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極限大地 地質学者、人跡未踏のグリーンランドをゆく|ウィリアム・グラスリー, 小坂恵理(翻訳)
¥2,640
築地書館 2022年 ハードカバー 240ページ 四六判 - 内容紹介 - 人間は、人跡未踏の大自然に身をおいたときに、 どのような行動をとるのか。 氷壁とフィヨルドの海岸に囲まれたグリーンランドで、 地質学者は、何を見、何を感じたのか。 地球科学とネイチャーライティングを合体させて、 最高のノンフィクションとたたえられたジョンバロウズ賞受賞 目次 はじめに――人跡未踏の極限の大地"ウィルダネス"を経験するということ 序章――人間として科学者として大自然の中で理解できること、できないこと 第1章 再発見 沈黙――ベースキャンプから白夜にさまよい出る 蜃気楼――未知の存在を知らせるための合図 岩を砕く――ふたつの大陸の縫合帯なのか ハナゴケ――トナカイが好む地衣類を食べてみる ハヤブサ――至近距離での遭遇、新しい経験の宝庫 第2章 統合 太陽の壁――サーフィンが人生のすべてだった 鳥のさえずりと神話――音の蜃気楼に出会う ライチョウ――親鳥とヒナとの遭遇、ホッキョクイワナの川で沐浴 きれいな水――淡水と海水が出会う場所の生命のにぎわい 魚の川――捕食者ウルクが襲う 第3章 発現 潮流――ゾディアックがうず潮にはまる 時計じかけの小石――巨大な斜方輝石の堆積物を発見する 氷――氷壁・氷山・氷の結晶 アザラシ――狩り、食す 帰還――細かい境界で区切られた世界へ戻る 終章 おわりに――ウィルダネスを共有することの意味 用語集 謝辞 訳者あとがき - 著者プロフィール - ウィリアム・グラスリー (ウィリアムグラスリー) (著/文) カリフォルニア大学デービス校の地質学者、デンマークのオーフス大学の名誉研究員で、 大陸の進化とそのエネルギー源となるプロセスを研究している。 70以上の研究論文のほか、地熱エネルギーに関する教科書の著者でもある。 本書は、著者にとって初めての一般向けの本となる。ニューメキシコ州サンタフェ在住。 小坂恵理 (コサカエリ) (翻訳) 翻訳家。慶應義塾大学文学部英米文学科卒業。 訳書に『ラボ・ガール』『繰り返す天変地異』(以上、化学同人)、『歴史は実験できるのか』(慶應義塾大学出版会)、 『マーシャル・プラン』(みすず書房)、『地球を滅ぼす炭酸飲料』(築地書館)など。
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アジア「窓」紀行 上海からエルサレムまで|田熊 隆樹
¥2,420
草思社 2022年 ソフトカバー 336ページ 四六判 - 内容紹介 - 「窓からのぞいたアジアは、たしかにひとつではないが、そんなにバラバラでもない」 窓は、室内を快適にするために外と内をへだてもし、 また景色を取り入れたりとつなぐ役割もある装置です。 人間の身体的な欲求にこたえつつも、地域の気候や文化的な特性にも対応するため、 窓はその土地の文化や風土がもっとも色濃く、密実に反映されるものともいえます。 そんな窓を、アジアの隅から隅まで見つめて旅をした、窓と文化についての記録です。 コロナ以前の自由な旅行が可能だった時代の豊かな旅情と、 窓という建築の部位の観察から得られた深い洞察が混ざり合う、 新たな視点に満ちた旅行記。 <目次より> 01 窓から生える鉄の棒 上海 02 「景区」外の家 烏鎮 03 地下の都合 張村 04 浮いた屋根 トルファン 05 天窓の部屋 タシュクルガン 06 赤いスリバチ ラルンガル・ゴンパ 07 ズボンを履いた家 カンゼ・タウ 08 洪水と床 シェムリアップ 09 張り出しの村 キナウル地方 10 かくれた穴 キッバル 11 家を〝置く“ 東ギーラーン 12 都市はバザール タブリーズ 13 砂漠で呼吸する ヤズド 14 ずれる窓 マースーレ 15 宗教と街 エスファハン 16 地球のお腹の中 ペトラ 17 アーチに向かう カイロ 18 聖地の生活 エルサレム - 著者プロフィール - 田熊 隆樹 (タグマ リュウキ) (著/文) 1992年東京生まれ。早稲田大学大学院建築学専攻修了。大学院休学中にアジア・中東11カ国の建築・集落・民家を巡って旅する。2017年より台湾・宜蘭(イーラン)のFieldoffice Architectsにて美術館、公園、駐車場、バスターミナルなど大小の公共空間を設計している。ユニオン造形文化財団在外研修生、文化庁新進芸術家海外研修制度研修生。
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エピタフ 幻の島、ユルリの光跡 | 岡田 敦
¥2,970
SOLD OUT
