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それ、フェミニズムに聞いてみない? 日々のもやもやを一緒に考えるフェミニスト・ガイド | タビ・ジャクソン・ジー, フレイヤ・ローズ, 惠 愛由(訳)
¥2,420
明石書店 2024年 ソフトカバー 340ページ B6変形判 - 内容紹介 - 現代の女性が直面する日常生活の疑問や課題をフェミニストの視点から掘り下げる、現代版フェミニズム案内書。恋愛や仕事、テクノロジーやメディアの性差別など、幅広いテーマを取り上げ、ベル・フックスからボーヴォワールまで、さまざまなフェミニストの考えを解説。時代とともに変化するフェミニズムの姿を通じて、自分の立場と考え方を見つめなおすための一助となる一冊。 - 目次 - はじめに 第1章 政治と権力 ・フェミニストって誰のこと? ・男性と同じ権利なんて、もうすでに持っているんじゃない? ・どうして選挙に行かなきゃだめなの? 私の生活は変わらないけどなあ。 ・どうして見知らぬ男たちが私を「かわいこちゃん」とか「ハニー」と呼ぶんだろう? ・女性は男性よりも思いやりがあるって、なんで言っちゃだめなの? ・フェミニズムは白人女性だけのもの? ・どうしてフェミニズムはまだ平等を勝ち取っていないの? 第2章 恋愛と人間関係 ・最近デートしてる人がなんでも奢ってくれようとするんだよね。これでいいのかな? ・自分を客体化することなく、マッチングアプリを使うってできるかな? ・ワンナイトして悪いの? ・イったふりをしてるってなんでパートナーに言えないんだろう? ・私は幸せで成功もしてる。パートナーっていなきゃだめなの? ・私のボーイフレンドもフェミニストになれるかな? ・ボーイフレンドにプロポーズしたいんだけど、どう思う? 第3章 結婚と家庭生活 ・おとぎ話のような結婚式、おとぎ話のような結婚? ・結婚後、パートナーの姓を名乗るべき? ・夫も私も働いている。それなのに、なぜ私が家事をしなければならないの? ・私は子どもがほしいのだろうか? ・普通の家族ってなんだ? ・誰が育児休暇を取るべきなんだろう? ・娘は「プリンセス」と呼ばれたがっている。私はどこで間違ったのだろう? 第4章 仕事と賃金 ・主婦になりたいんだけど、だめですか? ・なぜ私は彼より安い給料で働いているんだろう? ・ボスになるには私は優しすぎる? ・私が給料の交渉をしていたとき、上司は「こんなに数字の話をしたら君はくらくらするかもしれないけれど」と言った。どういう意味だろう? ・上司が仕事ではハイヒールを履けって言ってくる。これって合法? ・出世のためには男性の同僚と飲みに行かなきゃだめなの? ・女性は裸でなければメトロポリタン美術館に入れないのか? 第5章 メディアにおける女性 ・オンラインで意見を交わす勇気はある? ・なぜ私は女性セレブの容姿にこだわるのか? ・思っていたほどストレートじゃないかも…… ・なぜ新しい服を買うのをやめられないんだろう? ・映画界の女性たちはどこにいる? ・どうして女性誌が必要なんだろう? ・テクノロジーは性差別的なのか? 第6章 私の身体は私のもの ・どうしていつも太っているような気がするんだろう? ・もし男性が子どもを産めたら何もかも変わるのかな? ・つるつるじゃなきゃだめなの? ・もし私が妊娠したら、妊娠を続けるかどうかって決められるの? ・どうして道を歩くのが怖いんだろう? 訳者あとがき 参考文献 索引 - はじめに - 給料が上がらないとか、オーガズムのこととか。「平等」ってどういうことなんだろうとか。あなたの悩みが何であれ、現代の私たちが抱える白黒はっきりしない疑問の多くを一緒に考えてくれるフェミニストたちがいます。『それ、フェミニズムに聞いてみない?』はそんな疑問を取り上げ、私たちが日々自分自身に問いかける言葉をつうじてさまざまなフェミニスト理論を学んでいく本です。 「最近デートしてる人がなんでも奢ってくれようとするんだよね。これでいいのかな?」「上司が仕事ではハイヒールを履けって言ってくる。これって合法?」─こんなふうに、名前のある一人の人が日々の中でふと浮かべるような問いを投げかけること。それがこの本のやりたいことです。こうした個人的なもやもやをひとつの出発点として、人種や階級、職業の異なる世界中のさまざまな女性たちが直面している社会の課題について話し、過去あるいは現代のフェミニストたちならそれらの問いにどう答えるだろう? と考えてみたいのです。 どうしてかって? それは、この本が取り組む議題は決して新しいものではないから。私たちが考えたいのは、「女性も、男性と同じ権利を持つべきだろうか?」という、何百年ものあいだずっと問われつづけてきた議題なのです。これまでの歴史においても、フェミニズムの波が勢いをつけ、多くの人の意識の中に入り込んだときには、この問いが大声で叫ばれることもありました。けれどたいていの場合、これは私たちが静かに、自分自身に対して問いかける言葉です。「女性も、男性と同じ権利を持つべきだろうか?」というだけじゃなく、「なぜ女性は男性と同じ権利を持てていないのだろう?」「私のまわりの人々は、男性に対してするのと同じように私に接しているだろうか?」「待って―私ってフェミニストなのか?」なんて問いもそう。 第一波から第四波までのフェミニズム運動や(世界中で獲得されつつある)選挙権の平等、経口避妊薬のような科学の分野における革命的進歩を経ても、女性たちはいまだに昔から変わらないクエスチョンマークを浮かべつづけ、それに対する満足のいく返答も得られずにいます。 けれど、フェミニズムはずっとそれらの問いに答えようとしてきました。そしてときには解決策を見出すこともありました。しかし抱えている困難の中身が変われば、それに対するフェミニストたちの返答も変わってきます。つまり、有名なフェミニストたち―たとえばベティ・フリーダンとベル・フックス、メアリ・ウルストンクラフトとシモーヌ・ド・ボーヴォワール、グロリア・スタイネムとケイト・ミレット―のあいだにも、興味深い違いが数多くあるのです。 こうした思想家たちはそれぞれ、私たちが暮らすこの世界に重要な変化をもたらしてきました。それぞれが、そのときどきで最も差し迫った問題について取り組んできました。でも驚くべきことに、溜め息が出てしまいそうだけれど、かれらが闘ったすべては依然として世界中の国々で闘われつづけている問題でもあります。それは選挙権の獲得だったり、男女間の賃金格差、男性による暴力に怯えながら暮らすことへの異議申し立てだったりします。 本書で紹介するフェミニストのうち誰が一番偉いとか、重要だとか言いたいのではありません。そうではなく、私たち自身の生活から浮かび上がるさまざまな疑問を通して思想家たちの考えを比較してみることによって、現代においてセックス[ここでは、出生時に身体的特徴から名指される性別のこと]やジェンダー[社会や文化の中で構築された性別。あるふるまいや役割が「男らしさ」「女らしさ」と結びつけられるときに働く分類の力]とはいったいどんな意味を持つのか、実感を伴って理解しようとする試みの場を持ちたいのです。オードリ・ロードの言葉を借りるなら、互いの違いを祝福することによって、女性たちはともに考え、解決策を見つけていけるから。『それ、フェミニズムに聞いてみない?』はさまざまな思想家たちの声と英智をひとところに集め、現代を生きる女性たちの疑問に対する返答を見つけようとする試みです。たとえば、「女性は男性よりも思いやりがあるって、なんで言っちゃだめなの?」「イったふりをしてるってなんでパートナーに言えないんだろう?」「テクノロジーは性差別的なのか?」「どうしていつも太っているような気がするんだろう?」なんて疑問への返答を。 もしかしたら、シュラミス・ファイアストーンのセックスについての考え方があなたのベッドでのふるまいを変えるかもしれない。ジャーメイン・グリアの考えにふれて結婚生活を思い直すかもしれない。ベル・フックスは男友だちをフェミニストにする方法を知っているし、シャーロット・ホーキンス・ブラウンはフェミニズムが白人女性だけのものに見えてはいけない理由を説明してくれる。ローザベス・カンターは職場においてもっと女性たちが敬意を払われ、正当な賃金が支払われるための助言を惜しまない。 ひとことで言えば、本書は女性が日常的に直面している多くの問題にふれ、これまでに積み重ねられた膨大なフェミニズム理論のグラデーションからそれぞれの解決案を見出そうとする本です。おなじみのあの思想家から、まだ広くは知られていないフェミニズム運動の貢献者たちまで。かれらだって意見がいつも合致するということはありません。それでも、専門家であるかれらの議論が、世界をまなざすあなたの目をほんの少しだけ変えるかもしれない。『それ、フェミニズムに聞いてみない?』は、あなたに贈る現代版フェミニズム案内です。あるいは雑誌の人生相談コーナーみたいな―その回答者があらゆる時代の偉大なフェミニストたちの知が組み合わさった、一人の頼れる女性のようだったなら? -著者プロフィール - タビ・ジャクソン・ジー (タビ ジャクソン ジー) (著) ロンドンを拠点とするジャーナリスト。全国紙や、新しく出てきたさまざまな女性向けプラットフォームで執筆活動を行っている。ファッション、テクノロジー、旅行、そして最近ではガーデニングが好き。 フレイヤ・ローズ (フレイヤ ローズ) (著) 哲学者、作家、フェミニスト。社会科学に関する多くの書籍に貢献している。 惠 愛由 (メグミ アユ) (訳) 1996年生まれ、水瓶座。同志社大学文学研究科英文学専攻修了。BROTHER SUN SISTER MOON のベースとボーカルを担当。Podcast「Call If You Need Me」を配信するほか、書評やエッセイの執筆も。訳書に『99%のためのフェミニズム宣言』(人文書院、2020)など。
