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コンバヒーリバー・コレクティヴ宣言|キアンガ=ヤマッタ・テイラー(編), Political Feelings Collective(訳)
¥3,520
花伝社 2025年 ソフトカバー 376ページ 四六判 - 内容紹介 - 「黒人女性が自由であるならば、他のすべての人が自由であることを意味する。なぜなら、私たちが自由であるためには、すべての抑圧システムの破壊が必要だからだ――」 60~70年代の革命的ブラックフェミニスト集団「コンバヒーリバー・コレクティヴ」。「インターセクショナリティ」という言葉が生まれるはるか前に、性や人種の連動(インターロッキング)する抑圧を捉えようとした彼女たちの記念碑的ステートメント全文が、ついに本邦初邦訳! - 著者プロフィール - キアンガ=ヤマッタ・テイラー (キアンガヤマッタテイラー) (編) ノースウェスタン大学でアフリカ系アメリカ人研究の博士号を取得し、プリンストン大学助教授を歴任。著書に『#BlackLivesMatterから黒人解放へ』など。『ソウルズ――黒人の政治、文化、社会についての批評誌』、『ガーディアン』、『ロサンゼルス・タイムズ』、『ボストン・レビュー』、『ニュー・リパブリック』、『アルジャジーラ・アメリカ』、『ジャコビン』、『イン・ディーズ・タイムズ』、『ニュー・ポリティクス』、『国際社会主義レビュー』などへ寄稿。2016年にはラナン財団から「文化的自由・特に注目すべき書籍」賞を受賞。 Political Feelings Collective (ポリティカルフィーリングスコレクティヴ) (訳) 関東圏を中心に活動する翻訳出版集団。2020年、上映団体ノーマルスクリーンによる映画『タンズ アンタイド』の上映の際、字幕翻訳に関わったメンバーが、この映画の中で引用されている詩人、オードリ・ロードの読書会を開催。コロナ禍においてオンラインで1年以上にわたって続けられたこの読書会は、ブラックフェミニズム関連の翻訳や研究を行う翻訳出版集団へと展開する。2021年にはオードリ・ロード著作集と本書『コンバヒーリバー・コレクティヴ宣言』の2冊の刊行を目指しクラウドファンディングを実施。「政治的感情」を探究するという理念のもと、翻訳とあわせZINEなどの制作を通じて、執筆活動も行う。
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熊 人類との「共存」の歴史[新版]|べアント・ブルンナー(著), 伊達 淳(訳)
¥2,750
白水社 2026年 262ページ 四六判 - 内容紹介 - 駆除でもなく、保護でもない。 慈愛と畏敬を持って接すべき大切な隣人でありながら、人の生命を脅かす害獣としても扱われる。 二分法では永遠に解くことのできない熊と人間との深い関係性を、豊富な知見から徹底的に引き出した名著。 いま読まれるべき本だと、ぼくは思う。 石川直樹 有史以来、人間は熊と他の動物とは異なる特別な関係を結んできた。原初の人類にとって、熊は「狩る/狩られる」の関係にあり、自然崇拝の象徴でもあった。ところが、時代が下るにつれて家畜を襲う害獣として疎まれるようになっていく。ヨーロッパやアフリカのように絶滅に追いやられた地域もある。 他方、『三びきのくま』、『くまのプーさん』、『ジャングル・ブック』のように、熊ほど人間に愛され、その想像力に訴えかけてきた動物もいない。狩猟家として名を馳せたアメリカ大統領セオドア・ルーズヴェルトの愛称を冠した可愛らしいテディベアに象徴されるように、熊はなぜ人間にとってこれほど矛盾に満ちた存在なのだろうか。 本書では、熊と人が辿ってきた長い歴史を読み解きながら、熊という存在について16の切り口から考察する。幅広い文献を渉猟し、熊にまつわる伝説や言い伝え、さまざまな時代の証言や観察記録、(ときに奇抜な)学説が紹介され、時代ごとに人が熊をどのように見てきたかを概観することができる。 文化史と自然史の交わるところに焦点を当て、今後われわれは熊といかに関係を築いていくべきかを本書は問いかける。 - 目次 - 序文 第1章 熊の辿ってきた道 第2章 変異 第3章 ドウクツグマの謎 第4章 誤解 第5章 異国での発見 第6章 熊の個性 第7章 音、感覚、合図 第8章 ペットとしての熊 第9章 東シベリアでの観察者 第10章 対峙する 第11章 狩る者と狩られる者 第12章 イヌイットとホッキョクグマ 第13章 もっと、もっと近くに 第14章 熊のショー 第15章 熊の代役 第16章 熊恐怖症 エピローグ 謝辞/参考文献に関して 訳者あとがき 図版クレジット/参考文献/索引 - 著者プロフィール - べアント・ブルンナー (ベアント ブルンナー) (著) 1964年生まれ。ベルリン自由大学、ベルリン経済大学を卒業。フリーランスの文筆家、ノンフィション作品の編集者。歴史、文化、科学を横断するさまざまなテーマの著作多数。邦訳に『水族館の歴史』『月』(以上、白水社)がある。最新作はUnterwegs ins Morgenland. Was Pilger, Reisende und Abenteurer erwarteten, und was sie fanden(2024)。 伊達 淳 (ダテ ジュン) (訳) 1971年生まれ。和歌山県那智勝浦町出身。関西学院大学商学部、東京外国語大学欧米第一課程卒業。訳書に、B・オキャロル『マミー』、D・モリス『フクロウ その歴史・文化・生態』『サル その歴史・文化・生態』、T・エンジェル『フクロウの家』、A・エンライト『グリーン・ロード』(以上、白水社)、B・オキャロル『チズラーズ』『グラニー』(以上、恵光社)、B・クラウス『野生のオーケストラが聴こえる サウンドスケープ生態学と音楽の起源』(みすず書房)、D・モリス『アートにみる身ぶりとしぐさの文化史』(三省堂)がある。
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江藤淳と加藤典洋 戦後史を歩きなおす|與那覇 潤
¥2,090
文藝春秋 2025年 ソフトカバー 320ページ 四六判 - 内容紹介 - 戦後80年間の日本人の魂の遍歴を、江藤淳・加藤典洋とともにたどる試み。小林秀雄賞の歴史家が放つ、初めての「文芸批評」。 *上野千鶴子さん推薦 「戦後批評の正嫡を嗣ぐ者が登場した。文藝評論が政治思想になる日本の最良の伝統が引き継がれた思いである。」 *東畑開人さん評(読売新聞2025年6月22日付) 「戦後史についての本であるけれども、それ以上の本だ」「文学とは時代の苦悩を物語る営みに他ならない。そこに時代を生きた心が浮かび上がる」 国破れて小説あり ――敗けてから80年、 再生する日本が「青春期」に悶えた記憶を 老いたいま、どう受けとるのか。 文芸評論の巨人ふたりに倣いつつ 太宰治から村上龍、春樹まで、 戦後文学の最も高い尾根から見晴らす 私たちの ”魂” の現代史。 目次 ベース・キャンプにて 歴史が消えてからのまえがき 戦後史の峰に登る 人間宣言――太宰治『斜陽』 社会党政権――椎名麟三『永遠なる序章』 六全協――柴田翔『されど われらが日々――』 ふたつの安保――庄司薫『赤頭巾ちゃん気をつけて』 沖縄返還――村上龍『限りなく透明に近いブルー』 ヒュッテでの一夜 「満洲国」のあとで 大佛次郎から村上春樹へ 現在への坂を下る 江藤淳小伝 轟轟たる雷鳴に死す 「喪の作業」が消えた平成 書評 平山周吉『江藤淳は甦える』 「歴史」の秩序が終ったとき 三島事件後の歴史家たち 書評 風元正『江藤淳はいかに「戦後」と闘ったのか』 瓦礫の掃き寄せ WGIP史観のあとさき 書評 赤坂真理『箱の中の天皇』 批評家の最後の闘争 ふたたびの『妻と私』 ねじれとの和解の先へ 『敗戦後論』後の加藤典洋 歴史がこれ以上続くのではないとしたら 加藤典洋の「震災後論」 最後の文芸評論家 加藤典洋さんを悼む 帰りの汽車のなかで 終わらない対話のあとがき
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みんなの社会的処方 人のつながりで元気になれる地域をつくる|西 智弘, 岩瀬 翔, 西上 ありさ, 守本 陽一, 稲庭 彩和子, 石井 麗子, 藤岡 聡子, 福島 沙紀
¥2,200
学芸出版社 2026年 ソフトカバー 256ページ 四六判 - 内容紹介 - 孤立という病に対し薬ではなく地域の人のつながりを処方する「社会的処方」。日本での実践はまだ始まったばかりだ。いま孤立しているかどうかや、病気や障がいの有無、年齢に関わらず、「誰もが暮らしているだけで自分の生き方を実現できるまち」をどうつくるか。世界と日本の取り組みに学び、これからのビジョンを示す一冊。 - 目次 - はじめに 社会的処方はもっと自由でいい ■Chapter1 社会的処方の「3つの理念」 人間中心性 エンパワメント 共創 「支援する」とはどういうことか 社会的処方の「型」 社会的格差と、広がる自己責任論 ■Chapter2 孤独・孤立の現状 若者を含めた「居場所」はどのように作れるのか REPORT│小杉湯│西 智弘 90年間建ち続けてきた「場」としての力 社会に必要な、インフラとしての銭湯 「開くのではなく、閉じない」からの相補う関係性 小杉湯「的な場」が持つ、社会的処方としての意義:社会的行方不明者をつくらない 社会的処方の進化 Green/Blue Social Prescribing REPORT│Nami-nications│西智弘 サーフィンを通じてつながる Nami-nications アダプティブ・サーフィンが変えていくもの Green/Blue Social Prescribingの広がり 働かざるもの食うべからず「ではない」 ■Chapter3 社会的処方と世界・日本の動き REPORT│イギリス・フルーム│岩瀬翔 イギリス・フルーム 誰もがリンクワーカーになれる町 MakeaSpark まずは何か動き出そう 「人間の道しるべ」作戦 おせっかい住民をエンパワメントする コロナ禍を経て本質を掴んだ市民リンクワーカー達 ヘリテージコネクター/グリーンコミュニティコネクター 世界の社会的処方の現在地 言葉が全てではない 日本における「モデル事業」 名張と養父 REPORT│名張市│西上ありさ 厚労省モデル事業:名張市/ステイホームダイアリーと社会的処方の展開 REPORT│養父市│守本陽一 厚労省モデル事業:養父市 様々なセクターがまずつながる 医療を起点とした社会的処方の実践 養父市におけるリンクワーカー養成講座 小規模多機能な公共空間「だいかい文庫」 「孤独・孤立対策推進法」とその意義 ■Chapter4 社会のなかで生きることが元気につながる EPISODE│オバケのタムタム&studio FLAT│西智弘 バリアを超えて才能を届ける StudioFLATの取り組み 障がいのある無しに関わらず、良いものは良い アートと障がいと社会的処方的な意義 アートを通じて、人と社会がつながっていく REPORT│アートと社会的処方│稲庭彩和子 アートはずっと存在している。