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辺境の国アメリカを旅する 絶望と希望の大地へ | 鈴木 晶子

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明石書店 2022年
ソフトカバー 240ページ
四六判


- 内容紹介 -
日本で貧困問題に長年取り組んできた著者がアメリカ全土48州を巡った旅の記録。人種差別、貧困、銃問題といった近年の社会情勢や歴史・文化にも言及しながら、トランプ政権下で対立と分断に揺れるアメリカの等身大の姿を描き出す。
目次
序章 美しきアメリカのカントリーサイド・ケンタッキーへ――もう一つのアメリカへようこそ
 憂うつな旧炭鉱町の朝
 緑萌える美しきカントリーサイド
 活気ある街と郷土料理
 バーボントレイルの完成度
 旅には良い街、けれど

第1部 いくつかのアメリカを巡って

第1章 暮らすように旅する(1)――マンハッタンでルームシェア型民泊
 ルームシェアでマンハッタンのアパート生活を体験
 アメリカのオモテ玄関ニューヨーク
 ニューヨークのもう一つの顔
 マンハッタンの週末
 小さな暮らしの場を後にして
 アップデート 空っぽのマンハッタン
 コラム① ようこそアメリカ!エリス島に降り立つ

第2章 暮らすように旅する(2)――ノースカロライナのファームステイ
 何もないから体験型、ファームステイを初体験
 地元食材で楽しむ夕食
 手作りの暮らしを知って
 暮らしの違いに思いを馳せて
 アップデート ツリーハウスへの再訪

第3章 Make America Great Again?――錆びついたロックンロールの街クリーブランドの今を訪ねて
 ラストベルトへの旅がトレンド
 トリエンナーレのオープニングイベントへ
 美しきアーケードの空虚
 ロックンロールの殿堂を訪ねて
 アフターアワーズ
 コラム② 全米一寂れた街の傑作子ども博物館

第4章 アメリカ版町おこし!――グラウンドホッグデーにパンクサタウニーに行ってきた
 アメリカの町おこし
 早朝の大混雑
 “No shadow!”
 パンクサタウニーの町観光
 That's Groundhog Day!

第5章 みたび民泊――シアトルでキャンピングカーに泊まる
 注目エリアのおしゃれキャンピングカー
 リベラルな住宅街でホームレスのおっちゃんに出会う
 ハンドドリップコーヒーで始まるシアトルの1日
 一つの街と道の越えがたき壁
 アップデート コロナ禍のアメリカ、見えない犠牲者

第6章 欲望と絶望と――既視感と哀しみのラスベガス
 カジノの街ラスベガス
 全てがフェイクとデジャブ
 哀しみのラスベガス
 コラム③ 銃を持つ自由の国アメリカ

第7章 砂漠地帯と消えた町バグダッド――カリフォルニアのもう一つの顔
 カリフォルニアの多様な景色
 隠れた見所ゴーストタウン
 消えた町バグダッド
 大都市と郊外と

第8章 見果てぬキューバ――ラティーノのアメリカを巡る旅
 近くて遠い国キューバ
 リトルハバナの昼下がり
 クルーズ船の旅
 要塞都市サンファン上陸
 護られざる城壁の向こう側
 サンファンを後にして
 プエルトリコと沖縄と
 アップデート キューバにもクルーズにも行けなかった話
 コラム④ アメリカのラティーノの多様性

第2部 先住民のアメリカを訪ねて

第9章 さよならコロンブス・デー――バケーションランド・メイン州が向き合う先住民の歴史
 「コロンブス・デー」から「先住民の日」へ
 全米最初の朝日が昇るバケーションランド
 先住民のホームランド
 「私たちは今もここにいる」
 アップデート 倒されるコロンブス像
 コラム⑤ 建国の地を歩く――東海岸三都物語

第10章 ルート66エクスカーション――プエブロ族の遺産を巡る
 アルバカーキの結婚式
 サンタフェからチマヨ教会へ
 世界遺産タオス・プエブロと先住民の青いマリア
 山間のバス停を数えて
 土煙を越えてチャコ・カルチャーへ
 危機に瀕するチャコ・キャニオン
 アップデート 新たなステージへ

第11章 大草原地帯を行く――苦難のきた道をたどり希望を見つけて
 大草原に音楽の架ける橋
 ウィネバゴ族の涙の旅路
 アメリカで一番小さな村を目指して
 荒野の西部開拓
 「聖地」の招かれざるものたち
 ウィンド・リバー先住民居留地へ
 美しきグランド・ティトン
 バイソンの消えた丘
 都市インディアンから居留地の担い手へ
 他国と先住民と共に、国立公園の今
 継承される文化と誇り
 アップデート コロナ禍で牙をむく不平等

第3部 南部を歩く

第12章 南部とはなにか?――世界遺産の街ヴァージニア州シャーロッツビルを訪ねて
 初めてのアメリカ・ロード・トリップへ
 2人の大統領邸と白人ばかりの田舎町
 悲劇の現場シャーロッツビル
 南部を巡る旅へ
 アップデート リー将軍像の撤去された日
 コラム⑥ ワシントンD.C.の隠れた見どころ「ブラック・ブロードウェイ」

第13章 綿花畑を抜けてディープサウスへ――アフリカ系アメリカ人の歴史をたどって
 美食の街チャールストンの休日
 美しい街の暗黒の歴史
 サヴァンナの「涙の時間」
 南部のゲートウェイ・アトランタへ
 キング牧師歴史地区
 歩き続ける非暴力運動
 アップデート アトランタの新たなヒーローたち

