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私たちの暮らしに生かせる 南極レシピ | 渡貫 淳子
¥1,760
家の光協会 2025年 ソフトカバー 112ぺージ A5判 - 内容紹介 - 食料価格の高騰が続くこの時代に、救世主のようなレシピ本! ごみに溢れる日本で、1人1人ができることはたくさんあります。 南極という極限の地で1年間、調理隊員として30人分の料理を作り続けた渡貫淳子さん。食材の追加調達はなし、ごみは一切捨てられない環境で、どのように食事を作っていたのでしょうか。その工夫やアイディアは、日本に暮らす私たちにも役立つことばかりです。 お金をかけずに上手に食材を使いきる方法、無駄なくごみを出さないリメイク料理、買い物に行かなくてもすむ食材の繰りまわし方、特別な材料は使わず、忙しい人でも簡単に作れるシンプルな家庭料理の数々。残りものをおいしく食べきれると心もスッキリ、気持ちよさにもつながります。 目次 第一章:毎日のごはん作りに役立つ南極レシピ 残りものカレー/煮ものの残りでちらしずし/炊き込みチャーハン/おさかなコロッケ/なんでも野菜のチヂミ/お総菜ケークサレ ほか 第二章:本当においしい冷凍野菜のレシピ 冷凍アボカド/冷凍揚げなす/冷凍枝豆/冷凍じゃがいも/冷凍かぼちゃ/冷凍とろろを使ったメニュー 第三章:缶詰と乾物のアイディアレシピ ツナ缶/さばの水煮缶/コーン缶/麩/ひじき/切り干し大根を使ったメニュー 第四章:捨てられがちな食材の活用レシピ 大根の皮、ブロッコリーの芯や葉/かぶの葉、大根の葉/長ねぎの青い部分/フルーツの皮や芯/かたくなったパン/しけったのり/天かすを使ったメニュー - 著者プロフィール - 渡貫 淳子 (ワタヌキ ジュンコ) (著) 第57次南極地域観測隊の調理隊員。30代後半に南極地域観測隊の調理隊員への夢を抱き、3度目のチャレンジで合格。昭和基地史上2人目の女性調理隊員(民間人では初)。南極でよく作っていた「悪魔のおにぎり」をモデルに、某コンビニチェーンが商品化したことでも注目される。
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台所探検家、地球の食卓を歩く | 岡根谷 実里
¥1,980
WAVE出版 2025年 ソフトカバー 287ぺージ 四六判 縦188mm 横130mm 厚さ20mm - 内容紹介 - 野菜、卵、ミルク、肉、魚、穀物……。 わたしたちの食卓は様々な食材に支えられています。 しかし、他の国々では、それらの食材がどんな料理になり、どのように食卓に並び、人々の暮らしの風景を作り出しているのか、案外知られていないものです。 本書では、世界の台所探検家として世界各地の数多くの家庭を訪れてきた著者が、食材と人との関わりという身近な視点から、その土地のくらしをつぶさに伝えます。 台所にある身近な食べものが、世界の未知なるくらしを知るきっかけとなるような一冊です。 --------------------------------------- もくじ はじめに この本で紹介する国と地域 1章 多彩な野菜たちと出会う台所 【じゃがいも】 アンデス高地の寒さで作る保存食 3種のじゃがいもが織りなすやさしいスープ 徹底した合理主義 じゃがいもの美学 【トマト】 ふるさとの味はジュースのようなトマト カラカラの砂漠で作る絶品トマト料理 【なす】 ぴりりと辛くふわりと甘い揚げなすの変身 巨大焼きなすはつぶしてレモンで 【かぼちゃ】 かぼちゃがまるでキャンディ 洗面器いっぱいズッキーニの肉詰め 【にんじん】 クリスマスディナーの主役級にんじんボックス にんじん色に染まる山盛りご飯 【唐辛子】 独立記念日は甘くて巨大な唐辛子料理 幸せの国の食卓を彩る唐辛子料理 「粉唐辛子」に要注意 COLUMN(1)たかがポテサラ、されどポテサラ ─世界ポテサラ探訪記─ 2章 変幻自在な卵とミルク 【卵】 世界一の卵大国 目玉焼きには何をかけるか ティーポットで作る卵餃子 変幻自在な卵とミルク 【牛乳】 新鮮な牛乳は二度おいしい 世界各地の文化を映す「いつもの牛乳」 【ヨーグルト】 夏を乗り切るひんやりスープ 草原のカチカチヨーグルト 塩の欠乏が生んだ乳と肉の酸っぱい食卓 【チーズ】 インドに豆腐の兄さんがいた キャラメルのごとくブラウンチーズ さけるチーズ 本物との遭遇 COLUMN(2)「乳」とは何か? 3章 肉と魚の命をいただく 【牛肉】 牛肉大国らしい日曜朝のホームセンター 叩くとふわふわ乾燥牛肉 【豚肉】 丸焼きを超える豚のごちそう料理 ココナッツで育つ豚は脂身がとける 【鶏肉】 からあげ屋になる夢が叶った一日 鶏は魚か? 【ソーセージ】 朝限定フレッシュな白いソーセージ ソーセージとプリンの意外な関係 夜市の屋台ソーセージ 【魚】 新鮮な魚は醤油ではなくココナッツミルクで 現代の魚は陸で育つ 氷の国の寒風が作る干し鱈 COLUMN(3)大豆は本当に畑の「肉」だった 4章 穀物が支える毎日の食卓 【米】 葉っぱに包まれ脇役に徹する米 「白いご飯」の思い込み お米大国の限りなく広いお米の世界 【小麦(パン)】 共同窯のパン職人 パンはオーブンでできるのみにあらず 【小麦(麺)】 子ども大好きなやわらかパスタ 麺の引っ張りが命 ラーメンの親戚 【とうもろこし】 とうもろこし加工は4000年前からの知恵 練り粥づくりは力仕事 【豆】 インドの台所は豆天国 アジアの納豆は調味料? COLUMN(4)「主食」とは何か 5章 笑顔が咲くおやつタイム お米が甘いデザートに パリパリとろりの特大チーズケーキ キラキラ輝く工芸品のようなひとくち菓子 昆布も肉もスイーツに 屋台パフェ 家族の時間を作るクリスマスクッキー おわりに - 著者プロフィール - 岡根谷 実里 (オカネヤミサト) (著) 世界の台所探検家。1989年長野県生まれ。 東京大学大学院工学系研究科修士修了後、クックパッド株式会社に勤務し、独立。 世界各地の家庭の台所を訪れて一緒に料理をし、料理を通して見える暮らしや社会の様子を発信している。 30以上の国と地域、170以上の家庭を訪問。講演、執筆、研究などを行う。 京都芸術大学客員講師、立命館大学BKC社系研究機構客員協力研究員、大阪大学感染症総合教育研究拠点(CiDER)連携研究員。 著書に『世界の台所探検 料理から暮らしと社会がみえる』(青幻舎)、『世界の食卓から社会が見える』(大和書房)『世界ひと皿紀行 料理が映す24の物語』(山と渓谷社)など。
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雪豹の大地 スピティ、冬に生きる | 山本 高樹
¥2,420
雷鳥社 2025年 ソフトカバー 256ページ A5変形判 縦188mm 横148mm 厚さ17mm - 内容紹介 - 巡り巡る命を、見つめ続けた日々。 ヒマラヤの山奥深くに棲まう幻の獣、雪豹。全世界での推定生息数は8000頭に満たず、険しい高山地帯に生息しているため、野生下では目撃することすら困難とされている動物だ。そんな雪豹たちのあるがままの姿を見届けるため、写真家はインド北部のチベット文化圏、スピティに旅立った。 標高4200メートルの極寒の高地。狩る者と狩られる者の命のやりとり。自然の摂理の中で儚い生を生きる、雪豹、狼、狐、アイベックスなどの動物たち。その傍で、大いなる存在への畏れと祈りとともに暮らす人々。ひと冬の間、彼らとともに過ごした日々の中で、写真家が巡り会ったのは……。 『冬の旅 ザンスカール、最果ての谷へ』で第6回「斎藤茂太賞」を受賞した気鋭の著者による、待望の書き下ろし長編紀行。雪豹や野生動物たちの躍動感のある姿、スピティの祭礼や高地の村の様子など、貴重な写真の数々も収録。 - 目次 - 夏の終わり 雪のない冬 母と子 村での日々 双子の兄妹 雪の到来 狩る者、狩られる者 矢と酒の祭 巡り巡る命 彼らの歌 - 版元から一言 - 雪豹の姿を捉える。その難しさは、様々な書籍や映画などで語られている通り。本書は、『冬の旅 ザンスカール、最果ての谷へ』で第6回「斎藤茂太賞」を受賞した山本高樹さんが、雪豹に会いに行った旅を記した全編書き下ろしの長編紀行です。 しかし、雪豹を撮影した、という一過性の話にとどまらず、雪豹と他の野生動物や現地に住む人々との関係を深く掘り下げた物語こそが、本書の魅力であり、真価だと思います。臨場感溢れる旅の記録を、ぜひお読みいただけると嬉しいです。 - 著者プロフィール - 山本高樹 (ヤマモトタカキ) (文・写真) 著述家・編集者・写真家。2007年から約1年半の間、インド北部のラダックを中心としたチベット文化圏に長期滞在して取材を敢行。以来、この地域での取材をライフワークとしながら、世界各地を飛び回る日々を送っている。本書のほか、主な著書に『ラダックの風息 空の果てで暮らした日々[新装版]』『ラダック旅遊大全』(雷鳥社)、『インドの奥のヒマラヤへ ラダックを旅した十年間』『旅は旨くて、時々苦い』(産業編集センター)など。『冬の旅 ザンスカール、最果ての谷へ』(雷鳥社)で第6回「斎藤茂太賞」を受賞。
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オーロラの下、北極で働く | 松下 隼士
¥1,870