インプレス 2023年 ソフトカバー 240ページ 四六判 - 内容紹介 - 北海道の東端、根室半島の沖合に佇むユルリ島。かつては昆布を採集する漁師の住居や番屋が建っていたが、家畜の馬を残して最後の島民がユルリを離れたのが半世紀前。最盛期には30 頭もの馬が暮らしていたが、その数は減り続け、今では数頭が暮らすだけになっている。上陸が厳しく制限されたこの島の情景は小説『ロスト・ワールド』の世界を彷彿させるようでもある。その島を2011 年から撮り続けているのが写真家・岡田敦。消えてゆくものたちを見つめ、後世に何を伝えてゆくのか。写真と文章で現代のロスト・ワールドを紹介していく。
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私と世界をつなぐ、料理の旅路 ー14人の「私が料理をする理由」 | LCインセクツ(編集)
¥2,420
LLCインセクつ 2023年 ソフトカバー 168ページ A5判 - 内容紹介 - ポーランドのポンチキ、ポルトガルの鶏の炭火焼き、 モロッコのタジン鍋…… 世界の国々の料理やお菓子を手がけ、店やケータリングという形で向き合い続ける女性たち。彼女たちは、なぜその国の料理を手がけるようになったのだろうか? その軌跡を辿ってみると、純粋に料理が好きで料理人を目指したという人もいれば、惹かれた国を追いかけているうちに料理を始めたという人もいる。料理を通して自分のルーツに触れた人もいれば、どこか心の中に通ずるものを得た人もいる。 料理という行為は、多くの人にとって身近なものであるけれど、それは単に食事を作ることだけでなく、さまざまなことにつながっている。 思い出を反芻すること。知らない世界を覗くこと。科学者のように探究すること。受け継ぐこと……。 世界各国の料理に携わる14名の女性たちのエピソードを通した、食べるだけでない料理の姿と、そこから広がる人生の物語を収録。 <本書で紹介する14名> インド料理[vanam]落合亜希子さん インド料理[Samosa wala Timoke]北村朋子さん ベトナム料理[ベトナム料理研究所]ユキさん 台湾料理[小部屋莉婷子]りてこさん メキシコ料理[メシカ]山口恭子さん 世界のごはん[TABEBITO]石原理恵さん スウェーデンの郷土菓子[FIKAFABRIKEIN]小原愛さん ロシア・ジョージア料理[ハチャプリ]米田妙子さん ポーランドの郷土菓子[ポンチキヤ]坂元萌衣子さん イギリスの郷土菓子[UNDERGROUND BAKERY]手井梨恵さん ポルトガル料理[葡萄牙料理 ピリピリ]浦谷ゆりさん イタリア料理[Osteria La Cicerchia]連久美子さん イタリア郷土菓子[Litus]塩月紗織さん モロッコ料理[エンリケマルエコス]小川歩美さん 目次 002 はじめに 007 インド料理[Vanam] 落合亜希子さん【インドを巡る】 017 インド料理[Samosa wala Timoke] 北村朋子さん【インドを巡る】 029 ベトナム料理[ベトナム料理研究所] ユキさん【ベトナムに暮らす】 041 台湾料理[小部屋莉婷子] りてこさん【台湾を巡る】 051 メキシコ料理[メシカ] 山口恭子さん【メキシコを巡る】 061 世界のごはん[TABEBITO] 石原理恵さん【世界のあっちこっちを巡る】 071 スウェーデンの郷土菓子[FIKAFABRIKEIN] 小原愛さん【スウェーデンに暮らす】 079 ロシア・ジョージア料理[ハチャプリ] 米田妙子さん【ロシア・ジョージアを巡る】 089 ポーランドの郷土菓子[ポンチキヤ] 坂元萌衣子さん【ポーランドを巡る】 101 イギリスの郷土菓子[UNDERGROUND BAKERY] 手井梨恵さん【イギリスを巡る】 115 ポルトガル料理[葡萄牙料理 ピリピリ] 浦谷ゆりさん【ポルトガルを巡る】 127 イタリア料理[Osteria La Cicerchia] 連久美子さん【イタリアに暮らす】 139 イタリア郷土菓子[Litus] 塩月紗織さん【イタリアに暮らす】 149 モロッコ料理[エンリケマルエコス] 小川歩美さん【モロッコを巡る】 164 SHOP LIST 166 謝辞・参考文献
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【バーゲンブック】呪われた土地の物語: かつて何かが起きた、そしてこれから起こるかもしれない40の場所 | オリヴィエ・ル・カレ, シビル・ル・カ (イラスト), 鳥取絹子 (翻訳)
¥1,600
河出書房新社 2018年 ハードカバー 136ページ 菊変型判 縦231mm 横162mm 厚さ16mm ※ バーゲンブック:通常の新刊本と同じく未使用の新本で、新刊販売から一定期間経たものを改めて再販売した格安本 - 内容紹介 - 悪魔の棲む館、怪物が出没する海峡、不幸を呼ふ?金鉱…人々の妄想を掻き立て、語り継がれた世界各地の「いわくつき」の土地の物語。
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PYRAMIDEN | 佐藤健寿
¥2,970