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女性議員を増やしたい ZINE | 濵田真里
¥1,100
タバブックス 2023年 ソフトカバー 58ページ B6判 - 内容紹介 - ジェンダーギャップ指数で日本は政治分野が146カ国中139位。なぜ日本には女性議員が少ないのか。 政治家=スーツを着た男性、家庭と両立できない仕事という固定概念、さらに可視化されにくい女性議員・候補者へのハラスメント。 変化する社会課題解決に向け、多様な人々が政治参画するための第一歩を考えます。 これまでずっと男性主体で続いてきた「政治」を解体し、もっと多様な人たちが関われるものにする作業を、たくさんの人たちと一緒にやっていきたい。1人でも多くの人に、女性議員を増やすためにできることを見つけてほしいという思いから、このZINEを作成しました。 【目次】 はじめに 1章 女性議員はどれくらいいる? 2章 なぜ女性を増やす必要がある? 3章 女性議員が増えない理由 4章 女性議員に対するハラスメント問題 5章 女性議員・候補者のサポート活動 6章 私たちにできること 応援・ボランティア・バイスタンダー 付録① 選挙ボランティアのしおり 付録② こどもと一緒に選挙ボランティアしてみよう!リーフレット 付録③ もっと知りたい人のためのおすすめ本リスト * 『女性議員を増やしたい ZINE』 著 濵田真里 2023年4月18日発売予定 デザイン 片桐麻実 髙橋彩花 ページ B6判・58ページ
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家父長制はいらない 「仕事文脈」セレクション | 仕事文脈編集部(編)
¥1,540
タバブックス 2024年 ソフトカバー 160ページ B6変形判 縦173mm 横123mm 厚さ13mm - 内容紹介 - 格差、差別、バッシング、家族、戸籍……色んなひとが困っているけど、これって全部同じ問題=家父長制なんじゃないか? さまざまな角度から「仕事」を考えるリトルマガジン『仕事文脈』。近年掲載した記事の中からフェミニズム、ジェンダー、セクシュアリティにまつわる文章を再編集。性差別的な問題の根幹にある、男性支配的な社会システムである家父長制を解体するための言葉を収録。 - 目次 - 1.ことば・表現 小さな言葉 小沼理 Shitが溢れるインターネット空間 濵田真里 空白のビルボードを見つめて 小林美香 2.カルチャー 「伝え方が悪かったかな、勘違いさせてごめん!」 ニイマリコ 「伝統」を解体する際に 小田原のどか 美術の場でセーファースペースをつくる ケルベロス・セオリー 3.家族 文学の中の「オンナ・コドモ」ーあるいは家庭ーの領域の仕事 小川公代 シルバニアファミリーから考える 浪花朱音 結婚願望がゼロになるまで 笛美 4.社会・政治 政治家だけじゃない 私たちだって主役であるべき 和田靜香 その家父長制は誰のため?──マジョリティ男性に必要な学びとレジスタンス 清田隆之 安倍晋三という政治家が力を持った時代、女性や家族、性的マイノリティをめぐる政策はどう展開されたのか 山口智美 5.セックス びわこんどーむくんがゆく。 清水美春 セックスワーク・イズ・ワークを拒むもの 戸田真琴 6.クィア 点が線になるまで、線が面になるまで 和田拓海 ひとりで生きたい とりうみ 台湾のナイトクラブで婚姻平等を体験する 燈里 働きながら性別移行した私の経験 おいも - 前書きなど- 『仕事文脈』は、仕事や生き方、社会を考えるリトルマガジンです。近年、社会課題や政治にまつわるテーマを多く取り上げていますが、特にジェンダーやセクシュアリティ、フェミニズムにまつわる記事に大きな反響があります。そこで、この数年にわたり掲載した記事を集め、一冊の本として再編集しました。 さまざまなトピック、問題点を検証していく過程で、ジェンダー差別の要因が依然として強固な男性支配的な社会システムにあり、その背景には「家父長制」があることを実感しました。差別する側を指し示す言葉としての「家父長制」に着目し、その構造や概念を解体していきたい、という意図を込めたのが本書『家父長制はいらない』です。
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トランスジェンダーと性別変更 これまでとこれから | 高井 ゆと里
¥748
岩波書店 2024年 岩波ブックレット ソフトカバー 88ページ A5判 縦210mm 横148mm 厚さ6mm - 内容紹介 - 生殖不能要件は憲法違反――長く放置されてきた人権侵害を是正するため、「性同一性障害特例法」の改正が求められている。いま私たちに必要な基礎知識とは何なのか。特例法が制定された背景から、法・医学・国際人権の知見まで、高井ゆと里、野宮亜紀、立石結夏、谷口洋幸、中塚幹也らエキスパートが解説する。 目次 はじめに……………高井ゆと里 第1章 特例法の制定過程から考える、その意義と限界……………野宮亜紀 第2章 性別変更要件とはなにか……………立石結夏 第3章 国際人権基準と性別記載変更法の現在……………谷口洋幸 第4章 特例法とトランスジェンダー医療……………中塚幹也 おわりに……………高井ゆと里 - 著者プロフィール - 高井 ゆと里 (タカイ ユトリ) (著/文) 群馬大学情報学部准教授.哲学・倫理学.周司あきらとの共著に『トランスジェンダー入門』(集英社新書),訳書にショーン・フェイ『トランスジェンダー問題』(明石書店).
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エブリデイ・ユートピア | クリステン・R・ゴドシー, 高橋 璃子(翻訳)
¥2,970
河出書房新社 2024年 ソフトカバー 388ページ 四六判 縦191mm 横132mm 厚さ27mm - 内容紹介 - トマ・ピケティ絶賛! ユートピアは夢物語ではない。プラトンから現代まで、多様な共同体の豊富な実例を参照しながらより幸福な暮らしのあり方を考える、閉塞感に満ちた時代の希望の一冊。 - 著者プロフィール - クリステン・R・ゴドシー (ゴドシー,クリステン,R) (著/文) ペンシルベニア大学教授(ロシア・東欧学学科長)。2012年にグッゲンハイム・フェローを獲得。記事や論説は世界25か国語以上に翻訳され、ニューヨーク・タイムズ、ワシントン・ポスト、ミズ・マガジン、ディセント、フォーリン・アフェアーズなど国内外の多数の紙誌に登場。これまでに11冊の著書があり、話題作『あなたのセックスが楽しくないのは資本主義のせいかもしれない』は15か国語で翻訳出版された。 高橋 璃子 (タカハシ リコ) (翻訳) 翻訳家。京都大学卒業、ラインワール応用科学大学修士課程修了。訳書にゴドシー『あなたのセックスが楽しくないのは資本主義のせいかもしれない』、マルサル『アダム・スミスの夕食を作ったのは誰か?』、ノーデル『無意識のバイアスを克服する』、バークマン『限りある時間の使い方』、マキューン『エッセンシャル思考』など多数。
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クィア・シネマ 世界と時間に別の仕方で存在するために | 菅野 優香
¥3,080
フォルムアート社 2023年 392ページ 四六判 - 内容紹介 - クィア・シネマという「可能性の地平」に向かって ジェンダーやセクシュアリティ、人種に対する規範や制度を問い直し、家族主義や都会主義に抗い、直線的な時間に逆らって歴史を書き直す。気鋭の研究者が照らし出すクィア・シネマの重層性。 アルフレッド・ヒッチコック、オードリー・ヘプバーン、ジュディ・ガーランド、グザヴィエ・ドラン、セリーヌ・シアマ、田中絹代、三池崇史、美輪明宏、原節子、高倉健……作家、スター、作品のみならず観客やコミュニティを縦横に論じる「雑種」で「不純」な映画論。 ジェンダーやセクシュアリティ、人種、コミュニティの規範や理想を強化し、教え込む教育的な役割も担ってきたシネマ(映画)。そこで生まれた「常識」や「当然」を疑うことによって、慣れ親しんできたアイデンティティやカテゴリーを問い直し、「異なる」欲望や「非規範」的な関係の可能性へと導くものこそがクィア・シネマである。直線的な時間に抗い歴史を書き直すその試みは、現在や現状を肯定することなく、可能性として存在し続ける「地平」だといえる。 4部構成による本書は、常識や当然に抗うクィア・シネマの「雑種」で「不純」なあり方を体現する。クィア・シネマの歴史や横断性、クィアの理論と歴史を俯瞰する第1部。ジュディ・ガーランドといった黄金期ハリウッドのスターから、グザヴィエ・ドランやセリーヌ・シアマといった近年の注目監督まで、アメリカおよびフランスのスターや映画作家、映画作品のわたしたちが知っているあり方とは「別」のあり方を提示する第2部。美輪明宏や原節子、高倉健といった映画スターたちと、そのファンやファンたちのコミュニティを取り上げ、雑種性が強く表れた日本映画を扱う第3部。そして、1970年代のフェミニスト映画運動や日本で開催されるクィア・LGBT映画祭を深く掘り下げ、映画とコミュニティの関係を地域性を絡めつつ論じる第4部が最後を飾る。作家論やスター論、作品論のみならず、観客論やコミュニティ論も入り混じり、クィア・シネマの射影の広さが感じられる構成になっている。 第1部のうちの2章と、黒人レズビアンをテーマにした初めての長編劇映画とされる『ウォーターメロン・ウーマン』を論じた章の計3本の書き下ろし論考を収録。