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日常と不在を見つめて ドキュメンタリー映画作家 佐藤真の哲学|佐藤真
¥3,850
里山社 2016年 ソフトカバー 368ページ 四六判 - 内容紹介 - 00年代、震災前。〔見えない世界〕を映そうとした映画作家の格闘の記録。 「その闇は、どこか遠くではなく、私の・この・日常の・ただ中に あることだけは、たしかなことである」 ー佐藤真(本書より) 『阿賀に生きる』『まひるのほし』『SELF AND OHTHERS』『花子』『エドワード・サイード OUT OF PLACE』などの映画作品や著作の多くで、《日常》と《不在》 にこだわり、90~00年代に潜む闇をじっくりとあぶり出したドキュメンタリー映像作家、佐藤真。公害問題と日常、障害とは、アートとは何か、グローバリゼーションに抗うこと、そして映像のもつ根源的な力とはー。不穏な時代のうねりを前に、佐藤は「世の中を批判的に見る目を持て」と映像と文章で私たちの眠った感覚を刺激しました。佐藤が世を去って9年。映像作家であり、90年代後半の類稀な思想家とも言うべきその哲学を掘り下げ、今を「批判的に」見つめ、未来への足場を探ります。 【寄稿・インタビュー】(50音順) 赤坂憲雄、阿部マーク・ノーネス、飯沢耕太郎、石田優子、大倉宏、奥谷洋一郎、香取直孝、小林三四郎、小林茂、笹岡啓子、 佐藤丹路、佐藤澪、佐藤萌、椹木野衣、諏訪敦彦、想田和弘、 萩野亮、秦岳志、旗野秀人、林海象、原一男、平田オリザ、松江哲明、 港千尋、村川拓也、森達也、森まゆみ、八角聡仁、山上徹二郎、 山本草介、ジャン・ユンカーマン、四方田犬彦 【目次】 第1章 阿賀と日常 第2章 生活を撮る 第3章 芸術 第4章 写真と東京 第5章 不在とサイード 第6章 ドキュメンタリー考 第7章 佐藤真の不在 ⚫︎グラビア 佐藤真1990’sトウキョウ・スケッチ ※佐藤真の東京スナップがミニ写真集として蘇る! 構成・解説:飯沢耕太郎 ⚫︎佐藤真と盟友・小林茂の往復書簡 ※佐藤真の手紙を初収録 ⚫︎ドキュメンタリーをめぐる思考を制作の流れに沿ってまとめた手書きの映画美学校授業配布プリント(カバーに使用) 他 - 著者プロフィール - 佐藤 真 (サトウ マコト) (著/文) 1957年青森県生まれ。東京大学文学部哲学科卒業。大学在学中より水俣病被害者の支援活動に関わる。1981年『無辜なる海』(香取直孝監督)に助監督として参加。1989年から新潟県阿賀野川流域の民家に住みこみながら撮影を始め、1992年『阿賀に生きる』を完成。ニヨン国際ドキュメンタリー映画祭銀賞など、国内外で高い評価を受ける。以降『まひるのほし』(98)『SELF AND OTHERS』(01)『花子』(01)『エドワード・サイード OUT OF PLACE』(05)など映画監督として数々の作品を発表。他に映画やテレビ作品の編集・構成の他、映画論の執筆など多方面に活躍。著書に『日常という名の鏡ードキュメンタリー映画の界隈』『ドキュメンタリー映画の地平ー世界を批判的に受けとめるために』『映画のはじまるところ』『まどろみのロンドンー映画作家の妄想スケッチ』(以上凱風社)『ドキュメンタリーの修辞学』(みすず書房)。京都造形芸術大学教授、映画美学校主任講師として後進の指導にも尽力。2007年9月4日逝去。享年49。
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エルメスのえほん おさんぽステッチ|100%ORANGE
¥2,640
講談社 2022年 ハードカバー 32ページ A4変型判 - 内容紹介 - 首輪を作ってくださいと犬がやってきました。りすはかばんを、カンガルーはポケットを。ものづくりの精神が描かれるエルメスの絵本。 - 著者プロフィール - 100%ORANGE (ヒャクパーセントオレンジ) (著/文) 及川賢治と竹内繭子の2人組で、イラストレーション、絵本、漫画、アニメーションなどを制作している。東京都在住。
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ジャンパーを着て四十年|今和次郎
¥946
SOLD OUT
筑摩書房 2022年 ちくま文庫 ソフトカバー 288ページ 文庫判 - 内容紹介 - 世間に溢れる「正装」「礼儀」「エチケット」、形ばかりになってはいないか? 「考現学」の提唱者によるユーモア炸裂の服装文化論集。解説 武田砂鉄 名著復刊!「考現学」的ファッション論 ユーモア炸裂、人間生活観察 結婚式でも大使の前でも、いつでもジャンパー。柳田國男に破門され、「考古学」ならぬ「考現学」を生み出した今和次郎。戦前戦後の日本社会を市中から観察してきた著者がユーモアたっぷりに服装文化の今と昔を語りだす。“服”とは一体なにものか? 世間に溢れる“正装”“礼儀”“エチケット”とは? “装う”という行為の意味は? 時代を超える隠れた名著、待望の復刊! 解説 武田砂鉄 目次 一、ジャンパーを着て四十年 1 着出したきっかけ/2 世間とのまさつ/3 先輩・同僚・学生・妻・子供たちは/4 演壇に立つと/5 ジャンパーの定義/6 冠婚葬祭には/7 宮様からの招きに/8 国際的パーテーに 二、礼儀作法の由来 1 作法の探求/2 礼儀作法という言葉/3 作法のいろいろなスタイル/4 日本の古代の礼儀作法/5 武家による破壊と建設/6 近世礼法の確立/7 明治の国粋主義という錯覚/8 世界大戦による改革/9 カトリック系のエチケット/10 プロテスタントと作法 三、きものの伝統 1 歴史のあら筋/2 哀感をそそる衣裳/3 外人に理解してもらうのは むずかしい/4 伝統という名でおどらされた明治時代/5 現実の問題 四、服装改良の歩み 1 改良とは/2 文化生活とショート・スカート/3 開襟シャツの提唱/4 第二次大戦前後 五、ユニホームとは 1 服装は魔物だ/2 田舎娘・銀座令嬢・婦人警官/3 ユニホームのいろいろ/4 警官と駅員で実験/5 有職故実の世界/6 儀礼的束縛で/7 士農工商の身分制から/8 明治以来の官員・軍人の礼服と制服/9 背広服と学生の制服/10 今日の企業経営学とユニホーム/11 インダストリアル・コマーシャル・シンボリカル 六、地方にみる洋服姿 1 農村婦人たち/2 戦災をのがれた都市の人々の姿 七、感覚か生活か 1 コマーシャル・アートの座席/2 生活行動と個性 八、流行の価値を探れば 1 益なくて害ありという思想/2 健康の点、家計の点からは/3 だが、流行は現代に生きる人々のもの 九、歓楽を求めるための衣裳〔古代エジプト〕 1 過去時代の服飾を味わう心/2 神像の化粧と衣裳/3 司祭・王の装い/4 歓楽にひたる女性の装い 十、神に近づくための服装〔初期キリスト教〕 1 教養高きローマの紳士のなやみ/2 信仰と服装/3 貧しい人々の服 装 十一、人づくりの哲学 1 試験のない学校/2 入学考査は/3 思い出/4 湧き立つ世論/ 5 知能的底辺の問題/6 「一日受刑者」となってみて/7 囲いの中だけにヒバリが巣を/8 そして刑務所と学校と 十二、大衆に直面して 1 被指導者の群れ/2 その性格はさまざま/3 生活以前の問題をどうするか/4 欲求のコントロール/5 上野と浅草/6 インテリと大衆とは反発する/7 生活指導者としてのインテリ 十三、家庭科にもの申す 1 門外漢として/2 倫理と技術と金/3 慣習の分析と流行の認識/ 4 地域・職域の問題/5 家庭と家庭の外との関連/6 その要点 十四、服装への発言 ショーかドラマか/造形美と服装美/服装行為/男性たちの服装/上品とか下品とか/結婚披露の会で演説/美しさと気楽さ/洋装か和装か/スタイルの定着/衣服と家計/衣料費一兆円/ソ連の流行誌/アメリカの服装/伝統とは/風俗という言葉/流行企画/家政学と被服学/家庭科はどこへいく/服装研究と民族学/民俗服をみる目/服装は道路と関係がある/近代的式典/衣服と機械/宇宙服とデザイン界/量産服への着眼/昔と今とこれからと/戦後の服装界/リアルとロマン あとがき 解説 TPOをわきまえない 武田砂鉄 - 著者プロフィール - 今 和次郎 (コン ワジロウ) (著/文) 1888年、青森県弘前市生まれ。建築学者、風俗研究家。1912年、東京美術学校図案科卒業。17年頃から郷士会へ参加、柳田国男らと農村・民家の調査を行う。20年~59年まで早稲田大学教授。23年の関東大震災後、吉田謙吉とともに「バラック装飾社」や「考現学」を始める。その後の研究範囲は服飾・風俗・生活・家政にまで及んだ。73年没。
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椅子の神様 宮本茂紀の仕事 |佐藤 卓, 佐藤 岳利, 宮本 茂紀
¥1,980
LIXIL出版 2019年 LIXIL BOOKLET ソフトカバー 76ページ 20.5 x 21 x 0.8 cm - 内容紹介- 新しいことへの挑戦と実験。素材への探求心。過去、現在、未来をつなぐ椅子づくりとは―― カッシーナ、B&B、アルフレックス、梅田正徳、藤江和子、隈研吾、ザハ・ハディド……。彼らは、日本初の家具モデラー、宮本茂紀(1937-)がともに椅子づくりに携わってきたメーカーであり、デザイナーたちである。一流の面々がこぞって宮本を頼るのはなぜなのか。 2019年4月、数年越しに完成した佐藤卓デザインによる、自然素材と伝統技術に拘った最高級のソファ「SPRING」の開発に関わった宮本。本書はその「SPRING」を皮切りに、デザイナーと試作開発に取り組んだいくつかの事例から職人としての宮本茂紀の仕事に迫る。ものづくりの現場に約65年。後半では、歴史から椅子の構造の変遷や技術を学び、素材や座り心地を追求し続け、さらに次世代へと継承する宮本の仕事も紹介する。写真家、尾鷲陽介の撮下しによる豊富な図版とともに、新たな角度から椅子の奥深さ、魅力に触れることのできる一冊。
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ケアとアートの教室|東京藝術大学 Diversity on the Arts プロジェクト(編集)
¥1,980
SOLD OUT
左右社 2022年 ソフトカバー 256ページ 四六判 - 内容紹介 - 藝大でアート? 東京藝術大学学生と社会人がともに学んだ「アート×福祉」プロジェクトの記録 アートという光を当てると、見えないものが見えてくる 「死にたい人の相談にのる」という芸術活動 認知症を老人の方とつくる演劇で疑似体験 お葬式まで出すホームレス支援 セックスワーカーの法律相談 西成のおばちゃんと立ち上げるファッションブランド トリーチャーの当事者と考える「普通」とは何か 介護、障害、貧困、LGBTQ+、そしてアート。様々な分野で活躍する人々と、東京藝術大学 Diversity on the Arts プロジェクト(通称DOOR)の受講生がともに学び、考える。 そこから見えてきたのは、福祉と芸術が「人間とは何かを問う」という点でつながっているということ。 ケアとアートの境界を行く17項!