それはなぜなのか? アートと文化でウェルビーイングを増進 「とびらプロジェクト」と社会的処方の共通項 私たちの目指すこと アートコミュニケータとソーシャルな鑑賞法 「きく力・みる力」がケアする力になる REPORT│Dance Well│西智弘 Happy! Dance Well 美術館の内外、そしてアート作品を利用して自らを表現する 身体表現を使って、他人と会話する ダンスレッスンではないのに、結果的にダンスになっている アートがもつ力で変わっていったAさん アートが持つ「ケアの力」 無意識の差別をこえていく REPORT│高齢者福祉施設 西院│西智弘 「要介護」? 関係なく夢は叶えられる 「はたらく」こと=生きるをつくること 「参加」からはじめる 就労とお金の問題 ■Chapter5 暮らしているだけで元気になれるまちをつくる おせっかいのエンパワメントは意外と効く REPORT│おせっかい会議│石井麗子 地域おせっかい会議の風景 コミュニティナースと健康おせっかい まちの身近な存在、郵便局がおせっかいのハブになる 「共感・挑戦・ネットワーク」の実践支援プロセス まちへ飛び出し声を拾い続ける事務局 社会的処方の視点からみた地域おせっかい会議 やればやるほど楽しいことが大きくなる おせっかいが育む優しい目 REPORT│ほっちのロッヂ│藤岡聡子 診療所とまちの居場所が複合された「ほっちのロッヂ」 発地(ほっち)にある森小屋を起点に 私たちは人の何を捉えているのか 自分の関心のあることに掛け合わせていく ケアする・される関係性の逆転は台所から 大切な人を亡くした人が、「あのね…」と話せる部屋があるといい─福島沙紀 おわりに この本で伝えたかったつのこと 暮らしの保健室・川崎/社会的処方研究所はどうなっているか/社会的処方の未来 - 著者プロフィール - 西 智弘 (ニシ トモヒロ) (著) 川崎市立井田病院医師/一般社団法人プラスケア代表理事 2005年北海道大学卒。室蘭日鋼記念病院で家庭医療を中心に初期研修後、川崎市立井田病院で総合内科/緩和ケアを研修。その後2009年から栃木県立がんセンターにて腫瘍内科を研修。2012年から現職。現在は抗がん剤治療を中心に、緩和ケアチームや在宅診療にも関わる。一方で、一般社団法人プラスケアを2017年に立ち上げ代表理事に就任。「暮らしの保健室」や「社会的処方研究所」の運営を中心に、「病気になっても安心して暮らせるまち」をつくるために活動。日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医。著書に『社会的処方 孤立という病を地域のつながりで治す方法』(学芸出版社)、『緩和ケアの壁にぶつかったら読む本』(中外医学社)、『がんになった人のそばで、わたしたちにできること』(中央法規出版)他多数。 岩瀬 翔 (イワセ カケル) (著) 式根島診療所所長 西上 ありさ (ニシガミ アリサ) (著) studio-L 守本 陽一 (モリモト ヨウイチ) (著) 一般社団法人ケアと暮らしの編集社代表理事/兵庫県豊岡保健所 稲庭 彩和子 (イナニワ サワコ) (著) 独立行政法人国立美術館国立アートリサーチセンター 石井 麗子 (イシイ レイコ) (著) 一般社団法人プラスケア 藤岡 聡子 (フジオカ サトコ) (著) 軽井沢町・大きな台所と診療所があるところ ほっちのロッヂ共同代表 福島 沙紀 (フクシマ サキ) (著) 一般社団法人プラスケア
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二重に差別される女たち ないことにされているブラック・ウーマンのフェミニズム|ミッキ・ケンドール(著), 川村まゆみ(訳), 治部れんげ(解説)
¥3,080
DU BOOKS 2026年 ソフトカバー 336ページ 四六判 - 内容紹介 - あなたの「フェミニズム」は大丈夫? 主流の白人フェミニストが提唱する「シスターフッド」に対して、 BLMの時代、「ブラック・フェミニズム」からの切なる訴えとは━━? 白人女性=自分に置き換えると見えてくる、シスターフッドのあるべき姿―― ●米「タイム」誌 2020年読むべき本100に選出 ●ワシントンポスト 2020年注目すべきノンフィクションブックに選出 ●英BBC 2020年ベスト・ブック100に選出 ●NYタイムズ ベストセラーリスト10週間ランクイン 「教育を受け、安定した職業に就く日本のフェミニストが本書を手に取って読むと居心地の悪さを感じる記述が少なくないだろう。ただし、目を逸らさずに『白人女性』 『主流派のフェミニスト』への批判を自分に置き換えながら読み進めてほしい。」 ━━治部れんげ(東京工業大学リベラルアーツ研究教育院准教授) 主な内容 ・連帯はいまだに白人女性のためのもの ホワイト・フェミニズムの罪――中・上流階級の白人 女性以外を排除するフェミニズムとは ・銃による暴力 セイ・ハー・ネーム――銃に命を奪われた黒人女性たちにも名前はあった ・#FASTTAILEDGIRLSと自由 レイプ・カルチャーへの抵抗――被害者非難より加害者にならない教育を ・降り注ぐ家父長制 コミュニティーに内在する家父長制の害――白人カルチャーを模倣した根深い性差別 との闘い ・〇〇にしては、かわいい コミュニティーの内外に存在するカラリズムとテクスチュアリズム―― 白人至上主義の美学 ・恐怖とフェミニズム ホワイト・フェミニズムよ、白人至上主義の家父長制から抜け出し、異人種への恐怖を 手放して、全女性のために立ち上がれ ・人種と貧困と政治 投票権は民主主義の柱である 万人のために確約せよ ・教育 教師によるいじめ、学校から刑務所へのパイプライン、常駐警官への依存を断ち切る ・アライ、怒り、共犯者 ホワイト・フェミニズムはプラットフォームと人的・物的資源を差し出して、真の支援を 「ミッキ・ケンダルはフェミニストたち――特に白人フェミニスト――に書状を突きつけた。ムーブメントの担い手である我々が記憶にとどめるべき人種差別の歴史と、インターセクショナルな視点及び人種差別反対主義に焦点を当て、前進する必要性を訴えている ――ダイアナ・アンダーソン、『Problematic』著者 「『フッド・フェミニズム』〔原題〕はフェミニスト必読の1冊だ。メインストリームのフェミニスト・ムーブメントの欠陥を問いただし、黒人女性たちについて知るべき知識を提供している。ケンダルはアイデンティティーの多くの交差点に巧みにスポットライトを当て、怒りの美しさとパワーを示している」 ――エリカ・L・サンチェス、『I Am Not Your Perfect Mexican Daughter』著者 「ミッキ・ケンダルの本は、こんにちのフェミニストたちにアクションを起こせと呼び掛けている。わたしは本書で動かしがたい事実と説得力に富む議論を学び、極めて重要な闘いに挑む準備ができた。『フッド・フェミニズム』〔原題〕は万人が読むべき1冊だ」 ――ガブリエル・ユニオン、『We’re Going to Need More Wine』著者 「経済について語る前に、誰もが1年間サービス産業に従事すべきだ。それと同じく、白人のレディは、フェミニズムを語る前に全員この本を読むべきだ。本書に書かれた言葉は真実である」 ――リンダ・ティラド、『Hand to Mouth』著者 - 著者プロフィール - ミッキ・ケンドール (ミッキケンドール) (著) ライター、講演家、ブロガー。彼女の論説は米「『ワシントン・ポスト』」「『ボストン・グローブ』」や英「『ガーディアン』」各紙、米「『タイム』」「『Salon』」「『Ebony』」「『Essence』」各誌をはじめ、さまざまなメディアに掲載されている。米NPR(ナショナル・パブリック・ラジオ)の「『Tell Me More』」、衛星テレビ局アルジャジーラの「『The Listening Post』」、英BBCの「『Woman’s Hour』」にも出演し、人種、フェミニズム、シカゴで発生する暴力、科学技術、ポップ・カルチャー、ソーシャル・メディアについて自論を展開。全米各地の大学でも講演を行なっている。SF・ファンタジー作品が対象のローカス賞候補となったアンソロジー『Hidden Youth(隠された青春)』を共同編集。ヒューゴー賞編集者部門候補の「『Fireside Magazine』」の一員でもある。軍を退役したあと、家族とともにシカゴ在住。
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部落フェミニズム|熊本理抄(編著), 藤岡美恵子, 宮前千雅子, 福岡ともみ, 石地かおる, のぴこ, 瀬戸徐映里奈, 坂東希, 川﨑那恵
¥2,640
