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見えないものを探す旅 旅と能と古典 | 安田登
¥1,650
亜紀書房 2021年 ソフトカバー 160ページ 四六変型判 - 内容紹介 - いつもの風景が、その姿を変える 単なる偶然、でも、それは意味ある偶然かもしれない。 世界各地へ出かけ、また漱石『夢十夜』や三島『豊饒の海』、芭蕉など文学の世界を逍遥し、死者と生者が交わる地平、場所に隠された意味を探し求める。 能楽師・安田登が時空を超える精神の旅へといざなう。 私たちには、「見えないもの」を見る力が備わっています。 「目」を使わないでものを見る力です。(まえがきより) 目次 ■ はじめに ■ 旅 ▶ 敦盛と義経 ▶ 奄美 ▶ チベットで聴いた「とうとうたらり」 ▶ 復讐の隠喩 ▶ 人待つ男 ▶ 孤独であることの勇気 ▶ ベトナムは美しい ▶ 生命の木 ■ 夢と鬼神――夏目漱石と三島由紀夫 ▶ 『夢十夜』 ▶ 待ちゐたり ▶ 太虚の鬼神――『豊饒の海』 ■ 神々の非在――古事記と松尾芭蕉 ▶ 笑う神々――能『絵馬』と『古事記』 ▶ 謡に似たる旅寝 ▶ 非在の蛙 ■ 能の中の中国 ▶ 西暦二千年の大掃除 ▶ 時を摑む ▶ 麻雀に隠れた鶴亀 ▶ 超自然力「誠」 ▶ 神話が死んで「同」が生まれる ■ 日常の向こう側 ▶ 心のあばら屋が見えてくる ▶ レレレのおじさんが消えた日 ▶ 掃除と大祓 ▶ 死者は永遠からやってくる ■あとがき - 著者プロフィール - 安田 登 (ヤスダ ノボル) (著/文) 下掛宝生流能楽師。1956年千葉県銚子市生まれ。 高校時代、麻雀とポーカーをきっかけに甲骨文字と中国古代哲学への関心に目覚める。能楽師のワキ方として活躍するかたわら、『論語』などを学ぶ寺子屋「遊学塾」を、東京(広尾)を中心に全国各地で開催する。現在、関西大学特任教授。 著書に『あわいの力 「心の時代」の次を生きる』、シリーズ・コーヒーと一冊『イナンナの冥界下り』(ともにミシマ社)、『能 650年続いた仕掛けとは』(新潮新書)、『あわいの時代の『論語』 ヒューマン2.0』(春秋社)、『野の古典』(紀伊國屋書店)など多数。
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共有地をつくる わたしの「実践私有批判」 | 平川克美
¥1,980
SOLD OUT
ミシマ社 2022年 ソフトカバー 224ページ 四六判 縦188mm 横128mm 厚さ17mm - 内容紹介 - 私有財産なしで、機嫌よく生きてゆく 銭湯、食堂、喫茶店、縁側…… 誰のものでもあり、誰のものでもなく。 『小商い』の終着点を描いた私小説的評論 ミシマ社創業15周年記念企画 『小商いのすすめ』から十年。 消費資本主義がいよいよ行き詰まる中、 「小商いの哲学」を実践するすべての人に贈る。 この社会を安定的に持続させてゆくためには、社会の片隅にでもいいから、社会的共有資本としての共有地、誰のものでもないが、誰もが立ち入り耕すことのできる共有地があると、わたしたちの生活はずいぶん風通しの良いものになるのではないか――本文より 目次 第一章 欲望の呪縛から逃れる 第二章 非私有的生活への足掛かり 第三章 リナックスという共有地 第四章 共同体のジレンマ 第五章 家族の崩壊 第六章 消費資本主義から人資本主義へ 第七章 共有地をつくる - 著者プロフィール - 平川克美 (ヒラカワカツミ) (著/文) 文筆家、「隣町珈琲」店主。1950年、東京・蒲田の町工場に生まれる。早稲田大学理工学部機械工学科卒業後、翻訳を主業務とするアーバン・トランスレーションを設立。1999年、シリコンバレーのBusiness Cafe Inc.の設立に参加。2014年、東京・荏原中延に喫茶店「隣町珈琲」をオープン。著書に『小商いのすすめ』『「消費」をやめる』『21世紀の楕円幻想論』(いずれもミシマ社)、『移行期的混乱』(ちくま文庫)、『俺に似たひと』(朝日文庫)、『株式会社の世界史』(東洋経済新報社)など多数ある。