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民具のデザイン図鑑 くらしの道具から読み解く造形の発想|武蔵野美術大学 民俗資料室(編集), 加藤 幸治(監修)
¥2,420
誠文堂新光社 2022年 ソフトカバー 192ページ A5判 - 内容紹介 - ■民具からデザインのヒントを見つける 特定の設計者がいない、人々の暮らしから生まれる民具の造形には、身体性や生活の現場において理にかなった造形やデザインのアイデアが秘められています。 民具の分類としては衣・食・住など「用途別」による分類・整理が一般的ですが、本書では形態、機能、素材、意味などに注目し、民具がもつ豊かなデザインの世界をあらためて問い直します。 「小さな森で身を包む」「つくろいの造形」「布で情景を描く」などのトピックを立て、ビジュアルを豊富に用いながら、用途の枠を超えて民具の魅力を横断的に読み解きます。 収録する民具は、武蔵野美術大学民俗資料室が収蔵するおよそ9万点のコレクションから精選。本コレクションは、民俗学者・宮本常一の指導により収集が始まり、生活用具、郷土玩具、信仰資料など、国内有数の収蔵品を誇ります。 【目次】 はじめに 巻頭言 くらしの造形から見つける「デザインの素」 第1章 かたちと身体性 コラム1 宮本常一と民俗資料室コレクション 第2章 ユーモアと図案 コラム2 美術教育の源泉としての民具 第3章 見立てと表象 おわりに 掲載資料一覧 ***************************** - 著者プロフィール - 武蔵野美術大学 民俗資料室 (ムサシノビジュツダイガク ミンゾクシリョウシツ) (編集) ■編集/武蔵野美術大学 民俗資料室 武蔵野美術大学に設置された美術館•図書館もつ複合施設のひとつ。民衆が日々の暮らしのなかで生み出し、使い続けてきた暮らしの造形資料(民具)を約9万点収蔵し、大学における教育・研究活動を軸とした利活用に加え、民具の保存管理や展示公開等を行う。 加藤 幸治 (カトウ コウジ) (監修) ■監修/加藤 幸治(カトウ コウジ) 武蔵野美術大学教養文化・学芸員課程教授。専門は民俗学(民具研究)、博物館学。博士(文学)。和歌山県立紀伊風土記の丘学芸員(民俗担当)、東北学院大学文学部歴史学科教授(同大学博物館学芸員兼任)を経て、2019年から現職。近著に『民俗学 フォークロア編 過去と向き合い、表現する』(武蔵野美術大学出版局、2022年)、『民俗学 ヴァナキュラー編 ―人と出会い、問いを立てる』(武蔵野美術大学出版局、2021年)など多数。
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ジェンダー写真論 増補版|笠原 美智子
¥3,080
里山社 2022年 ソフトカバー 520ページ 四六判 縦188mm 横127mm 厚さ24mm - 内容紹介 - 女性やLGBTQの写真家、現代美術作家たちはどのように社会と対峙したか。学芸員として、日本の美術界におけるジェンダー表現を世に問い続けたパイオニアである著者のテキストをまとめ、大好評を得た『ジェンダー写真論 1991-2017』(2018年刊)が、新テキストを大幅に加えてリニューアル。アーティスト・長島有里枝と女性アーティストの状況について振り返る記念碑的な語り下ろし対談「なぜ、私たちは出会えなかったのか。」他、新たな論考や自らの身体の痛みと美術界への本音を綴るエッセイ他大充実の増補版。 目次 海外篇 民族とセクシュアリティ ■セルフ・ポートレイトで既存の女性イメージを解体する イモジェン・カニンハム/シンディ・シャーマン/リディア・スハウテン/ビー・ネトルス/ジュディ・データー/ジュディス・ゴールデン/カタリーナ・シーバディング/スーザン・ヒラー/パティ・レヴィ/ヘレン・チャドウィック/バーバラ・デジェネヴェーヴ/スーザン・カエ・グラント/リサ・カネモト/ソニア・ランディ・シェリダン/リタ・ドーウィット/ナン・ゴールディン/アン・ノグル ■ダイアン・アーバス小論︱ふたつの眼差し 父なるものの影 ■病と老いを克服する写真︱視線のポリティクス ■ジョー・スペンス/ハンナ・ウィルケ ■〝ヌード写真〟から身体を回復せよ E・J・ベロック/神蔵美子/岡田裕子/アルフレッド・スティーグリッツ/古屋誠一/ロバート・メイプルソープ/キャサリン・オピー/イトー・ターリ/ジーン・フレイザー/リン・ビアンキ/小川隆之/メアリー・ダフィ/ジーン・ダニング/大塚勉 ■エイズをめぐる表象 ウィリアム・ヤン/AAブロンソン/ロバート・メイプルソープ/ピーター・フジャー/デヴィッド・ヴォイナロヴィッチ/エルヴェ・ギベール/フェリックス・ゴンザレス=トレス ■人種、階級、セクシュアリティとジェンダー キャリー・メイ・ウィームス/ローナ・シンプソン/ミトラ・タブリジアン/嶋田美子/マスミ・ハヤシ/劉虹/マリ・マール/トリン・T・ミンハ ■アナ・メンディエタが示した多文化アメリカの表現の可能性 ■インドの変化し続ける写真家、ダヤニータ・シン ■愛について アジアン・コンテンポラリー 金仁淑/キム・オクソン/ホウ・ルル・シュウズ/須藤絢乃/ジェラルディン・カン/チェン・ズ 国内篇 戦後と高度経済成長とジェンダー ■石内都作品に見る戦後日本の「記憶」 ■日本現代美術における女による女のセクシュアリティ再考 溝口彰子/O.I.C./イケムラレイコ/綿引展子/岡田裕子/出光真子/嶋田美子/澤田知子/イチハラヒロコ/オノデ ラユキ/鴻池朋子 ■やなぎみわ作品に見る現代日本女性の意識 ■わたしたちの身体はまだ〝戦場〟のままか 横溝静/塩㟢由美子/澤田知子/朝海陽子/高橋ジュンコ/志賀理江子 ■森栄喜の拡大家族 ■「失われた二〇年」と女性写真家の表現 大塚千野/田口和奈/菊地智子/蔵真墨/笹岡啓子 ■囚われの荒木 荒木経惟 ■岡田裕子の愛と孤独、そして笑い ■イケムラレイコの少女 ■映里扉を開く〝セルフ・ポートレイト〟 第一版あとがき ■対談 長島有里枝×笠原美智子「なぜ、わたしたちは出会えなかったのか。」 ■愛と痛みの日誌 2020.11-2022.6 - 著者プロフィール - 笠原 美智子 (カサハラ ミチコ) (著/文) 1957 年長野県生まれ。83 年明治学院大学社会学部社会学科卒業。87 年シカゴ・コロンビア大学大学院修士課程修了(写真専攻)。東京都写真美術館、東京都現代美術館にて学芸員を務め、現職は公益財団法人アーティゾン美術館(旧・石橋財団ブリヂストン美術館)副館長。日本で初めてのフェミニズム・ジェンダーの視点からの企画展「私という未知へ向かって 現代女性セルフ・ポートレイト」展(91 年)を皮切りに、フェミニズム・ジェンダーの視点からの企画展示を多数企画。著書に『ヌードのポリティクス 女性写真家の仕事』(筑摩書房、98 年)、『写真、時代に抗するもの』(青弓社、02 年)他。
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民藝の歴史|志賀 直邦
¥1,430
筑摩書房 2016年 ちくま学芸文庫 ソフトカバー 416ページ 文庫判 - 内容紹介 - モノだけでなく社会制度や経済活動にも美しさを求めた柳宗悦の民藝運動。「本当の世界」を求める若者達のよりどころとなった思想を、いま振り返る。
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世界の音 楽器の歴史と文化|郡司 すみ, 森重 行敏(解説)
¥1,155