朝日新聞出版 2017年 ソフトカバー 104ページ AB判 - 内容紹介 - 北極圏にあるゴーストタウン・ピラミデン。1998年以降無人になったこの町は廃墟化し、ソ連時代の貴重な景観が保存されている。テレビ番組『クレイジージャーニー』でも話題になった、世界最北廃墟をとらえた美しき写真集。
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ニッポン周遊記 町の見つけ方・歩き方・つくり方 | 池内紀
¥2,640
青土社 2014年 ハードカバー 325ページ 四六判 - 内容紹介 - 旅の達人、池内紀による全国の町村探訪記 町を選ぶ基準は、 1.経済的に自立していること 2.歴史など由緒があること 3.個性がありそうなこと とはいえ、行ってみるまで現実は分からない。 自立どころか米軍のお膝元だったり、思わぬ温泉の発見に想像外の部分を気に入ってしまったり…。 池内流の旅の極意の見本帳であると同時に、名観察・名解説によって、日本文化の重層性を再確認する旅へと誘う紀行エッセイ。 登場する市町村(目次順) 北海道森町 青森県黒石市 長野県大町市 岐阜県東白川村 愛媛県久万高原町 大分県日田市 千葉県銚子市 長野県須坂市 和歌山県田辺市 広島県尾道市因島土生町 山口県周防大島町 新潟県村上市 福島県棚倉町 三重県津市一身田寺内町 和歌山県高野町 香川県三豊市仁尾 熊本県八代市日奈久 沖縄県金武町 福島県桑折町 福島県檜枝岐村 愛知県蟹江町 三重県尾鷲市九鬼町 島根県安来市広瀬町 佐賀県有田町 埼玉県深谷市 新潟県糸魚川市 静岡県掛川市 岐阜県恵那市明智町 鳥取県智頭町 長崎県佐世保市
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日台万華鏡 台湾と日本のあいだで考えた | 栖来ひかり
¥1,760
書肆侃侃房 2023年 ソフトカバー 256ページ 四六判 - 内容紹介 - 台湾在住で日本人の著者が、2016~2023年 にかけて“日台のあわい”で書き続けた33篇のエッセー。台湾社会や日台の文化比較、歴史的交錯から、映画やアート、ジェンダー、LGBTQにまつわる話題まで広く言及し、リアルな台湾をあわいの視点からあぶりだす。 「こんな発想をする人が国境をまたいで現れることをずっと待っていました。 複数の言語、複数の文化の中に身を置く著者が、ややこしくねじれた社会やジェンダー、歴史や文化といった様々な事象の乱反射を、未来を照らす“ひかり”に変換しようとする姿は感動的! 文化先進国台湾を知る最良の一冊にして自分たちを知るための最高の書。」 ――大友良英(音楽家) 「とても信じられない! これほどまで台湾に愛情を注いでくれる日本人女性がいたとは。 そしてなにより、台湾の人や文化を観察したこの一篇一篇の描写が、台湾人よりも台湾らしいなんて驚きだ! ようこそ、わたしたちの台湾へ。」 ――魏德聖(映画監督『セデック・バレ』『海角七号 君想う、国境の南』) 2023年5月上旬全国書店にて発売予定。 【もくじ】 はじめに どうしてわたしは台湾について考えるのか 本書の表記について 社会 1 「BRUTUS」台湾特集の表紙に台湾人が不満を感じた理由 2 移民共生先進国・台湾にみる「お手伝いさん」のススメ 3 Kolas Yotaka氏の「豊」は絶対に「夜鷹」ではない―氏名表記から考える多元化社会と文化 4 台湾は日本を映す鏡―台湾の「核食」輸入問題から考える 5 日本人はどうして席を譲らないのか?―台湾の「同理心」と日本の「自己責任」から考える 6 台湾を愛した新聞記者の死 7 なぜ台湾で「誠品書店」が生まれたのか? 8 台湾の「先手防疫」と日本の「ホトケ防疫」 9 新型コロナ問題で台湾が教えてくれたこと―マイノリティーへの向き合い方 10 まさかの時の友こそ、真の友―日本のワクチン支援、台湾人を感動させたもうひとつの意味 11 台湾に関するフェイクニュースの見分け方と台湾理解 ジェンダー 12 台湾からみえた日本の「女人禁制」問題 13 台湾LGBTQ映画からみる多様性という未来 14 「同性婚反対」に傾いた台湾社会の矛盾 15 バラの少年少女たちへ―台湾、同性婚法制化への道のり 16 日本人女優を起用した台湾のコンドーム広告に違和感を抱いた理由 17 有縁千里来相会(縁でむすばれ、千里を越えて)―台湾に嫁いだ日本人妻たちの百年 日台文化比較 18 「ショーロンポー」は台湾料理?―多文化の融合から考える台湾の豊かな食 19 「山本頭」ってなに!?―台湾で独自の進化を遂げた「男らしさ」のイメージ 20 キョンシーから台湾妖怪まで―日本視点で読み解く台湾ホラー映画ブーム 21 日本人が命をかけて食べる魚「フグ」―日・中・台・港の食文化比較 歴史交錯 22 洗骨―日本と台湾と沖縄にある生と死の間の世界 23 台湾和牛のルーツ?―千年の牛、見島ウシを訪ねて 24 日本人のバナナ好き、ルーツは台湾にあり―歴史伝える門司港の「バナちゃん節」 映画・アート・本 25 忘れたの? それとも、思い出すのが怖い?