性性──『アイ・アム・サム』の障害表象 養育権をめぐる法廷闘争──『マリッジ・ストーリー』 解決されない暴力性 コラム 『カモン カモン』とイクメン物語のゆくえ 河野真太郎 【対話8】映画のなかのミソジニー──能力と傷をめぐって ポピュラー・フェミニズムとポピュラー・ミソジニー──#MeToo以降のヒット作を読み解くキーワード 失われた地位を「取り戻す」物語 『ジョーカー』のポピュリズムをどう捉えるか? 原作にはなかった階級性、地域性を織り込む映画たち 「格差」に比べて、あまり意識されない「階級」 弱者男性にとっての父親──『ジョーカー』『バーニング』 いまさら父を越えている場合じゃない──『パラサイト』の親子関係 メリトクラシー社会が崩壊した先の女性たち 【対話9】ファッションを通じて何を描く? 映画に衣装は欠かせない 「お針子」映画とブランド創業者の映画 ポストフェミニズム映画の重要作品──『プラダを着た悪魔』 『プラダを着た悪魔』を上書きする『クルエラ』 女性ヴィランの暴力をどう描くか? 仲良く過ごすために毒を盛る?──『ファントム・スレッド』 ファスト・ファッションの時代に映画は何を描くか? コラム 「透明人間」の夢 西口想 【対話10】おいしい映画──ジェンダー・料理・労働 さまざまな文脈が託される「料理」のシーン 2つの類型──「シェフ」の物語と「料理研究家」の物語 料理の過程を見せる作品/出来上がった皿を見せる作品 料理の描写と性描写の重なり 料理とジェンダー──求められる男性像の変化 不完全な人間でよい、という提案 主婦とバリキャリ女性の対比 半径五メートルの世界を快適に整える現代性 レシピを介して、目の前にいない誰かとつながってゆく レシピと「コモン・カルチャー」 【対話11】 住むこと、住まいを失うこと ケン・ローチのエッセンスを継ぐ作品──『サンドラの小さな家』 生活の基盤としての「家」を問う 偶然でしかつながれない?──階級コミュニティなき時代のコミュニティ ケン・ローチが描く「家」の意味──『SWEETSIXTEEN』 金融危機で消失した家とコミュニティ──『ノマドランド』 公共・福祉の稀薄さから見えるアメリカ社会 家の獲得に紐づいた男性像と、女性のセキュリティ 人間にとって「家」とは何か、「老い」とは何か──『ミナリ』『ファーザー』 「働き続ける主体」という幻想 コミュニケーションとしての映画──あとがきにかえて 河野真太郎 前書きなど 私たちの対話は断続的に四年以上続いた。その過程で得たのは、思いのほかシンプルな楽しさだった。観た映画の面白さやつまらなさを何とかして言語化して、信頼する相手に伝え、私の感想とは違う反応が返ってくること。一つの作品から受け取ったさまざまな側面について、表面的な筋書きを超えて話し合い、対話するなかでもう一度作品の形をなぞって作り直していくこと。 対話を通じて、話すテーマだけでなく、話すこと自体が共同体や社会的なものと触れる行為であるように感じた。本書を手にとってくれたあなたがこの対話から面白さやつまらなさを感じ、語られている内容とは別のことを考えて言葉を見つけ、信頼する誰かに伝えてくれたらとても嬉しい。その繰り返しによって映画と社会はつながりを取り戻し、豊かになっていくのではないか。 ──西口想「まえがき」より 版元から一言 装丁・本文デザイン:森敬太(合同会社 飛ぶ教室) 印刷:創栄図書印刷株式会社 イラスト:馬 小萌 (Toi) Instragram: fancy_toi 本書は、雑誌『POSSE』の43号(2019年11月)から52号(2022年12月)までに連載した「対談型映画批評 映画のなかに社会を読み解く」を再編集し、追加の対談とコラムを加筆したものである。 - 著者プロフィール - 河野 真太郎 (著/文) 1974年山口県生まれ。専門は英文学、イギリスの文化と社会。専修大学国際コミュニケーション学部教授。東京大学大学院人文社会系研究科欧米系文化研究専攻博士課程単位取得満期退学。一橋大学准教授などを経て現職。著書に、『戦う姫、働く少女』(堀之内出版、現在ちくま文庫化)、『新しい声を聞くぼくたち』(講談社)等多数。 西口 想 (著/文) 1984年東京都生まれ。文筆家、労働団体職員。大学卒業後、テレビ番組制作会社勤務を経て現職。著書に『なぜオフィスでラブなのか』(堀之内出版)がある。
-
アートの潜勢力 | 岡田 温司
¥2,970
共和国 2024年 ハードカバー 280ページ 四六変形判 縦189mm 横126mm 厚さ17mm - 内容紹介 - 五感を挑発し、人間だけに可能なアートの謎と魅力。 ---- 岡﨑乾二郎にとってのアートとは? なぜモディリアーニの描く肖像画は目が塗りつぶされているのか? 退廃の美を描くエゴン・シーレと神との関係は? スマホは人間の感性をどう変容させるのか? そもそも美術作品は修復保存される必要があるのか? ---- パウル・クレー、パゾリーニから山中現をはじめとする国内外の作品まで、著者の美術批評を1冊に集成。「モダニズム」「アナクロニー」「アントロポセン(人新世)」を切り口に、近現代アートの入門書として、また精緻な批評としても読むことができる、出色のエッセイ集。 カラーを含む図版も多数収録。 - 目次 - まえがき、あるいは出発としての花田清輝と林達夫 ---- I 開かれとしてのモダニズム ---- 岡﨑乾二郎という「謎」 影・窓・痕跡──山中現の版画の世界 仮面の戯れ──柄澤齊の肖像画 「気配」と「たたずまい」──小林且典への手紙 パウル・クレー、あるいは「中間領域」の思索と創作 受肉するシーレ ---- II アナクロニーとしての批評 ---- ボローニャのヤヌスたち──ロンギ、モランディ、パゾリーニ ケネス・クラーク再訪──『名画とは何か』の文庫化に寄せて アルテ・ポーヴェラの先見性 「気分」の肖像画──モディリアーニの人物たち スマホ人間どこに行く!? ---- III アントロポセン下のアート ---- 女性アーティストとしての自然──エルンスト・ヘッケルにおける「芸術衝動」 山口啓介、あるいは根源のアート 作品のなか/としての時間──ゴンザレス゠トレス、井田照一、ロマン・オパルカ 芸術・免疫・例外状態 記憶と忘却のあいだ──現代美術の保存と修復をめぐって あとがき - 前書きなど - 《〔……〕アリストテレスを独自に読み替えるアガンベンによれば、この古代スタゲイロスの哲学者において、「~できるようになる」という通常の意味で「現勢力」に移行する「潜勢力」とは別に、「~しないことができる」という意味での「非の潜勢力(ア‐デュナミア)」が想定されている、という。「~しないことができる」、この「欠如」と真剣に付き合うことができるのは、実のところ人間だけである。つまるところ人間とは、「非の潜勢力」が可能な動物である。岡﨑の作品には、つねにどこかにこの「欠如」――現勢力の宙吊り――が潜んでいて、それこそがわたしたちをつかまえて離さないのではないだろうか。》 ――「岡﨑乾二郎という「謎」」より - 著者プロフィール - 岡田 温司 (オカダ アツシ) (著) 1954年、広島県に生まれる。2020年、京都大学大学院人間・環境学研究科教授を退職。現在は、京都大学名誉教授、京都精華大学特任教授。専攻は、西洋美術史。 著書に、『キリストと性』(岩波新書、2023)、『反戦と西洋美術』(ちくま新書、2023)、『ネオレアリズモ──イタリアの戦後と映画』(みすず書房、2022)、『フロイトのイタリア──旅・芸術・精神分析』(人文書院、2008、読売文学賞)、『モランディとその時代』(人文書院、2003、吉田秀和賞)など多数、 訳書に、ジョルジョ・アガンベン『創造とアナーキー──資本主義宗教の時代における作品』(共訳、月曜社、2022)、同『王国と楽園』(共訳、平凡社、2021)など多数がある。
-
読書と暴動 プッシー・ライオットのアクティビズム入門 | ナージャ・トロコンニコワ, 野中モモ(翻訳), 清水知子(解説)
¥2,860
ソウ・スウィート・パブリッシング 2024年 ソフトカバー 304ページ 四六変形判 縦188mm 横118mm 厚さ18mm - 内容紹介 - 「どうしてプーチンのロシアは、私を刑務所送りにしたのだろう? 私は当時、無一文の22歳で、 3歳の女の子の若い母親だった。家父長制の世界に生きる女性アーティストで、ディオゲネスと行動の哲学とクィアのアイデンティティについての卒論を書いている学生だった――」(本書より) カラフルな目出し帽。挑発的なライブパフォーマンス。FIFAワールドカップ決勝戦への乱入。結成時から現在に至るまで、常に世間の耳目を集めるロシアのフェミニスト・パンク集団、プッシー・ライオットとはいかなるグループなのか? なぜ結成されたのか? その真の目的とは? 創設メンバーのナージャ・トロコンニコワがその全貌を明らかにする。 本書『読書と暴動』は、プッシー・ライオットの設立経緯から、かれらがロシア国内でおこなった数々のアクション、さらにはロシア当局に逮捕されたのちの苛烈極まる獄中生活までを綴ったトロコンニコワの手記である。また同時に、著者がそうした体験のなかから得た“実践的な知”を紹介する「生き方の指南書(サバイバル・ガイド)」でもある。 ロシアでフェミニストでクィアであることの意味とは? アクティビズムは社会でどんな役割を果たすのか? アートとアクティビズムはいかに交差するのか? ハーバード大学やケンブリッジ大学で講演をおこなうアクティビストで、アイ・ウェイウェイやジェニー・ホルツァー、ジュディ・シカゴらの系譜に連なるアーティストのトロコンニコワが、カントからニーナ・シモン、あるいはウィトゲンシュタインからパンク・ソングの歌詞まで縦横無尽に引用しながら、そうした疑問の数々にユーモアたっぷりに答えていく。 「プーチンが最も憎んだバンドPussy Riotの創設メンバーによる、回顧録と行動指針の騒々しい融合」 ――Kirkus Reviews 【あとがき】キム・ゴードン(ミュージシャン)、オリヴィア・ワイルド(『ブックスマート』監督、俳優) 【解説】清水知子(東京藝術大学教授) 【装幀】山中アツシ 【本書に登場する思想家・芸術家・アクティビスト】 ペーター・スローターダイク/パゾリーニ/フーコー/ヴィヨン/マヤコフスキー/ディオゲネス/マイケル・スタイプ/プルードン/カント/チョムスキー/D.A.プリゴフ/トリスタン・ツァラ/ヒューゴ・バル/アイ・ウェイウェイ/ナオミ・クライン/ティモシー・スナイダー/マーティン・ルーサー・キング・ジュニア/アレクサンドラ・コロンタイ/オレグ・クリーク/カジミール・マレーヴィチ/マクルーゼ/マルクス/ディアギレフ/ドゥボール/ゴダール/ブレヒト/バルト/ヴォルフガング・シュトレーク/スティグリッツ/ソウル・アリンスキー/エーリッヒ・フロム/ソルジェニーツィン/ジョージ・オーウェル/ハワード・ジン/ドストエフスキー/アンジェラ・デイヴィス/クロポトキン/エマ・ゴールドマン/ソルジェニーツィン/ユーリ・ガランスコフ/ジェイムズ・H・コーン/リチャード・ローティ/イヴァン・イリイチ/ティモシー・スナイダー/ベティ・フリーダン/フランツ・ファノン/ボーヴォワール/ジュディス・バトラー/ベル・フックス/ニーナ・シモン/ル・グウィン/ウィトゲンシュタイン、etc. - 目次 - 文化労働者としてのアーティスト――日本版のためのまえがき イントロダクション ルール1:海賊になれ ルール2:ドゥ・イット・ユアセルフ ルール3:喜びを取り戻せ ルール4:政府をびびらせろ ルール5:アート罪を犯せ ルール6:権力の濫用を見逃すな ルール7:簡単に諦めるな。