1/1

「らしさ」について考えた | 畑中 章宏

残り1点

International shipping available

どく社 2026年
ソフトカバー 208ぺージ
B6変形判 縦168mm 横120mm 厚さ19mm


- 内容紹介 -
民俗学でひもとく
「男らしさ」「女らしさ」「もっともらしさ」「わざとらしさ」…。

押しつけられた「らしさ」に抗しつつ、
豊かな「らしさ」を生みだせないものか

――在野の民俗学者による珠玉の評論集。

大学・高校入試にも多数採用
岩波書店『図書』連載に書き下ろしを加えた待望の書!

その「らしさ」は、どこから来て、なぜ私たちを縛るのか?
ジェンダー、アイデンティティ、AIと人間……
今あらゆる場面で問い直されるテーマに、
民俗学という角度から光を当てる。

「何かしらの通念に依拠する『らしさ』群は、曖昧な観念にもとづく規範的な力が不安を助長する(中略)。ただいっぽうで、『らしさ』のない社会も無味乾燥なものである。押しつけられた『らしさ』に抗しつつ、豊かな『らしさ』を生みだせないものか」(本文より)


- 目次 -
はじめに
子どもらしさ
女らしさ
男らしさ
もっともらしさ
わざとらしさ
自分らしさ
人間らしさ
日本らしさ
たしからしさ
おわりにーー大阪らしさ
前書きなど
はじめに

日々暮らしていくなかで、「らしさ」の付いた言葉を目にする機会が少なくない。本や雑誌、インターネットをとおして、「らしさ」が目に飛びこんでくる。そして、ある種の強制や拘束力で、「らしさ」は私たちのからだを覆っているようにさえ思われる。

「女らしさ」や「男らしさ」、あるいは「子どもらしさ」といった言葉は、決して耳ざわりがいいものではないのに、とっさに口にのぼせられる。

国語辞典で「らしさ」を引くと、「《接尾語「らしい」の語幹に、接尾語「さ」の付いた語》名詞や形容動詞の語幹に付いて、そのものの特徴がよく出ていることを表す」と記される(『大辞泉』第二版)。また、「そのものにふさわしい様子をしていること、まさにそのものであると判断される程度、などの意の名詞をつくる」(『日本国語大辞典』第二版)とされ、その用例として「自分らしさ」「子供らしさ」「確からしさ」などの「らしさ」が挙げられ、単独で用いた場合には、「その人や物事の特徴」を表わし、「らしさを発揮する」という用例がある。

「らしさ」は、あるものにたいする、理想や期待を担わせる。「女らしさ」や「男らしさ」や「子供らしさ」、それに「日本人らしさ」なども、女性や、男性や、日本人にたいする期待の表明である。「自分らしさ」や「私らしさ」は、その方向が、自分から自分に向けられる。こうした「らしさ」の中身は、時代によって変化する。そして性別や年齢、所属や職業ごとに、だれもが「らしさ」の洗礼を受けてきたのである。



この本はいまから三年から四年前、右のような書き出しで、雑誌に連載した原稿をもとにしている。事情があって、これまで本として世に出ていなかったのだけれども、そろそろ形にしたいと思うようになったのである。

それにはいくつかの理由がある。ひとつには現在も、「らしさ」が幅を利かしているように見えるからだ。この間に、「らしさ」をめぐる本が数多く出版された。そしてそのほとんどが、「女らしさ」と「男らしさ」にかんするものだ。つまり、いろいろな「らしさ」のなかでも、ジェンダーやセクシュアリティをめぐる「らしさ本」が、次々と刊行されたことになる。

そうした「女らしさ本」や「男らしさ本」にふれた人には、ジェンダーやセクシュアリティについての本書のアプローチは、いささか物足りなく感じるかもしれない。

また、「日本らしさ」や「日本人らしさ」についても、愛国心やナショナリズムとはいえないようなナイーブな態度が目立つようになり、凡庸な排外主義を生みだしている。

「そろそろ形にしたいと思うようになった」のには、また別の理由がある。それはこの連載のいくつもが、大学入試の現代国語の試験問題に使用されてきたことがある。これは著者としては望外の喜びなのだが、「らしさ」が試験問題を作成する人にとって「試験問題らしさ」を感じさせるからだろう。それはともかく著者としても、「○○らしさ」がユニークな切り口であることを再認識したしだいである。

なお本書をいま世に問うにあたり、近年の「らしさ」本を踏まえて、連載に手を加えることもありえたが、連載にはその頃の空気や私の思いが流れ、また私の限界が露呈していることもあり、あえてそのままにしている。ただしそれは言い訳にすぎず、現代の日本の「らしさ」から時代遅れになっている部分もあるため、その点については、この本のために書き下ろした「たしからしさ」でふれることにした。

それではそろそろ、「らしさ」の迷路に迷いこんでいくことにしよう。


- 版元から一言 -
民俗学者の畑中章宏さんによる評論集。民俗学の知見で、「らしさ」という言葉のもつ窮屈さや、多様さをさまざまな「らしさ」をもとにひもときます。装丁もちいさく凛とした上製本で、「書籍らしさ」の感じられる書籍となっています。


- 著者プロフィール -
畑中 章宏 (ハタナカ アキヒロ) (著)
民俗学者。 1962年大阪生まれ。近畿大学法学部卒。平凡社の編集者として、雑誌『月刊太陽』のほか、荒木経惟、佐内正史の写真集の編集にたずさわる。2000年にフリー編集者として独立、2010年頃から著述に重点を移し、災害伝承、民間信仰から流行現象まで、幅広い領域に取り組んでいる。著書に、『宮本常一』(講談社現代新書)、『災害と妖怪』(亜紀書房)、『廃仏毀釈』(ちくま新書)、『21世紀の民俗学』(KADOKAWA)、『死者の民主主義』(トランスビュー)、『五輪と万博』(春秋社)、『ごん狐はなぜ撃ち殺されたのか』(晶文社)、『新・大阪学』(SB新書)、『『忘れられた日本人』をひらく』(若林恵との共著、黒鳥社)、『オルタナティブ民俗学』(島村恭則との共著、誠光社)ほか。最新刊は『老いに追われて』(rn press)。

International shipping available
  • レビュー

    (133)

  • レビュー
    (133)

¥2,970

最近チェックした商品
    同じカテゴリの商品
      その他の商品