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アラブ、祈りとしての文学|岡 真理
¥3,300
果林社 2023年 ハードカバー 313ページ 縦200mm - 内容紹介 - 小説を読みことは、他者の生を自らの経験として生きること。それは世界を変えるささやかな、しかし大切な一歩となる。「新装版へのあとがき」を付す。 - 目次 - 小説、この無能なものたち 数に抗して イメージ、それでもなお ナクバの記憶 異郷と幻影 ポストコロニアル・モンスター 背教の書物 大地に秘められたもの コンスタンティーヌ、あるいは恋する虜 アッラーとチョコレート 越境の夢 記憶のアラベスク 祖国と裏切り ネイションの彼岸 非国民の共同体
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奇妙なものとぞっとするもの──小説・映画・音楽、文化論集 | マーク・フィッシャー, 五井健太郎(翻訳)
¥2,750
Pヴァイン 2023年 ソフトカバー 240ページ 四六判 縦188mm 横128mm 厚さ16mm - 内容紹介 - それがなぜ「奇妙なもの」に見えるのか? ──マーク・フィッシャー生前最後の著作 H・P・ラヴクラフト、H・G・ウェルズ、フィリップ・K・ディック、デヴィッド・リンチ、スタンリー・キューブリック、クリストファー・ノーラン、ザ・フォール、ブライアン・イーノ……彼ら「奇妙」で「ぞっとする」表現者たちに、私たちがいままで世界を理解するために使ってきたカテゴリーが有効ではないとしたら、では、彼らから導き出せる思想とは…… 思想家マーク・フィッシャーの冴え渡る考察がスリリングに展開する、彼の文化論集にして、もう一冊の代表作。
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読み終わらない本 | 若松 英輔
¥1,650
KADOKAWA 2023年 ソフトカバー 224ページ 四六判 - 内容紹介 - これから僕は君に、少し長い手紙を書こうと思う――。 「今、ぼくたちは、とても困難な時代を生きている。ひとがひととのつながりを見失いつつある時代に生きている。ある意味では、ひとを信頼するという当たり前のことが、こんなにむずかしくなった時代はないかもしれない。でも君が、個人を信頼することがむずかしいことがあっても、人間への信頼を失わないでいてくれたら――今という時代に失望を感じることがあっても、絶望のなかにさえも希望を見い出そうとしたひとが、かつていたことを忘れないでいてくれたら。そう願ってやまない」――「小さなひと」) サン=テグジュペリ、石牟礼道子、岡倉天心、神谷美恵子、吉野源三郎、リルケ、ミル、小林秀雄、河合隼雄 【目次】 小さなひと 春の使者 言葉の花束 悲しみの弦 コペル君と網目の法則 愛と「生きがい」 コトバのちから 自由の危機 いつくしみの手仕事 「空」の世界と「いのち」のちから 読書の扉 愛しいひと おわりに 参考文献/ブックガイド - 著者プロフィール - 若松 英輔 (ワカマツ エイスケ) (著/文) 批評家・随筆家。1968年新潟県生まれ。慶應義塾大学文学部仏文学科卒業。「越知保夫とその時代 求道の文学」で第14回三田文学新人賞、『叡知の詩学 小林秀雄と井筒俊彦』で第2回西脇順三郎学術賞、『見えない涙』で第33回詩歌文学館賞、『小林秀雄 美しい花』で第16回角川財団学芸賞、第16回蓮如賞受賞。他の著書に『井筒俊彦 叡知の哲学』『生きる哲学』『霊性の哲学』『悲しみの秘義』『イエス伝』『14歳の教室 どう読みどう生きるか』『本が読めなくなった人のための読書論』、詩集に『愛について』『美しいとき』などがある。
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海への巡礼 文学が生まれる場所 | 岡本 勝人
¥2,860
左右社 2023年 ソフトカバー 256ページ 1.5 x 12.8 x 18.8 cm - 内容紹介 - メルヴィル、ボードレール、プルースト、A・ブルトン、ヘミングウェイ、 小林秀雄、西脇順三郎、三島由紀夫、中上健次──。 海は作家たちの別世界への憧憬を受けとめ、 ポエジーへと昇華してゆく。 現代詩人が訪ね歩いた汀の文学エッセイ 描かれる文学者たち ・プルーストのノルマンディ ・ゴーギャンのブルターニュ ・シュルレアリストとモン・サン=ミシェル ・ミルトンの英仏海峡 ・ワーグナーとカンタベリ巡礼 ・志賀直哉の歩いた道 ・ヴェネツィアをさまようパウンド ・飯島耕一のニューヨーク ・ヘミングウェイのパリからの出発 ・中上健次の熊野の海 ・鎌倉から宋を遠望する源実朝 ・レヴィ゠ストロースの航海 ・縁へと歩む吉増剛造 ほか
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エレメンタル 批評文集 | 管 啓次郎, 川瀬 慈(解説)
¥3,300
左右社 2023年 ソフトカバー 400ページ 四六変型判 縦128mm 横182mm - 内容紹介 - つねに読むべきだ、いくらでも読むべきだ。 時代を先駆け、色褪せぬ発見に満ちた管啓次郎の世界文学論、翻訳論を集成! おれは何者でもない、そんな否定から出発し、広大なる風景をかたちづくった詩人フェルナンド・ペソア、 英語というパトリアを持ちながら異郷に迷い、イタリア語、フランス語、スペイン語に挑んだヘミングウェイ、 師匠ジョイスに劣らぬ語学のひとであり、知られざるメキシコ詩の翻訳者だったサミュエル・ベケット、 現代のシステムのはずれへと歩みつづける稀有なる旅人、写真家津田直、 書くことと読むことにおいて、無数の線をつなぎ、解きほぐしてゆくレベッカ・ソルニット。 海と島影、山々とマングローブが織りなす小さな海域が響かせる世界文学をいち早く論じ、 文学と翻訳の可能性と自由とを描いてきた詩人・比較文学者・翻訳家、管啓次郎の批評文集成! 「世界の広大さと深みを再発見する仕事は、手つかずでぼくらに残されている。」 目次 はじめに 物語が祖だった 夢の鏡 存在と風 トロピカル・ゴシップ 否定の騎士 鳥のように獣のように 鳥でもなく獣でもなく 翻訳人、新しいヨナたち 翻訳のドゥエンデ 破片と図柄 スペインのように見えた、でもそこは フェルナンド・ペソアと連れだって オムニフォン 花、野、世Flower Wilderness World 映像的ウォークアバウト サンゴ礁の勇気を弾ませる「哲学」 語学者ベケット トゥピへの転身 十和田奥入瀬ノート 写真的シャーマニズムについて エレメンタル 解説──幻視の歩行によせて 川瀬慈 あとがき - 前書きなど - 世界化した物質流通と惑星化した情報流通を背景に、歴史上かつてない地平に直面したコスモポリタニズムが、新たな市民性(シヴィリティ、丁寧さ、「正しさ」)を手に入れるための唯一の方法は、これまで回路に乗ることのなかった種類の文学=翻訳の経験をつむこと以外にはないと、ぼくは思う。(本書より) - 著者プロフィール - 管 啓次郎 (スガ ケイジロウ) (著) 1958年生まれ。詩人、比較文学研究者。明治大学大学院理工学研究科〈総合芸術系〉教授。1980年代にリオタール『こどもたちに語るポストモダン』、マトゥラーナとバレーラ『知恵の樹』の翻訳を発表。以後、仏・西・英語からの翻訳者として活動すると同時に『コロンブスの犬』(1989)『狼が連れだって走る月』(1994) などにまとめられる批評的紀行文・エッセーを執筆する。本書のもととなった『トロピカル・ゴシップ』(1998)『コヨーテ読書』(2003)『オムニフォン<世界の響き>の詩学』(2005) はポストコロニアル多言語世界文学論の先駆として高く評価されている。2011年、『斜線の旅』にて読売文学賞受賞。2010年の第1詩集『Agend’Ars』以後、8冊の日本語詩集と1冊の英語詩集を刊行。20ヵ国以上の詩祭や大学で招待朗読をおこなってきた。2021年、多和田葉子ら14名による管啓次郎論を集めた論集Wild Lines and Poetic Travelsが出版された。 川瀬 慈 (カワセ イツシ) (解説) 大学共同利用機関法人人間文化研究機構/国立民族学博物館・准教授
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虐殺のスイッチ 一人すら殺せない人が、なぜ多くの人を殺せるのか? | 森 達也
¥858