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ミュージック 「現代音楽」をつくった作曲家たち| ハンス・ウルリッヒ・オブリスト, 篠儀直子(翻訳), 内山史子(翻訳), 西原尚(翻訳)
¥2,860
フィルムアート社 2015年 ソフトカバー 416ページ 四六判 - 内容紹介- 現代音楽の各ジャンルの第一人者たちに、H.U.オブリストが迫る。 『キュレーション 「現代アート」をつくったキュレーターたち』に続く第二弾! 1950年代以来西洋で生み出されてきた音楽とその形式が、視覚芸術・文学・建築・映画における前衛と取り結ぶ関係についての研究書。 ──(序文より) 現代音楽家たちの知性と魂についての、途方もなく豊かな記録! 各人の性格や雰囲気、手法、ほかにもいろいろなものを明らかにしてくれる──まさにインスピレーション! ──ビョーク パブリシティ掲載情報 ──── ☆「Mikiki」(Intoxicate)において、小沼純一さんに書評を書いていただきました。 消尽される声/響き合う他者の声に~ハンス・ウルリッヒ・オブリスト「ミュージック」と菊地成孔「レクイエムの名手」 http://mikiki.tokyo.jp/articles/-/9435 ☆「サウンド&レコーディング・マガジン」2016年3月号のBook Reviewにおいて、ご紹介いただきました。 「時代を創った音楽家たちの実作業を知る書」 ☆「ele-king」のBook Reviewsにおいて、野田努さんにご紹介いただきました。 www.ele-king.net/review/book/004883/ ☆「men's FUDGE」2016年1月号にてご紹介いただきました。 「複雑に絡み合った現代音楽の進化の過程を、当事者である音楽家や作曲家のインタビューで巧みにマッピングしてみせたのが本著。(中略)音楽に携わる者以外にも、豊かな創造的インスピレーションを与えてくれるだろう。」 ☆「POPEYE」2015年12月号にてご紹介いただきました。 ☆クラシック音楽情報誌「ぶらあぼ」2015年12月号にてご紹介いただきました。 ☆「CINRA」にてご紹介いただきました。 http://www.cinra.net/news/20151027-music ──── 世界的に著名なキュレーター、ハンス・ウルリッヒ・オブリストによる、50〜90年代において特に重要な音楽家、作曲家たちへのインタビューをまとめた1冊。 【前衛音楽】【電子音楽】【ミニマリズム & フルクサス】【現代】の4章の中で、総勢17名の“証言”を収録しています。 たとえば、戦後の前衛音楽をリードしてきたシュトックハウゼンやブーレーズ。クセナキス、フランソワ・ベイルなどの電子音楽のパイオニアたち。ミニマル・ミュージックやフルクサスから派生するスティーヴ・ライヒやオノ・ヨーコ。実験的かつポップな表現を追究したクラフトワークやカエターノ・ヴェローゾなど……。 彼らのオーラルヒストリーは、音楽の各ジャンルにとどまらず、美術、文学、建築、映画など、あらゆる分野を横断しながら独自の「現代音楽史」を紡ぎ、その過程の進化をマッピングします。 創作の過程、他の音楽家たちとの恊働、音楽への愛、作品の社会的な影響など、さまざまな角度から鋭く切り込んだオブリストならではのインタビューと、本人の言葉によって解き明かされる“歴史”は、音楽関係者のみならず、創作を志すすべての人に必読です。
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本を読むときに何が起きているのか : ことばとビジュアルの間、目と頭の間|ピーター・メンデルサンド, 細谷由依子(翻訳), 山本貴光(解説)