エトセトラブックス 2026年 ソフトカバー 288ページ 四六変形判 縦188mm 横131mm 厚さ17mm - 内容紹介 - ないものとされてきた存在を可視化する、 部落女性9人による実践と思想。 婦人水平社100年の姉妹たちの歴史、レイシズムとしての部落差別、識字文集、聞き取り、自立生活運動、フェミニスト・カウンセリング、部落解放運動、在日朝鮮人運動、障害者運動、反差別運動、むらの「食」の記憶、地域・コミュニティ…… 被差別部落をルーツに持つ女性たちが、それぞれの研究や活動現場から「部落」を語り直す、これまでになかったフェミニズムの書。 - 目次 - 編者まえがき 第1章 部落女性の「不可視化」とフェミニズム──レイシズムとしての無関心 /藤岡美恵子 第2章 祖母、母、わたしと婦人水平社の姉妹たち/宮前千雅子 第3章 私から、われわれ、そして私へとつながる物語/福岡ともみ 第4章 私が生きのびるための思想・生活・運動/石地かおる(聞き手:のぴこ+川﨑那恵) 第5章 私たちはここにいる/のぴこ 第6章 「食」の記憶に浮かびあがる部落女性たち──ある皮なめしのムラの聞き取りから/瀬戸徐映里奈 第7章 地域・コミュニティにとって「当事者」とは誰か?/坂東希 第8章 私たちが部落を語るために──部落に生きる者たちの系譜/川﨑那恵 第9章 不可視化への歴史的抵抗、主体と権利の奪還/熊本理抄 あとがきにかえた謝辞 - 前書きなど - 編者まえがき 熊本理抄 全国水平社創立から100年となる2022年、部落問題としては異例なほどの賑わいがメディアで見られた。翌年の2023年、波が引いたように静まりかえる。部落にルーツがあることを大切にしながらそれぞれの自己表現で生きる人びと、部落差別を不安に思いながら息をひそめて生きる人びとが、身近に、あるいは現実社会に、いないものにされる日常に戻った。地域レベルでは、婦人水平社100年に関連する取り組みが部落女性の主催で開かれはしている。しかしながら、研究や運動が不在としてきた部落女性を、さらになきものにしようとする100年後の現実世界を生きる目撃者になってしまった。 おりしも「インターセクショナリティ」が人口に膾炙(かいしゃ)していたときである。100年前から部落女性たちが訴えてきた「二重、三重の差別と圧迫」を閑却(かんきゃく)する社会的処遇がいっそう際立ち、ぞっとした。部落解放運動からの歴史抹消と、フェミニズムからの歴史抹消が交差する瞬間に立ち会うことになる。概念としての「インターセクショナリティ」には関心をもつ。しかし、「二重、三重の差別と圧迫」なる表現でみずからの位置と経験を打ち出す部落女性のユニークな視点と実践が、社会をどのように捉え、実際に変えてきたのか、その歴史と思想への関心は示されない。このままではいけない。1920年代に、社会からいないものにされていた部落女性の存在を、一世紀後に生きる私までもが不可視化すれば、二重三重の不可視化に加担することになる。 歴史をさらに繰り返さないため、2023年の夏、エトセトラブックスの松尾亜紀子さんに連絡した。部落女性のフェミニズム思想をテーマに本を出したい。「フェミニズムの本を届ける出版社」であるエトセトラブックスから出したい。フェミニストに届けたい。それが本書の始まりとなる。 エトセトラブックスのホームページには次のように記されている。 まだ伝えられていない女性の声、フェミニストの声を届ける出版社です。 これまでエトセトラ(その他)とされてきた女性の声は無限にあり、フェミニズムの形も個人の数だけ無限にあります。 そんな〈エトセトラ〉を届けるフェミニストプレスです。 伝えても届けても聞かれない声、聞こうともされない声、フェミニズムとは見なされない声、声を聞く機会がもっと開かれているはずの後人から等閑(とうかん)に付される声、女性解放運動のなかで「その他」とされる声、部落解放運動のなかで「その他」とされる声、歴史の「その他」としてさえ記録されない声、無限にありつつも、中心と「その他」の関係は揺るがないと見なされる声。 部落女性の被る抑圧、かれらが担ってきた生活と運動、それらから生まれる思想を本にしたい。書き手自身も部落女性で、自身の経験を絡めながら書く本をつくりたい。そんな私の声を拾った松尾さんからの返事は早かった。「ぜひ刊行したい」。 秋になって松尾さんとの打ち合わせを数回重ねながら、執筆依頼を始めた。部落への帰属意識の程度、部落コミュニティや部落解放運動とのつながりの形態は多様であるが、「部落女性」との自己認識をもっていることを執筆者の共通点とした。本書が呼び水となり、二作目、三作目が出てくれば、この自己認識も問われるだろう。100年後を生きる部落女性たちから批判される本であってほしい。 本書タイトルである「部落フェミニズム」の名付けをめぐり、執筆者から懸念と躊躇が出される。部落に対するヘイトと女性に対するミソジニーが吹き荒れるなか、実名で書くものがもたらす波及効果を想像できないこと、自身の立ち位置をフェミニストとして、その思想をフェミニズムとして定義するのはためらいがあること。明確な答えのないまま、これら疑念と問いを反芻しつつ、発刊に向けて動き出す。全国水平社創立記念日の3月3日、国際女性デーの3月8日、国際人種差別撤廃デーの3月21日、これら歴史的起点を踏まえて、出版目標を2025年3月に設定した。 2023年12月、執筆者がはじめて顔合わせをした。「自己」がいかに多様な属性で成立しているか。歴史と社会構造に「自己」がいかなる影響を受けながら存在しているか。さまざまな社 会課題と社会運動に接点をつくる「自己」はどのような影響を社会構造に与えつつ生きているか。 濃密な自己紹介からすでに本書は始まっていた。 2024年2月、各執筆者の原稿構想をもとに2日間の話し合いをもった。次回には原稿草案をもち寄っての合宿をしたいと提案したときだった。健常者のなかに障害者が一人という構図が常態化しているやりきれなさを、石地かおるさんが言葉にした。健常者を前提とする食事や休憩の時間規範では参加が阻まれること。全身性の障害がある石地さんの身体が見えないまま、石地さんが介助者をどう動かしているかが見えないまま、オンラインで石地さんという人間について述べていくのは限界があること。何か月も前から介助者を手配しなければいけないこと。合宿に到達するまでにいろいろな用意が必要なこと。不可視化されてきた存在を可視化しようとする場が、不可視化を生む。2024年7月の原稿草案読み合わせは、石地さんが活動する自立生活センターリングリングの体験室を借りて、2日間を共に過ごし行なった。 同時代、次代を生きる部落女性に向けて発信したい。発刊までの過程を重視し、執筆者が共同でつくりあげていくものにしたい。部落女性の思想と実践に、執筆者各人の思考と経験を交差させながら、今私たちが考える部落フェミニズムを浮き彫りにしたい。そこで生まれる矛盾と葛藤もそのまま言語化したい。執筆依頼の際にそう伝えた。概念を用いずに、インターセクショナリティを実証することも重視した。書き手の存在、経験、思想がインターセクショナルでないはずがない。インターセクショナルでないフェミニズムもない。 1999年、反差別国際運動(IMADR)が、「マイノリティ女性に対する複合差別研究会」を立ち上げる。「単数の差別などあるのか」「単一要素に還元できる差別があるのか」と核心を突くような質問を幾度か受けた。差別は単独の形態で成立しないこと、一人の人間に一つの形態の差別が影響を与えるなどないことを了解した質問だった。差別を受ける者は感覚的に知っている。 部落だけで生きている人はいない。女性だけで生きている人はいない。自分の立ち位置や困難を、一つの差別で説明するなどできはしない。女性差別、部落差別といった具合に、差別を切り離せると思っている人たちに、女性差別、部落差別と言えば、自分の経験を説明するに事足りると思っている人たちに、女性差別撤廃、部落差別撤廃を訴えれば、自由への道を切り拓けると思っている人たちに、「あなたの言う女性差別は私の体験を言いあらわせない」「あなたの言う部落差別に私の体験は含まれていない」と異議申し立てをする必要があった。 自分たちの立ち位置と困難を切り分けることなく、またそれらを説明する言葉がないときに、部落女性のつかんだものが「複合差別」だった。複合的な抑圧を生み出すマジョリティ社会を照らす抵抗概念だった。しかしいつのまにか、マイノリティ内部の問題、マイノリティ相互の問題を「発見」したかのように記述し、その「問題」を名付ける言葉へと簒奪(さんだつ)されていった。マジョリティ社会がマイノリティ女性の立ち位置と困難を切り分けてまなざし、説明するための概念、分析する手法になってしまった。複合的な抑圧を被る者が、複合的な圧力を加える側を照射するために磨いてきたのが「複合差別」だったのに。 部落フェミニズムを名乗ることによって、無冠のフェミニズムに付録をつくろうとしているのではない。部落フェミニズムは、本書執筆者たちの創造物でも独占物でもない。部落女性が生きたすべての時代に、差別と抑圧のなかを生きたすべての部落女性が、部落フェミニズムを生きてきた。圧倒的な不可視化と沈黙の強制が働き、私たちがその思想を生き、その思想に生かされることを奪おうとしている。 本書は、今を生きる部落女性が、部落フェミニズムを掘り起こし、書き手の身体を通過させた言葉をもって、未来を生きる者たちに、その思想を手渡す営みである。歴史資料、聞き書き、識字文集、インタビュー、自立生活運動、フェミニスト・カウンセリング、ピア・カウンセリング、部落解放運動、在日朝鮮人運動、障害者運動、フェミニズム、反差別運動、食生活と産業、まちづくり運動をつうじて、私たちが先人に出会ってきたように、本書をつうじて、同時代、そして未来を生きる人たちに出会うことを願いながら。 - 著者プロフィール - 熊本理抄 (クマモト リサ) (編著) 近畿大学人権問題研究所教員。人種、階級、ジェンダー、セクシュアリティが絡み合ってもたらす抑圧、その抑圧からの自由と解放を求める社会運動に関心がある。研究と運動の主たる現場は、日本、インド、米国、国連。主著に『被差別部落女性の主体性形成に関する研究』(2020年、解放出版社)がある。現在取り組んでいる活動と研究はもりだくさんで、隣保館を中心に行なわれる相談支援、学校における人権教育とジェンダー教育、主体性と関連するマイノリティ女性の学習と労働、同和対策事業等マイノリティを対象とした社会政策など。なかでもとくに聞き取りが大好き。生きてきた軌跡から社会構造に向き合いつづけたい。そしてものづくりが大好き。つぎの人生では職人になりたい。 藤岡美恵子 (フジオカ ミエコ) (著) 法政大学大学院非常勤講師(「国際人権論」を担当)。