―台湾映画『返校』を観て考える、歴史への向き合い方 26 そうだ、台湾映画みよう―中国資本に侵食される台湾エンタメ界の苦境と希望 27 台湾映画の魅力―台湾のうしろ頭をみる 28 金馬奨とはなにか―近年の金馬奨授賞式をとおして考えたこと 29 80年の時を超え、台湾と日本を結ぶ一枚の絵 30 日本の民芸運動に影響を与えた台湾竹工芸 31 麗しき故郷、台湾―湾生画家・立石鉄臣を巡って 32 かつて最前線だった島の芸術祭、馬祖ビエンナーレ─トポフォビアからトポフィリアへ 33 台湾の「肖像画」描く文学 あとがき 台湾と日本、「おもろい」の万華鏡 初出一覧/主な参考文献 - 著者プロフィール - 栖来ひかり (スミキヒカリ) (著/文) 文筆家・道草者。1976年生まれ、山口県出身。京都市立芸術大学美術学部卒、2006年より台湾在住。台湾に暮らす日々、旅のごとく新鮮なまなざしを持って、失われていく風景や忘れられた記憶を見つめ、掘り起こし、重層的な台湾の魅力をつたえる。 著書に『在台灣尋找Y字路/台湾、Y字路さがし。』(玉山社、2017年)、『山口、西京都的古城之美:走入日本與台灣交錯的時空之旅』(幸福文化、2018年)、『台湾と山口をつなぐ旅』(西日本出版社、2018年)、『時をかける台湾Y字路─記憶のワンダーランドへようこそ』(図書出版ヘウレーカ、2019年)、『台日萬華鏡』(玉山社、2022年)挿絵やイラストも手掛ける。
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世界の街角グルメ | 島本美由紀
¥2,090
パイ インターナショナル 2023年 ソフトカバー 208ページ A5変型判 縦175mm 横146mm - 内容紹介 - 安い、早い、うまい! 旅先で絶対食べたい地元メシ 地元の人に混ざって食事することは、旅の楽しみのひとつ。アジアの活気ある屋台や、ヨーロッパの街角にあるスタンド、アメリカのファストフード店などで気軽に食べられるグルメを、人々の暮らしが垣間見える街の写真とともに127種紹介します。おうちで作れるレシピ付き。 - 著者プロフィール 島本美由紀 (シマモト -ミユキ) (著/文) 料理研究家・ラク家事アドバイザー。親しみのある明るい人柄で、テレビや雑誌、講演会を中心に多方面で活躍。
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ヨーゼフ・ロート ウクライナ・ロシア紀行 | ヨーゼフ・ロート, ヤン・ビュルガー(編・解説), 長谷川圭(訳)
¥1,760
日曜社 2021年 ソフトカバー 126ページ 四六判 縦185mm 横128mm - 内容紹介 - 戦間期の1920年代。オーストリアの文豪・ヨーゼフ・ロートが旅した、言語・文化・宗教のモザイクのような世界、ウクライナ・ロシアの諸都市の人々の暮らしと現実の記録。 キエフ、モスクワ、そしてオデッサへ、さらにレンベルク、バクーあるいはアストラハンへの取材旅行の途上、作家でありジャーナリストでもあるヨーゼフ・ロートは、変幻きわまりない東欧の宇宙空間に潜り込む。1920年代に書かれた彼のルポルタージュは、この時代、この世界で目撃した現実を生き生きと伝える感動的な証言集だ。 ロートの注意深い眼差しは、異なった言語や文化や宗教が隣り合わせにひしめき合うソヴィエト連邦の人々と、彼らの暮らしの現実の姿へ向けられる。この眼差しこそは、レニングラードの路上で繰り広げられるせわしない日常生活でも、ネゴレロイエの国境検問所でも、あるいはヴォルガ川を航行する蒸気船の上でも、どこであれ、ロートが事実を探究し、その独自な文体によって描き出した世界を貫くものだ。その際彼は、国家と教会、独裁政治と言論・表現の自由、貧富の格差など、この社会に存在する抜き差しならない対立関係を描き出す。それと同時に、故郷を失った彼のような者が、旅に身を任せ、ペンを走らせながら、批判的に物事を理解することを通じて、自分自身の故郷を少しずつ回復していく様子が描かれる。それは、彼自身の言葉という故郷だった。 カフカと同じ時代を生きたオーストリアの文豪ヨーゼフ・ロートが、作家・記者の目で観た東欧諸都市の景観と人々の暮らしを独特のスタイルで書き綴った魅力あふれる紀行文で、未発表のまま残されていたウクライナとロシアの旅の報告から、珠玉の17篇を収録。ロートファンならずとも、今、世界史の大転換の一つの中心であるウクライナ・ロシア。戦間期の諸都市の姿がロートの精緻な観察と精妙な筆致によって読者の脳裏に蘇る。読む喜びが帰ってくる寄稿文の楽しさを味わってください。 - 目次 - 一 東からの便り ウクライナブーム ベルリンの最新流行 ウクライナ少数民族 リヴィウ 障害者の葬列 二 ロシアの風景 トコジラミと過ごした夜 レニングラード 三 ソビエトの現実 国境のネゴレロイエ モスクワの亡霊 ヴォルガ川をアストラハンまで アストラハンの不思議 カフカスの民族模様 ロシアの大通り アメリカを目指すロシア 女性と新しい性道徳と売春 教会、無神論、宗教政治 村に広がる町 世論と新聞と検閲 ロシアの神 あとがき 編集者あとがき 謝辞 - 前書きなど - 一 東からの便り ウクライナブーム ベルリンの最新流行 ベルリン、一二月一三日 ときどき、ある民族がブームになることがある。