¥2,860
フィルムアート社 2015年 ソフトカバー 448ページ A5判 - 内容紹介- カリスマ装丁家が読書における想像力の謎に迫る、かつてない「文学×デザイン×現象学」の探究の書物。 目次 「描くこと」を思い描く フィクション 冒頭 時間 鮮やかさ 演奏 素描する 技 共同創作 地図と規則 抽象 目、錯覚、媒体 記憶と幻想 共感覚 意味しているもの 信念 模型 部分と全体 ぼやけて見える
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百科全書 世界を書き換えた百科事典 | 井田 尚
¥2,640
慶應義塾大学出版会 2019年 ハードカバー 232ページ 四六判 - 内容紹介 - ▼シリーズ「世界を読み解く一冊の本」(全10巻)、第5弾! ▼啓蒙思想の集大成、『百科全書』の世界へ。 革命神話と啓蒙神話に由来する紋切り型のイメージから離れて、ディドロとダランベールが構想した百科事典としての本来の姿に立ち戻ることで見えてくる景色とは? 『百科全書』の書物としての成り立ちをたどり、その知識の森へと案内する。 目次 序 『百科全書』とは何か Ⅰ 『百科全書』を編む 1 それまでの専門辞典と『百科全書』の決定的な違い 2 『百科全書』の書き手と読み手 いわゆる「百科全書派」の実は多様な実態 執筆者と読者の主力を担った混合エリート層 3 『百科全書』刊行計画の三大功労者 ──ディドロ、ダランベール、 ジョクール 統括プロデューサー、ディドロ 『百科全書』のアカデミックな顔、ダランベール 『百科全書』第三の男、「項目製造機」 ジョクール 4 『百科全書』の執筆陣 ──啓蒙主義のオールスターとあらゆる専門 家が結集 「序論」に記載された執筆協力者のリスト 「緒言」(第二巻─第八巻)で紹介されている主な執筆協力者のリス ト 5 『百科全書』はどのように編纂・刊行されたのか チェンバーズ百科事典の仏訳から『百科全書』へ 度重なるスキャンダルと刊行中断を乗り越えて ついに完了した『百科全書』刊行計画 Ⅱ 『百科全書』はどう読まれたのか 1 宣伝に貢献した反百科全書派の誹謗中傷 2 『百科全書』の普及を後押しした定期刊行物 3 スイス、イタリアを中心にヨーロッパ中に広がる『百科全書』 4 『百科全書』の後世への影響 欧米および日本の場合 『百科全書』と啓蒙主義の功罪 Ⅲ 『百科全書』の新機軸──人間知識のネットワーク化とビジュアル化 1 販売促進パンフレット「趣意書」とディドロの宣伝戦略 チェンバーズ百科事典というモデル 学芸の枝分かれをビジュアル化した「人間知識の体系図解」 編纂者ディドロの役割 学問と自由学芸を再定義する 技芸を再評価する 『百科全書』と小説『ラモーの甥』に通底するもの 記憶、理性、想像力の三大能力 記憶に由来する歴史 理性に由来する哲学 想像力に由来し模倣を原理とする詩 人間中心主義的な学芸分類 2 ダランベールの「序論」を読んでみる ディドロの「趣意書」との違い 百科全書派の哲学的プロパガンダ 感覚論を原理とする人間中心主義的な学芸観 「有益な知識」と「楽しい知識」の起源 自然学の諸分野の起源 自然学以外の学芸の起源 技芸に対する差別の起源 「世界地図」としての「人間知識の体系図解」 知のナビゲーション・システムの限界 文芸と美術の分野を代表する一七世紀フランスの偉人たち 哲学の進歩を語る──ベーコン、デカルト、ニュートン 一八世紀フランスの天才と学芸の擁護 Ⅳ 『百科全書』を読む、世界を読む 1 項目「百科全書(ENCYCLOPÉDIE)」と世界解釈としての辞書編 纂国益と人類の進歩 『百科全書』と田園風景のメタファー 2 機械技術の図解──項目「靴下編み機(BAS)」(執筆者ディド ロ) 「物」を名付けることの難しさ 図解による技術の可視化と「物」の見方の変革 3 国民の常識を書き換えるディドロ──文法項目における語彙の再定 