雷鳥社 2025年 ソフトカバー 244ページ 四六判 縦188mm 横128mm 厚さ175mm - 内容紹介 - 世界最北のサイエンスの町・ニーオルスンへ! オーロラが一日中煌めき、町中をトナカイが闊歩するこの地に、世界中から研究者が集う。ニーオルスンには、基本的に許可を得た者しか滞在できず、Wi-Fiの使用禁止、ライフル携行、建物の施錠不可といった特殊な生活ルールが課される。 かつて極地探検家のロアール・アムンセンが北極点を目指す拠点として滞在したこの小さな町では、北緯78度55分、11ヵ国の観測施設が建つ世界最北の「国際観測拠点」として、大気、雪氷、生物、宇宙など様々な分野の観測が日々行われている。北極は温暖化の進行が早く、ここニーオルスンは地球の未来を知る研究の最前線・最重要の場所でもある。 国立極地研究所の元職員であり、元南極越冬隊員でもあった著者は、観測技術者(観測だけではなく除雪から広報までをこなす「何でも屋」のような仕事)としてニーオルスンに長期滞在した初めての日本人である。 時にホッキョクグマが現れる町で観測を続け、氷点下のマラソン大会や太陽のパーティーなど個性豊かなイベントを楽しむ。ニーオルスンの壮大な自然、多種多様な野生動物、世界各国の滞在員達とのユーモラスな交流、毎日のルーティンなどなど、約4年の滞在中に見たもの感じたことを、著者自ら撮影した美麗な写真とともに紹介。 誰もが知っている北極の、誰もが知らない一面を、つぶさに綴った滞在記。 ~カバーデザインについて~ カバーには、オーロラが煌めき、観測用のレーザー光線が夜空に飛ぶ、まるで映画のワンシーンのような写真を採用。見たことがない光景がこの地では日常の、ニーオルスンを象徴する一枚です。 透け感のある帯には、オーロラのようなグラデーションがかったコピー文が入り、カバーとの親和性の高いデザインになっています。 - 目次 - 1 北極へ向かう 2019.11.5-12.21 2 北極から逃げる 2020.1.18-3.24 3 北極に戻る 2021.9.10-12.7 4 北極に再び戻る 2022.6.12-9.11 5 北極から帰る 2022.9.12-12.1 - 前書きなど - 生命を寄せ付けない、過酷な環境と知られる「極地」。そんな場所で生活を送り、仕事を続けている人たちがいます。かつて、私もその一人でした。南極地域観測隊の隊員として第五十五次の夏隊へ参加し、日本に一時帰国の後、再び第五十六次の越冬隊として南極へ。そして、帰国して三年後に、私は北極へ向かうことになりました。 研究者の観測を支援するため何度も極地へ行きましたが、自然科学の研究業界では珍しい話ではありません。私の周りには極地へ行った経験のある人が多く、この業界は突き詰めると極地へ行きつくのかと思うほどです。 「極地という場所は私の仕事の延長線上に存在していた。」極地へ行くことになったきっかけを人に聞かれると、表向きにはそのように答えますが、果たして最初のきっかけは何だったのか、私自身、実は長らくわからないままでした。 ちょうど、この本の執筆を始めた頃、実家の片付けをしているとダンボール箱から古い本が出てきました。研究者であり科学作家でもあるアイザック・アシモフが一九七九年に出版した子ども向けの科学本シリーズで、私が小学生の頃に両親から買ってもらったものです。古本独特の甘い匂いを感じながら本の束を取り出すと、アデリーペンギンのイラストが描かれた『南極ってなに?』という一冊に目が留まりました。ページを開くと、見覚えのあるイラストや文章が並び、「極地」に対して初めて感じた憧憬が、当時からインプットされていたことに気付いたのです。「見たことがないものを見たい」というその感情は、社会人になって観測の仕事を始めるずっと前から、私の人生の線上にそっと置かれており、私を極地へ向かわせるきっかけになったのだと思います。 本書の舞台は、誰もが知る北極にも関わらず、あまり知られていない北極です。ノルウェーと北極点の間に位置する北極圏のスバールバル諸島に、ニーオルスンという小さな町があります。北極域の研究拠点とされるこの場所には、世界各国の観測施設があり、日本もニーオルスン基地と呼ばれる施設を持っています。南極の昭和基地は映画や書籍の題材にもなっているため有名ですが、ニーオルスン基地という名前は初めて聞く人も多いかもしれません。どちらも、極地を研究するための観測施設であり、私は観測を支援する技術職員として、現地に長期滞在することになりました。 両施設は南北の緯度以外に大きな違いがあり、また、昭和基地の滞在者が主に日本人の隊員で編成されているのに対し、ニーオルスン基地は、国際観測拠点である町の中に世界各国の人が滞在しています。観測という目的で、様々なバックグラウンドを持った人が同じ場所で暮らし集団生活を送り、そして、長い年月を経て世代交代が繰り返されると、地球の果ての極地といえども自ずと文化が生まれます。それは、外界から隔てられた環境のせいか、南極と北極で共通する特殊性があり、私が「極地カルチャー」と呼んでいるものです。そして、ニーオルスンでは、その土地が歩んできた歴史から、様々な要素が加わり、さらに独特の文化が生まれています。 本書は、私が現地で過ごした情景を綴ったものであり、仕事として携わったニーオルスンの観測についてはあまり書かれていません。というのも、原文は私が毎日書いていた日記をまとめたものだからです。職場宛に業務報告を中心とした日報を送っていたためか、この日記には、私が北極で実際に見たり聞いたりして感じたことが多く残されていました。徒然なるままに北極を描写した本書から、見たことのない「ニーオルスン」、そして、聞いたことのない「極地カルチャー」を感じ取って頂ければ幸いです。 - 版元から一言 - 北極といえば「冒険」のイメージがあるかもしれません。過酷を極める環境は、容易に行ける場所ではないからです。 そんな北極に、気候変動や宇宙分野などの研究・観測を行う、世界最北のサイエンスの町・ニーオルスンが存在します。この地に日本人として初めて長期滞在した、極地研の元職員であり元南極越冬隊員でもある著者が、現地での日々を豊富な写真とともに軽妙に綴った記録が本書です。 過酷な北極にあるニーオルスンとはどんなところなのか?どんな人が滞在しているのか?何をしているのか?4年間滞在した著者だからこそ書ける、現地で見た・感じたことを記した細かい描写は、まるで現地を旅しているかのよう。北極に対するイメージがガラッと変わるかもしれません。 - 著者プロフィール - 松下 隼士 (マツシタジュンジ) (著) 石川県金沢市生まれ。大学卒業後、海洋地球研究船の乗船技術者として世界各地の海洋観測に従事。その後、大気観測の技術者を経て、南極地域観測隊の夏隊、越冬隊、東京海洋大学の南大洋航海に参加。気候変動の研究観測に携わった経験を活かし環境NPOにて活動する。2019年より北極圏スバールバル諸島にあるニーオルスン国際観測拠点に長期滞在し、世界各国の滞在員と生活しながら研究観測に従事。2023年に富山へ移住。
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パキスタンの山旅を愉しむ フンザ&ナンガパルバット&カラコルムハイウェイ | 柳谷 杞一郎
¥1,760
雷鳥社 2024年 ソフトカバー 256ページ 四六変形判 - 内容紹介 - 海外の山登りを楽しみたい方へ パキスタンのガイド付き旅日記 パキスタン山岳部は、山の愛好家にとってもっともポテンシャルの高い目的地。 - 目次 - 第一部 パキスタンの基礎知識 魅力的で危険な山々/公用語、ウルドゥー語について/パキスタンでなにを食べるか/氷河について考える/テロ、危険回避のための注意事項など) 第二部 フンザ&ナンガパルバット周遊トレッキング(全18泊19日の旅日記) - 著者プロフィール - 柳谷杞一郎 (ヤナギタニキイチロウ) (著) 編集者・写真家。1957年広島生まれ。修道学園中・高等部、慶応義塾大学卒業。写真集に「RAPA NUIイースター島、モアイの祈り」(エスクァイア・マガジン・ジャパン)「X」(ぶんか社)。著書に「写真でわかる謎への旅・イースター島」、「写真でわかる謎への旅・マチュピチュ」、「星の辞典」、「進化するモチベーション戦略」、「65歳からのエベレスト街道トレッキング」(雷鳥社)、「大事なことはみんなリクルートから教わった」(ソフトバンク文庫)
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【バーゲンブック】呪われた土地の物語−かつて何かが起きた、そしてこれから起こるかもしれない40の場所 | オリヴィエ・ル・カレ 他
¥1,700
河出書房新社 2018年 ハードカバー 135ページ B5変判 定価:3190円 バーゲンブック: 定価よりも値引して販売することのできる新古本です。 (定価のおよそ50%〜70%ほどの価格で販売しています) 新品とはいえ、経年による劣化などが見られる場合もございますので、ご理解の上ご購入くださいませ。 - 内容紹介 - 世界には人々を魅惑する秘境がある一方、誰もが目を背ける「いわくつき」の土地がある。悪魔の棲む館、怪物が出没する海峡、大虐殺が起きた群島……妄想を掻き立て、語り継がれた40の物語。
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文化財に泊まる。 | 偏愛 はな子
¥1,980
エクスナレッジ 2025年 ソフトカバー 156ぺージ 四六判 - 内容紹介 - ●週末をちょっと特別にする 美しい宿、おいしい旅● 名建築のなかには 宿泊できる・食事ができる文化財の建物もあることをご存じですか? 由緒正しき温泉宿に日本建築史に残るクラシックホテル、 昭和レトロな元商店から明治期の学生を支えた元下宿屋の旅館まで、 その個性はじつに豊かで 訪れる人の好奇心を満たしてくれます。 本書は、国指定・重要文化財を含むそんな宿泊施設をご紹介。 どの施設も一度訪れたら忘れがたく、 何度訪れても新たな発見があるのが魅力です。 文化財のまちあるきマップと 知っていると建築がぐんと面白くなる「文化財の宿を読み解くキーワード」も必見! 唯一無二の宿体験で、ワンランク上の旅をお楽しみください。 ■目次 §週末ゆったり小旅行 ――長野・福島 ・BYAKU Narai(長野・奈良井) ・向瀧(福島・会津) ・湯田中温泉 よろづや(長野・湯田中) ・別所温泉 旅館 花屋(長野・上田) ・Satoyama villa 本陣(長野・松本) ・万平ホテル(長野・軽井沢) §人気温泉地に光る名宿 ――静岡・神奈川 ・新井旅館(静岡・修善寺) ・旅館 おちあいろう(静岡・修善寺) ・沼津俱楽部(静岡・沼津) ・川奈ホテル(静岡・伊東) ・萬翠樓 福住(神奈川・箱根) ・箱根小涌園 三河屋旅館(神奈川・箱根) ・ホテルニューグランド(神奈川・横浜) ・葉山加地邸(神奈川・葉山) ・かいひん荘 鎌倉(神奈川・鎌倉) §いつもの街の特別な宿 ――東京・千葉・埼玉 ・佐原商家町ホテル NIPPONIA(千葉・佐原) ・NIPPONIA 秩父 門前町(埼玉・秩父) ・東京ステーションホテル(東京・丸の内) ・ホテル雅叙園東京(東京・目黒) ・鳳明館(東京・本郷)
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美しいをさがす旅にでよう[増補新版] | 田中 真知
¥2,640