抵抗せよ。団結せよ。 ルール8:刑務所からの脱出 ルール9:オルタナティヴを創造せよ ルール10:ビー・ア・(ウー)マン 最終声明:希望は絶望から生まれる この本に寄せて キム・ゴードン この本に寄せて オリヴィア・ワイルド 解説 清水知子(東京藝術大学教授) あるプッシー・ライオットの推薦図書リスト - 著者プロフィール - ナージャ・トロコンニコワ (ナージャ トロコンニコワ) (著/文) アーティスト、アクティビスト。国際的フェミニスト・プロテスト・アート集団プッシー・ライオットの創立メンバー。2012 年、モスクワの救世主ハリストス大聖堂でプーチン大統領とロシア正教会を批判するゲリラ・パフォーマンスを敢行。有罪判決を受け2年にわたって収監された。釈放後は囚人の権利のための非政府組織ゾーナ・プラヴァと独立系通信社メディアゾーナを設立。2022 年にはNFTアート収集集団ユニコーンDAO を立ち上げ、ウクライナのために700 万ドル以上を集めた。レノン・オノ平和賞およびハンナ・アーレント政治思想賞を受賞。現在では数百人の人々が自らをプッシー・ライオット・コミュニティの一員であると認識している。プッシー・ライオットは、ジェンダーの流動性、包摂性、母権制、愛、笑い、分散化、アナーキー、反権威主義を支持する。ロシア連邦シベリア連邦管区ノリリスク生まれ。 野中モモ (ノナカ モモ) (翻訳) 東京生まれ。翻訳者、ライター。訳書に『音楽のはたらき』(デヴィッド・バーン、イースト・プレス)、『GIRL IN A BAND キム・ゴードン自伝』(キム・ゴードン、DU BOOKS)、『女パンクの逆襲―フェミニスト音楽史』(ヴィヴィエン・ゴールドマン、Pヴァイン)、『世界を変えた50人の女性科学者たち』(レイチェル・イグノトフスキー、創元社)などがある。著書に『野中モモの「ZINE」 小さなわたしのメディアを作る』(晶文社)『デヴィッド・ボウイ 変幻するカルト・スター』(ちくま新書)など。
-
正岡子規スケッチ帖 | 正岡 子規, 復本 一郎(著/文)
¥924
岩波書店 2024年 岩波文庫 ソフトカバー 204ページ 縦148mm 横105mm 厚さ11mm - 内容紹介 - 「写生は多くモルヒネを飲みて後やる者と思へ」。子規の絵は味わいある描きぶりの奥に気魄が宿る。子規にとって絵を描くことは病床の慰めや楽しみ以上の、生きるよすがであった。最晩年の三か月に描き、『果物帖』『草花帖』『玩具帖』と題してまとめられた画帖をオールカラーで収録。漱石、鼠骨ら、子規の絵をめぐる文章を併載する。 目次 第一部 子規のスケッチ帖 『菓物帖』 『草花帖』 『玩具帖』 第二部 子規の絵画観 「明治二十九年の俳句界」より 画 『病牀六尺』より 明治三十五年八月六日条 八月九日条 八月二十三日条 八月二十四日条 第三部 子規の絵をめぐって 寒川鼠骨「子規居士の絵――「菓物帖と草花帖」」 寒川鼠骨「解説と回顧」 下村為山「子規氏の絵」 夏目漱石「子規の画」 解題 『玩具帖』について(平岡瑛二) 編者解説(復本一郎)
-
アートワーカーズ 制作と労働をめぐる芸術家たちの社会実践 | ジュリア・ブライアン゠ウィルソン, 高橋沙也葉(翻訳), 長谷川新(翻訳), 松本理沙(翻訳), 武澤里映(翻訳)
¥4,180
SOLD OUT
フォルムアート社 2024年 408ページ A5判 - 内容紹介 - 混乱の時代、芸術はいかに社会に応答しうるか? ベトナム反戦運動、フェミニズム、反人種差別運動、美術制度批判…… 1960年代アメリカで、自らを芸術労働者(アートワーカーズ)と定義することによって アクションを起こしたアーティスト・批評家たちの格闘の記録を鮮やかに描き出す ベトナム反戦運動を筆頭に、フェミニズム運動、ブラックパワー運動、ゲイ解放運動、大規模なストライキなど、政治的・社会的な運動が巻き起こった騒乱の1960–70年代アメリカ。美術界では、「アートワーカー」という集団的アイデンティティが生まれつつあった──。 芸術に関わるすべての行為を〈労働〉と捉えたアートワーカーたちは、芸術作品/仕事(アートワーク)の意味を拡張し、ベトナム戦争時代の社会不安に立ち向かう。1969年に設立された「アートワーカーズ連合」や、翌年に同連合から派生した「レイシズム、戦争、抑圧に抵抗するニューヨーク・アート・ストライキ」のアクティビズム的な熱を帯びた活動は、ミニマルアートやコンセプチュアルアートなど、制度としての芸術に異議を唱える動向と密接に関係しながら発展していく。しかし、内部に多くの矛盾や葛藤を抱えたその活動は短命に終わってもいる。 本書では、ミニマルな作品によって「水平化」を目論んだカール・アンドレ、ブルーカラー労働者との同一化を夢想したロバート・モリス、批評や小説の執筆、キュレーションという「労働」を通してフェミニズムに接近したルーシー・リパード、そして情報を提示する作品によって制度批判を行ったハンス・ハーケという4人の作品や活動を徹底的に掘り下げるケーススタディから、アートワーカーたちによる社会への関与の実相を明らかにする。 