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ユリイカ2026年1月号 特集=アリ・アスター -『ヘレディタリー/継承』『ミッドサマー』『ボーはおそれている』、そして『エディントンへようこそ』へ-
¥1,980
青土社 2025年 ソフトカバー 254ページ - 内容紹介 - 『エディントンへようこそ』公開記念! 『ヘレディタリー/継承』(2018)、そして『ミッドサマー』(2019)によって世界中の注目を集めたアリ・アスターは、不安定な精神、居心地の悪さの極致としての恐怖や不条理なユーモア、悪夢のような映像によって個人的な物語を紡ぎ続けている。母親の埋葬に向かう旅路を描いた『ボーはおそれている』(2023)から2年、来たる12月12日にはコロナ禍のアメリカを舞台とした『エディントンへようこそ』が公開される。社会の分断を主題とした本作は、その営為においていかに位置づけられるのか。変化する「不安症」を見据える特集号。 line2.gif 特集*アリ・アスター――『ヘレディタリー/継承』『ミッドサマー』『ボーはおそれている』、そして『エディントンへようこそ』へ ❖インタビュー 映画をつくり、世界を構築する / アリ・アスター 聞き手=編集部 ❖閉ざされた街へようこそ 流し流される日常――政治的ホラーコメディのいま / 新田啓子 エディントンとウェスタン――アリ・アスターは西部劇の星空の下で何を描いたか / 川本徹 針に光があたるまで――アリ・アスターのフィルモグラフィーにおける手芸表象の移り変わり / 石田由希 ❖おぞましさの構造 アリ・アスターの「抜き感」について / 斜線堂有紀 アリ・アスターとの時間 / 大森時生 ❖イラスト① 『ヘレディタリー/継承』 / ヒグチユウコ ❖ 奇妙で不気味な(悲)喜劇 「不気味なもの」の彼岸――アリ・アスターと「思考なき無意識」 / 冨塚亮平 アリ・アスターはおそれている――作家の完璧さと制作の行方 / 堅田諒 アリ・アスター作品における優越の笑い / 藤原萌 憑依と所有――アリ・アスターとJホラーの距離 / 宮本法明 ❖対談 箱庭との距離を測る / 山中瑶子×大島依提亜 ❖箱庭の外へ 「エレベイテッド・ホラー」を(遠く)離れて / 風間賢二 アリ・アスターとA24 / 上條葉月 ❖イラスト② It’s him / 冬虫カイコ ❖夏至祭は暴かれる カタルシスの生け贄――『ミッドサマー』における解放される女と焼かれる女 / 鷲谷花 恋人/家族『ミッドサマー』――囚われの楽園で生きることへの願望 / 小西真理子 残酷な女神が支配する / 河西瑛里子 不安と恐怖の先に――ボビー・クーリックの音楽と審美的感覚 / 對馬拓 ❖おそろしく、魅力的な 夕闇の子どもたち / 岸裕真 恐怖を隠すならホラー映画の中 / 灰谷魚 切り取られた顔――アリ・アスター初期二作が訴える解放のヴィジョン / セメントTHING ❖みんなを不安にさせるもの それははじめからあなたの知っているそれではない――アリ・アスター短篇作品の奇妙な出来事 / 新城大地 否定的内在――『ヘレディタリー/継承』における情動と水平 / 長尾優希 「ヘッド・トラウマ」経験としての映画『ヘレディタリー/継承』 / 西川秀伸 受難と支配の臨界を撮る――新世代のユダヤ系作家アリ・アスターが示すユダヤ性の反転について / 矢倉喬士 ❖資料 アリ・アスター主要作品解題 / 伊藤弘了・桑原真子 ❖忘れられぬ人々*51 故旧哀傷・大宮北小の同級生たち / 中村稔 ❖物語を食べる*43 だから荒野へ、亡命せよ / 赤坂憲雄 ❖詩 花の名残 他二篇 / 中村稔 ❖ユリイカの新人 乳白色の夜は無花果の香り / ながさきふみ ❖われ発見せり 「当事者研究って大変ですね」 / 小田視希
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子どもたちによろしく | 長崎 訓子
¥3,080
rn press 2025年 ハードカバー 144ページ A5横変形判 縦144mm 横196mm 厚さ101mm - 内容紹介 - 上製・箔仕様の、とっておきの1冊。 人気イラストレーター長崎訓子が23年間描き続けた子どもが登場する映画たち。 この本は、かわいい絵本ではありません。 子どもは社会を映す鏡です。時には戦争下で、時には貧困下で、歯を食いしばって親を恨み、仲間たちと悪さをする子どもたち。映画のなかの子どもたちの眼差しを、長崎訓子が鋭い視点で描いています。 収録映画 E.T./グロリア/ペーパー・ムーン/ロスト・チルドレン/お早よう/運動靴と赤い金魚/A.I./世界でいちばん不運で幸せな私/ネバーランド/エル・スール/クルックリン/アバウト・ア・ボーイ/ポビーとディンガン/飛ぶ教室/アラバマ物語/牯嶺街少年殺人事件/シャイニング/ミツバチのささやき/子供の情景/シベールの日曜日/スラムドッグ$ミリオネア/クジラの島の少女/パンズ・ラビリンス/ウィンターズ・ボーン/トリュフォーの思春期/スーパー8/ゾイのいない人生/ぼくのエリ 200歳の少女/ヒューゴの不思議な発明/ダウンタウン物語/ル・アーヴルの靴みがき/冬の小鳥/がんばれ!