講談社 2022年 講談社学術文庫 ソフトカバー 264ページ 文庫判 - 内容紹介 - 「打楽器を持たない民族はいない」。古来、人は自身の体やモノを叩いて感情を伝え、動物の鳴き声や雨風などの自然音を真似、再現してきました。楽器発祥から2万年。信仰の祭礼、政治儀式、軍事の士気高揚・・・・・・あらゆる場面に浸透していった「音」と「音楽」。気候風土や時代背景に合わせ、世界各地の「音」は、どのように姿を変えてきたのか。西洋音楽と民族音楽、その対比が示す真意は? 「音」で考える、ユニークかつ雄大な文化人類学!(解説・森重行敏) 本書は『世界楽器入門 好きな音 嫌いな音』(1989年1月 朝日選書)を改題したものです。 はじめに 第一章 ミンゾク楽器・ 第二章 楽器の起源 1 生活周辺から生まれた楽器 2 食器から楽器へ 3 道具から楽器へ 4 自然界の音の再現から楽器へ 5 生存に必要な音を出す道具から楽器へ 6 呪術・信仰の道具から楽器へ 7 学問・研究の道具から楽器へ 8 音像から楽器へ 第三章 楽器分類を通して見た諸民族の楽器観 1 中国 2 インド 3 ギリシャ 4 ローマ 5 ヨーロッパ 第四章 楽器の音 1 打つ、擦る、吹く、弾く 2 楽器の成り立ち 3 音の出し方 第五章 楽器の分布と歴史 第六章 風土と音 1 風土と楽器 2 音の響き 第七章 音・数・楽器 第八章 メディアとしての楽器 1 経営メディアとしての楽器 2 視覚メディアとしての楽器 3 思想メディアとしての楽器 第九章 手作りについて 第十章 好きな音嫌いな音 第十一章 東方の楽器・西方の楽器 石笛/横笛/笙/篳篥/尺八/和琴/箏/琵琶/三味線/胡弓/鼓/先史時代の楽器/オーボエとバスーン/クラリネット/トラムペットとトロムボーン/ホルン/テューバ/リコーダーとフリュート/バグパイプ/オルガン/キタラとライア/ハープ/ヴァイオリン/リュートとギター/ツィターとハープシコード/クラヴィコードとランゲレイク/ダルシマーとピアノ/カリヨン/ティムパニとシムバル/アフリカの楽器/インドの楽器/インドシナ半島の楽器/インドネシア・オセアニアの楽器/雑音の効果/種々の撥/弦 楽器に関する参考文献 あとがきにかえてーー楽器研究の方法論―― 解説「人類共通の財産ーー音楽とは何か?ーー」森重行敏(洗足学園音楽大学現代邦楽研究所所長) 楽器索引 人名索引 - 著者プロフィール - 郡司 すみ (グンジ スミ) (著/文) 1930年フィンランド・ヘルシンキ生まれ。国立音楽大学名誉教授。国立音楽大学楽器学資料館初代館長。楽器学専攻。西ドイツ・ルードヴィクスブルクFachschule fur Musikinstrumentenbau(楽器製作専門学校)卒業。著書に『楽器学』『楽器概論』『ピアノの音とそのアフターケアーについて』、編著に『日本伝統楽器小辞典』、訳書に『ピアノのTonbildungについて』『楽器の精神と生成』『楽器のおいたち』『奇跡のピアノ』など多数。2019年没。 森重 行敏 (モリシゲ ユキトシ) (解説) 洗足学園音楽大学現代邦楽研究所所長
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クィア・アートの世界 自由な性で描く美術史 | 海野弘(著/文)
¥4,620
パイ インターナショナル 2022年 ソフトカバー 480ページ B5変型判 縦249mm 横174mm - 内容紹介 - ■制作意図 近年、「アート史におけるクィア」を考えるという傾向が世界的に広がり、「クィア・アート」と呼ばれるジャンルの研究が進んでいます。 本書『クィア・アートの世界』は、第一に、抑圧や偏見、差別によってアートとして語られず、それ故にこれまで私たちが目にすることができなかったアートを見直したい。第二に、アートにおける「クィア」を考える上で、社会的に抑圧され差別を受けていたものが、アートにおいては歓迎され、多く取り上げられている、それがなぜなのかという問題を扱いたい。そして第三に、「クィア」という言葉がとても多様で共通の認識がないため、それを考える一つの試みを行いたいとの思いから、制作に至りました。 ■書籍の内容 本書では、「クィア」がいかに社会的、歴史的に変遷していったかを述べた上で、「アートにおけるクィア」をセクシュアルマイノリティに限らず、その域を超え、抑圧や差別等によりアートとして語られてこなかった広いジャンルの作品を包括して取り上げました。 LGBTQ+のアート、フェミニズムのアート、カウンターカルチャーやポップ・カルチャーにおける多彩な表現のアート、アンダーグラウンド・アート、ポルノグラフィティのアート……。独自の視点で、古代エジプトから現代までーー美術(絵画、挿絵、彫刻)を中心に、多岐にわたるジャンルの作品とともに、アート史における「クィア」の流れを追っていき、「クィア・アート」の系譜を探究しております。 美術史上の名作とされる作品の中に「クィア」性を見出したり、抑圧や偏見、差別によってこれまで見ることができなかった多様な作品を、驚きと感動、そして問題提起を含んだ解釈で紹介します。 目次 ■「クィア」という言葉と「クィア・アート」 「クィア」という言葉はもともと「変わった」「風変わりな」といった意味を持ち、英語圏では同性愛者などに対する侮蔑表現でもありました。けれどもその否定的なイメージを変えるべく、あえて当事者の方々が自己肯定的に自らを「クィア」と名乗り、用いるようになりました。当事者の方々に対する呼称を抑圧する側が定義するのではなく自らが定義する力を取り戻すため、また社会における否定的なマイノリティ像を逆転させることを目指し、現在は性的少数者全体を包括する用語として肯定的な意味でも多く使われています。 「クィア」は1990年代から「クィア理論」として発展していき、セクシュアルマイノリティの多様なあり方、「性の多様性」を包括的に知るための学問としても研究されるようになりました。 そして21世紀に入った頃から「クィア・アート」というジャンルが世界中ではっきりと意識されるようになります。けれども、その新しいアート史の試みはまだ始まったばかりです。 本書で紹介した作品の中で、特にはじめて目にするものを見た際に、それを見た方が「不思議な作品だな」と特別な感覚を覚えることもあるかと思います。 本書ではそこに素晴らしさを見出し、アートにおける不思議なもの、特別なもの、他にないものこそ価値があり魅力的ではないか? といった問いかけも試みております。 「クィア」がアートの中で、すべての人たちの共通のものとして広がるために、そして「クィア・アート」の素晴らしさを多くの人が理解し共感できればという思いもこめて、本書を制作いたしました。 ※多数のご指摘をいただいたことを受けまして、本書の書誌情報(内容紹介文)を変更させていただきました。(2022年9月22日) - 著者プロフィール - 海野弘 (ウンノヒロシ) (著/文) 1939年東京生まれ。評論家、作家。早稲田大学ロシア文学科卒業。平凡社に勤務。『太陽』編集長を経て、独立。美術、映画、音楽、文学、都市論、ファッションなど幅広い分野で執筆を行う。著書多数。
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タゴール・ソングス | 佐々木 美佳
¥1,980
三輪社 2022年 仮フランス装 144ページ B6変型判 縦179mm 横114mm 厚さ10mm - 内容紹介 - 「歌い、そして自分を信じなさい」 タゴールの歌は教えてくれる、 別れ、貧困、矛盾、あらゆる苦境を乗り越える力が、 自分のなかにあることを。 インドとバングラデシュにまたがるベンガルの地に、きびしい現実のなかで息づくタゴールの歌。「詩聖」ラビンドラナート・タゴールが自然、人間の喜び、悲しみ、その内なる力を題材につくった歌は、百年の時を経たいまでも、困難を乗り越える糧になっている。映画『タゴール・ソングス』を監督した佐々木美佳が数年に渡る撮影の旅路で出会った、3人の歌い手をめぐる、もうひとつの『タゴール・ソングス』。 目次 ●「私はチットランゴダ」 タゴールの街で/出会いはいつも偶然に/タゴールの国歌/アナおばさん/コルカタのトラム/母と娘、父 ●赤土の道 渋滞する道路/ナイーム/レコードショップ/学窓から聞こえる歌/黄金のベンガル/貧困と音楽/心が赴くほうへ ●みな一緒に進んでいった ハウラー橋の向こう側/恵みの雨/観客はわずかでも/過去の部屋/師から弟子へ/邂逅/ふたりの歌 エピローグ - 著者プロフィール - 佐々木 美佳 (ササキ ミカ) (文) 映画監督、文筆家。1993年、福井県生まれ。東京外国語大学言語文化学部ヒンディー語学科卒業。2020年、ベンガル人のあいだで愛されている、タゴールが作詞・作曲した歌〈タゴール・ソング〉を探しにいくドキュメンタリー映画『タゴール・ソングス』で監督デビュー。2022年にはダッカ国際映画祭に出品。次回作は、日本に住む南アジア出身者がつくるカレーを題材にした長編映画と、タゴールとゆかりのある原三溪と三溪園をテーマにした短編『三溪の影(仮)』を準備中。
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図説 セザンヌ「サント=ヴィクトワール山」の世界 | 工藤 弘二
¥3,960