筑摩書房 2023年 ちくま文庫 ソフトカバー 240ページ 文庫判 - 内容紹介 - 集団は熱狂し、変異した 関東大震災の朝鮮人虐殺、ナチスのホロコースト、クメール・ルージュの大量殺戮・・・・・・ なぜ悲劇は繰り返されるのか。そのメカニズムを解き明かす。 ナチスのホロコースト、クメール・ルージュの大量殺戮、関東大震災の朝鮮人虐殺、インドネシア政権による虐殺、ルワンダ・フツ族のツチ族虐殺……、歴史を、世界を見渡すと、虐殺事件は繰り返し起き、あふれている。なぜごく普通の善良な市民が、同じように普通の人をいとも簡単に殺すのか、しかも大量に。キーになるのは、集団と同調圧力。集団が熱狂し変異して起きる虐殺のメカニズムを考える。 解説 武田砂鉄 目次 まえがき 1 なぜ人はこれほど残虐になれるのか カンボジアの残像 トゥール・スレン虐殺犯罪博物館にて 朝起きたら歯を磨くように人を殺す 惨劇の痕跡 2 どうしても学校や会社には適応できない 僕が虐殺に関心を抱いた理由(その1) 吃音のいじめられっ子だった頃 映画を「作る」楽しみ アメリカン・ニューシネマの時代 役者を目指したものの…… ドキュメンタリーとの出会い ドキュメンタリーはおもしろい!? 3 オウムを撮ることで気づいたこと 僕が虐殺に関心を抱いた理由(その2) そして一人きりになった 宗教が救えるものの限界 なぜオウムは人を殺したの オウムの側から社会を眺める こうして人は歯車になる 4 生きものの命は殺してもいいのか クジラと日本 生きものと知性 線引きの難しさ 調査捕鯨を続ける本当の理由 ウシやブタやイルカの殺され方 5 人を殺してはいけない理由などない 人は身勝手な生きもの 人は人を殺してはいけないと誰が言ったのですか? 人は人を簡単には殺せない 映画『フルメタル・ジャケット』から見えてくるもの 日本人の心は壊れにくいのか? 6 もとからモンスターである人などいない 殺人をどう罰するか 加害者は人間であり、モンスターではない 憎しみと愛情のはざまで 自由意志のあやうさ 7 この世界は虐殺に満ちている 虐殺の歴史を振り返ってみよう ①デマが罪のない多くの人を殺す ―― 関東大震災時の朝鮮人虐殺 ②ホロコースト ―― ナチスによるユダヤ人大量虐殺 ③普通の人が普通の人を殺す ―― 政権側によるインドネシアでの虐殺 ④一つの民族が殺しあい、人口が激減した国 ―― カンボジアでのクメール・ルージュによる大量虐殺 ⑤民族の対立をラジオが煽る ―― ルワンダでのフツ族によるツチ族虐殺 加害者の本当の姿を知りたい 被害者感情と取材の難しさ 8 集団と忖度 虐殺の核にあるもの 「私が彼を」でなく、「我々0 0 が彼ら0 0 を」殺すとは? 虐殺は誰かの指示がなくても始まる アウシュビッツ強制収容所を訪ねて 9 善良な人々が虐殺の歯車になるとき 一人ひとりはみな優しい 凡庸な悪としてのアイヒマン 人は何に服従するのか 見えぬ命令系統 純粋さゆえの残虐さ 10 虐殺のスイッチを探る 集団化と同調圧力 過剰な忖度と異物の排除 お化け屋敷は、なぜ怖いのか? 集団が変異する熱狂の瞬間 虐殺のスイッチとは 転がる石のように あとがきに代えて ちくま文庫版のためのあとがき 解説 武田砂鉄 - 著者プロフィール - 森 達也 (モリ タツヤ) (本文) 映画監督・作家。1998年、オウム真理教のドキュメンタリー映画『A』を公開。2001年、続編『A2』が山形国際ドキュメンタリー映画祭で審査員特別賞・市民賞を受賞。11年に『A3』が講談社ノンフィクション賞を受賞。著書に『放送禁止歌』(知恵の森文庫)、『死刑』『いのちの食べかた』(角川文庫)、『私たちはどこから来て、どこへ行くのか』(ちくま文庫)、『たったひとつの「真実」なんてない』『集団に流されず個人として生きるには』(ちくまプリマー新書)など。
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フキダシ論 マンガの声と身体 | 細馬宏通
¥2,200
青土社 2023年 ハードカバー 288ページ 四六判 - 内容紹介 - こんな読み方があったのか! 平面に一色で、主に単線で描かれるマンガ。時に登場人物の顔は簡略化され、時にコマに発話者が描かれず、時に発されていない言葉までも描かれる……。わたしたちはいかにしてマンガのなかの出来事に注意を向け、物語を読みとっているのか。一コマ一コマ、一つひとつのフキダシ・記号たちをていねいに紐解き、わたしたちがマンガの世界観に入り込めるカラクリに迫る、新しい見方を提示するマンガ論。
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本と貝殻 書評/読書論|管 啓次郎
¥2,750
コトニ社 2023年 ソフトカバー 320ページ 四六変型判 縦190mm 横118mm - 内容紹介 - 『本は読めないものだから心配するな』の著者による最新の、本にまつわる読書エッセイ。 本書は、稀代のエッセイストがいろいろな媒体に書きつづったさまざまな書評や読書論のなかからとくに厳選したテクストを集成したものです。読書の方法と書物への讃歌にあふれた本です。 日本文学最高の文章家のひとりである著者が、本とともに生きたいとのぞむ人たちへとどける、読書のための書物の実用論です。 本という〈物〉の不思議。 それは、この世のあらゆるものとつながっていること。 ヒトが集合的に経験したすべての記憶・知識・情動が流れこむ一冊一冊の本は、タイムマシン、そして意識の乗り物。 いまこそ本を大切にしよう。 私たちのもとにやって来て、そして去っていった無数の本たちに、心からの「ありがとう」を。 目次 本と貝殻 Ⅰ 読むことにむかって 立ち話、かち渡り/本のエクトプラズム/横切ってもたどりつかない[プルースト]/詩との出会い[西脇順三郎]/京都との出会い[林達夫]/文体との出会い[吉田健一]/雑学との出会い[植草甚一]/翻訳文学との出会い[サン゠テグジュペリ、パヴェーゼ] Ⅱ 心の地形30 ハーンという驚異の群れ/誰も見たことがない映画を/火山が教えるもの/写真をどう語るか/そこにないものを想像する動物、われら/森と海をむすぶ視点が呼ぶ深い感動/神話が覚えていること/味覚的ポストコロニアル/運動し流通する写真/年齢も境遇もちがう六人の「さきちゃん」とともに/Neversという土地の名の意味/牛の胃の中にある希望の大地/ウイグルの大地をみたす詩/声を探し、声にすること/「北国の少女」をくりかえし聴きながら/寄せては返す批判の言葉/人生を変えるための小説へ/グアテマラでユダヤ人として生きること/肉食について真剣に考えるために/世界音楽を生きる彼女/言語学小説はいかにして可能なのか/生命をめぐる態度の変更について/世界史の最先端を生きた島へ/気まぐれ経済のユートピアについて/みずみずしい線をまとい甦った可憐でモダンな歌、その生涯/帰れなかった帰郷へ/心の扉をあけると/新しい意識を本気で求めるなら/蜜蜂が書いた日本語の文章を Ⅲ 読売書評2012-2013 ステーキの意味論/手と土の仕事について/破壊を超える言葉を/言葉の究極のコラージュ/装いの詩と真実/見過ごされた大作家のヴィジョンについて/詩という領土なき大地/この土地は草に、木に/驚くべき旅人の音声発見/異郷を歩いてゆくカメラの旅/土地の運命を一から考えること/あなたの服を見せて/巨匠の不思議な恋愛小説/スワヒリ語世界のお話の夜へ/至高の道草文学への招待/映像で学ぶ科学/精神分析という知のあり方について/一世紀を生きた人類学者の遺産/この土地をかれらと共有するために/彼女はいつどこで何を考えたのか/物語を超えた言葉の群れへ/なつかしさのむこうにある真実への接近/動物と出会うとき人は何を考えるか/北の島に残る言語をめぐって/代々木公園に立ちこめる記憶の霧/文学が合宿にはじまるとしたら/二〇一二年の三冊/物語の途方もないおもちゃ箱/辛さに挑み、叫べ/こんな作品を見たことがあっただろうか/小説家、あるいは仮死の身体/この過剰な贈与を考えぬくために/すべてがぐるぐると渦巻く海岸で/廃墟の幼児たちが詩人になるとき/さあ、バオバブの島国へ/イディッシュ語作家が背後にもつ世界/英語とは日本語にとって何だったのか/人々の情動に感応する人類学へ/食物が言葉に変わるとき/無人を通して歴史の層にふれる詩集/われわれと共に進化してきた同伴種へのまなざし/猫旅、ふたたび/孤独な人生に光がさす小さな瞬間/学にとりつかれた亡命ユダヤ人の肖像/シルクロードの食に誘惑されて/スペイン語文学が世界にもたらすもの/中継せよ、と言語がいった/壁はいまもある、記憶の中に/宗教は世界をいかに造形してきたか Ⅳ 四つの解説、対話ひとつ 近現代からいかに出てゆくか?