また日本語版では、読者に現代の問題として議論してもらえるきっかけとなるよう、各章に専門家による解題を付け加えた。 芸術はいかに世界と関わりうるのか? 作品という枠組みを超えて、アーティストはいかに自らの態度を表明できるのか? 今日の社会において真の連帯は可能なのか? アートワーカーたちのラディカルな実践は、半世紀以上の時を経てなお新鮮な問いを発し続けている。 - 目次 - 日本語版への序文 プロローグ ラディカルプラクティスに向けて│ベトナム戦争時代 1 アーティストからアートワーカーへ 連合のポリティクス│アート対ワーク│一九六〇年代後半から七〇年代初期におけるアメリカの労働│ポスト工業化社会における職業化 【解題】 「境界」をめぐるアーティストたちの闘争──AWC解説 笹島秀晃 2 カール・アンドレの労働倫理 レンガ積み│ミニマリズムの倫理的土壌│アンドレとアートワーカーズ連合│物質を問題にする/問題を物質にする│戦中のミニマリズム 【解題】 カール・アンドレの階級闘争 沢山遼 3 ロバート・モリスのアート・ストライキ 仕事/作品ワークとしての展覧会│スケールの価値│アーティストと労働者、労働者としてのアーティスト│プロセス│デトロイトと建設労働者/ヘルメット集団ハードハット│ストライキ│勤務時間中のモリス、勤務時間外のモリス 【解題】 ワーカーとしてのロバート・モリス──「脱物質化」のジレンマのなかで 鵜尾佳奈 4 ルーシー・リパードのフェミニスト労働 女性たちの仕事│アルゼンチン訪問│三つの反戦展│アートについて/として執筆する女性たち│抗議を工芸クラフトする 【解題】 個人的なこと、集団的なこと、政治的なこと──執筆家ライター/活動家アクティビストとしてのルーシー・リパード 井上絵美子 「挑発」としての批評とアクティビズム 浜崎史菜 5 ハンス・ハーケの事務仕事ペーパーワーク 《ニュース》│AWCとコンセプチュアルアート──美術館を脱中心化する│情報インフォメーション│ジャーナリズム│プロパガンダ 【解題】 制度批評のありか──ハンス・ハーケと情報マネジメントの芸術労働 勝俣涼 エピローグ 謝辞 訳者あとがき 註 索引 著者略歴/訳者略歴/解題執筆者略歴/註訳者略歴 - 著者プロフィール - ジュリア・ブライアン゠ウィルソン (著/文) 現在、コロンビア大学美術史・考古学部教授、ジェンダー・セクシュアリティ研究科教員。芸術的労働の問題、フェミニズム・クィア理論、工芸史などを研究している。近刊に『アート・イン・ザ・メイキング:アーティストとマテリアル、スタジオからクラウドソーシングまで(Art in the Making: Artists and Their Materials from the Studio to Crowdsourcing)』(グレン・アダムソンとの共著、シカゴ大学出版局、2017年、未邦訳)、『ほつれ:芸術とテキスタイルの政治学(Fray : Art and Textile Politics)』(シカゴ大学出版局、2017年、未邦訳)や『ルイーズ・ネヴェルソンの彫刻:ドラァグ、色彩、合流、顔(Louise Nevelson’s Sculpture : Drag, Color, Join, Face)』(イェール大学出版局、2023年、未邦訳)などがある。また、2013年には『オクトーバーファイルズ:ロバート・モリス(OCTOBER Files: Robert Morris)』(MIT Press, 2013年、未邦訳)を編集している。2019年よりサンパウロ美術館の総合キュレーターを務め、これまでに1900年以前の女性が制作したテキスタイルや絵画を集めた「女性たちの歴史、フェミニズムの歴史(Women’s Histories, Feminist Histories)」展など複数の展覧会を担当している。 高橋沙也葉 (翻訳) 京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程、および日本学術振興会特別研究員(DC1)。1960年代末の彫刻とその記録を中心に、アメリカと日本のアートシーンの交差の研究を行う。 長谷川新 (翻訳) インディペンデントキュレーター。「クロニクル、クロニクル!」「不純物と免疫」「約束の凝集」「SEASON2」など展示企画多数。ベトナム戦争を軸に「日本戦後美術」を再検討する「イザナギと呼ばれた時代の美術」をTokyo Art Beatで不定期連載中。 松本理沙 (翻訳) 京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程修了。博士(人間・環境学)。岡山大学等非常勤講師。アメリカにおける1970年代から90年代のパブリックアート研究を行う。おもな論文に「ホームレスとの協働からみるクシシュトフ・ヴォディチコ《ホームレス・ヴィークル》──機能性の考察を通して」『表象』第16号(2022年)。 武澤里映 (翻訳) 兵庫県立美術館学芸員、大阪大学大学院文学研究科博士前期課程在籍。日本におけるハプニングの受容をおもな対象に、エフェメラルな作品の記録や伝播に関心をもつ。
-
細部から読みとく西洋美術 めくるめく名作鑑賞100 | スージー・ホッジ, 中山ゆかり(翻訳)
¥4,180