以前は、ギリシャ人、ポーランド人、ロシア人が 人気だったが、今はウクライナ人だ。 私たち西の人間はウクライナ人についてあまり多くを知らない。知っていることといえば、彼らが カフカス山脈とカルパティア山脈に挟まれた草原と湿地の国で生きているということ、ウクライナ台 地は標高が高くて比較的住みやすい土地であったことぐらいだろう。それ以外では、オーストリア人 の戦争外交官が素人仕事から結んだブレスト=リトフスク条約、通称「パンの平和」がウクライナ人 と関係していることをなんとなく知っているだけだ。要するに、私たちは「ウクライナ人」という民 族についてほとんど何も知らないのである。彼らは人食い人種かもしれない。読み書きができないの かもしれない。人種的には「ロシア人の一種」で間違いなく、宗教的には顎髭を生やした司祭が、金 やミルラや香煙を使って儀式を行う原カトリック的な異教を信じている。 このように私たちはウクライナという土地と人についてわずかなイメージしかもっていない。だか ら惹かれるのである。ポーランド人はもう十分すぎるほど西欧化されている。ギリシャ人についても、 映画女優と同じようにギリシャの王も猿に噛まれることがあるという事実を中央ヨーロッパが知って 以来、知らないことは何もない。ロシアは数多くのドイツ人が移住したり戦争で捕虜になったりした ので、もはや外国とは思えないため、寄席や喜歌劇の題材にはなりえない。残るは「ウクライナ」だ けだ。 (かつてのポーランド立憲王国の)ルブリンから移住してきた貧しいユダヤ人がベルリンの東部でた ばこ屋を始めたのだが、店の看板にキリル文字で「ウクライナ・オリジナル」と謳っている。さまざ まなコーヒー・ショップでは若い女性が最新のアメリカン・ジャズに合わせて踊るのが流っているが その踊りは「ウクライナ民族舞踏」と呼ばれている。しかし最新の流行は、何といっても〝ウクライ ナ風〞パントマイムとバレエだろう。 ベルリンは奇妙なほどウクライナ風オペレッタに夢中になっていて、少しでもスラブっぽく聞こえ る旋律はすべて「ウクライナ風」と形容される。この流行に火をつけたのはもちろん本物のウクライ ナ人、正確にはウクライナ合唱団だ。合唱団はベルリンをはじめヨーロッパの各都市で公演を行い、 大成功を収めたのだが、それがきっかけで、国家あるいは政治体制などといったものを利用して金儲 けができることに人々が気づいたのである。しかもこの流行がある現象を引き起こしている。ロシア、 ウクライナ、ポーランドなどの東欧諸国から西欧に移住してきた人々が、ウクライナブームに便乗し て自分たちを古い「ウクライナ人」と呼ぶようになったのだ。 したがって、いわゆる〝ウクライナ〞バレエは、タタールとロシアとコサックの要素が少しずつ入 り交じったごちゃ混ぜ状態になっている。娯楽産業の目的は民族文化を学術的に研究することではな く、人々を楽しませることにあるので、これを問題視する必要はないのかもしれない。だが、ある民 族の芸術を元がわからなくなるほど歪めるのはよくない。それがボリシェヴィキとポーランド人に故 郷を奪われた哀れな民族の芸術ならなおさらだ。 訓練が厳しく、本当にすばらしい舞踏芸術を見せることで知られるアイスパラストでは、現在バレ エ劇の『赤い靴』が披露されている。この作品はウクライナの伝説にもとづいているとされているの だが、舞台背景に描かれた教会はウクライナ(つまりギリシャ・ カトリック教会)のものではなくロシア正教会のものだ。 作品のヒロインはロシア風の髪飾りを頭に付けている│ウクライナの女性が髪飾りにするのは花だ けで、袖と裾に青と赤の飾りがついた白いブラウスを着る。金刺繍の入ったシルクの上着を身につけ ることはない。チェルケス人が生活していたのはウクライナではなくカフカス地方。ウクライナの農 婦が履くのは短いブーツであり、白いバレエ靴ではない。一部の「ホパック」と「コロメイカ (ウクライ ナ舞曲)」を除いて、舞台上では基本的にロシア舞踊が用いられている。 ザラザーニ・サーカスでは、ポーランド王の命により裸で馬の背にくくりつけられ、数日間ウクラ イナの草原を引きずり回されたウクライナ人コサックの英雄にして指導者の〝マゼッパ〞の物語が披 露されているのだが、ここでもまたウクライナの歴史がロシア風にアレンジされている。ウクライナ の聖職者はギリシャ・カトリック教会に仕え、ロシア正教の司祭のような髭は蓄えない。 ウクライナ舞踏団のグラーゼロフは本当にウクライナ人で構成されているのだが、ウクライナ風を 強めるためにあえてナイフを使った踊りを採り入れている│まるでアメリカ先住民だ。彼らはキエ フで有名な踊り手なのだが、高い料金を支払った西欧人にはコロメイカは退屈だろうと考え、わざわ ざ「荒々しい踊り」を見せるのである。実際には、ウクライナ人がナイフを口にくわえて踊ったりす ることは決してない。 本物のウクライナの民族芸術はとても特徴的で、ロシア人やポーランド人あるいはタタール民族の それとはまったく違うものだ。