また英語で発表した美輪明宏論と原節子論の邦訳も収められている。 編著や共著、雑誌などでクィア・シネマの可能性を日本に紹介してきた気鋭の映画研究者による待望の単著デビュー作。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー わたしたちは、映画を通じてジェンダーやセクシュアリティ、人種の規範性や理想を「学び」、内面化してきた。映画はそれらを映し出すだけでなく、強化し、教え込む教育的な役割を担ってきたのである。クィア・シネマの役割のひとつは、そうした規範性や理想を学び捨てること、あるいは学び直すことである。わたしたちが知っているシネマのあり方とは別のシネマのあり方を想像させてくれる「可能性の地平」がクィア・シネマだと考えたい。(「クィア・シネマの場所」より) ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 【目次】 はじめに 第1部 映画文化とクィア・スタディーズ クィア・シネマの場所──歴史を変えるために クィア・シネマを知るために──クィアの理論と歴史 クィア・シネマの可能性──映画の外側へ 第2部 クィア・シネマの再発見 ヒッチコック問題──『レベッカ』と『マーニー』をめぐるフェミニスト/クィア批評 ハイスミス映画のクィアと逸脱──冷戦下のホモセクシュアリティ ヘプバーンの脆弱さと自由──『ローマの休日』から『噂の二人』へ ジュディ・ガーランドを愛するということ──キャンプ、ドラァグ、フェミニズム 時間の映画──グザヴィエ・ドランのスローモーション 最愛の夫──ヴァルダの「ドゥミ映画」を読む 話者の遍在──『ニューヨーク、ジャクソンハイツへようこそ』における移民/クィアのコミュニティ 水平の美学──セリーヌ・シアマによる親密性の技法 『ウォーターメロン・ウーマン』とオルタナティヴ・ヒストリー──黒人女性映画とレズビアニズムの邂逅 第3部 クィア・シネマとスターたち パンパン、レズビアン、女の共同体──女性映画としての『女ばかりの夜』 人種化される欲望──三池崇史と「沖縄」をめぐる映画的想像力の一考察 『女であること』と、川島雄三であること──川端康成と丸山明宏が出会う場所 クィアな共振──美輪明宏の映画スターダム 連累の観客論──原節子とクィアなジョーク ゴシップ、あるいはラディカルな知──高倉健のスター・イメージ 第4部 クィア・シネマと上映空間 政治的なことは映画的なこと──一九七〇年代の「フェミニスト映画運動」 クィア・LGBT映画祭試論──映画文化とクィアの系譜 コミュニティを再考する──クィア・LGBT映画祭と情動の社会空間 あとがき 初出一覧
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トランスジェンダーQ&A 素朴な疑問が浮かんだら | 高井 ゆと里, 周司 あきら
¥1,980
青弓社 2024年 ソフトカバー 196ページ A5判 縦210mm 横148mm 厚さ16mm - 内容紹介 - 「性別を生きる」って、どういうこと? トランスジェンダーについての基礎的な情報、性別分けスペースのこと、「トランス差別はいけないけれど気になる」疑問など、大きなクエスチョン21個、そこから派生するクエスチョン65個の問いと答えをまとめる。 - 目次 - 第1部 性別の重み 性別を重要視する社会 性別らしさと性別であること 性別と服装 性別と外見 性別と身体 性別とアイデンティティ 性別の多元性 性別分けスペース 性別二元制社会 第2部 基礎知識 Q1:トランスジェンダーとはどんな人たちを指すの? Q2:トランスジェンダーって、「女らしさ」や「男らしさ」の押し付けがいやな人たちのこと? Q3:トランスジェンダーの人たちは、どれくらいいるの? Q4:「性別を変える」ってどういうこと? Q5:生活上の性別を変えるって、何をするの? Q6:身体の特徴を医学的に変えるって、何をするの? Q7:書類上の性別(戸籍)を変えられるの? Q8:ノンバイナリーの人も性別を変えるの? Q9:トランス男性は男の人、トランス女性は女の人、と理解しておけばいい? Q10:自分の望みどおりに性別を「変えた」トランスジェンダーの人たちは、もう困りごとはないの? Q11:どんなことが理由で差別を受ける? Q12:差別の現状を示すデータについて、もう少し知りたいな Q13:ノンバイナリーの人たちも差別を受ける? Q14:最近、SNSでトランスヘイトがひどいよね? 第3部 性別分けスペース 素朴な疑問は素朴ではない 未来を考えるために Q15:トランスジェンダーは性別分けスペースに混乱を招きませんか? Q16:性別分けスペース①トイレ Q17:性別分けスペース②公衆浴場 Q18:性別で分かれることがある活動――スポーツ 第4部 「トランス差別はいけないけれど気になる」疑問 Q19:トランスジェンダーと医療 Q20:トランスジェンダーと社会の変化 Q21:トランスジェンダーとジェンダー特権 あとがき もっと知りたいあなたへ - 版元から一言 - トランスジェンダーの人たちは生活上の困難を抱え、様々な不合理や社会からの排除に直面しています。また、SNSを中心にトランス差別・ヘイトが急速に拡大して、トランスジェンダーの人たちの生存を脅かしています。 様々な「議論」をする前に、トランスジェンダーの人たちの「生きる現実」を知ることがなにより必要です。 「なぜ性別が社会で重視されるのか?」「トランスジェンダーとは?」「性別を変えるために何が必要?」「トランスジェンダーの人たちが直面している困難は?」「トランス差別・ヘイトがなぜ跋扈しているのか?」――。 本書は、性別を重視するいまの社会のありようを押さえたうえで、トランスジェンダーをめぐる大きなクエスチョンを21個、そこから派生するクエスチョンを65個設けています。それらの基礎的な質問から性別分けスペースにまつわる疑問、「トランス差別はいけないけれど気になる」疑問まで、語りかける文体でわかりやすく答えています。 いまの社会がどうなっていて、そこでトランスジェンダーの人たちがどんな困りごとを経験していて、それを解決するには何が必要なのか――Q&A形式でそれらを具体的に知ることができる一冊です。 - 著者プロフィール - 高井 ゆと里 (タカイ ユトリ) (著) 群馬大学准教授。専攻は倫理学。著書に『ハイデガー』(講談社)、編著に『トランスジェンダーと性別変更』(岩波書店)、共著に『トランスジェンダー入門』(集英社)、訳書にショーン・フェイ『トランスジェンダー問題』(明石書店)など。 周司 あきら (シュウジ アキラ) (著) 主夫、作家。著書に『トランス男性による トランスジェンダー男性学』(大月書店)、共著に『トランスジェンダー入門』(集英社)、『埋没した世界』(明石書店)など。
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多様性との対話 ダイバーシティ推進が見えなくするもの | 石丸沙織, 長田佳子
¥1,760
青弓社 2021年 青弓社ライブラリー ソフトカバー 240ページ 四六判 縦188mm 横128mm 厚さ16mm - 内容紹介 - LGBT、ジェンダー、移民、多文化共生、視覚障害者、貧困、生きづらさ、当事者研究、インターセクショナリティ、教育実践――様々な分野の多様性との対話を通して、それらが抱える問題点を批判的に検証し、差別構造の解消に向けた連帯と実践の可能性を探る。 目次 第1章 多様性との対話 岩渕功一 1 BLMとD&Iの取り違え 2 「多様性/ダイバーシティ推進」が見えなくするもの 3 日本での多様性/ダイバーシティ推進 4 多様性との対話 5 誰もが生きやすい社会に向けた横断的連携 6 インターセクショナリティと連帯の可能性 7 学び(捨て)の実践 第2章 ダイバーシティ推進とLGBT/SOGIのゆくえ――市場化される社会運動 新ヶ江章友 1 ダイバーシティ推進とは何か 2 経営学におけるダイバーシティ・マネジメントとは何か 3 ダイバーシティ・マーケティングとLGBT/SOGI 4 LGBTマーケティングと人権問題への意識 論点1 多文化共生がヘイトを超えるために 塩原良和 第3章 移民・多様性・民主主義――誰による、誰にとっての多文化共生か 髙谷 幸 1 多文化共生をめぐるこれまでの批判 2 多文化共生をめぐる問い――「何」から「誰」へ 3 誰にとっての多文化共生か 4 移民にとっての多文化共生か、地域にとっての多文化共生か 5 誰による多文化共生か 第4章 生活保護言説における「日本人」と「外国人」を架橋する 河合優子 1 生活保護制度の歴史と現状 2 生活保護言説と「日本人」 3 生活保護言説と「外国人」 論点2 メディア研究における「ダイバーシティ」の現在 林 香里 第5章 「生きづらさからの当事者研究会」の事例にみる排除の多様性と連帯の可能性 貴戸理恵 1 「個人化・リスク化した排除の苦しみ」としての生きづらさ 2 当事者研究での個別性・多様性と共同性のつながり 3 多様性に立脚したつながりとは何か 第6章 「同じ女性」ではないことの希望――フェミニズムとインターセクショナリティ 清水晶子 1 「#トランス女性は女性です」 2 インターセクショナリティ 3 「交差」の誤解 4 同じではないことの連帯 論点3 みえない「特権」を可視化するダイバーシティ教育とは? 出口真紀子 第7章 共生を学び捨てる――多様性の実践に向けて 小ヶ谷千穂 1 「共生のフィールドワーク」という授業について 2 体当たりの邂逅――「正しい共生」のプレッシャーからの解放? 