義 先行辞典類の再利用 特権階級に対する諷刺──項目「謙虚な(HUMBLE)」 ディドロの唯物論的な自然観──項目「不完全な(IMPARFAIT)」 西欧社会の結婚制度に対する批判──項目「解消不可能な (INDISSOLUBLE)」 国語の語彙記述がもたらす発想の転換 4 百科全書派の人間観と啓蒙主義的な文明・社会批判 『百科全書』の大見出しの項目の重要性 世界と学芸の中心としての人間──項目「人間(分類項目名なし)」 (執筆者ディドロ) 文明人の歪んだ身体──項目「人間(博物学)」(執筆者ディドロ) 国家の富の源としての人間と土地──項目「人間(政治学)」(執筆 者ディドロ) 5 アンシャン・レジーム批判と人権思想 過重な租税負担と中間搾取に対する批判──項目「租税」(執筆者ジョ クール) 百科全書派による奴隷制批判──項目「奴隷制度」(執筆者ジョクー ル) 奴隷制廃止に項目「奴隷制度」は貢献したのか 「プロライター」ジョクール Ⅴ 『百科全書』の哲学的な歴史批判 1 ディドロによる哲学史項目の迷信・誤謬批判 知識の四カテゴリーと誤謬の歴史 ディドロの哲学項目群「(古今の)哲学の歴史」 古代エジプト人の欺瞞──項目「エジプト人」(執筆者ディドロ) エジプト人と競い合ったエチオピア人──項目「エチオピア人」(執 筆者ディドロ) カルデア人の年代学の疑わしさ──項目「カルデア人」(執筆者ディ ドロ) 2 「歴史」と「作り話」の違い ──項目「歴史(HISTOIRE)」(執 筆者ヴォルテール) 3 占いという迷信 ──項目「占術(DIVINATION)」(執筆者ディ ドロ) あらゆる誤謬を論破するコンディヤック 占星術の起源 ディドロによる書き換えの啓蒙的な狙い キケロに託されたフィロゾフの理想像 Ⅵ 『百科全書』と同時代の科学論争 1 『百科全書』の論争的な性格 2 ニュートン主義を擁護する──項目「引力(ATTRACTION)」 (執筆者ダランベール) 「コピー&ペースト」による編集術 なぜニュートンの引力説はデカルトの渦動説に勝るのか 哲学的仮説の域を越えた万有引力の法則 科学のパラダイム転換に自ら加担するダランベール おわりに 『百科全書』と世界の解読 『百科全書』は世界を変えたのか?──書物と世論をつなぐ談話の力 『百科全書』とウィキペディア、そして百科事典の未来 『百科全書』研究の今 電子化プロジェクトと研究の未来 日本語で読める『百科全書』入門ブックガイド 注 参考文献 あとがき - 著者プロフィール - 井田 尚 (イダ ヒサシ) (著) 青山学院大学文学部教授。18世紀フランス思想専攻。 東京大学大学院人文社会系研究科博士課程満期退学。パリ第8大学博士課程修了。博士(DL)。 主な著書に、Genèse d'une morale matérialiste : Les passions et le contrôle de soi chez Diderot (Paris, Honoré Champion, 2001)、『科学思想史』(共著、勁草書房、2010年)、『百科全書の時空 典拠・生成・転位』(共著、法政大学出版局、2018年)、主な編訳書に『ディドロ著作集 第4巻 美学・美術 付・研究論集』(法政大学出版局、2013年)がある。
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大槻文彦『言海』 辞書と日本の近代 | 安田 敏朗
¥2,200