白水社 2024年 ソフトカバー 248ぺージ 四六判 - 内容紹介 - 《ちがい》があるから世界はおもしろい! かつて、エジプトの扇風機の羽は金色が主流だったという。黄金色に輝く羽から送られる風はどんな心地だったのだろうか。慣れない目にはやや刺激的に映るその家電の色合いは現地で長く生活する人にとっては当たりまえで、扇風機の羽はそうじゃなきゃと思われていたのかもしれない。 この本は、こんな世界中の「ちがい」をさがしもとめ、私たちがなじんでいるものとは異なるカタチを楽しむための一冊。人はどんなときに美しいと感じ、なにを美しいと捉えてきたのか。また、時代や地域によってその基準は変わるものなのか。 雄大な大自然の風景は長らく美の対象とはならなかった。工場などの建造物やすでに使われなくなった廃墟は現代ではしばしばその美しさが話題になる。庭園に美を見いだす地域もあれば、死者が旅立つための棺桶に意匠をこらす町もある。 最近では、エジプトでも涼しげな羽の扇風機が増えているそうだ。変化する「美しい」に注目して私たちのまわりを改めて眺めてみると、この世界はいままで以上に彩り豊かになる。自分の境界を飛び越えて、さまざまな「美しい」を味わう旅にでてみませんか。 - 著者プロフィール - 田中 真知 (タナカ マチ) (著/文) 1960年生まれ。作家、立教大学観光研究所研究員。エジプトに暮らし、中東やアフリカを広く旅して回った経験を元に旅やコミュニケーションなどをテーマとした著作を発表。著書に『ある夜、ピラミッドで』(旅行人)、『孤独な鳥はやさしくうたう』(旅行人)、『旅立つには最高の日』(三省堂)、『風をとおすレッスン』(創元社)など多数。コンゴ河を丸木舟などで下る旅を綴った著書『たまたまザイール、またコンゴ』(偕成社)で第一回斎藤茂太賞特別賞を受賞。あひるとかっぱの人形とともに旅をするあひる商会CEOの顔もある。
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熊野古道伊勢路を歩く 熊野参詣道伊勢路巡礼 | 伊藤 文彦
¥2,200
サンライズ出版 2015年 ソフトカバー 120ページ A5横判 縦148mm 横210mm - 内容紹介 - 「お伊勢七度、熊野へ三度、愛宕さまへは月参り」。江戸時代、伊勢神宮参拝を終えた旅人が通った熊野三山への道の一部は世界遺産にも指定されている。全長約200㎞の道を詳細な地図と名所解説で構成した歩き旅人必携の本。これ一冊あれば迷わず歩ける現代版名所図会。 電子書籍版も発売中。詳しくは各電子書籍サイト(Amazon等)でご覧ください。 - 目次 - 聖地を結ぶ巡礼道 熊野古道伊勢路全体図 壱區 内宮から田丸をへて瀧原宮へ ①伊勢から田丸 ②田丸から柳原橋 ③柳原橋から坂瀬峠 ④坂瀬峠から阿曽駅 弐區 荷坂峠から馬越峠をへて尾鷲へ ⑤阿曽駅から荷坂・ツヅラト分岐点 ⑥荷坂・ツヅラト分岐点から加田石仏道標 ⑦加田石仏道標から海山郷土資料館 ⑧海山郷土資料館から民謡尾鷲節歌碑 参區 尾鷲から八鬼山を越え花の窟へ ⑨民謡尾鷲節歌碑から賀田羽根の五輪塔 ⑩賀田羽根の五輪塔から西行松の跡 ⑪西行松の跡から花の窟 四區 花の窟から本宮道をへて熊野本宮へ ⑫花の窟から阪本の亀石 ⑬阪本の亀石から楊枝川集落の売店 ⑭楊枝川集落の売店から伊勢路・中辺路合流点 -紀伊山地の参詣道ルール- ⑮伊勢路・中辺路合流点から熊野本宮大社・湯の峰温泉 五區 熊野三山巡拝 ⑯猪岩橋から新宮 ⑰熊野川下り(下船場)から小狗子峠 ⑱小狗子峠から那智の大滝 六區 花の窟から七里御浜沿いに熊野速玉大社へ ⑲花の窟から道の駅パーク七里御浜 ⑳道の駅パーク七里御浜から熊野速玉大社 世界遺産「熊野参詣道伊勢路」の歴史と価値 旅支度あれこれ 計画の立て方 費用 プンニング例 持ち物 熊野古道伊勢路エリアへのアクセス 歩くときの注意点 沿道宿泊施設 観光情報を収集できる施設 周辺の祭り・イベント 索引 - 著者プロフィール - 伊藤 文彦 (イトウ フミヒコ) (著) 1976年大阪生まれ。大阪大学文学部卒。学生時代はバックパッカーとして世界を巡る。2006年から三重県教育委員会文化財保護技師。2010~2012年世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」の保護を担当、紀伊半島大水害からの復旧等に取り組む。2012年から「伊勢から熊野へ聖地巡礼歩き旅復活プロジェクト」を主宰、伊勢神宮から熊野三山まで熊野参詣道伊勢路を完全踏破し、講演会等で巡礼歩き旅の復活を訴える。2014年から筑波大学大学院世界遺産専攻在学中。三重県立斎宮歴史博物館勤務。好きな文化遺産は「ストーンヘンジ」「シルクロード」「和食」。
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手仕事をめぐる大人旅ノート ヨーロッパ3週間、あたらしい旅の楽しみ方 | 堀川 波
¥1,650
大和書房 2024年 ソフトカバー 128ページ A5変型判 縦200mm 横148mm 厚さ10mm - 内容紹介 - テーマは手仕事。 期間は3週間。 好きなものを集める旅に出発します! 手仕事大好きなイラストレーター・堀川波さんが、12年ぶりの海外旅に行きました。 久しぶりの旅は、なんとパスポートの再発行からスタート。 エコノミークラスの飛行機を快適に過ごすグッズをそろえ、持って行く服を吟味し、スマホアプリをととのえて、いざ出発! ロンドン→リトアニア→ラトビア→エストニア→フィンランドをめぐる3週間の旅は、驚きと発見に満ちていました。 英語は苦手で体力にも自身はないけれど、「好きなもの」を追求する情熱だけは誰にも負けません。 白樺細工の手作り体験に参加したり、森の民芸市をめぐったり、街の古本屋さんで昔の手芸本を探したり、素敵な人や風景をスケッチしながらひとりで街を歩きまわったり。 旅の準備から現地での楽しみ方、思い出の残し方まで、自分流で旅を味わい尽くすヒントがたくさん詰まった一冊です。 - 目次 - はじめに 今回の旅について ◆旅の準備のこと パスポートの再発行からスタート/旅に持って行って便利だったもの/洋服はホワイトとブラック縛りで/1万歩でも歩けるヒール靴/旅先で白髪染めはどうする?/スマホに入れておくと便利なアプリ ほか ◆ロンドン 初の海外ワークショップ体験/知らなかったロンドンの紅茶の話/グリーンパークでビールを/レベッカさんのヴィンテージファブリック/スケッチブックとミニ絵の具セットを持ち歩く ほか ◆リトアニア はじめてのエアビー体験/8人の共同生活/リトアニアリネンを探しに ほか ◆ラトビア ラトビア森の民芸市/ピーターさんのかご工房へ/皮をはがして作る白樺細工のワークショップ/幾何学模様を集めて歩く/ラトビアのミトン/古本屋で昔の手芸本と出会う ほか ◆エストニア 長距離バスでエストニアへ/「かわいい」と「好き」で満たされるヘイムタリ美術館/アヌ・ラウドさんのおうち訪問 ほか ◆フィンランド ヘルシンキのデザインは気持ちを明るくしてくれる/スーパーマーケットにも毛糸が!/SEXYロンドンとKAWAIIフィンランド/海へ飛び込むサウナ、ロウリュ/マリメッコ本社の社員食堂 ほか
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インドの台所 | 小林 真樹
¥2,970
作品社 2024年 ソフトカバー 304ページ 四六判 - 内容紹介 - 食卓上に置かれた食器、その奥が気になる。 ディープなインド台所紀行! 南アジア各地の食器・調理器具の輸入販売者にして日本屈指のインド料理マニアのアジアハンターが、インドの端から端まで、さまざまな台所をめぐる――。 料理のみならず、食器や調理器具、調理工程に着目し、歴史や文化、社会問題などにも触れながら、これまであまり取り上げられてこなかった「食」の内側を覗き、さらにディープな食世界へと誘う、インド台所紀行! 本書で紹介するのは、北は夏でも朝晩寒いカシミールから、南は呼吸するだけで汗の出るタミルの最南部まで、巨大な冷蔵庫を6台も抱える大富豪から、わずかな身の回り品しか持っていない路上生活者までの、さまざまな調理現場である。(…)一戸一戸の立場や地位、地域は異にしながらも、全体として共通するインド像が浮かび上がってきた」 ――「はじめに」より ◎カラー写真多数 - 目次 - はじめに 北インド カシミールの宴席料理ワーズワーンの世界 シュリーナガル 1 旧市街の奥の堅牢な館 シュリーナガル 2 カシミールの農村探訪 バドガム 秋のパンジャーブの農家メシ アムリトサル 隠されたキッチン オールド・マナーリー ニハーリー屋とナーン屋 オールドデリー 1 インドの中のチベット系住民宅 オールドデリー 2 インド産ファストフードの現在・過去・未来 ニューデリー 1 孔雀が舞いおりる大豪邸 ニューデリー 2 ムグライー料理人たちの連鎖 ルドーリー コラム ムスリム職人の作るヒンドゥー神具 ムラーダーバード 南インド 白米と雑穀のはざまで チェンナイ 1 異国で食べる昭和レトロメシ チェンナイ 2 南インドの働き手問題 チェンナイ 3 並存する二つの台所 ディンディッカル 密林の中の小さな家 プンニャル マーピラのにぎやかな食卓 チャベスリー 沁みる酒、沁みる話 カキナダ1 アーンドラ人の葉皿イメージ カキナダ 2 IT系料理男子のキッチン ベンガルール 1 豊穣なるファイブスター・ホテル ベンガルール 2 コラム インダス文明からの伝統を受け継ぐ人たち マンナル 東インド 「正しい」台所とは何か コルカタ 1 ビハーリー・マン・イン・コルカタ コルカタ 2 路上生活者のキッチン コルカタ 3 コルカタの中華系の台所 コルカタ 4 アッサムの青銅食器 サルテバリ 先住民族たちのハレとケ バスタル ディアスポラ的ネパール料理 カリンポン ネワール族の家事労働 カトマンズ コラム 大地の味のチャーエ コルカタ 西インド 世界最大のスラム街 ムンバイ 1 憧憬と追憶のボンベイ ムンバイ 2 伝統と最新鋭 アーメダーバード 不意打ちの味をもとめて ビーカーネル カッチャーとパッカー サワーイー・マードプル インド屋台のイメージ インドール インド式パン文化の根源 パナジ 1 ゴア・フェニーで白昼夢を パナジ 2 コラム 新しくて古い工場 ムンバイ おわりに - 著者プロフィール - 小林 真樹 (コバヤシ マサキ) (著/文) 東京都出身。インド・ネパールの食器、調理器具を輸入販売している有限会社アジアハンター代表。著書に『日本の中のインド亜大陸食紀行』『日本のインド・ネパール料理店』『食べ歩くインド 増補改訂版』(以上、阿佐ヶ谷書院)がある。
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おいしいもんには理由がある | 土井 善晴
¥1,650