フォルムアート社 2023年 ソフトカバー 432ページ B5変形判 - 内容紹介 - 神は細部に宿る── ボッティチェリ、ミケランジェロ、カラヴァッジョ、 フェルメール、モネ、クリムト、ピカソ、ウォーホル… ルネサンスから現代まで、 あの有名絵画もクローズアップすれば 新たな発見に満ちている! 「もっとよく見たい」すべての美術ファンの 好奇心に応える充実のビジュアルブック オールカラー、675の拡大図版で名作100点に迫る! 作品と対話しているかのような、新たな鑑賞体験を。 作家の生きた時代や作品の背景、モチーフの象徴的意味、細かな技法に込められている意図まで……全体を概観しているだけではわからないポイントを詳細に解説。細部に着目することで、より深いレベルでの鑑賞を叶え、西洋美術の名作に新たな見方が広がります。 それぞれの作品に関連する参考作品も掲載されており、西洋美術史を通じた相互の影響関係についても理解が深まります。あの有名作品も、もう一度観てみたくなる──そんな知識が満載の一冊です。 【こんな方へおすすめ!】 ◎まずは代表作を押さえて西洋美術の流れを知りたい方 ◎個々の作品についてもっと深く知りたいという方 ◎もう一度西洋美術について学んでみたい方 ◎好きな作品の隅々までじっくり鑑賞したい方 ◎美術関連のお仕事をされている方、将来的にしたいと考えている方 ◎美術好きのご家族、ご友人へのプレゼントに - 目次 - イントロダクション 1500年以前 ジョット・ディ・ボンドーネ《東方三博士の礼拝》/マザッチオ《聖三位一体と聖母マリア、聖ヨハネと寄進者たち》/ヤン・ファン・エイク《アルノルフィーニ夫妻の肖像》/ロヒール・ファン・デル・ウェイデン《十字架降架》/パオロ・ウッチェロ《サン・ロマーノの戦い》/フラ・アンジェリコ《受胎告知》/アンドレア・マンテーニャ《ゲッセマネの祈り》/ベノッツォ・ゴッツォリ《東方三博士の行列》/ピエロ・デラ・フランチェスカ《聖母子と諸聖人》/フーゴー・ファン・デル・グース《ポルティナーリ祭壇画》/サンドロ・ボッティチェリ《春(プリマヴェーラ)》 16世紀 ヒエロニムス・ボス《快楽の園》/レオナルド・ダ・ヴィンチ《モナ・リザ》/アルブレヒト・デューラー《東方三博士の礼拝》/ジョヴァンニ・ベッリーニ《サン・ザッカリアの祭壇画》/ミケランジェロ《システィーナ礼拝堂の天井画》/ラファエロ《アテネの学堂》/マティアス・グリューネヴァルト《イーゼンハイム祭壇画》/ティツィアーノ《バッカスとアリアドネ》/ハンス・ホルバイン(子)《大使たち》/ピーテル・ブリューゲル1世《ネーデルラントの諺》/パオロ・ヴェロネーゼ《カナの婚礼》/ティントレット《磔刑》/エル・グレコ《オルガス伯の埋葬》 17世紀 カラヴァッジョ《エマオの晩餐》/ピーテル・パウル・ルーベンス《十字架昇架》/アルテミシア・ジェンティレスキ《ホロフェルネスの首を切るユディト》/フランス・ハルス《笑う騎士》/ニコラ・プッサン《黄金の仔牛の礼拝》/レンブラント・ファン・レイン《夜警》/ジョルジュ・ド・ラ・トゥール《大工の聖ヨセフ》/ジャン・ロレンツォ・ベルニーニ《聖テレジアの法悦》/クロード・ロラン《港、シバの女王の船出》/ディエゴ・ベラスケス《ラス・メニーナス》/ヤン・フェルメール《ギターを弾く女》 18世紀 ジャン゠アントワーヌ・ヴァトー《ヴェネツィアの祝宴》/カナレット《ヴェネツィアに到着したフランス大使の歓迎》/ジョヴァンニ・バッティスタ・ティエポロ《モーセの発見》/ジャン゠バティスト゠シメオン・シャルダン《しゃぼん玉》/ウィリアム・ホガース《当世風結婚I、婚約万端整って》/ジャン゠オノレ・フラゴナール《音楽コンテスト》/ジャック゠ルイ・ダヴィッド《ホラティウス兄弟の誓い》/アンゲリカ・カウフマン《グラックス兄弟の母コルネリア》 19世紀 ジャン゠オーギュスト゠ドミニク・アングル《玉座のナポレオン1世》/フランシスコ・デ・ゴヤ《1808年5月3日の処刑》/テオドール・ジェリコー《メデューズ号の筏》/カスパー・ダーヴィト・フリードリヒ《海上の月の出》/ジョン・コンスタブル《チェーン桟橋、ブライトン》/ウジェーヌ・ドラクロワ《十字軍のコンスタンティノープル占領》/J・M・W・ターナー《雨、蒸気、速度――グレート・ウェスタン鉄道》/ジョン・エヴァレット・ミレイ《オフィーリア》/ウィリアム・ホルマン・ハント《良心の目覚め》/ギュスターヴ・クールベ《画家のアトリエ》/ジャン゠フランソワ・ミレー《落ち穂拾い》/エドゥアール・マネ《草上の昼食》/クロード・モネ《秋の効果、アルジャントゥイユ》/ジェームズ・アボット・マクニール・ホイッスラー《金と黒のノクターン――落下する花火》/ピエール゠オギュスト・ルノワール《陽光の中の裸婦(エチュード──トルソ、光の効果)》/メアリー・スティーヴンソン・カサット《お茶》/ジョルジュ゠ピエール・スーラ《アニエールの水浴》/ポール・ゴーガン《説教のあとの幻影》/フィンセント・ファン・ゴッホ《パイプが置かれた椅子》/エドガー・ドガ《入浴後、身体を拭く女性》/アンリ・ルソー《熱帯嵐の中のトラ(びっくりした!)》