ベアーズ/エクスプロラーズ/リッキー/壁の中に誰かがいる/さよなら、アドルフ/ボビー・フィッシャーを探して/リトル・ミス・サンシャイン/偽りなき者/大人は判ってくれない/ムーンライズ・キングダム/裸足の季節/赤い影/ものすごくうるさくて、ありえないほど近い/冬冬の夏休み/50年後のボクたちは/シング・ストリート 未来へのうた/オクジャ/少年は残酷な弓を射る/落下の王国/さよなら子供た/キッド/はじまりへの旅/ワンダーストラック/ちいさな哲学者たち/エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ/フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法/ジョジョ・ラビット/グッバイ、サマー/ルーム/ネズの木/Us/KES/クリスチーネ・F - 目次 - 『子供たちをよろしく/Streetwise』と『子どもたちによろしく』について。そしてこの本のまえがき。 2 E.T. 12 グロリア 14 ペーパー・ムーン 16 ロスト・チルドレン 18 お早よう 20 運動靴と赤い金魚 22 A.I. 24 世界でいちばん不運で幸せな私 26 ネバーランド 28 エル・スール 30 クルックリン 32 アバウト・ア・ボーイ 34 ポビーとディンガン 36 飛ぶ教室 38 アラバマ物語 40 牯嶺街少年殺人事件 42 シャイニング 44 ミツバチのささやき 46 子供の情景 48 シベールの日曜日 50 スラムドッグ$ミリオネア 52 クジラの島の少女 54 パンズ・ラビリンス 56 ウィンターズ・ボーン 58 トリュフォーの思春期 60 スーパー8 62 ゾイのいない人生 64 ぼくのエリ 200歳の少女 66 ヒューゴの不思議な発明 68 ダウンタウン物語 70 ル・アーヴルの靴みがき 72 冬の小鳥 74 がんばれ!ベアーズ 76 エクスプロラーズ 78 リッキー 80 壁の中に誰かがいる 82 さよなら、アドルフ 84 ボビー・フィッシャーを探して 86 リトル・ミス・サンシャイン 88 偽りなき者 90 大人は判ってくれない 92 ムーンライズ・キングダム 94 裸足の季節 98 赤い影 98 ものすごくうるさくて、ありえないほど近い 100 冬冬の夏休み 102 50年後のボクたちは 104 シング・ストリート 未来へのうた 106 オクジャ 108 少年は残酷な弓を射る 110 落下の王国 112 さよなら子供たち 114 キッド 116 はじまりへの旅 118 ワンダーストラック 120 ちいさな哲学者たち 122 エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ 124 フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法 126 ジョジョ・ラビット 128 グッバイ、サマー 130 ルーム 132 ネズの木 134 Us 136 KES 138 クリスチーネ・F 140 あとがき 142 - 版元から一言 - イラストレーターの長崎訓子さんが23年間描き続けた「子ども」が登場する映画の偏愛コラムを一冊にまとめました。 長崎訓子さんが、鋭く、ときにコミカルに、愛情たっぷりにさまざまな「子ども」を取り上げています。読むと必ず映画が観たくなる、23年分の想いが詰まった一冊です。 著者プロフィール 長崎訓子 (ナガサキクニコ) (著) イラストレーター。 女子美術大学 デザイン・工芸学科ヴィジュアルデザイン専攻教授。 多摩美術大学染織デザイン科卒業。書籍の装画や挿絵、絵本、漫画、映画に関するエッセイなど多方面で活動中。主な装画の仕事として『金持ち父さん 貧乏父さん』『武士道シックスティーン』『億男』など。作品集に『長崎訓子の刺繍本』『DAYDREAM NATION』『There’s many dog shit in your house.』『COLLAGES』(ハモニカブックス)。漫画の作品集に『Ebony and Irony 短編文学漫画集』『MARBLE RAMBLE 名作文学漫画集』(第19回文化庁メディア芸術祭マンガ部門審査委員会推薦作品)(パイインターナショナル)『Catnappers 猫文学漫画集』(ナナロク社)。飛ぶ教室(光村図書)にて、現在も偏愛映画コラム『子どもたちによろしく+』を執筆中。
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中央アジア映画完全ガイド ウズベキスタン・カザフスタン・キルギス共和国・タジキスタン・トルクメニスタン | 梶山 祐治
¥3,080
パブリブ 2025年 世界シネマ読本 ソフトカバー 240ページ A5判 縦210mm 横148mm 厚さ14mm - 内容紹介 - もっとも長い歴史を持つウズベキスタン 作家性のある監督が続出するカザフスタン 多様なジャンル映画が充実するキルギス共和国 ペルシャ文化を継承したが内戦で荒廃したタジキスタン かつて栄えた映画文化の復興が期待されるトルクメニスタン 代表100作のあらすじや制作背景を徹底解説 『やさしさ』タシュケントを襲った大地震直後にロケ撮影された雪解け期映画の代表作 『タンカ』中央アジア特有のコネの問題を、カラカルパク文化で彩ったスクリーンに提示 『オトラルの陥落』アレクセイ・ゲルマン製作のもとアミルクロフが描く帝国の崩壊 『小さなアコーディオン弾き』朝鮮人強制移住と日本人抑留者の歴史がつながる 