[ジャン=フランソワ・リオタール]/文字のやし酒に酔いながら[エイモス・チュツオーラ]/パルテノジェネシスから言語的ジェネシスへ[古川日出男]/Transversal, translingual[リービ英雄]/過去はつねにこれから到来する[エドゥアール・グリッサン] あとがき 前書きなど あとがき 本という物のふしぎな性格は、それがこの世のあらゆるものにつながっていることだ。少なくとも、人間の意識がおよぶあらゆるものに。ヒトが集合的に経験したすべての記憶がいずれかの本に流れこみ、個々の本からはそれを手にした人の数だけ別方向にむかう細い流れが生じる。知識も、情感も。一冊一冊の本がタイムマシンでありきわめて現実的な意識のヴィークルであることも、いうまでもない。本を大切にしよう。 本を語るときにそれを自然物にたとえたくなるのは、ぼくの趣味にすぎないのだろうか。そんなことはないと思う。本は貝殻にも花にも似ている、砂ねずみにもメタセコイアの大木にも似ている、流星にも虫を閉じこめた琥珀にも似ている。この世に存在してヒトの経験の中に入ってくるあらゆるものに似ることができるのが本なのだ。そしてそれは玉手箱でありびっくり箱であり手鏡でもある。すずめのようにチュンチュンと鳴きながら群れなして飛びたつこともある。予想をつねに裏切ってくれる。未知の海鳴りが、いつもそこから聞こえる。 ここでは本を貝殻にたとえてみたが、貝殻は意志なく意図なく自然発生することはなく、その中に住んだ貝の生命が生きてゆくために硬い住処を作り上げるわけだ。海水とのあいだの物質交換の果てに。本の作者と本との関係も、このプロセスにたとえられるのではないだろうか。できあがった貝殻から作者が出ていくとき、その空いた貝殻に読者がひっこしてくる。そして書評という行為が何に似ているかといったら、それは生け花だと思う。本という素材の一部を切り取り、それを新しいアレンジメントに投げこむ。組み合わされ配置された花たち(=引用文たち)は、もともともっていた生命の連関の名残により、新たにつむがれた文の中でも新しく輝く。書評執筆者は一種の花道家として、さあ、見てください、といえるかたちと色合いを、限られた字数のうちに実現しようとする。そこには意味も過剰なくらいに入っているのだが、どれだけ伝わるかはわからない。最低限つたわるといいと思えるのは、論じられる元の本それ自体が、この世界に対して与えようとしていた振動。個々の本の意志、そのafterglow。 今世紀に入ってからもかなりの点数の書評を書いてきたが、紙幅にはつねに物理的制限あり。本書にもそのすべてを収録することはできなかった。そもそも、データもすでに散逸しているのは、それぞれの文がいきものである以上、仕方がない。かれらは逃げていったのだ。それでもここに収めることができた書評とエッセーが、この十年あまりの自分のそれぞれの本に対するそのつどの動物的反応だとはいえるだろう。ありがとう、本たち。ありがとう、その作者たち。震災後、二年間にわたって書評委員として読売新聞に書いた文はすべてを収録することにした。一時代の新刊書という動物たちの群れに対して、一匹の犬がだいたいこれくらいの幅で反応している、というサンプルのつもりで。 錯綜をきわめたにちがいない編集を担当してくれた出版社コトニ社の後藤亨真さんに、心から感謝します。 二〇二三年四月九日、狛江 - 著者プロフィール - 管 啓次郎 (スガ ケイジロウ) (著/文) 1958年生まれ。詩人、比較文学研究者。明治大学理工学部教授(批評理論)。同大学院理工学研究科〈総合芸術系〉教授。1980年代にリオタール『こどもたちに語るポストモダン』、マトゥラーナとバレーラ『知恵の樹』の翻訳を発表(いずれものちに、ちくま学芸文庫)。以後、フランス語・スペイン語・英語からの翻訳者として活動すると同時に『コロンブスの犬』『狼が連れだって走る月』(いずれも河出文庫)などにまとめられる批評的紀行文・エッセーを執筆する。2011年、『斜線の旅』にて読売文学賞(随筆・紀行賞)受賞。2010年の第一詩集『Agend'Ars』(インスクリプト)以後、8冊の日本語詩集と一冊の英語詩集を刊行。20カ国以上の詩祭や大学で招待朗読をおこなってきた。2021年、多和田葉子ら14名による管啓次郎論を集めた論集『Wild Lines and Poetic Travels』(Lexington Books)が出版された。東日本大震災以後、小説家の古川日出男らと朗読劇『銀河鉄道の夜』を制作し、現在も活動をつづけている。
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物語とトラウマ クィア・フェミニズム批評の可能性 | 岩川ありさ
¥3,960
青土社 2022年 ハードカバー 512ページ 四六判 - 内容紹介 - トラウマ的な出来事を経験した人びとにとって、文学や文化は生きのびるための表現となりうるのか―― 多和田葉子、李琴峰、古谷田奈月、森井良、林京子、大江健三郎、岩城けい、小野正嗣といった現代作家の作品を丁寧に読み解き、物語を受けとるという営みとは何か、小説と読者が出会うとはどういうことか、それにクィア・フェミニズム批評はどうかかわるのか、自身の経験とときに重ね合わせながら文学や文化の力を見出していく。気鋭の研究者による、トラウマという語ることがむずかしい経験を語るために物語があるのだということを、そして何より新たな対話の可能性を信じるすべての人におくる、画期的な文学論。
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藍色の福音|若松 英輔
¥1,980
講談社 2023年 ソフトカバー 320ページ 四六判 - 内容紹介 - 作家と出会い、言葉と出会う 生きることの傍には、常に「言葉」があった 言葉が語らない「あわい」にこそ たしかなる人生の道標がある 「あの日、この本を机の上に置いたとき、 のちに自分がこれとほとんど同じ経験をすることになるとは 思いもしなかった」 (本文より) 生涯の伴侶となる女性に『深い河』を渡した日から、 妻を喪い、死者に託された「何か」を生きる今に至るまで 河合隼雄、須賀敦子、小林秀雄、柳宗悦、堀辰雄―― 自らの軌跡と重ねて綴る、特別な一冊 - 著者プロフィール - 若松 英輔 (ワカマツ エイスケ) (著/文) 1968年新潟県生まれ。批評家・随筆家。慶應義塾大学文学部仏文科卒業。「三田文学」編集長、読売新聞読書委員、東京工業大学リベラルアーツ研究教育院教授(2022年3月まで)などを歴任。’07年「越知保夫とその時――求道の文学」にて第14回三田文学新人賞評論部門当選。’16年「叡知の詩学 小林秀雄と井筒俊彦」にて第2回西脇順三郎学術賞を受賞。’18年『詩集 見えない涙』にて第33回詩歌文学館賞、『小林秀雄 美しい花』にて同年第16回角川財団学芸賞および’19年第16回蓮如賞を受賞。’21年『いのちの政治学』(中島岳志との共著)にて、咢堂ブックオブザイヤー2021演説部門大賞を受賞。
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環大西洋政治詩学 二〇世紀ブラック・カルチャーの水脈 | 中村 隆之
¥5,500
SOLD OUT