ウェッジ 2023年 ソフトカバー 216ページ 四六判 縦188mm 横127mm - 内容紹介 - 料理研究家・土井善晴さん、キッチンを飛び出して全国の食文化を旅する! その感動と思索、日本の食の底力についてまとめた、著者初の紀行書。 本書は料理研究家・土井善晴さんがキッチンを飛び出して、全国の食文化を訪ね歩いた記録です。 たとえば一子相伝の江戸佃煮を伝える職人や、濃厚な食味の牡蠣を育てる瀬戸内の漁業者、華やかな加賀料理の伝統を守る料亭の主人らに会い、 出羽三山ではもぎ立ての山菜を山小屋の主人と味わう。 風土が生んだ食材と食文化を体感することで紡がれた土井さんの文章は、時に文化論的思索にもおよびます。 著者初の紀行書である本書は、「一汁一菜」とはまた違う視点から日本の食文化を見つめなおす書であり、 土井さんが旅する様子を活写したカラー写真も豊富で、格好の食ガイドも兼ねています。 <本書の目次> ・まえがき ・北海道・東北 日高昆布は万能昆布 (北海道幌えりも町) 出羽、芽吹きの山菜(山形県西川町・鶴岡市) ・関東・中部 一子相伝、江戸の佃煮(東京都台東区) コク豊かな、国産落花生(千葉県八街市) 天下人を育んだ味噌(愛知県岡崎市) 百万石の加賀料理(石川県金沢市) ぴり辛きわ立つ、奥飛騨山椒(岐阜県高山市) ・中国・四国 高知の田舎寿司(高知県高知市) 瀬戸内 国産レモンの島(広島県尾道市) 日生湾のふっくら冬牡蠣 (岡山県備前市・和気町) 古式作りの讃岐和三盆(香川県東かがわ市・高松市) ・近畿 赤福餅と伊勢参り(三重県伊勢市) 豊饒の美味、琵琶湖(滋賀県大津市・近江八幡市) 吉兆と湯木貞一の美学(大阪府大阪市) 「発酵」が作る味(和歌山御坊市・紀の川市・和歌山市) 大阪寿司の世界(大阪府大阪市) 吉野晒しの本葛(奈良県宇陀市) ・九州 香気とうま味の奥八女茶(福岡県八女市) 職人一家の鰹節(鹿児島県枕崎市) 南蛮渡来の甘いもの(長崎県長崎市・平戸市) ・本書に登場する主な取材先 - 著者プロフィール - 土井善晴 (ドイヨシハル) (著/文) 料理研究家。1957年、大阪府生まれ。十文字学園女子大学 特別招聘教授、甲子園大学客員教授、東京大学先端科学研究センター客員研究員。NHK「きょうの料理」など、多数の料理番組に出演。著書に『一汁一菜でよいという提案』(新潮社)など。
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詩探しの旅 | 四元 康祐
¥2,420
日経BP 日本経済新聞出版 2024年 ソフトカバー 280ページ 四六判 - 内容紹介 - 旧ユーゴ、北欧、南欧、中東、南米、香港……この20年、世界各地の詩祭を渡り歩いてきた。詩を書くのではなく、詩を生きることを僕は学んだ。 ――それでは宴へと参りましょう! 「四元さん、僕の代わりにマケドニアに行ってみない?」そう言ったのは、詩人の谷川俊太郎だった。古都ストゥルガで開かれる国際詩祭に招待されているのだが、都合がつかないのだという。(中略)当時の僕は四十代半ばで、ミュンヘン在住。駐在員として二十年以上勤めた日本の製薬会社を辞めると決めた直後だった。詩人としての活動と二股をかけるのが、時間的にも精神的にもきつくなってきて、しばらく詩の方に専念してみようと思ったのだ。詩祭への出席は、その出発に向けての、谷川さんからのはなむけだった。(本文より) - 目次 - 谷川俊太郎さんの名代/仏教・エコロジー・蕪村/言葉と現実の緊張関係/文字通りの母語/停電の町で/二日酔いの雅な調べ/深い眠りのうちに/定住者の支配/炎にくべる魂/ヒップでクールな骨/生と死の二律背反/知性と情熱が声になる/狙撃兵と頭上の鳥/荒野のオリーブ/アラブの少女、ラップの熱唱/谷川俊太郎の「き」/現在に直結する「戦時下」/悲しいと苦しいは違うんだ/香港と自由/傷ついた街を書く/去る者と「留まるコツ」/孤独をのぞく目/政治の街、個人の痛み/ゆがんだ想像力/連詩は川の流れのように/野蛮な世界の桃源郷/「私はいなかった」けれど/地中の「ユダヤの民の歌」/タニロクのブンコウ/日中韓の歌の宴/征服者の言葉で/精神的なワクチン/スーツケースの移動図書館/いや、AIで書けるよ/憎悪を裏返す/酷似した中ロの事情/不利な道を選ぶ者/脱出不可能の無人島/スペインの俳句/肉声、そして土の匂い/ノーベル賞詩人の昼食/ブロンテ姉妹の物語/旅するビスケット缶/佐渡とウェールズ/インカレポエトリの風/地球という一座……など103篇 - 著者プロフィール - 四元康祐 (ヨツモト ヤスヒロ) (著/文) 1959年大阪生まれ。82年上智大学文学部英文学科卒業。86年製薬会社の駐在員としてアメリカに移住。90年ペンシルベニア大学経営学修士号取得。94年ドイツに移住。2020年、34年ぶりに生活の拠点を日本に移す。『世界中年会議』で山本健吉賞と駿河梅花文学賞、『噤みの午後』で萩原朔太郎賞、『日本語の虜囚』で鮎川信夫賞を受賞。ほかの詩集に『ゴールデンアワー』『小説』『シ小説・?膠』『ソングレイン』など。『フリーソロ日録』『龍に呑まれる、龍を呑む――詩人のヨーロッパ体験』などの詩文集、『偽詩人の世にも奇妙な栄光』『前立腺歌日記』などの小説、『谷川俊太郎学 言葉VS沈黙』『ホモサピエンス詩集――四元康祐翻訳集現代詩篇』『ダンテ、李白に会う 四元康祐翻訳集古典詩篇』『ミャンマー証言詩集1988―2021 いくら新芽を摘んでも春は止まらない』などの詩論、翻訳まで著作は多数。
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中国手仕事紀行 増補版 | 奥村 忍, 在本 彌生(写真)
¥2,970
青幻舎 2024年 ソフトカバー 328ページ 四六変型判 - 内容紹介 - 少数民族たちの“生きた”民具を求めて、中国の奥地を彷徨い歩いた10年間の記録。 新型コロナパンデミック後の雲南・貴州の旅を新たな章として加筆した増補版。 民藝とは民衆的工芸の意味で、1920年代半ばに柳宗悦が生み出した言葉ですが、無名の職人が作った実用的な工芸品に、美術品に負けないほどの美しさがある、と柳は主張しました。 日本や世界の各地から集めた手しごとを中心とした生活雑貨のお店「みんげい おくむら」は、店主の奥村忍が柳をはじめ、民藝の先達たちの思いを受け継ぎつつ提案する、今の時代、今の生活に合った「みんげい」の品々が人気のウェブショップです。 その奥村が魅せられ、2019年までほぼ毎年旅をしていたのが中国です。その中でも、本書で取り上げる雲南省と貴州省には、もっとも多く足を運んでいます。秘境、絶景と呼ばれるような場所が、そこかしこにある雲南省。かたや最貧の省と呼ばれながらも、独自の文化を今なお残す貴州省。このエリアに惹かれたきっかけは、一枚の布だったといい、「こんなものが作られている場所を訪ねてみたい」という気持ちで飛び込んでみたといいます。 奥村にとって手仕事とは、単に陶芸や織物、編組品のようなものだけではなく、たとえば、棚田も、中国茶も、あるいは郷土料理、建築、そういった文化、暮らしのこと、すべてを含んでいるといい、本書でも雲南・貴州の手工芸品を紹介しつつ、少数民族の暮らしぶりや土地々々の風俗に触れています。 奥村は食通としても知られていますが、中国の田舎の旅では食が何よりの楽しみといい、次から次へと登場する日本では見ることのできない料理の数々も本書の魅力のひとつといえるでしょう。 日本で雲南・貴州両省について調べようとしても情報は限られています。本書は奥村が現地で出合った手仕事の紹介のみならず、旅のルポにもなっており、基本的な英語すらほぼ通じない、グーグルも使えない土地でどう行動すべきか、ガイドブック以上に心強いアドバイスとなるはずです。 また、本書の写真は、世界各国を旅して作品を撮り続けている在本彌生が奥村に同行して撮影したものです。在本の感性によって現地の色彩が鮮やかに切り取られています。 本書の初版が発売されたのは2020年1月末、まさに「謎の疫病」の発生源は中国であるらしいとニュースで流れ始めた時のこと。疫病は瞬く間に国境を越え、世界は閉ざされ、奥村も中国への買い付けに行けなくなってしまいました。 本書は2024年になりようやく本格的に中国買い付けを再開して、4年数ヶ月ぶりに訪れた雲南・貴州の旅の記録を新たな章として加筆した増補版です。新型コロナ以前の中国の様子を伝える資料としても、新型コロナ以後に起こった大きな変化を知ることができる意味でも、貴重な内容になっています。 - 著者プロフィール - 奥村 忍 (オクムラシノブ) (著/文) 1980年千葉県生まれ。慶應義塾大学卒業後、各国を放浪。のち商社、メーカー勤務を経て国内外の手仕事の生活道具を扱うWEBショップ『みんげい おくむら』を2010年にオープン。月の2/3は産地を巡る旅をしながら、手仕事・旅・食に関する執筆も手がける。 在本 彌生 (アリモトヤヨイ) (写真) 東京生まれ。大学卒業後外資系航空会社で乗務員として勤務、乗客の勧めで写真を撮り始める。2003年に初個展「綯い交ぜ」開催、2006年よりフリーランスフォトグラファーとして本格的に活動を開始、雑誌、書籍、展覧会で作品を発表。 衣食住にまつわる文化背景の中にある美を写真に収めるべく世界を奔走して いる。著書に、写真集『MAGICAL TRANSIT DAYS』(アートビートパブリッシャーズ刊)、『わたしの獣たち』(青幻舎刊)、『熊を彫る人』(小学館刊)など。
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欧米の隅々 市河晴子紀行文集 | 市河 晴子, 高遠弘美(編)
¥2,420