『シュガ』「アンナ・カレーニナ」を下敷きに、中央アジアの都市で不倫にはまる男女 『火事』抑圧された女性の立場と男性目線の欺瞞が、ホラーの形式を借りて暴かれる 『世界の屋根』ソ連辺境の未到の地にカメラが好奇な眼差しを注ぐ 『ロスタムとソフラーブ』叙事詩『シャー・ナーメ』を原作にしたペルシャの一騎討ち 『競演』ドゥタールの名手が楽器だけを手に、捕虜となった兄を単身救出に向かう 『黄色い雄牛の夜/大地震の子供たち』大統領命令によりお蔵入りとなった幻のフィルム 「中央アジア現地の映画館を探訪する」「アフガニスタンの女性映画監督サダト」等のコラム - 目次 - 2 まえがき 6 年表 8 地図 10 中央アジア映画史への招待 20 用語解説 23 人名解説 29 第1章 ウズベキスタン 30 死のミナレット 数千人のエキストラがブハラに攻め込む、ウズベキスタン最初の長編映画 32 二人目の妻 フジュム以前の抑圧された女性性を、国外スタッフの力を集めて描く 34 聖者の娘 宗教指導者の犯罪が暴かれる、ウズベク人キャストを揃えた最初期のフィルム 36 ラマザン 権力者が断食月の戒律を利用してサボタージュを働き、善良な農民が目覚める 38 ブハラのナスレッディン オリエント世界で有名なトリックスターが、ブハラの宮廷で権力者を自在にかき回す 40 タヒルとズフラ 古来から伝わる悲恋の昔話に民衆蜂起が追加され、革命のドラマとして再生する 42 アリシェル・ナヴァーイー ティムール朝下で君主と友情を育んだ、詩人ナヴァーイーの生涯 44 きみに夢中 新作映画の撮影に集まった各地の歌い手が、国の文化を統合する 46 マハッラ中が噂していること 建設中の高層アパートに隣接するマハッラで、噂話に花を咲かせる住人たち 48 君は孤児じゃない ソ連のイデオロギーを越えて今も愛される、戦時下を描くソ連・ウズベク映画 50 やさしさ タシュケントを襲った大地震直後にロケ撮影された、雪解け期映画の代表作 52 タシュケントはパンの町 飢饉のヴォルガから、パンを求めて少年は「パンの町」タシュケントへ向かう 54 恋する者たち 否応なく訪れる出会いと別れを繰り返しながら、恋する者たちの人生は続く 56 七発目の銃弾 赤軍の帽子に忍ばせた銃弾が、憎き反革命のバスマチを追う「東部劇」 58 苦い果実 子供から大人への移行期で変化する同性と異性の友情を描く、女性監督の代表作 60 草原 レイ・ブラッドベリ原作の仮想空間で、現実が虚構に侵食されていく 62 ナズグム 中央アジアとの交差を通して映像化した、ウイグル民族の女性英雄 64 UFO少年アブドゥラジャン 宇宙人の少年がコルホーズで起こす奇跡が、スピルバーグに向けて語られる 66 演説者 ソ連政権下で異なる生き方を突然迫られる、一夫多妻制の当事者たちの運命 68 タンカ 中央アジア特有のコネの問題を、カラカルパク文化で彩ったスクリーンに提示する 70 祖国 独ソ戦に参加しアメリカに移住したウズベク人の老人が「祖国」を再訪する 72 不屈 カラカルパクスタンで死期の近い帰還兵が、人生でやり残した仕事を清算する 74 ファリダの二千の歌 秘密や謎が明らかになっていくと同時に、一夫多妻制は崩壊へ向かっていく 76 日曜日 人生の終わりが近づくにつれて、子供が自立し村に残された老夫婦が迎える関係の変化 78 コラム1 インターネット上の中央アジア映画 79 第2章 カザフスタン 80 トゥルクシブ 世界のドキュメンタリー映画史に大きな軌跡を残した、鉄道建設映画 82 アマンゲルディ モスクワからの要請により製作された、カザフスタン「初」のトーキー映画 84 ライハン 遅れてやってきた革命の効果で解放される女性と、彼女に拒まれた陰湿な男の復讐 86 ステップの娘 ステップでの強制的な結婚を免れた少女が、医師としての使命を切り拓いていく 88 僕の名前はコジャ 落ち着きのない少年が周囲の支えとともに成長していく、子供映画の代表作 90 父祖たちの大地 カザフ人とソ連人の老人が持つ祖国の概念が照合され、その一体化が図られる 92 テュベテイカをかぶった天使 保守的な価値観が内面化された、中央アジアミュージカルの代表作 94 アタマンの最後 カザフ人スパイを造型した、観客動員3000万人の同国映画史上最大のヒット作 96 灰色の狼 狼を飼い慣らそうとする少年に、厳しい自然の摂理が突きつけられる 98 マダム・ウォンの秘密 白軍将校の子孫とカザフ人船乗りが、海賊が隠した黄金を追うバディ・フィルム 100 白い鳩 「カザフニューウェイヴ」の道をつくったロシア人監督によるカザフ映画 102 僕の無事を祈ってくれ ソヴィエトの負の遺産が垣間見える、ツォイ主演の痛快なアクション映画 104 復讐 朝鮮系作家アナトリー・キムの脚本が、朝鮮を舞台に宿命に囚われる者たちを描く 106 恋する魚 黒人音楽家が多彩な音楽を呼び込み、都会で生きる者たちの孤独と交流が浮かび上がる 108 スルタン・バイバルス エジプトで君主まで上り詰めた奴隷軍人が、老年になり権力の意味を考える 110 オトラルの陥落 アレクセイ・ゲルマン製作のもとアミルクロフが描く、慢心した帝国の崩壊 112 鳩の鐘撞き 音と視覚を通じて演出される、鳩の飼育係が経験する恋愛、結婚、永遠の別れ 114 小さなアコーディオン弾き 高麗人俳優の熱演を通じて、朝鮮人強制移住と日本人抑留者の歴史がつながる 116 キラー 小市民として生きることが許されない、急激な変化を迎えた1990年代 