1980年代末から2000年代半ばまで国際人権NGO反差別国際運動(IMADR)で専従職員やプロジェクトコーディネーター。その後特定の団体には所属せずNGOと政府の関係、レイシズム、植民地主義の問題にとりくむ。主な論文に「Condemning J. Mark Ramseyer’s Paper “On the Invention of Identity Politics: The Buraku Outcastes in Japan”」(共著、The Asia-Pacific Journal Japan Focus, Volume 19, Issue 9, Number 8, 2021)。共著書に『終わりなき戦争に抗う』(新評論)など。植民地主義にもレイシズムにも正面から向き合って来なかった日本社会で〈反‐反差別〉が勢いを増す中、日本のレイシズムを解明する作業に微力ながら加わりたいと考えている。織物、刺繡が大好きな「布フェチ」。 宮前千雅子 (ミヤマエ チカコ) (著) 大学の非正規研究員と非常勤講師をしています。被差別部落に暮らしたことのない部落出身者。部落の外に、部落問題を含めた人権課題を語りあえるネットワークづくりをしたいと思い、活動してきました。ハンセン病問題やジェンダーの課題、性被害をなくすことにもかかわっています。興味があるのは、マイノリティの近代史。これまで歴史のなかに埋もれ、注目されてこなかったものをあきらかにしたい、そして差別を生み出し再生産する社会のしくみをあぶり出したいと思います。とりわけ最近は、部落女性の歴史をまとめるため奮闘中。100年前の女性たちと対話する日々です。中学生のときから阪神タイガースの大ファン。 福岡ともみ (フクオカ トモミ) (著) 1956年生まれ。人は人をなぜ差別するのだろうかという疑問を持ち生きてきた。1995年、沖縄少女レイプ事件に衝撃をうけ、親友と性暴力被害者やDV被害者のサポートを始める。1999年、DV被害者が加害者となった裁判に関わり、支援とは何かを考える原点となる。2013年、性暴力被害者支援センター・神戸の設立に参画。現NPO法人性暴力被害者支援センター・ひょうご理事、ウィメンズカウンセリング京都スタッフ/認定フェミニストカウンセリング・アドヴォケイター。共著『笑顔を取り戻した女たち マイノリティー女性たちのDV被害――在日外国人・部落・障害』(パド・ウィメンズ・オフィス、2007年)、『フェミニストカウンセリングの実践』(世界思想社、2010年)など。趣味は、いつのまにかインドア派。自他ともに認めるテレビっ子。 石地かおる (イシジ カオル) (著) 自立生活センターリングリング障害者スタッフ。24時間介助で地域での自立生活を実践中(私の介助者になりませんか?)。全国自立生活センター協議会ピア・カウンセリング委員会副委員長時代に全国の障害者にエンパワメントを伝える。40代半ばで女性であること、被差別部落にルーツがあることを自覚し、さらなるエンパワメントにチャレンジしている。 【大事に思っていること】優生思想撤廃、人権、差別をなくす取り組み、人とのつながり。 【好きなこと】食べること、料理、スーパー巡り、音楽、推し活、旅、パズルゲーム。 のぴこ (ノピコ) (著) 1983年生まれ。会社員、非婚出産、フェミ登山部。大阪市内の部落で、同和保育、解放子ども会に通い、小学生までを過ごす。制度から周縁化されたこと(すなわち“一般並み”から外れたこと)へ関心を向けてきた最近は、ジェントリフィケーションが進む釜ヶ崎の近くで小さなコミュニティスペースを友人たちと運営している。いつも心に反戦・反天皇制・反家父長制。自律・相互扶助・フェアネスが可能なあり方を模索中。 【好きな場所】本屋、飛行機、クロスバイク、おいしいコーヒーがあるところ、日常の営みが綴られたインターネット、フェミニストと登る山、Three chords and the truthを聞くことが出来るライブ。 瀬戸徐映里奈 (セト ソ エリナ) (著) 1986年関西生まれ。近畿大学人権問題研究所教員。父母の姓を並べて、名乗り始めて16年。名前は、朝鮮読みして「よんりな」と呼ばれることも。研究テーマは、いきものがたべものになり、胃袋に入るまでに生まれる様々な関係をマイノリティの食卓から考えること。特に在日ベトナム人にとっての食と農に注目し、そこから浮かぶ葛藤やつながりの創出、立場による権利の差を考察してきました。自分も耕す土を確保し、種を蒔き、食材を育てたい!と思い、近所によい耕作地を探し中(といいながら、数年経過)。移民・難民問題、在日朝鮮人運動と部落解放運動に関わりつつ、試行錯誤の毎日。 坂東希 (バンドウ ノゾミ) (著) 大阪公立大学教員。関心は、非行・犯罪臨床、トラウマからの回復、修復的司法、コミュニティづくりなど。非行や犯罪行動を有する少年・成人を対象とした教育プログラムの実践と研究に携わる。共著に『アディクションと加害者臨床』、『治療共同体実践ガイド』(いずれも金剛出版)など。和歌山市内の部落に生まれ、高校卒業までを過ごす。反差別国際運動(IMADR)で勤務した後、大阪大学大学院で非行・犯罪領域の心理臨床を学ぶ。同時期に出会った大阪府箕面市の北芝(本文参照)で胃袋をつかまれ、2011年からNPO法人暮らしづくりネットワーク北芝で6年ほど働く。瓶ビール、錆びた鉄、古い木箱、破れやほつれ、穴の空いた布に引き寄せられます。 川﨑那恵 (カワサキ トモエ) (著) 1983年大阪生まれ、京都で娘と2人暮らし。大学の事務職員。シェアキッチン&スペース「スウィングキッチンYour」運営メンバー。部落出身の両親のもとに生まれ、幼い頃父の故郷の部落で暮らす。大阪市立大学入学後、部落問題を学び始める。各地の部落やその他の社会問題(新潟水俣病など)の現場を訪問し、人と出会い腹を割って語り合う飲み会を重ね、標語「寝た子を起こして、仲良くごはん」を思いつく。2024年、同標語を題名にしたエッセイの連載を雑誌『エトセトラ』で開始。これから探究したいテーマは近代日本における部落差別と優生思想、家父長制イデオロギーの形成過程と関連性。暇を見つけては映画館での映画鑑賞・好きなミュージシャンのライブ鑑賞・友人たちとごはん会。
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男と女とチェーンソー 現代ホラー映画におけるジェンダー|キャロル・J・クローヴァー(著), 小島朋美(訳)
¥3,300
晶文社 2026年 ソフトカバー 496ページ 四六判 - 内容紹介 - なぜ女は逃げ、叫び、そして生き残るのか? なぜ男は女を追い、殺し、そして見つめるのか? 『悪魔のいけにえ』『ハロウィン』『13日の金曜日』など、ホラー映画史を代表する作品群を通して、現代社会における性と権力の神話と構造を照らし出す。ホラー研究、フェミニズム批評、さらにはファン文化にも大きな影響を与えた記念碑的著作。 「本書の目的は、ホラー映画の観客そのものについての研究ではないし、ホラー映画というジャンルそのものについての考察でもない。本書が探求するのは、「観客の多数派」(若い男性)と、特定のホラー映画において際立つ女性のヴィクティム゠ヒーローとの関係である。この組み合わせは、映画観賞という行為そのものについて、そして表象のポリティクス、転移のポリティクス、さらには批評と理論のポリティクスに関しても、多くの示唆を与えてくれるものだと私は考えている」(本書より) カバー・本文イラスト:學 ブックデザイン:小川純(オガワデザイン) - 目次 - プリンストン・クラシックス版への序文 謝辞 序論──キャリーと男の子たち 第一章──彼女の身体、彼自身 第二章──開く 第三章──仕返し 第四章──ホラーの目 原著あとがき 訳者あとがき 付録 ホラー映画年輪型図解 作品一覧 参考文献 索引 - 著者プロフィール - キャロル・J・クローヴァー (キャロルジェイクローバー) (著) カリフォルニア大学バークレー校名誉教授。中世北欧文学と映画史・映画理論を専門とし、とりわけホラー映画におけるジェンダー表象の研究で知られる。本書で提起された〈ファイナル・ガール〉概念は、ホラー研究/フェミニズム批評のみならずファン文化にも大きな影響を与えた。2018年には初期アイスランド文化研究への貢献によりアイスランド共和国からファルコン勲章ナイト十字章を、2020年にはホラー研究への長年の貢献に対してブラム・ストーカー賞生涯功労賞を授与されている。 小島朋美 (コジマトモミ) (訳) 翻訳者、編集者。早稲田大学法学部卒。映画パンフレット文化の紹介と保存を目的とした自主団体「映画パンフは宇宙だ!」でZINE制作や企画を手がけるかたわら、海外ホラー映画の宣伝やインタビュー翻訳、パンフレット編集などにも携わる。本書の翻訳には、ホラー映画に人生を救われてきた者としての敬意と偏愛を込めて取り組んだ。
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中世モンスターのはなし 装飾写本でたどる|ダミアン・ケンプ (著), マリア・L.ギルバート (著), 堀口容子 (翻訳)
¥2,640
美術出版社 2026年 ハードカバー 100ページ 19.7 x 15.8 x 1.4 cm - 内容紹介 - 中世に制作された装飾写本の挿絵やページの片隅には、たくさんの奇妙なモンスターたちが描かれました。時祷書や旅行記、騎士物語に生き生きとした姿で登場する彼らは、現代の私たちが見ても新鮮な驚きに満ちています。本書は、中世ヨーロッパの装飾写本に描かれた、個性的なモンスターたちの絵とともに、中世に信じられていた想像上のいきものや、聖書や英雄伝説で語られるモンスターの逸話をまとめたものです。 大英図書館(ロンドン)、J・ポール・ゲティ美術館(ロサンゼルス)、ボドリアン図書館(オックスフォード)、アミアン市立図書館から至宝が集結。細やかな挿絵から欄外装飾に隠れていた不思議なモンスターまで、およそ100点を収録。セイレーンやユニコーン、狼人間などファンタジーでもお馴染みのモンスターはもちろん、パノティイ、ブレムミュアエ、シノセファリのような異郷にすむとされていたモンスター、英雄の竜退治伝説、聖人を誘惑する悪魔、恐ろしい地獄の描写まで……写本に描かれたユーモラスな姿とともに、それぞれの特徴やエピソードを紹介します。中世の人々の豊かな想像力が生み出した、ちょっぴり怖くて不思議な世界をお楽しみください。 ダミアン・ケンプ&マリア・L.ギルバートによる『Medieval Monsters』(The British Library)の日本語翻訳版。『中世ネコのくらし』『中世イヌのくらし』に続く、装飾写本シリーズ第3弾の登場です。