/アンリ・ド・トゥールーズ゠ロートレック《ムーラン・ルージュにて》/エドヴァルド・ムンク《叫び》/ポール・セザンヌ《キューピッドの石膏像のある静物》/カミーユ・ピサロ《夜のモンマルトル大通り》 1900年以降 アンリ・マティス《アンドレ・ドランの肖像》/グスタフ・クリムト《接吻》/エルンスト・ルートヴィヒ・キルヒナー《モーリッツブルクの水浴者たち》/ワシリー・カンディンスキー《コサック》/マルク・シャガール《私と村》/ジョルジュ・ブラック《ギターをもつ男》/ウンベルト・ボッチョーニ《空間における連続性の唯一の形態》/ジョルジョ・デ・キリコ《愛の歌》/カジミール・マレーヴィチ《シュプレマティスムのコンポジション──飛翔する飛行機》/ジョージ・グロス《自死》/フェルナン・レジェ《ビアマグのある静物》/ジョアン・ミロ《狩人(カタルーニャの風景)》/エドワード・ホッパー《線路わきの家》/ジョージア・オキーフ《オリエンタル・ポピー(オニゲシ)》/タマラ・ド・レンピッカ《イラ・Pの肖像》/パウル・クレー《パルナッソス山へ》/ルネ・マグリット《人間の条件》/サルバドール・ダリ《ナルキッソスの変容》/パブロ・ピカソ《ゲルニカ》/ピート・モンドリアン《黄、青、赤のコンポジション》/フリーダ・カーロ《荊(いばら)の首飾りとハチドリの自画像》/マックス・エルンスト《ヴォックス・アンジェリカ(天使の歌声)》/ジャクソン・ポロック《秋のリズム》/ヘレン・フランケンサーラー《山と海》/フランシス・ベーコン《ベラスケス作「教皇インノケンティウス10世の肖像」に基づく習作》/アンディ・ウォーホル《マリリンの二連画》/ロイ・リキテンスタイン《WHAAM!》/リチャード・エステス《電話ボックス》/ルシアン・フロイド《眠る労災保険管理官》/ルイーズ・ブルジョワ《ママン》/アンゼルム・キーファー《黒い切片》/ポーラ・レゴ《国王の死》 用語集 作品索引 索引(人名/事項) - 著者プロフィール - スージー・ホッジ (スージー・ホッジ) (著/文) 美術史家、作家、アーティスト、ジャーナリスト、英国王立技芸協会フェロー。美術史、実用美術、歴史に関する100冊以上の著書がある。邦訳書に『世界をゆるがしたアート─クールべからバンクシーまで、タブーを打ち破った挑戦者たち』(青幻舎)、『5歳の子どもにできそうでできないアート─現代美術100の読み解き』(東京美術)、『美術ってなあに?─ “なぜ”から広がるアートの世界』(河出書房新社)。雑誌記事、美術館やギャラリーのウェブ用の資料も執筆しており、世界中の学校、大学、美術館、ギャラリー、企業、芸術祭、美術団体などのためにワークショップや講義を主宰・提供している。ラジオやテレビのニュース番組、ドキュメンタリー番組の常連コメンテーターであり、『インディペンデント』紙のNo.1アートライターに2度選出された。 中山ゆかり (ナカヤマユカリ) (翻訳) 翻訳家。慶應義塾大学法学部卒業。英国イースト・アングリア大学にて、美術・建築史学科大学院ディプロマを取得。訳書に、フック『印象派はこうして世界を征服した』、ソールズベリー/スジョ『偽りの来歴─ 20世紀最大の絵画詐欺事件』、ネアン『美術品はなぜ盗まれるのか─ターナーを取り戻した学芸員の静かな闘い』、バトラー『ロダン 天才のかたち』(共訳)(以上、白水社)、フック『サザビーズで朝食を─競売人が明かす美とお金の物語』『ならず者たちのギャラリー─誰が「名画」をつくりだしたのか?』、エヴァニア『ジャック・カービー アメコミの“キング”と呼ばれた男』、クリーグ『目の見えない私がヘレン・ケラーにつづる怒りと愛をこめた一方的な手紙』、シンプソン『色のコードを読む─なぜ「怒り」は赤で「憂鬱」はブルーなのか』(以上、フィルムアート社)など。
-
クィア・シネマ 世界と時間に別の仕方で存在するために | 菅野 優香
¥3,080
フォルムアート社 2023年 392ページ 四六判 - 内容紹介 - クィア・シネマという「可能性の地平」に向かって ジェンダーやセクシュアリティ、人種に対する規範や制度を問い直し、家族主義や都会主義に抗い、直線的な時間に逆らって歴史を書き直す。気鋭の研究者が照らし出すクィア・シネマの重層性。 アルフレッド・ヒッチコック、オードリー・ヘプバーン、ジュディ・ガーランド、グザヴィエ・ドラン、セリーヌ・シアマ、田中絹代、三池崇史、美輪明宏、原節子、高倉健……作家、スター、作品のみならず観客やコミュニティを縦横に論じる「雑種」で「不純」な映画論。 ジェンダーやセクシュアリティ、人種、コミュニティの規範や理想を強化し、教え込む教育的な役割も担ってきたシネマ(映画)。そこで生まれた「常識」や「当然」を疑うことによって、慣れ親しんできたアイデンティティやカテゴリーを問い直し、「異なる」欲望や「非規範」的な関係の可能性へと導くものこそがクィア・シネマである。直線的な時間に抗い歴史を書き直すその試みは、現在や現状を肯定することなく、可能性として存在し続ける「地平」だといえる。 4部構成による本書は、常識や当然に抗うクィア・シネマの「雑種」で「不純」なあり方を体現する。クィア・シネマの歴史や横断性、クィアの理論と歴史を俯瞰する第1部。ジュディ・ガーランドといった黄金期ハリウッドのスターから、グザヴィエ・ドランやセリーヌ・シアマといった近年の注目監督まで、アメリカおよびフランスのスターや映画作家、映画作品のわたしたちが知っているあり方とは「別」のあり方を提示する第2部。美輪明宏や原節子、高倉健といった映画スターたちと、そのファンやファンたちのコミュニティを取り上げ、雑種性が強く表れた日本映画を扱う第3部。そして、1970年代のフェミニスト映画運動や日本で開催されるクィア・LGBT映画祭を深く掘り下げ、映画とコミュニティの関係を地域性を絡めつつ論じる第4部が最後を飾る。作家論やスター論、作品論のみならず、観客論やコミュニティ論も入り混じり、クィア・シネマの射影の広さが感じられる構成になっている。 第1部のうちの2章と、黒人レズビアンをテーマにした初めての長編劇映画とされる『ウォーターメロン・ウーマン』を論じた章の計3本の書き下ろし論考を収録。また英語で発表した美輪明宏論と原節子論の邦訳も収められている。 