現代アート入門|デイヴィッド・コッティントン, 松井 裕美(訳)
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名古屋大学出版会 2020年
ソフトカバー 224ページ
四六判
- 内容紹介-
「なぜこれがアートなの?」と疑問を抱くすべての人に――。注目を集めると同時に、当惑や批判を巻き起こし続ける現代アート。私たちは何を経験しているのか。それはどこから生まれ、どのように展開してきたのか。「モダン」な社会や制度、メディアとの関係から現代美術の挑戦を読み解く最良の入門書。
目次
序 章 モダン・アート
――モニュメントなのか、あざけりなのか
第1章 アヴァンギャルドをたどる
前衛の起源と立場
モダン・アートを売る
今日の前衛──死んでいるのか、生きているのか
第2章 モダンなメディア、モダンなメッセージ
絵画と装飾──その快楽と諸原理
メディアを混ぜる――コラージュからインスタレーションへ
芸術とオブジェのあわい
第3章 ピカソからポップな偶像へ
――芸術家の名声
誰かがピカソにならなければならなかった
女性芸術家たち──差異化された立場
ポップ・アイドルたち
第4章 現代の錬金術
――モダン・アートと消費主義
不純物から金へ
スペクタクルの社会
モダニズムの危機
第5章 ポストモダンを超えて
――その先にあるもの
新しいものの見方
差異の世界──西洋と非西洋
創造性の代価──デジタル時代の芸術
訳者あとがき
用語解説
文献案内
図版一覧
索引
前書きなど
二〇〇一年六月四日、レイチェル・ホワイトリードの彫刻作品《モニュメント》が、ロンドンのトラファルガー広場にある第四の台座〔何も乗っていない北西の角の台座〕の上に設置された。イギリスの新聞がその翌日に報じた反応は、完全に予想通りのものだった。この場所には、以前にも二人の芸術家(マーク・ウォリンガーとビル・ウッドロー)が作品を設置したことがあったが、それらと同じように、ホワイトリードの《モニュメント》――台座自体の型をとって透明な樹脂に鋳造し、逆さにして台座の上に置いたもの――もまた、ただちにもの笑いの種になったのである。『デイリー・メール』紙は「平凡」で「受け狙い」の「意味のない」ものとして非難し、『タイムズ』紙は人々が水槽や浴室のシャワー・ユニットに喩えて貶していたと報じた。文化業界の人々が作品を擁護するコメント――ただし漠然としていて自己保身的な発言――に触れる新聞もいくつかあった。当時の文化省大臣クリス・スミスと、テート・モダンの館長ラース・ニットヴ、そしてテートのプログラム・ディレクターを務めるサンディー・ネアーンは、《モニュメント》の飾り気のなさやコンセプトのわかりやすさが「美しく」、「知的」で「目もくらむほど素晴らしい」などと口々に褒め称えた。だが、彼らが非難に対して果敢に反論しようとすることはいっさいなかった。またホワイトリードの作品は、台座そのもののかたちを写してそれを逆さにすることで、モニュメントというものがもつ意味や目的と……
[「序章」冒頭より/図は省略]
- 著者プロフィール -
デイヴィッド・コッティントン (デイヴィッド コッティントン) (著)
David Cottington
1948年生まれ。コートールド美術研究所にて博士号(美術史学)取得。ファルマス大学教授、キングストン大学教授などを経て、現在、キングストン大学名誉教授。専門はキュビスムをはじめとする前衛芸術。主な著作にCubism in the Shadow of War(1998年)、Cubism and its Histories(2004年)、The Avant-Garde: A Very Short Introduction(2013年)などがある。
松井 裕美 (マツイ ヒロミ) (訳)
1985年生まれ。パリ西大学ナンテール・ラ・デファンス校博士課程修了。名古屋大学特任講師、名古屋大学高等研究院特任助教などを経て、現在、神戸大学大学院国際文化学研究科准教授。専門は近現代フランス美術史。主な著作に『キュビスム芸術史』(名古屋大学出版会、2019年、和辻哲郎文化賞)、ディディ=ユベルマン『受苦の時間の再モンタージュ』(共訳、ありな書房、2017年)などがある。
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