人文書院 2022年 ハードカバー 490ページ 四六判 縦194mm 横135mm 厚さ38mm - 内容紹介 - 大西洋に響く〈ブラック〉の詩(うた) 2020年、世界中に轟いた「ブラック・ライヴズ・マター」の呼びかけ。その声をただしく聴き取るには、人類史に沈殿する人種差別、植民地主義、奴隷制の記憶を辿りなおすことが不可欠だ。 本書は、ブラック・インターナショナリズムやネグリチュードに参画した二〇世紀知識人の交流をはじめ、セゼール、ファノン、ギルロイ、グリッサン等、大西洋を横断しながら思考した〈ブラック・ディアスポラ〉たちの歴史を紡ぎなおし、新たな思想航路を描こうと試みる。アフリカからアメリカスへ、カリブ海からヨーロッパへ――政治や文学などあらゆる手段をもって、みずからの「言葉」と「場所」を追い求めた先人たちの多彩な闘いの先に浮かび上がる、解放へと開かれた情景を探る。 『カリブ‐世界論』でカリブ海諸国から西洋政治文化の歪みを逆照射し、『野蛮の言説』では人種差別・優性思想の観点から近代的知を揺さぶった著者による、環大西洋思想のうねりを〈発見〉し続けるための壮大な文学論。 「なぜ詩学が政治に結びつくのか。(…)ここで述べる詩学とは、こうした既成の価値観や秩序を刷新する、新たな感性的次元を〈発見〉する方法である。たとえばフランス語圏のアフリカ系文化において、「ニグロ」は「奴隷」という意味で長く使用されてきた他称にして蔑称だったが、この奴隷としての集団的過去を拒否することなく、むしろこれを引き受けて肯定するためにエメ・セゼールが発明した語こそ〈ネグリチュード〉である。 (…)グリッサンは、ネグリチュードの詩学とはまったく異なるかたちで、〈関係〉や〈全 – 世界〉といった語を用いて、カリブ海の民の集団的経験への深い省察から導出される新しい人間の価値観を作り出そうとし、(…)このような新しい認識のあり方を示すのが詩学である。そして、詩学による〈発見〉が政治的次元に及んでいくとき、私たちはこれを「政治詩学」と呼んでみることができる。」(本書より) ○目次 プロローグ 〈全‐世界〉におけるブラック・ライヴズ・マターは反西洋中心主義、反血統主義を掲げる 地図 年表 第Ⅰ部 ブラック・モダニティの萌芽 第1章 ブラック・モダニティ――両大戦間期パリの黒人学生・知識人の人種意識と近代 第2章 ブラック・インターナショナリズム試論――ブラック・モダニティの政治文化としてのパン・アフリカニズムと国際共産主義 第3章 ネグリチュード、ナショナリズム、カリブ海性――フランス語圏カリブ海地域のディアスポラ知識人群像 一九三〇年代―一九七〇年代 第4章 ブラック・アトランティックの詩的創造力――ポール・ギルロイ『ブラック・アトランティック』 第5章 イギリスにおけるレイシズム――ポール・ギルロイ『ユニオンジャックに黒はない』 第6章 植民地主義とレイシズム――フランツ・ファノン「レイシズムと文化」を中心に 第Ⅱ部 アフリカへのまなざし 第7章 アフリカ文化誌の始まりとしてのニャーム・ングーラ 第8章 独立前夜アフリカにおける言語、文学、政治――「国民詩」論争の争点 補論(1)アラゴンの転向と「国民詩」論 補論(2)ルネ・ドゥペストルの「国民詩」論 第9章 ダヴィッド・ジョップの〈アフリカ〉 第10章 フランツ・ファノンとニグロの身体――「黒人の生体験」再読 第11章 シチュアシオン再考――サルトルとファノン 第Ⅲ部 ポスト・プランテーションの世界 第12章 ポスト・プランテーション文学論――グリッサン、フォークナー、サン=ジョン・ペルス 第13章 グリッサンの〈全‐世界〉――『フォークナー、ミシシッピ』 第14章 『アコマ』あるいはアメリカスに開かれた集団性 第15章 エドゥアール・グリッサンにおける環大西洋奴隷貿易・奴隷制の記憶 第16章 来たるべき世界の叙事詩――パトリック・シャモワゾー『カリブ海偽典』 エピローグ フランス海外県ゼネストの史的背景と〈高度必需〉の思想 あとがき 初出一覧 - 著者プロフィール - 中村 隆之 (ナカムラタカユキ) (著) 1975 年東京生まれ。早稲田大学法学学術院教員。フランス語を主言語とする環大西洋文学、広域アフリカ文化研究、批評と翻訳などを行う。著書に『カリブ-世界論――植民地主義に抗う複数の場所と歴史』(人文書院、2013 年)、『エドゥアール・グリッサン――〈全-世界〉のヴィジョン』(岩波書店、2016 年)、『野蛮の言説――差別と排除の精神史』(春陽堂書店、2020 年)、『魂の形式 コレット・マニー論』(カンパニー社、2021 年)、『第二世界のカルトグラフィ』(共和国、2022 年)。訳書にエメ・セゼール/フランソワーズ・ヴェルジェス『ニグロとして生きる――エメ・セゼールとの対話』(共訳、法政大学出版局、2011 年)、エドゥアール・グリッサン『フォークナー、ミシシッピ』(インスクリプト、2012 年)、『ダヴィッド・ジョップ詩集』(編訳、夜光社、2019 年)など。
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ケアする惑星|小川 公代
¥1,760
講談社 2023年 ソフトカバー 280ページ 四六判 - 内容紹介 - 他者なるものを慈しむ、惑星的な視座。 『アンネの日記』、『おいしいごはんが食べられますように』、ヴァージニア・ウルフ、オスカー・ワイルド、ジェイン・オースティン、ルイス・キャロル、チャールズ・ディケンズ……。 『ケアの倫理とエンパワメント』で注目された英文学者が、ケアをめぐる現代の事象を文学と自在に切り結び語る論考。 目次 1章 ”ケアする人”を擁護する――『アンネの日記』再読 2章 エゴイズムに抗するーーヴァージニア・ウルフの『波』 3章 オリンピックと性規範――ウルフの『船出』 4章 ウルフとフロイトのケア思想 1――『ダロウェイ夫人』における喪とメランコリー 5章 ウルフとフロイトのケア思想 2ーー『存在の瞬間』におけるトラウマ 6章 ネガティヴ・ケイパビリティーー編み物をするウルフ 7章 多孔的な自己ーーアートと「語りの複数性」 8章 ダーウィニズムとケア 1 ー―『約束のネバーランド』と高瀬隼子作品 9章 ダーウィニズムとケア 2ーーウルフの『幕間』 10章 ピアグループとケアーーオスカー・ワイルドの『つまらぬ女』 11章 カーニヴァル文化とケアーールイス・キャロルの『不思議の国のアリス』 12章 格差社会における「利他」を考える――チャールズ・ディケンズの『ニコラス・ニクルビー』 13章 戦争に抗してケアを考えるーースコットの『ウェイヴァリー』とドラマ『アウトランダー』 14章 ケアの倫理とレジスタンスーーオースティンの『レイディ・スーザン』と映画の『ロスト・ドーター』 あとがきーーケアと惑星的思考 - 著者プロフィール - 小川 公代 (オガワ キミヨ) (著/文) 1972年和歌山生まれ。上智大学外国語学部教授。ケンブリッジ大学政治社会学部卒業。グラスゴー大学博士課程修了(Ph.D.)。専門は、ロマン主義文学、および医学史。著書に、『ケアの倫理とエンパワメント』(講談社)、『文学とアダプテーション――ヨーロッパの文化的変容』『文学とアダプテーション2――ヨーロッパの古典を読む』(ともに共編著、春風社)、『ジェイン・オースティン研究の今』(共著、彩流社)、訳書に『エアスイミング』(シャーロット・ジョーンズ著、幻戯書房)、『肥満男子の身体表象』(共訳、サンダー・L・ギルマン著、法政大学出版局)などがある。
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フェイク・スペクトラム 文学における〈嘘〉の諸相 | 納富信留, 明星聖子
¥3,520
勉誠出版 2023年 ハードカバー 312ページ 四六判 縦188mm 横130mm 厚さ18mm - 内容紹介 - 嘘、偽り、騙し、騙り… 否定的な響きをもつこれらの言葉・現象を、私たちは真摯に考えてきたことがあっただろうか? 「嘘も方便」という表現からも捉えられるように、社会におけるこれらの行為は多義的な面を持ち合わせている。 そして、言葉のいとなみが広がる文学の世界には、「フェイクする存在」としての人間が活写されている。 中世から現代にいたる、洋の東西を越えた11の事例を考察することにより、「フェイク」という問題の多面性と本質を浮かび上がらせる画期的な書! 目次 はじめに 納富信留 序章 「フェイク」とは何か、「フェイク」をどう論じるか? 納富信留 第1部 現代とは異なるフェイク 第1章 信憑性の戦略─『ジョン・マンデヴィルの書』をめぐって 松田隆美 第2章 書簡は語/騙る―初期近代イギリスのジャーナリズムとフィクションの誕生 井出新 第3章 近代的作者の誕生―セルバンテスと『贋作ドン・キホーテ』 瀧本佳容子 第4章 公私のせめぎ合いと隠された主題―ダニエル・デフォー『ペスト』をめぐって 高畑悠介 第2部 編集にまつわるフェイク 第5章 正典・外典・偽典─『聖書』をめぐって 伊藤博明 第6章 虚像としての編集─「大島本源氏物語」をめぐって 佐々木孝浩 第7章 「体系哲学者」という虚像のあとで─ヘーゲル講義録をめぐって 下田和宣 第8章 フェイクの悲劇的な帰結─フリードリヒ・ニーチェの『権力への意志』をめぐって トーマス・ペーカー 第3部 現代に生きるフェイク 第9章 フェイクな恋のフェイクな手紙―フランツ・カフカの『判決』と『変身』をめぐって 明星聖子 第10章 共有される疑似現実を生きるということ─トマス・ピンチョン『競売ナンバー49の叫び』をめぐって 中谷崇 第11章 捏造されたホロコースト回想録─ビンヤミン・ヴィルコミルスキーの『断片』をめぐって 北島玲子 あとがき 明星聖子 執筆者紹介 - 著者プロフィール - 納富信留 (ノウトミノブル) (編集) 東京大学教授。