本の身の上ばなし | 出久根 達郎
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筑摩書房 2024年 ちくま文庫
ソフトカバー 304ページ
文庫判
- 内容紹介 -
「有為転変は人の世の習いだが、書物にも数奇な運命がある。本の身の上は、本にかかわる人の物語でもある」(本書より)。
高倉健のご先祖様が書いた本、脱走兵だった作家・里村欣三、井上ひさしの父親が書いた小説、批評家も騙された贋作目録、偽書にのめり込む者……。意外な人の意外な本、1冊の本の陰に隠されたドラマなど、書物と人間とをめぐる56話。
イラスト南伸坊
- 目次 -
主婦の関所破り 福岡発、五カ月間の長旅
野中千代子の『女大学』 夫の気象観測支えた忍耐
子母澤寛の筆名 大学時代に書いた廉価本
朝日融渓は何者? 宗教家が起こした怪事
「幻の本」の理由 復刊拒んだ辛口評論家
金もうけは先人の知恵 理に適った利殖の秘訣
三十の名を持つ作家 少年の自立支援と文筆活動
実業家の探偵小説 現実の殺人事件を題材に
偽書の著者・岩本無縫 一高生の名かたる幻の発禁本
詐欺的出版の解説書 好奇心釣り出す広告
哲学者と糟糠の妻 勉強支えた内助の功
夢野久作との合作? 父が「翻訳」した英国小説
ニコニコ主義の唱道者 銀行家が説く笑顔の効用
世にも珍奇な贋物目録 批評家が激賞した肉筆画
古稀の俳句談議 新劇人が編んだ父の句集
九條武子の写真 読者ひきつけた麗人の孤独
女子教育の先駆者 「?村訳」冒険譚、歯切れよく
「文学芸者」の自伝 読書経験生かした新橋の女将
天下之愚論『芸者論』 論語の普及に貢献した実業家
人名索引つき随筆集 幅広い交遊映す「雑文」
香水郵便の考案者 後藤新平が共感した詩魂
木下尚江の「饅頭本」 中学生で出合った運命の書
「猫」の稀覯本 養蚕指導者が著した初の百科
井上ひさし父の小説 入選作の品格と卓抜な表現
背文字のない本 新橋の芸者が交わす東京語
初のカンヅメ作家 明治の少年に「蓄積力」を説く
文学から空へ 異国で詩心養ったヒコーキ乗り
元教師の滞欧記 サバイバル絵画で困難克服
ステッキ護身術 “海賊”流の極意を獄中出版
目利きの珍書屋 商売一徹転べど起き上がる
お記録本屋 江戸の出来事 細大漏らさず
性科学者の真摯な解説 発禁処分続々 時の人に
艶本出版王の別の顔 珍記事収集 民衆意識を探る
川路聖謨と柳虹 性の話題もおおらかに
奈良奉行と天才少女 大人あしらう才気 一同驚く
川路聖謨の妻さと 江戸一の美人 歌にも秀でる
発禁本と時勢の変化 権力者は加虐被虐を嫌う
多才な作家木村毅 旺盛な好奇心 軍隊生活描く
兵営から逃げた男たち 愛児を思い自首を決める
軍と歩いた作家里村欣三 戦争絵本手がけ比島に死す
反戦作家の遺書 親友に託した「軍隊日記」
書込みにそそられて 旧蔵者の率直な批評楽しむ
詩集を贈って征った人 「珠玉の歌」に込めた思い
戦友の歌を受け継ぐ 特攻隊員から中学生まで愛唱
雑誌付録繁盛記 アッと驚く厚さ豪華さ
薩摩の学生 辞書を編む 英語初心者向けの工夫満載
龍馬の密使 戯曲を執筆 フランスで上演 大評判に
すぐに出た関東大震災本 九死に一生の体験談
楚人冠全集の「きき目」 「稲むらの火」人物伝を収録
香典代わりのリレー小説 五十五人が連載、遺稿集の「付録」に
「事実は小説より」の出典 バイロンの言葉、明治期には紹介
愛すべき漫画の思い出 落丁騒ぎや作者との交流
「化け込み」の女性記者 奔放な恋愛、人生も七変化
「むっつり右門」の生みの親 書きまくって大家族養う
新聞の切抜きも「古書」 毎日欠かさぬ熱意に感動
スペイン風邪の義援出版 小川未明、危機脱し童話執筆
身近に感じられる
- 著者プロフィール -
出久根 達郎 (デクネ タツロウ) (本文)
1944年茨城県生まれ。73年から東京・高円寺で古書店・芳雅堂(現在は閉店)を営む傍ら、文筆活動に入る。92年『本のお口よごしですが』で講談社エッセイ賞、93年『佃島ふたり書房』で直木賞を受賞する。2015年には『短篇集半分コ』で芸術選奨文部科学大臣賞を受賞。著書に『おんな飛脚人』『安政大変』『作家の値段』など多数がある。
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