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中世ネコのくらし 装飾写本でたどる|キャスリーン・ウォーカー゠ミークル (著), 堀口容子 (著)
¥2,640
美術出版社 2024年 ハードカバー 96ページ 19.7 x 15.8 x 1.4 cm - 内容紹介 - ネコは中世を通じて写本にしばしば描かれました。ネズミと共に大切なペットとして、時には寓話の賢いキャラクターや、悪魔の化身として…様々な姿で表現されてきました。 本書は中世ヨーロッパの装飾写本のなかから、ネコが描かれた美しいページとともに、中世のネコの生活の様子や物語のネコが登場する逸話をご紹介します。中世におけるネコのくらしや人間との関係性を魅力的に描き出した1冊です。 The British Libraryから刊行した、キャスリーン・ウォーカー=ミークル著『CATS in Medieval Manuscripts(中世装飾写本のネコたち)』の日本語翻訳版です。
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中世イヌのくらし 装飾写本でたどる|キャスリーン・ウォーカー゠ミークル (著), 堀口容子 (著)
¥2,640
美術出版社 2025年 ハードカバー 96ページ 19.7 x 15.8 x 1.4 cm - 内容紹介 - 愛すべき友であり、忠実な仲間、イヌ。その昔から人と共にくらし、友として、仕事のパートナーとして、現在に至るまで親密な関係を築いてきました。 そんなイヌたちは、美しい中世の装飾写本にも様々な姿で登場します。本書は大英図書館の装飾写本コレクションから、装飾写本に描かれた個性的なイヌの絵を集めました。拡大図を多く掲載し、ページの余白に小さく描かれたイヌであっても、じっくり眺めるとその表情の豊かさに驚かされます。 さらに中世の文献を紐解き、中世のイヌにまつわる逸話をご紹介します。飼い主を守り戦う勇敢な忠犬、貴族にかわいがられ贅沢にくらす愛玩犬、イヌに関する不思議な迷信など……中世の人々な豊かな文化と、イヌのくらしぶりに触れてみませんか? The British Libraryから刊行した、キャスリーン・ウォーカー=ミークル著『DOGS in Medieval Manuscripts』の日本語翻訳版。
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「できなさ」からはじまる倫理学|野崎 泰伸
¥2,200
大月書店 2026年 ソフトカバー 216ページ 四六判 縦190mm 横135mm 厚さ15mm - 内容紹介 - 能力や生産性が高いという尺度を捨てて、「できなさ」から社会を見てみると…。生きづらさを生み出す分断の時代だからこそ、「生の無条件の肯定」を掲げ、「共に生きる」社会と人の関係を考える。 目次 序章 わたしの身体、わたしの倫理─当事者として考える出発点 第1章 「他者」とは誰か──「支える/支えられる」を超えて コラム1 「命を選ぶ」とは、どういうことだろう? 第2章 「共に」とはどういう状態か?──分断社会における共生のリアリティ コラム2 「もっと努力しろ」って、誰のため? 第3章 「豊かに」とは何か?――障害の経験が開く価値の地図 コラム3 「できない」を分かち合う社会へ 第4章 「生きる」とはどんなことか?――困難のなかにある倫理的主体 コラム4 障害者は生まれないほうがよかったのか? 第5章 「掟」はどこから来るのか? コラム5 「掟」について考える――地動説の誕生について 6章 判断するということ――生の肯定と応答の倫理 コラム6 「トロッコ問題」から「ふだんの倫理」へ――すべての命を大切にするという考え方 終章 倫理とは、未来に向けた対話である――「問いつづけること」の重要性 - 著者プロフィール - 野崎 泰伸 (ノザキ ヤスノブ) (著) 立命館大学非常勤講師。哲学・倫理学を専門とする研究者であると同時に、先天的な脳性マヒを抱え、二次障害により車イスを使用しながら生活する「当事者」。
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目の見えない人が見ている世界|アンドリュー・リーランド(著), 濱浦奈緒子(訳)
¥2,970
朝日新聞出版 2026年 ソフトカバー 408ページ 四六判 - 内容紹介 - 「もやもやだらけの社会と自分。でも人生は変化する答えを追いかける旅のようなものなのだ」――伊藤亜紗氏(東京科学大学未来社会創成研究員/リベラルアーツ研究教育院教授) NYタイムズ、Amazonほか数々のメディアなどでベストブックに選出、ピューリツァー賞メモワール部門最終候補作。40代の著者は小学生で網膜色素変性症を発症、時間をかけて視力を失っていく。周囲との関係性の変化、見えない世界の感覚などを積極的に取材・体験し記録する。アイデンティティの葛藤と好奇心に満ちた挑戦の物語であり魅力的な紀行文。【目次】■はじめに 終わりのはじまり不安定なふたつの楕円とフライドポテト/”広大な世界”を旅する/視野を失うさなかゆえの恐怖/幼い息子のみずみずしい問い<第1部 見せかけの不自由歩行>■第1章 星を見る視覚上jの耳鳴り/星が見えなくなった/歴史のなかの”目の見えない人”/婚約の日の冗談/パパにはわるいおめめがついている/杖にまつわる恥ずかしさ■第2章 目が見えない人の全国組織目の見えない3000人が集う/1パーセントの特権階級/目の見えない人が”見つめる”顔/フルタイムのプロの物乞い/クスリをやっていると間違えられて/UCバークレー初の目の見えない卒業生/音響式信号機は「無力」の象徴になる?/男の子とトマトがくれた希望■第3章 定義によって見えなくなる視力検査の歴史/恐ろしい検査のフルコース/やっと「法的盲」になれる!/「視力があることを神に感謝しなさい」だと!?/憎たらしい包丁のかくれんぼ/ユダヤ人としてのアイデンティティ/目の見えないユダヤ人にナチスがしたこと/目で見た美しさは、もう、楽しまないことにした<第2部 失われた世界>■第4章 男性のまなざし「目が見えなくなる夫を持つのは大変でしょう」/か弱いと思われたくない/妻のいらだち/もし『ウォーキング・デッド』なら/視覚とセックスの関係/スティービー・ワンダーは見ていた/目の見えない男の「いやらしい目つき」/眼球を取ることは懲罰目的の去勢だ■第5章 カメラ・オブスクラモネもセザンヌも目が悪かった/オリエンテーションとモビリティ/アートを視覚以外で見る/伴走者のナレーション/音声解説の萌芽/どんな解説が好きか、でわかること/カメラのPR動画に解説が必要な理由■第6章 バベルの図書館ジェイムズ・ジョイスの小説/爆発して水浸しになた4キロの呪いの本/ヘレン・ケラーの生きた時代/聴覚で作成した論文はダメなのか/指は3本ずつ使え!/擦り切れた指先から伝わる感覚/1年生のような朗読者/まるでテニスの試合観戦のように/自分の手で書けなくなる不安■第7章 作り手たち「見えない人のために」から生まれた数々の発明/LPはオーディオブックの副産物だった/アップル社をたどると……/熟練のトラブルシューターたちに会いに行く/まなざしをオフできる場所/アマゾン社の天才研究員/アシスティブ・テクノロジーの進化/障害が気づかれなくなる未来<第3部 体系的な知の習得>■第8章 見えないことに抗うゆっくりで、とらえにくく、存在している/85万ドル
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インターセクショナリティ 現代世界を織りなす力学|土屋 和代(編), 井坂 理穂(編)
¥2,860
東京大学出版会 2024年 ソフトカバー 192ページ A5判 - 内容紹介 - 多様性に満ちた現代社会を理解するうえでいま最も重要概念のひとつと呼ばれる「インターセクショナリティ(交差性)」。この分析概念を用いて、様々な地域の歴史、社会、文化のいかなる諸相が浮き彫りになるのかを、様々な角度からアプローチし、新しい世界への認識を導き出す。 - 目次 - 序 「インターセクショナリティ」に何ができるのか(土屋和代) Ⅰ インターセクショナリティをめぐる「過去」と「現在」 1.権力性の交差の場としての物語(速水淑子) 2.二〇〇年前の「交差点」と「地下室」(アルヴィ宮本なほ子) 3.リプロダクティヴ・ジャスティスとインターセクショナリティ(土屋和代) 4.社会運動、司法言説、歴史叙述(岡田泰平) 5.現代インドから「インターセクショナリティ」を考える(井坂理穂) Ⅱ インターセクショナリティから読み解く現代世界 6.インターセクショナリティ(交差性)に関する四つの疑問(和田毅) 7.イスラエルにおける性的少数者/動物の権利運動とパレスチナ問題(保井啓志) 8.エイズから新型コロナ、白紙運動からフェミニズム運動へ(阿古智子) 9.インターセクショナリティに抗するフランス?(伊達聖伸) 10.安心をもたらさないインターセクショナリティへ(清水晶子) - 著者プロフィール - 土屋 和代 (ツチヤ カズヨ) (編) 東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻教授。 カリフォルニア大学サンディエゴ校大学院博士課程修了。博士(歴史学)。専門はアメリカ現代史、人種・エスニシティ研究、ジェンダー研究。 著書に Reinventing Citizenship: Black Los Angeles, Korean Kawasaki, and Community Participation (Univ. of Minnesota Press, 2014)、共著に『私たちが声を上げるとき―アメリカを変えた10の問い』(集英社新書、2022年)など、共訳書に『アメリカ黒人女性史―再解釈のアメリカ史・一』(勁草書房、2022年)など。 井坂 理穂 (イサカ リホ) (編) 東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻教授。 ケンブリッジ大学大学院博士課程修了。博士(歴史学)。専門は南アジア近代史。 著書にLanguage, Identity, and Power in Modern India: Gujarat, c. 1850-1960 (Routledge, 2022)、共編著に『食から描くインド――近現代の社会変容とアイデンティティ』(春風社、2019年)、訳書にアミタヴ・ゴーシュ『シャドウ・ラインズ――語られなかったインド』(而立書房、2004年)など。
