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そうだ、山に行こう | 沢野ひとし

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百年舎 2025年
ソフトカバー 224ぺージ
A5判 縦210mm 横148mm 厚さ17mm


- 内容紹介 -
自宅近く(町田)の七国山から剱岳、穂高、さらにはスイスのアイガーに至るまで、三十編の山行記を「思い出の山」「思考の山」「別れの山」とテーマ別に章立て。なかでも、齢八十を迎えた筆者が亡くなった友を想う「別れの山」には、人生の意味を改めて考えさせられる。他、かつて娘と滞在したハワイ島や谷川俊太郎さんの北軽井沢の思い出などを綴った章「もう一度行きたい」など49話を収録。『ジジイの片づけ』など「ジジイシリーズ」に次ぐ沢野ひとしの最新刊のエッセイは「山」! 読めばたちまち山に行きたくなる。


- 目次 -
まえがき 2

1章 思い出の山
弥彦山のアルバイト 10
ロッククライミング講習会 14
初めての縦走 19
青春の剱岳 24
小川山・廻り目平 28
奥又白池から前穂北尾根 32
私には山歩きがさらに大切になってきた 37
三回目の金峰山 42
息子の山登り放浪記 47
用意周到な男 52
星降る夜のビバーク 58
城山の春 63
地図と磁石 68
失ったシェラカップ 73
散歩道の七国山 78
富士山とともに 85

2章 思考の山
アンバランスな登山環境 92
加藤泰三『霧の山稜』 97
酒と旅の歌人、若山牧水 102
野辺山とロケット戦闘機 108
身の丈に合った山へ 112

3章 別れの山
ある登山家の遭難死 118
芝倉沢の思い出 123
山と酒 128
あの人が居なくなる 133
山のめしはシンプルが一番 137
ゴキさんの死 142
榛名山で友を回想 147
岩登りと酒と登攀史 153
ある編集者の思い出 158

4章 もう一度行きたい
屋久島にもう一度行きたい 164
娘ともう一度行きたいハワイ島 167
谷川俊太郎さんの北軽井沢の真四角の家 170
トランクはもうひと回り小さめに 173
兄が教えてくれた新宿・紀伊國屋書店とカキフライの楽しみ 177
もう一度ルーアンに行きたい 181
夢の“最後の晩餐 184

5章 信州と山旅
哀愁の高原列車に霧が降る 188
恋と水の町松本 192
自分と向き合う温泉 197

6章 山が呼んでいる
利尻山 202
大雪山 朝日岳 204
八甲田山 大岳 206
飯豊山 208
剱岳 210
奥穂高岳 212
赤岳 214
北岳 216
富士山 218

あとがき 220


- まえがき -

 どんなに低い山でも頂上に立つと、達成感がある。誰もが晴々した表情をして遠くの景色を眺めている。
 まして、苦労して穂高や槍ヶ岳の頂にたどり着いた時は、思わず雄叫びが上がる。その後は紺碧な空の下に静寂な時間が過ぎていく。
 山のてっぺんには都会での悩みを消す、自然界の力があふれている。街ではいつも不平不満に明け暮れる人でも、山に入ると穏やかな顔をして歩いている。
 山の頂で怒った人をこれまで見たことがない。ということは、山登りには精神を浄化し、体から毒素を抜き去る大きな要素があるのだろう。
 気の合った仲間と何日も縦走をすると、一生忘れられない思い出が残る。「飯豊山の登りが厳しかった」「確かに荷が重くてバテた」「下りて食べた三国のスイカの味は天下一品」と、その時同行した友に後に会うと、同じ話でいつまでも盛り上がる。
面白いのは、各自思いが違うことである。「実はあのとき彼女に振られて、歩きながら別れの原因を考えていた」「オレは会社を辞めることばかりクヨクヨとな」……。
 山では寝ているとき以外、ほとんど歩いている。歩くことは煩悩を消す。「煩悩あれば菩提あり」。歩きながらやがて不安もなくなり、自分なりに解決して、悟りの境地に入っていく。
 山登りは最初の三十分が辛い。まだ体が慣れていなく足がもつれる。ベテランの人は振り返りながら「できるだけ亀のようにゆっくり」と言う。ネパールのトレッキングに行くと、現地ガイドがいつも口にするのは「ビスタリ・ビスタリ(ゆっくり ゆっくるり)」。山歩きに急ぎは禁物である。
 やがて体に歩くリズムが生まれ、何も考えずに足を動かしていれば、あの晴れやかな山頂に立ち、バンザイと両手を挙げることができる。
 意外なことに、美人画で有名な竹久夢二も山登りが好きであった。富士山に三度、筑波、那須の山、金沢の薬王山に登った。いつも山の宿に逗留して絵を描き、榛名山には山小屋を建てている。
『竹久夢二詩画集』に「山をうたふ」という詩がある。
「春のやま まるい 夏のやま あをい 秋のやま たかい 冬のやま とをい」
 この「冬の山 遠い」という一節が好きである。冬に家の近くの七国山に行くと、白い富士山が遠くにくっきりと見える。  
                                   沢野ひとし


- 版元から一言 -
『ジジイの片づけ』( 集英社クリエイティブ/集英社文庫)など「ジジイ三部作」が好調の沢野ひとしの最新刊は中高年に人気の山に関するエッセイ集です。なかでも齢八十を迎えた筆者が亡くなった友を想う「別れの山」の章には、人生の意味を改めて考えさせられ、心に響きます。また、亡き兄と行った「新宿紀伊國屋書店」の思い出を綴った「兄が教えてくれた新宿・紀伊國屋書店とカキフライの楽しみ 」は、当時の新宿紀伊國屋の様子を懐かしく読むことができます。
著者プロフィール
沢野ひとし (サワノ ヒトシ) (著)
1944年、愛知県生まれ。イラストレーター、エッセイスト。「本の雑誌」では創刊号より表紙絵・本文イラストを現在まで担当。1991年、第22回講談社出版文化賞さしえ賞受賞。近著『ジジイの片づけ』『ジジイの台所』『ジジイの文房具』(集英社クリエイティブ)の「ジジイ三部作」が評判を呼ぶ。『休息の山』(本の雑誌社)、『人生のことはすべて山に学んだ』『山の帰り道』(角川文庫)など山に関する著書も多い。高校生の頃に山に目覚め、国内はもとよりヨーロッパ・アルプス、ヒマラヤと厳しい山にも挑んできた。ここ数年は「ジジイにふさわしい」静かな低山登山に目を向けている。

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