素粒社 2022年 ソフトカバー 400ページ B6判 縦186mm 横132mm 厚さ23mm - 内容紹介 - 渋沢栄一の孫にして、稀代の文章家であった市河晴子――その代表的著作である『欧米の隅々』(1933)『米国の旅・日本の旅』(1940)から一部を精選。注・解説・年譜・著作目録等を付す。 編者は、フランス文学者でプルースト『失われた時を求めて』個人全訳刊行中の高遠弘美。 没後およそ80年を経てよみがえる、激動の世界を巡ったひとりの女性の、弾むようないきいきとした旅の記録。 【推薦文】 常識を鵜呑みにしない精神の柔軟さと驚くべき観察眼。 対象の弱みを鋭く突いてなお嫌味にならない毒のあるユーモア。 緩急自在の文体で描かれる、潑溂とした知的な道中のなかで、 いま、「隅々」という新しい言葉の地誌が生まれる。 ――堀江敏幸 いや凄いね、これほどの才能が昭和初期の日本に出現していたとは! ――鹿島茂(毎日新聞) 46歳で逝ったのが惜しいにもほどがある。もっと生きて戦後の日本と世界を見て書いてほしかった。渋沢栄一の孫娘だけれど、そんなのどうでもいい。晴子は晴子として十二分に素晴らしい。 ――豊﨑由美(共同通信配信) 今回の出版に繫がるまでのエピソードがまたすごいので、ぜひ「はじめに」と「解説」も読んでいただきたい。奇跡の一冊といっていいでしょう。 ――サンキュータツオ(婦人公論) 読みはじめて2行めで、門司港で積荷をする起重機の様子が「ジラフが大きな稲荷寿司を啣え込むよう」と描写されていて、いきなり痺れる。8か月にもわたる長旅の、まだ、たった2行めでしかないのに。 ――斎藤真理子(素粒社note) - 目次 - はじめに 高遠弘美 欧米の隅々 初春の支那 黄海にて 哈達門の朝市 排日瞥見 食べ物 万里の長城 ロシヤを横切る シベリヤの入口 淡雪のモスクバ 憂さ晴らしして 花の都パリ パリの第一印象 芝居とレビュー セーヌの川舟 ベルギーとオランダ イギリスとアイルランド ドーヴァー海峡を渡って ウェールズ アイルランドの南と北 湖水地方 英国の春の行事 ロンドンの日記から(抄) 近郊めぐり(抄) スペインとポルトガル スペインに入る マドリッドにて 闘牛を見る セビリヤ風景 アルハンブラを見に 北欧めぐり デンマークの三日 スカンジナビヤを横切る 東プロシヤからポーランドまで 二度目のベルリン 中欧諸国とイタリー ユングフラウを見に 聖き山々(抄) 永遠の都ローマ(抄) ナポリからベニスまで(抄) ウィーンとプラハ バルカン半島の初秋 ブルガリヤ スタンブール(抄) ギリシャ懐古 エジプトの驚異 ピラミッドに登る 帰国 乗船まで デッキチェヤにて 印度洋の焦燥 その後 米国の旅・日本の旅 米国の旅 第一印象 グランド・キャニオン ボールダー・ダム 日本の旅 緑の旅 湯のある旅 南の湯 北の湯 スキーのあけくれ 解説 高遠弘美 市河晴子年譜 市河晴子著作目録 編者補記 原本目次 - はじめに - 高遠弘美 最初に私が市河晴子の名前を知ったのはまったくの偶然でした。 二〇〇六年六月のこと。当時、明治大学に勤めていた私は偶々入った神保町の古本屋の棚に『欧米の隅々』なる本を見つけ、何気なく手に取って適当にページを開きました。それから会計をするまで三分も経っていなかったような気がします。浜の真砂に手を差し入れたら思いがけず貴重な宝を探し当てたような感じでした。 著者として背表紙に書かれていたのは、市河三喜と晴子でした(以下、基本的に敬称を省きます)。フランス文学を専攻したので畑は違いますが、著名な英語学者・言語学者として斯界に名を馳せた市河三喜の名前はもちろん知っていました。エッセイもいくつか読んでいたと思います。一九九〇年から十年間在籍した山梨県立女子短期大学で同僚だった市河三次教授が、江戸時代の儒学者市河寛齋の曽孫、書家市河米庵の孫である市河三喜の縁戚であることは聞いていましたから、三喜の名に惹かれて手に取ったのかもしれません。そのときはまだ晴子が私にとってこれほど(たとえば、明治大学の最終講義で晴子の文章の魅力を説くまでに)大切な文学者になるなど予想もしていませんでした。 その日、帰宅してからじっくり『欧米の隅々』(一九三三年)を読み始め、最初の「はしがき」と「旅程と感想」、最後の「ドイツよりアメリカへ」が夫の市河三喜(一八八六-一九七〇)の筆になる以外、つまり中心をなす六百ページ余りは妻の晴子(一八九六-一九四三)が書いた旅行記だということがわかりました。 と言っても、晴子が夭逝した長男三栄の後を追うかのごとく世を去ったのちに作られた二人の追悼文集『手向の花束』(私家版、一九四五年)を入手して読んだとき、晴子に関する三喜の以下の言葉に腰を抜かすほど驚いたのですけれど。 漢文調の文章(「欧米の隅々」の巻頭に載せた「旅程と感想」の如き)も書けば或は時々私の代筆をする時は打つて変つた文体を使ふこともある。〔略〕武藤長蔵君の還暦記念論文集〔正しくは「武藤教授在職三十年記念論文集」〕に「長崎と米庵及び寛齋」の一文を寄せたが実はあれは晴子の文章で〔略〕紀行・随筆・スケッチ以外にかういふ歴史物を書く筆も持つてゐた。 「昭和六年三月二十日、妻同伴にて東京を発し神戸より乗船、中華民国天津に向ふ」 こんな調子で書かれた「旅程と感想」だけでなく、市河三喜名義で書かれたいかにもそれらしい論文のうちにもじつは「妻」の晴子が書いた文章が混じっていたとはさすがに気がつきませんでしたが、本書ではそれは収録していません。夫の代筆をする晴子の才筆を感じて頂くよりは、ひとつでも多く、晴子自身の躍動感ある言葉に接して頂きたいと考えたからです。 市河晴子の文章に魅了された私は、単行本未収録作品も含めて可能な限り集めるとともに、晴子そのひとについて調べてゆきました。 その結果、晴子が渋沢栄一の孫娘であること、法学者穂積陳重と栄一の長女歌子の三女であること、何冊も傑作と評すべき本を書いていること、『渋沢栄一伝記資料』に収められた興味深い二十余りの文章も晴子によることなどがわかりました。 晴子については巻末の解説でさらに詳しく書きましたので、ここでは本書の内容について簡単に説明をしておこうと思います。 一九三一年三月、日本人初の東京帝国大学英文科教授として活躍していた市河三喜はカーン海外旅行財団から選ばれて欧米諸国の実情視察の旅に出ます。妻の晴子も同道します。次男の三愛を一九二六年に亡くしていた夫妻でしたが、長男の三栄(一九一七年生まれ)、長女の三枝子(一九二二年生まれ)を、十年親しく面倒を見てくれていた「女中」に託した上での出発でした。晴子はこう書いています。仮名遣いと漢字を現代風に改めて引きます。 私は三喜さんに「いっしょに行こうよ」と云われた時、「子供には相談してから定めるわ」と子供たちの室に行った。何だかくどくどと話して「父さんは一年間行く、母さんは冬までに帰ろう。八ヶ月の留守をしてくれるか」と尋ねた。「行くがいいやね」と同音に云って、三栄は「や、もう英語講座だぞ」と二階へ上って行った。突然の話にまぎれて、時間を忘れたりせぬ平静な調子が、いつもの栄ちゃんらしい。三枝子の方も「私もお勉強だ」と隣室へ行ったが、まだ十歳だし鋭敏な子だから、独りになってから悲しくでもなりはせぬかと思った途端に、唐紙をガラリと開けて、「ねえ。母様が洋行するのが世の中のためになるなら、一年行って来たらどう? 三枝子だって母様が偉くなるほど都合がいいんだから。八ヶ月よか一年行きゃあ、それだけぶんたくさん偉くなるでしょ」と云った。けなげなことをと思うべきなのに、その前に私は「オヤ私は今、世の中のためになんてそんな途方もない大風呂敷を拡げたかしら」と驚き、何と云ったかが思い出せぬので「ははあ、私も上っているわい」と顔を赤らめたのだった。 如何でしょう。この伸びやかさが晴子の本領の一つなのですが、十歳年上の夫のことを「三喜さん」と名前で書く晴子の自由闊達で率直な言葉遣いは、平等でしかも互いへの敬愛に満ちた気持ちのよい夫婦のありようを示しているのではないでしょうか。博大な教養に支えられた喚起力あふれる文体は言わずもがな、男女平等を地でゆくこうした晴子の言葉じたいがこの旅行記の風通しをひときわよいものにしているというのが最初に私が感じた印象でした。 晴子の書いた旅行記は、Japanese Lady in Europe というタイトルでロンドンやニューヨークの書肆から刊行もされ版を重ねてたいへんな反響を呼びます。 さらに、一九三七年に勃発した日中戦争に際し、いわば日米親善の民間外交を託されて単身渡米したときの経験をもとに綴られた旅行記に日本国内の紀行文を合わせて刊行された傑作『米国の旅・日本の旅』(一九四〇年、四四四ページ)も同様に、英訳されて出版されました。 本書は紙数の関係上『欧米の隅々』と『米国の旅・日本の旅』からあえて選んで一本に纏めたものです。いずれも甲乙つけがたい章から選ぶのは至難の業でした。ただ稀代の文章家だった市河晴子が綴ったみごとな紀行文のおおよそはわかるのではないかと思います。そこには女性の正当な権利を主張する熱き言葉も鏤められ、性を異にする私自身も叱咤激励される思いを何度も味わいました。現代にあって、もっとも必要とされる言葉はたとえば市河晴子から発せられていたのではないか。そんな気がしてならないのです。晴子の言葉はそれほど近くにあって二十一世紀を生きる私たちを慰藉すると同時に鼓舞し続けています。耳を傾けるのは今からでも遅くありません。 - 版元から一言 - 素粒社noteにて「【書評シリーズ】『欧米の隅々 市河晴子紀行文集』を旅する」公開中! 「理知と無心」小津夜景[評] 「絢爛たる細部、あるいはチョコチップクッキー」斎藤真理子[評] - 著者プロフィール - 市河 晴子 (イチカワ ハルコ) (著) 1896年12月21日東京生まれ。法学博士穂積陳重と歌子の三女。歌子は渋沢栄一の長女で歌人。 19歳で英語学者市河三喜と結婚。二男一女をもうけるが、1926年には次男三愛を、1943年には長男三栄を喪い、悲しみのあまり病臥ふた月。同年12月5日、他界した。享年46。 幼少より才覚を謳われ、快活で正義感が強く人々から慕われた。名文家としても知られ、三喜に同行した欧米視察の旅からは『欧米の隅々』(1933)が、1937年、日中戦争勃発後、民間外交を託され単身米国に渡った経験からは『米国の旅・日本の旅』(1940)が生まれた。英訳もされた上記二冊の他に『愛ちやん』(1927)。単行本未収録作品も多い。 高遠弘美 (タカトオ ヒロミ) (編) 1952年生まれ。早稲田大学大学院文学研究科博士課程修了。フランス文学者。明治大学名誉教授。著書に『プルースト研究』『乳いろの花の庭から』『物語パリの歴史』『七世竹本住大夫 限りなき藝の道』。訳書にプルースト『消え去ったアルベルチーヌ』『失われた時を求めて』、ロミ『完全版 突飛なるものの歴史』『悪食大全』『乳房の神話学』など多数。編著に『矢野峰人選集』『七世竹本住大夫 私が歩んだ90年』。共著多数。
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見ることの塩 上 イスラエル パレスチナ紀行 + 見ることの塩 下 セルビア コソヴォ紀行 | 四方田 犬彦
¥2,640
河出書房新社 2024年 ソフトカバー 320ページ / 328ページ 文庫判 - 内容紹介 - (上巻)テルアヴィヴから、「壁」を越えパレスチナへ――街を歩き、対話を重ね、土地の日常から現代のアポリアに対峙する珠玉の紀行文学。 (下巻)ただ見ることを課された旅は、紛争終結から数年後の旧ユーゴ諸国へ。宗教や民族の虚構性を看過し、世界の矛盾を凝視する紀行文学。 - 著者プロフィール - 四方田 犬彦 (ヨモタ イヌヒコ) (著/文) 1953年生まれ。あらゆるジャンルを横断する批評家。著書『映画史への招待』、『モロッコ流謫』、『日本のマラーノ文学』、『ルイス・ブニュエル』、『詩の約束』、『さらば、ベイルート』など。
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エピタフ 幻の島、ユルリの光跡 | 岡田 敦
¥2,970