東京大学大学院人文科学研究科哲学専攻修士課程修了。91-96年、ケンブリッジ大学大学院古典学部に留学(Ph.D.を取得) 2007-10年まで国際プラトン学会会長を務める。 主な著書に、『ソフィストとは誰か?』(2007年度サントリー学芸賞受賞、ちくま学芸文庫)、『哲学の誕生』(ちくま学芸文庫)、『ソフィストと哲学者の間』(名古屋大学出版会)、『プラトン理想国の現在』(慶應義塾大学出版会)、『プラトンとの哲学』(岩波新書)、『プラトン哲学への旅』(NHK出版新書)など。編書に『世界哲学史』(ちくま新書、2020年)、訳書に、プラトン『ソクラテスの弁明』『パイドン』(以上、光文社古典新訳文庫)がある。 明星聖子 (ミョウジョウキヨコ) (編集) 成城大学教授。専門はドイツ文学、編集文献学。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了。博士(文学)。 主な著書に、『新しいカフカ―「編集」が変えるテクスト』(慶應義塾大学出版会、2002年)、『カフカらしくないカフカ』(慶應義塾大学出版会、2014年)、『テクストとは何か―編集文献学入門』(慶應義塾大学出版会、2015年)などがある。
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佐藤真の不在との対話|小森 はるか、小林 茂、旗野 秀人、赤坂 憲雄、永野 三智、山根 貞男、細馬 宏通、神谷 丹路、保坂 和志、諏訪 敦彦、北小路 隆志、八角 聡仁、石田 優子 里山社 (編集)
¥1,650
里山社 2021年 ソフトカバー 160ページ A5判 縦188mm 横127mm 厚さ10mm - 内容紹介 - 『阿賀に生きる』『SELF AND OTHERS』『まひるのほし』『花子』など、優れたドキュメンタリー映画を生み出し、07 年に急逝した映画作家、佐藤真。それまで事件や社会課題を糾弾するのが命題だったドキュメンタリーというジャンルにおいて、「見えない世界」を撮り、問題の本質を炙り出すという方法論は、普遍性をもち、多くの示唆に富んでいた。東日本大震災以後、混迷を極め、脊髄反射とも言うべき言説も飛び交う日本社会で、今もなお深い思考を促す佐藤の映画と言葉のもつ意味を探ろうとする人びとによる対話集。 「本当に特殊なのはそれを見ている自分なんだっていうことに気づかせる映画はなきゃいけないと思う。ドキュメンタリーというジャンルのなかで、日本でそういうことに触れようとしていたのは佐藤さんだけだった」(諏訪敦彦) 目次 小森はるか(映画監督)佐藤真監督の葛藤に救われた 小林茂(映画監督)わからないから撮る 山根貞男(映画評論家)映画哲学者、佐藤真 赤坂憲雄(民族学者)×旗野秀人(「阿賀に生きる」発起人、「冥土のみやげ企画」主催)×小森はるか「福島に生きる」は可能か 旗野秀人×永野三智(水俣病センター相思社) 水俣病発生から「遅れてきた若者」だからできること 神谷丹路(日韓史研究者、佐藤真・妻)プライベートな世界を撮ることに向かった時期 細馬宏通(人間行動学者)意味よりも過程を見ていたい 保坂和志(小説家)見つめられないものこそ日常 諏訪敦彦(映画監督)世界は見渡すことができない 石田優子(映画監督)彷徨いつづけることを認める 師としての佐藤真
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無垢の歌 大江健三郎と子供たちの物語|野崎 歓
¥2,200
生きのびるブックス 2022年 ハードカバー 232ページ 四六判 縦194mm 横137mm 厚さ20mm - 内容紹介 - 大江健三郎の描く子供たちはなぜ、ひときわ鮮烈な印象を残すのか。 〈無垢〉への比類なき想像力にせまる、まったく新しい大江論にして、最良の“入門書”。 これから大江文学と出会う世代へ。読まず嫌いのまま大人になった人へ。 大江文学の意外な面白さに触れる一冊。 「子供たちに重要な役割を演じさせる大江作品は、子供時代と強いきずなで結ばれ、子供とつながる想像力に支えられている。(略) 若くしてのデビューから、老齢に至るまで、一貫して『チャイルドライク』であり続け、子供の無垢への追憶と志向を保ち続けたところに、大江文学の素晴らしさを見出したいのである。(本文より)」 目次 ◆第一章 チャイルドライクな文学のために 「文学国語」と「論理国語」 大江健三郎を教科書に? 子供っぽさの魅力 チャイルドライクな文学 ◆第二章 学生作家の栄光と不安 憧れの仏文 翻訳から創作へ くそまじめな精神を打破せよ さらば、象牙色のジャガー ◆第三章 赤んぼうの敵 本当の主人公生殺与奪の権 三島由紀夫は批判する にび色の瞳をしたきみ ◆第四章 一九六九年のパーコーメン ホメーロスのごとくに 切除と不在 頭部への打撃 共感の源泉 ◆第五章 鳥は歌い、鯨は叫ぶ ギミー・シェルター 「善きもの」と「魂」 樹木は鯨となる 精霊としての幼児 ◆第六章 逆転また逆転 子供たちの行進 空飛ぶ円盤と立体スクリーン オノマトペの嵐 走れ、われわれの子供ら ◆第七章 反時代的ゲーム 村の消滅にあらがって 困惑させる細部について 記紀神話の世界へ 再生する神話 ◆第八章 神隠し願望 不屈の抵抗かくれんぼの誘惑 「神隠しに遭いやすき気質」 少年は境界を超える ◆第九章 男たちよ! 長篇から短篇へ 同級生交歓 壊れていく男たち パパの帰還 ◆第一〇章 「ただいま」と「お帰り」 敷居をまたぐとき 出たり入ったりする運動 「死んだ人間もまた帰ってくる」 帰還する子供 ◆第一一章 上品な人間 人物再登場 非=性的人間? 非=生産的人間? 人間の真っ当さ ◆第一二章 未来の子供 イーヨーとお祖母ちゃん 個人神話を造り直す 時間差と悲しみ オープンエンディング 文学は再来する エピローグ――年老いたヒカリとともに ◆あとがき 版元から一言 ・学術的な大江論が多いなか、かつてなく読みやすく中高生から大人まで楽しめます。 ・講談社エッセイ賞受賞者による、ドライブ感あふれる文体が魅力。 ・戦争や感染症、環境汚染…。大江の作品世界がリアルに感じられる今、私たちが足もとを見つめ直す機会を提供します。 - 著者プロフィール - 野崎 歓 (ノザキ カン) (著/文) 1959年新潟県生まれ。フランス文学者、翻訳家、エッセイスト。放送大学教養学部教授、東京大学名誉教授。2001年に『ジャン・ルノワール――越境する映画』(青土社)でサントリー学芸賞、2006年に『赤ちゃん教育』(講談社文庫)で講談社エッセイ賞、2011年に『異邦の香り――ネルヴァル「東方紀行」論』(講談社文芸文庫)で読売文学賞、2019年に『水の匂いがするようだ――井伏鱒二のほうへ』(集英社)で角川財団学芸賞受賞、2021年に小西国際交流財団日仏翻訳文学賞特別賞受賞。プレヴォ、スタンダール、バルザック、サン=テグジュペリ、ヴィアン、ネミロフスキー、トゥーサン、ウエルベックなどフランス小説の翻訳多数。著書に『こどもたちは知っている――永遠の少年少女のための文学案内』(春秋社)、『フランス文学と愛』(講談社現代新書)、『翻訳教育』(河出書房新社)、『アンドレ・バザン――映画を信じた男』(春風社)、『夢の共有――文学と翻訳と映画のはざまで』(岩波書店)ほか。
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ロケットの正午を待っている|波戸岡 景太
¥1,980
港の人 2016年 ハードカバー 67ページ 縦200mm - 内容紹介 - トマス・ピンチョン論を中心に、現代文学全般、文化論へと批評のフィールドを広げる気鋭のアメリカ文学研究者が問う、希望とともに文学を生き直す文学評論の試み。批評、エッセイの枠組みを超え、今を生きる私たち自身にとって新鮮で、そして切実な響きをもって語られる新しい文学の言葉が、活版印刷による書物に託される。
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今日よりもマシな明日 文学芸能論|矢野 利裕
¥1,870