3 距離をとられる、という経験――自らのまなざしに気づく 4 ミックス・ルーツの学生の経験――自分自身を問い直す 第8章 アート/ミュージアムが開く多様性への意識 村田麻里子 1 多様性の砦としてのアート/ミュージアム 2 多様性の奨励とその課題 3 アート/ミュージアム実践が投げかける問い 論点4 批判にとどまらず具体的に実践すること 松中 権[インタビュー聞き手:岩渕功一] あとがき 岩渕功一 - 版元から一言 - 多様性の時代だと言われる。多様な背景をもつ人材の活用が革新的な創造性を高めるとして、企業、政府、地方自治体、教育機関、NGO/NPO、市民団体で多様性/ダイバーシティを奨励する動きが活発化している。 多様性/ダイバーシティの推進は女性、LGBT、障害者などの社会的なマイノリティの存在に目を向ける一方で、有用で受け入れやすい差異を選別化することで、いまだ続く差別・不平等を見えなくするとともに、新たな包摂と排除を生み出してもいる。 多様性/ダイバーシティの推進により建設的に取り組むには、構造化・制度化された差別・不平等の複雑な作用を理解して、様々な差異を平等に包含する方途を考え続けること、つまり、多様性と対話することが必要不可欠である。 LGBT、ジェンダー、移民、多文化共生、視覚障害者、貧困、生きづらさ、当事者研究、インターセクショナリティ、教育実践――様々な分野の多様性との対話を通して、それらが抱える問題点を批判的に検証し、差別構造の解消に向けた連帯と実践の可能性を探る。 - 著者プロフィール - 岩渕 功一 (イワブチ コウイチ) (編著) 関西学院大学社会学部教授。専攻はメディア・文化研究。著書にResilient Borders and Cultural Diversity(Lexington Books)、『トランスナショナル・ジャパン』(岩波書店)、編著書に『〈ハーフ〉とは誰か』(青弓社)など。
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生理用品の社会史 | 田中 ひかる
¥1,056
KADOKAWA 2019年 角川ソフィア文庫 ソフトカバー 304ページ 文庫判 - 内容紹介 - 日本女性の生活を大きく変えた画期的な商品「アンネナプキン」。その誕生は、ほんの50年ほど前のことである。女性の社会進出を支えた商品開発の裏には、一人の女性経営者の一筋縄ではいかないドラマがあった――。植物、絹、脱脂綿、ビクトリヤなど、不便で不快だった古い経血処理の方法から、欧米ほどタンポンの使用が普及しなかった理由まで。一大ビジネスへと発展した、女性史にとどまらない日本社会の変遷を明らかにする。 目次 はじめに 第一章 ナプキンがなかった時代の経血処理―植物から脱脂綿まで 第二章 生理用品の進化を阻んだ月経不浄視―「血の穢れ」の歴史 第三章 生理用品が変えた月経観―アンネナプキンの登場 第四章 今日の生理用品―ナプキンをめぐる“イデオロギー” おわりに 文庫版あとがき 引用・参考文献 生理用品関連年表 アンネ社広告資料 - 著者プロフィール - 田中 ひかる (タナカ ヒカル) (著/文) 1970年東京生まれ。学習院大学法学部卒業後、非常勤講師を経て専修大学大学院修士課程で歴史学、横浜国立大学大学院博士課程で社会学を専攻(学術博士)。
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月経と犯罪 “生理”はどう語られてきたか | 田中 ひかる
¥2,640
平凡社 2020年 ハードカバー 192ページ 四六判 - 内容紹介 - 「女は生理の時、カッとして頭にきて何をするのかわからない」――。 女性は生理があるから罪を犯す、と信じられていた時代があった。 その言葉の根拠を確かめ、信じられてきた理由を歴史的資料からひもとく。 〈目次〉 第1章 犯罪における月経要因説と「新しい女」たち アナーキスト大杉栄を刺した「新しい女」神近市子/「変態性慾」研究の先駆者クラフト=エビング/月経時の芝居見物は精神疾患を招くのか/「タブー」から「富国強兵の礎」へ/女優松井須磨子――自殺現場に残された「一滴の美しい血」/渡辺淳一『女優』に描かれた須磨子の月経/松井須磨子、自殺の真相/与謝野晶子も襲われた「ある時期」の猛烈なヒステリー 第2章 女性犯罪論の起源 ロンブローゾ――売春婦は生まれながらの犯罪者/現行犯逮捕の八割以上が月経中?/明治の女子教育論――女子は健康で鈍なのがよい/日本初の女性犯罪論『犯罪論及女性犯人』/女性犯罪論の古典『婦人と犯罪』/「幻の名著」はなぜ生まれたのか/婦人問題論争と『婦人と犯罪』 第3章 猟奇犯罪の時代 猟奇的事件が多発した1920年代 女性犯罪の三要素――ヒステリー・痛覚の鈍麻・月経/『近代犯罪研究』――犯罪の影には女あり/女は「詐欺顔」/経血の害悪――植物は枯れ、金属は錆び、犬は発狂/放火は女の犯罪か/女の取り調べの際には四週間待て?/「性的関係」――大逆事件から万引きまで/「虚偽の強姦」多発の真相/男の「幻想」、女の「内面化」「利用」 第4章 生理休暇と精神鑑定 女性教員の「生理的故障」/「女工」たちの深刻な「母性破壊」/「職業婦人に生理休暇を!」/のちの首相片山哲「月経要因説」を語る/「生理休暇」をめぐる攻防/「生理休暇」取得率0.9%の背景/初経教育の質が、女性の人生を左右する/月経が必ず問われた精神鑑定/「婦人犯罪」へのアンチテーゼ 第5章 月経要因説の精神医学的解釈 魔女、悪女、毒婦、狐/「レズビアンのサド・マゾ」はホルモンの影響か/女子受刑者たちの犯罪時月経状態/初潮・無月経が犯行を決定づけるのか/月経周期の矛盾/はじめに月経不順あり/「謎の注射」を無視した精神鑑定/月経は「性的葛藤」を想起するか/月経時の女の仕事を信用しない女 第6章 月経要因説の心理学的解釈 「迷信」が月経時の犯罪を招くのか/『旧約聖書』や『コーラン』も忌み嫌った「血の穢れ」/なぜ女だけが「血の池地獄」に堕ちるのか/日本初の女性検事は女をどう見ていたか/「ネガティブな気分」はなぜ起こるのか/偽薬効果が意味するもの 第7章 「犯罪におけるPMS要因説」 「月経前症候群」が「月経前不快気分障害」に改められた理由/毛深い女は犯罪者予備軍? - 著者プロフィール - 田中 ひかる (タナカ ヒカル) (著/文) 歴史社会学者
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いろいろ いろんな からだの ほん | メアリ・ホフマン, ロス・アスクィス (イラスト), 杉本詠美 (翻訳)
¥2,090
少年写真新聞社 2019年 ハードカバー 40ページ 22.9 x 1 x 30.7 cm - 内容紹介 - 生まれてからおとなになるまで「からだ」は成長し、変化する。そのあとも死ぬまで変化し続ける。人間の「からだ」についていろいろな疑問や考えるヒントを楽しいイラストで紹介する絵本です。自分の「からだ」がどんなにすばらしいか、この絵本を読んで考えてみよう。
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「女の痛み」はなぜ無視されるのか? | アヌシェイ・フセイン, 堀越英美(翻訳)
¥2,200
晶文社 2022年 ソフトカバー 352ページ 四六判 縦186mm 横130mm 厚さ23mm - 内容紹介 - 臨床試験で女性が排除される、コロナ禍でマイノリティの人々が受ける影響、アメリカで中絶の権利が争点になる理由は 著者がアメリカで出産したとき、彼女は死にかけた。痛み止めが効いていないと訴えても無視された。痛みを証明するために手術台まで歩くように言われた。 彼女はこの医療トラウマ体験をきっかけに、女性の痛み、特に有色人種の訴えがまともに受け止められない事実を、 あらゆるデータ、記事、証言をもとに執筆した。 さらにコロナ禍で女性、マイノリティの人々が受けた甚大な影響も考察する。 初期設定が男性になっている現状は、医療ケアにおいても例外ではない。 「女の痛み」が軽視されている事実と、医療ケアにおける性差別・人種差別に切り込むノンフィクション。 「女性の痛みという概念が、世界中でどのように捉えられ、管理され、考えられているかを見れば、それは常に男性や『文化』によって定義されてきたことがわかる。多くの社会では男性による支配が続いていることから、女性の痛みや苦しみに対する世界の認識は、女性ではなく、男性によって確立されてきたのだ」(「日本の読者へ」より) 「困惑させられたのは、『女性は自分の健康や身体について決めることができない』と、いまだに世間が思い込んでいる点だ」(5章「知られざる女性の身体」より) 「私はできる限り、フェミニズムと平等主義を重んじる結婚生活を送っていた。そんな夫婦ですら、コロナは伝統的な男女の断層を露呈させた。ロックダウンで誰もが自宅で仕事をするようになれば、より稼ぎの多い人の仕事が優先されるようになる。気づけば夫は自宅のオフィスを占拠しており、私はやむをえず家庭という領域に追いやられた。まるで、1950年代の主婦みたいに」(5章「知られざる女性の身体」より) (目次) 日本の読者へ 本書に寄せて――ジェシカ・ヴァレンティ はじめに 第1章 私が出会った最初のフェミニスト 第2章 バングラデシュ女子、キャピトル・ヒルに立つ――アメリカでの中絶の権利をめぐる混沌 第3章 気のせいにされる有色人種の女性の痛み 第4章 見えない症状 第5章 知られざる女性の身体 第6章 コロナ禍で妊娠するということ 第7章 代替手段の模索 第8章 自分の体の声の一番の代弁者になるには 第9章 自分の声を届ける おわりに 謝辞 訳者あとがき 出典 - 著者プロフィール - アヌシェイ・フセイン (アヌシェイフセイン) (著/文) 著述家、女性の健康関連の法律に重点的に取り組むフェミニスト政策アナリスト。CNN、MSNBC、PBSにレギュラー出演し、Forbes、CNN.com、Daily Beast、Mediumに政治・ジェンダー・人種に関する寄稿を行う。また、ポッドキャスト「Spilling Chai」のホストも務める。本書が初の著書となる。 堀越英美 (ホリコシヒデミ) (翻訳) 1973年生まれ。文筆家。早稲田大学第一文学部卒。著書に『エモい古語辞典』(朝日出版社)、『女の子は本当にピンクが好きなのか』(河出文庫)、『不道徳お母さん講座』(河出書房新社)、『スゴ母列伝』(大和書房)など、訳書に『自閉スペクトラム症の女の子が出会う世界』(河出書房新社)、『だからわたしはここにいる』(フィルムアート社)、『ギタンジャリ・ラオ STEMで未来は変えられる』(くもん出版)、 『ガール・コード』(Pヴァイン) など。