創元社 2022年 ハードカバー 169ページ B5変型判 縦242mm 横190mm 厚さ17mm - 内容紹介 - 孤高の画家が描き続けた故郷の象徴、 「サント=ヴィクトワール山」の 軌跡をたどる。 故郷のプロヴァンスと芸術の中心地パリ―― “近代絵画の父”セザンヌは、 なぜフランスの南北を往復し続け、 繰り返し「サント=ヴィクトワール山」を描いたのか? 「描かれた場所」からその全貌を解説する初の一冊。 知られざる水彩画を含む すべての「サント=ヴィクトワール山」と その関連作を集めた、永久保存版資料。 〈全83点、完全収録!〉 ********* セザンヌは私の、 唯一無二の師だったのです! 私が彼の絵画にまなざしを向けたのを よく考えてみてください。 セザンヌの絵画を研究するのに 私は何年もかけました。 セザンヌ! 彼は、 私たち皆の父のようでした。 私たちを守ったのは、彼なのです。 ――パブロ・ピカソ * 私の人生を通じて 彼の素晴らしい模範がもたらした 道徳的な力と励ましのすべてを、 あなたがご存知でしたら! 暗中模索の時期、 いまだに私が自分を探していたときに、 自らの発見にしばしばたじろぎを感じて、 こう考えたものです。 「もし、セザンヌが正しいなら、 私は正しい」と。 セザンヌが間違えなかったことが、 私にはわかっていたのです。 ――アンリ・マティス ********* 【本書の特長】 ◆「サント=ヴィクトワール山」の歩みと 制作の背景、見どころを徹底解説。 ◆活動拠点となったパリと プロヴァンスの風景画も数多くクローズアップ。 ◆水彩画を含む「サント=ヴィクトワール山」 全83点を収録した永久保存的資料。 ********* 【シリーズ好評既刊!】 『図説 モネ「睡蓮」の世界』安井裕雄 著 すべての「睡蓮」を集めた永久保存版資料。 〈全308作品、完全収録!〉 ********* 目次 Chapitre I パリ ――画家になることを夢見て、芸術の都へ Chapitre II プロヴァンス ――強烈な陽光の下に生まれた新たな創造性 Chapitre III サント=ヴィクトワール山 ――郷土を象徴する「聖なる勝利の山」 (コラム) 川を描く 湖を描く 海を描く 岩を描く ガスケの見たセザンヌ セザンヌとルノワール ドニとルーセルの見たセザンヌ 想像のサント=ヴィクトワール山 セザンヌをめぐる画家たちの言葉 ……ほか - 著者プロフィール - 工藤 弘二 (クドウ コウジ) (著/文) 東北大学文学研究科博士課程単位取得退学。国立新美術館アソシエイトフェローを経て、現在、ポーラ美術館学芸員。担当した展覧会に「セザンヌ-パリとプロヴァンス」(2012年、国立新美術館)、「セザンヌ-近代絵画の父になるまで」(2015年、ポーラ美術館)、「モネとマティス-もうひとつの楽園」(2020年、ポーラ美術館)、共著に『セザンヌ-近代絵画の父、とは何か? 』(2019年、三元社)など。
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象の記憶 日本のポップ音楽で世界に衝撃を与えたプロデューサー|川添象郎
¥2,530
DU BOOKS 2022年 ソフトカバー 312ページ 四六判 - 内容紹介 - 後藤象二郎 、川添浩史、原智恵子… 日本文化の世界進出に貢献した一族の末裔もまた、 日本の音楽を世界に広めた男だった。 YMOで社会現象を巻き起こし、 ユーミン、吉田美奈子、ハイ・ファイ・セット、佐藤博など、 いま、世界でシティポップとして評価される音楽を プロデュースしてきた著者がはじめて語る、破天荒な人生。 革命的なこと、前衛的なこと―― 曾祖父は幕末の土佐、父は30年代のパリ、 そして、末裔の象郎は60年代の グリニッジ・ヴィレッジと、 80年代バブルと平成の日本を駆け抜けた。 装画:木村英輝 【Praise for Shoro Kawazoe】 象郎には、正直、ナンニモしてもらったことがない。 でも、何故かほっておけない奴だ。 川添と聞くと、象ちゃんよりも、父上の川添のパパが蘇る。 “ブラボー” 1965年、日生劇場「オンディーヌ」初日。 川添のパパは、誰よりも先に立ち上がり、喝采をくれた。 1960年、飯倉キャンティの初日、象郎に引っぱっていかれた小娘に、当たり前に椅子を引いて、大人扱いをしてくれる、パパの本当の育ちのよさ。 1964年、カンヌ映画祭、川添のパパの心配りで、飛行機から下りたばかりの“女優”に、大きな花束とフラッシュ。遊び気分が吹っとんだ。東洋から来た、名も無い女優に、喝をくれたのだ。 「人類多しといえど、殊更に我に悪敵はなきものなり。恐れ憚ることなく、心事を丸出しにして飄々と応接すべし」 この言葉のままに生きた、この父と子。 他人と自分をくらべたりせず、心の底から、笑っていろと教えてくれた。 それが川添家の血なのだろう。 ――加賀まりこ(女優) 川添さんはスパニッシュ・ギターのアーティストであり、同時に欧米スタイルのショービジネスを日本で展開し、YMOの世界ツアーを仕切った恩人でもあります。その頃の話はいつ聞いても面白く、感心してしまい、そういうことが詰まった本を待っていたので嬉しいことこの上ありません! ――細野晴臣(音楽家) 出鱈目? それとも啓示? 15歳の私も、六本木の街角で川添さんのマッドなヴァイブスに巻き込まれたひとりです。 いつまでも、そんな存在でいてください。 ――松任谷由実(シンガーソングライター) 洋も和も、あらゆるアートに精通し、センスは抜群! いろいろあったが、なぜか憎めないやつ。 こんな男とはそうそう出会えるもんじゃない。 ――ミッキー・カーチス(歌手、俳優) 超絶型破りなこのお方、転んでもただでは起きず、それが底の知れぬ水溜まりであったとしても、絶対にその手の中に世間があっと驚く宝物を掴んで起き上がる、言わずもがなのお方なのです。そのアドレナリンの量と記憶力は他に類を見ず、時代がどう変わろうと一切ブレない品格のある筋金入りの審美眼には、ただひたすら平伏するばかりだ。最後の本だなんて言わないで、「美しさ」の不可思議な成り立ちを、どうかその毒舌で語り続けていただきたい。こんなに極上で素敵な人とは、もう二度と廻り逢えないのだから! ――吉田美奈子(音楽家) 川添さんと私の出会いは、学生から社会へと飛び出すのにいろいろと思案していた時期であり、まさに川添さんは私のその後の人生を決定づけた師匠であります。当時はまだその内容が広く理解されていませんでした「プロデュース」という仕事のイロハをお教えいただきました。その後アルファレコードの立ち上げやYMOに関われたのも川添さんのおかげです。私はYMO以後「デジタル」という分野に進み、現在はインターネットに関わる仕事についておりますが、今でも川添さんから学んだ「プロデュース術」とも言うべきナレッジは私の中で生きております。 ――小尾一介(Google株式会社執行役員などを経て、クロスロケーションズ株式会社代表取締役社長) 最後の東京のお坊ちゃんというイメージで僕たちは象ちゃんを見ていました。 やんちゃな一面、教養もあり、音楽プロデューサーとしてのクリエイティブの能力はすごく高い。二人で仕事をしたのは空間プロデューサーという言葉がバズワードになっていたバブル時代に、私がプロデュースしたビアホール。象ちゃんにはホールの中のレストランのプロデューサーをお願いしました。この本は戦後からバブル時代の記録としても面白い。キャンティというサロンを通して、ロバート・キャパや、ピエール・カルダンなど、グローバルで豊富な人脈が象ちゃんという才能につながっていきます。そしてなによりも象ちゃんは最高に楽しい遊び仲間です。 ――坂井直樹(コンセプター) 1968年の東京で誰よりも欧米の音楽、アート、ファッション、エンターティンメント、フォトグラフィーに関して、生のグローバルネットワークを持っていたのは、川添象郎さんです。象ちゃんに紹介された未来学者、思想家、哲学者、歴史哲学者である仲小路彰さんは、僕の人生の指針を示してくれました。 ――シー・ユー・チェン(CIA Inc. Piii Founder & Executive Chairman) この本に書かれているショウちゃんの若い頃のハリウッドやラスベガス、グリニッジ・ヴィレッジやマドリードなどでの修業時代の話は本当に面白い。海外でこんな経験をしてきた日本人はあまりいないと思う。この本を読むとその修業が後のYMOの成功をはじめ数々のプロデュ―ス作品の成功に大きく役立っていることがわかる。 僕がキャンティに行くようになった1960年代はじめ、ショウちゃんはグリニッジ・ヴィレッジでフラメンコ・ギターに熱中していた。時折弟の光郎に手紙を書いて様子を知らせていたのだが僕はキャンティでその手紙の一つを義母のタンタンやみっちゃんと一緒に読んだことがある。本書にでてくるグリニッジ・ヴィレッジの暮らしのことが書いてあった。その頃のショウちゃんは読書家でドス・パソスの『U.S.A.』なんかを読んでいてその感想や時間と空間をどう考えるかなどという哲学的な事も書いてあったことを思い出す。