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奇想天外な目と光のはなし | 入倉 隆

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雷鳥社 2022年
ソフトカバー 216ページ
四六判


- 内容紹介 -
見える世界はこんなに違う!
脳をもたないクラゲ、真っ暗な深海を漂うダイオウイカ、
首を頻繁に動かすフクロウ、ごみ袋を透視するカラス、
岩に固着すると視力を失うフジツボ、彼らはどのようにものを「見て」いる――?

心理学、光学、工学の横断領域にあたる「視覚心理学」を研究する著者が、
光や色の特性、目の仕組み、さらには世界中の動物たちの目の構造や特性についても調べ、
「これは面白い!」と思った話題を掻き集めた、知的好奇心をくすぐる一冊。

ダーウィンを困らせた「目の進化」から、動物たちの「見る・見られる」の攻防戦、
蛍光色や輪郭線が目立って見える「視覚の不思議」まで、“目から鱗”のトピックが凝縮。

・どうして目は「頭部」に「2つ」ついているの?
・動きの速い動物ほど視力が良い?
・真っ暗な深海に棲む動物にも目があるのはなぜ?
・話せない赤ちゃんの視力検査はどうやるの?
・昼間に強い光を浴びないと夜に冷えやすい?
・人間よりも色覚の多い動物は、より鮮やかな世界を見ている?
・バイオレットライトは目を良くする? ブルーライトは目を悪くする?

生物進化論、視覚心理学、光学をまたいで、
目と光が織りなす奇想天外な世界を旅してみませんか?


目次
まえがき

chapter1:進化
01「目」の誕生と進化
02 複眼と単眼で捉える世界
03 複雑なカメラ眼の成り立ち
04 陸上の目、水中の目
05 さまざまな機能をもった動物の目

chapter2:見る・見られる
01 どうして目は頭についているの?
02 どうして目は二つあるの?
03 コミュニケーションに長けた人間の目
04 視野を広げるための工夫
05 動きの速い動物ほど視力が良い?
06 動きの遅い動物の目は退化する?
07 わずかな色の差を見分ける目の仕組み
08 動いているものは目立って見える

chapter3:見えない世界
01 紫外線を捉える動物たち
02 人間も紫外線を感じている?
03 赤外線を使って見えないものを見る
04 偏光パターンで太陽の位置を知る
05 光を追うもの、避けるもの
06 発光しておびき寄せる
07 真っ暗な深海に棲む動物にも目がある理由
08 電気を使って捕食する

chapter4:どこまで見える?
01 人の視力はどこまで発達するの?
02 見ている世界にだんだん慣れていく
03 どのくらい遠くまで感じられる?
04 どのくらいの速さで感じられる?
05 光の量を調節する瞳孔の形
06 何色まで見分けることができる?
07 見えない色、感じない色

chapter5:感じる光
01 光を色として感じる仕組み
02 構造が作り出す複雑な色
03 光環境に適応する目の仕組み
04 太陽の光が生活リズムを作る
05 光の色や強さで体感温度が変わる
06 光の方向で眩しさが変わる
07 高齢になると光はどのように感じられる?
08 光は目を良くする? 悪くする?
09 色によって変化する味覚
10 目を閉じたら、感じ方はどう変わる?

あとがき
参考・引用文献


前書きなど
動物学者でもない私が、なぜ動物たちが見ている視覚世界や目の仕組みについての本を書いたか、疑問に思うことでしょう。私は大学の電気工学科で、光の見え方や感じ方を扱う「視覚心理学」の研究を行う一研究者です。
大学卒業後は、東京の三鷹にある国立研究所で航空灯火について研究をしていました。航空灯火とは、滑走路に設置されている灯火のこと。飛行機に乗ると滑走路で点灯している光を見たことがありますよね、あれです。
夜間や霧でもパイロットが迷うことなく滑走路を見つけて着陸し、真っ直ぐに走行できるのは、灯火が照らし出す経路を目印にしているからです。上空から航空灯火がしっかり見えるかどうかは、多くの人命がかかっているパイロットにとっては最重要事項の一つなので、私たち研究者が明るさは適切か、上空から見て眩しさを感じないかなどを調べて、現場で生かしているのです。
これが縁となり、大学に移ってからは、心理学、光学、工学の横断領域にあたる視覚心理学の研究をするようになりました。