慶應義塾大学出版会 2018年 ハードカバー 208ページ 四六判 - 内容紹介 - ▼シリーズ「世界を読み解く一冊の本」(第1期・全10巻)、刊行開始! 言葉の海へ、漕ぎ出そう! 国語学者・大槻文彦が、明治期に編纂した日本初の近代的国語辞典 『言海』。 大槻は 『言海』 を通して、世界をどのように切り分けようとしたのか。 辞書が社会的に果たした役割とともに描き出す。 目次 凡例 序 なんのための辞書 国会と辞書 辞書と語義――『一九八四年』的世界のなかで 文明国標準としての辞書 『言海』刊行の祝辞から 藩閥を越える可能性――辞書の近代 新世代と辞書――上田万年の場合 「読み物」としての『言海』 辞書は読まれたのか 『言海』と資料について Ⅰ 大槻文彦とその時代 大槻文彦とはだれか 幕末に生きたということ 大槻文彦自伝 地誌著述の意味 大槻文彦のナショナリズム 旧臣としての臣民 地誌から文法へ――弱肉強食の世界のなかで 国語と民族と独立と 文部省『百科全書』「言語篇」の翻訳――「言語」の問題 日本語と諸言語の位置――「万国言語の共進会」論にみる言語の優劣 『日本小史』にみる文明史観 上田万年の剽窃――Chambersの「Language」と大槻文彦の「言語 篇」 文典研究の展開――『支那文典』・文法会 『言海』と「語法指南」の需要 大槻文彦の著述傾向 近代日本語の確立へ――国語調査委員会などへの参加 文学博士号授与について 博士会の学位 『大言海』へ――『大言海 文献集』などから 語源へのこだわり 語源という問題――実用性と国語の純粋性と 大槻文彦、逝く 明治百傑となった大槻文彦 Ⅱ 『言海』のめざしたもの 辞書と字引と字典と辞典と 新しい「辞書」 『言海』とはなにか 近代的普通語辞書 「普通語」とはなにか 「普通」という暴力――青田節『方言改良論』から 日本辞書とは――日本語を日本語で説明すること 外来語・和語・漢語およびその表記 五十音排列という新秩序 語法指南(日本文典摘録) 「ことばのうみ の おくがき」 Ⅲ 『言海』からみる世界 表象空間のなかの『言海』 「言海システム」――網羅と排除 網羅と規範化 文語文典から口語文典へ 同化と口語 松下大三郎の口語研究 はなしことばの一定のために――「です」への嫌悪から 『口語法』『口語法別記』へ 曖昧な同化 風儀としての殉死 同文という問題 かなづかい表音化の主張 宣伝のなかの『言海』 日露戦争と『言海』縮刷版 旅順攻囲戦と『言海』 日露講和と『言海』 「売れた書物」・時代に寄りそう辞書 賞品としての『言海』 辞書は国家がつくるものなのか 参考文献 - 著者プロフィール - 安田 敏朗 (ヤスダ トシアキ) (著) 一橋大学大学院言語社会研究科准教授。近代日本言語史専攻。 東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了。博士(学術)。 著作に、『漢字廃止の思想史』(平凡社、2016年)、『「国語」の近代史――帝国日本と国語学者たち』(中央公論新社、2006年)などがある。
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エーコ『薔薇の名前』 迷宮をめぐる〈はてしない物語〉 | 図師 宣忠
¥2,640
慶應義塾大学出版会 2019年 ハードカバー 244ページ 四六判 - 内容紹介 - ▼巨人(エーコ)の肩の上から望む「中世」の景色 『薔薇の名前』の緻密な物語は、ディテールを押さえてこそ楽しめる! 本書では、エーコの想像力の源泉にして「舞台装置」である中世ヨーロッパを、背景知識から丁寧に解説。 知の巨人が綿密に作り上げた「中世」の世界を、鳥の目と虫の目を通じて読み解いてみよう。 目次 序 『薔薇の名前』の解読 『薔薇の名前』と西洋中世研究 エーコと「中世」との距離 美学から記号論へ 知の巨人エーコ、小説を書く Ⅰ 『薔薇の名前』の舞台 物語の枠組み プロローグ──時代背景 宗教と政治──教権と俗権の対立 宗教と社会──異端と教会改革 民衆的異端の拡大──ヴァルド派とカタリ派 托鉢修道会の成立──ドミニコ会とフランチェスコ会 一四世紀における聖俗権力の対立構図 中世の世界へ──舞台としての修道院 修道院の建物の配置──ザンクト・ガレン修道院の平面図 修道院の生活──『聖ベネディクトゥスの戒律』 