ショウちゃんが一生の締めくくりに本を出すことができて僕もうれしい。 ――村井邦彦(音楽家) 著者プロフィール - 川添象郎 (著/文) - 1941年東京都生まれ。父はイタリアンレストラン「キャンティ」を創業し、国際文化事業で知られる川添浩史、生母はピアニストの原智恵子。明治の元勲、後藤象二郎を曽祖父にもつ。 慶應義塾幼稚舎を経て、ラ・サール高等学校から和光高等学校に転入。高校卒業後、マグナム・フォトのルネ・ブリやデニス・ストックの来日アシスタントとして働く。 60年に渡米。舞台芸術とショービジネスをラスベガスで働きながら学ぶ。フラメンコ・ギタリストとしても活動。オフブロードウェイの前衛劇『六人を乗せた馬車』に参加し、世界ツアーを経験。帰国後、反戦ミュージカル「ヘアー」をはじめ、音楽と演劇を中心に数々のプロデュースをおこなう。 1977年、村井邦彦とアルファ・レコードを創設し、荒井由実、サーカス、ハイ・ファイ・セットなど、現在では「シティポップ」として世界的にも評価される、都会的で洗練された音楽をリリース。YMOのプロデュースでは、世界ツアーを成功に導き、日本を代表するポップカルチャーとして世界的存在に仕立て上げた。 イヴ・サンローランの日本代表やピエール・カルダンのライセンス開発も手掛け、1980年代半ばには、空間プロデューサーとしても活動。 2007年にはほぼ20年ぶりに音楽プロデュースに復帰し、SoulJaをプロデュース。青山テルマ feat.SoulJa『そばにいるね』は日本で最も売れたダウンロードシングルとして、ギネス・ワールド・レコーズに認定。2011年にプロデュースしたふくい舞『いくたびの櫻』はレコード大賞作詞賞を受賞。
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椅子クラフトはなぜ生き残るのか | 坂井素思
¥2,200
左右社 2020年 ソフトカバー 256ページ 四六判 - 内容紹介 - 古代エジプト文明以来、人間とともにあり、 専門職人たちの手でつくられてきた椅子は、近代を迎えて大きな転機を迎える。 大量生産と機械化の時代を潜り抜け、手づくりの小規模生産が生き残るのはなぜか。 ものづくりの将来と日本の経済社会を見据え、クラフツ経済の現代的課題と強みをさぐる。 【図版多数掲載】 近年、他業種の傾向に反して木製家具製造業で、 従業員3人以下の事業所数シェアが増大しているのはなぜだろうか。 椅子という商品には、生産や流通をめぐる経済構造に特別な点があるのだろうか。 作り手そして購入者にとっての、椅子の魅力と特性とは何だろうか。 近代椅子の名作、現代日本の椅子作家の作品に触れながら、 職人たちの小規模生産が生き残る椅子づくりの世界に多角的にせまる。 目次 まえがき 第一章 なぜ椅子クラフツを取り上げるのか 第二章 椅子クラフツ生産はいかに行われているか 第三章 近代椅子はどのように変化してきたか 第四章 なぜ椅子をつくるのか 第五章 椅子に何を求めるか 第六章 生活文化の中の椅子 第七章 椅子の社会的ネットワークはどのようにして可能か 終 章 椅子からみる経済社会 あとがき
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【サイン本】椰子の実 | 横地美穂
¥4,180
蒼穹舎 2021年 ハードカバー 80ページ クロス装 232 × 271 mm - 内容紹介 - 椰子の実の歌の舞台となった愛知県渥美半島の先、伊良湖岬の近くで生まれ、 まだ旅をする気持ちも知らなかった頃の私にとって 「椰子の実」という言葉は卒業文集を思い出すような懐かしいものでした。 それがいつしか、伊良湖のフェリーターミナルにある椰子の実を見て 「どこからきて、どんな旅をしてきたのだろう」などと思いを馳せるようになったのは 私にも旅の心が芽生えたからでしょうか。 海辺を歩くことが好きで写真を撮るうちに、 長い年月をかけて海を渡る椰子の実のように 私もずっと日本中の海沿いを歩いて写真を撮ろうと心に強く思いました。 地元の漁師の方に教えてもらう潮の流れ、旅先の宿やお店で出会う季節の美味しいもの、 伊良湖と似た砂浜や灯台、強く吹く風、笑い合う家族や恋人たちを眺めていると、 どの土地もまるで自分の生まれ育った故郷のように感じ、海に囲まれた日本に生まれたことを嬉しく思いました。 写真集「椰子の実」は文集のようにささやかですが、 旅や故郷を思う気持ちを誘ったならば幸せに思います。 ― 横地美穂 伊良湖岬に育った作者が日本各地の海辺の町を訪ね歩いた美しいモノクロスナップ。 一枚一枚の写真からは文字にはできない、いくつものことばが溢れ出している。
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大竹伸朗 ビル景 1978–2019 | 大竹伸朗
¥10,780
HeHe 2019年 ハードカバー 322ページ B4判 - 内容紹介 - 未発表作品から最新作まで、約40年間で制作された「ビルのある風景=ビル景」全作品830点 常にその制作活動が惹きつけて止まない画家・大竹伸朗が、1978年から2019年現在まで約40年間継続して制作を続けている「ビルディング・シリーズ」=「ビル景」全作品を収めた画集が出来上がりました。 「ビル景」はその大半が実在の風景の写実ではなく、香港やロンドン、東京といったさまざまな都市の記憶と、意識的・無意識的に断続的に現れる「ビルのある風景」やそこに伴うイメージによって描かれた作品です。 2000年代に行われたいくつかの展覧会での経験から、作家自身が3年余りかけ「ビル景」作品を調査し、集められた全作品830点を時系列で収録しました。 「続けようとすることよりも続いていってしまう事柄の中に探しものはいつも隠れている」*と自身が綴るように、ひとりの作家の画業約40年の作品群からは、その時折々の環境や心情による変化が垣間見えると同時に、一貫して変わらぬ制作意欲と、得もいわれぬ圧倒的な説得力を持ちます。 B4サイズという大判の判型により質感や作品の細部まで再現され、活版印刷を施した装丁や、封入された特製付録「活版画」は、印刷物にこだわりのある読者にも満足の一冊となりました。 保坂健二朗氏(東京国立近代美術館)による、新しい角度からの大竹伸朗「ビル景」論も必読です。 *(大竹伸朗「見えない音、聴こえない絵」『新潮』2019年4月号) ・執筆:大竹伸朗、保坂健二朗(東京国立近代美術館) ・活版印刷スリーブケース入り ・付録:特製活版画(240 x 350mm)封入 - 著者プロフィール - 大竹伸朗 (オオタケシンロウ) (著/文) 1955年、東京生まれ。1980年代初頭より国内外で作品発表を開始。2006年初回顧展「大竹伸朗 全景 1955–2006」(東京都現代美術館)以降、東京、香川、ソウル、ロンドン、シンガポール等で個展。光州ビエンナーレ(韓国)、ドクメンタ(ドイツ)、ヴェネチア・ビエンナーレ(イタリア)、横浜トリエンナーレ、瀬戸内国際芸術祭はじめ国内外の企画展に参加。1986年に初作品集『《倫敦/香港》一九八〇』(用美社)刊行後、作品集や著作物、CD等多数発表。主な著書にエッセイ集『見えない音、聞こえない絵』『ビ』『ナニカトナニカ』(共に新潮社)、『既にそこにあるもの』、『ネオンと絵具箱』(共にちくま文庫)、絵本『ジャリおじさん』(福音館書店)等。エッセイ「見えない音、聴こえない絵」は、月刊文芸誌『新潮』に現在も連載中。2014年芸術選奨文部科学大臣賞受賞。 ohtakeshinro.com
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現代写真アート原論 「コンテンポラリーアートとしての写真」の進化形へ | 後藤 繁雄(編集), 港 千尋(編集), 深川 雅文(著/文)
¥2,200