講談社 2006年 ソフトカバー 258ページ 四六判 - 内容紹介 - 「群像」誌上に発表し、話題となった傑作文芸批評をまとめた試みの作家論集。 序論 町田康論 いとうせいこう論 西加奈子論 ほか小山田圭吾、みうらじゅんにも言及。 「自分ならざる者を精一杯に生きる」 “今日よりも少しはマシな明日を迎えるために” ――《芸能》の核心は、この「ウソ/本当」の二分法を貫く、一生懸命で心を込めたいとなみに宿っている。このような意味において、小説もまた《芸能》のいち形態である、と言える。小説もまた、音楽や映画や漫画といった他の表現と同様、ここにはない喜びを、悲しみを、憎しみを、愛しさを現前化しようとする。 小説とは、わたしたちが生きる日常とはまったく異なる出来事が上演される場所だ。作中人物たちはゆたかな世界を演出すべく、小説の舞台を動きまわり、読者の気を引こうとする。そして、彼らの行動を追い、彼らに感情移入さえする読者は、ほんのつかのま、読書行為を通じて、普段の自分とは違う何者かになる。もしかしたら、読むまえと読んだあととでは、世界が一変しているかもしれない。すぐれた《芸能》とはおうおうにして、そういうものだ。 大事なことは、《芸能》の世界が少なからず、現実の世界なり社会なりと異なっている、ということだ。逆に言えば、現実の社会を追認するような《芸能》は物足りない。退屈な社会を生きるわたしたちが、ほんのひとときでも、《芸能》に触れて日常から抜け出す。その逸脱による解放的な喜びこそ、明日以降を生きるための活力となるのだ。 いち生活者の僕は、だからこそ、小説を読む。だからこそ、音楽を聴く。明日以降の生活を少しでもマシなものにするために。――(本書序論より抜粋) - 著者プロフィール - 矢野 利裕 (ヤノ トシヒロ) (著/文) 1983年東京都生まれ。批評家、DJ、教育者でもある。2014年「自分ならざる者を精一杯に生きるーー町田康論」で第57回群像新人文学賞評論部門優秀作受賞。著書に『コミックソングがJ-POPを作った』(P-VINE)、『ジャニーズと日本』(講談社現代新書)、共著に大谷能生・速水健朗・矢野利裕『ジャニ研!』(原書房)、宇佐美毅・千田洋幸編『村上春樹と二十一世紀』(おうふう)など。
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坂口安吾論 | 柄谷行人
¥2,860
インスクリプト 2017年 ハードカバー 276ページ 四六判 - 内容紹介 - 反戦・反軍備、反ネーション、9条擁護……、今こそアクチュアルな安吾の全貌を示す柄谷安吾論の集大成! 『坂口安吾全集』全17巻(筑摩書房)の編集委員である柄谷行人が、月報に連載した坂口安吾論180枚を第一部に、2005年の論考「坂口安吾のアナキズム」や2010年に米国の安吾論集に寄稿した「合理への「非合理」な意志」、1975年の著名な評論「『日本文化私観』論」などを収録し、大幅改稿による柄谷安吾論の集大成として刊行。柄谷氏の安吾論にはこれまで『坂口安吾と中上健次』(講談社文芸文庫)がありますが、本書が初の単独の安吾論集であり、7割以上が初めての単行本収録となります。日本人の自己欺瞞を蹴倒す安吾的精神、戦争をはさんで書かれた安吾の言説の、今もアクチュアルな意味あいを引き出し、虚飾を排したその文学の魅力を甦らせる評論集。 目次 目次 第一部 1 或る時代錯誤 2 二つの青春 3 僧侶と堕落 4 美学の批判 5 美と崇高 6 ふるさと 7 子供 8 超自我 9 ファルス 10 イノチガケ 11 殉教 12 穴吊し 13 もう一つの近代の超克 14 歴史家としての安吾 15 歴史の探偵=精神分析 16 戦後の革命 第二部 『日本文化私観』論(一九七五年) 安吾はわれわれの「ふるさと」である(一九八一年) 堕落について(一九八八年) 坂口安吾のアナキズム(二〇〇一年) 合理への「非合理」な意志(二〇〇四年) 第三部 新『坂口安吾全集』刊行の辞(一九九七年) 坂口安吾の普遍性(一九九八年) [対談]新『坂口安吾全集』編集について/関井光男・柄谷行人(一九九八年) あとがき
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あの本屋のこんな本 本屋本書評集Ⅰ | 雅子ユウ
¥990
H.A.B 2022年 ソフトカバー 84ページ 文庫判 - 内容紹介 - 「本屋の本を読む。」 ただただ本屋について書かれた本を読み、それを紹介した書評集。といいつつ本屋の定義は曖昧で、取次など流通関連の本も多く収録。著者の守備範囲から、ISBNの付いていない昭和の本も発掘した本を売る人の本を読む本(Book of Bookstore's Book)第一弾。 (紹介した本) 『街の本屋はねむらない』 著:奈良敏行+田中淳一郎 出版社:アルメディア ISBN:4900913073 発行:1997/6/13 『大海原―さらなる発展に向けて』 著:藤野邦夫 出版社:太洋社 ISBN:なし 発行:1996/12/20 『本屋な日々 青春篇』 著:石橋毅史 出版社:トランスビュー ISBN:9784798701677 発行:2018/6/20 『ブックセラーズ・ダイアリー』 著:ショーン・バイセル 訳:矢倉尚子 出版社:白水社 ISBN:9784560098554 発行:2021/8/10 『ヨキミセサカエル 本の街・神田神保町から』 著:柴田信 出版社:日本エディタースクール出版部 ISBN:4888881723 発行: 1991/2/20 『神保町「書肆アクセス」半畳日記』 著:黒沢説子、畠中理恵子 出版社: 無明舎出版 ISBN:4895443035 発行: 2002/5/20 『本屋がアジアをつなぐ 自由を支える者たち』 著:石橋毅史 出版社:ころから ISBN:9784907239411 発行: 2019/8/15 『本の未来を探す旅 ソウル』 編著:内沼晋太郎+綾女欣伸 出版社:朝日出版社 ISBN:9784255010014 発行: 2017/6/1 『本の未来を探す旅 台北』 編著:内沼晋太郎+綾女欣伸 出版社:朝日出版社 ISBN:9784255010847 発行: 2018/12/10 『書店本事 台湾書店主43のストーリー』 文:郭怡青 絵:欣蒂小姐 訳:小島あつ子、黒木夏兒 出版社:サウザンブックス社 ISBN:9784909125125 発行:2019/6/27 『日中友好に生涯を捧げた岡山人 内山完造の世界』 著:猪木正美 出版社:日本文教出版 ISBN:9784821253197 発売日: 2020/10/19 『花甲録』 著:内山完造 出版社:岩波書店 ISBN:なし 発行: 1960/9/20 『本屋一代記 京都西川誠光堂』 著:松木貞夫 出版社:筑摩書房 ISBN:4480853464 発行: 1986/11/10 『有的外博 丸善創業者早矢仕有的の知の環』 著:原田幸四郎 出版社:喜追書房 ISBN:9784600002961 発売日:2020/10/14 『出版流通とシステム』 著:村上信明 出版社:新文化通信社 ISBN:なし 発行: 1984/6/8 『ものがたり・東京堂史』 著:田中治男 出版社:東京出版販売株式会社 ISBN:なし 発売日:1975/12/25 『業務日誌余白―わが出版販売の五十年』 著:松本昇平 出版社:新文化通信社 ISBN:なし 発売日:1981/2/25 『私の人生』 著:栗田確也 出版社:栗田書店 ISBN:なし 発売日:1968/6/1 『日本出版販売史』 著:橋本求 出版社:講談社 ISBN: なし 発売日: 1964/1/17 『書店ほどたのしい商売はない』 著:上村卓夫 出版社:日本エディタースクール出版部 ISBN:9784888883740 発行:2007/3/5 (出版社紹介文より)
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読者に憐れみを ヴォネガットが教える「書くことについて」 | カート・ヴォネガット, スザンヌ・マッコーネル, 金原瑞人 (翻訳), 石田文子 (翻訳)
¥3,520