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【新装版】棗椰子の木陰で 第三世界フェミニズムと文学の力 | 岡 真理
¥2,420
青土社 2022年 296ページ 四六判 - 内容紹介 - 新しい世界を夢みる力 爆撃されるイラクの街に生い茂った棗椰子のイメージが、世界を変える夢の力を呼び覚ます。第三世界の女性たちの声に耳を澄まし、フェミニズムを大きく動かした著者が、文学や映画をはじめとして、出来事の深淵に降りゆく想像力をもつさまざまな試みのなかに、新たな世界への扉をさぐりあてる。
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姫とホモソーシャル 半信半疑のフェミニズム映画批評|鷲谷 花
¥2,640
青土社 2022年 ソフトカバー 272ページ 四六判 - 内容紹介 - 型にはめれば分かりやすい。でも、型にはめなければもっと深く分かる! 変えられない筋書きも、捉え直してみせる。アクション、ホラー、時代劇、アニメ……。フェミニズムが鋭く批判する家父長制の文脈だけでは語りきれない、女性キャラクターの自発性をどのように取り出せるのか。白雪姫もシンデレラも好きだったあなたへ送る、異色のフェミニズム批評。
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私の「結婚」について勝手に語らないでください。|クァク・ミンジ, 清水 知佐子(翻訳)
¥1,760
SOLD OUT
亜紀書房 2023年 ソフトカバー 248ページ 四六判 縦188mm 横130mm 厚さ18mm - 内容紹介 - 結婚しても、しなくても 私たちは結局“ひとり”を共に生きていく生き物なのだ。 ──前田エマさん(モデル) 「非婚」は結婚の「否定」ではない。 人と違う生き方に、大きな愛を贈ってくれる本。 ──安達茉莉子さん(作家・文筆家) * * * * * 累積聴取回数2000万回超! 話題のポッドキャスト「ビホンセ」制作兼進行役による〝結婚しない〟という選択。 --------- 「結婚しないんですか?」 「子供がほしくはないですか?」 「ひとりで寂しくないですか?」 ……非婚に対する偏見はまだまだ根深い。 * * * * * 非婚は結婚の反対ではなく、多様な生き方のひとつ。 自分の選んだ道に責任を持ち、時には弱音を吐いて傷つきながらも、自分を愛し、前に向かって進んでいく。 本書には、非婚でも結婚でも事実婚でも同性婚でも、人それぞれの生き方を尊重し、みんなが穏やかで楽しく暮らせるための温かなエッセンスが満載。 --------- 「結婚=幸せ」だなんてファンタジーじゃない?! 自分で選んで決めればいい。 目次 ■プロローグ──こんなテーマで本を書くなんて 非婚宣言──何もそんな決心までしなくても ■こんにちは、非婚です ■住む家のために結婚はできない ■結婚までは愛せない、あなたを愛したのだ ■非婚主義者のくせになぜ恋愛するのか ■甥や姪がそんなにかわいいなら自分の子を産めばいい ■ロングタイム・ノ氏ですね 非婚の冠婚葬祭──幸せと悲しみを分かち合うのに損も得もない ■私が暮らすあの家 ■私もお母さんみたいに生きたい ■非婚者の結婚式 ■非婚で生きるにはしっかり稼がないと ■私のお葬式で棺を担いでくれますか 非婚ライフ──自分と連れ添って生きる ■大田で生まれた色黒の子 ■私たちは互いの体を観察しながら成長した ■私のトリセツ ■好きだから線を引いたんです ■好みの発見 ■おばあさんの瞳にチアーズ! ■夫はいません。でも、推しはいます 非婚共同体──完璧に理解できなくても完全に愛することはできる ■ブックフェアに母が来た ■一緒に越えていく日曜日 ■笑っているうちに一緒にいかだの上に、しかもこんなに遠くまで ■知らない犬と飛行機に乗った ■あなたが死んだら ■私の祖母 ■どうしてあなたが非婚をとやかく言うんですか ■エピローグ ■訳者解説 - 著者プロフィール - クァク・ミンジ (クァク ミンジ) (著/文) 韓国・大田生まれ。高麗大学日本語・日本文学科卒業。エッセイスト、コラムニスト。広告やテレビ番組、モバイルコンテンツの制作者。非婚ライフ可視化ポッドキャスト「ビホンセ」の制作者兼進行役を務める。独立出版レーベル「アマルフェ」の代表でもある。比較的一人世帯の多いソウル・解放村在住。著書に『歩いてお祭り騒ぎの中へ』『私は悲しいとき、ポールダンスを踊る』などがある。 清水 知佐子 (シミズ チサコ) (翻訳) 和歌山生まれ。大阪外国語大学朝鮮語学科卒業。読売新聞記者などを経て、翻訳に携わる。訳書に、キム・ハナ、ファン・ソヌ『女ふたり、暮らしています。』、キム・ハナ『話すことを話す』『アイデアがあふれ出す不思議な12の対話』(以上、CCCメディアハウス)、朴景利『完全版 土地』、イ・ギホ『原州通信』(以上、クオン)、タブロ『BLONOTE』(世界文化社)などがある。
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アンカット・ファンク 人種とフェミニズムをめぐる対話 | ベル・フックス, スチュアート・ホール(著), 吉田 裕(訳)
¥2,970
人文書院 2023年 ソフトカバー 250ページ 四六判 縦188mm 横132mm 厚さ18mm - 内容紹介 - カルチュラル・スタディーズとフェミニズムの出会い ふたりの思想家がポール・ギルロイの仲介のもと1996年のロンドンで対話した。フェミニズムとカルチュラル・スタディーズそれぞれの隆盛を担い、世界的知識人となったベル・フックスとスチュアート・ホール。ともに黒人のアカデミシャンでありながら、来歴と経験を大きく異にし世代も違う男女は、深く共感しながらも時に鋭く言葉を交わす。ジェンダー、人種、家父長制、アイデンティティ・ポリティクスなど、20世紀後半の社会状況を踏まえた議論の数々と、それらに自らの人生を重ねた繊細な語りは、四半世紀の時を超えて新鮮な発見とアクチュアリティをもたらす。 「フェミニズムは政治についての女たちの考え方を変えた以上に、わたしの政治についての考え方を変えてしまった。」(ホール) 「場所を失うという感覚こそが、まさにフェミニズムに関して多くの男たちが恐れ続けていることなんですよ。ものの見方においてはっきりとした変化が求められているのは、性差別という観点から自身に染みついた考え方を解体するプロセスなのです。」(フックス) - 目次 - 序文 ポール・ギルロイ はじめに ベル・フックス 一 フェミニズムとの出会い 二 家父長制と人種 三 戯れ、死、病 四 アイデンティティ・ポリティクス、あるいは自己を語ることの不可能性 五 男らしさと不安 六 フェミニズムと連帯の可能性 訳者あとがき 人名索引 - 著者プロフィール - ベル・フックス (ベルフックス) (著) 1952年、ケンタッキー州生まれ。2021年没。アフリカ系アメリカ人のフェミニスト。ニューヨーク市立大学シティカレッジなどで英米文学やフェミニズムを教える。日本語訳に、『フェミニズムはみんなのもの』(堀田碧訳、新水社、新版:エトセトラブックス)、『とびこえよ、その囲いを』(里見実ほか訳、新水社)、『アメリカ黒人女性とフェミニズム』(大類久恵監訳、柳沢圭子訳、明石書店)、『アート・オン・マイ・マインド』(杉山直子訳、三元社)、『オール・アバウト・ラブ』(宮本敬子、大塚由美子訳、春風社)、『ベル・フックスの「フェミニズム理論」』(野﨑佐和、毛塚翠訳、あけび書房)など。 スチュアート・ホール (スチュアート ホール) (著) 1932年、ジャマイカ生まれ。2014年没。イギリスの文化理論家。バーミンガム大学の現代文化研究センターを率い、カルチュラル・スタディーズを確立した。著書に、Policing the Crsisis' Mugging, the State and Law & Order(Chas Critcherらとの共著、Palgrave, 1978)、The Hard Road to Renewal: Thatcherism and the Crisis of the Left(Verso, 1988)、Essential Essays, Vol. 1 & Vol. 2(Duke University Press, 2019)など。邦訳に、『親密なるよそ者』(吉田裕訳、人文書院)など。 吉田 裕 (ヨシダ ユタカ) (訳) 東京理科大学准教授。専門はカリブ文学及び思想、文化研究。著書に『持たざる者たちの文学史 帝国と群衆の近代』(月曜社)。訳書にノーム・チョムスキー『複雑化する世界、単純化する欲望 核戦争と破滅に向かう環境世界』(花伝社)、ニコラス・ロイル『デリダと文学』(共訳、月曜社)、ポール・ビュール『革命の芸術家 C・L・R・ジェームズの肖像』(共訳、こぶし書房)、ジョージ・ラミング『私の肌の砦のなかで』(月曜社)、スチュアート・ホール、ビル・シュワルツ『親密なるよそ者』(人文書院)など。