118 レイラの祈り 核実験の事実を誰も知らず被害を受けた村で、知覚の鋭いレイラがひとり祈りを捧げる 120 ヴォーカル・パラレル 栄枯盛衰を説く異色のコンサート映画が、観客を芸術への感動へと誘う 122 ゆすり屋 独立後の混乱した社会を、拳の力だけを頼りにのし上がっていく男の半生 124 シュガ 「アンナ・カレーニナ」を下敷きに、中央アジアの都市で不倫にはまっていく男女 126 南の海からの歌 多くの民族が去来した家父長制の強い土地で、家族の概念が再検討される 128 スターリンへの贈り物 民族や宗教の違いを越えた者たちの共存を、卑劣な権力者が脅かし命まで奪う 130 約束の地 強制連行された朝鮮人ほか異民族を、カザフ人の他者を歓待する精神が救う 132 海を待ちながら 干上がったアラル海で、全てを失った船長が「海」を求め船を曳いていく 134 学生 経済成長下のアルマトゥで、恩恵に与れない学生が反復する「罪と罰」 136 胡桃の木 合意を得た誘拐婚さえ失敗しながら、それでも結ばれた夫婦の人生は続いていく 138 父への電話 周りと違うことで親にも捨てられた少年が、20年ぶりにかける父への電話 140 逃げろ 大飢饉にあえぐ村の運命を託され街へ向かう、墓掘り人の旅が始まる 142 コラム2 中央アジア現地の映画館を探訪する 143 第3章 キルギス共和国(クルグズスタン) 144 サルタナト 女性の活躍と自然の克服が二重に実現する、最初のキルギス共和国製作長編劇映画 146 炎暑 職人気質のトラクター運転手とコムソモール員の間で、極度に高まる緊張 148 白い山々 ソ連成立前に旧体制を抜け出す難しさを描く、キルギス人監督による最初の長編劇映画 150 最初の教師 社会主義の理念に燃えた教師が、山間の村で偏見と闘い教育に身を捧げる 152 我らが幼年時代の空 子供が皆街へ出てしまった遊牧民の老夫婦に、避けようがない変化の波が押し寄せる 154 ジャミリャー 作家アイトマートフの代表作が、絵画モチーフを通して鮮やかに映像化される 156 白い汽船 少年の愛への渇望と神話が一体化し、「奇跡」と呼ばれた1本 158 白い豹の一族 民族叙事詩マナスの朗誦を伴いながら語られる、白豹族の因果応報の物語 160 愛の蜃気楼 シルクロードで結ばれた中央アジアとシリアで、若き芸術家が母の幻影を追う 162 カタツムリ、お前のうちはどこ? 独立直後のキルギス共和国の混乱した社会で、寄る辺ない若者の深まる孤独 164 ブランコ 独立後のキルギス映画の存在を世界に向けてアピールした、自伝三部作の一作目 166 あの娘と自転車に乗って 出生の秘密を知った養子の少年が、近親者の死を経て大人になっていく 168 クルマンジャン・ダトカ 生誕200年を機に国家プロジェクトにより映画化された「民族の母」 170 樹の歌 天山山脈の麓を舞台に展開する、初の全編キルギス語ミュージカル 172 火事 抑圧された女性の立場と男性目線の欺瞞が、ホラーの形式を借りて暴かれる 174 コラム3 ウズベキスタン「サローム・シネマ」での映画鑑賞日記 175 第4章 タジキスタン 176 世界の屋根 民俗誌的な光景を垣間見せながら、ソ連辺境の未踏の地にカメラが好奇な眼差しを注ぐ 178 ジュリバルス パミールを舞台に撮影された、反革命分子が追われる東部劇の先駆的作品 180 僕はある女性に出会った 娘に抑圧的な父親が舞台に自分の分身を認め、考えを改めるミュージカル映画 182 詩人の運命 ペルシャ文学の父ルーダキーの生涯を、悲劇を乗り越える国民的詩人として描く 184 パミールの子供たち パミールの「最初の教師」の導きで、少年たちは自ら学び成長していく 186 車夫ハサン 自立していく恋人と対照的に、共産党員になりきれない哀れなタジク人男性 188 ロスタムとソフラーブ 叙事詩『シャー・ナーメ』を原作にした、ペルシャの英雄と息子の一騎討ち 190 先祖の秘密 革命直後のヤクーチアで、黄金に目が眩んだ人間は破滅を辿る 192 コックと歌手 ザツェーピンが作曲しプガチョワが歌う音楽が、料理とともにパミールに届けられる 194 青春の最初の朝 実在したパミール最初の女性コミュニストをモデルに、目覚めの「朝」が予感される 196 シェヘラザードのもう一夜 聞き役のカリフがいつの間にか登場人物となる、「千夜一夜物語」のその先の物語 198 ルツ 強制収容所から釈放されたフランス人ピアニストが、故郷を捨てロシアに留まる 200 黄色い草のとき 女性監督の透徹した眼差しが、身元不明の遺体が発見され狼狽する男たちを捉える 202 少年、機関車に乗る 離れて暮らす父に会うため、列車に乗る兄弟のレール・ロードムービー 204 預言者の復讐 若い考古学者の恋と共に展開する、シリアの古代遺跡をめぐる陰謀 206 コシュ・バ・コシュ:恋はロープウェイに乗って 銃撃音が響く中撮影を敢行し、内戦下で製作された唯一の長編劇映画 208 ルナ・パパ 多彩な乗り物と巨大な海が彩り、月夜に妊娠した少女が父親を探す旅に出る 210 右肩の天使 前科者の映写技師が、期せずして中央アジアと世界の広がりを示す 212 天国へ行くにはまず死すべし EDに悩む新婚の青年が、ストーカー行為を繰り返して回復の機会をうかがう 214 トゥルー・ヌーン 突然現れた国境線で親族が分断され、地雷の埋まった土地で結婚式が始まる 216 彼女 