編著や共著、雑誌などでクィア・シネマの可能性を日本に紹介してきた気鋭の映画研究者による待望の単著デビュー作。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー わたしたちは、映画を通じてジェンダーやセクシュアリティ、人種の規範性や理想を「学び」、内面化してきた。映画はそれらを映し出すだけでなく、強化し、教え込む教育的な役割を担ってきたのである。クィア・シネマの役割のひとつは、そうした規範性や理想を学び捨てること、あるいは学び直すことである。わたしたちが知っているシネマのあり方とは別のシネマのあり方を想像させてくれる「可能性の地平」がクィア・シネマだと考えたい。(「クィア・シネマの場所」より) ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 【目次】 はじめに 第1部 映画文化とクィア・スタディーズ クィア・シネマの場所──歴史を変えるために クィア・シネマを知るために──クィアの理論と歴史 クィア・シネマの可能性──映画の外側へ 第2部 クィア・シネマの再発見 ヒッチコック問題──『レベッカ』と『マーニー』をめぐるフェミニスト/クィア批評 ハイスミス映画のクィアと逸脱──冷戦下のホモセクシュアリティ ヘプバーンの脆弱さと自由──『ローマの休日』から『噂の二人』へ ジュディ・ガーランドを愛するということ──キャンプ、ドラァグ、フェミニズム 時間の映画──グザヴィエ・ドランのスローモーション 最愛の夫──ヴァルダの「ドゥミ映画」を読む 話者の遍在──『ニューヨーク、ジャクソンハイツへようこそ』における移民/クィアのコミュニティ 水平の美学──セリーヌ・シアマによる親密性の技法 『ウォーターメロン・ウーマン』とオルタナティヴ・ヒストリー──黒人女性映画とレズビアニズムの邂逅 第3部 クィア・シネマとスターたち パンパン、レズビアン、女の共同体──女性映画としての『女ばかりの夜』 人種化される欲望──三池崇史と「沖縄」をめぐる映画的想像力の一考察 『女であること』と、川島雄三であること──川端康成と丸山明宏が出会う場所 クィアな共振──美輪明宏の映画スターダム 連累の観客論──原節子とクィアなジョーク ゴシップ、あるいはラディカルな知──高倉健のスター・イメージ 第4部 クィア・シネマと上映空間 政治的なことは映画的なこと──一九七〇年代の「フェミニスト映画運動」 クィア・LGBT映画祭試論──映画文化とクィアの系譜 コミュニティを再考する──クィア・LGBT映画祭と情動の社会空間 あとがき 初出一覧
-
彼女たちのまなざし 日本映画の女性作家 | 北村匡平, 児玉美月
¥2,640
フォルムアート社 2023年 ソフトカバー 356ページ 四六判 - 内容紹介 - 女性映画作家たちのまなざしからよみとく 日本映画の最前線。 “「映画監督」と呼ばれる人々が一人残らず女性であったなら、当然そこに「女性監督」という呼称は生まれえない。かつて映画監督には、男性しかいないとされていた時代があった。”(「序論」より) そのような時代は果たして本当の意味で「過去」となりえているのだろうか? 本書は、この問題提起を出発点として、日本映画における女性作家の功績を正当に取り上げ、歴史的な視座を交えながらその系譜をたどり、彼女たちのまなざしから日本映画の過去・現在・未来を読み替えていくことを試みる、これまでにない映画批評である。 対象をあえて女性のみに限定し、大勢の男性作家たちのなかにいる数少ない女性作家という図式をまずはいったん解体することから始めるというアプローチから、これまでの日本映画の歴史にひそむ性の不平等や権力の不均衡の問題にせまり、日本映画史の捉え直しを通して、新しい地図を描き出す。 伝統的な家父長制から脱却し、多様な属性とオルタナティヴな関係性を個々人が模索する2020年代以降の時代精神から読みとく、日本映画の最前線。 取り上げる主な作家 西川美和、荻上直子、タナダユキ、河瀨直美、三島有紀子、山田尚子、瀬田なつき、蜷川実花、山戸結希、中川奈月、大九明子、小森はるか、清原惟、風間志織、浜野佐知、田中絹代……ほか多数 論考から作品ガイドまで、全原稿書き下ろし 作家ごとの評論だけでなく、日本映画史における女性監督の系譜、次世代の新進作家紹介、今見るべき日本の女性監督作品の100本ガイドまで。作家論、歴史、状況論、作品ガイドまでを網羅した、著者渾身の書き下ろし。 - 目次 - 序論 児玉美月 第1章 日本映画における女性監督の歴史 北村匡平 1 女性監督のパイオニア/2 胎動期──1950~1980年代/3 黎明期──1990年代/4 ニューウェーヴ──2000年代/5 黄金期──2010年代以降 第2章 16人の作家が照らす映画の現在地 北村匡平+児玉美月 1 西川美和論──虚実、あるいは人間の多面性 2 荻上直子論──「癒し系」に「波紋」を起こすまで 3 タナダユキ論──重力に抗う軽やかさ 4 河瀨直美論──喪失と再生を描く私映画 5 三島有紀子論──陰翳の閉塞空間とスクリーン 6 山田尚子論──彼女たちの空気感と日常性 7 瀬田なつき論──どこにもない「時間」を生きる 8 蜷川実花論──恋と革命に捧げられた虚構の色彩 9 山戸結希論──すべての「女の子」たちへ 10 中川奈月論──世界の崩壊/解放と階段のサスペンス 11 大九明子論──意外と「だいじょうぶ」な女たち 12 小森はるか論──記録運動としての積層と霊媒 13 清原惟論──マルチバースで交感する女性身体 14 風間志織論──日常の細部を照らし出すフィルム 15 浜野佐知論──男根的要請とフェミニズム的欲望の闘争 16 田中絹代論──欲望する身体とセクシュアリティ 第3章 次世代の作家たち 児玉美月 「映画」が孕む暴力性への自覚/日本の社会問題と向き合う/独自の作家性を貫く/学園映画の異性愛規範に抗する/オルタナティヴな関係性を模索する/新たな属性を可視化させる/まだ見ぬ未来へのシスターフッド 〈付録〉女性映画作家作品ガイド100 児玉美月+北村匡平 あとがき 北村匡平 - 著者プロフィール - 北村匡平 (キタムラキョウヘイ) (著/文) 映画研究者/批評家。