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ギャラリーストーカー 美術業界を蝕む女性差別と性被害|猪谷千香
¥1,760
中央公論新社 2023年 ソフトカバー 232ページ 四六判 - 内容紹介 - 美大卒業後、作家として自らを売り出したいと願い、一人ギャラリーに立つ若い女性作家につきまとうギャラリーストーカー。美術業界の特殊なマーケットゆえに、被害から免れることが極めて難しいという異様な実態がある。孤軍奮闘する若い女性作家につきまとうのは、コレクターだけではない。作家の将来を左右する著名なキュレーター、批評家、美術家など、業界内部の権力者によるハラスメント、性被害も後を絶たない。煌びやかな美術業界。その舞台裏には、ハラスメントの温床となる異常な構造と体質、伝統があった! 弁護士ドットコムニュース編集部が総力を挙げて取材した実態と対策のすべて。 - 著者プロフィール - 猪谷千香 (イガヤチカ) (著/文) いがやちか 東京生まれ、東京育ち。明治大学大学院博士前期課程考古学専修修了。産経新聞文化部記者などを経た後、ドワンゴでニコニコ動画のニュースを担当。2013年からハフポスト日本版でレポーターとして、さまざまな社会問題を取材。2017年から弁護士ドットコムニュース編集部で記事を執筆。著書に『日々、着物に割烹着』、『つながる図書館』『町の未来をこの手でつくる 紫波町オガールプロジェクト』など。
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エトセトラ VOL.8|鈴木みのり(特集編集), 和田彩花(特集編集)
¥1,430
エトセトラブックス 2022年 ソフトカバー 144ページ A5判 縦210mm 横148mm 厚さ8mm - 内容紹介 - 「アイドル」を含めたいろいろな人たちが、心身ともに健やかでいられるには-- 「アイドル」の表象、労働、消費について考える、これまでなかったことにされてきた必要で切実で多様な声を集めた特集号 フェミニズムを身近なテーマから考えるマガジン「エトセトラ」8号目の特集は、「アイドル」。自身がアイドルの和田彩花、アイドル文化を含めた表象について執筆を重ねてきた鈴木みのりを特集の編集に迎え、労働、心身の健康、ボディイメージやライフスタイルの消費、SNSを巡る諸問題に向き合い、そしてアイドルから得られる希望や喜びとは何かを探る。1408もの声が集まった「アイドルの未来のためのアンケート」も! 特集外も、ジュディス・バトラーへのロングインタビュー、「オープンレター 女性差別的な文化を脱するために」原文掲載など、残しておきたい記録に満ちた一冊。 目次 特集:アイドル、労働、リップ 特集のはじめに 鈴木みのり・和田彩花 【エッセイ】 菅野つかさ「少女時代を通して出会った世界」 野中モモ「『街いちばんのナイス・キッドたち』によせて」 藤野可織「私はいかにしてアイドルの恋愛に一喜一憂するようになったか」 犬山紙子「ファンと消費」 【創作】 岩川ありさ「わたしはこぶしを握りしめる」 【論考】 ハン・トンヒョン「矛盾に満ちた『推される人』たちにかかる負荷が少しでも減ることをいつも願っている」 上岡磨奈「アイドルとあなたとは何も変わらない、同じ人間である」 田中東子「アイドルたちは何を開示しているのか?」 【写真】 藤岡亜弥「熱狂の広島、オバマがヒロシマに来た日」 【インタビュー】 竹内亜矢子「〈自分の身体と折り合いをつける〉ために試してみたいエクササイズとストレッチ」 寺嶋由芙「好きなことを好きでいるために、アイドルの問題を話していきたい」 内藤忍「働くすべての人の『労働』が、守られるために知りたいこと」 【アンケート】 わたしの“アイドル” イ・ラン/宇垣美里/エミリー/太田莉菜/温又柔/カナイフユキ/近藤銀河/佐久間裕美子/佐野亜裕美/柴崎友香/周司あきら/岨手由貴子/仲西森奈 /羽佐田瑶子/valknee/潘逸舟/丸山美佳/宮越里子/森栄喜/WAIFU 1408の声が集まった 「アイドルの未来のためのアンケート」 特集のおわりに 鈴木みのり・和田彩花 ************************************************************ 【インタビュー】 ジュディス・バトラー「反ジェンダー、反多様性にフェミニズムは抵抗する」 (聞き手:清水晶子/ 翻訳:西山敦子(C.I.P. Books)/ 企画・写真:間部百合) 【アーカイブ】 「オープンレター 女性差別的な文化を脱するために」を記録する 【寄稿】 北原恵「イトー・ターリが遺したもの――追悼展示会報告記」 【フェミリポート】 下郷さとみ「ブラジルの政治を、先住民族の女性・マイノリティの手に」 【連載】 「編集長フェミ日記」(2022年8月~10月)鈴木みのり・和田彩花 「ふぇみで大丈夫」ナガノハル/vol.4:ちゃんみな大好き 「ここは女を入れない国」伊藤春奈(花束書房)/第6回:炭鉱と女人禁制 「Who is she?」大橋由香子/第5回:日雇いで働くニコヨンの彼女 「LAST TIME WE MET 彼女たちが見ていた風景」宇壽山貴久子 私のフェミアイテム:須藤はる奈 NOW THIS ACTIVIST :門田亜里砂 etc. bookshop通信 【訂正とお詫び】 鈴木みのりさんの「はじめに」冒頭で、時系列に間違いがありました。「この内容は、ジョンヒョンさんと、同じ事務所所属で同じく自死した、IUの友人だった元f(x)のソルリのことも念頭にあったのでしょう。」の一文は、2つ目の段落の最後に入るものでした。ここに訂正とお詫び申し上げます。 前書きなど 特集のはじめに 鈴木みのり 今年の十二月、韓国のアイドルというかKポップのボーイズグループ、SHINeeのメンバー、ジョンヒョンさんの五周忌が訪れます。命日の翌月、二〇一八年の一月、韓国のグラミー賞といわれるゴールデンディスク賞で大賞を受賞した際、ソロアイドル的な立場でデビューした、卓越したシンガーソングライターであるIUがスピーチでこう述べました。〈アーティストは皆誰かを慰める仕事をしています。でも、人間として自分のことを先に考えて慰めてほしいです。表に出してはいけないと思って、逆に病気になったりつらい思いを絶対にしたりしないで欲しい〉(1)と。 その後二〇一九年十一月にIUがリリースした、傑作EPの表題曲『Love poem』の歌詞はきっと、スピーチを昇華した内容だとわたしは思いました。例えば、〈嬉しい時には喜んで悲しい時には泣く、自然なことが自然に表現できて、受け入れられてほしい〉というスピーチに対して、自然体でいるのは難しい、言葉にできない/ならない声なき声の代わりに歌は響きます。またEPで、この曲の前に置かれた『자장가』(Lullaby)は、件のスピーチの際の受賞曲『밤편지』(夜の手紙)と共に、夜を巡り、眠れない孤独に向けられていると感じられます。この内容は、ジョンヒョンさんと、同じ事務所所属で同じく自死した、IUの友人だった元f(x)のソルリのことも念頭にあったのではないでしょうか。 SHINeeのキーくんが、今年八月に出したアルバム収録の、みずから作詞したダンスポップ「I Can’t Sleep」をわたしはどう聴いたらいいのか戸惑います。かつてその時刻のキーくんのインスタライブをわたしも見たことがあったように、外が明るくなる朝四時になっても眠れないという、その歌。屋根のある部屋があること、不安なく布団にくるまれること、朝を迎えられること。そうした安全を誰もが求めているはずと思ってきたけど。 この企画でアイドルと呼ばれる存在は、歌ったり踊ったりするいわゆる「アイドル」だけでなく、特に日本や韓国のテレビ番組、音楽、映画などメディアを通して、ファンや視聴者からイメージを偶像化され、消費される、芸能産業で働く人々をわたしは想定しています。ただ、共同で特集を編集してくれた和田彩花さん、それからエトセトラブックスの松尾亜紀子さんとの協働を通して、その範囲を定めようとは考えませんでした。 エッセイ、論考、散文のような創作のような内容、健康のためのエクササイズ、労働者としての法的な権利、それぞれにとっての「アイドル」、そしてアイドルである/だった人たち、その周囲で働く人たち、活動を応援したりその表現を楽しんだりしてきたファンの人たちの声を集めたアンケート。アイドルと見なされる人々を含めたいろんな人々が、心身ともにできるだけ健やかでいられる状況が目指されるために、必要と考えられるいろんな声を集めたつもりです。読者のみなさんが考えたり休んだり、出入りしたりしやすい内容を目指したので、ささやかでも、きっかけになるとうれしいです。 (1)Kstyle「SHINee ジョンヒョンさんへの想い…IUのメッセージに涙が溢れた「第32回ゴールデンディスクアワード」」 https://news.kstyle.com/article.ksn?articleNo=2085549 ************************************************************* 特集のはじめに 和田彩花 10歳からアイドルの研修生をはじめ、16歳から25歳までアイドルグループで活動した。 アイドルになりたいという気持ちはそれほど強くなかったため、特に研修期間は習い事の延長線上で楽しんでいた。 15歳でアイドルグループとしてデビューしてから、駅やコンビニの雑誌で自分たちを見かけるようになった。メンバーが卒業すると、大人の(当時10代半ばだった私から見て大人だった)ファンの方が目の前で泣いていた。そういった出来事から社会に出たこと、影響力というものを知った。 