ロシアで劣悪な環境に置かれる、タジク人移民社会と女性労働者の境遇 218 コラム4 アフガニスタンの女性映画監督シャフルバヌ・サダト ─蹂躙される多様な文化と子供たち─ 219 第5章 トルクメニスタン 220 ドゥルスン 才覚ある妻が彼女の成功に嫉妬する夫を宥め、夫婦で活躍する道を見出す 222 遠い花嫁 戦後に顕彰される、ロシア人とトルクメン人のホモソーシャルな「結束」 224 競演 ドゥタールの名手が楽器だけを手に、捕虜となった兄を単身救出に向かう 226 決意の一歩 革命後の中央アジアで外国勢力も干渉するなか、青年が革命精神に目覚める 228 義理の娘 トルクメン映画の巨匠とその妻が、同国の映画史に刻んだ戦争未亡人の生き方 230 幸せに別れを告げたプラーギー 自身の幸せを捨て、国民詩人として歩み始めるマグトゥムグリ 232 マンクルト 奴隷にされた息子への母親の愛が、人間の尊厳と自由を問う 234 天使よ、ご馳走を運んできて 独ソ戦時のトルクメニスタンにおける、ドイツ人強制移住を初めて描く複言語映画 236 黄色い雄牛の夜/大地震の子供たち 大統領命令によりお蔵入りとなった、大地震に見舞われる「愛の街」の物語 238 参考文献 239 あとがき - 前書きなど - ひとりの人間が、一国の映画について語ってしまうことの危うさについてもよく指摘される中、『ウクライナ映画完全ガイド』に続いて『中央アジア映画完全ガイド』を刊行することになった。元々は中央アジア映画についての本を最初に企画していたところ、情勢を考慮して順番を入れ替えて出版することになったものなのだが、筆者自身1冊で中央アジアの映画について語り尽くせるとは考えておらず、その不完全さは強く意識している。今回は特に、時代やジャンルがなるべく均等になるように100作品に絞る過程で、あまりに多くの作品を除外せざるを得なかった。それでもこのシリーズは、ガイドブック=案内書としての役割をそれなりに果たせるものと信じている。本書が中央アジア映画の紹介が進むためにただ役立つのであれば、幸いである。 測量技術が発達していなかった時期における、古い地図を思い浮かべてみよう。正確な面積が把握されているどころか、リアルタイムなデータやユーザーによる情報も統合されたインタラクティヴな地図がありふれている現在においても、古い地図にいびつに膨らんだ図形の値打ち時代が失われてしまうわけではない。そこには、当時の人々にとっての世界の縮図が記録されているのだから。本書は、中央アジア映画についての、現時点で作成された地図だ。この地図を見た読者が、未踏の地への興奮を掻き立てられ、本書がボロボロになるまで使い古されますように。 本書では主に、狭義の中央アジアとされる、ウズベキスタン、カザフスタン、キルギス共和国、タジキスタン、トルクメニスタンの中央アジア5か国の映画を取り上げている。広義には、タタールスタン、バシコルトスタン、アフガニスタン、ウイグルまでをも指すのだが、筆者の力不足により、これらの地域をほとんど取り上げることができなかった。タタールスタンとバシコルトスタンについては、ソ連およびロシア国内の自治共和国の映画といった観点からのアプローチも欠かせないだろう。まだまだやるべきことはたくさんある。 中央アジアと中央アジア映画は尽きぬ魅力を湛えている。本書で取り上げている作品の大半は日本で未公開であり、言及できなかった素晴らしい作品の数々が、まだまだこの地域には存在する。その世界を覗こうとする者に、映画の門戸はいつでも開かれている。冒険と形容するのが相応しい、中央アジア映画を見ることの体験へひとりでも多くの読者が誘われることを願う。 キルギス共和国第2の都市オシの中心部に、「ヌル」という映画館がある。首都ビシュケクの映画館とは違って、ここでは驚くべきことにキルギス映画しか上映していない。キルギス語で「光」を意味するこの映画館は、フランス語の「光」と同じ名前を持った映画の発明者リュミエール兄弟にまで通じている。しかしここでのローカル映画のラインナップは、国際映画祭や欧米圏の映画批評とは無関係に成り立っている。国際映画祭での受賞作品や権威ある映画雑誌が発表しているランキングばかりが、映画史を形成しているのではない。世界が多様な分だけ、映画も多様である。 なお、本書では人名・地名の表記は現地語の発音を尊重しつつ、一部、慣例に従った。 - 著者プロフィール - 梶山祐治 (カジヤマ ユウジ) (著) 筑波大学国際局准教授。ロシア・ウクライナ・中央アジア映画研究。東京外国語大学卒業後、ロシア国立人文大学大学院留学を経て、東京大学大学院博士課程単位取得退学。博士(文学)。ウズベキスタンの世界経済外交大学常勤講師などを経て、現職。著書『ウクライナ映画完全ガイド』(パブリブ、2024年)。中央アジア映画についての論文に、”L’altérité à l’écran : représentations des Japonais dans le cinéma d’Asie centrale” Aliterites et Education (EDITIONS ACADEMIA-EME, à paraître)など。
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あなたがいるから 【第3版】 | 相田 冬二
¥3,960