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ジェンダー・クィア 私として生きてきた日々|ア・コベイブ(著), 小林美香(訳)
¥3,520
サウザンブックス社 2024年 ソフトカバー 256ページ A5変形判 縦210mm 横150mm 厚さ20mm - 内容紹介 - 女の子にもなりたくないし、男の子にもなりたくない。 私はただ、自分自身でいたい。 クィア、ノンバイナリーのコミック作家マイア・コベイブの自叙伝。 自身の生い立ち。幼少期から思春期で過ごした環境、そして、青年期にかけてクィアをテーマにした音楽や漫画、ファンタジー作品と出会い、自身の性のあり方に向き合い出すことで、生まれた、気づき、葛藤、戸惑いを丁寧に描く。 ひとりの人間の、ありのままの記録。 2020年 アメリカ図書館協会 アレックス賞受賞 2020年 ストーンウォール図書賞名誉賞(ノンフィクション部門)受賞 - 前書きなど - 高校に入ると、自分は 女性と男性の魂を 半分ずつ持って持って生まれてきたと 思うようになった。(本文より) 版元から一言 世界10カ国以上で翻訳された本書、ついに日本版が完成! コミック作家のマイアにとって初の長編作品となる本作は、ノンバイナリー ・ジェンダーとして生きる人の等身大の姿と経験を映し出しており、性別二元論の枠組みを窮屈に感じる人、社会の中で強制されるジェンダー規範に対して違和感を抱く人、自分自身のあり方を偽らずに生きたいと願う人の心に共鳴する要素に充ちている。 成長の過程で経験する身体の変化や、家族や身近な人たちとの関わり合いや、多様なジェンダーのあり方の実践する人たちとの対話を重ねていく中で、自らのジェンダーやセクシュアリティのあり方をどのように表現したら良いのかを模索し、「彼」および「彼女」の二元論に巻き込まれてしまう人称代名詞に対して違和感を抱き、「ノンバイナリー ・ジェンダー」というジェンダー自認を持つに至るまでの丁寧な記録。 - 著者プロフィール - マイア・コベイブ (マイア コベイブ) (著) アメリカのコミック作家。クィア、ノンバイナリー・ジェンダー、そして無性愛者。カリフォルニア美術大学のコミック専攻で修士号を取得。アイデンティティ、セクシュアリティ、反ファシズム、お伽話、ホームシックをテーマとした作品を手がける。『Gender Queer: A Memoir(ジェンダー・クィア 私として生きてきた日々)』はコベイブ初の長編作品で、2020年にアメリカ図書館協会の一部門であるヤングアダルト図書館サービス協会アレックス賞(12歳から18歳のヤングアダルトにとりわけ好まれる成人向け書籍10冊に贈られる賞)、ストーンウォール賞(LGBTQに関する優れた英語圏の作品対象)イスラエル・フィッシュマン・ノンフィクション部門名誉賞を受賞。 https://redgoldsparkspress.com Instagram:@redgoldsparks 小林美香 (コバヤシ ミカ) (訳) 発起人・翻訳:小林美香(こばやし・みか) 写真・ジェンダー表象研究。大学や各種学校で教鞭をとるほかに、国内外の雑誌などへの寄稿や編集、翻訳などを手がける。展覧会、ワークショップの企画や、写真で制作活動を行う人を対象としてコンサルティングを手がけている。著書に『ジェンダー目線の広告観察』(現代書館、2023年)など。 Twitter:@marebitoedition Instagram:@mika__kobayashi
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政治的に無価値なキミたちへ|大田 比路
¥1,650
イースト・プレス 2023年 ソフトカバー 320ページ 四六判 縦188mm 横128mm 厚さ19mm - 内容紹介 - キミを「政治的存在」にするために、この本は生まれた。 早稲田大学の政治入門講義を書籍化。 イデオロギーと聞くと、なんか嫌悪感が湧いてくる――? 「1票」なんて、無意味だ、ただのゴミ――。世界最高レベルの授業料で大卒資格を買い、労働という苦痛に「やりがい」という神秘的感覚を見出し生きる、キミたちへ。佐久間裕美子氏、竹田ダニエル氏、推薦! - 目次 - はじめに 1、価値 2、人権 3、教育 4、労働 5、階級 6、結婚 7、生命 8、秩序 9、刑罰 10、象徴 11、政府 12、国民 13、恐怖 おわりに - 著者プロフィール - 大田比路 (オオタヒロ) (編) 早大法,早大院(修士),早大政経助手を経て,現在は個人投資家。新宿在住。早大講師(社会科学領域、非常勤)を兼任。https://twitter.com/xlix
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体の居場所をつくる|伊藤 亜紗
¥2,090
朝日出版社 2026年 ソフトカバー 312ページ 四六判 - 内容紹介 - 居場所は、私たちがどのように生きたいか、その価値基準そのものです。 濱口竜介さん(映画監督)絶賛! 「11人の永い回復。それぞれが生きづらいはずなのに、奇妙な快活さと楽天性が本書を貫いている。一人ひとりの「工夫」、それに対する著者の「リスペクト」が織り合わされ、私たちは生を見つめ直す視点をもらう。あえて言いたい、何と面白いのか!」 摂食障害、ナルコレプシー、ALSなどの障害や病気の当事者。診断がつかない人、治療の道がない人、人種的マイノリティ―― 本書に登場する11名は、体に「問題」を抱えながら、日々の工夫の積み重ねで、どのように「体の居場所」をつくってきたのか。 一人ひとりから出てくる言葉は、ときに文学のようにファンタジックで、そこには、その人の何十年分かの人生が結晶のように凝縮されています。それに耳をかたむけ、ともに悩み、混沌とした状況を進む手すりとなるような言葉を探すために伴走する――そうして綴られた、生きるための究極の工夫とは? --------------------------------------------------------- 本書に収められた十一の章は、居場所をつくり、整え、試すその繊細な営みをつづったものです。 願わくば、本書が、どんなシビアな意思決定の場面でも、世間のプレッシャーにさらされて硬くならず、のびのびと自分の心地よさに問いかけることができるようになるための、余白をつくる手がかりになるとよいなと思っています。(エピローグより) - 目次 - プロローグ 第一章 体とまた出会いたい 第二章 脂は敵だから好き 第三章 日常にひそむスイッチ 第四章 帝国主義者のまなざし 第五章 電車の中のチマチョゴリ 第六章 希望と分断のお薬 第七章 グニャグニャでいてやろう 第八章 因果関係の外で 第九章 グレーの中で生きる 第十章 ベールの向こうに 第十一章 自分が花みたい エピローグ - 著者プロフィール - 伊藤亜紗 (イトウアサ) (著) 1979年生まれ。美学者。東京科学大学未来社会創成研究院DLab+ディレクター、リベラルアーツ研究教育院教授。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程単位取得退学(文学博士)。 主な著書に『目の見えない人は世界をどう見ているのか』(光文社)、『どもる体』(医学書院)、『記憶する体』(春秋社)、『手の倫理』(講談社選書メチエ)、『ヴァレリー 芸術と身体の哲学』(講談社学術文庫)、『体はゆく できるを科学する〈テクノロジー×身体〉』(文藝春秋)など多数。 第13回(池田晶子記念)わたくし、つまりNobody賞、第42回サントリー学芸賞、第19回日本学術振興会賞、第19回日本学士院学術奨励賞受賞。
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宮本常一 民俗学を超えて|木村 哲也
¥1,056