インプレス 2023年 ソフトカバー 240ページ 四六判 - 内容紹介 - 北海道の東端、根室半島の沖合に佇むユルリ島。かつては昆布を採集する漁師の住居や番屋が建っていたが、家畜の馬を残して最後の島民がユルリを離れたのが半世紀前。最盛期には30 頭もの馬が暮らしていたが、その数は減り続け、今では数頭が暮らすだけになっている。上陸が厳しく制限されたこの島の情景は小説『ロスト・ワールド』の世界を彷彿させるようでもある。その島を2011 年から撮り続けているのが写真家・岡田敦。消えてゆくものたちを見つめ、後世に何を伝えてゆくのか。写真と文章で現代のロスト・ワールドを紹介していく。
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ひとりみんぱく | 松岡 宏大
¥3,520
国書刊行会 2024年 ハードカバー 256ページ 四六変型判 - 内容紹介 - もしかしたら「物の本」だと思っている人もいるかもしれないが、これは「旅の本」だ。(「あとがき」より) ◇ 「ひとりみんぱく」とはなにか? 写真家・編集者・ライターとして世界中を旅してきた松岡宏大氏の部屋には、世界各地の文物であふれている。みんぱく=国立民族学博物館。すなわち、わが家の民族学博物館、それが「ひとりみんぱく」だ。1990年代よりバックパッカーとして世界をめぐり、現地で出会った人々や景色、そして蒐集してきた数々の物もの。土器、漆器、仮面、仏像、絨毯……どこか不思議な魅力をもつ工芸、民藝の数々。インドで、チベットで、ミャンマーで、リビアで、サハラ砂漠で、文物からは旅の記憶があふれだし、含蓄? 蘊蓄? 軽快なるエッセイを挟みつつおくる本書は、物の本か? 旅の本か? 地球をまるごと感じる、The Museum of Ethnology in My Hands! 松岡氏は、『地球の歩き方 インド』をまとめ、美しき絵本『夜の木』で知られるタラブックスの本を上梓するなど、とりわけインドに造詣が深い。私家版『ひとりみんぱく123』『ひとりみんぱく45』が好評、美しい本づくりで定評のサイトヲヒデユキ氏のブックデザインを得て、満を持して世の中におくりだす! 収録物品120点超に、美しい旅の写真。美麗クロス装。 ◇ 「みんぱく」とは大阪の万博記念公園内、太陽の塔のとなりに建つ「国立民族学博物館」の愛称である。本書の『ひとりみんぱく』というタイトルであるが、これは初めて僕が「みんぱく」を訪れた際、「うちにもあるな……」という感想を抱いたことに由来する。 仕事柄、世界中を旅しながら暮らしてきたが、行く先々でその土地の文物を蒐集してしまうところがある。その文物は、世間的な価値とはまったく無縁だが、自分の好奇心の方向性から、その国の文化・歴史・神話を内包しているものを好む傾向にある。そして、日本に帰ったあと、部屋で一緒に旅の思い出を語り合える話し相手のようなものであることが重要だと考えている。もちろん日本で手に入れたものや、人からいただいたものも含まれている。しかし、自分の旅してきた道筋から外れないよう心がけている。蒐集の基準軸は、常に「個人的な旅の記憶」と「人とつながり」に置いている。 今回、本書を著すにあたり自らの蒐集した品々をあらためて見返してみたが、本当に役に立たないものばかりだ。残念だ。同時に、僕にとってはかけがえのないものばかりだ。 これらの文物を手のひらにのせ愛でてみる。重みや質感、細工、その歪みや温みを確かめる。太陽の光の下で陰が際立つものもあれば、暗闇の中でこそ光り輝くものもある。それは自分の手で触れてこそわかることで、自分の足で旅をしてこそ出会える風景と一緒だ。 僕はこれらを手に入れたときに出会った人たちの顔や祈りの景色を思い出すだろう。そこで吹いていた風や夜空を満たす星のことを思い出すだろう。 旅の記憶こそ僕にとっていちばんの財産なのだから。 (「まえがき」より) - 著者プロフィール - 松岡宏大 (マツオカコウダイ) (著/文 | 写真) 写真家・編集者など。『地球の歩き方 インド』など、インドやアフリカを中心に辺境エリアのガイドブックの取材・編集に携わる。共著に『持ち帰りたいインド』(誠文堂新光社)、『タラブックス――インドのちいさな出版社、まっすぐに本をつくる』(玄光社)などがある。またインドのTara Booksよりバッジュ・シャームとの共著『Origins of Art: The Gond Village of Pathangarh』を上梓。写真展として『アディワシ――大地と生きる人々』(bonon kyoto、KYOTO GRAPHIE KG +)、『TRIBES in BASTAR』(Rungta)を開催。KAILAS名義で著作やイベントもおこなう。
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冬の旅 ザンスカール、最果ての谷へ | 山本 高樹
¥1,980
雷鳥社 2020年 ソフトカバー 288ページ A5横判 縦188mm 横148mm 厚さ16mm - 内容紹介 - 第6回「斎藤茂太賞」受賞。一般社団法人日本旅行作家協会(会長/下重暁子、会員数180人)が主催する「斎藤茂太賞」の選考会が2021年7月8日(木)に行われ、第6回受賞作に山本高樹『冬の旅 ザンスカール、最果ての谷へ』が選ばれました。 インド北部、ヒマラヤの西外れの高地、ザンスカール。冬になると他の都市をつなぐすべての道が雪と氷に閉ざされるが、厳寒期の1、2月になると、凍結したザンスカール川を歩いて行き来できる幻の道が現れる。この「チャダル」と呼ばれる道を辿る旅は、遠い昔からザンスカールの人々によって受け継がれてきた稀有な伝統であり、世界中のトレッカーにとって憧れの旅路でもある。 しかし、冬のザンスカールの真の姿を見届けるには、チャダルを歩いて辿り着ける場所からさらに奥へと踏み込んでいかなければならないことは、あまり知られていない。 ザンスカールの最深部の山中にある僧院では、「プクタル・グストル」という祭礼が行われると伝えられている。真冬のこの祭りを見届けるため、マイナス20℃にもなる極寒の世界の中、著者が約4週間かけて歩きぬいた苛烈な旅を、詳細に記した紀行文。 ふんだんに掲載された真冬の街、人々、生活を捉えた写真は、資料としても価値のある一冊。 - 目次- 第一章 ザオ・ニンパ 第二章 チャダル 第三章 ルンナク 第四章 プクタル 第五章 ミツェ - 著者プロフィール - 山本高樹 (ヤマモトタカキ) (著/文 | 写真) 著述家・編集者・写真家。1969年岡山県生まれ。出版社での勤務を経て、フリーランスに転身。2007年から約1年半の間、インド北部の山岳地帯、ラダック地方に長期滞在して取材を敢行。以来、ラダックでの取材をライフワークとしながら、『地球の歩き方インド』『地球の歩き方タイ』をはじめとする取材・撮影・執筆などで、世界各地を巡る日々を送っている。2015年からはラダックを中心とした地域で現地発着ツアーのガイドも務めている。主な著書に『ラダックの風息 空の果てで暮らした日々[新装版]』(雷鳥社)、『ラダック ザンスカール スピティ 北インドのリトル・チベット[増補改訂版]』(ダイヤモンド社)など。
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ラダック旅遊大全 | 山本 高樹
¥2,200
雷鳥社 2023年 ソフトカバー 224ページ B6変判 縦182mm 横129mm 厚さ16mm - 内容紹介 - ようこそ、空と山々が出会う地へ。 インド北部、ヒマラヤの西外れに位置する山岳地帯、ラダック、ザンスカール、スピティ。平均標高が3500メートルにも達する苛烈な環境にあるこれらの土地では、古くからチベット仏教を信仰する人々が、祖先から受け継いできた素朴な伝統文化と生活様式を守りながら暮らしています。 足かけ十数年にわたってこの地での取材をライフワークとしてきた著者が、その過程で蓄積した膨大な情報を整理してまとめたのが本書となります。各地の街や村、僧院などの詳細な解説をはじめ、2019年に外国人の入域が許可されたばかりの地域の情報や、各地で延伸が続けられる道路の最新状況なども網羅。ラダックを旅するためのガイドブックとして決定版と呼べる内容であるだけでなく、綿密な現地取材に基づいた地域研究書としても価値のある一冊です。 前書きなど 広大なインドの大地、その北の端に、平均標高が3500メートルに達する山岳地帯がある。ラダック、ザンスカール、スピティ。チベット仏教を信仰し、古くからの伝統文化を守り続ける人々が数多く暮らすこの土地に、僕は魅了され、長い間、足繁く通い続けてきた。 かつては知る人ぞ知る場所であったこれらの土地に対する認知度は、最近、格段に高まりつつある。インド国内だけでなく、日本を含めた世界各国においても。数多くのインド映画のロケ地に選ばれた影響や、旅行者がWebでシェアする写真や情報の拡散によるところも大きいのかもしれない。その現象は同時に、表面的なイメージや不確かな情報の氾濫によって、これらの土地が観光資源として無闇に消費され、現地の人々の暮らしや自然環境が消耗し、変質してしまう可能性を生じさせている。 この本で僕は、ラダック、ザンスカール、スピティについて、できるだけありのままの姿を正確に記し、紹介したいと考えた。正確な情報こそが、これらの土地の本来の姿を理解するためにもっとも必要なものだと思うからだ。 この本が、かの地を実際に旅する人の手助けになればうれしいし、いろいろな都合でなかなか訪れることができない人にも、いつかその日が来ることを想像しながら読んでもらえるとうれしい。そして、かの地が直面しているさまざまな課題についても、少し考えてみてほしい。そんな思いを込めながら、僕はこの本を書いている。 ようこそ、空と山々が出会う地へ。 - 著者プロフィール - 山本高樹 (ヤマモトタカキ) (著/文 | 写真) 著述家・編集者・写真家。2007年から約1年半の間、インド北部の山岳地帯、ラダックとザンスカールに長期滞在して取材を敢行。以来、この地域での取材をライフワークとしながら、世界各地を飛び回る日々を送っている。本書のほか、主な著書に『ラダックの風息 空の果てで暮らした日々[新装版]』(雷鳥社)、『インドの奥のヒマラヤへ ラダックを旅した十年間』『旅は旨くて、時々苦い』(産業編集センター)など。『冬の旅 ザンスカール、最果ての谷へ』(雷鳥社)で第6回「斎藤茂太賞」を受賞。
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砂漠の教室 イスラエル通信|藤本 和子
¥968