フィルムアート社 2022年 ハードカバー 616ページ 14.3 x 4.4 x 19.5 cm - 内容紹介 - 『スローターハウス5』『タイタンの妖女』などで知られる戦後アメリカを代表する作家、 カート・ヴォネガットの「書くこと」と「人生について」。 辛辣で、機知に富み、心優しきニヒリスト、ヒューマニストで、教師としては熱血漢。 「書くことは魂を育むこと」を生涯の信条としたヴォネガットの教えを、彼自身の言葉と小説の引用、そして周囲の人々の談話からまとめた、「ヴォネガット流・創作指南+回顧録的文章読本」。 生誕100年を記念し、待望の邦訳! 「本書の各所に引用されるヴォネガットの助言を読むうちに、自分にも小説が書けるという気持ちになってくる。それはとても苦しいものであることをヴォネガットが強調してもだ。何度も書き直し、声に出して読み、読者の負担を最低限にするべきことを繰り返し言う。でもしかし、その人にしか語りえないことというものがあるのだ。」 ――円城塔(作家) カート・ヴォネガットは、口癖のようによくこう言っていた。 「芸術活動にたずさわることは、魂を育む方法のひとつだ」。 そう言ったあと、ヴォネガットは顔をしわくちゃにして唇をぎゅっと引き結んでいた。 それは彼がこの考えをひじょうに重要だと信じていたからだ。 『読者に憐れみを』はヴォネガットのそんな考えを具体的に表し、 書くことと人生について、そしてそのふたつがなぜつながっているのかを明らかにした、 何かを書こうとしているすべての人への珠玉のアドバイスである。 本書では、ヴォネガットがどのようにして作家になったのか、 なぜ作家になることが彼にとって重要だったのか、 そしてそれがなぜ本書の読者にとっても重要なのかが、 ヴォネガット自身の言葉と実際の作品の引用から、 彼の教え子であったマッコーネルによって丁寧に分析され、 余すところなく説明される。 作家としての苦闘や、戦争体験や母親の死など、彼の人生に生涯つきまとった「影」についても言及しながら、 戦後の時代精神を体現するベストセラー作家となった成功の秘訣のほか、 「つねに学び、それをつねに教えていた」という教師としての素顔も明らかにされていく。 さらに、文章を書いたり物語を書く際に必要な、原動力、才能、想像力の飛躍、勤勉さ、反省、ブラックジョークについて、生計を立てること、心身のケア、はたまたコミュニティの重要さにいたるまで、さまざまな角度からユーモアを交えながら真摯に語られる。 加えて、物語はどこから生まれるのか、冒頭部の書き方、プロット、登場人物の書き方、耳で聞く文章と目で見る文章の違い、見直しと校閲などのコツとテクニックについても惜しげもなく披露される。 その驚くほど実践的なアドバイスは、作家志望者のみならず、文章を書く時に悩んだことのある人、何かの課題と格闘して自分は無能だと感じているすべての人の心に突き刺さるだろう。 ヴォネガットの手稿や実際の原稿、メモ書きや、出版社からの手紙なども多数収録した、ヴォネガットファン必見の一冊となっている。 ちょっと風変わりで、だけど読むと書き続ける勇気が湧いてくる、 カート・ヴォネガットの教えを一冊にまとめた、創作指南+回顧録の決定版。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー [……]猫背のカート・ヴォネガットは、居心地の悪い薄暗い教室で、我々十二人の学生に対して、魅力的なかすれた声で、開口一番にこういった。「長編小説は死んだ。いまどき小説など誰も読まない。アメリカはみずからの想像力を失った。もう終わりだ」 私の記憶では、ヴォネガットはそういったあと、ひっきりなしにタバコを吸いながら、さらにだらだらと話し続けた。もしかしたらタバコを吸っていたというのは私の記憶違いかもしれないが、彼のいったことは正確に覚えている。ヴォネガットの長口舌が終わったあと、学生のひとりが蚊の鳴くような声でおずおずとこう質問した。 「ということは、先生は、そのぉ、僕たちは小説を書くとか、そういうことはよしたほうがいいとおっしゃってるんですか?」 これに対して、ヴォネガット先生は(もちろん、タバコの火をもみ消しながら)、椅子の上で心持ち背筋を伸ばし、心持ち目に輝きを取り戻して、こういった。 「いやいや、違う。誤解してもらっちゃ困る。きみたちは小説家として生計を立てることはないだろう。いくらがんばっても無理だ。しかし、だからといって、書いてはいけないということではない。きみたちはダンスのレッスンを受けるのと同じ理由で小説を書かかねばならない。高級レストランでのフォークの使い方を学ぶのと同じ理由で書かねばならない。世界を見る必要があるのと同じ理由で書かねばならない。それはたしなみだ」 ――本文「第9章 魂の成長」より 「ヴォネガットの講座での課題をいま振り返ってみると、文章を書く技術より、もっと大事なことを教えるためのものだったとわかる。それは私たち学生に、自分で考えさせたり、自分はどんな人間かを理解させたりするものだった。自分は何が好きで、何が嫌いで、どんなことで感情が爆発するのか、どんなことでときめくのかを自覚させるためのものだった。 私はこの本に収めたヴォネガットの言葉によって、読者にも同じようなことを理解してもらいたいと願っている」 ――マッコーネルによる「はじめに」より ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 【目次】(仮) はじめに 第1章 何かを書こうとしているすべての人へのアドバイス 第2章 小説を書くことについて 第3章 原動力 第4章 回り道をしながら前進 第5章 まっしぐらに前進 第6章 突破 第7章 価値あるテーマを見つけることへの不安、死の欠乏 第8章 原動力の切り札、すなわち恐れないこと 第9章 魂の成長 第10章 避難所 第11章 偉大な芸術をつくるもの、すなわち芸術と魂 第12章 変化の触媒 第13章 教師、すなわちもっとも気高い職業としての作家 第14章 教室のヴォネガット 第15章 重みと感触 第16章 才能 第17章 勤勉さ 第18章 落とし穴 第19章 方法論主義 第20章 実体化 第21章 増殖 第22章 再生 第23章 真珠の中の真珠 第24章 冒頭部 第25章 プロット 第26章 登場人物 第27章 耳で聞く散文 第28章 目で見る散文 第29章 ジョーク好き 第30章 ブラックユーモア 第31章 もっといい話になるように──見直しと校閲 第32章 どれにしようかな、すなわち選択 第33章 生計を立てること 第34章 心身のケアをすること 第35章 人生と芸術で遊びほうけること 第36章 愛、結婚、そしてベビーカー 第37章 いっしょのほうがいい、すなわちコミュニティ
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現代ゲーム全史 文明の遊戯史観から | 中川 大地
¥3,080
SOLD OUT
早川書房 2016年 ソフトカバー 576ページ 四六判 - 内容紹介 - スペースインベーダー、ファミコン、ドラクエ、FF、プレステ、ポケモン、Wii、パズドラ、ingressまで、時代を画したあらゆるデジタルゲームから分析する、画期的な現代文明論1000枚。
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百科全書 世界を書き換えた百科事典 | 井田 尚
¥2,640
慶應義塾大学出版会 2019年 ハードカバー 232ページ 四六判 - 内容紹介 - ▼シリーズ「世界を読み解く一冊の本」(全10巻)、第5弾! ▼啓蒙思想の集大成、『百科全書』の世界へ。 革命神話と啓蒙神話に由来する紋切り型のイメージから離れて、ディドロとダランベールが構想した百科事典としての本来の姿に立ち戻ることで見えてくる景色とは? 『百科全書』の書物としての成り立ちをたどり、その知識の森へと案内する。 目次 序 『百科全書』とは何か Ⅰ 『百科全書』を編む 1 それまでの専門辞典と『百科全書』の決定的な違い 2 『百科全書』の書き手と読み手 いわゆる「百科全書派」の実は多様な実態 執筆者と読者の主力を担った混合エリート層 3 『百科全書』刊行計画の三大功労者 ──ディドロ、ダランベール、 ジョクール 統括プロデューサー、ディドロ 『百科全書』のアカデミックな顔、ダランベール 『百科全書』第三の男、「項目製造機」 ジョクール 4 『百科全書』の執筆陣 ──啓蒙主義のオールスターとあらゆる専門 家が結集 「序論」に記載された執筆協力者のリスト 「緒言」(第二巻─第八巻)で紹介されている主な執筆協力者のリス ト 5 『百科全書』はどのように編纂・刊行されたのか チェンバーズ百科事典の仏訳から『百科全書』へ 度重なるスキャンダルと刊行中断を乗り越えて ついに完了した『百科全書』刊行計画 Ⅱ 『百科全書』はどう読まれたのか 1 宣伝に貢献した反百科全書派の誹謗中傷 2 『百科全書』の普及を後押しした定期刊行物 3 スイス、イタリアを中心にヨーロッパ中に広がる『百科全書』 4 『百科全書』の後世への影響 欧米および日本の場合 『百科全書』と啓蒙主義の功罪 Ⅲ 『百科全書』の新機軸──人間知識のネットワーク化とビジュアル化 1 販売促進パンフレット「趣意書」とディドロの宣伝戦略 チェンバーズ百科事典というモデル 