東京工業大学リベラルアーツ研究教育院准教授。単著に『椎名林檎論――乱調の音楽』(文藝春秋、2022年)、『アクター・ジェンダー・イメージズ――転覆の身振り』(青土社、2021年)、『24フレームの映画学――映像表現を解体する』(晃洋書房、2021年)、『美と破壊の女優 京マチ子』(筑摩書房、2019年)、『スター女優の文化社会学――戦後日本が欲望した聖女と魔女』(作品社、2017年)、共編著に『川島雄三は二度生まれる』(水声社、2018年)、『リメイク映画の創造力』(水声社、2017年)、翻訳書にポール・アンドラ『黒澤明の羅生門――フィルムに籠めた告白と鎮魂』(新潮社、2019年)などがある。 児玉美月 (コダマミツキ) (著/文) 映画文筆家。共著に『反=恋愛映画論――『花束みたいな恋をした』からホン・サンスまで』(ele-king books、2022年)、『「百合映画」完全ガイド』(星海社新書、2020年)、分担執筆に『ロウ・イエ 作家主義』(A PEOPLE、2023年)、『デヴィッド・クローネンバーグ 進化と倒錯のメタフィジックス』(ele-king books、2023年)、『フィルムメーカーズ24 ホン・サンス』(宮帯出版社、2023年)、『ジャン=リュック・ゴダールの革命』(ele-king books、2023年)、『韓国女性映画 わたしたちの物語』(河出書房新社、2022年)、『アニエス・ヴァルダ――愛と記憶のシネアスト (ドキュメンタリー叢書)』(neoneo編集室、2021年)、『岩井俊二 『Love Letter』から『ラストレター』、そして『チィファの手紙』へ』(河出書房新社、2020年)、『フィルムメーカーズ21 ジャン=リュック・ゴダール』(宮帯出版社、2020年)など多数。『朝日新聞』、『キネマ旬報』、『文藝』、『ユリイカ』、『文學界』などに寄稿。
-
庭のかたちが生まれるとき 庭園の詩学と庭師の知恵 | 山内 朋樹
¥2,860
フォルムアート社 2023年 ソフトカバー 四六判 - 内容紹介 - 徹底的に庭を見よ! 作庭現場のフィールドワークから、庭の造形を考え、庭師の生態を観察し、庭のなりたちを記述していく、新感覚の庭園論がここに誕生! 庭師であり美学者でもあるというユニークなバックグラウンドを持つ注目の研究者・山内朋樹の待望の初単著。 庭を見るとき、わたしたちはなにを見ているのか? 庭をつくるとき、庭師たちはなにをしているのか? そもそも、庭のかたちはなぜこうなっているのか? 本書は庭師であり美学研究者でもある山内朋樹が、 京都福知山の観音寺を訪ね、その大聖院庭園作庭工事のフィールドワークをもとに、庭のつくられ方を記録した「令和・作庭記」である。 庭について、石組について、植栽について、空間について、流れについて、部分と全体について…… 制作のプロセスを徹底的に観察するとともに、その造形(かたち・構造)の論理を分析し、「制作されるもの」と「制作するもの」の間に起きていることを思考する。ミクロの視点で時間軸を引き伸ばしながら、かたちが生まれるその瞬間を丹念に解読していく、他に類を見ない新しい「制作論」。 本書を読んだ後には、これまで見ていた庭や、木々や、石や、そして景色の見え方が変わって見える! ----------------- 千葉雅也氏(哲学者・作家)推薦! 庭の見方をガラリと変えてくれる画期的な庭園論であり、すごく応用の利く本だと思う。「ひとつ石を置き、もうひとつをどう置くか」というのは、絵画の話でもあるし、音楽でも料理でも、会話術でもビジネス術でもあるからだ。 ----------------- 目次 はじめに――ぼくが庭のフィールドワークに出る理由 第1章 石の求めるところにしたがって〈庭園の詩学①〉 1 ただの石から見られる石へ 2 つくる行為をうながすもの 3 他性の濁流をおさめる 第2章 集団制作の現場から〈庭師の知恵①〉 1 不確かさのなかでともに働く 2 設計図とはなにをしているのか? 第3章 徹底的にかたちを見よ〈庭園の詩学②〉 1 石と石とが結びつくとき 2 意図しないものの蓄積とパターン 3 あってないような庭とありてある庭 第4章 物と者の共同性を縫い上げる〈庭師の知恵②〉 1 バラバラの物をDIYで結びつけよ 2 庭師の知恵と物騒な共存 3 物と踊る技術 第5章 庭をかたちづくるもの〈庭園の詩学③〉 1 造形的達成はどこからやってくる? 2 石をかたづけるときに起こること 3 質的飛躍と作庭の終わり おわりに――フィールドワークは終わらない - 著者プロフィール - 山内朋樹 (ヤマウチトモキ) (著/文) 1978年兵庫県生まれ。京都教育大学教員、庭師。専門は美学。在学中に庭師のアルバイトをはじめ研究の傍ら独立。庭のかたちの論理を物体の配置や作庭プロセスの分析から明らかにするフィールドワークをおこなっている。共著に『ライティングの哲学』(星海社、2021年)、訳書にジル・クレマン『動いている庭』(みすず書房、2015年)。