河出書房新社 2023年 河出文庫 ソフトカバー 256ページ 文庫判 - 内容紹介 - 名翻訳家の原点となる、幻のエッセイがついに復刊! リチャード・ブローティガン、トニ・モリスンなどアメリカ文学のすぐれた翻訳家であり、聞き書きの手法を生かしたエッセイの書き手としても知られる藤本和子。 70年代に刊行された、初エッセイを復刊&文庫化。 1976年、著者はヘブライ語を学ぶため、ユダヤ人の夫と共にイスラエルの語学学校へ。同級生は各国から集まった8歳~70歳の生徒たち。未知の風土、生活、食べ物、そして歴史に向き合い、「他者を語る」ことに挑んだ、限りなく真摯な旅の記録。(解説=平松洋子) “気概と覚悟が、鋼のように貫かれている。 それでいて、思考も身体も外に開かれている。 まさに藤本和子そのひとを体現する原石のような一冊だ。“ ――平松洋子氏
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ヨーゼフ・ロート ウクライナ・ロシア紀行 | ヨーゼフ・ロート, ヤン・ビュルガー(編・解説), 長谷川圭(訳)
¥1,760
日曜社 2021年 ソフトカバー 126ページ 四六判 縦185mm 横128mm - 内容紹介 - 戦間期の1920年代。オーストリアの文豪・ヨーゼフ・ロートが旅した、言語・文化・宗教のモザイクのような世界、ウクライナ・ロシアの諸都市の人々の暮らしと現実の記録。 キエフ、モスクワ、そしてオデッサへ、さらにレンベルク、バクーあるいはアストラハンへの取材旅行の途上、作家でありジャーナリストでもあるヨーゼフ・ロートは、変幻きわまりない東欧の宇宙空間に潜り込む。1920年代に書かれた彼のルポルタージュは、この時代、この世界で目撃した現実を生き生きと伝える感動的な証言集だ。 ロートの注意深い眼差しは、異なった言語や文化や宗教が隣り合わせにひしめき合うソヴィエト連邦の人々と、彼らの暮らしの現実の姿へ向けられる。この眼差しこそは、レニングラードの路上で繰り広げられるせわしない日常生活でも、ネゴレロイエの国境検問所でも、あるいはヴォルガ川を航行する蒸気船の上でも、どこであれ、ロートが事実を探究し、その独自な文体によって描き出した世界を貫くものだ。その際彼は、国家と教会、独裁政治と言論・表現の自由、貧富の格差など、この社会に存在する抜き差しならない対立関係を描き出す。それと同時に、故郷を失った彼のような者が、旅に身を任せ、ペンを走らせながら、批判的に物事を理解することを通じて、自分自身の故郷を少しずつ回復していく様子が描かれる。それは、彼自身の言葉という故郷だった。 カフカと同じ時代を生きたオーストリアの文豪ヨーゼフ・ロートが、作家・記者の目で観た東欧諸都市の景観と人々の暮らしを独特のスタイルで書き綴った魅力あふれる紀行文で、未発表のまま残されていたウクライナとロシアの旅の報告から、珠玉の17篇を収録。ロートファンならずとも、今、世界史の大転換の一つの中心であるウクライナ・ロシア。戦間期の諸都市の姿がロートの精緻な観察と精妙な筆致によって読者の脳裏に蘇る。読む喜びが帰ってくる寄稿文の楽しさを味わってください。 - 目次 - 一 東からの便り ウクライナブーム ベルリンの最新流行 ウクライナ少数民族 リヴィウ 障害者の葬列 二 ロシアの風景 トコジラミと過ごした夜 レニングラード 三 ソビエトの現実 国境のネゴレロイエ モスクワの亡霊 ヴォルガ川をアストラハンまで アストラハンの不思議 カフカスの民族模様 ロシアの大通り アメリカを目指すロシア 女性と新しい性道徳と売春 教会、無神論、宗教政治 村に広がる町 世論と新聞と検閲 ロシアの神 あとがき 編集者あとがき 謝辞 - 前書きなど - 一 東からの便り ウクライナブーム ベルリンの最新流行 ベルリン、一二月一三日 ときどき、ある民族がブームになることがある。以前は、ギリシャ人、ポーランド人、ロシア人が 人気だったが、今はウクライナ人だ。 私たち西の人間はウクライナ人についてあまり多くを知らない。知っていることといえば、彼らが カフカス山脈とカルパティア山脈に挟まれた草原と湿地の国で生きているということ、ウクライナ台 地は標高が高くて比較的住みやすい土地であったことぐらいだろう。それ以外では、オーストリア人 の戦争外交官が素人仕事から結んだブレスト=リトフスク条約、通称「パンの平和」がウクライナ人 と関係していることをなんとなく知っているだけだ。要するに、私たちは「ウクライナ人」という民 族についてほとんど何も知らないのである。彼らは人食い人種かもしれない。読み書きができないの かもしれない。人種的には「ロシア人の一種」で間違いなく、宗教的には顎髭を生やした司祭が、金 やミルラや香煙を使って儀式を行う原カトリック的な異教を信じている。 このように私たちはウクライナという土地と人についてわずかなイメージしかもっていない。だか ら惹かれるのである。ポーランド人はもう十分すぎるほど西欧化されている。ギリシャ人についても、 映画女優と同じようにギリシャの王も猿に噛まれることがあるという事実を中央ヨーロッパが知って 以来、知らないことは何もない。ロシアは数多くのドイツ人が移住したり戦争で捕虜になったりした ので、もはや外国とは思えないため、寄席や喜歌劇の題材にはなりえない。残るは「ウクライナ」だ けだ。 (かつてのポーランド立憲王国の)ルブリンから移住してきた貧しいユダヤ人がベルリンの東部でた ばこ屋を始めたのだが、店の看板にキリル文字で「ウクライナ・オリジナル」と謳っている。さまざ まなコーヒー・ショップでは若い女性が最新のアメリカン・ジャズに合わせて踊るのが流っているが その踊りは「ウクライナ民族舞踏」と呼ばれている。しかし最新の流行は、何といっても〝ウクライ ナ風〞パントマイムとバレエだろう。 ベルリンは奇妙なほどウクライナ風オペレッタに夢中になっていて、少しでもスラブっぽく聞こえ る旋律はすべて「ウクライナ風」と形容される。この流行に火をつけたのはもちろん本物のウクライ ナ人、正確にはウクライナ合唱団だ。合唱団はベルリンをはじめヨーロッパの各都市で公演を行い、 大成功を収めたのだが、それがきっかけで、国家あるいは政治体制などといったものを利用して金儲 けができることに人々が気づいたのである。しかもこの流行がある現象を引き起こしている。ロシア、 ウクライナ、ポーランドなどの東欧諸国から西欧に移住してきた人々が、ウクライナブームに便乗し て自分たちを古い「ウクライナ人」と呼ぶようになったのだ。 したがって、いわゆる〝ウクライナ〞バレエは、タタールとロシアとコサックの要素が少しずつ入 り交じったごちゃ混ぜ状態になっている。娯楽産業の目的は民族文化を学術的に研究することではな く、人々を楽しませることにあるので、これを問題視する必要はないのかもしれない。だが、ある民 族の芸術を元がわからなくなるほど歪めるのはよくない。それがボリシェヴィキとポーランド人に故 郷を奪われた哀れな民族の芸術ならなおさらだ。 訓練が厳しく、本当にすばらしい舞踏芸術を見せることで知られるアイスパラストでは、現在バレ エ劇の『赤い靴』が披露されている。この作品はウクライナの伝説にもとづいているとされているの だが、舞台背景に描かれた教会はウクライナ(つまりギリシャ・ カトリック教会)のものではなくロシア正教会のものだ。 作品のヒロインはロシア風の髪飾りを頭に付けている│ウクライナの女性が髪飾りにするのは花だ けで、袖と裾に青と赤の飾りがついた白いブラウスを着る。金刺繍の入ったシルクの上着を身につけ ることはない。チェルケス人が生活していたのはウクライナではなくカフカス地方。ウクライナの農 婦が履くのは短いブーツであり、白いバレエ靴ではない。一部の「ホパック」と「コロメイカ (ウクライ ナ舞曲)」を除いて、舞台上では基本的にロシア舞踊が用いられている。 ザラザーニ・サーカスでは、ポーランド王の命により裸で馬の背にくくりつけられ、数日間ウクラ イナの草原を引きずり回されたウクライナ人コサックの英雄にして指導者の〝マゼッパ〞の物語が披 露されているのだが、ここでもまたウクライナの歴史がロシア風にアレンジされている。ウクライナ の聖職者はギリシャ・カトリック教会に仕え、ロシア正教の司祭のような髭は蓄えない。 ウクライナ舞踏団のグラーゼロフは本当にウクライナ人で構成されているのだが、ウクライナ風を 強めるためにあえてナイフを使った踊りを採り入れている│まるでアメリカ先住民だ。彼らはキエ フで有名な踊り手なのだが、高い料金を支払った西欧人にはコロメイカは退屈だろうと考え、わざわ ざ「荒々しい踊り」を見せるのである。実際には、ウクライナ人がナイフを口にくわえて踊ったりす ることは決してない。 本物のウクライナの民族芸術はとても特徴的で、ロシア人やポーランド人あるいはタタール民族の それとはまったく違うものだ。しかしここで興味深いのは、ある国家は国家としての独立を失ったと たんに、喜劇や歌劇あるいは寄席で注目されるようになるという現象のほうである。 西欧諸国における舞台の流行のバロメーターともいえるベルリンは、最近ずっと「ウクライナ的な もの」を上演しつづけている。 ロート 『ノイエ・ベルリーナー・ツァイトゥング』一二時版、一九二〇年一二月一三日 - 版元から一言 - カフカと同じ時代を生きたオーストリアの文豪ヨーゼフ・ロートが、作家・記者の目で観た東欧諸都市の景観と人々の暮らしを独特のスタイルで書き綴った魅力あふれる紀行文で、未発表のまま残されていたウクライナとロシアの旅の報告から、珠玉の17篇を収録。ロートファンならずとも、今、世界史の大転換の一つの中心であるウクライナ・ロシア。戦間期の諸都市の姿がロートの精緻な観察と精妙な筆致によって読者の脳裏に蘇る。読む喜びが帰ってくる寄稿文の楽しさを味わってください。 -著者プロフィール - ヨーゼフ・ロート (ヨーゼフロート) (原著者) 1894年、東ガリシアのブロディに生まれる。1939年、亡命先のパリで死亡。1923年からドイツの代表紙「フランクフルト新聞」の特派員となり、ヨーロッパ各地を巡ってユニークな紀行文を書き送り、売れっ子ジャーナリストとなった。その傍ら創作にも手を染め、1930年の長編小説『ヨブ─ある平凡な男のロマン』は現代のヨブ記と称された。1932年にはかつての祖国ハプスブルク帝国の没落を哀惜の念を込めて描いた『ラデツキー行進曲』を発表し、小説家ロートの名をも不動のものにした。 ヤン・ビュルガー (ヤンビュルガー) (編・解説) 1968年生まれ。文学研究科、小説家。文芸雑誌『リテラトゥーレン』編集者。2002年からは、マールバッハ所在のドイツ文学アーカイブにて従事。ハンス・へニー・ヤン、マックス・フリッシュおよびゴットフリート・ベンに関する著書の他に、『ネッカー川、ある文学旅行』がある。 長谷川圭 (ハセガワケイ) (訳) 高知大学卒業後、ドイツのイエナ大学でドイツ語と英語の文法理論を専攻し、1999年に修士号取得。同大学での講師職を経たあと、翻訳家および日本語教師として独立。訳書に『樹木たちの知られざる生活』(早川書房)、『カテゴリーキング Airbnb、Google、Uberはなぜ世界のトップに立てたのか』(集英社)、『「おいしさ」の錯覚 最新科学でわかった、美味の真実』(角川書店)、『ポール・ゲティの大富豪になる方法』(パンローリング)、『メイク・ザット・チェンジ』(日曜社、共訳)などがある。