学芸の枝分かれをビジュアル化した「人間知識の体系図解」 編纂者ディドロの役割 学問と自由学芸を再定義する 技芸を再評価する 『百科全書』と小説『ラモーの甥』に通底するもの 記憶、理性、想像力の三大能力 記憶に由来する歴史 理性に由来する哲学 想像力に由来し模倣を原理とする詩 人間中心主義的な学芸分類 2 ダランベールの「序論」を読んでみる ディドロの「趣意書」との違い 百科全書派の哲学的プロパガンダ 感覚論を原理とする人間中心主義的な学芸観 「有益な知識」と「楽しい知識」の起源 自然学の諸分野の起源 自然学以外の学芸の起源 技芸に対する差別の起源 「世界地図」としての「人間知識の体系図解」 知のナビゲーション・システムの限界 文芸と美術の分野を代表する一七世紀フランスの偉人たち 哲学の進歩を語る──ベーコン、デカルト、ニュートン 一八世紀フランスの天才と学芸の擁護 Ⅳ 『百科全書』を読む、世界を読む 1 項目「百科全書(ENCYCLOPÉDIE)」と世界解釈としての辞書編 纂国益と人類の進歩 『百科全書』と田園風景のメタファー 2 機械技術の図解──項目「靴下編み機(BAS)」(執筆者ディド ロ) 「物」を名付けることの難しさ 図解による技術の可視化と「物」の見方の変革 3 国民の常識を書き換えるディドロ──文法項目における語彙の再定 義 先行辞典類の再利用 特権階級に対する諷刺──項目「謙虚な(HUMBLE)」 ディドロの唯物論的な自然観──項目「不完全な(IMPARFAIT)」 西欧社会の結婚制度に対する批判──項目「解消不可能な (INDISSOLUBLE)」 国語の語彙記述がもたらす発想の転換 4 百科全書派の人間観と啓蒙主義的な文明・社会批判 『百科全書』の大見出しの項目の重要性 世界と学芸の中心としての人間──項目「人間(分類項目名なし)」 (執筆者ディドロ) 文明人の歪んだ身体──項目「人間(博物学)」(執筆者ディドロ) 国家の富の源としての人間と土地──項目「人間(政治学)」(執筆 者ディドロ) 5 アンシャン・レジーム批判と人権思想 過重な租税負担と中間搾取に対する批判──項目「租税」(執筆者ジョ クール) 百科全書派による奴隷制批判──項目「奴隷制度」(執筆者ジョクー ル) 奴隷制廃止に項目「奴隷制度」は貢献したのか 「プロライター」ジョクール Ⅴ 『百科全書』の哲学的な歴史批判 1 ディドロによる哲学史項目の迷信・誤謬批判 知識の四カテゴリーと誤謬の歴史 ディドロの哲学項目群「(古今の)哲学の歴史」 古代エジプト人の欺瞞──項目「エジプト人」(執筆者ディドロ) エジプト人と競い合ったエチオピア人──項目「エチオピア人」(執 筆者ディドロ) カルデア人の年代学の疑わしさ──項目「カルデア人」(執筆者ディ ドロ) 2 「歴史」と「作り話」の違い ──項目「歴史(HISTOIRE)」(執 筆者ヴォルテール) 3 占いという迷信 ──項目「占術(DIVINATION)」(執筆者ディ ドロ) あらゆる誤謬を論破するコンディヤック 占星術の起源 ディドロによる書き換えの啓蒙的な狙い キケロに託されたフィロゾフの理想像 Ⅵ 『百科全書』と同時代の科学論争 1 『百科全書』の論争的な性格 2 ニュートン主義を擁護する──項目「引力(ATTRACTION)」 (執筆者ダランベール) 「コピー&ペースト」による編集術 なぜニュートンの引力説はデカルトの渦動説に勝るのか 哲学的仮説の域を越えた万有引力の法則 科学のパラダイム転換に自ら加担するダランベール おわりに 『百科全書』と世界の解読 『百科全書』は世界を変えたのか?──書物と世論をつなぐ談話の力 『百科全書』とウィキペディア、そして百科事典の未来 『百科全書』研究の今 電子化プロジェクトと研究の未来 日本語で読める『百科全書』入門ブックガイド 注 参考文献 あとがき - 著者プロフィール - 井田 尚 (イダ ヒサシ) (著) 青山学院大学文学部教授。18世紀フランス思想専攻。 東京大学大学院人文社会系研究科博士課程満期退学。パリ第8大学博士課程修了。博士(DL)。 主な著書に、Genèse d'une morale matérialiste : Les passions et le contrôle de soi chez Diderot (Paris, Honoré Champion, 2001)、『科学思想史』(共著、勁草書房、2010年)、『百科全書の時空 典拠・生成・転位』(共著、法政大学出版局、2018年)、主な編訳書に『ディドロ著作集 第4巻 美学・美術 付・研究論集』(法政大学出版局、2013年)がある。
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大槻文彦『言海』 辞書と日本の近代 | 安田 敏朗
¥2,200
慶應義塾大学出版会 2018年 ハードカバー 208ページ 四六判 - 内容紹介 - ▼シリーズ「世界を読み解く一冊の本」(第1期・全10巻)、刊行開始! 言葉の海へ、漕ぎ出そう! 国語学者・大槻文彦が、明治期に編纂した日本初の近代的国語辞典 『言海』。 大槻は 『言海』 を通して、世界をどのように切り分けようとしたのか。 辞書が社会的に果たした役割とともに描き出す。 目次 凡例 序 なんのための辞書 国会と辞書 辞書と語義――『一九八四年』的世界のなかで 文明国標準としての辞書 『言海』刊行の祝辞から 藩閥を越える可能性――辞書の近代 新世代と辞書――上田万年の場合 「読み物」としての『言海』 辞書は読まれたのか 『言海』と資料について Ⅰ 大槻文彦とその時代 大槻文彦とはだれか 幕末に生きたということ 大槻文彦自伝 地誌著述の意味 大槻文彦のナショナリズム 旧臣としての臣民 地誌から文法へ――弱肉強食の世界のなかで 国語と民族と独立と 文部省『百科全書』「言語篇」の翻訳――「言語」の問題 日本語と諸言語の位置――「万国言語の共進会」論にみる言語の優劣 『日本小史』にみる文明史観 上田万年の剽窃――Chambersの「Language」と大槻文彦の「言語 篇」 文典研究の展開――『支那文典』・文法会 『言海』と「語法指南」の需要 大槻文彦の著述傾向 近代日本語の確立へ――国語調査委員会などへの参加 文学博士号授与について 博士会の学位 『大言海』へ――『大言海 文献集』などから 語源へのこだわり 語源という問題――実用性と国語の純粋性と 大槻文彦、逝く 明治百傑となった大槻文彦 Ⅱ 『言海』のめざしたもの 辞書と字引と字典と辞典と 新しい「辞書」 『言海』とはなにか 近代的普通語辞書 「普通語」とはなにか 「普通」という暴力――青田節『方言改良論』から 日本辞書とは――日本語を日本語で説明すること 外来語・和語・漢語およびその表記 五十音排列という新秩序 語法指南(日本文典摘録) 「ことばのうみ の おくがき」 Ⅲ 『言海』からみる世界 表象空間のなかの『言海』 「言海システム」――網羅と排除 網羅と規範化 文語文典から口語文典へ 同化と口語 松下大三郎の口語研究 はなしことばの一定のために――「です」への嫌悪から 『口語法』『口語法別記』へ 曖昧な同化 風儀としての殉死 同文という問題 かなづかい表音化の主張 宣伝のなかの『言海』 日露戦争と『言海』縮刷版 旅順攻囲戦と『言海』 日露講和と『言海』 「売れた書物」・時代に寄りそう辞書 賞品としての『言海』 辞書は国家がつくるものなのか 参考文献 - 著者プロフィール - 安田 敏朗 (ヤスダ トシアキ) (著) 一橋大学大学院言語社会研究科准教授。近代日本言語史専攻。 東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。博士(学術)。 著作に、『漢字廃止の思想史』(平凡社、2016年)、『「国語」の近代史――帝国日本と国語学者たち』(中央公論新社、2006年)などがある。
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ことばと vol.2
¥1,870
書肆侃侃房 2020年 ソフトカバー 328ページ A5判 - 内容紹介 - 【巻頭表現】 いとうひでみ 【創作】 佐藤亜紀 瀬尾夏美 滝口悠生 【特集 ことばと演劇】 ◎戯曲 飴屋法水 岡田利規 ◎小説 綾門優季 犬飼勝哉 鳥山フキ 中村大地 松原俊太郎 宮﨑玲奈 本橋龍 ◎対談 山下澄人×佐々木敦 【第一回ことばと新人賞】 佳作 金名サメリ 永井太郎 【翻訳】 アリ・スミス 木原善彦訳 【本がなければ生きていけない】 久保明教 児玉雨子