フィルムアート社 2019年 ソフトカバー 296ページ 四六判変形 - 内容紹介 - インスタグラムの時代の現代写真アートとは何か? デジタル化以降、「真」を写す=写真という従来の概念が大きな変化を見せるいま、現代アートとしての写真の新しい「原論」を提示する。 銀板を用いた撮影法により写真が誕生してから180年──いまや誰もがスマートフォンで日常的に簡単に「撮影」でき、それを加工し、インスタグラムをはじめとするSNSで世界中に発信でき、インターネット上には無数の写真データが存在する時代となった。デジタル化し遍在化した「写真」には大きなパラダイムシフトが起こっている。 グローバル資本主義のなかで流動化するコンテンポラリーアートの世界でも、「写真アート」は存在感を増し、一点数億円で落札されるプリントからインスタレーションやプロジェクション、ポストメディウムの作家まで、新しく多様な才能が活躍している。コンピュータ・サイエンスやネット・テクノロジーの大きな変化に晒される社会で、いかに一枚の写真がアートとしての価値を生成するのか──本書は「現代写真アート」の世界をめぐる羅針盤となるだろう。 写真そのもののメディアとしての起源を問い、写真の概念の再定義を試みるとともに、現代アートとしての写真の可能性を問う、待望の一冊。 《本書で言及される主なアーティスト》 トーマス・ルフ、シンディ・シャーマン、ジェフ・ウォール、ヴォルフガング・ティルマンス、ソフィ・カル、ロバート・フランク、ベッヒャー夫妻、ゲルハルト・リヒター、アウグスト・ザンダー、アンドレアス・グルスキー、トーマス・シュトゥルート、ジグマー・ポルケ、森村泰昌、カンディダ・へーファー、スティーブン・ショア、ロバート・メイプルソープ、アンセル・アダムズ、杉本博司、ホンマタカシ...etc 目次 Introduction 現代写真アートは、どこに向かっているのだろう? 後藤繁雄 Article タイムマシン2019 港千尋 Discussion 1 現代写真アートのストラテジー 深川雅文+後藤繁雄+港千尋 現代アートとしての写真 タイポロジー──ベッヒャー夫妻 ニュードキュメントとニュートポグラフィックス ジェフ・ウォール ドイツのマテリアリズム シンディ・シャーマンとアメリカ 1989年──転換点 Discussion 2 90年代の写真 後藤繁雄+深川雅文+港千尋 モダニズム批判と「風景」 凡庸さへの移行 ポストモダンとヴィジュアル・カルチャー 90年代の日本とヨーロッパ ポストモダンの確信犯・ティルマンス Discussion 3 ポストヒューマンとアントロポセンの写真アート 港千尋+後藤繁雄+深川雅文 テクノロジーで汚された新世界 ソフィ・カルという特異点 追跡、盗撮、そして群衆 ドキュメンタリー写真の現在形 新しいプラットフォーム ポストメディウムの未来 新しいプレイヤーたち アジアとリンクする時代 Article テクノ・イマジネーション宣言 深川雅文 Keywords シャーロット・コットンと『写真は魔術』 深井佐和子 実験から生成へ──センサー時代の実験写真 小山泰介 現代写真の加工術 川島崇志 ワークショップ/フォトセラピー 多和田有希 ヴィレム・フルッサーとは何者か? 深川雅文 フォトブックフェア/アートブックフェア 中島佑介 可視化せよ──ドキュメントからフォトグラフィック・リサーチへ 小山泰介 G/P galleryという「ニューモデル」 後藤繁雄 Add 現代フォトアートをさらに学ぶための必須ブックリスト 後藤繁雄 History 現代写真アート年表1964–2018 - 著者プロフィール - 後藤 繁雄 (ゴトウ シゲオ) (編集) 編集者・クリエイティブディレクター、アートプロデューサー、京都造形芸術大学教授。1954年大阪府生まれ。坂本龍一、細野晴臣、篠山紀信、荒木経惟、蜷川実花、名和晃平らのアーティストブック、写真集を編集。展覧会のキュレイション、若手アーティストの発掘・育成・サポート、アートスタッフの育成などにも力を入れ、幅広く活躍している。 港 千尋 (ミナト チヒロ) (編集) 写真家、映像人類学者。多摩美術大学教授。1960年神奈川県生まれ。南米滞在後、パリを拠点に写真家として活躍。1995年より多摩美術大学美術学部で教鞭をとり、現在は同大学情報デザイン学科教授。2006年〈市民の色〉で伊奈信男賞受賞。2007年第52回ヴェネチア・ビエンナーレ美術展における日本館の展示企画コミッショナーをつとめる。 深川 雅文 (フカガワ マサフミ) (著/文) キュレーター/クリティック。1958年佐賀県生まれ。川崎市市民ミュージアム学芸員として、写真、デザイン、現代美術に関する展覧会の企画に携わる。代表的展覧会「バウハウス 芸術教育の革命と実験」(1994)、「遠近 ベッヒャーの地平」(1997)「生きるアート 折元立身」展(2016)など。現在、フリーのキュレーター/クリティックとして活動。
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ジオ・ポンティとカルロ・モリーノ: ドムスへの道程 | キース・イヴァン グリーン, 岸本 雄二 (翻訳)
¥3,960
鹿島出版会 2011年 ハードカバー 270ページ - 内容紹介 - 戦後イタリアデザイン界の天使と悪魔、父と異端児の相克。 モダニズムの全盛期、対極的な二人は生き生きとした建築本来の姿、「ドムス」を追い求めた。その詩的で不可思議な世界を、気鋭の建築学者が読み解く。
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世界のインディゴ染め | カトリーヌ・ルグラン, 出口雅敏(監修), 松永優(監修), 本田万里(翻訳)
¥4,950
パイ・インターナショナル 2019年 ハードカバー 288ページ A4変型判 縦226mm 横252mm - 内容紹介 - ジーンズから久留米絣まで、世界各国のインディゴ染めを網羅 パステルやインディゴにまつわる歴史的な側面にも焦点を当てながら、世界各国でインディゴ染めを行う少数民族・職人・工房を、美しい写真と図版満載で紹介。ヨーロッパ・日本・中国・ラオス・ベトナム・インド・アフリカ・中央アメリカなど、世界中の含藍植物を使った染め織りの文化に触れられる、大変貴重な1冊です。 - 著者プロフィール - カトリーヌ・ルグラン (カトリーヌルグラン) (著/文) グラフィックデザイナーとしてニューヨークとパリで活躍後、素材に興味を持ち、世界の民族衣装からインスピレーションを得たデザイナーとしてパリでブティックをオープン。テキスタイルを求めて世界中を旅し、各国の生地や衣装・アクセサリーを蒐集しているコレクターでもある。 出口雅敏 (デグチマサトシ) (監修) 1969年生まれ。東京学芸大学教授。専門は、文化人類学・フランス地域研究。モンペリエ大学大学院修士課程およびDEA課程修了(フランス民族学専攻)。早稲田大学大学院人間科学研究科博士課程修了。博士(人間科学)。著書に、『博物館という装置』(共著、勉誠社、2016年)、『ヨーロッパ人類学の視座』(共著、世界思想社、2014年)、『人類学ワークブック』(共編著、新泉社、2010年)など。 松永優 (マツナガユウ) (監修) 1947年生まれ。染色作家。立教大学文学部中退。29歳から染色を始め、その後多様な藍の制作と発表。団体展をやめ個展による発表活動をして現在に至る。2007年から2014年まで東京芸大非常勤講師。 本田万里 (ホンダマリ) (翻訳) 日本でデザインとパターンを学び、卒業後渡仏。子ども服のデザイナーとして活動後、彫金を学び職業適正証(CAP Bijoutier)を取得。主な翻訳書に『世界の美しいボタン』『世界の美しいブローチ』(ともにパイ インターナショナル)などがある。
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定本 映画術 ヒッチコック・トリュフォー | フランソワ トリュフォー, アルフレッド ヒッチコック, 山田 宏一 (翻訳), 蓮實 重彦 (翻訳)
¥4,400
晶文社 1990年 ハードカバー 384ページ B5判 - 内容紹介 - これが映画だ! 映画の巨匠が華麗なテクニックを大公開。サイレント時代の処女作から最後の作品まで、520枚の写真を駆使して語りつくす。「まず読み物として興味津々」「技術面だけにとどまらず、技術と主題、形式と内容とが不可分のものであることを、じつに説明的に語っているところに本書の真の価値がある。」(朝日新聞評)。 『荒木飛呂彦の漫画術』(集英社新書)内で、「必携の一冊」として紹介。
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民藝のインティマシー Intimité de MINGEI : 「いとおしさ」をデザインする | 鞍田 崇
¥2,750
明治大学出版会 : 丸善出版 2021年 ソフトカバー 216ページ 縦190mm - 内容紹介 - 第1章 Sympathy-民藝への共感(「ふつう」から考える 民藝をめぐる環境の変化1.社会 ほか) 第2章 Concept-民藝の思想(民家・民具・民藝 民俗学と民藝 ほか) 第3章 Mission-民藝の使命(藤井厚二・柳宗悦・和辻哲郎 民藝館という建物 ほか) 第4章 Commitment-民藝の実践(生活意識の高まりの変化 社会意識の高まりの変化 ほか)