視覚心理学の研究では、不思議なことがたくさん発見されています。一例を挙げると、床や机の上ではなく壁を照らすと、いつもより部屋が広く感じられます。こうした光が与える心理的な効果を探求するうちに、視覚心理学の基礎となる光や色の特性、目の仕組みについても詳しく調べるようになりました。さらには人間の目だけでなく、世界中の動物たちの目の構造や特性についても興味が湧いていったのです。

人は見た目からかなり多くの情報を読み取っています。黄色く熟したバナナがたわわに実っている様子を見たら、「甘くて美味しそう」と思うでしょう。房が緑色だったら、「まだあまり甘くはなさそうだな」と判断して、熟すまで待つはずです。房が茶色っぽく変色していたら、「もう傷んでしまって食べられないかも」と、食べるのを諦めるかもしれません。
人間の目がバナナの色を識別できるのは、ごく当たり前のことのようですが、実はかなり発達した目をもっていないとできないことです。特に人間ほど高度な色彩感覚をもつ動物は、哺乳類でもそれほど多くはありません。
例えば、身近なペットである犬や猫は、色を識別する視細胞の種類が人間よりも少ないため、赤色を見分けることが困難です。血液の色を「赤色」と認識できるのは、哺乳類では霊長類だけだといわれています。
  
一方、一部の動物たちには、人間の目には見えない光や色が見えています。例えば、花の蜜を吸うモンシロチョウなどの昆虫は「紫外線」を感知することができるため、紫外線を反射する花びらは、きっと人間よりも目立って見えているでしょう。このように、動物のほとんどが、私たちとは異なる世界の中で生きているのです。

さらに、光そのものが私たちの身体に大きな影響を与えることも分かっています。例えば、日中、薄暗い場所で過ごすと、明るい場所で過ごした場合と比べて、夜に寒さを感じやすくなるそうです。よく赤や黄色を「暖色」、青色を「寒色」と呼んだりしますが、実際に光の色や強さによって体感温度が変化する研究結果も報告されています。

本書は、こうした光や目にまつわる不思議でアッと驚く話を紹介しながら、普段、何気なく見ている世界を新しい角度で眺めてもらえたらという思いで書きました。具体的には次のような構成になっています。

chapter1「目の進化」では、簡単な光を感じるだけの器官からどのようにして複雑な目へと進化したのかについて語ります。chapter2「見る・見られる」では、動物の目が捕食者か被食者、動く速度などによりその構造や機能がどのように異なるのか、chapter3「見えない世界」では、太陽光を利用しながら巧みに生き抜く生き物について紹介します。chapter4「どこまで見える?」では、赤ちゃんが成長に合わせて目の機能をどのように発達させていくのか、動物がどこまで色を識別できるのかなどについて、chapter5「感じる光」では、色の見え方や感じ方、光が視覚以外に及ぼす影響について見ていきます。

 とにかく私自身が、「これは面白い」と思った話題をたくさん集めてみました。ぜひ、私と一緒に目の不思議な世界を探検してみませんか。
版元から一言
 地球に棲む生き物の多くは太陽光の下で暮らしています。光を利用した生物の生存戦略は多岐に渡り、その中の一つに「目」という感覚器官の発達が挙げられます。「目」の作りによって、感知することのできる「光」も違い、また目のつく位置や視力、色覚の違いでも「見える世界」は大きく異なります。紫外線を捉える鳥やチョウ、赤外線を感じるヘビが見ている世界は人間には想像ができません。さらに同じ人間でも、人種によって虹彩の色が違うことで「眩しさ」の感じ方が異なることや、まだ視力が発達していない赤ちゃんや、青色と黒色の区別がつきにくい高齢者が見ている景色も同じではないと考えられます。
 この本を通して私たちがふだん「当たり前」に思っている視覚の不思議を再発見するきっかけになればと思います。また「視覚心理学」「光学」を専門にする著者の眼差しによって、目の進化や仕組みの話を「生物学」だけに留めることなく、様々な角度から眺められるようになっている点も見どころです。実際のカバーは普通の黄色ではなく、蛍光黄色を使っているので、鮮やかな発色で目を引きます。


- 著者プロフィール -
入倉 隆 (イリクラ タカシ) (著/文)
芝浦工業大学教授。1956年(昭和31年)香川県生まれ。1979年早稲田大学理工学部電気工学科卒業。運輸省交通安全公害研究所などを経て、2004年より現職。博士(工学)。元照明学会副会長。専門は、視覚心理、照明環境。主な著書に、『脳にきく色 身体にきく色』(日本経済新聞出版社)、『視覚と照明』(裳華房)、『照明ハンドブック 第3版』(オーム社)などがある。

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