その後、グループはどん底といわれる時期が続いた。日本中のライブハウスを回った。お客さんが集まらず、ファンの方が会場を楽しそうに走り回っていた姿を思い出す。 それまで大きな会場でコンサートをしたいと夢を語ったけれど、ライブハウスを巡ってからは数とか大きさでは決められない価値を知った。それから、初めて自分の心がおかしくなってしまう気がしたけど、幼い頃から聞かされていた「何があってもステージに立つ」という根性論で乗り越えた。 20歳前後、どうしたら大人になれるかを考えていた。前髪を伸ばした。周囲は、当たり前のように理想の恋愛や結婚観を語り始めたけど、私は当たり前のように恋愛や結婚に興味がなかった。そして、なぜ恋愛の歌(それも多くは異性に向けられた)を歌わなければいけないのかわからなかった。 グループ名が変わった。人も入れ替わった。ここまで結構頑張ったと思っていたけれど、あるとき私の根性論が間違っていると言われた。10代から周囲に言われるまま根性論を叩き込んできたのに、私が責められた。よくわからなくなってしまって、もう一つの居場所であった美術の世界とアイドルの世界を見比べてみた。ああ、いろいろ間違っていた。 最初はうまく言葉にできなかったので、与謝野晶子さんの『「女らしさ」とは何か』をスタッフの方に送って心のモヤモヤを代弁してもらった。そうこうしているうちに心が壊れて、人の痛みを知った。そうなってもなお、根性論から抜け出せず助けを求められなかったので自分の首を締め続けるしかなかった。 アイドルグループを卒業して、行きすぎてしまった思考をリセットした。ときどき、消化できなかった出来事を書き出しながら、痛みに向き合っていくようにもなった。 ここまでの出来事は、ファンを敵に回すためでも、何かの団体の広告塔になっているわけでもない私の悩みの全てであり、避けられなかった現実だ。 今回、アイドルが抱える問題について様々な立場から関心を持ち続けてくれた皆さまの力をお借りしながら、アイドルという職業について考える場をいただいた。 アイドルについて考え始めると、いくつもの偏見や差別が重なること、はっきりと答えを出せない場面にも直面し、秩序を保ったステージで輝くアイドルの姿との対比に何度かくらくらした。 まずは、これまで考えることとされてこなかったアイドルにまつわる様々な出来事を知ってほしい。それらを踏まえた上で、もしよかったら一緒にアイドルの未来に向けて一歩を踏み出してくれたら嬉しい。 - 著者プロフィール - 鈴木みのり (スズキ ミノリ) (特集編集) 1982年高知県生まれ。ジェンダーやセクシュアリティの視点、フェミニズム、クィア理論への関心から小説、映画、芸術などについて「i-D Japan」「キネマ旬報」「現代思想」「新潮」「すばる」などで執筆。2018 年、範宙遊泳『# 禁じられたた遊び』に出演。近刊に『「テレビは見ない」というけれど』(共著/青弓社)。『早稲田文学増刊号 「家族」』(筑摩書房)に短編小説を寄稿。 和田彩花 (ワダ アヤカ) (特集編集) 1994年群馬県生まれ。アイドル。2009年アイドルグループ「スマイレージ」(後に「アンジュルム」に改名)の初期メンバーに選出。リーダーに就任。10年「夢見る15歳」でメジャーデビューを果たし、同年「第52回日本レコード大賞」最優秀新人賞を受賞。19年アンジュルム、およびHello! Projectを卒業し、アイドル活動を続ける傍ら、大学院でも学んだ美術にも強い関心を寄せる。特技は美術について話すこと。特に好きな画家は、エドゥアール・マネ。好きな作品は《菫の花束をつけたベルト・モリゾ》。特に好きな(得意な)美術の分野は、西洋近代絵画、現代美術、仏像。
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歴史を変えた50人の女性アスリートたち|レイチェル・イグノトフスキー, 野中 モモ(翻訳)
¥1,980
創元社 2019年 ハードカバー 128ページ A4変型判 縦235mm 横198mm 厚さ17mm - 内容紹介 - 「女は弱い!」としめ出されていた近代スポーツ界に飛びこみ、圧倒的な能力と粘り強さで記録と歴史をぬりかえてきた女性アスリート50人にスポットをあて、その驚くべき成績やバイタリティあふれる人生をチャーミングなイラストとともに紹介します。 女性には不可能だと言われてきたことの誤りを、鍛えぬいた身体と不屈の精神で堂々と証明したヒロインたちの姿は、若きアスリートのみならず、自分の限界をこえたいと願うすべての人を励ましてくれます。 <本書の見どころ> ●近代スポーツの歴史を切り拓いてきた、パワフルな女性アスリート50人(+α)を紹介 ●競技成績からプライベートな一面まで、エネルギーに満ちた女性アスリートたちの人生の物語を簡潔に学べます ●若手女性イラストレーターによるおしゃれなイラストが満載。ビジュアルブックとしても楽しめます ●歴史年表や筋肉解剖学、男女間の報酬とメディア格差統計など、図解コラムも充実 ●本文のおもな漢字にルビつき。未来のアスリートを応援します ●日本版だけの描きおろしイラストも多数収録! <こんな人が載っています> ガートルード・エダール(長距離水泳選手)、福田敬子 (柔道家)、トニ・ストーン(野球選手)、田部井淳子 (登山家)、ジョディ・コンラッド (バスケットボール監督)、ビリー・ジーン・キング (テニス選手)、フロー・ハイマン (バレーボール選手)、スーザン・ブッチャー (犬ぞり操縦者)、ナディア・コマネチ (体操選手)、アンジャリ・バグワット (射撃選手)、シャンタル・プチクレール (車いす陸上競技選手) 、キム・スニョン (アーチェリー選手) 、クリスティ・ヤマグチ (フィギュアスケート選手)、ミア・ハム (サッカー選手)、セリーナ・ウィリアムズ (テニス選手)、ニコラ・アダムズ (ボクサー)、マリアナ・パホン (BMX自転車選手)、シモーネ・バイルズ (体操選手)など… 目次 False - 著者プロフィール - レイチェル・イグノトフスキー(Rachel Ignotofsky) アメリカ・ニュージャージー出身、カンザス在住の若手女性イラストレーター。2011年にアート・グラフィックデザインの専門学校タイラー校を優秀な成績で卒業し、その後は特に歴史や科学、また教育、ジェンダーなどをテーマにしたイラストを多く書いている。著書に「Women in Science」「I love Science」「PLANET EARTH」(いずれも10 Speed Press)がある。 野中モモ(のなか・もも) 翻訳者・ライター。訳書にロクサーヌ・ゲイ『飢える私 ままならない心と体』(亜紀書房、2019年)、レイチェル・イグノトフスキー『世界を変えた50人の女性科学者たち』(創元社、2018年)、ダナ・ボイド『つながりっぱなしの日常を生きる ソーシャルメディアが若者にもたらしたもの』(草思社、2014年)など。著書に『デヴィッド・ボウイ 変幻するカルト・スター』(筑摩書房、2017年)、共編著書に『日本のZINEについて知ってることすべて 同人誌、ミニコミ、リトルプレス 自主制作出版史1960 ~ 2010年代』(誠文堂新光社、2017年)がある。
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エトセトラ VOL.5|小山内園子(責任編集), すんみ(責任編集)
¥1,430
エトセトラブックス 2021年 ソフトカバー 128ページ A5判 縦210mm 横148mm 厚さ6mm - 内容紹介 - フェミニストが韓国ドラマを語り、 フェミニズムで韓国ドラマを知る 韓国ドラマは一体なぜこんなにも私たちを熱くするのか? 数々の名ドラマが生まれてきた背景を探り、文化をアップデートしてきた女性たちのことばを聴く。進みつづける韓国ドラマに、私たちも続けるはず。 目次 特集:私たちは韓国ドラマで強くなれる はじめに 小山内園子 【韓国ドラマの今】 オ・スギョン「#MeToo運動後に韓国ドラマで描かれた女性の物語」(承賢珠訳) ファン・ギュンミン「進化するヒロインたち:韓国ドラマにおける女性像の変遷」 【読者アンケート】 あなたがフェミニズムを感じるドラマ 【韓国ドラマを知る】 韓国ドラマと韓国社会・女性史年表(作成:山下英愛) 金香清「韓国ドラマと言論弾圧の歴史ーー『砂時計』が週4放送だった理由」 成川彩「視聴者の声に敏感な韓国のドラマ作り」 木下美絵「飾らない、飾る必要もない、女性たちの結婚・出産ストーリー」 韓国の女性たちが選ぶ〈両性平等メディア賞〉とは 韓国ドラマの「企画意図」を読む 【インタビュー】 チョン・セラン「ドラマ『保健教師アン・ウニョン』について一問一答」 山下英愛「韓国フェミニズム研究者が語る、ドラマと女性たちの結びつき」 イ・ラン「固定観念をひっくり返してみたくて私はドラマをつくってきた」 【私が好きなドラマと台詞】 松田青子✕『ハイエナ』 小林エリカ✕『愛の不時着』 今井亜子✕『椿の花咲く頃』 アンティル✕『宮廷女官チャングムの誓い』 温又柔✕『愛の不時着』 金承福✕『美しき人生』 【コラム】 河野真理江「『メロ』と『悪女』――韓国宮廷時代劇についての覚書」 西森路代「韓国ドラマのビジュアルは、なぜ日本でラブコメ風になってしまうのか」 【対談】 田房永子✕柚木麻子「私たちは日本のドラマでも強くなれる?」 【編集部座談会】 変化し続ける韓国ドラマにこれからもついていきます! おわりに すんみ 【連載】 編集長フェミ日記 2020年11月~2021年4月 小山内園子・すんみ (新連載!)ふぇみで大丈夫 ナガノハル/vol.1:女は経済的自立で自由になるか? ここは女を入れない国 伊藤春奈(花束書房)/第3回:甲子園と女人禁制 Who is she? 