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22世紀の荒川修作+マドリン・ギンズ 天命反転する経験と身体 | 三村 尚彦, 門林 岳史
¥3,520
フィルムアート社 2021年 ソフトカバー 315ページ A5判 - 内容紹介 - 「死なないために」とはどういうことなのか? 死すべき存在である人間の運命に戦いを仕掛けた 荒川+ギンズの思考に迫る、22世紀の身体論。 荒川修作没後10年、今なお刺激に満ちた現在進行形の 彼らの思想を再発見していく画期的論集。 「人間は死なない」──死と生命をめぐる独自の発想と思考から、数多くの 鮮烈な言葉を残した荒川修作+マドリン・ギンズ。「三鷹天命反転住宅」や 「養老天命反転地」をはじめとする彼らの作り上げた様々な空間は私たちの 五感や認識のあり方に大きく揺さぶりをかける。 不確かな時代であるがゆえの、身体への意識と関心の高まりにおいて、 荒川+ギンズの思想は多くの発見や刺激を私たちに与えている。 死すべき存在でありながら、生命を消滅させないという矛盾を荒川+ギンズは どのように乗り越えようとしたのか。 人間の運命に戦いを仕掛け、運命を根底から覆す「天命反転」を企てた、 今なお/今こそ現在進行形というべき荒川+ギンズの思想と実践を、 身体論を軸として、哲学、建築、美術、心理学、教育学などさまざまな専門分野 から再検討する。それとともに荒川+ギンズ関連の展覧会、パフォーマンスなどの 近年のプロジェクトを包括的に紹介する。
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ワールドシネマ入門 世界の映画監督14人が語る創作の秘密とテーマの探求 | 金子遊, 住本尚子(イラスト)
¥2,310
コトニ社 2021年 ハードカバー 264ページ 四六判 - 内容紹介 - 世界映画(ワールドシネマ)の巨匠たちは、いかにしてテーマと出遭い、それを創造へと結びつけるのか? さまざまな言葉、風土、食物、ファッション、生活習慣、信仰、音楽があふれる世界映画(ワールドシネマ)。 そこは、社会問題や歴史や民族がうずまく多様な社会です。 本書はそのコミュニティに参画するための手引きでもあります。 また、映画や映像を製作するためのモチベーションの源泉やテーマへの探求にも迫ります。 自身も映像作家である金子遊(多摩美術大学准教授)が、クリエイティブの根幹について、世界各国の巨匠や名匠14人に話を聴きました。 【対話監督一覧】 ペドロ・コスタ〈ポルトガルの世界的映画作家〉 黒沢清〈ホラーやスリラーで世界的名声を得た日本の名監督〉 トニー・ガトリフ〈ロマの血をわけたアルジェリアの名匠〉 想田和弘〈観察映画を生み出した日本を代表する記録映像作家〉 タル・ベーラ〈ハンガリーが生んだ孤高の映画マイスター〉 オタール・イオセリアーニ〈ジョージアの世界的巨匠〉 モフセン・マフマルバフ〈イランで最も人気がある名監督〉 ブリランテ・メンドーサ〈フィリピンの底辺をまなざす名匠〉 アミール・ナデリ〈世界的評価の高いイラン映画界の重鎮〉 アクタン・アリム・クバト〈キルギスの現代社会を問う名匠〉 キドラット・タヒミック〈フィリピンを代表する映画・美術作家〉 ベン・ラッセル〈アメリカの映像作家兼アーティスト兼キュレーター〉 リティ・パン〈クメール・ルージュの虐殺を、証言をもとに紐解く巨匠〉 ラヴ・ディアス〈フィリピンの怪物的映画作家〉 目次 まえがき 第1章 異文化を撮る 1リスボンのアフリカ移民――ペドロ・コスタとの対話[ポルトガル&カーボ・ヴェルデ] 2アフリカとメラネシアの民間信仰――ベン・ラッセルとの対話[バヌアツ&スワジランド] 3ウズベキスタンを旅する合作映画――黒沢清との対話[ウズベキスタン] 4アメリカ社会を観察する――想田和弘との対話[アメリカ] 第2章 ユーラシア文化の多様性 5ジプシーの人生と悲喜劇――トニー・ガトリフとの対話[フランス&ルーマニア] 6ハンガリー大平原と人間存在――タル・ベーラとの対話[ハンガリー] 7カフカースに響く人間讃歌――オタール・イオセリアーニとの対話[ジョージア] 8キルギスの伝統と近代化――アクタン・アリム・クバトとの対話[キルギス] 9動乱の中近東を見つめる――モフセン・マフマルバフとの対話[イラン&アフガニスタン] 10イラン、映画監督一代記――アミール・ナデリとの対話[イラン] 第3章 東南アジアの歴史と現在 11ポスト植民地としての群島――キドラット・タヒミックとの対話[フィリピン] 12マニラのスラム街を撮る――ブリランテ・メンドーサとの対話[フィリピン] 13フィリピン現代史の闇を暴く――ラヴ・ディアスとの対話[フィリピン] 14クメール・ルージュと生存者の記憶――リティ・パンとの対話[カンボジア] あとがき 前書きなど まえがき わたしたちはふだん、さまざまな映画をシネマ・コンプレックス、テレビ番組、レンタルDVD店、動画配信サービスなどを通じて鑑賞しています。そこで見られる映画のほとんどが、ハリウッドを中心とするアメリカ映画、それから日本、韓国、フランス、イギリスなどの先進国で製作されたものばかりです。それでは、世界のほかの国々ではあまり映画は撮られていないのでしょうか。そんなことはありません。ユネスコの2016年の統計データによれば、製作本数の世界1位はボリウッドを中心とするインドで1986本、2位は中国の856本、3位は映画大国アメリカの656本、4位は日本の610本、5位は韓国で339本、以降はイギリス、フランス、ドイツ、アルゼンチン、イタリアと続きます(「UNESCO Institute for Statistics UIS.Stat」を参照。http://data.uis.unesco.org/Index.aspx)。 それでは、どうしてほとんどのインド映画や中国映画などのアジア映画、中東やアフリカや南米でつくられているローカル映画はわたしたちの手元に届かないのでしょうか。それは、日本国内における映画興行の一般公開や、商業的な映像ソフトにおいてリリースされていないからです。それでも、わたしたちは何とかミニシアター、国際映画祭、シネマテークのプログラムによって、観られる機会は限られているものの、いま世界中でつくられている映画に触れることができます。 インド、中国、アメリカ、日本、韓国、フランス、イギリス、ドイツなどの映画大国以外の地域でつくられる映画のことをここでは「ワールドシネマ」と呼びましょう。この言葉は、アジア映画、ヨーロッパ映画といった地域別に映画を分類する方法とは別に、映画研究者のあいだで使われている概念です。ちまたでエスニック(民族特有の)料理という言葉が定着してから長い時間が経ちますが、「ワールドシネマ」もまた東南アジア、オセアニア、中東、アフリカ、南アメリカといった諸地域で暮らす民族に特有の映画という意味合いでは、「エスニック映画」といえるかもしれません。 東南アジア、オセアニア、中東、アフリカ、南アメリカといった地域でいったい何が起こっているのか、新聞記事やニュース報道やテレビ番組などを通じて、わたしたちはその情報を入手します。しかし、日本社会に生きている限り情報は十分といえません。なぜなら、北米やヨーロッパから入ってくる情報に比べて、それらの地域から入ってくる情報量は圧倒的に少ないからです。戦争、テロリズム、移民や難民、自然災害、貧困、環境破壊、グロバリーゼーションによる弊害など、世界ではさまざまな問題が起きています。物語の力と映像や音声のイメージによって成り立つワールドシネマには、言語や民族のちがいを越えて、わたしたちの五感をゆさぶり、そこに住む人たちのできごとを感情に訴えってくるという特徴があります。 本書の第1章「異文化を撮る」では、ポルトガル、アメリカ、日本といった先進国の映画監督たちが、自分の属する文化とは異なる土地で撮った作品、あるいはペドロ・コスタのようにアフリカからの移民を撮った作品について、その方法論や創作の背景にある考え方を語ります。そもそも彼らがどのようにして、文化的な他者というモチーフに出会い、それを映画の主要なテーマに据えることになったのか、創作のプロセスの説明を通じて披瀝します。それを読むことで読者は、遠くはなれた世界だと感じている地域にアプローチするための、さまざまな視座を手に入れることができます。 第2章「ユーラシア文化の多様性」では、ルーマニアやハンガリーなどの東欧から、西洋と東洋の境界にあるジョージアやキルギスを経由し、かつてペルシャと呼ばれた中近東の地域へと分け入ります。