岩波書店 2026年 岩波新書 ソフトカバー 248ページ 新書判 縦188mm 横129mm 厚さ23mm - 内容紹介 - 生涯をかけて各地を旅し、人々の声に耳を傾けつづけた宮本常一。『忘れられた日本人』をはじめとする仕事は、従来の日本像を見直す民俗学の成果であるとともに、民俗学を超えて、多大な影響を与えてきた。網野善彦、司馬遼?太郎ら、宮本の言葉と行動を受けとめ独創的な仕事を成した人々を通して、今に生きる宮本民俗学を考える。 【目次】 プロローグ 故郷・周防大島から 旅の原風景 対照的な二人の祖父 出稼ぎと移民の島 女の世間 民俗学への道 仕事と評価 宮本常一を受け継ぐ人びと 第一章 明治維新を聞き書きする――鶴見俊輔と『日本の百年』 庶民から見た明治維新 干支でひとまわり六〇年という時間感覚 明治百年記念の国家事業に対抗 『日本の百年』の方法 鶴見俊輔にとっての聞き書き 宮本常一と思想の科学研究会 近くて遠い過去 第二章 世間師の発見――安丸良夫と民衆思想史 ある世間師との出会い 宮本常一の大阪時代 『旧事談』の新規性 安丸良夫の民衆思想史への影響 民衆史研究者との距離 農村出身者としての感覚 第三章 非農業民への視座――網野善彦による歴史の読み直し 非農業民への着目 網野善彦と日本常民文化研究所月島分室 「百姓」とは何か 東日本と西日本 海民の世界 宮本常一再評価に先鞭 宮﨑駿アニメへの示唆 第四章 離島から日本を見る――谷川雁のコミューン構想と島尾敏雄の「ヤポネシア」論 離島振興という問題 島の文化 谷川雁とトカラ列島臥蛇島 現代のコミューンを幻視する リアリズムとロマンティシズム 島尾敏雄の「ヤポネシア」論 「ヤポネシア」論の広がり 宮本常一の南島論 第五章 「土佐源氏」をめぐって――石牟礼道子と詩的インスピレーション 「土佐源氏」誕生 『忘れられた日本人』という書名 石牟礼道子の「土佐源氏」評 『遠野物語』の受容 「餓鬼阿弥蘇生譚」としての「土佐源氏」 第六章 「される側」からのルポルタージュ――本多勝一の方法 森崎和江の宮本常一批判 調査地被害 「される側」からの衝撃 庄屋の台所の五〇個のハンコ アイヌ文化を記録・保存する 第七章 人の移動と文化の伝播――司馬遼太郎と『街道をゆく』 土佐で稼いだ長州大工 司馬遼?太郎との面会 傍流から歴史を見る 『街道をゆく』における宮本常一への言及 エピローグ 「日本」をめぐって――鶴見良行のアジア学 海から見た日本 個別性と普遍性 小川徹太郎による批判 鶴見良行のアジア学 既存の「日本」像への挑戦 主要参考文献 図版出典一覧 あとがき
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呪文の言語学 ルーマニアの魔女に耳をすませて|角 悠介
¥2,640
作品社 2025年 ソフトカバー 256ページ 四六判 - 内容紹介 - ★作品社公式noteで「まえがき」公開中→「呪文の言語学 試し読み」で検索! 呪文もことばである。 ルーマニアには古い魔女文化がいまも残っているとされている――。東欧在住20年の言語学者が、魔女大国とも呼ばれるこの地の民間伝承や実体験をひもとき、“呪文の正体”に迫る。不思議でちょっと怖い呪文の世界をめぐる、まったく新しい言語学エッセイ。 ◎附:「言語学者から魔女へのインタビュー」 ◎カヴァー写真:スクリプカリウ落合安奈 * 〈ちちんぷいぷい〉、〈アブラカダブラ〉、〈ビビディ・バビディ・ブー〉……この世はさまざまな「呪文」で溢れている。(…)幼いころの私たちにとって身近なものであった呪文だけれども、そもそもあれは何だろうか。単なる語の羅列に過ぎないのだろうか。(…)本書では、(…)言語学者が「呪文という聖域」に片足を突っ込んで、先人たちの研究を足掛かりにさらに深いアプローチを試みる。――本書より * 【目次】 まえがき 1 魔女 2 魔術 3 呪文 言語学者から魔女へのインタビュー 山田エリーザ あとがき 注/参考文献/図版出典 - 著者プロフィール - 角 悠介 (スミ ユウスケ) (著) (すみ・ゆうすけ) 1983年東京生まれ。言語学博士。ルーマニア国立バベシュ・ボヨイ大学日本文化センター所長。神戸市外国語大学客員研究員。ルーマニア文化学院ルーマニア語講師。アテネ・フランセ講師(ラテン語)。東京外国語大学オープンアカデミー講師(ルーマニア語、ロマ語)。北マケドニア国立聖キリル・メトディウス大学講師(ロマニ語)。国際ロマ連盟(IRU)日本代表、言語文化専門員。日本エスペラント協会、NPO法人「地球ことば村・世界言語博物館」、日本ロマンス語学会会員。紘武館道場(東京都板橋区)門人・杖道六段。 ルーマニアのバベシュ・ボヨイ大学にて西洋古典学(ラテン語・古典ギリシア語)学士号、ハンガリーのブダペスト大学(ELTE)にて西洋古典学修士号、ルーマニアのコンスタンツァ・オヴィディウス大学にて言語学博士号を取得。ベラルーシ共和国ミンスク国立言語大学にも短期留学。日本とルーマニアの在外公館と連携し、言語・文化交流を主軸とした両国の友好関係の促進を目指して活動する一方、東欧を中心にロマ民族(=ジプシー)の言語ロマニ語のフィールドワーク研究を行う。言語を通じたロマ民族への貢献により、欧州議会、国際ロマ連盟、ロマ文化団体から表彰・感謝状を受ける。 著書に『ロマニ・コード――謎の民族「ロマ」をめぐる冒険』(夜間飛行、2022年)、『ニューエクスプレスプラス ロマ(ジプシー)語』(白水社、2021年)など。 X:@ivsvce
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犀の教室 批判的日常美学について 来たるべき「ふつうの暮らし」を求めて | 難波 優輝
¥1,980
晶文社 2026年 犀の教室 ソフトカバー 256ページ 四六判 - 内容紹介 - 強烈にシニカルな議論の中から、迷える人たちへのまっすぐな応援歌が立ち上がってくる。──帯文・鷲田清一 現代は「ちゃんとする時代」。「ちゃんと働く」「ちゃんとした格好をする」……私たちはいつのまにか、ちゃんとすることを当然視し、それができない自分を責めながら生きている。だが、本当にちゃんとしなければならないのだろうか。 社会が要請する「ちゃんとしなければならない」に対して、自分の理由で反抗し、受け流し、交渉するための「道具」を追求すること。それが「批判的日常美学」の試み。 生活にまつわる様々なアイテム──料理、労働、ファッション、清潔感、コミュニケーション、性愛──などを題材に、「丁寧な暮らし」の呪縛から逃れ、いまだ到来しない「ふつうの暮らし」を模索する哲学的考察。他人と世界と自分をより自由に愛せるようになるためのメソッド。 "この本では、「ちゃんとする」という言葉に代表されるような、倫理的なものと美的なものの癒着を見つけ出し、それを断ち切っていく。(…)日常にある美的とされているものに実は倫理的なものが潜んでいることを暴き出す。そして、倫理と美のつながりを健全なしかたで再構成する。この手法を「批判的日常美学」と私は呼ぶ。(…)社会が要請する「ちゃんとしなければならない」に対して、あなたがあなたの理由で反抗し、受け流し、交渉するための「道具」を追求する試み。それが本書で私がやりたいことだ。"(「はじめに」より) 【目次】 はじめに 序章 来たるべき「ふつうの暮らし」を求めて 第1章 自炊と恥──料理道徳から距離をとる 第2章 労働廃絶宣言──労働を解体するための感性論 第3章 反ファッション論──みせかけ美徳消費の悪徳 第4章 「性格が悪い人」を差別してもいいのか──「清潔感」からはじめる性格差別の哲学 第5章 分かり合わないことの美学──不同意コミュニケーション論 第6章 愛し方のあいいれなさ──手元規範と共同規範づくり 第7章 被害者サディズムの吹き荒れる時代に、スピリチュアリティにできること? 第8章 新しい快楽主義者たち──猫と廃墟とアナキズム 第9章 陰部の日常──マスターベーションとセックスの美と倫理について 第10章 抑圧に感謝する──奴隷根性と弱さの美学 第11章 夕焼けと電流──生誕した私たちの美的義務について あとがき - 著者プロフィール - 難波優輝 (ナンバユウキ) (著) 1994年生まれ。美学者、会社員。神戸大学大学院人文学研究科博士前期課程修了。専門は分析美学とポピュラーカルチャーの哲学。著書に『物語化批判の哲学──〈わたしの人生〉を遊びなおすために』(講談社現代新書、2025年)、『なぜ人は締め切りを守れないのか』(堀之内出版、2025年)、『性的であるとはどのようなことか』(光文社新書、2025年)、『SFプロトタイピング』(共編著、早川書房、2021年)がある。
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本質観取の教科書 みんなの納得を生み出す対話 | 苫野 一徳, 岩内 章太郎, 稲垣 みどり
¥1,056
集英社 2025年 集英社新書 ソフトカバー 256ページ 新書判 - 内容紹介 - 自分とは異なる立場や考えの人と、いかに対話し、合意形成していけばよいのか分からない。 それどころか、深刻な信念対立を目の当たりにし、対話への希望を失ってしまう。そんな人は多いのではないだろうか。 本書は、「本質観取」と呼ばれる哲学の思考法・対話法を、誰もが実践できるようになるための入門書である。 分断をのりこえ、民主主義を成熟させるための対話の極意とは? 実践で活用できるワークシートや、ファシリテーションのコツなども収録。 社会学者 橋爪大三郎氏 とにかくわかりやすくて面白い。実例が豊富なので、 本質観取の哲学対話が、これで誰でもすぐできる。 独立研究者・著作家 山口周氏 対話を通じて、多様な他者と相互承認・共通了解へと至る「本質観取」の方法は、 多数の関係者を束ねるビジネスリーダーにこそ求められます。 苫野一徳 (とまの いっとく) 熊本大学大学院教育学研究科准教授。 著書に『「自由」はいかに可能か』『はじめての哲学的思考』『愛』など多数。 岩内章太郎 (いわうち しょうたろう) 豊橋技術科学大学准教授。 著書に『新しい哲学の教科書 現代実在論入門』『〈私〉を取り戻す哲学』など。 稲垣みどり (いながき みどり) 順天堂大学国際教養学部准教授。 著書に『共生社会のためのことばの教育 自由・幸福・対話・市民性』など。
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寂しさへの処方箋 芸術は社会的孤立を救うか | 平田 オリザ
¥1,056
集英社 2026年 集英社新書 ソフトカバー 256ページ 新書判 - 内容紹介 - 今、日本は他国とは違う独特の「寂しさ」「いらつき」「不安」に覆われている。終わりの見えない不況、アジア唯一の先進国からの転落と国力の衰退、そして戦前と同じく、産業構造の変革にともなう「精神(マインド)の構造改革」に再び失敗していること…などがその背景にある。 著者は2001年刊行の『芸術立国論』で「日本再生のカギは芸術文化立国をめざすところにある!」と提案した。 本書はその試みを現代に合わせてさらに進化させ、モノが飽和しコトの消費が求められる時代に芸術と観光が果たせる役割、社会的孤立を救うための文化による社会包摂の動き、教育や地方が実現可能な少子化対策など、日本の衰退をくい止める新しい処方箋を再提案する。 平田 オリザ (ひらた おりざ) 1962年、東京都生まれ。劇作家・演出家。芸術文化観光専門職大学学長、青森県立美術館館長。 1995年『東京ノート』で第39回岸田國士戯曲賞受賞。著書に『名著入門 日本近代文学50選』『22世紀を見る君たちへ これからを生きるための「練習問題」』『但馬日記 演劇は町を変えたか』『下り坂をそろそろと下る』『対話のレッスン 日本人のためのコミュニケーション術』『新しい広場をつくる 市民芸術概論綱要』など多数。