第14章 アラバマ・フリーダム・トレイル――We shall overcome
 「ボミンガム」へようこそ
 迫害と抵抗の足跡
 ソウル・フードの名店を訪ねて
 賑わう南部料理の人気店へ
 「ブラザーフットだよ」
 悲劇の現場に響くゴスペル
 「血の日曜日」から勝利の行進へ
 幾千もの無名の犠牲者を称えて
 モンゴメリーが生んだ2人のヒーロー
 キング牧師記念日に再びアトランタ
 アップデート ジョン・ルイス「最後の渡橋」
 コラム⑦ アフリカ系アメリカ人の歴史を知る映画三選

終章 ニューオーリンズの聖者の行進――多様性の向かう先
 48州目ミシシッピのブルース街道へ
 地元の寄り合い所「ジューク・ジョイント」へ
 ニューオーリンズの音楽葬
 欧州の歴史香るジャズの故郷
 多様性のガンボ
 町の小さなマルディ・グラ
 旅の終わりに

 あとがき
 主要参考文献
前書きなど
あとがき

 (…前略…)

 連れ合いからアメリカに駐在となると聞いた時、正直それほど楽しみなものではなかった。「端っこ好き」の私にとっては、アメリカは世界の中心のようであり、王道の行き先だった。一度も旅をしようと考えたことがなかった。
 十分な渡航準備期間をもらい移住の支度をしていた頃、アメリカでは大統領選挙が行われ、ドナルド・トランプが当選した。そして、アメリカに無事にたどり着いて程なく、シャーロッツビルであの悲劇が起こった。
 この国はどんな国なのだろう?
 旅をするうちに、アメリカという国そのものが、居場所を失った人々が自由を求めて世界中からやってくる、世界の辺境のように思えてきた。あまりに多様な人々が生きるこの巨大な辺境は、人の営みのあらゆるものが世界中から持ち込まれ、それゆえに必然的に生まれる人々の対立と克服は、まるで世界の縮図のようであり、壮大な社会実験のようですらある。
 いかに人は共に生きることができるのか?
 気づけばアメリカ中を旅していた。辺境の中のさらに辺境へ。この国の多彩な風景と、そこにある人々の暮らし、歩んできた道のりを追って走ってきた。
 ひきこもりの若者と共に過ごすフリースペースから、困難を抱える子どもたちの多く通う高校内の居場所カフェから、困窮者支援の相談室から、あるいは出張相談に訪れた風俗店の待機部屋から……。私は日本で周縁から社会を見てきた。アメリカの辺境性は、私が見てきたそんな日本の風景とどこか地続きのようだった。
 この本を通じて描いてきた人々やアメリカの直面している状況は、全く同じではないけれど、日本のどこにでも潜んでいる。多くの人が気にも留めずに通り過ぎていく街中のホームレスの人たち、食べるものにも困る子どもたちの貧困、衰退する地方の経済、トランプ政権顔負けの残酷な入国管理、増え続ける移民たちが抱える暮らしの苦難、外国人や先住民への差別など、日本の抱える課題の多くが、本書で出てくるアメリカの風景と重なるのではないだろうか。その規模や表出の鮮明さ、態様に違いはあれど、読者の皆さんが、苦悩するアメリカの人たちだけではなく、ここ日本で周縁に追いやられている人たちにも、本書を通じて想いを馳せていただけることを願っている。
 私たちは、幸運にも2020年2月末に、最後のミシシッピ州に到達し、アメリカ本土48州の旅を終えることができた。その後、周知の通りアメリカは新型コロナウイルス感染拡大によるロックダウン、ブラック・ライブズ・マター運動、歴史に残る大統領選挙と年明けの国会議事堂侵入事件と、息つく暇もない激動であった。今もワクチン接種などをめぐる分断と再度の感染拡大を繰り返しながら国は揺れて続けている。それでも、きっとこれまで同様、アメリカは一歩ずつ、この苦難を乗り越えながら、一つの国として歩んでいくのだと信じている。

 (…後略…)


- 著者プロフィール -
鈴木 晶子 (スズキ アキコ) (著)
NPO法人パノラマ理事、認定NPO法人フリースペースたまりば事務局次長・理事、一般社団法人生活困窮者自立支援全国ネットワーク研修委員。臨床心理士。
1977年神奈川県に生まれ、幼少期を伊豆七島神津島で過ごす。大学院在学中の2002年よりひきこもりの若者の訪問、居場所活動に関わり、若者就労支援機関の施設長などを経て2011年一般社団法人インクルージョンネットかながわの設立に参画、代表理事も務めた。その傍らNPO法人パノラマ、一社)生活困窮者自立支援全国ネットワークの設立に参画。専門職として、スクールソーシャルワーカーや、風俗店で働く女性の相談支援「風テラス」相談員なども経験。内閣府「パーソナル・サポート・サービス検討委員会」構成員、厚生労働省「新たな自殺総合対策大綱の在り方に関する検討会」構成員等を歴任。2017年に渡米。現地の日系人支援団体にて食料支援のプログラムディレクター、理事を務めた。2020年帰国。現職。著書に『シングル女性の貧困――非正規職女性の仕事・暮らしと社会的支援』(共編著、明石書店、2017年)、『子どもの貧困と地域の連携・協働――〈学校とのつながり〉から考える支援』(共編著、明石書店、2019年)他。

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