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船旅の文化誌|富田 昭次
¥2,200
青弓社 2022年 ハードカバー 240ページ A5判 縦210mm 横148mm 厚さ18mm - 内容紹介 - 夢と期待を乗せた客船が行き交った洋行の時代を小説やエッセー、絵はがきや旅行パンフレットほかの史料から紹介して、異国文化への憧憬と交流、華やかな出港とその後の苦難の道中、長期間の船上生活を再現する。発掘した140点の図版が旅情をかき立てる。 目次 はじめに 「洋行」という言葉が生きていた時代/福沢諭吉が書いた「船中の模様」/華やかな出港のなかの孤独と別離/にぎやかな出港を演出したお別れのテープ/大揺れの船で発見した耐震壁理論/人生の幕開けを飾ってくれた船旅/外国人との交流で気づかされたこと/近代文学に新しい流れをつくった日本郵船型/階級社会の縮図をみて決意する/片道の航海で終わる人々 序 タイタニック号、いまだ色褪せず 忘れられない悲劇/深海探査装置から送られてきた衝撃映像/海底に散乱するタイタニック号のはらわた/超大型客船で他社を圧倒するWSL/紳士的な振る舞いを見せた大富豪/実は安全性を最も重視した船だった?/ただ一人の日本人乗客が残した手記/石炭庫の火災という「新たな真実」/沈没を早めた?隔壁の歪み/氷山よりも燃料不足の立ち往生を恐れた? 第1話 船の旅、苦しみから楽しみへ 船酔いに苦しんだ歴史上の知名士/船に弱い者同士、同病相憐れむ/船に強い人を見て腹を立てた昆虫学者/酔い止めの薬で救われた野上弥生子/船上の食事に閉口した幕末の留学生/口に合わない食べ物でも威厳を崩さず/無聊に苦しめられた永井荷風/船旅をすると寿命が延びるという人も/船上から見える家々の小さな明かり/船旅の魅力が詰まった瀬戸内海航路/「人は船の旅のたのしさを忘れてゐる。」/船で日本を離れる者の感傷「さらば祖国よ」 第2話 礼儀作法と社交の振る舞い 乗船時の注意あれこれ/多額のチップを手渡してしまう日本人/見栄っ張りの人が周囲に迷惑をかける/チップを先に渡す人、ごまかす人/日本船なのに、なぜ西洋の風習に倣うのか/服装を整えるのは自尊心のため/欧米人の振る舞いに感心した日本人/人生を方向づけてくれた言葉を得て/チャプリンとコクトーの出会い/句会を開いたり、議論を戦わせたり/競売で寄付金を集める慈善活動も/船の上も「旅は道づれ、世は情け」 第3話 「風俗画報」の日本郵船特集号を読む 汽船からの眺めは絵画のようだ/パリの花を詠み、ロンドンの月に嘯く/今日の旅客船は海に浮かぶ一大旅館/当時は外国人船長も少なくなかった/無事到着できれば、一等も三等も同じ/家族や知人に「一片の雁信」を書き送るべし/一等食堂は華麗なる人々の祭典/豚の点眼に、タンサンとシガレット競走/舟遊の快や、実に甲板運動場裡にあり 第4話 豪華客船の第一号、天洋丸出航 歓声に沸き立つ横浜港/客船史を飾る出来事が相次ぐ明治末期/内航は過去のもの、舞台は海外だ/巨船の注文にたじろいだ造船所/欧米の水準に最も近づいた客船/一等船客の外国人を自邸に招いて茶会を開く/「豪華の夢破れて 海の女王空し」/船旅は軽やかなジャズのリズムとともに/豪華客船は音楽も最先端を走っていた 第5話 「優秀客船」とは何か 科学と文化と芸術の結晶/全長が東京駅に匹敵したマジェスティック号/一等大食堂の天井高は九メートル超/ブルーリボンの獲得競争/世界を圧倒するドイツの最優秀船/ドイツ船を手放しで褒める日本人/法学者・高柳賢三のブレーメン号印象記/乗船して感じた階級社会と重大事件/日本でも相次いで優秀客船を建造/客船の規模は市場の規模に比例 第6話 覇を競う二人の女王の物語――ノルマンディ号とクィーン・メリー号 海に浮かぶ美術館の誕生/高度な贅と美が結合した装飾/二等船客として乗り込んだ正宗白鳥/浮気心を起こさせないおもてなし/スピードで対決する二人の女王/巨船の外見・中身をイラスト解説/運命の波に翻弄される二人の女王/幽霊保険に加入したクィーン・メリー号 第7話 乗客の最大の楽しみは食事だった 生演奏の音楽が雰囲気を優雅に演出/ホテル王リッツの名声が客船にも及ぶ/鏡のような海で最後の晩餐/瀬戸内海航路でもお目当てはご馳走/一航海で同じメニューは厳禁/いちばん頭を痛めたのは食事時の席次/浅草海苔を勧められたアメリカ人/ホテルの料理人が客船で修業/乗客には懇切丁寧な配慮が/『給仕の執務心得』、その中身とは/喜劇王チャプリンを獲得した秘策/食通の外国人にも愛された「スキヤキ・パーティ」/メニューのデザインも楽しみの一つ/調理師学校の校長を感動させた料理長 第8話 客船だからこそのおもてなし 太平洋横断百三十二回の事務長、大いに語る/乗客を片時も飽きさせないために/余興の域を超越した船員たちの隠し芸/船好きだった大谷光瑞の愉快な逸話/新しい設備導入もサービスの一つ/「世界的創造」の冷房装置/タウトが感銘を受けた花毛布/サービスに対するチップ、その裏事情/日本人が船内装飾を手がける時代に/客船設計者・和辻春樹のサービス論/船客自身が配慮する「他人へのサービス」 第9話 ゲーテも夢想した二大運河を通航 岩倉使節団も通航したスエズ運河/スエズ運河で命拾いした本多静六/フランスへ引き返したかった天皇の料理番/スエズ運河通航中にカイロ観光/パナマ運河の工事に携わった日本人/生まれて初めて見る光景に騒然 第10話 旅情の波間を進む連絡船 稚泊連絡船は霧のなか、汽笛を鳴らして/国鉄連絡船の時代/デッキで食べた讃岐うどん/連絡船から海底鉄道へ/日本と韓国の歴史を運んだ連絡船/中国とつながっていた門司/上海へは下駄を履いて 第11話 世界一周という壮大な旅のなかで 世界初の世界一周クルーズ船が日本に寄港/一種の流行になる世界一周クルーズ/百歳の乗客が気炎を吐いて話題を提供/国際親善に役立った小学校訪問/日本最初の団体世界一周、その様子は/三日間にわたって大運動会を開催/巨船を見て西洋への興味が勃然と湧く岡本一平/最も苦心したのはあるぜんちな丸/美しい流線型で好かれた客船/「外国の人はどんなに驚くだろうと、僕は愉快に思います」/世界一周の航程は八十九日間 第12話 悲喜こもごもの移民船 自由の女神像を見て歓声を上げた人々/三等船客であっても、心は錦/移民には無意味な船中生活/活躍する移民船の山城丸/笠戸丸の数奇な生涯/移民たちの負担を減らした政府援助/移民を輩出したその裏事情とは/移民たちに欠かせなかった移民宿/終生忘れられない仮装大会 第13話 「南洋の島々」という新しい世界へ ペリー提督が訪れた無人島/歴史の海に漂う小笠原諸島/小笠原旅行に勝るものなし/東京・芝浦から四日目に父島へ/著名士が関心を寄せた南洋群島/日本の統治下に入って移住者も急増/石川達三は未知の土地への好奇心を抱いて/南洋で見た美しさと哀しみ 第14話 活字が伝える船旅の魅力――新しい書物と怪事件と白昼夢 海に出て新しい書物を開こう/巨大な密室で起きる事件の数々/豪華カジノ船という新しい試みのなかで/現実と虚構が錯綜する奇妙な出来事/日本文学者は海に無関心だという意外な批判/旅行雑誌として充実していた英文PR誌/船旅の時代を象徴する言葉の数々 おわりに 建造中の火災事故、そして新型コロナウイルスの感染/新技術を導入した最先端のクルーズ船/徹底的に追求された食品衛生の安全性/常連客の賢い“航海術” 版元から一言 江戸末期に洋行した福沢諭吉、ニューヨークからナポリに向かった有島武郎、ハイカラなフランスをめざして「船旅文学」を打ち立てた島崎藤村。大使館に赴任する家族に同行した女性、新天地に将来をかけた移民たち、あるいは船旅で寿命が延びる感覚を受けたという鶴見和子と俊輔の父・祐輔、船中を和服で通した新宿中村屋の創業者・相馬愛蔵……。 夢と期待を乗せた客船が洋上を駆け巡った洋行の時代、「海の外に出る」ことは生きることそのものだった。暮らしが船旅と結び付いていた時代の営みを、小説やエッセー、絵はがきや旅行パンフレットほかの史料を示しながら、さらには造船現場や客船を運航した人たちの視点も交えて、いまや笑い話のような逸話、想像を超える苦難の道中の数々を紹介する。 決死の覚悟で乗船した時代から150年後の現在、客船は最新テクノロジーで操舵され、長い日数を退屈させないイベントも用意されていて、まるで高級ホテルで移動するようだ。 著者が長年をかけて収集した珍しい図版140点が、まだ見ぬ海外への往時の旅情をかき立てる。 - 著者プロフィール - 富田 昭次 (トミタ ショウジ) (著) 1954年、東京都生まれ。ホテル・旅行・歴史作家。著書に『「おもてなし」の日本文化誌――ホテル・旅館の歴史に学ぶ』『絵はがきで楽しむ歴史散歩――日本の100年をたどる』『ホテル百物語』『ホテル博物誌』『旅の風俗史』『ホテルの社会史』『絵はがきで見る日本近代』『ホテルと日本近代』(いずれも青弓社)、『サービスはホテルに学べ』『おひとりホテルの愉しみ』『東京のホテル』(いずれも光文社)、『ノスタルジック・ホテル物語――明治・大正・昭和』(平凡社)など。
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【古本】The Sea Journal: Seafarers' Sketchbooks | Huw Lewis-Jones, Don Walsh
¥3,800
Chronicle Books 2020年 ハードカバー 320ページ 20.57 x 3.56 x 27.94 cm 英語 - 内容紹介 - 個人的に残された日記や記録、本、手紙などを集めた勇敢な船旅の記録。 本書には、マゼランと旅をしたイタリアの航海士であるアントニオ・ピガフェッタやキャプテン・クックの最初の航海に同行したタヒチ人のトゥピア、女性で初めて地球一周の航海に成功したジャンヌ・バレなどの歴史的な人物たちの記録も含まれています。 ・60を超える人物の肖像やカラフルなスケッチ、地図などを収録。 ・極寒の北極から南国のパラダイスまでの様々な冒険。 ・様々な時代の貴重な資料を収録。 状態:非常に良い ほぼ新品の状態です。