インド北部からトルコを経由して最後はスペインにまで達したロマ民族の歴史を映画に撮りつづけているトニー・ガトリフや、ジョージアとフランスを往還するオタール・イオセリーニの亡命作家的な歩みから、ユーラシア大陸における映画づくりのダイナミズムが感得されることでしょう。モフセン・マフマルバフは自国イランだけでなく映画の舞台を隣国のアフガニスタンやジョージアへと広げ、アミール・ナデリはアメリカや日本やイタリアへ移動をくり返しながら映画を撮りつづけています。 第3章「東南アジアの歴史と現在」では、いままさに黄金期を迎えているフィリピン映画における巨匠たちの映画づくりの話題を中心にして、スペイン、日本、アメリカの植民地にされてきた太平洋の群島国家の現代映画史をひも解きます。そこには独立後も、マルコスの独裁政権によって傷ついた民衆の姿や、南部のイスラーム過激派によるテロの動き、都市に形成されたスラム街での庶民のたくましい生活が描かれています。七〇年代にポル・ポト率いるクメール・ルージュがカンボジアを制圧しましたが、その圧政下で人びとがどのような強制労働を強いられたか、その暗黒の歴史を映像化するリティ・パンの言葉から、今日のワールドシネマが負っている課題の大きさが伝わってきます。 そうはいうものの、世界中で起きているこうした深刻な問題において、映画が即座に何かを解決できるというわけではありません。むしろ複雑に生起する事態を前にして、映画は無力だといわざるをえないでしょう。しかし、フィクションとドキュメンタリーとを問わず、映画には少なくともそこに住む人たちの姿を映像に映しだすことができます。そして、ワールドシネマのカメラは彼(女)らのなかへ入っていき、フィクションという形でその人たちのおかれた社会の状況や家庭のあり方、彼(女)らの抱く愛情や葛藤をつぶさに見せることができます。それは社会的な事実ではなく、映画のつくり手によるイマジネーションにすぎないけれども、ワールドシネマを見ることを通して、わたしたちは文化的な他者の内面を想像するきっかけをつかめるのです。 映画にはこの広い世界で起きている問題をただちに解決する力はありませんが、そこに問題があるということを指し示し、人びとに再考をうながすことはできる、ということです。さあ、筆者による道案内はここで終わりです。この先はみなさん自身の足でこの書物のなかを踏破しながら、柔軟な感性をはたらかせていろいろなことを感じとってください。1ページ1ページをめくっていくことで、さまざまな言葉、風土、食べ物、衣装、生活習慣、信仰、音楽があふれている「世界映画(ワールドシネマ)」のコミュニティに参画することになるのです。 版元から一言 クリエイターを志している若者をはじめ、これから何かを作りだしたいと考えている多くの方々が読者対象です。 世界の映画監督14人が、自身の映像製作で得た体験から、創造する際のモチベーションの源泉について、またテーマを選ぶ際のきっかけについて縦横無尽に語っていきます。 映画製作はもちろんのこと、映画以外の創造性へのヒントにもなる言葉があふれています。 プロ、アマ問わず、すべてのクリエイターに手にとっていただきたい一冊です。 - 著者プロフィール - 金子遊 (カネコユウ) (著) 映像作家、批評家。多摩美術大学准教授。アジア、中東、アフリカを旅しながら、映画とフォークロアを研究している。著書『映像の境域』(森話社)でサントリー学芸賞〈芸術・文学部門〉受賞。他の著書に『辺境のフォークロア』(河出書房新社)、『混血列島論』(フィルムアート社)、『悦楽のクリティシズム』(論創社)など。共編著に『映画で旅するイスラーム』(論創社)、『ジャン・ルーシュ』(森話社)ほか多数。 住本尚子 (スミモトナオコ) (イラスト) イラストレーター、映像作家。多摩美術大学版画学科卒業。誰かの生活と地続きな映画にまつわるウェブマガジン「Filmground」主宰。「Filmground」「IndieTokyo」「ドキュメンタリーマガジンneoneo」などを中心に、エッセイと映画イラストレーションを発表。インディペンデント映画やアニメーションを監督、製作している。近年は東南アジアへの旅にはまっている。
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ウェス・アンダーソン 旅する優雅な空想家|イアン・ネイサン, 島内 哲朗(翻訳)
¥3,300
フィルムアート社 2022年 ソフトカバー 300ページ B5変型判 - 内容紹介 - 「映画を作るというのは、混沌を整頓しようとしながら、同時に新しい混沌を生み出してしまうことなのです」 ポップかつシニカル、そして大胆な脚本。キャッチーな色彩とディテールで構築されたセットや小道具の数々。精巧な構図とカメラ移動で生み出されるマジカルな空間演出。そしてひとクセもふたクセもありながら誰もが愛さずにはいられない登場人物たち……。 日本国内のみならず世界中に熱狂的な信者を持つウェス・アンダーソン。この一人の芸術家をめぐり、最新作『フレンチ・ディスパッチ』を含むその全てを総括する評伝がついに刊行! 長編デビュー作『アンソニーのハッピー・モーテル』から『フレンチ・ディスパッチ』まで、素晴らしくも困惑に満ち、個性的かつ一点の汚れもないような10本の映画たちを監督したウェス・アンダーソン 。監督作品のその優れた作家性のみならず、ファッション、音楽、美術、など彼の作品をとりまくディテールは多くの人を魅了する。 本書では、長編監督作はもちろん、『ホテル・シュヴァリエ』『カステロ・カヴァルカンティ』といった短編全作をカバーし、さらには監督が影響を受けた人物や映画作品、プライベートな交友関係についても紹介。あますことなくウェス・アンダーソンの「人生」を詰め込んだ1 冊となっている。 ウェス・アンダーソンの作品に絶妙な親しみやすさを与えているのは、他の誰の映画とも違うという事実に他ならない。 コーデュロイのスーツから、ABC順に整頓された本棚から、アート映画への参照から、アナグマに扮したビル・マーレイに至るまで、彼の映画は彼自身の人生の、そして人格の延長なのだ。 各作品の原点をたどり、インスピレーションの源を探り、どのような過程を経て作品が生まれているのか。多くの美しい場面写真やオフショットとともに、その知られざる神秘を紐解いていく。 目次 イントロダクション 1. 『アンソニーのハッピー・モーテル』(1996) 2. 『天才マックスの世界』(1998) 3. 『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』(2001) 4. 『ライフ・アクアティック』(2004) 5. 『ダージリン急行』(2007) 6. 『ファンタスティック Mr.FOX』(2009) 7. 『ムーンライズ・キングダム』(2012) 8. 『グランド・ブダペスト・ホテル』(2014) 9. 『犬ヶ島』(2018) 10. 『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』(2021) 略歴 【著者】 イアン・ネイサン(Ian Nathan) 映画ライター。著書に『クエンティン・タランティーノ 映画に魂を売った男』(フィルムアート社)『エイリアン・コンプリートブック』『スティーヴン・キング 映画&テレビ コンプリートガイド』(以上、竹書房)『ティム・バートン 鬼才と呼ばれる映画監督の名作と奇妙な物語』(玄光社)などがある。映画雑誌『エンパイア』の編集者およびエグゼクティブ・エディターを務めた後、現在は『エンパイア』誌のほか、『タイムズ』紙、『インディペンデント』紙、『メイル・オン・サンデー』紙、『カイエ・デュ・シネマ』誌などに寄稿を行っている。 【訳者】 島内哲朗(しまうち・てつろう) 映像翻訳者。字幕翻訳を手がけた主な劇映画には「朝が来る」「大怪獣のあとしまつ」「ザ・ファブル 殺さない殺し屋」「海辺の映画館―キネマの玉手箱」「AI崩壊」「護られなかった者たちへ」「さがす」「キングダム」「スマホを落としただけなのに」「愛のむきだし」「チワワちゃん」「野火」「サウダーヂ」「GANTZ」「忍たま乱太郎」等がある。翻訳した書籍には、フランク・ローズ『のめりこませる技術 誰が物語を操るのか』、カール・イグレシアス『「感情」から書く脚本術 心を奪って釘づけにする物語の書き方』『脚本を書くための101の習慣 創作の神様との付き合い方』、シーラ・カーラン・バーナード『ドキュメンタリー・ストーリーテリング[増補改訂版]』、ジェシカ・ブロディ『Save the Catの法則で売れる小説を書く』(以上、フィルムアート社)等がある。