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わたしの服はどこからきてどこへいくの? 服と人とのサステナブルな関係を考える | 鎌田安里紗, マルティンメンド有加
¥2,090
晶文社 2026年 ソフトカバー 252ページ 四六判 - 内容紹介 - ファッションとサステナビリティについてのモヤモヤ、まとめて掘り下げます! 素材についての知識から、愛着ある服を長く着るコツまで、 服と人との良い関係をめぐる7章の報告書。 服にもサステナビリティが大事なことはわかっているけれど、いざ自分の消費行動になるとそれから外れた選択をしてしまい、なんとなくモヤモヤしている……。そんなひとに向けて、服にまつわるさまざまな問題について考えてみました。 著者は「多様で、健康的なファッション産業をつくる」をミッションに、サステナブルファッションに関する教育やコンサルティングを行う一般社団法人の理事2人。 手放した服はどんな運命に? リサイクルされる割合はどのくらい? オーガニック素材はほんとうによいの? 服の値段はどのくらいだと妥当? サステナブルを企業は謳うけれどどこまで信用できる?……そんなあなたの疑問に答えます。ほんとうに心地よい服との付き合い方、いっしょに考えてみませんか? 【目次】 第1章 わたしが着ている服は「大丈夫」なの?──服にまつわるさまざまなモヤモヤ 第2章 わたしが手放した服はどうなるんだろう?──廃棄?リサイクル?それとも? 第3章 わたしは何を着ればいいんだろう?──素材と生産について考える 第4章 わたしは服にいくら払えばいいんだろう?──服の適正価格とは 第5章 わたしはどうすれば服を大切にし、心地よく服と付き合えるんだろう?──愛着のある服を飽きずに長く着るコツ 第6章 わたしは服を売る企業とどう関わっていけばいいんだろう?──グリーン・ウォッシュを見極める 第7章 最後に──わたしたちが描く、ファッションの未来 - 著者プロフィール - 鎌田安里紗 (カマダアリサ) (著) 2009年より、衣服の生産から廃棄の過程で、自然環境や社会への影響に目を向けることを促す企画を幅広く展開。2020年に一般社団法人unistepsを共同設立。企業・行政・デザイナー・生活者など、多様なステークホルダーと共にファッション産業におけるサステナビリティに関する取り組みを推進する。慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科後期博士課程修了。博士(政策・メディア)。 マルティンメンド有加 (マルティンメンドユカ) (著) 慶應義塾大学総合政策学部卒業後、会計事務所系コンサルティングファームにて企業買収時等のデューディリジェンスに従事。その後渡英、夜間学校で服作りを学びながらPeopleTree ロンドンオフィスのホールセールエグゼクティブ等を務め帰国、2011-19年サステナブルファッションブランドINHEELS代表。アーティストインレジデンスAlmost Perfectコファウンダー。2021年にunistepsに理事として参画。
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増補版 ガザとは何か | 岡 真理
¥1,100
大和書房 2026年 大和文庫 ソフトカバー 352ページ 文庫判 縦150mm 横105mm 厚さ18mm - 内容紹介 - 累計6.5万部突破!23年10月の攻撃直後に緊急出版された、パレスチナ問題を理解するための必読書に大幅増補の決定版 - 著者プロフィール - 岡 真理 (オカ マリ) (著) 1960年生まれ。早稲田大学文学学術院教授、京都大学名誉教授。専門は現代アラブ文学、パレスチナ問題。 東京外国語大学アラビア語科卒、同大学大学院修士課程修了。在学時代、パレスチナ人作家ガッサーン・カナファーニーの小説を通してパレスチナ問題、アラブ文学と出会う。エジプト・カイロ大学に留学、在モロッコ日本国大使館専門調査員、京都大学大学院人間・環境学研究科教授等を経て現職。 著書に『棗椰子の木陰で 第三世界フェミニズムと文学の力』(青土社)、『アラブ、祈りとしての文学』『ガザに地下鉄が走る日』(以上みすず書房)、『中学生から知りたいパレスチナのこと』(共著、ミシマ社)ほか。訳書に、ターハル・ベン=ジェッルーン『火によって』(以文社)、サラ・ロイ『なぜガザなのか』(青土社)、イザベラ・ハンマード『見知らぬ人を認識する』(みすず書房)ほか。
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移民・難民・アート 越境する想像力 | 川上 幸之助(編著) , 髙谷 幸(編著)
¥3,520
ヘウレーカ 2026年 ソフトカバー 372ページ 四六判 縦188mm 横128mm 厚さ25mm - 内容紹介 - 移民・難民をめぐる問題を、社会のあり方を問う根源的な問いと捉え、アートがそれにどう応答しうるかを多角的に探る論集。 第Ⅰ部「アートの実践と倫理」では、アートが世界に介入することの意味を問い、表現と倫理、実践と責任はいかに交差するのかを検討する。当事者との協働を通じて制度の外部に連帯を築き、不可視化された声を可視化してきた各地のコレクティブやプロジェクトの紹介、美術館という制度の暴力性への批判、移民に依存する社会構造の検証、政治的実践としての表現などの論考を通じ、アートは単なる鑑賞対象を超え、生や倫理に触れる営みとなることが明らかにされる。 第Ⅱ部「周縁からの美術史」は、移民や難民がいかに表象され、あるいは不可視化されてきたのかを、美術史の視点から問い直す。近年のトランスナショナルな視座やディアスポラ研究の潮流を踏まえつつ、19世紀フランスから現代日本までを射程に、帝国主義、亡命、周縁的実践などを扱う諸論考が、美術史の枠組みそのものの再検討を試みる。そこでは、「異質」が芸術実践にもたらす緊張と創造性、そして歴史から消去されてきた表象の力が再発見されていく。 第Ⅲ部「移民・難民をめぐる感性の政治」では、制度的なカテゴリーの手前、あるいはそこからこぼれ落ちる身体の記憶や感情、経験に焦点を当てる。映像や語り、哲学的思考、制度批判的美学、さらにはAIをめぐる実践までを視野に入れながら、移動の時代において、移民・難民の声なき声がいかに芸術を通じて立ち上がるのかを探究する。 - 目次 - なぜ移民・難民とアートなのか(川上幸之介) 移動する人々はいかに「国民」と区別され、制限を受けてきたか(髙谷 幸) 第Ⅰ部 アートの実践と倫理 01 文化を接木する――越境する個人とオルタナティブ・スペース(江上賢一郎) ▼インタビュー 印刻部 ▼インタビュー わくせいプロジェクト(阿部航太/児玉美香) ▼コラム 高齢化する移民女性の実践――カサカランの取り組みから(髙谷 幸/レニー・トレンティーノ) 02 移民・難民とミュージアム(小森真樹) ▼コラム 不可視の支柱――移民が築くマジョリティ社会の足元(川上幸之介) 03 いかにしてアートでものごとを行うか――タニア・ブルゲラによる移民・難民関連プロジェクト(菅原伸也) ▼インタビュー アルフレッド・ジャー 04 テレサ・マルゴレスと「カーラ」の生と死(藤本流位) ▼インタビュー 崔敬華 第II部 周縁からの美術史 05 あなたのマイノリティとしての経験――記録されなかった、ある在日朝鮮人美術家の話 (金 智英) ▼コラム 近代日本に芸術移民した朝鮮人・台湾人の芸術家たちのこと(足立 元) 06 「異国」の人々へのまなざしとその表象をめぐって(請田義人) ▼ コラム 沈黙を編むこと――移民・難民とアートの交差点 07 時代からの逃走――第一次世界大戦下の移民たちによるダダの思想とアナーキー(森 元斎) 08 トランスナショナル・アート・ヒストリー ―― 他なる語りのために(山本浩貴) ▼コラム 引かれる線に無関係であること――重村三雄の調査報告(長谷川 新) 第Ⅲ部 移民・難民をめぐる感性の政治 09 クィアな日系アメリカ人の歴史を書く――TTタケモトの実験映画(菅野優香) ▼インタビュー ミミ・チ・グエン 10 ジャック・ランシエールにおける移民の(脱)規定(鈴木 亘) 11 移民をめぐる「美学/政治」とアート(石田圭子) ▼コラム 語られざる記憶を紡ぐ――移民・難民にとってのアート(川上幸之介) 12 二一世紀のメカニカルタークとその彼方へ――アルゴリズム・移民・ケアをめぐる芸術の政治学(清水知子) おわりに - 著者プロフィール - 川上 幸之介 (カワカミ コウノスケ) (編著) 倉敷芸術科学大学准教授。KAG アートディレクター(gallerykag.jp)。ロンドン芸術大学セントラル・セント・マーチンズMAファインアート科卒。東京藝術大学国際芸術創造研究科博士課程修了。博士(学術)。専門は現代アート、ポピュラー音楽、キュレーション。著書に『パンクの系譜学』(書肆侃侃房、2024)、共著に『思想としてのアナキズム』(以文社、2024)『表現文化論講義』(ナカニシヤ出版、2025)。キュレーションにPunk! The Revolution of Everyday Life 展、Bedtime for Democracy 展など。 髙谷 幸 (タカヤ サチ) (編著) 東京大学大学院人文社会系研究科准教授。専攻は社会学、移民研究。著書に『追放と抵抗のポリティクス』(ナカニシヤ出版、2017年)、編著書に『移民政策とは何か』(人文書院、2019年)、編著に『多文化共生の実験室 大阪から考える』(青弓社、2022年)、論文に「現代日本における移住女性の配置の変容と社会的再生産の困難」(「思想」2020年4月号)など。