吹きすさぶ雹──アデルモの死 血の甕──ヴェナンツィオの死 迷宮の謎 アドソの冒険 茶色く変色した指と真黒な舌──ベレンガーリオの溺死 再び迷宮へ──〈アフリカノ果テ〉 渾天儀──セヴェリーノの惨殺と「奇妙な書物」の行方 異端審問官ベルナール・ギー 千匹もの蠍の毒──マラキーアの死 『キュプリアヌスの饗宴』 〈四ツノ第一ト第七デ〉 ホルヘとの最後の対決 世界燃焼──崩れ落ちる図書館 最後の紙片 言うまでもなく、中世から Ⅱ 『薔薇の名前』の構造 『薔薇の名前』の読み方 メルクのアドソ バスカヴィルのウィリアム 『ヨハネの黙示録』とアドソの幻視 修道院の殺人と『ヨハネの黙示録』 ブルゴスのホルヘ 笑いと破壊、あるいは神聖なる秩序の行方 イマジネールの怪物たち バベルの塔としてのサルヴァトーレ 村の娘とアドソの恋 迷宮としての図書館 始まりと終わり──タイトルとその意味 Ⅲ 『薔薇の名前』の世界への鍵 写本と羊皮紙 巻物から冊子へ 写字室と写本の製作 読むことと眼鏡 聖なる読書から学者の読書へ 写本製作の新時代 紙の製造 異端の烙印 「キリストの清貧」をめぐって 『ヨハネの黙示録』と終末論 異端審問と刑罰 異端審問記録の作成・保管・利用 ある異端審問記録の数奇な運命 失われてしまった写本をめぐる物語 書物は何を伝えるか──世界を読み解くとは? 注 参考文献 あとがき 図版出典一覧 - 著者プロフィール - 図師 宣忠 (ズシ ノブタダ) (著) 近畿大学文芸学部准教授。専門は、西洋中世史。京都大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。近著に、『はじめて学ぶフランスの歴史と文化』(共著、ミネルヴァ書房、2020年)、『魅惑の〈中世映画〉──西洋中世学からのアプローチ』(編著、羽鳥書店、近刊)などがある。
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掠れうる星たちの実験 |乗代雄介
¥3,080
国書刊行会 2021年 ハードカバー 312ページ 四六変型判 - 内容紹介- サリンジャーの戦争体験と柳田國男の恋。終生秘められた「実験」の記憶から、文学への態度において不思議なほどに似通う二人が追い求めた〈生きた「もの」〉を透視する驚異の批評。 第162回芥川賞候補作『最高の任務』に続く〝阿佐美家サーガ〟の特異点「フィリフヨンカのべっぴんさん」を含む書き下ろし/単行本未収録の掌編9本(総120枚)、実感に向かって書くこと、〈生きた「もの」〉の痕跡が「残される」ことをめぐる書評28編を併録。 【目次】 掠れうる星たちの実験 書評 『職業としての小説家』村上春樹 『このサンドイッチ、マヨネーズ忘れてる/ハプワース16、1924年』J・D・サリンジャー(金原瑞人訳) 『アナーキストの銀行家 フェルナンド・ペソア短編集』フェルナンド・ペソア(近藤紀子訳) 『ペンギン・ブックスが選んだ日本の名短編29』ジェイ・ルービン編 『ののの』太田靖久 『大工よ、屋根の梁を高く上げよ/シーモア―序章―』J・D・サリンジャー(野崎孝、井上謙治訳) 『サピエンス前戯』木下古栗 『謎ときサリンジャー 「自殺」したのは誰なのか』竹内康浩、朴 舜起 『柳田國男全集31』柳田國男 『ナチを欺いた死体 英国の奇策・ミンスミート作戦の真実』ベン・マッキンタイアー(小林朋則訳) 『揺れうごく鳥と樹々のつながり 裏庭と書庫からはじめる生態学』吉川徹朗 『サガレン 樺太/サハリン 境界を旅する』梯久美子 『いまだ、おしまいの地』こだま 『契れないひと』たかたけし 『自然な構造体 自然と技術における形と構造、そしてその発生プロセス』フライス・オットー 他(岩村和夫訳) 『記憶よ、語れ 自伝再訪』ウラジーミル・ナボコフ(若島正訳) 『鷗外随筆集』森鷗外(千葉俊二編) 『佐倉牧野馬土手は泣いている(続)』青木更吉 『松本隆対談集KAZEMACHI