大橋由香子/第3回:乳を売る彼女 LAST TIME WE MET彼女たちが見ていた風景 宇壽山貴久子 私のフェミアイテム 森本優芽 NOW THIS ACTIVIST 津賀めぐみ etcbookshop通信 【寄稿】 いちむらみさこ「感動ビジネスと家父長制組織のオリンピック・パラリンピック」 岩川ありさ「呼びかけと応答――フェミニズム文学批評という革命」 - 著者プロフィール - 小山内園子 (オサナイ ソノコ) (責任編集) 1969年生まれ。東北大学教育学部卒業。NHK報道局ディレクターを経て、延世大学などで韓国語を学ぶ。訳書に、姜仁淑『韓国の自然主義文学』(クオン)、キム・シンフェ『ぼのぼのみたいに生きられたらいいのに』(竹書房)、チョン・ソンテ『遠足』(クオン)、ク・ビョンモ『四隣人の食卓』(書肆侃侃房)、キム・ホンビ『女の答えはピッチにある 女子サッカーが私に教えてくれたこと』(白水社)、イ・ミンギョン『私たちにはことばが必要だ』『失われた賃金を求めて』(すんみとの共訳・タバブックス)、チョ・ナムジュ『彼女の名前は』(すんみとの共訳・筑摩書房)、カン・ファギル『別の人』(エトセトラブックス)がある。 すんみ (スンミ) (責任編集) 翻訳家・ライター。早稲田大学大学院文学研究科修了。訳書にキム・グミ『あまりにも真昼の恋愛』(晶文社)、チョン・セラン『屋上で会いましょ う』(亜紀書房)、共訳書にリュ・ジョンフン他『北朝鮮 おどろきの大転換』(河出書房新社)、イ・ミンギョン『私たちにはことばが必要だ フェ ミニストは黙らない』『失われた賃金を求めて』(タバブックス)、チョ・ナムジュ『彼女の名前は』(筑摩書房)などがある。
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エトセトラ VOL.4|石川優実(責任編集)
¥1,430
エトセトラブックス 2020年 ソフトカバー 128ページ A5判 縦210mm 横148mm 厚さ6mm - 内容紹介 - フェミマガジン4号目のテーマは「女性運動とバックラッシュ」! #KuToo運動の石川優実とともに、女性の運動を知る特集号。 70年代ウーマンリブ以降日本で運動してきた女性たちの話に耳を傾け、エッセイや漫画で女性運動史を学び、そして女性が声をあげる度に毎度起きてきた「バックラッシュ」とは一体何か考える論考も充実。600人の読者が参加した「あなたの#MeTooと怒りをきかせてください」アンケートをはじめ、ハイヒール着用について大手企業25社へのアンケート、漫画表現について出版各社へも質問しています。 声をあげ立ち上がってきた女性たちと連帯し、運動を実践する一冊です! 目次 特集:女性運動とバックラッシュ 声をあげ立ち上がった女たちの年表(作成:大橋由香子) 【インタビュー:運動の女性たちにきく】 米津知子 山田満枝 高木澄子 福島みずほ 正井禮子 【写真・エッセイ】 松本路子 【コラム:女たちの運動史】 佐藤繭香/サフラジェット 大島史子/女性参政権運動 柚木麻子/青鞜 伊藤春奈(花束書房)/炭鉱女社会 大橋由香子/中ピ連 斉藤正美/メディアの中の差別を考える会 小川たまか/性暴力を許さない女の会 【論考:運動とバックラッシュ】 斉藤正美・山口智美 三浦まり 飯野由里子 北原みのり 【#MeTooアンケート】 600人が答えた「あなたの#MeTooと『怒り』についてのアンケート」 【#KuTooアンケート】 職場でのヒール着用について企業25社にアンケート 【対談】 伊藤詩織✕石川優実 【鼎談】 飯田光穂✕遠藤まめた✕石川優実 【表現とジェンダーバイアスを考える】 論考:楠本まき「言葉/思考/記録/行動」 出版社アンケート 【アンケート】 疲れないで運動をつづけていく方法 【連載】 編集長フェミ日記 石川優実 ここは女を入れない国 伊藤春奈(花束書房)/第2回:歌舞伎と女人禁制 Who is she? 大橋由香子/第2回:捕まってしまった彼女 LAST TIME WE MET彼女たちが見ていた風景 宇壽山貴久子 私のフェミアイテム nichinichi NOW THIS ACTIVIST 女たちの戦争と平和資料館(wam) etcbookshop通信 Feminist Report 塚原久美「アフターコロナの世界の中絶」 【詩】 モジャ・カーフ/相川千尋訳 「ヒジャブ・シーン#7」「食器を洗ってくれる男が好きだ」 前書きなど はじめに 石川優実 「バックラッシュ」という言葉を私が知ったのは、#KuTooという運動を始めた頃だろうか。 「フェミニズムが盛り上がった後には必ずと言っていいほど揺り戻しがある、それが私は怖い」 そう言っている女性がいて、私はその日初めてバックラッシュというものの存在を認識した。2019年6月、まさに私はそのバックラッシュ真っ最中だったように思う。 「#KuTooは女性差別に対する運動です」そう明言して以降、私や#KuTooにはずっとバックラッシュが起こっている。デマをばらまく、孤立させようとする、嫌がらせリプライを毎日送る、運動が失敗したということにする(厚労省のパンフに掲載され、企業も運動の影響を受けフラットシューズもありにした、という報道があったにもかかわらず……!)、私の性格が悪いから賛同者が増えないということにする(署名は3万集まったにもかかわらず……!)、「死ね」という言葉を投げつける……。 でも、なんだろう。これってあんまり、「初めての経験」という感じがしない。これまでにもこんなようなことは薄っすらと、しかしずっと経験してきたような気がする。 女だという理由で嫌がらせをされたり、セクハラを受けたり、噓をついていると決めつけられたり、男に性的に見られたいに決まっていると思われたり、仕事の能力がないということにされたり。思い返せば、生きてきた33年間ずっとバックラッシュ的なものに苦しめられていたような気がしてならない。 さて、ではそのバックラッシュにはどんな効果(?)があるのだろうか? 私がフェミニズムに出会い、性差別への反対活動を始めた頃、応援してくれる知人にこう言われたことがある。 「これからは自分自身との戦いになると思う。いつでも自分自身を信じて頑張って」と。 今になってとてもその言葉の意味を痛感する。バックラッシュには、自分を信じさせなくなる効果があると思う。自分は間違っているんじゃないかと思わせる効果があると思う。自分のことを大嫌いにさせる効果があると思う。そして、もしその効果通りに私自身がなったとしたならば、私は女性運動の全てをやめるだろう。私自身をもやめてしまうかもしれない。 でも、もう一度よくよく考えてみよう。フェミニズムに出会うまでの約30年間、私はずっと自分を信じられなかったし、自分は間違っているんじゃないかと思ってきたし、自分のことが大嫌いだった。ずっとずっと、女性差別というバックラッシュを受け、まんまとその効果通りの自分で生きてきたのだった。 でも、フェミニズムと出会った今はもう違う。 #KuTooで受けたバックラッシュとずっと受けてきた性差別がほぼ重なるように、これらは奴らの「いつものやり口」なのだ。 女性を自分たちの都合の良い存在でいさせるため、自信を無くさせ、主体性を無くさせるためのいつものやり口。 ウーマンリブの田中美津さんは著書の中で、「リブは『男は敵だ』と煽っているとよく報じられました。そんなこと一度だって言ったことないのに」と書いていた。ほら、ここでもおんなじ、「いつものやり口」が使われている。#KuTooだって、一度も男が悪いと言ったことはないのに石川優実は男性差別主義者だ、とか言われている。 「なんだよ、こいつら誰が何やっても女性運動にはおんなじこと言ってんじゃん」と知った私は、とても心が楽になった。むしろ、これは付き物だ。私が正しいことをしている証拠のようにも思えた。 これって、#MeTooをした時の「私も同じように自分を責めていました」と同じ現象なのではないか。その事実を知ることによって、みんな同じなんだということを知ることによって、これは私側の問題じゃないんだということに気がつくことができた。 問題はいつでも、嫌がらせやハラスメント、性暴力や性差別をする側にある。 私のせいでバックラッシュや性差別は行われているのではない。それに気がついた時の安心感、心強さ。それをもうすでに#MeTooをはじめとする様々な連帯で体験していたではないか。 ということで、そんな例を、たくさん集めてみようと思う。これまでの女性運動にはどんなことがあって、どんなバックラッシュがあったのか。知識は勇気になる。知識は優しさになる。知識は自分を助けてくれる。知識は他の誰かのことを助けることができる。 フェミニストは過激だから賛同が得られない? 日本のフェミニズムは本質からずれている? そんな攻撃的な言葉遣いじゃ誰も聞いてくれない? 認めてもらうには配慮を? これまで言われてきたことは、本当にそうなのだろうか。 歴史と事実をぜひ、知りたい。それを知ることによって、私は、私たちは自分自身を信じることをやめずに、時に楽しく、時に激しく、女性運動をし続けていくことができるのではないかと思う。 - 著者プロフィール - 石川優実 (イシカワ ユミ) (責任編集) 1987年生まれ、愛知県出身。俳優、アクティビスト。18歳から芸能活動を開始。2017年、グラビアアイドル時代に受けた性被害を告発し、#MeTooムーブメントの中で話題となる。2019年、職場で女性のみにヒールやパンプスを義務付けることは性差別であるとして#KuToo運動を展開、厚生労働省へ署名を提出した。この運動は世界中のニュースで取り上げられ、同年10月英BBCにより世界の人々に影響を与えた「100 Women」に選出された。著書に『#KuToo : 靴から考える本気のフェミニズム』(現代書館)。