Bleu et Rose 2024年 ハードカバー 368ぺージ B6変形 - 内容紹介 - 2024年11月30日、相田冬二(Bleu et Rose)は書籍『あなたがいるから』を発刊いたしました。 これは、1999年から2024年までに相田が劇場用パンフレットに寄稿した作品評101篇を収録したものです。全4章構成で、368頁。映画と歩んできた四半世紀をこの一冊に託します。 劇場用パンフレットは、相田が最も大切にしている媒体です。基本的に、映画をご覧になった方しか入手できず、また公開が終わるとほぼ入手できなくなる公式の冊子。映画館で販売され、映画のスーべニール(お土産)と呼んでいいこの存在に、こどもの頃から憧れてきました。パンフにレビウを執筆できることは、相田の誇りであり、毎回、その時点で持てる力をすべて投入してきたつもりです。 いま読むと至らない文章もありますが、それらを排除することはせず、ただ公開順に並べました。筆致には、変わった点と変わらない点いずれもがあります。そこも愉しんでいただければ幸いです。 永くお世話になっており心から信頼する編集者、森田真規さんに編集をお願いしました。この本は森田さんのプロデュース作品と言ってもよいと思います。また、森田さんと一緒に『なnD』というジンを10年以上にわたって作っておられるデザイナーの戸塚泰雄さんにデザインを手がけていただきました。さらに戸塚さんを通して、イラストレーターの箕輪麻紀子さんに表紙のイラストレーションを描いていただくことができました。一流のプロフェッショナル3人がコラボレートしたこの本は、わたしが個人的に「欲しいもの」として出来上がりました。本としての新しさ、みずみずしさ、豊潤さ、すべてがあるとおもいます。 ぜひ、あなたの許に置いてほしい。 (版元紹介文より) - 構成と収録作品 - まえがき *1 黄泉がえり アナーキー・イン・じゃぱんすけ ほとけ トーキョー×エロティカ 黄泉がえり 着信アリ 犬と歩けば チロリとタムラ たまもの カナリア イン・ザ・プール 好きだ、 ストロベリーショートケイクス 魂萌え! キサラギ アヒルと鴨のコインロッカー 転校生〜さよなら あなた 天然コケッコー ジャーマン+雨 全然大丈夫 マイ・ブルーベリー・ナイツ ジャージの二人 トウキョウソナタ レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで アイ・カム・ウィズ・ザ・レイン わたし出すわ スノープリンス 禁じられた恋のメロディ 半分の月がのぼる空 ブロンド少女は過激に美しく *2 生きてるものはいないのか ゴモラ 孤独な惑星 生きてるものはいないのか さめざめ ル・アーヴルの靴みがき それでも、愛してる ぼっちゃん だいじょうぶ3組 箱入り息子の恋 HOMESICK 潔く柔く きよくやわく ジ、エクストリーム、スキヤキ 神様のカルテ2 友だちと歩こう 東京戯曲 こっぱみじん 神さまの言うとおり 人の望みの喜びよ 極道大戦争 レヴェナント:蘇えりし者 ヒメアノ~ル マネーモンスター ふきげんな過去 ひと夏のファンタジア 白い帽子の女 何者 いたくても いたくても イノセント15 ハクソー・リッジ いつまた、君と ~何日君再来~ 祈りの幕が下りる時 欲望の翼 *3 バーニング 羊の木 去年の冬、きみと別れ ニワトリ★スター 名前 きみの鳥はうたえる 愛しのアイリーン 教誨師 台北暮色 バーニング 劇場版 慶州 ヒョンとユニ 泣くな赤鬼 劇場版ファイナルファンタジーXIV 光のお父さん 蜜蜂と遠雷 あなたを、想う。 ひとよ ラストレター 影裏 水曜日が消えた あなたの顔 ステップ チィファの手紙 窮鼠はチーズの夢を見る モルエラニの霧の中 *4 四月になれば彼女は 海辺の金魚 サマーフィルムにのって 彼女はひとり 麻希のいる世界 イントロダクション 青春の殺人者 女神の継承 百花 夜を越える旅 あなたの微笑み チーム・ジンバブエのソムリエたち 日の丸〜寺山修司40年目の挑発〜 ひとりぼっちじゃない リボルバー・リリー 台風クラブ まなみ100% めためた すべて、至るところにある 四月になれば彼女は あとがき 全368頁
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不完全な社会をめぐる映画対話 映画について語り始めるために | 河野 真太郎, 西口 想
¥2,640
堀之内出版 2024年 ソフトカバー 368ページ 四六判 - 内容紹介 - こんな映画本を待っていた! 「陰謀論」、「ハラスメント」、「ケア」、「ミソジニー」、「障害」etc...テーマに沿って、現代映画を社会的な視点で語るスリリングな対談。 「好きだった監督がハラスメントで告発されたとき、作品にどう向き合えばよいのか?」「一昔前の作品を見るとジェンダー観に違和感を覚えて楽しめない」等、近年多くの人が直面した問題に寄り添いながら、映画と社会の関係を深く見通す。誰もが感想をSNSで発信し、映画を見ることがコミュニケーションに組み込まれつつある現代で、映画と社会はどのような関係にあるのだろうか?映画を「観る」だけでなく、「語る」ことの比重が増す社会における、新たな地平を描く。 RHYMESTER 宇多丸さん推薦! 「社会が変わり、映画も変わった……映画の見方は、変わったか。 我々自身を問い直す、鋭くも愉快な対話集。シリーズ化希望!」 ●取り上げる作品 『君たちはどう生きるか』『セッション』『天気の子』『ジョーカー』『パラサイト』『ドライブ・マイ・カー』『プラダを着た悪魔』『万引き家族』『マリッジ・ストーリー』『ドント・ルック・アップ』『バーニング』『カモン カモン』『エイブのキッチンストーリー』『ファントム・スレッド』『アイ・アム・サム』『クレイマー、クレイマー』『シェフ』『SWEET SIXTEEN』『ノマドランド』『コーダ あいのうた』『ケイコ 目を澄ませて』『クルエラ』『メイド・イン・バングラデシュ』『オートクチュール』『ミセス・ハリス、パリへ行く』『幸せのレシピ』『二ツ星の料理人』『ミッドナイトスワン』『スキャンダル』『スタンドアップ』『サンドラの小さな家』 etc... ●取り上げるキーワード ハラスメント、陰謀論、ケア、男性性、ミソジニー、ネオリベ、#MeToo、トランスジェンダー、マルチバース、障害 etc... 目次 まえがき──映画と社会についての短い個人史 西口想 【対話1】ハラスメントがある世界で、いかに作品と向き合うか もはやハラスメントの教科書?──『セッション』 「ハラスメントを気にしていたらいい作品は生まれない」というメッセージ いま見ると気になる描写も多いフェミニズム映画──二〇〇〇年代の代表作『スタンドアップ』 社会進出は進んだけれど……──女性たちのリアル 監督のハラスメントをどう考えるか? 被害者と加害者の訴えは「五分五分」ではない 批判がないと、作品が死ぬ──過去の作品をどう評価するか? トランスジェンダー表象の変遷と発展──『トランスジェンダーとハリウッド』 かつて批判されたパターンを踏襲する日本のトランス表象──『ミッドナイトスワン』 「クリーン」な現場で生まれる作品はつまらない? コラム ミーガン・トゥーイーの悪夢 西口想 【対話2】「シャカイ」を描くセカイ系──新海誠作品を読み解く 新海作品で描かれる感性的なもの キャラクターの背景を描かない 「大丈夫」というメッセージの変質 バニラトラックを描くことが、社会を描くことなのか 村上春樹の男性性と帆高 ミソジニーを脱却できない「男の成長物語」 コラム セカイとシャカイのあいだで──新海誠と宮﨑駿 河野真太郎 【対話3】社会を描くとはどういうことか──ケン・ローチ作品 希望のないラストの衝撃 ラストに至るまでの「希望」 家族しかいないことの絶望 ケン・ローチが描いてきた家族 時事性に回収されない、ケン・ローチの作家性 個人の成功をあえて描かない 「ケアラーなのに悪態をついてごめんなさい」 ケン・ローチが描く女性と男性 ケン・ローチと是枝裕和──作品の違い、社会の違い 映画が社会的であるということはどういうことか 個人を描くことから始める 【対話4】陰謀論は、お好きですか? 『ドント・ルック・アップ』と陰謀論 陰謀論はどう変化してきたか? 陰謀論とキリスト教の切っても切れない関係 ネオリベラリズムと大富豪──ハデンとイッシャーウェル ヒロイン像の変化──ミソジニー描写を通じて 一九九〇年代を代表する陰謀論映画──『ファイト・クラブ』『マトリックス』『アメリカン・サイコ』 マルチバースと陰謀論──『マトリックス』とマーベル作品 陰謀論にどう立ち向かうか──『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』 家族主義的な「愛」に対する違和感 さまざまな映画オマージュが持つ意味 ありえた可能性のなかで最低の人生 映画は常に陰謀論と隣り合う 【対話5】それは誰のための映画か──障害と物語 障害を扱った感動作──『コーダ あいのうた』 感動のために障害者を搾取していないかを考える 『コーダ』は誰のための映画か? 健常者向け/障害者向けという線引きの先に コミュニティからの離脱をどう描くか──『リトル・ダンサー』と『コーダ』 新自由主義下の障害者政策 社会がつくりだす障害 一般化できない経験にどう向き合うか 「私の物語は私のもので、コーダにしかわからない」 「ろう者として生まれたかった」は何を意味するのか ケアラーをケアするのは誰か コラム 『ケイコ 目を澄ませて』と障害者のワークフェア 河野真太郎 【対話6】「当事者」が演じることについて──移民・難民と映画 日本で生活する移民たち──『マイスモールランド』 世代間トラウマを乗り越える──『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』再び 繰り返し主題になってきた世代間トラウマ 当事者性と創作の関係 悪意なき差別を丁寧に描く 「見えていない」が、確かに存在する移民社会 社会派映画はなぜ失敗するのか──手法の難しさ 当事者が表に立つ重要性と危険性 「当事者」とは誰なのか 鍵となる概念──インターセクショナリティ コラム 現在地としての『ファミリア』 西口想 【対話7】ケアと男性性──苦悩する男たち ケアと男性性──『ドライブ・マイ・カー』 人間の多重性・矛盾を受け入れること ホモソーシャリティを切り崩す多声性 暴力性が外部化された人物造形 イクメンになる男、最初からイクメンの男──『クレイマー、クレイマー』『マリッジ・ストーリー』 障害と男性性──『アイ・アム・サム』の障害表象 養育権をめぐる法廷闘争──『マリッジ・ストーリー』 解決されない暴力性 コラム 『カモン カモン』とイクメン物語のゆくえ 河野真太郎 【対話8】映画のなかのミソジニー──能力と傷をめぐって ポピュラー・フェミニズムとポピュラー・ミソジニー──#MeToo以降のヒット作を読み解くキーワード 失われた地位を「取り戻す」物語 『ジョーカー』のポピュリズムをどう捉えるか? 