CAFE』松本隆 他 『現代児童文学作家対談5 那須正幹・舟崎克彦・三田村信行』神宮輝夫 『ウォークス 歩くことの精神史』レベッカ・ソルニット(東辻賢治郎訳) 『トンネル』ベルンハルト・ケラーマン(秦豊吉訳) 『今日を歩く』いがらしみきお 『手賀沼周辺の水害 ―水と人とのたたかい400年―』中尾正己 『海とサルデーニャ 紀行・イタリアの島』D・H・ロレンス(武藤浩史訳) 『声と日本人』米山文明 『ライ麦畑でつかまえて』J・D・サリンジャー(野崎孝訳) 『案内係 ほか』フェリスベルト・エルナンデス(浜田和範訳) 創作 八月七日のポップコーン センリュウ・イッパツ 水戸ひとりの記 両さん像とツバメたち 鎌とドライバー 本当は怖い職業体験 This Time Tomorrow 六回裏、東北楽天イーグルスの攻撃は フィリフヨンカのべっぴんさん - 著者プロフィール - 乗代雄介 (ノリシロユウスケ) (著/文) 1986年、北海道生まれ。法政大学社会学部メディア社会学科卒業。2015年、『十七八より』で第58回群像新人文学賞受賞。2018年、『本物の読書家』で第40回野間文芸新人賞受賞。2020年、『最高の任務』で第162回芥川賞候補。2021年、『旅する練習』で第164回芥川賞候補、第34回三島由紀夫賞受賞。著書に『十七八より』(2015年/講談社)、『本物の読書家』(2017年/講談社)、『最高の任務』(2020年/講談社)、『ミック・エイヴォリーのアンダーパンツ』(2020年/国書刊行会)、『旅する練習』(2021年、講談社)。
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ことばと vol.2
¥1,870
書肆侃侃房 2020年 ソフトカバー 328ページ A5判 - 内容紹介 - 【巻頭表現】 いとうひでみ 【創作】 佐藤亜紀 瀬尾夏美 滝口悠生 【特集 ことばと演劇】 ◎戯曲 飴屋法水 岡田利規 ◎小説 綾門優季 犬飼勝哉 鳥山フキ 中村大地 松原俊太郎 宮﨑玲奈 本橋龍 ◎対談 山下澄人×佐々木敦 【第一回ことばと新人賞】 佳作 金名サメリ 永井太郎 【翻訳】 アリ・スミス 木原善彦訳 【本がなければ生きていけない】 久保明教 児玉雨子
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多和田葉子ノート | 室井光広, 多和田葉子
¥2,750
双子のライオン堂 2020年 ハードカバー 251ページ 18.8 x 12.8 x 1.8 cm - 内容紹介 - ”国際的歩き巫女”の操る詩的言語の秘法に肉薄し、その分業の過去・現在・未来を照射する! <言葉そのもの>を語りつくした珠玉の対話2篇も収録。 *多和田葉子さんからのコメント* 「言葉の考古学者で世界異文学の本格的な読者である室井光広ならではの、室井光広以外の人にはできない、そして私の仕事全般、さらにその向こうを見渡す読み方」 <目次> 1 ノート篇 ディヒターの心配ー多和田葉子ノート1 みにくいヒヒルの子ー多和田葉子ノート2 オチカエリの練習生ー多和田葉子ノート3 2 序説篇 詩嚢中の錐 メランコリーの根源 今日のみ見てや雲隠りなむ 3 ブック・レヴュー篇 あやしのアルキミコー『ゴットハルト鉄道』 闇あがってくるものー『ふたくちおとこ』 月裏人からのオマージュ <愛苦しさ>あふれる物語ー『雪の練習生』 4 対話篇ー多和田葉子+室井光広 言葉の「物の怪」・1997.6.9 言葉そのものがつくる世界・2017.4.19 (出版社紹介文より)
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現代アート入門|デイヴィッド・コッティントン, 松井 裕美(訳)
¥2,970