しかしここで興味深いのは、ある国家は国家としての独立を失ったと たんに、喜劇や歌劇あるいは寄席で注目されるようになるという現象のほうである。 西欧諸国における舞台の流行のバロメーターともいえるベルリンは、最近ずっと「ウクライナ的な もの」を上演しつづけている。 ロート 『ノイエ・ベルリーナー・ツァイトゥング』一二時版、一九二〇年一二月一三日 - 版元から一言 - カフカと同じ時代を生きたオーストリアの文豪ヨーゼフ・ロートが、作家・記者の目で観た東欧諸都市の景観と人々の暮らしを独特のスタイルで書き綴った魅力あふれる紀行文で、未発表のまま残されていたウクライナとロシアの旅の報告から、珠玉の17篇を収録。ロートファンならずとも、今、世界史の大転換の一つの中心であるウクライナ・ロシア。戦間期の諸都市の姿がロートの精緻な観察と精妙な筆致によって読者の脳裏に蘇る。読む喜びが帰ってくる寄稿文の楽しさを味わってください。 -著者プロフィール - ヨーゼフ・ロート (ヨーゼフロート) (原著者) 1894年、東ガリシアのブロディに生まれる。1939年、亡命先のパリで死亡。1923年からドイツの代表紙「フランクフルト新聞」の特派員となり、ヨーロッパ各地を巡ってユニークな紀行文を書き送り、売れっ子ジャーナリストとなった。その傍ら創作にも手を染め、1930年の長編小説『ヨブ─ある平凡な男のロマン』は現代のヨブ記と称された。1932年にはかつての祖国ハプスブルク帝国の没落を哀惜の念を込めて描いた『ラデツキー行進曲』を発表し、小説家ロートの名をも不動のものにした。 ヤン・ビュルガー (ヤンビュルガー) (編・解説) 1968年生まれ。文学研究科、小説家。文芸雑誌『リテラトゥーレン』編集者。2002年からは、マールバッハ所在のドイツ文学アーカイブにて従事。ハンス・へニー・ヤン、マックス・フリッシュおよびゴットフリート・ベンに関する著書の他に、『ネッカー川、ある文学旅行』がある。 長谷川圭 (ハセガワケイ) (訳) 高知大学卒業後、ドイツのイエナ大学でドイツ語と英語の文法理論を専攻し、1999年に修士号取得。同大学での講師職を経たあと、翻訳家および日本語教師として独立。訳書に『樹木たちの知られざる生活』(早川書房)、『カテゴリーキング Airbnb、Google、Uberはなぜ世界のトップに立てたのか』(集英社)、『「おいしさ」の錯覚 最新科学でわかった、美味の真実』(角川書店)、『ポール・ゲティの大富豪になる方法』(パンローリング)、『メイク・ザット・チェンジ』(日曜社、共訳)などがある。
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パルミジャーノをひとふり イタリア旅ごはん帖|貝谷 郁子
¥1,650
亜紀書房 2023年 ソフトカバー 176ページ 四六変型判 縦178mm 横128mm 厚さ13mm - 内容紹介 - 〈イタリア式料理の知恵があなたの人生を楽しくする〉 家庭で、農園やワイナリーで、市場やレストランで……話して、味見して知った、シンプルだけど味わい豊かな食文化。料理研究家がつづる幸せな“旅のおすそわけ” ---------------------- 「イタリアから帰ると、家族や友人におみやげのかわりにその旅で出会った料理の中から印象的でおいしかったものを作っている」 30年以上にわたってイタリア通いを続ける料理研究家がつづる〈旅のおもてなし〉35篇。 目次 ◆はじめに 〈ⅰ〉 ■元気をくれるトマトソース ■パスタの楽しみ ■ゆで過ぎ野菜の大発見 ■カルボナーラの授業 ■煮込みに煮込んだスープパスタ ■味噌とオリーブオイルの出会い ■イタリアのリゾット、日本のリゾット ■地味なリゾット、派手なリゾット ■ピッツァ窯の前で ■ピッツァ占い ■フォカッチャに覚醒 〈ⅱ〉 ■硬いパンの転生 ■いつまで焼くのフリッタータ ■きのこのフルコース ■ミラノ風カツレツ今昔物語 ■サルシッチャ・マジック ■カニカマよ、こんなところに ■披露宴の翌日は ■サラダは刺身か白ごはんか ■オリーブころころ ■全国区のパルミジャーノチーズ ■甘酸っぱい島 〈ⅲ〉 ■目覚めのカフェラッテ ■無塩朝食 ■エスプレッソは飲み物じゃない ■甘々レモンティー ■砂糖感覚 ■イタリアの柿使い ■シチリアの"有名人" ■ふたつの「ミルクの花」 ■市場歩きから ■ワイン蔵のジュース ■いつもワインと水を ■グラッパは「微量」の奇跡 ■リモンチェッロは梅酒 ◆おわりに - 著者プロフィール - 貝谷 郁子 (カイタニ イクコ) (著/文) 料理研究家。和歌山県出身、上智大学文学部卒業。イタリアを中心に国内外を問わず食文化と料理を取材研究。家庭料理の教室開催、メディアでの料理監修、レシピ開発や商品開発、執筆を手がけるほか、イタリア食の旅企画も行っている。『土曜日はイタリアン・キッチン』(宝島社)、『ルッカの幸せな料理から』(主婦の友社)、『幻のヴェネチア魚食堂』(晶文社)、『きょうはイタリアン日和』(PHP研究所)、『ちゃちゃっとイタリアン!』(宝島社)など著書多数。