原作にはなかった階級性、地域性を織り込む映画たち 「格差」に比べて、あまり意識されない「階級」 弱者男性にとっての父親──『ジョーカー』『バーニング』 いまさら父を越えている場合じゃない──『パラサイト』の親子関係 メリトクラシー社会が崩壊した先の女性たち 【対話9】ファッションを通じて何を描く? 映画に衣装は欠かせない 「お針子」映画とブランド創業者の映画 ポストフェミニズム映画の重要作品──『プラダを着た悪魔』 『プラダを着た悪魔』を上書きする『クルエラ』 女性ヴィランの暴力をどう描くか? 仲良く過ごすために毒を盛る?──『ファントム・スレッド』 ファスト・ファッションの時代に映画は何を描くか? コラム 「透明人間」の夢 西口想 【対話10】おいしい映画──ジェンダー・料理・労働 さまざまな文脈が託される「料理」のシーン 2つの類型──「シェフ」の物語と「料理研究家」の物語 料理の過程を見せる作品/出来上がった皿を見せる作品 料理の描写と性描写の重なり 料理とジェンダー──求められる男性像の変化 不完全な人間でよい、という提案 主婦とバリキャリ女性の対比 半径五メートルの世界を快適に整える現代性 レシピを介して、目の前にいない誰かとつながってゆく レシピと「コモン・カルチャー」 【対話11】 住むこと、住まいを失うこと ケン・ローチのエッセンスを継ぐ作品──『サンドラの小さな家』 生活の基盤としての「家」を問う 偶然でしかつながれない?──階級コミュニティなき時代のコミュニティ ケン・ローチが描く「家」の意味──『SWEETSIXTEEN』 金融危機で消失した家とコミュニティ──『ノマドランド』 公共・福祉の稀薄さから見えるアメリカ社会 家の獲得に紐づいた男性像と、女性のセキュリティ 人間にとって「家」とは何か、「老い」とは何か──『ミナリ』『ファーザー』 「働き続ける主体」という幻想 コミュニケーションとしての映画──あとがきにかえて 河野真太郎 前書きなど 私たちの対話は断続的に四年以上続いた。その過程で得たのは、思いのほかシンプルな楽しさだった。観た映画の面白さやつまらなさを何とかして言語化して、信頼する相手に伝え、私の感想とは違う反応が返ってくること。一つの作品から受け取ったさまざまな側面について、表面的な筋書きを超えて話し合い、対話するなかでもう一度作品の形をなぞって作り直していくこと。 対話を通じて、話すテーマだけでなく、話すこと自体が共同体や社会的なものと触れる行為であるように感じた。本書を手にとってくれたあなたがこの対話から面白さやつまらなさを感じ、語られている内容とは別のことを考えて言葉を見つけ、信頼する誰かに伝えてくれたらとても嬉しい。その繰り返しによって映画と社会はつながりを取り戻し、豊かになっていくのではないか。 ──西口想「まえがき」より 版元から一言 装丁・本文デザイン:森敬太(合同会社 飛ぶ教室) 印刷:創栄図書印刷株式会社 イラスト:馬 小萌 (Toi) Instragram: fancy_toi 本書は、雑誌『POSSE』の43号(2019年11月)から52号(2022年12月)までに連載した「対談型映画批評 映画のなかに社会を読み解く」を再編集し、追加の対談とコラムを加筆したものである。 - 著者プロフィール - 河野 真太郎 (著/文) 1974年山口県生まれ。専門は英文学、イギリスの文化と社会。専修大学国際コミュニケーション学部教授。東京大学大学院人文社会系研究科欧米系文化研究専攻博士課程単位取得満期退学。一橋大学准教授などを経て現職。著書に、『戦う姫、働く少女』(堀之内出版、現在ちくま文庫化)、『新しい声を聞くぼくたち』(講談社)等多数。 西口 想 (著/文) 1984年東京都生まれ。文筆家、労働団体職員。大学卒業後、テレビ番組制作会社勤務を経て現職。著書に『なぜオフィスでラブなのか』(堀之内出版)がある。
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メロドラマの想像力 | 河野 真理江
¥2,860
青土社 2023年 ハードカバー 352ページ 四六判 - 内容紹介 - 「泣ける映画」はどこから来て、どこへ行くのか メロドラマの想像力は過ぎ去った流行ではなく、現在の表象のなかにも確実に息づいている。その射程はどこまで届くのか。稀代の書き手が遺した、可能性に満ちあふれたテクストたち。解説・木下千花
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定本 映画術 ヒッチコック・トリュフォー | フランソワ トリュフォー, アルフレッド ヒッチコック, 山田 宏一 (翻訳), 蓮實 重彦 (翻訳)
¥4,400
晶文社 1990年 ハードカバー 384ページ B5判 - 内容紹介 - これが映画だ! 映画の巨匠が華麗なテクニックを大公開。サイレント時代の処女作から最後の作品まで、520枚の写真を駆使して語りつくす。「まず読み物として興味津々」「技術面だけにとどまらず、技術と主題、形式と内容とが不可分のものであることを、じつに説明的に語っているところに本書の真の価値がある。」(朝日新聞評)。 『荒木飛呂彦の漫画術』(集英社新書)内で、「必携の一冊」として紹介。