名古屋大学出版会 2020年 ソフトカバー 224ページ 四六判 - 内容紹介- 「なぜこれがアートなの?」と疑問を抱くすべての人に――。注目を集めると同時に、当惑や批判を巻き起こし続ける現代アート。私たちは何を経験しているのか。それはどこから生まれ、どのように展開してきたのか。「モダン」な社会や制度、メディアとの関係から現代美術の挑戦を読み解く最良の入門書。 目次 序 章 モダン・アート ――モニュメントなのか、あざけりなのか 第1章 アヴァンギャルドをたどる 前衛の起源と立場 モダン・アートを売る 今日の前衛──死んでいるのか、生きているのか 第2章 モダンなメディア、モダンなメッセージ 絵画と装飾──その快楽と諸原理 メディアを混ぜる――コラージュからインスタレーションへ 芸術とオブジェのあわい 第3章 ピカソからポップな偶像へ ――芸術家の名声 誰かがピカソにならなければならなかった 女性芸術家たち──差異化された立場 ポップ・アイドルたち 第4章 現代の錬金術 ――モダン・アートと消費主義 不純物から金へ スペクタクルの社会 モダニズムの危機 第5章 ポストモダンを超えて ――その先にあるもの 新しいものの見方 差異の世界──西洋と非西洋 創造性の代価──デジタル時代の芸術 訳者あとがき 用語解説 文献案内 図版一覧 索引 前書きなど 二〇〇一年六月四日、レイチェル・ホワイトリードの彫刻作品《モニュメント》が、ロンドンのトラファルガー広場にある第四の台座〔何も乗っていない北西の角の台座〕の上に設置された。イギリスの新聞がその翌日に報じた反応は、完全に予想通りのものだった。この場所には、以前にも二人の芸術家(マーク・ウォリンガーとビル・ウッドロー)が作品を設置したことがあったが、それらと同じように、ホワイトリードの《モニュメント》――台座自体の型をとって透明な樹脂に鋳造し、逆さにして台座の上に置いたもの――もまた、ただちにもの笑いの種になったのである。『デイリー・メール』紙は「平凡」で「受け狙い」の「意味のない」ものとして非難し、『タイムズ』紙は人々が水槽や浴室のシャワー・ユニットに喩えて貶していたと報じた。文化業界の人々が作品を擁護するコメント――ただし漠然としていて自己保身的な発言――に触れる新聞もいくつかあった。当時の文化省大臣クリス・スミスと、テート・モダンの館長ラース・ニットヴ、そしてテートのプログラム・ディレクターを務めるサンディー・ネアーンは、《モニュメント》の飾り気のなさやコンセプトのわかりやすさが「美しく」、「知的」で「目もくらむほど素晴らしい」などと口々に褒め称えた。だが、彼らが非難に対して果敢に反論しようとすることはいっさいなかった。またホワイトリードの作品は、台座そのもののかたちを写してそれを逆さにすることで、モニュメントというものがもつ意味や目的と…… [「序章」冒頭より/図は省略] - 著者プロフィール - デイヴィッド・コッティントン (デイヴィッド コッティントン) (著) David Cottington 1948年生まれ。コートールド美術研究所にて博士号(美術史学)取得。ファルマス大学教授、キングストン大学教授などを経て、現在、キングストン大学名誉教授。専門はキュビスムをはじめとする前衛芸術。主な著作にCubism in the Shadow of War(1998年)、Cubism and its Histories(2004年)、The Avant-Garde: A Very Short Introduction(2013年)などがある。 松井 裕美 (マツイ ヒロミ) (訳) 1985年生まれ。パリ西大学ナンテール・ラ・デファンス校博士課程修了。名古屋大学特任講師、名古屋大学高等研究院特任助教などを経て、現在、神戸大学大学院国際文化学研究科准教授。専門は近現代フランス美術史。主な著作に『キュビスム芸術史』(名古屋大学出版会、2019年、和辻哲郎文化賞)、ディディ=ユベルマン『受苦の時間の再モンタージュ』(共訳、ありな書房、2017年)などがある。