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船旅の文化誌|富田 昭次
¥2,200
青弓社 2022年 ハードカバー 240ページ A5判 縦210mm 横148mm 厚さ18mm - 内容紹介 - 夢と期待を乗せた客船が行き交った洋行の時代を小説やエッセー、絵はがきや旅行パンフレットほかの史料から紹介して、異国文化への憧憬と交流、華やかな出港とその後の苦難の道中、長期間の船上生活を再現する。発掘した140点の図版が旅情をかき立てる。 目次 はじめに 「洋行」という言葉が生きていた時代/福沢諭吉が書いた「船中の模様」/華やかな出港のなかの孤独と別離/にぎやかな出港を演出したお別れのテープ/大揺れの船で発見した耐震壁理論/人生の幕開けを飾ってくれた船旅/外国人との交流で気づかされたこと/近代文学に新しい流れをつくった日本郵船型/階級社会の縮図をみて決意する/片道の航海で終わる人々 序 タイタニック号、いまだ色褪せず 忘れられない悲劇/深海探査装置から送られてきた衝撃映像/海底に散乱するタイタニック号のはらわた/超大型客船で他社を圧倒するWSL/紳士的な振る舞いを見せた大富豪/実は安全性を最も重視した船だった?/ただ一人の日本人乗客が残した手記/石炭庫の火災という「新たな真実」/沈没を早めた?隔壁の歪み/氷山よりも燃料不足の立ち往生を恐れた? 第1話 船の旅、苦しみから楽しみへ 船酔いに苦しんだ歴史上の知名士/船に弱い者同士、同病相憐れむ/船に強い人を見て腹を立てた昆虫学者/酔い止めの薬で救われた野上弥生子/船上の食事に閉口した幕末の留学生/口に合わない食べ物でも威厳を崩さず/無聊に苦しめられた永井荷風/船旅をすると寿命が延びるという人も/船上から見える家々の小さな明かり/船旅の魅力が詰まった瀬戸内海航路/「人は船の旅のたのしさを忘れてゐる。」/船で日本を離れる者の感傷「さらば祖国よ」 第2話 礼儀作法と社交の振る舞い 乗船時の注意あれこれ/多額のチップを手渡してしまう日本人/見栄っ張りの人が周囲に迷惑をかける/チップを先に渡す人、ごまかす人/日本船なのに、なぜ西洋の風習に倣うのか/服装を整えるのは自尊心のため/欧米人の振る舞いに感心した日本人/人生を方向づけてくれた言葉を得て/チャプリンとコクトーの出会い/句会を開いたり、議論を戦わせたり/競売で寄付金を集める慈善活動も/船の上も「旅は道づれ、世は情け」 第3話 「風俗画報」の日本郵船特集号を読む 汽船からの眺めは絵画のようだ/パリの花を詠み、ロンドンの月に嘯く/今日の旅客船は海に浮かぶ一大旅館/当時は外国人船長も少なくなかった/無事到着できれば、一等も三等も同じ/家族や知人に「一片の雁信」を書き送るべし/一等食堂は華麗なる人々の祭典/豚の点眼に、タンサンとシガレット競走/舟遊の快や、実に甲板運動場裡にあり 第4話 豪華客船の第一号、天洋丸出航 歓声に沸き立つ横浜港/客船史を飾る出来事が相次ぐ明治末期/内航は過去のもの、舞台は海外だ/巨船の注文にたじろいだ造船所/欧米の水準に最も近づいた客船/一等船客の外国人を自邸に招いて茶会を開く/「豪華の夢破れて 海の女王空し」/船旅は軽やかなジャズのリズムとともに/豪華客船は音楽も最先端を走っていた 第5話 「優秀客船」とは何か 科学と文化と芸術の結晶/全長が東京駅に匹敵したマジェスティック号/一等大食堂の天井高は九メートル超/ブルーリボンの獲得競争/世界を圧倒するドイツの最優秀船/ドイツ船を手放しで褒める日本人/法学者・高柳賢三のブレーメン号印象記/乗船して感じた階級社会と重大事件/日本でも相次いで優秀客船を建造/客船の規模は市場の規模に比例 第6話 覇を競う二人の女王の物語――ノルマンディ号とクィーン・メリー号 海に浮かぶ美術館の誕生/高度な贅と美が結合した装飾/二等船客として乗り込んだ正宗白鳥/浮気心を起こさせないおもてなし/スピードで対決する二人の女王/巨船の外見・中身をイラスト解説/運命の波に翻弄される二人の女王/幽霊保険に加入したクィーン・メリー号 第7話 乗客の最大の楽しみは食事だった 生演奏の音楽が雰囲気を優雅に演出/ホテル王リッツの名声が客船にも及ぶ/鏡のような海で最後の晩餐/瀬戸内海航路でもお目当てはご馳走/一航海で同じメニューは厳禁/いちばん頭を痛めたのは食事時の席次/浅草海苔を勧められたアメリカ人/ホテルの料理人が客船で修業/乗客には懇切丁寧な配慮が/『給仕の執務心得』、その中身とは/喜劇王チャプリンを獲得した秘策/食通の外国人にも愛された「スキヤキ・パーティ」/メニューのデザインも楽しみの一つ/調理師学校の校長を感動させた料理長 第8話 客船だからこそのおもてなし 太平洋横断百三十二回の事務長、大いに語る/乗客を片時も飽きさせないために/余興の域を超越した船員たちの隠し芸/船好きだった大谷光瑞の愉快な逸話/新しい設備導入もサービスの一つ/「世界的創造」の冷房装置/タウトが感銘を受けた花毛布/サービスに対するチップ、その裏事情/日本人が船内装飾を手がける時代に/客船設計者・和辻春樹のサービス論/船客自身が配慮する「他人へのサービス」 第9話 ゲーテも夢想した二大運河を通航 岩倉使節団も通航したスエズ運河/スエズ運河で命拾いした本多静六/フランスへ引き返したかった天皇の料理番/スエズ運河通航中にカイロ観光/パナマ運河の工事に携わった日本人/生まれて初めて見る光景に騒然 第10話 旅情の波間を進む連絡船 稚泊連絡船は霧のなか、汽笛を鳴らして/国鉄連絡船の時代/デッキで食べた讃岐うどん/連絡船から海底鉄道へ/日本と韓国の歴史を運んだ連絡船/中国とつながっていた門司/上海へは下駄を履いて 第11話 世界一周という壮大な旅のなかで 世界初の世界一周クルーズ船が日本に寄港/一種の流行になる世界一周クルーズ/百歳の乗客が気炎を吐いて話題を提供/国際親善に役立った小学校訪問/日本最初の団体世界一周、その様子は/三日間にわたって大運動会を開催/巨船を見て西洋への興味が勃然と湧く岡本一平/最も苦心したのはあるぜんちな丸/美しい流線型で好かれた客船/「外国の人はどんなに驚くだろうと、僕は愉快に思います」/世界一周の航程は八十九日間 第12話 悲喜こもごもの移民船 自由の女神像を見て歓声を上げた人々/三等船客であっても、心は錦/移民には無意味な船中生活/活躍する移民船の山城丸/笠戸丸の数奇な生涯/移民たちの負担を減らした政府援助/移民を輩出したその裏事情とは/移民たちに欠かせなかった移民宿/終生忘れられない仮装大会 第13話 「南洋の島々」という新しい世界へ ペリー提督が訪れた無人島/歴史の海に漂う小笠原諸島/小笠原旅行に勝るものなし/東京・芝浦から四日目に父島へ/著名士が関心を寄せた南洋群島/日本の統治下に入って移住者も急増/石川達三は未知の土地への好奇心を抱いて/南洋で見た美しさと哀しみ 第14話 活字が伝える船旅の魅力――新しい書物と怪事件と白昼夢 海に出て新しい書物を開こう/巨大な密室で起きる事件の数々/豪華カジノ船という新しい試みのなかで/現実と虚構が錯綜する奇妙な出来事/日本文学者は海に無関心だという意外な批判/旅行雑誌として充実していた英文PR誌/船旅の時代を象徴する言葉の数々 おわりに 建造中の火災事故、そして新型コロナウイルスの感染/新技術を導入した最先端のクルーズ船/徹底的に追求された食品衛生の安全性/常連客の賢い“航海術” 版元から一言 江戸末期に洋行した福沢諭吉、ニューヨークからナポリに向かった有島武郎、ハイカラなフランスをめざして「船旅文学」を打ち立てた島崎藤村。大使館に赴任する家族に同行した女性、新天地に将来をかけた移民たち、あるいは船旅で寿命が延びる感覚を受けたという鶴見和子と俊輔の父・祐輔、船中を和服で通した新宿中村屋の創業者・相馬愛蔵……。 夢と期待を乗せた客船が洋上を駆け巡った洋行の時代、「海の外に出る」ことは生きることそのものだった。暮らしが船旅と結び付いていた時代の営みを、小説やエッセー、絵はがきや旅行パンフレットほかの史料を示しながら、さらには造船現場や客船を運航した人たちの視点も交えて、いまや笑い話のような逸話、想像を超える苦難の道中の数々を紹介する。 決死の覚悟で乗船した時代から150年後の現在、客船は最新テクノロジーで操舵され、長い日数を退屈させないイベントも用意されていて、まるで高級ホテルで移動するようだ。 著者が長年をかけて収集した珍しい図版140点が、まだ見ぬ海外への往時の旅情をかき立てる。 - 著者プロフィール - 富田 昭次 (トミタ ショウジ) (著) 1954年、東京都生まれ。ホテル・旅行・歴史作家。著書に『「おもてなし」の日本文化誌――ホテル・旅館の歴史に学ぶ』『絵はがきで楽しむ歴史散歩――日本の100年をたどる』『ホテル百物語』『ホテル博物誌』『旅の風俗史』『ホテルの社会史』『絵はがきで見る日本近代』『ホテルと日本近代』(いずれも青弓社)、『サービスはホテルに学べ』『おひとりホテルの愉しみ』『東京のホテル』(いずれも光文社)、『ノスタルジック・ホテル物語――明治・大正・昭和』(平凡社)など。
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【古本】The Sea Journal: Seafarers' Sketchbooks | Huw Lewis-Jones, Don Walsh
¥3,800
Chronicle Books 2020年 ハードカバー 320ページ 20.57 x 3.56 x 27.94 cm 英語 - 内容紹介 - 個人的に残された日記や記録、本、手紙などを集めた勇敢な船旅の記録。 本書には、マゼランと旅をしたイタリアの航海士であるアントニオ・ピガフェッタやキャプテン・クックの最初の航海に同行したタヒチ人のトゥピア、女性で初めて地球一周の航海に成功したジャンヌ・バレなどの歴史的な人物たちの記録も含まれています。 ・60を超える人物の肖像やカラフルなスケッチ、地図などを収録。 ・極寒の北極から南国のパラダイスまでの様々な冒険。 ・様々な時代の貴重な資料を収録。 状態:非常に良い ほぼ新品の状態です。